確固とした法的存在「医療生協」
一「大塚鑑定書」 「埼玉県医師会所見」を批判する一
中 田 直 人
開』で法学博士号を授与され,昭和48年から55年 1.はじめに まで最高裁判所裁判官であられ,我国の協同組合
研究の権威者である大塚喜一郎博士」の「鑑定意
「埼玉県徳洲会医療生活協同組合に関する法律 見」を最大のよりどころに,埼玉県医師会は,1982 上の諸問題」と題する「鑑定書」がある。 「法学 年8月19日会長福島茂夫の名で「埼玉徳洲会医療 博士大塚喜一郎」が「昭和57年7月22日」付で作 生活協同組合の認可の可否についての埼玉県医師 成したものである。「大塚鑑定書」とよぶことに 会の所見」を発表した。もちろん埼玉徳洲会医療 する。 生協を認可すべきでないという結論であるが,
主たる事務所を大阪府大東市におき,大阪府下 「大塚鑑定書」より以上に「医療生協を医療機関 各地,福岡県,京都府,神奈川県に徳洲会病院等 として認めない」という理由を前面に押し出して の名称で病院を開設する医療法人徳洲会が,1982 いた。
年(昭和57年)4月埼玉県に病院開設を企画し, 同様な論調は,日本医師会理事門倉好文のラジ 医療生協方式で設立認可の申請をしたことは,大 オたんぱ「特別医学講座」の放送でも展開され,
きな社会的話題をよぶとともに,医療行政上も, その内容は,『日本医師会雑誌』1982年11月15日 法律的観点からもさまざまな問題を提起した。徳 号に「医療法による医療法人と消費生活協同組合 洲会グループが組織的営利活動の実態をもってお 法による医療生活協同組合」という論文で発表さ
り,埼玉徳洲会医療生協が役員構i成でも医療法人 れた。
徳洲会の現役員を予定しているなど,これを認可 埼玉徳洲会医療生協は,結局,1982年10月埼玉 することには,正しい生協運動に異質なものを投 医療生活協同組合と名称を変えて設立認可され,
入して,その発展を妨げる危険があった。だから 翌年8月には羽生市に埼玉医療生活協同組合羽生 日本生活協同組合連合会医療部会もまた,行政当 病院の開設も認可された。
局の適切な指導を強く求めていた。 しかし,これまでみてきたように,埼玉徳洲会
「大塚鑑定書」は,この時期埼玉県医師会の求 医療生協の認可をめぐって,医療生協違法論とも めに応じて作成されたのである。埼玉徳洲会医療 いうべき議論が公然化されたことは,記憶されて 生協の認可問題にかぎっていえば,その指摘にもっ おいてよい。医療生協運動の民主的発展を望まな ともな点がないわけではなかった。しかし,「大 い人びとのなかで,いつもくすぶりつづけてきた 塚鑑定書」の底には,医療生協そのものを認めた ある種の思惑が,一面大義名分となりうる徳洲会
くないという,頑迷な考えが横たわっていた。 批判という絶好の機会をとらえて,一気に表面化 埼玉県医師会は,「医療生活協同組合の設立は, したからである。もともと医療生協違法論などは,
消費生活協同組合法と医療法との整合性について まったく道理のないものであるから,その後いわ 問題があり,消極に解すべきである」という「大 ゆる「医療生協規制」の政治的進行のなかで,公 塚鑑定書」の特定部分に大きな関心を示した。 然と議論されることはむしろなかった。ただこの
「「協同組合法の比較法史的考察と基礎理論の展 種の議論は,とくに員外利用の問題などともから
んで,おりにふれて浮上する可能性がある。 いから,「協同組合法と医療法との整合性につい そこでこの機会に,医療生協違法論の誤りを明 て問題があり」,医療生協は是認されない,とい 白にし,医療生協の法律的根拠についての確信を うだけなのである。
いっそう強固にしたいと考える。 まず,その甚だしい認識不足を指摘しなければ
ならない。2.「整合性」論の不整合 1919年(大正8年)島根県鹿足郡に青原村信用 購買販売利用組合が,医療事業を行う最初の産業 たしかに大塚喜一郎は,協同組合法の権威と目 組合として設立されたことは,よく知られた歴史 されている。しかし,「権威」がつねに正しいと 的事実である。1937年(昭和ユ2年)の調査による いうわけではけっしてない。 と,22市356町1960村に1461の医療機関をもつ産
「大塚鑑定書」はいう。 業組合が活動していたという (日本生協連医療部
「一般に,病院又は医師若しくは歯科医師が常 会『医療生協ハンドブック』)。第二次大戦後の 時3人以上勤務する診療所を開設しようとする社 1948年消費生活協同組合が制定されると,戦前か 団又は財団は,医療法所定の手続を経て法人格を ら活動していた八王子相互診療組合(現医療生協 取得することができ,右法人は,医療法人として 多摩相互病院)や東京医療利用組合(現東京医療 同法の規制をうけるが(同法39条),最近僅かな 生協)は,いちはやく消費生活協同組合法のもと 事例ではあるが,消費生活協同組合(以下, 「生 での医療生協として活動をはじめ,「大塚鑑定書」
協組合」という。)を設立して病院又は診療所に の当時1982年には,130の医療生協が現存してい よる組合員の医療を目的事業とする企画がある。 た。医療生協の存在と活動は,「最近僅かな事例」
か・る医療生活協同組合の設立は,消費生活協同 などではけっしてないのである。
組合法(以下,「生協法」という。)に照らして 事実をみることなくして,あるいはただちに判 是認することができるかどうかは,協同組合法と 明するような事実を調査しようともせず,ことを 医療法との整合性について問題があり,むしろこ 断ずるのは,「権威」のすることではけっしてな れを消極に解すべきであると考える。医療法31条 い。
は,都道府県,市町村その他厚生大臣の定める者 そればかりでなく,「大塚鑑定書」には法律家 が公的機関として病院又は診療所を開設すること の意見として致命的な欠陥がある。
