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「会計参与」目次

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Academic year: 2022

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(1)

今回

会社法の制定により︑

五 四 三 ニ ー

̲̲̲̲̲̲ lIIII ̲̲̲̲̲̲̲̲ lll

= 論 説

︸ 一

,

‑IIII︑ー11̲1

111111

︑︑

︑︑ 会計参与とい

は じ め に

﹁ 会 計 参 与 ﹂

はじめに﹁会計参与制度﹂への変遷﹁会計参与制度﹂の概要税理士に係る﹁会計参与﹂の間題点むすびにかえて

う新しい会社の機関が創設された︒その会計参与に選任される有資格者

税理士の視点からを中心に

に 係 る 諸 問 題

25‑3・4‑149 (香法2006)

(2)

は︑公認会計士︵監査法人を含む︶または税理士︵税理士法人を含む︶でなければならないと同法に規定されている︒

このことにより︑税理士が﹁会計専門家﹂︑したがって︑﹁会計に関する専門職業家﹂として会社法上で認知された︑

と賞賛する傾向がある︒

久しく︑会計業務は︑税理士にとって基本的に重要な業務であることが理解されていたものの︑制度的︵税理士法

上︶には︑単に﹁税理士業務﹂に対する﹁付随業務﹂としてしか位置づけられてこなかった︒今回︑会計業務が付随

業務ではなく︑本来業務として︑商事に関する基本法である会杜法において認知されたことは︑税理士制度の歴史の

中で画期的な出来事である︑等の理由からである︒確かに︑税理士制度は制定されて五十余年︑従来︑税理士という

文言は︑税理士法にしか現れなかった︒しかし︑ここ数年間で︑他の法律上にも税理士の文言が表記され︑ある意味

では︑税理士の社会的地位が向上したともいえる︒職栗専門家としての社会的地位が向上するということは︑その業

務に係る責任が重くなるのは当然である︒そこで重要なことは︑税理士が当該業務を行う場合に︑その職業専門家と

しての責任の重要さをどの程度認識するかである︒

﹁その制度が社会の要請に応えるために創設され︑その要請に応えられる可能性があれば︑その制度のメリットを

実現できるように前向きな態度で︑新しい制度を歓迎する方向性を示すことが建設的である﹂との見解も十分理解で

きる︒しかし︑本稿では︑あえて﹁会計参与制度﹂の批判的検討を試みる︒特に︑中心的検討課題は︑税理士という

﹁職業専門家﹂が当該業務を受任するという視点から︑﹁会計参与制度﹂の包含する諸間題を検討することにある︒

25‑3・4‑150 (香法2006)

(3)

「会計参与」に係る諸問題(浪花)

人監太且が強制されることになり︑現在に至っている︒ 強制的外部監査制度の導入

昭和四九年の株式会社の監査制度の強化を中心とした商法改正に際し︑同時に﹁株式会社の監査等に関する商法の

特例に関する法律﹂︵以下︑祠商法特例法﹂という︶が制定された︒この法律の目的は︑資本金五億円以上の株式会社

に対し︑大会社の特例として商法上︑外部監査人︵公認会計士および監壺法人︶による﹁会計監査人監査﹂を強制す

るというものである︒当該改正は︑昭和三0年代後半の山陽特殊製鋼の倒産に端を発した大会社の倒産や経理不祥事

件の多発を機に︑株式会社の監査制度の強化の必要性から進められることになったものである︒

当初の法案では︑資本金一億円以上の株式会社を対象に会計監壺人監査を強制するという内容であった︒しかし︑

この基準をめぐって税理士会と公認会計士協会との間で激しい論争が展開されることになった︒その結果︒昭和四九

年の改正法が成立するまでに七年余を要したという特殊な経緯が存在する︒しかも︑この改正段階では︑資本金五億

円以上の会社に大会社の特例を適用するとしながら︑附則において︑当分の間︑証券取引法適用会社を除く資本金一

0億円以上の会社のみに適用するものとされていた︒

ところが︑引き続く企業の不祥事続発を背景に︑取締役会の業務監督権の強化︵商法二六0条一項後段︒二項以下

の規定新設︶とともに︑会計監木且の一層の強化の要請を受けて︑昭和五六年の商法等の改正で︑上記附則の規定が削

除され︑資本金五億円以上の株式会社または負債総額︱

10

0億円以上の株式会社に︑大会社の特例として︑会計監査

(—7

﹁ 会 計 参 与 制 度 ﹂

への変遷

25‑3・4‑151 (香法2006)

