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遺伝性高コレステロール血症ウサギ

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遺伝性高コレステロール血症ウサギ WHHL-MI の動脈 硬化性プラーク進展に対する GLP-1 受容体作動薬

リキシセナチドの効果

‐血管内エコー法を用いた検討‐

日本大学大学院医学研究科博士課程 内科系循環器内科学専攻

須藤 晃正

修了年 2015 年

指導教員 廣 高史

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遺伝性高コレステロール血症ウサギ WHHL-MI の動脈 硬化性プラーク進展に対する GLP-1 受容体作動薬

リキシセナチドの効果

‐血管内エコー法を用いた検討‐

日本大学大学院医学研究科博士課程 内科系循環器内科学専攻

須藤 晃正

修了年 2015 年

指導教員 廣 高史

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目次

① 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

② 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

③ 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

④ 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

⑤ 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

⑥ 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

⑦ 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34

⑧ 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34

⑨ 表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36

⑩ 図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40

⑪ 図説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55

⑫ 引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60

⑬ 研究業績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69

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1 概要

目的:インクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)はグルコース 濃度依存的に膵β細胞からインスリンを分泌させることで血糖降下作用を示す。また

GLP-1はApo E 欠損マウスにおける大動脈洞の動脈硬化を抑制することが報告され

た。しかし、進行した動脈硬化プラークに対して GLP-1 が有効かどうかは解明され ていない。本研究の目的は、ヒトの動脈硬化病変に類似の所見を示す遺伝性高コレス テロール血症ウサギ(Watanabe heritable hyperlipidemic - myocardial infarction

rabbit, WHHL-MI ウサギ)において、GLP-1 受容体作動薬(リキシセナチド)を投

与 し た 群と コントロー ル 群の 2 群におい て、 血 管内 エコ ー法(intravascular ultrasound, IVUS)を投与前後に観察し、プラークの量ならびに組織成分の変化に ついて比較検討し、さらに剖検後病理組織学的にも比較した。

方法:10-12月齢のWHHL-MIウサギをコントロール群と(n=5)とリキシセナチド

投与群(GLP-1群)(n=5)の2群に分けた。IVUSで腕頭動脈を観察したのち、GLP-1 群には12週間リキシセナチド(30nmol/kg/日)を投与し、コントロール群には生理 食塩水を投与した。リキシセナチドおよび生理食塩水は浸透圧ポンプを用いて皮下に

持続投与した。12 週間後、再度 IVUS で同部位を観察した。IVUS ではプラーク面 積を示すグレースケール画像と、組織成分を表示したカラー画像(iMAPTM)で検討 した。2回目のIVUSにおける観察を行った際には、安楽死の後に、IVUSの観察部

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位をパラフィンブロック作製し、病理組織切片を作成しその組織成分を検討した。

結果:IVUS における検討では12週間後の血管断面積(Vessel area)(コントロール 群n=40 vs. GLP-1群n=35、12.22 ± 0.32mm2 vs. 11.64 ± 0.32mm2, p=0.20)、プラ ーク面積(Plaque area)(6.49 ± 0.27mm2 vs. 6.06 ± 0.27mm2, p=0.26)、%Plaque area(Vessel areaに対する割合)は2群間において同等であった(52.09 ± 1.38% vs.

52.14 ± 1.56%, p=0.98)。一方、Baselineと12週間後を比較するとPlaque areaは コントロール群において のみ 有意に増加を認めた( コントロール群:+1.22± 0.17mm2 p<0.01、GLP-1群:-0.03±0.11mm2, p=0.94)。またiMAP解析では12週 間後の時点で GLP-1 群においてコントロール群と比較し%Fibrotic area (Plaque areaに対する割合)(66.3 ± 2.06% vs. 75.14 ± 2.62, p<0.01)が大きく、%Necrotic area(23.25 ± 1.87% vs. 16.17 ± 2.27%, p=0.02)、%Calcified area(2.15 ± 0.24% vs.

1.00±0.18%, p<0.01) は小さか った。 ま た Baseline と 12 週間 後 を 比較する と%Necrotic area, %Calcified areaがGLP-1群において有意に低下し、%Fibrotic area, %Lipidic areaは有意に増加した。病理組織による検討では、GLP-1群(n=41) はコントロール群(n=46)と比較し%平滑筋細胞(Smooth muscle cell, SMC)area

(6.93±0.31% vs. 8.14±0.48%, p=0.02)、%Fibrotic area(54.7±1.63% vs. 60.6±

2.12%, p=0.03)は大きく、%Macrophage area(9.11±0.80% vs. 6.19±0.85%, p=0.01)、%Calcified area(3.25±0.67% vs. 0.75±0.15%, p=0.02)は小さかった。

結論:遺伝性高コレステロール血症ウサギWHHL-MIに対して30nmol/kg/日のリキ

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セシナチド投与を12週間行い、その投与前後をIVUSで観察した結果、GLP-1(リ キシセナチド投与)によるプラークの増殖の抑制および安定化を示唆する所見を認め た。GLP-1 受容体作動薬は、ヒト冠動脈プラークに対しても進展抑制作用、安定化 作用を示し、急性冠症候群の発症抑制に寄与する可能性がある。

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4 緒言

近年本邦において動脈硬化性疾患の罹患率は増加傾向であり、特に心血管疾患によ る死亡率は増加の一途である。その理由として食生活の欧米化に伴い高脂血症や、糖 尿病などの生活習慣病の増加によることが挙げられる 1, 2。心血管疾患の中で虚血性 心疾患の一つであり、特に突然の生命を奪う可能性のある疾患群として、急性冠症候 群(acute coronary syndrome, ACS)が注目されている。この症候群は急性心筋梗塞、

不安定狭心症など、後述するような冠動脈プラークの破綻とそれに続く血栓惹起とい った共通した病態によって発症する疾患をまとめて総称したものである。虚血性心疾 患に対する治療法は目覚ましく進歩しており、ACS 症例の院内における死亡率は減

少傾向にあるものの、いまだにACS によって生じたと考えられる心原性心停止例は 決して少なくなく、本邦において年間約6 万人が病院に搬送されている3, 4。したが って、動脈硬化病変の進展を抑制しACS の発症を予防することは、国民全体の健康 を守りさらに医療経済を効率化すための、極めて意義深い事柄である。

虚血性心疾患

WHOは虚血性心疾患を労作性狭心症、心筋梗塞、中間型狭心症、無痛性虚血性心 疾患に分類し、中間型狭心症から心筋梗塞へ移行することを示した 5。American

Heart Associationは狭心症の中で心筋梗塞に移行しやすいものを、不安定狭心症と

して位置づけた6。冠動脈の虚血を主病態とする虚血性心疾患は以下のようにして発 症するとされる。冠動脈においては出生早期より生理的内膜肥厚が形成され、そこに

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脂質異常症、高血圧症、糖尿病、喫煙などの種々の危険因子が加わることで炎症や脂 質蓄積が起き、動脈硬化病変が形成される。その結果として冠動脈に狭窄が生じ、ひ

いては心筋虚血が起こるようになる7。冠動脈の内腔直径の狭窄度が75%以上をこえ ると、特に運動時に血流が低下し始め、90%以上になると安静時にも血流が低下する

8

ACSの病態

Herrickらは1983年に心筋梗塞患者の病理所見より、心筋梗塞が冠動脈の血栓閉

塞により発症していることを報告した9。1990年代に入ると冠動脈造影検査が広く施 行されるようになり、不安定狭心症や心筋梗塞は、冠動脈粥腫の破裂とそれに伴う血 栓形成が主因であることが示された 10。ACS は従来動脈硬化が進展し、最終的に冠 動脈狭窄に至った結果発症すると考えられていたが、Falk らによって急性心筋梗塞