ができるものとし,同法7条の2によれば,国家 「大塚鑑定書」は,「生協組合については,
公務員共済組合法,公共企業体職員等共済組合法, 病院又は診療所開設是認を伺わせる規定が存在し 農林漁業団体職員共済組合法,政令で定める法律 ない」ことを理由づけるために,医療法31条と7
に基づき設立された共済組合,健康保険組合,国 条の2を引いている。医療法31条は,医療体系に 民健康保険組合,日本国有鉄道,日本専売公社, おける「公的医療機関」の役割を示すための章で,
日本電信電話公社,労動福祉事業団又は簡易保険 「都道府県,市町村その他厚生大臣の定める者の 郵便年金福祉事業団の開設する病院に関する許可 開設する病院又は診療所」を「公的医療機関」と 制限の規定を設けているが,生協組合については, 定義づけただけの規定である。また,医療法7条 病院又は診療所開設是認を伺わせる規定が存在し の2は,「公的性格を有する病院の開設等を規制 ない。したがって実定法の解釈上,いわゆる医療 してその地域的偏在を防止し,医療機関の計画的 生協を是認していない,と考えるべきである。」 整備を図ることを目的として」 (昭和39年4月1
(医療法39条は,その後改正されている) 日付厚生省事務次官通知),1962年の医療法改正
「大塚鑑定書」は要するに,医療法には生協組 で「公的医療機関」および社会保険関係団体の病
合が病院,診療所を開設してよいという規定がな 院等の開設に規制を設けたものである。どちらも
中田:近確固とした法的存在「医療生協」 53
公的な性格をもつ医療機関についての特別規定で あり,消極に解すべきである」という部分を引用 あって,病院または診療所を開設できるのはだれ し,さらに「生協法第10条は,組合が行いうる事 か,開設できないのはだれかなどとは,まったく 業の種類を定めているが,そこには医療施設の利 無関係なものである。本来無関係な規定をいくら 用事業は記載されていない」などという「検討」
寄せ集めても,論理的「整合性」が生まれるはず を加えたうえ,「医療法は,いわゆる医療生協を はない。 「大塚鑑定書」は,医療生協の病院また 医療機関として是認していない。従って,医療法
は診療所開設が医療法上是認されていないことの の認めない医療機関を生協法が是認するというの ,
論証に,完全に失敗しているのである。 は医療法の脱法行為であって違法である」と結論 もっとも「大塚鑑定書」は,「昭和29年1月18 づけるのである。
日医収第9号医務局長発熊本県知事宛回答」が 要は「埼玉県医師会所見」は,「大塚鑑定書」
「当該医療生活協同組合が組合員のみを診療の対 を少しく 発展 させ, 生協法は医療機関開設 象とする共同利用施設として病院又は診療所を開 を予定せず,医療法は生協を医療機関として是認 設するものである限り,その病院又は診療所の開 せず といいたいのである。そして,このことは,
設は,許可してさしつかえない」としている点を 消費生活協同組合法には医療施設の利用が明示さ 引き,「行政指導上は積極説を採用しているよう れておらず,医療法には消費生活協同組合のこと である」と認めている。ほんとうは大塚は,消費 が書かれていない,というだけのことなのである。
生活協同組合法が医療機関の開設を予定していた この論法の誤りはただちに明白となる。
ことを知っていたにちがいない。だから「大塚鑑 医療法のどこにも大学や学校法人のことはあら 定書」は,医療法の解釈の範囲でだけことを論じ われない。 「大塚鑑定書」にいう医療法31条にも,
ており,しかも自説が医療「行政指導上」採用さ 7条の2にも大学や学校法人は掲げられていない。
れていないことを付言せざるをえなかったのであ そして,学校教育法では「大学には,研究所その る。 他の研究施設を附置することができる」 (61条)
この態度と対比して「埼玉県医師会所見」は, とはあるが,病院または診療所の開設は明示され より 率直 に医療生協否定の論理をあらわにす ていない。私立学校法にも医療機関のことは出て る。 「埼玉徳洲会医療生活協同組合は,消費生活 こない。
協同組合法に基づいて医療施設の設置とその利用 「大塚鑑定書」や「埼玉県医師会所見」の論法 事業を目的として法人格を取得せんとしているも にしたがえば,大学や学校法人については,「病 のでありますが,果して消費生活協同組合法は, 院又は診療所開設是認を伺わせる規定が存在しな か・る医療事業を行う団体にも適用されるのであ い」し, 学校教育法は医療機関開設を予定せず,
りましょうか。第一の問題点はここにあります。 医療法は大学,学校法人を医療機関として是認せ また,医療事業を行う団体で法人格を取得する場 ず ということになる。
合には,医療法があり,公的医療機関も医療法に 「大塚鑑定書」も「埼玉県医師会所見」も,大 その根拠を有するのであります。医療法こそは, 学病院の存在を否定するつもりはないだろうし,
医療機関並びに医療施設に関する根本法規なので 否定できるわけのものではあるまい。そうであれ あります。そうであるとすれば,医療法と消費生 ば,「大塚鑑定書」も「埼玉県医師会所見」も,
活協同組合法との整合性をどのように理解すれば 自ら不整合性を暴露しているといわなければなら よいのでありましょうか。第二の問題はここにあ ない。
ります。」こうして「埼玉県医師会所見」は,
「大塚鑑定書」の「医療生活協同組合の設立は,
消費生活協同組合法と医療法との整合性に問題が
合もまた,法人格を認められている以上,医療機 3.医療生協の法律的基礎 関の開設者となる資格に欠けるところがないので
ある。
医療生協は,医療活動を行う生活協同組合であ それだけでなく,医療生協は長い伝統と歴史を る。当然に病院,診療所の運営をおもな事業とす もち,法律的にも明確な根拠をもって存在してき る。その存立の基礎は,消費生活協同組合に基づ たのである。
