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金沢市周辺の大桑層の堆積サイクル

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(1)

北陸地 質研 究所報告

HGIReport

No.5August,1996 p.21卜 244

金沢市周辺の大桑層の堆積サイクル

北 村 晃 寿 *

Sedimentary cyclesin theOmma Fom ation aroundKanazawa City,Japan

AkihisaKitamura* (1996

1

18

日受理 )

(Received 18,January,1996)

Abstra(:t

TheOmmaandUtatsuyamaFormationsexposedaroundKanazawaCity,CentralJapan,consist ofapproximately400m tllickofshallowmarineandcoastalnonmarinesedimentofPleistoceneage

( C.

i

.

6‑0.6Ma).Theseformationscanberegardedasathird‑orderdepositional sequence

,

becauseanalysesofboth litho‑and biofaciesdemonstrate thattheOmma and Utatsuyama Formationsrepresentatransgressive‑regressivecycle.

I

ntermsofsequencestratigraphy,this sequencecomprisesatransgressive (lowerandmiddlepartsoftheOmmaFormation)andhighstand systemstracts(upperpartoftheOmmaFormationandtheUtatsuyamaFormation),andthe maximum floodingsurfaceislocatedjustabovethetopofJarami1loevent

(

1.0Ma). Resultof calculationoftherateofsubsidenceandtherateofsedimentsupplyshowsthatthelatterexceeded thefm erat1.

0Ma .

Therefore,出isthirdqderdeposは011dsequencemayberelatedtobasinsubsidence, andarapidinCreaseofsedimentsupplyduetoupliftofhinterland (maybeIozen

h i l l

)after1.0Ma.

Although theOmmaFormationispartofthethird‑orderdepositionalsequence,italsoconsists ofatleast14fifth‑orderdepositionalsequences.Asignificantfeatureofthesedepositionalsequences

isthatwithinthemtheyshowacycLcityintheverdcaldisbibutiOnofinsihEmOlluscanfossilassociations. Thechangeindicatesthatoceanicconditionchangedfromcold‑watertowarm ‑waterandtocold‑

waterduringthedepositionofeachsequence.Thus,thesecanbeidentifiedasdepositionalsequences relatedtoglacial‑eustasywithaperiodof41ka.Inaddition,upward‑coarseningandupward‑

thickeningpattemsrecognizedin14fifth ‑orderdepositionalsequenceswerecausedbythird‑order sea‑levelchange. Insumma

r y

,14depositional SequencesintheOmmaFormationhasbeen contronedbyearlyPleistoceneglaciaト eustasyandperiodicpulsesoftectonicactivity.

静 岡大学理学部地球科 学科

InstituteofGeosciences,FacultyofScience,ShizuokaUniversity,Shizuoka,422,Japan

211

(2)

は じめに

金沢大学理学部地学科に入学 した年 (1981年)の4月,私は 『大型化石研究マニュアル (小高民夫 編)』を頼 りに,大桑層の露出す る犀川を訪れた.そこで, 貝化石の ぎっしり詰 まった層 を見つけ ( れは堆積サ イクル11基底の貝化石密集層であ る), きっそ く化石 の採取 を試み た ものの うま くいか ず,がっか りした.長野市の生 まれの私は,高校時代 に柵層の貝化石 を採取 していたのだが,そこで 培ったテ クニ ックが大桑層では通用 しなかったのだ.大桑層の貝化石 は柵層の もの よ りもず っともろ かったのである. さらに私 をがっか りさせ たことがある.尉 【ほ 訪れ るまで,

2

個体 しか採取 したこ とがなかったため,私 に とっては珍品だったウニの化石が,大桑層にはた くさんあったのである.こ うして,私のウニの化石‑の思い入れ もまた見事に粉砕 されたのである. これが大桑層 と私 とのファ ース トコンタク トである.それか ら,6年後の19874月,私 は再 び犀川に立 った. その年の3月に 修士論文 を提出し,金沢大学大学院の博士課程 に進学 した私は,新 たなる研究 テーマ を求めて, ここ

にや って きたのである.