の 68%が狭窄度 50%以下の病変から発症することが報告された 11。すなわち、不安

定狭心症や急性心筋梗塞には冠動脈プラークの破綻とそれに伴う血栓形成という一

連の共通した病態が存在しているという認識が生まれ、これらを総称し ACSと呼ば れるようになった。冠動脈は内膜・中膜・外膜の3層からなりたち、外膜は疎な結合 組織、中膜は平滑筋層、内膜は一層の内皮細胞層からなる。動脈硬化が進展すると内 膜の肥厚性病変が形成され、これをプラークと呼ぶ。プラークの構成は多様であり、

平滑筋細胞が主体で線維成分に富む線維性プラークから、脂質成分がコア様に沈着し

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線維性被膜が覆うアテローム(粥腫)まで様々な性状を呈する。その後、ACSを発症し やすいプラークを不安定プラーク(vulnerable plaque)と呼ぶようになった。病理 学的検討では、不安定プラークの特徴として、①偏心性で陽性リモデリング、②線維 性被膜の菲薄化、③大きな脂質コア、④びらん、⑤すでに破綻したプラーク、⑥プラ ーク内出血、⑦小結節状石灰化、⑧高度狭窄病変、⑨プラーク内の炎症細胞浸潤など

があげられ、これらの病変を基盤としてプラークの破綻が起こることにより ACSが 発症すると考えられている12, 13。また、これらの特徴の発現や進展を抑制することが、

ACS 発症予防につながるものと考えられるようになり、不安定プラーク内の組織学 的な特徴を逆行・退行させることを「プラークの安定化」と呼ぶようになった。これ に対し、プラークの断面積や容量が減少する現象を「プラークの退縮」と呼んでいる。

プラークの形成・進展の危険因子には性別、血圧、肥満、脂質異常症、糖尿病、喫 煙、家族歴などが報告されている14-19。しかしながら、プラークは動脈全体に均等に できるものではなく、また不安定化するプラークはその中で限られているとされる。

このように、あるプラークだけが何故ある時期に不安定化してACS が発症するのか については、その直接的規定因子を含めて未知な点が多い。

動脈硬化粥腫の形成過程

動脈硬化粥腫の形成は血管内皮細胞の機能障害や形態傷害に起因すると考えられ ている。血管内皮障害が起きると、血管内膜の透過性が亢進し、低比重リポ蛋白(low

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density lipoprotein, LDL)などのリポ蛋白が内膜内に侵入する。LDLは酸化され、

酸化 LDL となる。酸化 LDL は血液中の単球を遊走させ、内皮下に浸潤させる。内 皮下に浸潤した単球はマクロファージへと変化する。このマクロファージが酸化

LDL を貪食すると、泡沫化し泡沫細胞となる。泡沫細胞からは様々なサイトカイン やスーパーオキサイドが放出され、血管平滑筋細胞を刺激し、平滑筋細胞自体からも サイトカインの放出をもたらすとともに、プラークのマトリックスを水解する因子マ トリックスメタロプロテイナーゼ(Matrix metalloproteinase, MMP)を放出させる。

泡沫細胞は内膜内で集積し、やがて壊死ないしアポトーシスにより崩壊して、細胞外

マトリクス内に脂質コアを形成する 12。また泡沫細胞は T 細胞の活性化に関与し、

活性化したT細胞やマクロファージはインターフェロン(Interferon, IFN)-γや腫 瘍壊死因子(Tumor necrosis factor, TNF)-αなどの炎症性サイトカインや血管内皮 増殖因子(Vascular endothelial growth factor, VEGF)などを産生する。さらにTNF- αなどの炎症性サイトカインは細胞間接着分子(Intercellular adhesion molecule,

ICAM)-1などの発現を増強しT細胞の接着を容易とする。血管内皮細胞障害がおこ

ると、同時に血小板血栓の付着と血小板由来増殖因子(Platelet-derived growth factor, PDGF)が産生され、中膜から平滑筋細胞が遊走し、コラーゲンを分泌して泡 沫細胞を覆うようになり、線維性被膜が形成される。粥腫が大きくなり、内部で脂質 コアが肥厚化し、また線維性被膜が菲薄化するとプラークの破綻を起こしやすくなる

vulnerable plaqueが形成される。このように動脈硬化粥腫の形成には多くの炎症性

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8 変化が関与している12, 20-22

GLP-1受容体作動薬について

小腸 L 細胞から分泌されるインクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1

(Glucagon-like peptide-1, GLP-1)は、グルコース濃度依存的に膵β細胞からイン

スリンを分泌させる。GLP-1はジペプチジルペプチダーゼ4(Dipeptidyl peptidase-4,

DPP-4)により分解され失活し、その血中半減期は2~5分程度とされている。GLP-1

受容体作動薬は、GLP-1 受容体を介して作用することにより環状アデノシン一リン 酸(cyclic AMP, cAMP)を増加させ、グルコース濃度依存的にインスリン分泌が促 進され血糖の降下作用を示す 23, 24。GLP-1 は膵臓以外にも脳神経系、胃、腎臓、骨

格筋、肺、心血管系など多様な臓器に作用を示す25, 26(図 1)。さらに心血管系に対 しては血管内皮機能を改善させることで心保護作用があると報告されている。

Arakawaらは動脈硬化モデルのApo E欠損マウスにexendin-4(GLP-1受容体作動 薬)を用いて実験を行った。投与28 日後にOil-red-O染色を行った標本で大動脈洞 の動脈硬化病変面積を測定したところ、コントロール群と比べexendin-4投与群は動 脈硬化巣の抑制が認められると報告した27。また、Burgmaier らは、Apo E欠損マ

ウスに GLP-1 を投与した群はコントロール群と比較し、大動脈洞および大動脈弓に

おいてマクロファージの浸潤やMMP-9の発現が少なく、コラーゲン線維や厚い線維 性被膜を多く認め、GLP-1がプラークの安定化をもたらしていることを報告した28

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しかしながら GLP-1 受容体作動薬による動脈硬化進展抑制の臨床研究はいまだ報告 されておらず、動脈硬化モデルである Apo E 欠損マウスを用いた動物実験が報告さ れているだけである27, 28

本 研 究 で は 、 フ ラ ン ス の サ ノ フ ィ 株 式 会 社 で 開 発 さ れ た リ キ シ セ ナ チ ド

(Lixicenatide)を用いた。リキシセナチドは GLP-1 の不活化を行う酵素である

DPP-4に抵抗性を示すexendin-4の構造に類似したGLP-1受容体作動薬である。リ

キシセナチドは 1日 1回の投与で、GLP-1 受容体に結合しインスリン分泌を促進さ せ、十分な血糖降下作用を示す。アジア人の2型糖尿病を対象とした試験では24週 間で有意な血糖降下作用を示した29。また、リキシセナチドはラットを用いた実験に おいて心筋保護作用があることが報告された30

遺伝性高コレステロール血症ウサギについて

遺伝性高コレステロール血症ウサギ(Watanabe heritable hyperlipidemic rabbit,

WHHLウサギ)は Watanabeによって 1973年に発見された高脂血症を示す日本白 色ウサギに由来し、1980年に系統交配させて確立された31。WHHLウサギの高脂血 症は LDL 受容体の遺伝子異常に基づいて血中の LDL の異化が遅延することに由来 する。この高脂血症が原因となり動脈硬化や黄色腫が自然発症する。その後選抜交配 により、28 月齢における心筋梗塞の累積発生率が 98%の WHHL ウサギの一群が作 られ、WHHL-myocardial infarction (MI)ウサギと命名された32。脂質代謝に関連す

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る酵素はヒトとマウスやラットで大きく異なるが、ウサギはヒトに類似している。ヒ

ト血中の主要なリポ蛋白がLDLであるのに対し、実験動物の代表であるマウスやラ ットは高比重リポ蛋白(high density lipoprotein:HDL)であるが、このウサギで