いており,医療機i関としての認許は医療法にした すでに1874年(明治7年)の太政官布告医制は,
がっている。 その25条で「一府県或ハ有志人民協同シテ病院ヲ 医療法が医療機関ならびに医療施設に関する 建設セント欲スル時ハ先ッ発起人,社中ノ人員,
「根本法規」であるという「埼玉県医師会所見」 医師教員ノ属籍姓名履歴及ヒ会社ノ方法,資金ノ は認めてよい。ただし,消費生活協同組合法と医 縁由保続ノ目的ヲ記シ治療学問ノ課種病室薬局ノ 療法とは,昭和23年7月30日,前者は法律第200 規制ヲ附シテ地方官二出シ,地方官之ヲ衛生局二 号として,後者は法律第205号として同じ日に成 議シテ文部省二達シ以テ許可ヲ受クヘシ」と定め,
立し,のちにのべるように,消費生活協同組合法 組合組織の医療機関を法定していたのである。仙 が医療施設の利用を当然に予定していたことは, 台市民の協同出資によってつくられた仙台共立社 記憶しておくべきである。 病院が,この実例としてあげられている。
問題は,その医療法が医療機i関の開設について ついで1900年(明治33年)産業組合法が制定さ どう定めているかである。 れ,「組合員ヲシテ産業又ハ経済二必要ナル設備
医療法7条1項は「病院を開設しようとすると ヲ利用セシムル」利用組合(1条1項4号)が認 き,医師及び歯科医師でないものが診療所を開設 められ,協同組合による医療機関の運営は,これ しようとするとき,又は助産婦でないものが助産 が律するところとなった。その最初が青原村信用 所を開設しようとするときは,開設地の都道府県 購買販赫ll用組合であったことは,さきに一言した。
知事の許可を受けなければならない」という。同 産業組合法は数次の改正を経るなか,戦争遂行 条4項は,営利を目的に病院等を開設しようとす の要請と団体統合の必要とから,農業団体法,市 る者には,開設許可を与えないことができるとす 街地信用組合法,商工組合法等の独立立法がすす る。この規定から,「病院などの医療機関の開設 み,敗戦後の社会,経済の大転換にあたって,こ は,自然人であるか,または法人格を有する法人 れらが農業協同組合法,商工協同組合法など,単 であって,しかも営利を目的としないもの,すな 行協同組合法として再編されて行った。一方,国 わち民法上の公益法人に限られ,株式会社その他 民生活の危機打開の必要と民主主義的諸潮流の高 の当然に営利を目的とする営利法人や法人格をも まりとともに,生活協同組合の設立とその運動が たないところの,いわゆる権利能力なき社団には 急激にすすみ,消費者の自主的民主的組織のため 認められない。公益法人であれば,社団であると の立法が要請されるにいたった。
財団であるとを問わない。法の認める特殊法人で 消費生活協同組合法10条1項2号は,生活協同 もよい」ということになる。ここで重要なことは, 組合が行う事業の一つとして,「組合員の生活に 自然人の場合を除き,法人格付与の根拠による区 有用な協同施設をなし,組合員に利用せしめる事 別がないことである。ただ,医療法においては, 業」をあげている。これまでのべてきた協同組合 医業が営利を目的として行われることを否定して 立医療機関の運営が,この利用事業に含まれるこ いる結果,会社組織による医業の経営は行政上認 とは明らかであった。
めない方針がとられているだけである。 消費生活協同組合法の立案に直接関与した長倉
つまり消費生活協同組合法に基づく生活協同組 司郎は,『消費生活協同組合法 逐条解説』でつぎ
中田:確固とした法的存在「医療生協」 55
のとおり書いている。 める事業』というのがありますが,『有用なる協
「利用事業(2号) 従来は,購買事業が組合 同施設』というのはどういうことを政府としては の中心と考えられたが,最近では,設備の協同利 御計画になっておられますか。
用に対し,重大な関心がよせられている。協同の
設備利用により,組合員の相互意識を強め組合の ○木村(忠)政府委員 これは浴場理髪,ある 理想を益々盛んならしめる効果を有し,「生活協 いは医療施設といったようなものでございます。」
同』の名称も,こ・から由来するものと思われる。
(1)施設の意義 広義に用いられている。土地・ 民主自由党有田二郎の発言(前同議録)
建物・器具・浴場・製米・製麦機械の如き物的施 (12条3項の員外利用に関する修正案に対する 設,理髪施設,医療施設,託児所の如き人的及び 討論から)
物的施設,及び派出婦,技術員の如き人的施設の 「しかして『当該行政庁の許可を得た場合はこ 総てを包含する。か・る設備は,組合が自ら施設 の限りでない。』というのはどういうことかと申 し,又は組合自ら必要な人的要素を雇入れる場合, しますと,主として今日利用施設で,たとえばく 又他人の設備を有償若しくは無償で借受けそれを つ屋,床屋,洗濯屋,製粉施設,医療施設等で組 組合員に利用せしめる場合とする。組合はその施 合員外に利用させることを適当とするもの,こう 設に対し管理権を有して居らなくてはならない。」 いうものを当該行政庁が許可をしてもいいという 意味合いでありまして,この条項を付して民主自 消費生活協同組合法が成立した第2回国会の議 由党はこの法案に賛成いたしたいと思うのであり 事録をみておこう。 ます。」
厚生事務官大山正の答弁(第2回国会衆議院厚 産業組合法のもとですでに現存していた医療生 生委員会議録第24号) 協が,消費生活協同組合法のもとで存続すること,
(産業組合法のもとでの消費組合の取扱品目な またあらたに設立されることを,なんぴとも疑わ らびに取扱分量について) なかったのである。さきに「埼玉県医師会所見」