(4)

中小会社に対する外部監杏制の問題

① 

﹁大小会社区分立法﹂等

一口に株式会社といっても︑株式を公開している大会社と閉鎖的な中小会社とでは企業実体等が異なる︒そこで︑

株式会社法の規制を区分し︑それぞれに相応しい法規制を用意することが必要であるとの認識のもと︑その基本的構

想が︑昭和五九年に﹁大小︵公開・非公開︶会社区分立法及び合併に関する問題点﹂として公表された︒

そのなかに株主有限責任の基礎的条件として三つの制度を予定している︒

︱つ目は︑最低資本金制度を法定することである︒有限責任とは︑社員は出資額以上に責任を負うことはないとい

う制度であるから︑会社財産の確保が十分でなければ︑不測の事態に債権者が多大な損害を被る可能性が高くなる︒

したがって︑特に︑中小企業は︑会社設立の当初から︑ある程度の責任財産を形成しておく必要があるとしたもので

二つ日は︑計算書類等の公開である︒すなわち︑会社設立後の企業取引において︑会社と取引をする相手方が安心

して当該取引をなすためには︑当該会社の財務状況が公表されている必要がある︒そのため︑商叢登記所を設けて︑

株式会社はすべて計算書類等を届け出て︑何人でもそれを閲覧できる制度を新設する必要があるというものである︒

三つ目は︑﹁限定監査﹂の実施である︒これは︑公開された計算書類等の適正性を担保するため︑会計監査人監在

を受けない非公開会社のうち一定規模以上のものについて︑会計専門家︵公認会計士・監査法人・会計士補または税

理士︶による会計帳簿の記載漏れまたは不実記載ならびに貸借対照表︑損益計算書および附属明細書の記載と会計帳

簿の記載との合致の有無︵商法二八一条ノ三第二項︱一号︑九号に該当︶等に限定した﹁監査﹂を強制するというもの

(6 ) 

であ

る︒

ある

25‑3・4‑152 (香法2006)

(5)

「会計参与」に係る諸問題(浪花)

照︶を報告することを目的とする﹂とされている 一定規模以上の限定された会社を対象とするものではなく︑すべての会社に強制さ

れるべきものである︒しかし︑財務体質の脆弱な企業は︑このような規定を直ちに導人することは困難である︒した

がって︑当該規定は︑上記のような﹁一定規模以上の会社﹂から導入しようと考えられたものであった︒

ただし︑これらの提案は︑中小企業界からの反対が強く︑公開される計算書類を対象とした﹁限定監太且﹂の構想に

は︑公認会計士協会が猛反対をした︒その結果︑上記三要件のうち︑﹁限定監査﹂案を一部受け継ぐ形で︑﹁商法・有

限会社法改正試案﹂︵以下︑﹁試案﹂という︶が法務省より公表された︒その中で︑﹁限定監木且﹂は︑﹁会計調太且﹂およ

び﹁会計専門家による指導﹂案という形で取り入れられた︒

﹁会

計調

木且

人﹂

当該﹁試案﹂において︑﹁会計調木且﹂とは︑﹁株式会社で会計監査人の調査を受けないものは︑その計算に関し会計

調査人による調査を受けなければならない︒ただし︑資本金三︑

0 0

0万円未満かつ負債総額三億円未満のものは︑

調査を省略することができる︒﹂︵﹁試案﹂四

4 a

)

とするもので︑その内容は︑﹁会計調杏人による調査は︑﹃会社の

貸借対照表及び損益計算書が相当の会計帳簿に基づいて作成されていると認められるかどうか﹄︵商法三二条二項参

② 

本来︑これらの三つの要件は︑

︵﹁

試案

﹂四

4C

)︒この﹁調査﹂においては︑﹁相当の会計組織が

備わっていることを確認し︑会計帳簿の記載について期末における財産︵資産と債務︶の実在性と網羅性︵貸借対照︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑表項目︶並びに期中における取引事実等との対応︵損益計算書項目︶が一応認められるかどうか︵帳簿における資産・債務•取引事実等に関する記録としての相当性)を吟味し(商法三二条一項参照)、会計帳簿と貸借対照表及び拍益