はLDLである33。その結果、WHHL-MIウサギではヒトの動脈硬化病変と同様の病 変が認められ、病理学的にもヒトに極めて類似しているとされる。実際、心筋梗塞を

発症した WHHL-MI ウサギの責任冠動脈では不安定プラーク所見として、薄い線維

性被膜に覆われたマクロファージに富む壊死組織の存在が報告されている32

血管内超音波について

マウスを用いた実験は、均一な条件で比較実験を行うことができるが、現時点では 一定期間経過した後に剖検病理で効果をみる横断研究のみが可能であるため、同一の プラークを経時的に変化をみることはできない。個体の小ささや、体力などの限界に より、血管内イメージングを継時的に繰り返して施行することが困難なためである。

しかし、最近のデバイスなどの進歩や動物管理システムの進歩により、著者らの施設 では後述のウサギについて血管内超音波法(Intravascular ultrasound : IVUS)を投

与前後において2回施行できる安全な飼育がある程度可能となった。そのため、動物 実験によりプラークの組織成分の変化を観察することが可能となった。

IVUSは直径約1mm (3 French size) のカテーテルの先端に装着した超音波探触 子(20-40MHz)を約 1,500-2,000rpm の速度で回転させ、生体で直接血管壁の短軸断

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層像を描出する方法である。冠動脈や末梢血管に経動脈的に直接挿入するため観血的 かつ侵襲的な検査である。しかしながら、現在では経皮的冠動脈形成術(percutaneous

coronary intervention : PCI)を施行する約6割以上の施設において、PCI時にIVUS を用いている(図2)。

IVUSの原理は一般的なエコー装置とほぼ同様である。IVUSカテーテルから発せ られた2.5波長程度のパルス波で、その波が組織の中を進んでいく。音響インピーダ ンスという物質固有の値が異なる二つの物質の境界面において一部の波は反射され プローブに戻ってくる。また一部はその境界面を通過し、さらに奥へ進達する。そし てさまざまな組織境界面で反射された結果として、超音波信号が一連の信号(時系列

信号)となり返ってくる。それらの時系列信号を信号強度に応じて 256 段階のグレー スケール画像として表し、各距離に応じて 360 度パノラマ平面に構成し血管の短軸 断面を表示したものがIVUSグレースケール画像である。どの位置から返ってきたか

(距離情報)については、超音波を発し反射点で反射して返ってくるまでの時間を2で

割り、あらかじめ定めた生体内での超音波速度を乗じて、プローブまでの距離を算出 する34

前述のようにヒトの冠動脈は内膜、中膜、外膜の3層からなる筋性動脈である。中 膜の構成成分は平滑筋細胞が主体である。グレースケール画像で示されるIVUSにお いてこの層は低輝度に描出され、外膜と内膜は比較的高輝度に描出されるために、

IVUSにおいても血管壁は3層構造を呈する。動脈硬化が進むと、平滑筋層の線維化

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が進むために、中膜はそれほど低輝度にならず、内膜と中膜の境界が不明瞭となる。

一方、中膜と外膜の境界は常に明瞭である。そのため、プラークの断面積(Plaque

area)は、中膜・外膜境界面積(中膜と外膜の境界には外弾性板があるために、External

Elastic Membrane Area:EEM areaとも呼ばれる)から、内腔面積(Lumen area)を 減じたもの、すなわち、内膜・中膜複合体面積(Intima+Media Complex Area)をもっ

て代用するのが普通である(図 3)。これは、内膜と中膜の境界がIVUS 画像ではし ばしば不明瞭であるのに対し、中膜・外膜境界面は明瞭なことが多いがゆえに、内膜

と中膜の断面積を足し合わしたものを Plaque area の代用とすることが国際的に行 われているからである。また、EEM面積を血管断面積(Vessel area)として用いてい る。

さらにIVUSカテーテルは撮像時に一定速度で引き抜くことができる。それにより 一定間隔でのプラーク断面積が測定できすることができるため、一連の断面積を積分 することにより、任意の範囲でのプラーク体積も測定することができる。ただしグレ ースケール画像で、プラークの組織性状をみるには限界があることが示唆された。そ のため組織性状を同定するには、組織固有の音響力学的特性を描出すべく、次に述べ

るような超音波時系列信号の数学的物理学的解析が必要となり、それに基づいてカラ ーIVUSが開発されてきた。

iMAPTM-IVUS によるプラークの組織性状の鑑別

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13

グレースケール IVUS でも、石灰化は 90%以上の感度、特異度をもって鑑別する ことができる。しかしながら線維や脂肪性組織を正確に鑑別することは難しい 35-38。 このため元々の超音波時系列信号(Radiofrequency 信号:RF信号)を解析し、各組織 成分に固有な音響力学的特性を数学的に抽出することで、血管内プラークの組織成分 を鑑別する試みがなされている。信号解析にはフーリエ変換を用いるのが一般的であ る。フーリエ変換とは、信号を変換して、周波数エネルギースペクトルを求める方法

である。解析する信号をx(t)とした場合以下となる。

X(f) = ∫x(t)e-2πjft dt t : 時間、 f : 周波数

すなわち関数x(t)と正弦波関数e-2πjftの積の積分である。∫x(t)y(t) dtの式は、x(t)

と y(t)の相関性をみる一般式である。つまりフーリエ変換は、解析する信号である

x(t)が種々の周波数をもった正弦波とどれだけ似ているのかを全周波数にわたって調 べるという方式である。現在IVUSを用いた組織成分の鑑別のプログラムはいくつか 市販されている。それぞれの違いは、このフーリエ変換によって得られたスペクトル から、組織固有の特性値をどう描出するかの数学的方法論の違いによる。この中で本

研究では Spectral similarity analysis と呼ばれる手法で組織性状を同定する装置

(iMapTM;ボストン・サイエンティフィック社)を用いた。これは時系列信号を分割 して各成分の周波数スペクトルを得たのち、あらかじめデータベース化した各組織成 分に特徴的なスペクトルの形とどれだけ似ているか、ニューラルネットワーク学習理

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論を利用して組織成分同定を行う最新の方式である39(図4)。

目的

今回の研究の目的は、WHHL-MIウサギにおいて、12週間にわたって、GLP-1受 容体作動薬であるリキシセナチドを投与した群と、生理食塩水を投与したコントロー

ル群の2群について、IVUSを投与前後の2回観察し、腕頭動脈プラークの量ならび に組織成分の変化について比較検討することにある。さらに安楽死後に病理標本を作

製し、病理組織学的に2群間を比較検討することで、リキシセナチドのプラークに対 する影響を明らかにすることである。

方法

モデル動物と投与薬剤

動脈硬化モデル動物としてオスの WHHL-MI ウサギを用いた。これらはすべて神 戸大学医学部付属実験動物施設より提供されたものを使用した。前述のように

WHHL-MI ウサギは、ウサギで世界初の心筋梗塞を自然発症するモデル動物である

32。10~12月齢のウサギを神戸大学医学部附属実験動物施設より輸送した後、日本大

学医学研究支援部門ラボラトリーアニマル系動物飼育室ウサギ舎にて飼育した。飼育 室の室温は22±2℃であり、湿度は65±5%に維持されている。照明は午前8時から 午後 8時までの12 時間照射される。ウサギには1頭1日当たり約100gのウサギ用

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普通食(CR-3: 日本クレア株式会社)を与えた。水分の補給には水道水を与えた。

10 頭のWHHL-MI ウサギをコントロール群とリキシセナチドを投与するGLP-1 群

の2群に分けた。リキシセナチドはサノフィ株式会社より提供されたものを使用した。

コントロール群には生理食塩水、GLP-1群にはリキシセナチド30nmol/kg/日を投与 した。10~12 月齢のWHHL-MI ウサギに対し、IVUS で腕頭動脈を観察したのち浸 透圧ポンプ(ALZET osmotic pumps、model 2ML4、Durect Corporation)を用い