「現在取扱っております品目は,主といたしま が「生協法第10条は,組合がが行いうる事業の種 して,野菜であるとか,魚類であるとか,つけ物 類を定めているが,そこには医療施設の利用事業 であるとか,衣料を扱っているのであります。そ は記載されていないこと」をあげているのにふれ れから利用設備といたしましては,浴場を経営し た。これが,生協法10条には浴場の利用事業が記 ておりますとか,あるいは医療設備をもっておる 載されていないから,生協は浴場を経営できない,
とか,あるいは製粉,製パンの工場をもっておる というのと同じ程度の幼稚な議論であることは,
というような所もございます。そのほか文化的な もはや明白であろう。
活動といたしましては,家庭会を催すとか,主婦 さらにもう一つのことにふれておく必要がある。
の会合を催すとか,あるいは授産,内職といった 「埼玉県医師会所見」は,「医療事業を行う団 ようなこともやっておるように承知いたしており 体で法人格を取得する場合には,医療法があり,
ます。」 公的医療機関も医療法にその根拠を有するのであ ります」とものべていた。この一文の真意は,必 政府委員厚生事務官木村忠次郎の答弁(前同議 ずしも明らかでない。ただ,そのあとで「医療法 録) の認めない医療機関を生協法が是認するというの
「○有田委員 第10条の第2号に『組合員の生 は医療法の脱法行為」と書き,「脱法行為となる
活に有用なる協同施設をなし,組合員に利用せし 場合」を医療法人の場合と対比しているところを
みると,医療事業を行う団体は,医療法による医 のは当然である。
療法人しか認められない,といいたいのかもしれ しかし,かさねていうが,医療生協は医療法7 ない。 条の規定による病院または診療所の開設をなしう
もしそうだとすると,それは法律を曲解するも る法人であって,医療法が特別の理由から設けた 甚だしいということになる。現に,旧法令によっ 医療法人制度とは直接の関係をもつものではない。
て病院等の開設を許可されていた商事会社,民法 したがって,医療法人に関する医療法の諸規定に 上の財団法人・社団法人,学校法人,社会福祉法 よる規制を受けることはない。もちろんひとしく 人,農業協同組合,生活協同組合等々なん種類も 医療事業を行うものとして,法の精神から同様の の団体が,まさに医療法人の医療機関として開設 扱いを考慮すべき場合のあることはいうまでもな を許可されているのである。 い。
しかも,そもそも医療法人は,消費生活協同組 たとえば,医療法41条は「医療法人は,その業 合法と同時に制定された医療法にはなかったので 務を行うに必要な資産を有しなければならない」
ある。医療法人制度が設けられたのは,その2年 とし,必要な事項は厚生省令によることとしてい 後1950年(昭和25年)である。戦後の荒廃した医 る。医療事業主体の経営的基礎の安定を考えれば,
療施設を復興させるため,とくに病院の普及,整 医療生協も同様の基準を検討すべきであるとして 備が急がれていたが,窮迫した経済情勢の下にお よい。しかし,医療法人の理事長は医師または歯 いては,私人による病院の建設,その補修維持が 科医師でなければならないとする医療法46条の3 困難な実情にあり,病院の建設等のための資金の などは,医療生協にも適用されると考える必要は 集積を容易にする方法として,医療事業の経営主 ない。この規定にどれほどの合理性があるかがそ 体に法人格取得の途をひらくことにしたのである。 もそも問題であるが,それを別にしても,多数組 医療法制定当時消費生活協同組合法が医療施設利 合員によって運営される医療生協にあっては,医 用事業を予定しており,したがって生活協同組合 療の専門性という観点からだけではなく,そのこ が医療法上病院等の開設主体と認められていたの とを前提にしながらも,白主的組織における民主 に,のちにつくる制度でそれを否定しようとする 性の保持をこそ基礎にすべきである。
のならば,法律自体がそのことを明示的に定めな ところで,「大塚鑑定書」や「埼玉県医師会所 ければならない。この当然の法理からしても,医 見」には,医療法,とくに医療法人に関する規定 療法人制度の存在を理由に,「医療法は,いわゆ との関連で,生協法に同様の定めがないとか,取 る医療生協を医療機関として是認していない」な り扱いを異にするとか,あるいは法人に対する監 どと論ずることは許されない。 督に差異があるなどをことさらにとりあげて,問 以上すべての考察は, 消費生活協同組合法は 題視する向きがある。そのいくつかには答えてお 医療機関利用事業を是認し,医療法は法人たる生 くほうが,医療生協に対する非難のいわれのなさ 活協同組合の医療機関開設を是認する という結 を明らかにするのに役立つであろう。
論を導くのである。これこそが,歴史と現実とそ (1)剰余金配当の禁止と割戻規定
して法制定の趣旨との間に整合性を保たせる,唯 「大塚鑑定書」は,「医療法54条によれば,法
一一
ウしい法の解釈である。 人は剰余金の配当を禁止され,他面,生協法52条 によれば,組合は条件附ながら剰余金の払戻を是 4.医療生協と医療法 認されている。協同組合において,組合員の利用
分量による払戻方式による剰余金の配当が認めら
医療生協が医療活動を行う生活協同組合である れていることは,1844年以来のロッチデール原則
以上,医療法はじめ医事関係法令の適用を受ける として伝承されたものであって,生協法52条はこ
中田:確固とした法的存在「医療生協」 57
の古典的原則を明文化したものとしての重みをも 「協同組合の営利性否定にもかかわらず,各種 つものであるが,他面,医療法54条は,国民の保 協同組合法が剰余金処分規程をもっていることに 健医療の公益性を淵源とする規制であって,右原 ついて一言する(中協法59,農協法52,消協法52)
則と同様の重みがあるものである」とのべたうえ, と,協同組合法に,元来異質的なものと考えられ