計算書の記載との間に重要な不一致がないことを確認する﹂︵﹁試案﹂四

4C

)︑﹁傍点﹂は筆者挿入︶とし︑﹁調査に

25‑3・4‑153 (香法2006)

(6)

5 )

とされていた︒この﹁指導﹂ 当たっては︑突合︵照合︶︑説明の聴取︵質問︶のほか︑陳述書の徴収︑実査︑立会︑確認その他適宜の方法を用いることができる﹂︵﹁試案﹂四

4

C

︵ 注 ︶

3

︶とされている︒

ここで注目されるのは︑この﹁調査﹂が︑従来の監査と比べて﹁一応の確からしさ﹂を要求されている点である︒

会計調査人は︑﹁正規の監査﹂より低く︑﹁一応の確からしさ﹂について心証を得れば良いこととされ︵﹁試案一四

4

C︵ 注 ︶

4 )

︑その基本的資格は︑公認会計士以外に税理士にも資格を付与されることになっている︵﹁試案﹂四

4 d

)

なお︑会計帳簿および貸借対照表・損益計算書の作成責任は︑あくまでも取締役にあり︑ただし︑調査人が貸借対照

表等の作成等に当たる場合の責任についてはなお検討するが︑この場合においても︑調壺人は︑少なくとも記帳の基

礎となる原始記録の作成に関与することはできない︑とされていた︵﹁試案﹂四

4

c

︵ 注 ︶

6

この調杏報告書は︑﹁調査の方法の概要︑調杏人の資格︵会社の他の会計事務︑例えば税務︑財務諸表の作成︑会

計帳簿の記帳代行等をしたときはその旨も︶を記載し︑その開示は︑監査報告書と同様に扱う﹂︵﹁試案﹂四

4 C

)

のとされた︒また︑株式会社は︑定時総会終了後︑貸借対照表および損益計算書を商業登記所に提出して︑登記所に

おいてこれらの書類を公開し︑貸借対照表等を登記所に提出するときには︑これらに関する監壺報告書または調査報

告書をも提出し︑登記所で公開︵﹁試案﹂四

2

a

︵ 注 ︶

1

︶するとされていた︒

さらにもう一点注目すべきは︑﹁会計専門家による指導﹂の提案である︒この案は︑会計調査が﹁限定監査﹂の延

長線上にあるとして反対する立場から︑公認会計士協会等から提案されたものである︒﹁試案﹂では︑﹁会計専門家が

会社の計算に関する指導をして︑その指導の内容︑指導の結果等を報告する制度をもって四の会計調査人の調査に代

えることの可否については︑商法上の制度として構成することが可能かどうかを含めて︑なお検討する﹂︵﹁試案﹂四

の提案については︑﹁税理士とか会計の専門家と自負する人々が︑商法改正を支持

25-3•4-154 (香法2006)

(7)

「会計参与」に係る諸問題(浪花)

先に法務省から公表された﹁会社法制の現代化に関する要綱﹂︵平成一七年二月九日︶において︑その設置が提案

されていた﹁会計参与制度﹂が︑去る一二月一八日に﹁会社法案﹂として閣議決定され︑国会審議を経て六月二九日に

成立した

会計参与は︑会社の役員であり︑株主総会の決議により選任され︵会社法三二九条一項︒以下︑﹁法三二九①﹂と

いう︶︑取締役・執行役員と共同して計算書類︵法四三五②︶およびその附属明細書︑臨時計算書類︵法四四一①︶

ならびに連結計算書類︵法四四四①︶を作成する︵法一二七四①︑⑥︶︒したがって︑会計監査人や平成︱一年商法改正

の際に提案された﹁会計調査人﹂とは異なり︑会計参与は計算書類などの作成者となる︒なお︑株式会社と役員︵会

計参与︶との関係は︑委任に関する規定に従うものとされている

(—)

し改正の原動力となるようであれば︑法案の国会通過も容易になる︑という政治的な側面を考慮すると捨て難い案と

考えられており︑中小企業の反対が強くなれば﹁調査﹂か﹁指導﹂かいずれか︱つが採用されるものとみられる﹂と

( 1 0 )  