て12週間投与をした。なおこれら動物実験は、日本大学医学部実験指針を遵守し、

日本大学動物実験運営内規に準じて行われ、医学部動物実験委員会で認証された(第 AP11M033号)。

血液検査値 について

採血検査については IVUS を行うために必要な動脈シースの挿入時に動脈血を 5ml 採取した。血清を遠心したのち、総コレステロール(Total cholesterol:T-chol) の血中濃度は試薬 L タイプワコーCHO・H(和光純薬工業株式会社)を用いた酵素 法で日立7180型自動分析装置(日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定した。中性 脂肪(Triglyceride:TG)は試薬に L-タイプワコーTG・H(和光純薬工業株式会社)

を試薬に用いて、GPO・HDAOS法、グリセリン消去法で日立7180型自動分析装置

(日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定した。LDLは試薬にコレステストLDL(積 水メディカル株式会社、富士レビオ株式会社製)とオリンパスAU4531(ベックマン・

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コールター株式会社)を用いて測定した。HDLはコレステストNHDL(積水メディ カル株式会社製、富士レビオ株式会社販売)を試薬に用いて、直接法でBio Majaesty

(JCA-BM8060)(日本電子株式会社)とオリンパスAU5431(ベックマン・コール ター株式会社)を用いて測定した。血糖値はクイックオートネオ GLU-HK(株式会 社シノテスト)を試薬に用い、酵素法で日立7180型自動分析装置(日立ハイテクノ ロジーズ)を用いて測定した。リキシセナチド血中濃度は採血後、遠心した後血漿を -20℃で保存後、サノフィ・アベンティス社の研究所で測定を行った。

IVUSによる観察について

IVUSで血管を観察する際には、まず保定したウサギにセボフルラン(丸石製薬株 式会社製)を2~4%の濃度で吸入させ全身麻酔をし、鎮痛・鎮静処置を施した。その 後ウサギの大腿部に2~4cmの皮膚切開を行い、大腿動脈の分離を行った。動脈穿刺 で動脈を確保し大腿動脈に 4Fr 血管造影用シースイントロデューサー(シース)を 挿入した。続けてシースよりヒト冠動脈用ガイドワイヤー(SionblueTM、朝日インテ ック株式会社)を逆行性に下行大動脈より腕頭動脈、右総頚動脈へと通過させたのち、

IVUSプローブカテーテル(2.5F, 40MHz;Boston Scientific社)を、このガイドワ イヤーに沿って挿入した。カテーテルがどの動脈に挿入されているのかの識別は、X 線アンギオグラフィーシステム(東芝メディカルシステムズ株式会社)や、IVUSか らリアルタイムで得られる画像を参考とした。右総頚動脈にIVUSプローブカテーテ

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ルを挿入後、冠動脈ワイヤーを引き抜き、IVUS プローブカテーテルのみを残した。

挿入したIVUSプローブカテーテルを毎秒0.5mmで機械式プルバックシステムを用 いて自動的に引き抜いて撮像した(オートマティック・プルバック)。このときIVUS プローブカテーテルに接続されたIVUS記録器iLAB(Boston Scientific社)により 毎秒30 フレームで画像を記録した。IVUS画像の記録が終わったのち IVUSプロー ブカテーテルをウサギ血管内より引き抜き、IVUSの観察を終了とした。観察終了後、

シース抜去するとともに穿刺部位を縫合し、止血されたことを確認してから、皮膚縫 合を行った。再出血が認められないことが確認できた時点で吸入麻酔を中止し、ウサ ギを覚醒させて初回の実験を終了とした。実験手技中は、心電図、動脈圧を慎重にモ

ニター管理し、術後感染予防とし、セファゾリン 0.1g を静脈内投与した。12週後 2回目のIVUSにおける観察を行った際には、IVUSプローブカテーテルを抜いた後 にシースは抜かずに、深麻酔下で開胸し右心房を切開し脱血すると同時に、心尖部よ

り点滴ルートを挿入し、1Lの生理食塩水をウサギの収縮期血圧で約110mmHgに相 当するように約 150 ㎝の高さから灌流させた。完全に脱血させ生理食塩水で灌流さ せたのち、同様に約10%ホルマリン水溶液500mlを約150㎝の高さより心尖部を介 して灌流固定を行った。灌流固定が十分となったのを確認したのち、弓部大動脈から 腕頭動脈、右総頚動脈を一塊にして摘出し、10%ホルマリン水溶液で固定した。24 時間以上ホルマリンで固定したのち腕頭動脈でパラフィンブロックを作製し、血管に 対して短軸方向に 1 区間を 0.25mm毎に 4μm の厚さで薄切を行い、病理組織切片

(21)

18 を作成した。

IVUS組織成分解析

腕頭動脈起始部から右総頚動脈の分岐部までのプラークについて、IVUSの画像デ ータをQIvus®iMAPTM Full Edition 2.0(Medis Associated bv社)を用いてプラー クの組織成分ついて解析した。同一個体・同一部位において実験前後の2回のIVUS による観察データに対し、0.5mm ごとの Vessel area、Lumen area を測定した。

Plaque areaは前述のとおりVessel area-Lumen areaで求めた。それぞれのプラー ク は QIvus®iMAPTM Full Edition 2.0 組織識別 プロ グラム によ り、 自動 的に Fibrotic:緑色、Lipidic:黄色、Necrotic:赤色、Calcified:青に自動的に識別され る。各Vessel areaにおけるPlaque areaの占有率(%Plaque area、Plaque area/Vessel area)、ならびに同定された各組織成分の面積、ないしプラーク内占有率(各組織成 分area /Plaque area)について、2回のIVUS観察における変化を、コントロール

群、GLP-1投与群で比較した。この2回の観察において、血管分岐部を起点にとり、

その基点からの距離が等しい短軸断面を同一断面であるものとした。

組織染色・解析

作成した切片に対し、Hematoxylin-eosin(H-E)染色、Masson trichrome(M-T)

染色、Elastica van Gieson(EVG)染色を行った。さらにウサギのマクロファージ、

(22)

19

平滑筋を識別する為に免疫染色を行った。1.2気圧に加圧し抗原性賦活化し、5% skim milk でブロッキングを行った後に、一次抗体にモノクローナルマウス抗ウサギマク ロファージ抗体 (Clone RAM-11, x50, Dako North America Inc.)およびモノクロー ナルマウス抗平滑筋 アクチン抗体(Clone 1A4, x50, Dako North America Inc.)を

用いて37℃、60分間反応させた40, 41。一次抗体の希釈にはDako REALTM Antibody Diluent(Dako North America, Inc.)を使用した。二次抗体にHRP標識抗マウス IgG抗体(Dako North America, Inc.)を用い、室温で30分間反応させた。発色に はDAB:3, 3’-Diaminobenzidine, tetrahydrochloride(DAB TRIS tablet, pH7.6, 和光純薬工業株式会社)を用いたDAB法で発色した。顕微鏡(OLYMPUS BX51, DP Controller; 3.2.2.267 オリンパス株式会社)を用いて病理組織切片像をデジタル化 したのちに、画像解析 ソフト(Photoshop CS6 ver. 13. 0. 1, Adobe Systems

Incorporated 社)を用いて標的組織の占有面積を同じ色の部分を自動抽出して測定

した。またEVG染色を用いてEEM area、内弾性坂(Internal Elastic Membrane:

IEM)area、Lumen areaを測定した。Vessel areaはEEM areaで代用した。Plaque areaはIEM area-Lumen areaより求めた。Intima+media areaはEEM area-