「剰余金配当についての両法の規制方式の相違を る利潤分配に関する規定が存在することは,一見 如何に整合するか」と問題を投げかける。 矛盾するようにみえるかも知れない。すなわち,
「埼玉県医師会所見」は,「組合は,組合員の 理論的には,組合は社員の個別経済助成について,
経済的改善を図ることを目的としなければならな 厳格な計算に基づいて最低限度の手数料をとるべ いが(生協法第2条2号),本来こうした目的は きであるが,現実問題としてはその計算が困難で 医療事業の目的と矛盾するはずで,こうした矛盾 ある。さらに,協同組合は,営利性を否定される を説明することはできないこと」「右に関連して, とはいえ,資本主義社会の企業体として生存する 組合は剰余金の払戻しを認め,払戻しの基準とし ためにある程度の基金をもつ必要があり,その必 て事業利用の分量によることを定めているが(生 要性は,問接的には,組合員の個別経済の助成に 協法第52条),こうした規定を医療事業にあては つながるものである。したがって,組合が,個別 めるのは矛盾があること」などをあげたうえ, 経済助成に当って,組合員よりある程度の手数料
「医療法54条は,医療法人の剰余金の配当を禁止 をとることは,特別の事情がない限り肯定される しているが,生協法は認めていること」をもって, わけであり,それ故に,各種協同組合法が剰余金
「医療法の脱法行為であって違法」とまでいう。 処分規定をもっているのである。」「協同組合は,
医療生協が医療法人に対する規制を直接受ける 組合員の個別経済助成を目的とする人的社団であ ことはないのであるから,「医療法の脱法行為」 るということができる。そして実定法上人格を付 が起こるはずがない。このことを明らかにしたう 与されており,右の目的を達成するために営利性 えで,まず実情を示しておこう。現在全国の医療 を否定されるから,協同組合は,非営利法人であ 生協で剰余金の割戻を行っているところはない。 る」 (大塚喜一郎「判例・協同組合法』)。
それは,医療事業による収入が健康保険など公的 医療法が「医療法人は,剰余金の配当をしては 制度によっていることを考慮してである。割戻条 ならない」 (54条)と定めるのは,剰余金を社員 項を定款から削除している医療生協も少なくない。 に配当すると額のいかんにかかわらず営利的色彩
「大塚鑑定書」がいうように,剰余金の割戻がロッ を帯びることになるので,これを禁止することに チデール原則に由来するものであるとしても,生 よって医療法人が営利性をもっていないことを明 協法自体「組合が組合員の利用分量に応じて剰余 白にするためである,と一般に説かれている。
金の割戻をなすときは,事業別にその率を定める しかし,「営利追求目的で医療事業を行わせな ことができる」 (52条3項),「組合が払い込ん いために,剰企金の配当を完全に禁止する必要が だ出資額に応じて剰余金の割戻をなすときは,年 あったかどうかについては若干疑問がある」とい
1割を越えてはならない」 (52条4項)というよ う見解がすでにある。
うに,剰余金の割戻を義務づけているわけではな 「現に,個人で医療事業を行なう者は,医療事 いのである。 業から得た収益の使途について何等の制約を受け
「埼玉県医師会所見」の指摘は,医療法が医療 ていないのに特に幣害を生じていない。また,営 事業を非営利的なものに限っているのに,剰余金 利法人たることを否定するため,剰企金の配当を
の割戻はこれと矛盾するというのであろう。とこ 一切禁止しなければならないというものでもない。
うが,この点については,ほかならぬ大塚喜一郎 一般に営利法人ではないとされる消費生活協同組
が明快に説明している。 合とか中小企業等協同組合にあっては,損失を填
補し,一定の準備金,繰越金を控除した後であれ いずれも埼玉徳洲会医療生協を認可すべきでは ば剰余金の配当を認めている(消費生活協同組合 ないという論拠の一つとしてのべられているにす 法第52条,中小企業協同組合法第59条)。また, ぎず,一般的妥当性が主張されているわけではな 医療法人であっても,持分の定めのある社団法人 い。しかし,そこには検討すべき問題が含まれて では,解散時には社員に対してその出資持分に応 いるようにおもわれる。
じて法人の残余財産を分配することを認めており, 「家族を中心とする地縁的結合体」などという これは時機は遅れるものの実質的には剰余金の分 表現は,1949年の厚生省の指導要領(昭和24年ll 配とも考えられるのに,これをとらえて営利法人 月24日乙発255号社会局長通知)にみられるもの であると言う人はいないからである」 (奥平哲彦 であるが,もともと「協同組合は国民の自発的な
「医療法人の組織運営上の諸問題」 『自由と正義』 意思により組織され発展すべきものである故,そ 37巻4号)。 の区域の広狭の決定も国民各自の自由であっても たしかに医療の公共性は,営利の目的で医療事 よいわけであるが,国家経済全体の立場から中小 業が営まれることを否定する。しかし,医療の非 企業者との関係を考慮し,これを一応都道府県の 営利性は,剰余金の処分を認めるかどうかにかか 区域に限定せられた」 (長倉司郎『消費生活協同 わるだけではない。 組合法 逐条解説』)にすぎないのである。まさ
「埼玉県医師会所見」が生協法上の目的と医療 に「国家経済全体」の発展によってみなおされて 事業の目的とが矛盾するとのべている点について よい規定である。1986年発表の「生協のあり方に 一言しておこう。 関する懇談会」報告書も,「地域生協の事業区域 生協法2条1項2号は「組合員の生活の文化的 としては,都道府県が定着しており」 「交通の発 経済的改善向上を図ることのみを目的とすること」 達,都市の広域化,情報化の進展等生活圏の拡大