修士論文 で,私は富山県高岡市に分布す る頭川層 を研究 した.この研究では,野外調査,粒度分析, 炭酸か レシウム含有量測私 浮遊性有孔虫 と底生有孔虫の比率,生物骨格粒子の組成 な どを検討 し, 頭川層の堆積環境 とその時代の相対的海水準変動の復元 を試みた, しか し,地質時代 を確定できなか ったこともあ り,研究 をうま くまとめ られなか った. だが,今考える と, この修士論文 は結構 イイ線 をいっていた.なぜ ならば,地層の堆横過程 を相対的海水準変動 と関連づ けて考 えるとい うことは, シーケンス層序学の概念に通 じるものであ り, また私が用いた手法は シーケン啓序学的解析で使わ れているものであったか らだ.残念なが ら,Ⅴailetal.(1977)の提案 したシー ケンス層序

挙を

,私が

十分に理解できなかったため,修士論文 はイイ線で終 わったのであ る.けれ ども, このイ射 二論文 を通 じて,私は氷河性海水準変動に伴 う堆積物 と生物相の変遷 に興味 を持 ったのである. そ して, この研 究テ‑マ を完遂す るための条件 も理解す るこ とがで きた.その条件 とは,①堆積 時代 が分 か ってお り,②地層の連続性が良 く,③水深 と海中気候 の変化 を記録す る化石, それ も現地性 で鹿す る,地層 である. これ らの条件 を満 たした地層が大桑層であった.

大桑層は,

K

aseno&

M

atsuura(1965),Ogasawara(1977),松浦(1985)の貝化石 の研究があ り, 高山ほか(1988)の微化石層序学的研究 と大村ほか(1989)の古地磁気層序学的研 究に よって,その地質 時代 も明 らかにされてお り,上記の条件が整 っていた.だが,大桑層 を研究す るにあた り, さらに私 は一つの研究戟略 を建 てた. それは, 「氷河性海水準変動の最 も重要 な特徴 はその周期性である. よ って,氷河性海水準変動は何か しらの周期性 を持 った現象 として地層や生物相 にその痕 跡 を残す はず だか ら, その痕跡,つ まり周期性 を地層や生物相の中か ら見つけ出す」 とい うもの であ る. この戦略 は大いに効果 を挙げた. まず,犀川河床の大桑層露頭にケ スタ状の地形 を見出す こ とが で き,それか ら堆積サ イクルを認定できた.そして,貝化石 の層位分布の精査 に よって,つ いに大桑層の堆槽サイ クルが4.1万年周期の氷河性海水準変動に起 因す ることを明 らかにす るこ とがで きた (北村 弓丘藤, 1990;氾 tamuraetal.,1994).だが, これ らの研究は大桑層模式露頭での調査に基づ くのせ,あ る1 地点における氷河性海水準変動に伴 う浅海環境や生物の時間変化 しか読み とってい ない. そのため, 現在私は模式露頭 よりも沖側 と陸側に堆積 した大桑層 を調査 し,氷期 一間氷期サ イ クルに伴 って沿岸 から陸棚 までの海域で どの ような堆積作用が起 こり, また生物相が どの ように変化 す るのか を復元す る作業 を行 っている.本論はその研究の途中経過 をま とめた ものである. したが って,今後の研 究に より,本論の内容 も一新 される可能性があることをあ らか じめ断ってお く.

この度,細野義夫先生か ら小論 を執筆す る機会 を賜 った.金沢大学在学 中の諦座 は違 ったものの,

212

(3)

先 生には多 くの有益 なア ドバ イスを頂いた・ また,先生が保管 されていた大桑層産貝化石標本 は,敬 の研究 に非常に役立 った・ ここに小論 を寄稿 し,先生‑の感謝の意 を表する次第です.