Lumen areaより求めた。血管中膜面積(media area)はEEM area-IEM areaより 求めた。また、石灰化の占める面積を計測した。M-T 染色では血管内膜プラークに おける線維成分を示す面積を計測した。線維成分は脂質成分のほとんど認めないコラ ーゲン線維束と定義した。脂質成分は泡沫細胞や細胞外脂質が分散しコラーゲン成分

(23)

20

の少ない部分と定義した。壊死性成分はコラーゲン線維が少なくプラーク成分が乏し く、コレステリン結晶や炎症細胞に富んでいる範囲と定義した。免疫染色は血管内膜

プラーク内のDAB染色したRAM-11陽性部位、1A4陽性部位をそれぞれ計測した。

IVUS 計測データと比較するため、各組織占有率はFibrotic area、Necrotic+lipidic area、Calcified area、Macrophage area、SMC areaのそれぞれをintima+media area と の 比 で 検 討 し た 。 不 安 定 プ ラ ー ク と さ れ る 薄 い 線 維 性 被 膜(Thin cap

fibroatheroma: TCFA)は 65μm 以下の線維性被膜厚を有するプラークとし、この

TCFAを有する組織のスライドの割合を求めた42

iMAP-IVUSと病理組織学の比較

IVUSの信頼性を検討するにあたり病理組織学と相関関係について測定した。病理 組織標本は作成過程による短縮・縮小を考慮し、まずIVUSの撮像断面の位置を腕頭 動脈分岐部から次の分岐部までの距離を分母にとった場合の内分比で算出し、組織の

各スライスの位置についても同様の内分比を算出して IVUS 像のそれと最も近い画 像をIVUS像と対応する画像として選出し、計55ペアのスライスについて比較検討 した。IVUSにおけるVessel area、Lumen area、Plaque areaを病理組織学標本か ら得られたVessel area、Lumen area、intima+media areaとそれぞれ比較した。

また、組織成分についてはIVUSにおけるFibrotic area、Calcified area、Necrotic

+lipidic areaについてそれぞれに相応する病理組織学標本から得られた測定値との

(24)

21

相関関係を求めた。IVUSにおけるFibrotic areaは病理組織標本で得たFibrotic area と比較し、Necrotic+lipidic areaは病理組織標本におけるNecrotic+lipidic areaと 比較した。Calcified areaは病理組織標本におけるCalcified areaと比較した。また、

Necrotic+lipidic area、Necrotic area、Lipidic area は病理組織標本における Macrophage areaとも相関関係を比較した。

統計処理について

同一個体の血液検査やIVUSデータと採血測定値は初回と12週間後を比較する際 には、対応のある2群間のStudent-tテストを用いた。コントロール群とGLP-1群 の比較では対応のないStudent-tテストを用いた。各データは各個体より複数個収集 されるが、実験動物のgenuine性を考慮して、全体を合わせて2群として比較した。

頻度の比較については統計解析にはFisher’s exactテストを用いた。相関関係につい てはピアソン相関係数を用いた。統計解析は統計ソフトJMP 9(Version 9. 0. 0、SAS Intitute Inc社製)を用いて検定し、p < 0.05を有意とした。数値は平均値±標準誤 差で示した。

結果

体重について

Baselineにおいて体重はコントロール群3.18±0.08 ㎏、GLP-1 群3.25±0.08 ㎏

(25)

22

であり、2 群間に有意な差は認めなかった。4、8、12 週間後の各時点においても 2 群間に有意な差は認めず、12週後の体重はそれぞれ2.89±0.06kg、2.91±0.07kgで あった(図5)。

血液検査値について

Baseline において T-chol、LDL、HDL、TG の脂質プロフィールはコントロール群

とGLP-1群の2群間において有意な差は認めなかった。12週間後においてはTGを

除いて脂質プロフィールは 2 群間に有意な差は認めなかった(表 1)。随時血糖につ いては Baseline においてコントロール群は 123.2±7.6mg/dl、GLP-1 群は 121.4±

4.8mg/dlで2群間に有意な差は認めなかった。12週間後においてもそれぞれの値は、

114.2±5.8mg/dl、110±5.4mg/dlで2群間に有意差は認めなかった(図6)。リキシセ ナチドの血中濃度は Baseline におい測定濃度以下であったが、投与開始後一定の血 中濃度をもって推移した。この血中濃度は4週目以降有意な変化はなかった(図7)。

IVUS解析結果

コントロール群40画像、GLP-1群35画像について検討した。Baselineにおける Vessel area、Plaque area、Lumen areaはいずれもGLP-1群において大きかった が、%Plaque area に差は認めなかった。iMAP を用いた組織解析では Baseline で、%Fibrotic area、%Lipidic area、%Necrotic area、%Calcified areaは2群間に

(26)

23

有意な差は認めなかった。12週間後では%Fibrotic areaがGLP-1群において有意に 大きかった。一方%Necrotic area, %Calcified areaはGLP-1群においてコントロー ル群と比較し有意に小さかった(表2)。

次に12週間での変化量について2群間で検討した結果(表3)、コントロール群に おいてVessel areaは変化ないものの、Lumen areaは有意に減少し、Plaque area は有意に増大した。GLP-1群ではVessel area、Lumen areaは有意に減少したが、

Plaque areaは変化しなかった(表3)。結果的に%Plaque areaは両群共に増加を認 めるものの有意な差は認めなかった。しかし、Plaque areaの変化を比較するとコン

トロール群はGLP-1群よりも有意に増加した(図8)。図9にはiMAPを用いた組織 成分評価における Baseline と 12 週間後の占有率の変化を示した。%Fibrotic area は コ ン ト ロ ー ル 群 に お い て 有 意 に 減 少 し(-7.63±1.92% vs. -0.43±2.00%, p=0.01), %Necrotic area、%Calcified areaは有意に増加した(%Necrotic area;+7.40

±1.72% vs. +0.34±1.74%, p=0.005、%Calcified area;+0.60±0.36% vs. -0.91±

0.33%, p=0.003)。一方、%Lipidic areaはコントロール群と比較しGLP-1群におい て増加傾向を示した(-0.53±0.39 vs. +0.69±0.52, p=0.06)が、両群ともにBaseline と12 週間後の変化については有意な変化ではなかった(コントロール群; p=0.59、

GLP-1群;P=0.41)。図10、11にはコントロール群、GLP-1群における個々のスラ

イスの変化(Baselineと12週間後)を示した。同色は同じウサギを示す。

(27)

24 病理学解析結果

コントロール群46スライド、GLP-1群41スライドについて検討した。表4はコ ントロール群とGLP-1群の病理学的解析結果を示した。Vessel area、Lumen area、

Plaque area、media area、intima+media area、%intima+media areaについては IVUSの結果と同様に2群間に差は認めなかったが、TCFAの頻度はコントロール群 で21.7%、GLP-1群で4.9%であり、GLP-1群において少なかった(p=0.03)(表4)。

TCFAの典型像を図12に示す。図13では各成分について比較した。%Macrophage area、%Calcified area は コ ン ト ロ ー ル 群 に お い て 有 意 に 大 き く 、%SMC area、%Fibrotic areaはGLP-1群において有意に大きく認められた(%Macrophage area;9.11±0.80% vs. 6.19±0.85%, p=0.01、%Calcified area;3.25±0.67% vs. 0.75

±0.15%, p=0.02、%SMC area;6.93±0.31% vs. 8.14±0.48%, p=0.02、%Fibrotic area;54.7±1.63% vs. 60.6±2.12%, p=0.03)。