の思惑があった︒今回の﹁会計参与制度﹂誕生の原点は︑このあたりに存在しているのではなかろうか︒

このように上記︑株主有限責任の基礎的条件として三つの制度︵最低資本金︑計算書類の公開等︑﹁限定監査﹂等︶

行うという政治的判断により︑﹁最低資本金制度﹂ の導入が検討されたが︑平成︱一年の商法改正では︑これらを一括して改正するのは困難であるため︑段階的に改正を

のみが導入された︒

会計参与の設置

︵施

行は

平成

一八

年春

の予

定︶

﹁ 会 計 参 与 制 度 ﹂

の概要

︵ 法 ︱

︱ ︱ ︱

1 0

) ︒

25‑3・4‑155 (香法2006)

(8)

社の取締役︑執行役︑監木且役︑支配人︑その他の使用人︵法一二三三③一︶および会計監査人を兼ねることはできない 株式会社に通知しなければならない︵同②︶︒ただし︑兼務禁止規定があり︑会計参与は︑株式会杜またはその子会 一三一言①︶︒その場合︑監査法人または税理士法人が会計参与に選任されたときは︑社員の中から会計参与を選定し︑ 会計参与の資格者は︑公認会計士︵監杏法人を含む︶または税理士︵税理士法人を含む︶でなければならない

( 1 5 )  

︵法三一二七③二︶︒また︑業務停止処分を受けその停止期間を経過していない者や税理士法四三条の規定により税理

士の名称を用いて税理士業務に付随する財務に関する業務を行うことがでぎない者も︑会計参与になることができな

︵法

三一

二三

②︑

③︶

(二) よび計算書類などを備え置く場所が登記される︵法九︱︱③ニハ︶︒ 計参与設置会社といい︵法二の八︶︑その設置を外部に開示するため︑その旨ならびに会計参与の氏名または名称お すべての株式会社は︑定款の定めにより会計参与を置くことができ︵法三二六②︶︑会計参与を置く株式会社を会

( 1 2 )  

会計参与は︑株式会社の規模や他の機関の設置による制限を受けないので会計監査人との併存も可能である︒なお︑

株式会社が取締役会を置くには︑委員会設償会社以外の場合︑監査役設置会社でなければならないが︑公開会杜でな

い株式会社であれば︑監査役を置かなくとも会計参与を置くことにより取締役会を置くことができる︵法三二七②但

即︶︒これは︑監査役の監在範囲を会計に関するものに限定したとしても取締役会を置くことが認められ︑かつその

監査役の資格には特に会計の専門的知識が要求されていないこととの均衡から︑公開会社でない株式会社が会計の専

( 1 4 )  

門知識がある会計参与を置いている場合にも取締役会を置くことを認めたものである︒

会計参与の資格・選任・解任等

J ¥  

︵ 法

25‑3・4‑156 (香法2006)

(9)

「会計参与」に係る諸問題(浪花)

会計参与の選任・解任は︑株主総会の決議による

れた会計参与は︑その解任に正当な理由がある場合を除き︑株式会社に対し解任により生じた損害の賠償を請求する

こと

がで

きる

︵法

三一

二九

②︶

︵法三二九①︑三三九①︶︒員数については制限がない︒解任さ

( 1 6 )  

役員を選任・解任する株主総会の決議は︑原則として︑議決権を有する株主の過半数が出席し︑出席株主の議決権

の過半数をもって行われる

︵第

三四

一条

︶︒

また︑会計参与は︑株主総会において︑会計参与の選任もしくは解任または辞任について意見を述べることが認め

︵法三四五①︶︒そして︑会計参与を辞任した者には︑辞任後最初に招集される株主総会に出席して︑辞

︵同条②︶︒そのため︑取締役は︑辞任した会計参与に︑前

項の株主総会の招集を通知しなければならない

︵ 同

条 ③

︶ ︒

なお︑会計参与に欠員が生じた場合は︑﹁役員等に欠員が生じた場合の措置﹂にしたがう︵法三四六①︑②︶︒

会計参与の任期については︑取締役の任期規定を準用することとされた︵法一二三四①︶︒したがって︑原則として︑

選任後二年以内の最終決算期に関する定時株主総会の終結時までである︵法三三二①︶︒ただし︑この任期は︑定款

または株主総会の決議により短縮することが認められている︵法三三二①但書︶︒また︑会計参与設置会社が委員会

設置会社の場合には︑その任期は選任後一年以内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結時までとなる︵法三三