氷河性海水準変動

大桑 屑や卯辰山層の堆積サ イクルや そこに含 まれ る化石相の変遷 を理解するには,両層の堆積 した 時代背景 を知 る必要が ある・そこで, ここでは堆積サ イクルを作 り出した主要因の一つ,氷河性海水 準変動 について概説す る.

一つの例外 を除 き,すべ ての地質時代は示準化石によって区分 される.唯一の例外は,大桑層の堆 積 した時代,すなわち第四紀であ る.第匹粥己と第三紀の境界に関 しては,19世紀以来議論が続け られ てお り,現在では古地磁気の正磁極帯01duvaieventの上限に置かれている.第四紀 を他の地質時代 と際立 たせ ている特徴 は, この時代が人類の進化 した時代であるこ とと,数万〜10万年周期で氷期 一 間氷期 サ イ クルが繰 り返 したこ とである. もっ とも,最近の研究 では,人類の起源は約4M aまで

(e.g.,Wh iteetal.,1994.‑Leakeyetal.,1995),氷期 一間氷期サ イクルの始 まりも2.4‑2.7Maま で さかのぼ ることが明 らかにされている (e.g.

,R

aymo,etal.,1992:Tiedemann,eial.,1994). の こ とは,第四紀 を特徴づ ける氷期 一間氷期サ イクルの継続期間が1.5倍(2.7÷1.8)になったこと, 人類進化の後半部が氷期 ‑間氷期サ イクルの下で起 こったことを意味す る.

さて,深海底堆積物 中の有孔 虫の酸素同位体比は,氷期 一間氷期サイクルのインデ ィケー タとして 櫨 めて有効 であ り, その記録 は2.4‑2.7Maに氷期 一問氷期サ イ クルが開始 したことを示す.そ し て,同時代に ノルウェー海の深海堆積物に漂流岩層 (ice‑rafteddehitus)が現れる (C.g.,Jansenet al.,1988)ことか ら,氷期 一間氷期サ イクルは北半球高緯度地域 に大規模 な氷床が形成 きれ たこと に よ る とされて い る.2.7Ma以 降の氷期 一間氷期 サ イ クルは,0.6Maを境 に,それ以前の4.1 年 周期 が卓越す る小振幅 ・短周期の時代 と,それ以後の10万年周期が卓越す る大振幅 ・長周期の時代 に分け られ (e.g.,Bergeretal.,1994),0.9‑0.6Maの期間が気候変換期であった (e.g.,Ruddiman etal.,1988). また,Broecker&VanDonk (1970)によって,0.6Ma以降の氷期 一間氷期サ イクル は, ゆ っ くりと進行す る寒冷化 とその後に来る急激な温暖化 とい う非対称的な変動であったこ とが明 らかに されてい る.

この ような氷期 一間氷期サ イクルの周期性は,地球 の天文学的運動, ミランコビッチサイクルと強 い関係がある. なぜ な らば, ミランコビッチサイクルには,歳差運動による約

2

万年周期,地軸の傾 きの変動による約4万年周期,離心率による41万年 と10万年の周期があ り, これ らの周期 と氷期 一間 氷期サ イクルの周期が一致す るか らである (Haysetal.,1976). これ らの天文学的強制力の うち, 歳差運動 と地軸の傾 きの変動 に よる日射量の変化は,気候変動 を もたらすのに十分 な大 きさになる (例 えば,福山 1992).一方,離心率 の及ぼす 日射量の変化 は小 さ く,氷期 一間氷期サイクルを引 き起 こすだけのパワー をもっていない.そのため,過去60万年の間に最 も卓越する10万年周期 は,也 球 システムのフィー ドバ ック機構 に よって もたらされたものであ って,天文学的強制力はペー ス ・メ ー カー の役割 を果た しているにす ぎない と考えられている (詳 し くは,福山,1992を参照

) .