IVUS解析と病理学組織的解析の比較

図 14 には IVUS と病理組織の相関関係を示した。Vessel area、Lumen area、

Plaque areaは有意な相関関係を示した(Vessel area;y = 0.438x + 2.549、R = 0.461、

p < 0.001、Lumen area;y = 0.438x + 2.549、R = 0.461、p < 0.001、Plaque area;

y = 0.541x + 1.978、R = 0.803、p < 0.001)。iMAPで得られた各組織成分面積につ いてFibrotic area、Calcified area、Necrotic+lipidic areaはそれぞれの病理組織面

(28)

25

積と有意な相関関係を示した(Fibrotic area;y = 0.594x + 0.630、R = 0.671、p < 0.001、

Calcified area;y = 0.521x + 0.028、R = 0.300、p = 0.01、Necrotci+lipidic area;

y = 0.478x - 0.150、R = 0.797、p < 0.001)。Necrotic + lipidic areaとNecrotic area、

Lipidic area は そ れ ぞ れ Macrophage area と も 有 意 な 相 関 関 係 を 示 し た (Necrotic+lipidic area;y=0.162x + 0.116、R = 0.630、p < 0.001、Necrotic area;y

= 0.190x + 0.141、R = 0.640、p < 0.001、Lipidic area;y = 0.692x + 0.147、R = 0.445、

p < 0.001)。一方IVUSと病理組織で得られる面積は有意にIVUSで大きかった(病理 組織 vs. IVUS、Vessel area;7.96±0.25mm2 vs. 12.37±0.26mm2, p<0.001, Lumen area;2.47±0.13mm2 vs 5.41±0.19mm2, p<0.001, Plaque area;5.49±0.16mm2 vs.

6.50±0.24mm2, p<0.001, Fibrotic area;3.22±0.10mm2 vs. 4.36±0.11mm2, p<0.001, Calcified area ; 0.10 ± 0.02mm2 vs. 0.14 ± 0.01mm2, p<0.001, Necrotic+lipidic area;0.90±0.14mm2 vs. 2.16±0.23mm2, p<0.001)。図15にコン トロール群とGLP-1群のbaselineと12週後のIVUS 画像および同部位に一致する 組織画像を示す。(A~E はコントロール群、F~Jは GLP-1 群を示す。コントロール 群のBaselineと12週後を比較するとNecrotic areaが増加し、Fibrotic areaが減少 している。Calcified の周辺には Necrotic を認める(A、B)。EVG 染色では IVUS と一致して石灰化所見を認めマクロファージに対する免疫染色では Necrotic に一致 してマクロファージの集積を認めた(B:赤矢印、E:赤矢印)。GLP-1群ではBaseline と比較し、Necrotic、Lipidic が軽度増加しているもののコントロール群と比較し

(29)

26

Fibrotic の減少は乏しい(F、G)。IVUS および EVG 染色では明らかな石灰化所見

は認めず、コレステリン結晶はIVUSにおけるLipidicに一致して認めた(G:黒矢 印、I:黒矢印)。平滑筋αアクチンに対する免疫染色では、コントロール群、GLP-1 群とともに厚い平滑筋αアクチン陽性の平滑筋細胞の層を認めた(D、I)。IVUS で

は厚い Fibrotic を認め、構成組織の一つである平滑筋細胞が存在していることにつ

いて矛盾しない所見であった。視覚的にもIVUS と病理組織像の蓋然的一致を認め、

GLP-1 群はコントロール群と比較し、プラークの安定化がもたらされていることを

示唆する結果であった。

考察

本研究では、遺伝性高コレステロール血症ウサギ WHHL-MI に対してリキシセナ チドの投与を 12 週間行い、その投与前後における腕頭動脈の動脈硬化病変を IVUS で観察した。その結果、リキシセナチド投与によりプラーク量の増加は抑えら れ、%Necrotic areaの増加、%Fibrotic areaの減少を抑制できた。さらに剖検によ る病理学的検討の結果として、リキシセナチド投与群はコントロール群に比しマクロ ファージの浸潤、Calcified areaは少なく、SMC、線維成分を多く認めた。このこと はリキシセナチド投与により動脈硬化進展抑制ならびにプラークの安定化作用のメ カニズムを示唆する。

(30)

27

GLP-1受容体作動薬が及ぼす体重、血糖、脂質プロファイルなどについて

GLP-1 受容体作動薬は中枢神経系に作用して、摂食抑制より体重減少を引き起こ

すと報告されているが、非糖尿病モデルを用いた過去の実験では、GLP-1 受容体作 動薬投与群は、体重、血糖値、インスリン濃度に対し明らかな影響を示さなかった27,

43, 44。健常状態では GLP-1 受容体作動薬が糖代謝に大きく影響を与えないことが推

察される。この報告は、本研究におけるコントロール群と GLP-1 群において体重や 血糖値に差がなかったという結果を支持するものである。

一方、脂質プロファイルにおける TGはコントロール群に比べ GLP-1群において 低値であった。GLP-1 受容体作動薬は前述のとおり摂食抑制や腸管での TG 吸収抑 制作用があることから、GLP-1 群では摂食抑制や TG 吸収抑制を通じて血中 TG が 減少した可能性がある。血中TG濃度は動脈硬化病変に大きく影響するため、GLP-1 群における動脈硬化進展抑制作用は、GLP-1の直接作用だけでなく、TG低下作用を 介してみられた可能性があることも考慮すべきであろう。

GLP-1 は腎ナトリウム排泄増加作用が報告されているが、Gaspari らの報告にお

いてApo-E欠損マウスにGLP-1受容体作動薬を投与しても血圧の明らかな低下は認

めなかったとの報告がある。本研究では実験中にモニタリングしていた血圧に関して は、GLP-1 群はコントロール群と比較し、血圧の有意な低下は認められなかった。

したがって本研究において GLP-1 群では、腎ナトリウム排泄増加作用による血圧変 動からのプラークへの影響は小さいと考えられる。。

(31)

28

GLP-1受容体作動薬による抗動脈硬化作用について

GLP-1受容体作動薬の1つであるExendin-4は、血管をバルーン擦過したマウス

モデルにおいて内膜の過形成を抑制した43, 46。このモデルはバルーン擦過することで 内膜に炎症を起こし、その後の新生内膜の修復過程をふむことで動脈硬化の進展を模

擬したモデルである。また、Arakawaらの報告したApo E 欠損マウスを用いた動物 実験では、Exendin-4は大動脈洞の動脈硬化の抑制を示した27。これらの報告は動脈 硬化の少ない初期のものを対象としているが、GLP-1 受容体作動薬に動脈硬化進展 抑制作用があることを示した。GLP-1 受容体作動薬による抗炎症作用のメカニズム

についてはいくつか報告されている。ヒトにおける報告では GLP-1 受容体作動薬が 活性化マクロファージにおける炎症メディエーターである TNF-αと MCP-1を減少 させることが報告された47, 48。Arakawaらの報告では、GLP-1受容体作動薬が大動

脈壁におけるICAM-1とVascular cell adhesion molecule-1 ( VCAM-1)の発現を抑 制し、単球/マクロファージ内におけるアデニル酸を活性化させることで cAMPが産 生され、cAMP/Protein kinase A (PKA)経路を介してcAMPがPKAを活性化し、NF- κB p65を抑えることで、マクロファージの炎症反応を抑えることを示した。Gaspari らによる報告では GLP-1受容体作動薬は TNF-α関連ICAM-1、VCAM-1を減少さ せendothelial nitric oxide synthase (eNOS)を増加させる。また、TNF-α関連NF κB を抑制することも報告された 49。更に Liu らは、GLP-1 受容体作動薬は TNF-

(32)

29

α関連Plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1)、ICAM-1、VCAM-1を抑制する ことを報告した50。このような機序によりGLP-1受容体作動薬は抗炎症作用を示し、