二③︶︒なお︑公開会社でない株式会社︵委員会設置会社を除く︶においては︑定款によって︑任期を最長で選任後

10

年以内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結時まで伸張することができる

︵法

三三

二②

︶︒

取締役と会計参与は︑会社の別の機関であるから︑任期についてお互いが常に連動しなければならないということ 任した旨およびその理由を述べることが認められている られている

25‑3・4‑157 (香法2006)

(10)

定款の変更の効力が生じた時に満了する 会計参与設置会社が︑会計参与を置く旨の定款を廃止する定款の変更をした場合等には︑会計参与の任期は︑当該

︵法

一二

三四

②︑

同法

三一

ニニ

④︶

会計参与の報酬は︑定款にその額を定めていないときは︑株主総会の決議によって定められる

計参与が二人以上ある場合︑各会計参与の報酬等について︑それぞれ個別にその金額を定款に定めておらず︑または︑

株主総会にも決議していない場合には︑定められた総額の範囲内で︑会計参与の協議によって定める︵同条②︶︒た

だし︑委員会設置会社においては︑会計参与の個人別の報酬等の内容は報酬委員会が決定する︵法四0四③︶︒また︑

会計参与︵会計参与が︑監査法人または税理士法人である場合にあっては︑その職務を行うべき社員︶は︑株主総会

において︑会計参与の報酬等について意見を述べることができる

﹁会計参与は︑計算書類の作成やその保存義務を有することから︑業務執行をしない社外取締役よりも︑報酬額を

多くすることが合理的である﹂との見解もありうるが︑実際︑会計参与設置会社になる確率が高いと考えられる﹁中・

小会社﹂においては︑高額な報酬設定には無理があろう︒

会計参与は︑その職務の執行について会計参与設置会社に対し︑費用の前払の請求︑支出した費用︵および支出の

H

以後におけるその利息の償還︶の請求︑負担した債務の債権者に対する弁済の請求をすることができ︑当該会計参

与設置会社は︑その請求に係る費用︵または債務︶が会計参与の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き︑

これを拒むことができない

︵法

三八

0)

( 1 7 )  

はな

い︒

︵ 法

一 二

七 九

③ ︶

︵法

三七

九①

︶︒

10 

25‑3・4‑158 (香法2006)

(11)

「会計参与

J

に係る諸間題(浪花)

① 会計参与は︑取締役・執行役と共同して︑計算書類︵貸借対照表︑損益計算書など

明細書︑臨時計算書類︵法四四一①︶ならびに連結計算書類︵会計監査人設置会杜の場合︵法四四四①︶︶を作成す

ることを職務とする︒なお︑この場合において︑会計参与は︑会計参与報告を作成しなければならない︵法一二七四①︶︒

﹁共同して﹂とは︑取締役・執行役は単独では計算書類を有効に作成できないということである︒したがって取締

﹁計算書類﹂︵と称する文書︶を定時株主総会に提出して承認を得たとしても︑無効な

( 1 9 )  

文書に定時株主総会の承認を得たに過ぎず︑決算は確定しない︒このように会計参与と取締役等の意見が異なった場

合︑①会計参与が辞任する︒この場合は︑会計参与は株主総会において辞任の理由を述べることができる︵法三四五

②)︒会社は︑臨時株主総会を招集して︑後任の会計参与を選任するか︑定款を変更して︑会計参与設置会社である

旨を削除すること等により︑有効な計算書類を作成できるよう対応する必要がある︒⑪会計参与は辞任をせず︑意見

を異にした事項等について︑株主総会で意見を述べることができる︵法三七七①︶︒この場合︑会杜は︑株主総会に

おいて取締役を選任し直すか︑会計参与を解任し︑新たな会計参与を選任するか︑会計参与を解任し︑定款を変更し

( 2 0 )  