氷期 一間氷期サ イクルに伴 い,地球表層環境は劇的に変化す る.気候変動は大気循環 ・海洋循環の 変化 とい う形で現れ, それ らは大気中の温室効果ガス濃度や海水 中の栄養塩濃度 を変 え, さらには生 物生産量や生物分布 も変化 させ る. また,極地域には氷床 として大量の水が トラップされるので,海 水準が下が る. これが氷河性海水準変動である.

氷河性海水準変動 の歴史は,海岸線の高度 と有孔虫の酸素同位体比の統合か らある程度 まで復元で

213

(4)

きる.Fairbanks(1989)は,バ ルバ ドス島において ボー リン グコアによって, 水深5m以浅に住む サ ンゴAcroporapalmataを採取 し, その年代 と深度 を測定 し,最終氷期最盛期 の海 水準は現在 より 121m低か ったことを明 らかに した.現在の極地城 の氷床 を構 成す る氷 の ♂80倍 は平均‑40‰で あ り,全海洋の平均深度を3800mとす ると,121mの海水準低下 に よって海 水中の♂80倍 は 1.26ojt,'o 変化す る (0.0104%と,/m).ところが,世 界各地海底生有孔 虫の間氷

期 一

氷期の酸素同位体比の 差 は1.260/bLを上回 り,約1.72%'Oもある. そのため,長 い間,間氷期 ‑氷期 を通 じて深 海底の水fmE'L 一定であ り,深海底生有孔虫の酸素同位体変動曲線は氷床量 をモニ ター している と思 われていたが, そ うではな く,氷期の水温は間氷期 よ りも2℃低か ったこ とが判 明 した (1.72‑ 1.26‑0.46‰=

2He.g.,Chappel

l&

Shackleton,1986 それゆえ,酸素 同位体変動曲線か らは, 氷河性海水準変 動のタイ ミングは分か るが,海水準の変動量 を直接知 るこ とはで きない. よって,最 終氷期以前の氷 河性海水準変動については,深海底生有孔虫の酸素 同位体 比変動 曲線に水 温変化 に由来す る0.460, の変動値 を補正 して,変動量 を見積 もることとす る. この算出方法 を使 うと,前期更新世 の氷河性海 水準変動の変動量は70mを越 えない. この値の妥当性 は次の こ とか ら支持 され る.

CL

m4

AP (J1981)は,浮遊性有孔虫群集 を統計処理 し,氷期最 盛期 の表 層海 水温 を算 出 した.そ の結果,太平洋‑イン ド洋一大西洋の低緯度海域 では,氷期 と間氷期 で

水温

に変化の ないことが分か った. もし, このような状態が過去の氷期 一問氷期サ イクルに も通 用 できるとす る ど,低経度海域の 浮遊性有孔虫同位体比記録は氷床畳 をモニ ター してい るこ とにな る.実 際 に, 赤道 太 平洋の コア

V

28‑238・V28‑239の浮遊性有孔虫同位体比記録 (Shackleton& Opdyke,1973,1976)は,戯終氷 期 と現在の差が約1.20A,i音溝)リ,上記の1.2613品と良 く‑致す る. そ して, これ ら2つ の コアの記録で は,前期更新世の酸素同位体比の変動幅 は約0.750諭Io内に収 ま り, この値 を海水準の変動鼠に換牌す ると約72m(0.75÷0.01040^.;u/m)となる. この値は上述の値 (70m)と‑致す る.以上 の ことか ら, 本論 では大桑層の堆積 した前期更新世の氷河性海水準変動の変動量は貴大 で も70mと考 える.

日本海の第四紀環境変動

大桑層が堆積 した 日本海は練海であ り,4つの浅 い海峡 で外洋 とつ なが ってい る (1). それゆ え,氷期 一間氷期サ イクルに伴 う環境変動は,太平洋や オホー ツ ク海 とは全 く異 な っ た様相 を皇す る.その特異性 を知 ることは,大桑層や卯辰山層の堆積サ イ クルの理解 に役 立つ. しか も,近年行わ れたODP掘削によって, 日本海の海洋環境変動の知 見は飛躍的 に増 大 した. この よ うな観点 をふま えて,以下に 日本海の第四紀環境変動について概説す る.