動脈硬化の進展予防を示すと考えられる。本実験では動脈硬化が進んでおり、実臨床 で遭遇する病態により相似する実験モデルと考えられる。Panjwaniらによるとスト

レプトゾトシンを用いて糖尿病モデルを作った Ape E 欠損マウスでは、動脈硬化が 進行した時点から GLP-1 受容体作動薬を投与しても大動脈洞のプラーク面積は減少 せず、また、大動脈洞および大動脈弓部のマクロファージ面積を減少させることがで

きなかったと報告している。しかし、血清 IL-6 はコントロールと比較し有意に減少 を示した51。一方、Gaspariらによると、動脈硬化の進んだApo E 欠損マウスでは

GLP-1 受容体作動薬は動脈硬化プラークの増大は抑えることはできなかったが、プ

ラークの安定化がみられたことを示した 45。ただ Panjwaniらの実験では GLP-1受 容体作動薬の投与量が少なかったことがマクロファージ浸潤を抑えられなかった 1 つの原因ではないかと推察されている。本研究において IVUS の観察結果から、

GLP-1受容体作動薬はプラークを縮小させることが困難であったが、病理組織学的、

iMAP-IVUSの両アプローチからもプラークの増殖を抑制し、さらにプラーク性状を

安定化させることが示された。iMAP-IVUS において、コントロール群と比較し

Vessel areaおよびLumen areaが有意に低下していた。ヒトにおける研究では、ス

タ チ ン 投 与 に よ る プ ラ ー ク 量 の 退 縮 の 際 に は Vessel area も ま た Reverse remodelingにより減少することが知られている52。Positive remodelingしている血

(33)

30

管ほど不安定なプラークを有していることが多いとされ、Reverse remodeling はプ

ラーク安定化の一つの指標として考えられている。本研究では GLP-1 受容体作動薬 によってPlaque areaの退縮より先にVessel areaの減少がみられ、結果的にLumen areaは減少した。GLP-1 受容体作動薬では、プラークの退縮と安定化は平行してい ないのかもしれない。

本研究は、過去に報告されている GLP-1 受容体作動薬によるプラークの進展予防 とプラークの安定化効果について、WHHL-MI ウサギでもみられることを示した。

脂質低下療法によるプラーク安定化・退縮作用の機序については種々の報告がされて いる 53。HDLによるコレステロールの逆転送系、脂質を含んだマクロファージのリ

ンパ系への逃避助長作用、血中の種々の acceptor による細胞内脂質の直接的な血中 流出、いわゆるhealthyなマクロファージによる脂質コアの成分の回収などの機序が 明らかにされている。GLP-1 のプラーク安定化作用が、これらのメカニズムとどう 関与しているかについては今後の検討が待たれる。

またプラーク量の変化については、これら組織成分の減少によりプラーク量も減少 するという結果としてみることができるが、時にある組織成分が他の成分に置換され ることにより、プラークの絶対量に大きな変化が起こらない場合があることも想定す る必要がある。プラーク安定化により、脂質含有量が減るだけでなく線維成分が増加 することにより、結果としてプラーク量はそれほど変化しないこともありえるわけで、

本研究において、プラーク量の変化が2群間でそれほど大きくみられなかったのは、

(34)

31

その理由によることも考慮されなければならない。

iMAP-IVUSと病理組織学の相関性について

IVUSの定量評価に関する正確性については以前より多く報告されている54, 55。し かし、病理組織学では組織標本を作製するまでに多くの過程(脱水、透徹、包埋、薄 切、染色)をこなす必要があり、生体内の血管よりも縮小することが報告されている。

56。また、IVUSは生体内で観察を行うためウサギの血圧がある状態で観察を行った。

病理組織標本を作製する際はウサギの収縮期血圧である約110mmHgに相当する高

さ150cmより還流固定を行ったが、脱血後のためより末梢血管が拡張し、末梢血管

抵抗が得られないために想定の圧力が得られず、腕頭動脈が十分拡張せずに固定され、

病理組織標本はIVUSよりも小さい結果となった可能性も考えられる。IVUSで得ら れたプラーク量に関する所見は病理組織学標本で有意に縮小していたものの、両者間 に良好な相関関係を示し、過去の報告を支持するものであった。組織評価のできる

iMAP-IVUSと病理組織学の正確性についてはSathyanarayanaらによって報告さ れ、病理組織学と比較したaccuracyは壊死性組織で97%、脂質成分で98%、線維成

分で95%、石灰化成分で98%であった39。本研究も相関関係をみたところ、各成分

面積(Fibrotic area、Calcified area、Necrotic+lipidic area)は良好な相関関係を示 した。また、マクロファージの浸潤はiMAP-IVUSにおけるNecrotic area、Lipidic areaとNecrotic+lipidic areaと相関関係を検討した。なお壊死組織と脂質組織を分

(35)

32

離は困難なことからLipidic area、Necrotic+lipidic areaとも比較を行い良好な相関 関係を得た。一方TCFAの存在診断についてVirtual Histology (VH)- IVUSを用い た検討では、アテローム容積率が40%以上,かつnecrotic coreが10%以上であり,

かつ内腔に接しており,さらにそのイメージが3 断面以上で観察されるものとされ ているが、iMAP-IVUSにおいて定量的診断基準についての報告はされておらず、一

定の見解が得られていない57, 58。本研究においてBaselineの段階でTCFAがすでに 存在していたかどうかについては検討することは不可能であるが、VH-IVUSにみら

れるようにiMAP-IVUSにおいても%Necrotic areaがTCFAで大きいことが考えら える。本研究ではBaselineにおいて%Necrotic areaは2群間で同等であった為、

TCFAの存在に差はなかったと予測され、12週間後にコントロール群で%Necrotic areaが増大し、病理組織像でTCFAの頻度が増大したことはGLP-1受容体作動薬が プラークの進展を抑制した可能性を示唆する所見と考えられる。

本研究の限界

本研究においていくつかの限界がある。1 つ目に、IVUS 解析における Baseline においてVessel area、Lumen area、Plaque areaに差を認めたことである。同月齢、

同体重のウサギを用いたため、個体差は少ないと考え、事前に無作為にコントロール 群、GLP-1 群と分けて実験を行ったため、意図的にこれらの数値を 2 群間で合致さ せる操作は行っていない。しかし、プラーク占有率や各組織成分占有率に関しては差

(36)

33

を認めなかったことより、Baselineと12週間後の比較は絶対値による評価ではなく、

占有率の変化値による比較を行うことが可能であった。ただGLP-1群のBaselineの プラーク量がコントロール群よりも有意に大きかったにも関わらず、GLP-1 群でプ ラーク量や組織性状に関して、安定化を示唆する結果が得られたことは、むしろ特筆 すべきであることであると考える。2つ目に、iMAPによる組織成分解析は画像転送

技術の制約上0.5mm毎でしか行えなかった。3つ目にBaselineと12週間後の組織 成分の変化をみるに当たっては、血管分岐点やそれからの距離を参考にして観察部位 のマッチングを図ったが、この撮像上の制約や、各撮像時のカテーテルの挿入角度の

違いから、完全に同一の断面を見ているとは限らない。4つ目に、石灰化については、

超音波の性質上後方に音響陰影を引くため、石灰化そのもの、ならびにその後方の組 織成分についての定量における正確性が損なわれる。幸いなことに本実験では石灰化 はプラークの表層ではなく、深層に認めたため、影響は少ないと考える。5 つ目に、

IVUSと病理組織の一致についても、血管分岐点やそれからの距離を参考にしてマッ チングを図ったが、完全に同一の断面を見ているとは限らない。また前述したように、

病理組織の各成分がプラーク内で占める面積は組織標本作製中に縮小している可能

性も考慮する必要がある。6つ目に、本研究では 2群ともBaselineのIVUS後にす ぐに死亡する例が多く、結果として両群5 頭ずつと少ない頭数で行った検討であり、