という。この規定は,生活協同組合の基準である を考慮すれば,事業区域を現行より縮小すること 6要件の一つであり,直接には組合の営利性の否 は妥当ではない」としているところである。
定を含意している。したがって,「埼玉県医師会 生活様式や疾病構造の変化,医学の発達などに 所見」が「組合員の経済的改善」だけを取り出し, よって,医療の概念そのものが大きく変貌してお 生活協同組合があたかも営利を追求するもののよ り,外来・入院医療の診療圏の著しい拡大一つを うにえがくのは,不当ないいがかりであるとしか とってみても,「地縁的」範囲で医療を考えるこ いいようがない。 とはできない。保健・予防活動の現状,救急医療
(2)医療生協の「区域」 の確保,病院・診療所・薬局等の相互連携などを
「大塚鑑定書」は「生協法5条が『組合は都道 総合すると,都道府県の範囲を越えて,医療生協 府県の区域を越えてこれを設立することができな の活動が期待されたり,それがいっそう合理的で い。』としている点であるが,右規定は一般の ある場合もあろう。
『消費生活』協同組合について定められたもので いずれにせよ医療生協の区域を狭い地域に限定 あって「医療』生協組合については,組合の区域 することは,医療のありかたからしても著しく時 はその設立する病院の診療圏に限定すべきである」 代おくれである。医療法改正による都道府県の医 という。また,「埼玉県医師会所見」は,「埼玉 療計画策定にあたって,「大塚鑑定書」や「埼玉 徳洲会生活協同組合が,その区域を『埼玉県内全 県医師会所見」のような考えかたから,医療生協 域』とすることは,協同組合というものが,家族 の医療活動を「地縁的」なものに閉じこめさせな を中心とする消費者の地縁的結合体で組合の地域 いよう,警戒すべきであろう。
は組合員の住所の連鎖的結合を必要とするとの原 (3)医療生協と監督
則に反する」とする。 「埼玉県医師会所見」は,「医療法の認めない
中田:確固とした法的存在「医療生協」 5g
医療機関を生協法が是認するというのは医療法の ない,と繰り返すことで十分である。「埼玉県医 脱法行為であって違法である」といい,「脱法行 師会所見」は,医療生協が医療機関として医療法 為となる場合」をつぎのとおりあげる。 上の監督,規制の將外におかれているかのように
① 医療法54条は,医療法人の剰余金の配当を 誤解しているのであろうか。医療生協もまた医療 禁止しているが,生協法は認めていること。 法人同様,医療機関の開設許可(7条),施設使
②医療法45条2項は,医療法人認可に際して, 用制限命令等(24条),報告の徴取・立入検査(2 医療機i関整備審議i会の意見聴取を知事に義務 5条),医療監視員(26条),管理者の変更命令(2 づけているが,生協法には規定がないこと。 8条),開設許可の取消(29条)など医療法の監督,
③ 医療法41条は,医療法人の施設,資金の所 規制に服しているのである。
有を義務づけているが,生協法には規定がな そればかりでなく,医療生協は消費生活協同組 いこと。 合法による生活協同組合として,その設立認可
④ 医療法51条は,医療法人は決算書の知事提 (生協法54条ないし58条),事業報告書・財産目 出を義務づけているが,生協法には規定がな 録・貸借対照表等の整備・公開(40条,43条,39 いこと。 条),行政庁の報告徴収・検査(93条,93条の2,
⑤医療法42条は,医療法人の付帯業務につい 94条)などの監督,規制に服するのである。医療 て制限を設けているが,生協法には規定がな 施設利用事業を行う組合として「必要な経営的基 いこと。 礎を欠く」かどうかは,設立認可にあたって審査
①についてはすでにのべた。②に関して「大塚 され(生協法58条),単なる「決算の届出」 (医 鑑定書」も,「本件組合設立認可の可否決定は事 療法51条)にとどまらないディスクロージャーが 実上病院開設につながるものであるから,生協法 義務づけられている。付帯事業についても生活協 58条の右規定ならびに事業の公益性に鑑み,あら 同組合の目的,事業の種類に伴う当然の制限があ かじめ医療機i関整備審議会の意見を徴する必要が る(生協法10条1項6号)。
ある,と解する」としている。1985年の医療法改 それになによりも医療生協は,多数の組合員と 正で医療機関整備審議会は都道府県医療審議会と その出資によって存立するのであるから,大衆的 変えられている。 監視と批判にいつもさらされているのである。医 しかし,医療法人の設立,解散の認可について 療生協は,医療法人とは異なり,二重,三重の監 都道府県医療審議会の意見をきくとされているの 督のもとにあるといってよいのである。
は,医療供給体制の確保,調整と医療法人の適格 「医療法の脱法行為」を云々する「埼玉県医師 性を担保するためである。医療生協の設立が医療 会所見」は,医療法をも,生協法をも正しく理解 機関の開設に事実上つながる場合には,生活協同 しないものというほかない。
組合の適格性が生協法に照らして審査されるとと なお,「埼玉県医師会所見」が「長期間にわたっ もに,医療機関の開設そのものが医療法に基づい て組合の施設を利用しない組合員は除名の対象者 て審査されるのである。医療機関の開設許可につ となるが(生協法第20条2項),医療事業に右の いて両者の取り扱いに差がない以上,法人格を与 規定を適用させるわけには行かず,この矛盾を説 える両特別法の手続に違いがあるだけのことであ 明することができないこと」という点に一言しよ る。少なくとも医療生協の存在を違法視する根拠 う。これは,組合の自主的艮主的運営と医師の応 とはなりえない。 招義務を含む医療の責務とをことさら混同するも
③④⑤についていえば,医療法のこれら規定は のである。組合員の除名が医療の拒否を意味する 単に医療法人に対する規制であって,他の法律に わけでないことは,自明の理である。
よって法人格を取得した団体を規制するものでは