まず,Obaeial.(1991)の研究 をもとに,最終氷期以降の 日本海の環境変動 を紹 介す る.

彼 らは隠岐唯の水深935m (1)か ら採取 したピス トンコア試料 を解析 し,85,000年 前か ら現在に 至 るまでの 日本海の環境には,5つの変化があったこ とを明 らか に した.

(1) 85‑27kaは対馬暖流は流入せず,冷 たい表層水が卓越 していた.海底の環境 は不良の好気的 状況 と酸化的状況の間で変動 した.

(2) 27‑20kaは淡水が 日本海に流入 した. これは多分黄河起源 であ り, 淡水 の流 入に よって成層 構造が形成 きれ,海底はシビアな無酸素状態 とな り, ほ とん どの底生生物 が死滅 した. そのた め, この期 間の堆積物は暗色で平行薬理 を持 ち,黄鉄鉱 を多 く含む.

(3) 20‑10kaは親潮が 日本海に流入 した.その練乳 深層水の通気性 が 回復 し,北 太平洋の浅海 性底生群集が津軽海峡 を通 って, 日本海に移住 し,空いて いた深海底 のニ ッチ を占有 した.

(4)10‑8kaは対 馬海流が 日本海 に一進一退 を繰 り返 しなが ら,やが て本格 的に流 入 して くる過

214

(5)

1 日本

(6)

(1992)は,これを日本周辺域か らの河川水の流入に求めた. これは,東シナ海か ら日本海に流入す る低塩分水の消長 を指示す る珪藻 Pwaliasulcataの産 出が同時期 に最低になるためである.すなわ ち,対馬海峡南方海域か らの水の流入は考 えがた く,ゆえに淡水の起源 を日本海周辺城 に求め ざるを えない. また,現在の黄河の流量は石狩川のたった4倍 にす ぎない (斉藤文紀私信) こ とも,黄河説 には不利な材料である. そのため,現在,淡水の供給源 としては, 日本海周辺域か らの河川水説 ( 泉,1984;Tadaetal.,1992)と,アムール川説(Keigwin&Gorbarenko,1992)が あげ られている.

以上に, 日本海の500m以深で起 きた環境変遷 につ いて述べ た. そこで,次 に 日本海沿岸の浅海臨 海地域で起 こった環境変遷について述べ る.

海水準変動に対す る浅海臨海地域の地形変化 は,汎世 界的海水準変動,地殻変動,堆積物供給速度 に規制 され る.前二者については最終氷期以降では 日本海特有の地質学的現象は認 め られないが,堰 積物供給速度に関 しては特有の現象が見 られ る.それは,対馬 海流の流入に よる日本海側の陸上気候 の劇的変化に関係す る.すなわち,対馬海流の流入によって, 日本海側はそれ以前 の乾燥気候か ら冬 季に大量の降雪が もた らされ る気候‑ と変化 し (例 えば,安 田,1982),その結果堆積物の供給量が 増加 したのである.例 えば,富山深海扇状地 においては,3万年前か ら現在 までの間では,13,000‑

6,000年前の期間にター ビダイ ト頻度が最大になったが, この原因は対 馬海流の流 入に伴 う多雪化に あるという 仲 嶋,1991).このように, 日本海の浅海臨海の堆積作用 ・地形変化 を考 察す る上で, 多雪化は極めて重要である.