体積での評価は十分なデータ数を確保できなかったため行わなかった。面積での評価 はデータ数が確保できるものの、断面位置の違いですぐに数値が異なるという限界が

(37)

34

ある。そのため本研究ではBaselineと12週間後での断面位置については血管分岐部 を参考にしてその内分比などを考慮にいれ、できるだけ厳密に部位を一致させるよう

に注意を払った。7つ目にウサギの冠動脈はIVUSで観察するには小さく、大動脈で はヒト冠状動脈より大きく、IVUSで十分な観察が困難であった。そこで本研究では ウサギ末梢動脈の中でもヒト冠動脈に近く、プラークも十分認められる腕頭動脈を観 察した。しかし血管構造や血行動態が異なるため、プラークの性状や進展・退縮過程 はヒト冠状動脈と同一ではないことを考慮する必要がある。

結論

遺伝性高コレステロール血症ウサギに対して30nmol/kgのリキセナチド投与を12 週間行い、IVUSで観察した結果、プラーク量の進展を抑制し、プラークの安定化に も寄与している可能性が示唆された。GLP-1 受容体作動薬は、ヒト冠動脈プラーク に対しても増殖抑制、安定化作用を示し、急性冠症候群の発症抑制に寄与する可能性 がある。

謝辞

稿を終えるに臨み、研究に際しご指導、ご校閲を受け賜りました平山篤志教授に深 く謝意を表すとともに、本研究遂行に際し直接ご指導いただきました李予昕助教、廣 高史准教授ならびに杉谷雅彦教授、三俣昌子客員教授、研究に際しご協力いただいた

(38)

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神戸大学大学院 塩見雅志准教授、その他教室の諸兄に心からの感謝の意を表します。

また研究の現場で常に協力して尽力していただいた谷口由樹氏、高橋理恵氏に厚く御 礼を申し上げます。本研究は科学研究費、基盤(C)No. 25461093 ならびに 25461094 の助成を受けて行われた。

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36

表1:採血データの比較

Baseline 12 weeks

Control GLP-1 P Control GLP-1 P

T-chol (mg/dl) 1048.0±70.0 1078.8±92.9 0.80 904.8±69.8 1118.0±105.2 0.13 LDL (mg/dl) 847.0±34.7 823.2±72.8 0.78 719.0±39.3 876.0±63.0 0.07

HDL (mg/dl) 6.8±0.4 6.0 ± 0.0 0.10 7.0±1.0 8.0 ±1.2 0.71

Triglyceride (mg/dl) 232.2±40.1 245.2±33.5 0.81 163.2±25.3 107.0±4.6 0.02 Total protein (g/dl) 5.6±0.2 5.5±0.1 0.64 5.7±0.4 6.0±0.2 0.66 BUN (mg/dl) 19.2±0.7 24.6±2.7 0.06 19.7±0.3 18.4±2.1 0.14 Creatinine (mg/dl) 0.86±0.09 1.03±0.10 0.25 0.93±0.08 0.83±0.05 0.32

AST (U/l) 28.6±9.7 21.4±5.6 0.54 17.0±3.3 20.4±1.5 0.38

ALT (U/l) 50.4±13.1 51.4±12.3 0.96 92.6±64.4 36.4±4.4 0.68 LDH (U/l) 271.4±83.9 121.0±30.3 0.13 184.4±37.9 232.4±41.1 0.42 Na (mmol/l) 139.4±0.7 143.2±1.3 0.04 140.8±1.6 143.4±1.0 0.21 Cl (mmol/l) 100.0±2.0 103.2±1.0 0.18 100.0±1.1 101.6±1.6 0.44

K (mmol/l) 3.6±0.2 3.4±0.2 0.58 3.2±0.4 3.6±0.3 0.48

T-chol:総コレステロール、LDL:低密度リポタンパク、HDL:高密度リポタンパ ク。数値は平均±標準誤差で表示。p値はコントロール群 vs. GLP-1群を示す。

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表2:iMAP-IVUSによる血管プロフィールおよび各組織成分の比較

数値は平均±標準誤差で表示。p値はコントロール群 vs. GLP-1群を示す。

Baseline 12 weeks

Control GLP-1 P Control GLP-1 P

Vessel area (mm2) 12.46 ± 0.36 14.24 ± 0.41 <0.01 12.22 ± 0.32 11.64 ± 0.32 0.20 Lumen area (mm2) 7.17 ± 0.21 8.15 ± 0.29 <0.01 5.72 ± 0.18 5.58 ± 0.26 0.26 Plaque area (mm2) 5.28 ± 0.23 6.09 ± 0.27 0.03 6.49 ± 0.27 6.06 ± 0.27 0.26

% Plaque area 42.04±1.16 42.70±1.20 0.70 52.09 ± 1.38 52.14 ± 1.56 0.98

% Fibrotic area 73.78 ± 1.64 75.57 ± 1.90 0.48 66.3 ± 2.06 75.14 ± 2.62 <0.01

% Lipidic area 6.60 ± 0.59 4.97 ± 0.59 0.06 6.20 ± 0.44 5.67 ± 0.58 0.45

% Necrotic area 16.08 ± 1.25 15.83 ± 1.45 0.90 23.25 ± 1.87 16.17 ± 2.27 0.02

% Calcified area 1.55± 0.29 1.9 ± 0.32 0.40 2.15 ± 0.24 1.00 ± 0.18 <0.01

% Necrotic+lipidic area 22.68 ± 1.59 20.80 ± 1.83 0.44 29.45 ± 2.13 21.83 ± 2.60 0.03

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38 表3:iMAP-IVUSによる変化の比較

Control GLP-1

12 weeks - Baseline p 12 weeks - Baseline P

Vessel area (mm2) -0.23 ± 0.26 0.62 -2.61 ± 0.25 <0.01 Lumen area (mm2) -1.45 ± 0.23 <0.01 -2.58 ± 0.21 <0.01 Plaque area (mm2) +1.22 ± 0.17 <0.01 -0.03 ± 0.11 0.94

% Plaque area +10.16 ± 1.15 <0.01 +9.44 ± 0.83 <0.01

% Fibrotic area -7.63 ± 1.92 <0.01 -0.43 ± 2.00 0.90

% Lipidic area -0.53 ± 0.39 0.59 +0.69 ± 0.52 0.41

% Necrotic area +7.40 ± 1.72 <0.01 +0.34 ± 1.74 0.38

% Calcified area +0.60 ± 0.36 0.12 -0.91 ± 0.33 0.04

% Necrotic+lipidic area +6.78 ± 1.82 0.01 +1.03 ± 2.14 0.70

数値は平均±標準誤差で表示。P値はBaseline vs. 12 週後を示す。

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39

表4:病理組織学による比較

Control GLP-1 P

Vessel area (mm2) 8.35 ± 0.39 8.45 ± 0.31 0.84

Lumen area (mm2) 2.52 ± 0.18 2.67 ± 0.14 0.32

Intima area (mm2) 4.44 ± 0.22 4.46 ± 0.27 0.97

Media area (mm2) 1.39 ± 0.05 1.33 ± 0.03 0.33

Intima / media ratio 3.44 ± 0.23 3.43 ± 0.24 0.99

Intima+media (mm2) 5.83 ± 0.22 5.79 ± 0.27 0.91

% intima+media area (%) 71.16 ± 0.97 68.01 ± 1.34 0.06

Incidence of thin cap fibroatheroma (%) 21.7 4.9 0.03

数値は平均±標準誤差で表示。

(43)

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図1:GLP-1の各臓器に及ぼす作用

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図2:本研究で用いたIVUSシステム

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42

図3:IVUSによる血管の評価

図 1:GLP-1 の各臓器に及ぼす作用
図 2:本研究で用いた IVUS システム
図 3:IVUS による血管の評価
図 4:iMAP-IVUS によるプラークの組織評価
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参照

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