合員に利用させることが建前でありまして,組合 5.医療生協と員外利用 員以外の利用ということは組合のためになりませ
んし,組合としても適当でない。従いまして組合 生協法12条3項は,「組合は,組合員以外の者 員が利用することを妨げない限り,組合員以外の にその事業を利用させることができない。但し, 利用につきましては,ある程度の制限を加えなけ 当該行政庁の許可を得た場合は,この限りでない」 ればならないのではないかと思います。また組合 と定めている。 員の利用のみに限定いたすことによりまして,実 生活協同組合は,「国民の自発的な生活協同組 際の状況によりましては,そのために組合が成り 織」 (生協法1条)であり,組合員による所有・ 立たないことも考えられるのであります。また組 運営・利用の一体性を法的特質としている。組合 合の事業の種類によりまして,たとえば今申し上 は,営利を目的として事業を行ってはならず,そ げました浴場であるとか,医療施設というような の事業は組合員に最大奉仕するものでなければな ものにおきましては,その他に組合員以外の者が らない(9条)。ここに員外利用の原則的禁止の 利用すべき施設がない場合に,これの利用を禁止 意味がある。 することは適当でないと考えますので,制限を加
国家が生活協同組合に対し一定の助成政策をと えた上で組合員以外に若干利用させるということ る場合,他の事業者を保護する配慮から員外利用 にいたした次第であります。」
の問題が考えられることもある。消費生活協同組
合法が審議された第2回国会では,つぎのような こうして有田委員が引用した原案は,民主自由 質疑応答がみられる(衆議院厚生委員会議録第24号)。 党の修正案によって,現行12条3項のとおり原則
禁止を強調するものとなった。
「○有田委員 第3項に『組合は,組合員の利 ところで,産業組合法は,信用組合に一定範囲 用に差支ない限り,定款の定めるところにより, の組合員外の貯金の取扱いを認めたが(1条2な 組合員以外の者にその事業を利用させることがで いし5項),販売組合,購涜組合については,員
きる。但し,一・事業年度における組合員以外の者 外利用を一般的に禁止した。そして,利用組合に の事業の利用分量の総額は,特に行政庁の許可を ついては,「利用組合ノ設備ハ組合員ノ利用二支 得た場合の外,その事業年度における組合員の利 障ナキ場合二限リ組合員タルコトヲ得サル者ヲシ 用分量の総額の10分の1を越えてはならない。』 テ命令ノ定ムル所二依リ之ヲ利用セシムルコトヲ
というのがあります。先刻申しましたように中小 得」と定めた(1条7項)。また,農業団体法は,
工業者を擁i護するという意味合におきまして,組 「地方農業会ハ命令ノ定ムル所二依リ会員以外ノ 合員以外の利用ということを私どもは強く反対を 者ヲシテ之ヲ利用セシムルコトヲ得」とした(11 いたしておるのでありまして,この点について政 条2項)。
府の所見を伺いたいと思います。 協同組合にあっても施設利用事業は,その施設
○木村(忠)政府委員 組合につきましては機 の経済的効用をはかるうえからも,また,組合の 会均等というような意味からいきまして,その組 経営的基礎を確保し,組合員の拡大を求めるため 合の利用に対しては制限を加えないのが最も適当 にも,員外利用の禁止を厳格なものとすることは,
であると考えるのであります。あらゆる競争につ かえって不合理であったのである。
きまして自由平等に競争させるという意味からい 農業協同組合法10条8項は,「組合は,定款の
たしまして,組合を利用する者は組合員であるが, 定めるところにより,組合員以外の者にその施設
組合員以外の利用もこれを自由にさせることが妥 を利用させることができる」が,その一事業年度
当であろうと思います。組合といたしましては組 における利用分量は「組合員の事業の利用分量の
中田:確固とした法的存在「医療生協」 61
額の五分の一」を超えてはならないとしている。 (ロ)員外利用の必要性以下具体的実例をもっ 商店街振興組合の「販売,購売,保管,運送,検 てその必要性を説明する。先ず,組合にて病院を 査,その他組合員の事業に関する共同施設」の組 経営した場合を想定するに,その公益的性格より 合員以外の者の利用についても,同様100分の20 して,組合区域に在在する者で組合員以外の人の の制限である(商店街振興組合法13条1項1号,3 急病,或は,偶々その区域を通行する人に対して 項)。また,中小企業等協同組合法9条の2は, 医薬を投ずるを禁止するが如きは,入道上由々し
事業協同組合の「体育施設その他の施設で組合員 き重大事であり,又託児所,風呂屋,或は遊園地 ,
の利用に供することのほか併せて一般公衆の利用 等の設備の利用をその組合員のみに限定するのは,
に供することが適当であるもの」を認めている。 人情からいって忍びない場合があり得よう。又組 さらに,森林組合は,「定款で定めるところによ 合の電気設備又は水道設備等の関係上,町村全体 り,組合員以外の者に林道以外の施設を利用させ を供給区域として,加入せざるものにも組合の電 ることができ」 (森林組合法9条8項),漁業協 気利用を認められるが如き,或は組合において,
同組合は,「定款の定めるところにより,組合員 一定の地域内に乗合自動車を設備した場合の如き,
以外の者にその施設を利用させることができ」 何れも員外利用は当然とされ得よう。又組合の仕
(水産業協同組合法ll条3項),いずれも組合員 入れた物品に残品を生じた場合の如き,その残品 の利用する事業分量の総額を超えてはならないと 処分方法てして已むを得ず組合員外の者に売却す されている。 ることは,その事業の性質上当然の結果であって,
このように施設利用事業については,組合員以 これを違法とすることはできない。殊に,魚類,