さて,最終氷期以降の 日本海の環境変遷 を述べ たが, これ ら一連の環境変動は何 時か ら始 まったの か ? その答えは,ODPコアの研究にある.ODPLeg127(1)の コアには,明暗層が認め られ, 明色層は間氷期 に,暗色層は氷期 に堆積 したことが明 らか となった (Tadaetal.,1992).この明暗 層は約2.6Maに始ま り,約1.2Ma以降,明暗の コン トラス トがはっきりす る (Tada

&L

jima,199

2).これ らのことは,最終氷期以降の 日本海 に見 られ た環境変遷一 氷期 には海底 が選 元的環境 とな り,間氷期には酸化的になる‑が,過去260万年間続 いたこ とを意味す る. また,1.2Ma (Bergeret al.(1994)の年代 スケールを使 えば1.3‑1.4Maとな る)以降に関 しては,間氷期 ご とに暖流系貝 化石群集が現れるので (北村,1995),海底に溶存酸素 を送 り込んだ担い手 として は,対馬海流の変 質 した 日本海固有水が考 えられる. このような時代背景 の下 で,大桑層 と卯 炭山層 が堆積 したのであ

る.

大桑層の概要

大桑層は石川県金沢市菅谷 を西限 とし,東は富山県小 矢部市西部 まで分布 する. 日本海沿岸地域に 露出する同時代 の海成層 としては,韓国の済州島を除けば,大桑層は貴 も西 に位置す る.つ まり,陸 上 に露出す る地層 としては,対馬海流の最 も上流側 に位 置す るの である.大桑層 の研 究史や年代論 は, この論文集の別稿 に詳 しく説明されているので, ここでは大桑層の堆積サイクルの層序学的位置, ならびに,本論で扱 う模式露頭 と夕 日寺の大桑層の地質概説 を記す.

大桑層の模式露頭は,石川県金沢市大桑町犀川河床 (図 2) にある.ここの大桑層の走向 ・傾斜は E‑W ・10‑20oN,全層厚は約210m,岩相 ・貝化石群集か ら下部 ・中部 ・上部に3分 され る(3) (北村 ・近藤,1990).下位 の犀川層 (Ogasawara,1977)と大桑 層 との接触部は観察 で きないが, 上位 の卯辰山層 (市原ほか,1950)と大桑層の接触部 は,大桑橋 よ り上流側 の犀川右岸の段丘崖で観 察でき,卯辰山層が大桑層 を削 り込 んでいる (3)(北札 1994).ここの大桑層 には少 な くとも14 回の堆積サイクルが見 られ, また少な くとも4枚 の 白色凝灰岩層が挟 まれ る (3).微化石層序 ・

216

(7)

古地磁気層序の基準面に基づ くと,大桑層中部 と上部 の堆積時代はそれぞれ1.5‑1.OMa,1.0‑0.8 Ma (≒0.79Ma:Bmnhes/M如uyama境界年代) と推定 され る (3).なお,堆 積 サ イ クル9 模式露頭では欠落 しているが, これは金沢市山科地域 で見 るこ とができる (2,4

日Ki

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.,1994).

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図 3

模式露頭の大桑層の柱状図 と主要な貝化石種の層位分布.生層序基準面 は高山ほか

8

)とSa

t (198 o&Takayama(1992)に基づ き,古地磁気学的データは大村 ほか (1989)と

酒井ほか

(1993)による.各基準面の年代借 はBergeretal.(1994)に基づ く.*

:大村 ほか

(1989)がフィッション ・トラック法 によって求めた凝灰岩層の年代値.1‑l

l:大 桑層中部の堆積サイクルの番号.I

,l

l &l H:大桑層上部の堆積サ

イクルの番号( 北村

,1994).

Figure3 ColumnarsectionoftheOmmaFormationattypesection,Showingst

ratigraphicdistribution ofselectedmolluscanspecies.Biostratigraphic.datumhorizonis

afterTakayamaetal.(198

8)andSatoandTakayama(1992).Magnetostratigraphicdataisfrom

Ohmuraetal.(1989) andSakaietal.(1993).Theagesofbiostratigraphicdatum horizonandmagneticpolarity ch

(9)

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4

横式露頭,山科

,夕日寺の大桑層中部の対比.

Figure4 Sectionsi

参照

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