外の者にも利用させることがかなり大幅に認めら 肉類の如き腐敗し易き日用品については特にその れており,そのことの合理性は一般に承認される 必要は認められ,これは購買事業の目的達成に必 ところであろう。 要な行為として認めなければならない。
そして医療生協の場合は,単に施設利用の観点 (ハ)員外利用の許可基準 勿論協同組合は,
からだけでなく,医療の公共性,国民の医療を受 公益法人でもなければ営利会社でもない。無条件,
ける権利,医療を選ぶ権利,医師の応招義務を含 無制限に員外利用の許可の主張は許されない。紐 む医療機関の側の医療供給義務などから,員外利 合が社会的機能を有する法律上の組織たるに鑑み 用の問題については特別の配慮が求められること 協同組合の根本精神を逸脱せず,又その運営上の になる。 危険や支障がなく,且つ,組合員の優先的利用を 妨げざる範囲において,即ち飽く迄附随的に員外
「第3項(イ)概説 相互主義に基く協同組合 利用の妥当的な場合を決定すべきである」 (長倉 が,その事業の利用を原則として,組合員のみに 司郎『消費生活協同組合法 逐条解説』)。
限定することは,理論上正当であり,組合員以外
のものに何等の理由なく無制限にその利用を許容 じつに正鵠をえた解説である。
することの不可なることは論を侯たない。然し乍 だから,生活協同組合の員外利用の禁止の原則 ら,利用を組合員のみに限定するときは国民経済 の例外として,員外利用を許可する場合の一般的 の立場からも無駄と不合理とを生じることが予想 基準に関する厚生省通知でも,医療生協について
され,又その事業が公益的性格を多分に有すると は,特別な取り扱いがなされてきたのである。
きは,組合員の利用に支障を来たさない場合に限
り,特に許可をして利用者の範囲を拡張し,組合 昭和29年6月17日 員でないものに対しても,その利用を許し,その 厚生省社会局長通知
利益に均露せしめることが望ましいのである。 1.員外利用の許可は,組合員の利用を妨げな
い限度において成されるものであること。 らず,臨時雇,日々雇用の者,試用期間中の 2. 組合が山間僻地にあり,その附近に類似の 者等条件付き又は期限付きで雇用されている
物品を供給する一般商店が少ないため,組合員 者に事業を利用させるとき。
以外の者に,日常生活に必要な物資を供給する (3)山間へき地ではないが,局長通知2と同様 とき。 の事情にある場合において,組合員資格を有 3.組合が左に掲げる事業を営む場合において, しない者に当該事業を利用させるとき。
組合員以外の者に,当該事業を利用せしめると (4)専売品,統制品等であって,組合がその取 き。 扱い者としての指定を受けるために員外利用
(P 保育所経営 が許可されることが条件となっているものに
(2/医療施設経営(健康保険法,国民健康保険 ついて,その指定等を受けようとするとき。
法,船員保険法又は日雇労務者健康保険法) (5)医療事業のように,他の法令において,組 に基づく被保険者(その扶養者を含む),生 合員以外の者についてもその事業を利用させ 活保護法に基づく医療扶助を受ける者及び緊 ることが定められているとき。
急を要する一般受診者のみに利用せしめる場 2. 員外利用を許可する場合における当該組合 合であって,その地域における医療施設の普 の員外利用の総額は,当該事業年度における組 及が十分でなく受診が不便である場合に限る。 合員の事業の利用分量の額のおおむね5分の1
(3)電気,ガス又は水道施設経営 をこえないものであること。ただし,1.の(4)
4. 生活保護法に基づく被保護者であって,当 及び(5)の場合は,この限りではない。
該組合が,組合員に準じて取扱う旨の証票を交
付した者にその事業を利用せしめるとき。 とくに後者の通知は,医療生協について,「他 5. 昭和29年事業年度終了の日までの間に限り, の法令において,組合員以外の者についてもその
当該組合に6月以内に加入することを予約した (医療)事業を利用させることが定められている」
者に対して,その事業を利用せしめるとき。 として,利用分量の制限をも設けようとはしなかっ 6.他の消費生活協同組合又は同連合会で,そ たのである。それは,医療の公共性と医療施設利
の有する物品を供給するとき。 用の現実的必要性からして,むしろ理の当然であっ 7.組合が,煙草又は米穀の販売を営む場合に た。
おいて,その購入を求める者に供給するとき。 しかし,このことは,たとえば日本生活協同組 合連合会医療部会が,「日常診療圏で50%以上の 昭和41年ll月25日 組織率 組合員利用率との関係においても,生協 厚生省社会局生活課長通知 として独自に追求しなければならない課題です。
1. つぎの場合には,員外利用の許可をして差 組合員利用率90%以上をめざすためにも,診療圏 し支えないこと。 での拡大が必要です」 (「1986年度活動のまとめ
(1)職域組合の組合員資格を有しない者であっ と1987年度方針」から)とのべているように,医 て,つぎに掲げる者に事業を利用させるとき。 療生協自身の課題として,員外利用の率の低下に ア 社外工,組夫,他からの派遣職員等のよ 努力することと矛盾するものではない。医療生協 うに当該職域の使用者と雇用関係にはないが, が生活協同組合として,多数組合員による医療施 当該職域において就業している者 設の一体的所有,運営,利用の実をあげ,その民 イ 退職後,一定期間引き続き事業を利用さ 主的基盤の強化をはかることは,かならず組合員 せることが適当と認められる者 利用率の増加につながるのであり,同時に組合員
(2)本来,組合員資格を有すると否とにかかわ 拡大の意識的追求ともむすびつき,あいまって医
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