て︑会計参与設置会社である旨を削除する等の措置を講ずることになると思われる︒

⑪の場合において︑会計参与が株主総会で意見を述べることにより︑﹁株主総会決議により︑どちらかの意見に基

( 2 1 )  

づき作成された計算書類などを確定することになると思われる﹂︒ただし︑取締役等と会計参与の意見が異なった場

合であっても︑会計参与が株主総会で意見を述べ︑提出された﹁計賃書類﹂︵と称される文書︶が当株主総会で議論

されることにより株主総会において︑取締役および会計参与の意見を考慮され﹁修正した計算書類﹂が確定すれば︑ 役が︑会計参与が承認しない

会計参与の職務

計算書類の作成

︵法

四三

五②

︶︶

およびその附属

25-3•4-159 (香法2006)

(12)

しなければならない 当該﹁計算書類﹂は︑有効な文書となり決算が確定すると考えて良いのかという疑問が残る︒

なお︑会計参与は︑計算書類等の作成をするため︑いつでも︑会計帳簿またはこれに関する資料︵書面あるいは電

磁的記録︶を閲覧および謄写することができるし︑取締役︑執行役︑支配人その他の使用人に対し会計に関する報告

︵法

三七

四②

︶︒

さらに︑会計参与は︑その職務を行うため必要があるときは︑会計参与設置会社の子会杜に対して会計に関する報

告を求め︑また︑その職務を行うため必要があるときは︑会計参与設置会社もしくはその子会社の業務および財産の

︵同条③︶︒なお︑会計参与から報告や調査を求められた子会社は︑正当な理由がある

計算書類等の保存・開示

︵ 同

条 ④

︶ ︒

② 

会計参与は︑計算書類等を株式会社とは別個に︑会計参与の定めた場所︵会計参与の事務所等︶に五年間設置保存

︵ 法

一 二

七 八

① ︶

なお︑会計参与設置会社の株主および債権者は︑会計参与設置会社の営業時間内であれば︑

対し︑計算書類の閲覧.謄写の請求ができる︵同条②︶︒

このような規定が置かれたのは︑会社債権者等が会社の営業所において計算書類の閲覧等を請求することは︑気ま

ずい思いなしには不可能であるといわれていた点を改善し︑計算書類の開示の実効性を強化しようとするものであ

( 2 2 )  

る︒さらに︑会社と会計参与とが別に計算書類を保存すれば︑会社が計算書類を虚偽記載・改ざん等の不正な行為を

することを防止し︑計算書類の適正性に対する信頼を高めることになる︒ちなみに︑会社において保存・開示される ときは︑その報告または調査を拒むことができる 状況を調究することができる を求めることができる

いつでも︑会計参与に

25-3•4-160 (香法2006)

(13)

I

会計参与」に係る諸問題(浪花)

ついて必要な説明をしなければならない してその通知を発しなければならない

︵法

三七

六③

︶︒

︵法三六八②︶︑会計参与

ただし︑請求できる株主や債権者の範囲をどう考えるのか︑また︑開示請求者が当該有資格者であるかどうかの確

( 2 4 )  

一定の手続き規定を設けておく必要があるなどの問題点が指摘されている︒さらに︑会計参与設置会社の会

計参与が︑同杜の顧間税理士である場合︑当該規定が関与先企業と税理士の信頼関係に何らかの影響を及ぼすことが

( 2 5 )  

懸念

され

る︒

会計参与の報告義務等

③ 

会計参与は︑その職務を行うに際して︑取締役・執行役の職務執行に関し不正行為または法令もしくは定款に違反

する重大な事実があることを発見したときは︑遅滞なく︑これを株主︵監査役設置会杜にあっては監査役︑委員会等

設置会社にあっては監査委員会︶に報告しなければならない

︵ 法

一 二

七 五

① ︶

取締役会設置会社の会計参与は︑計算書類︑事業報告︑附属明細書︑臨時計算書類および連結計算書類等の承認を

する取締役会に出席し︑必要があると認めるとぎは︑意見を述べなければならない︵法三七六①︶︒

会計参与設置会社において︑前記の取締役会の招集権者は︑その取締役会の日の一週間前までに︑各会計参与に対

また︑取締役会の全員の同意を得て取締役会の招集手続を経ることなく開催するときは

設置会社においては︑会計参与の全員の同意も得なければならない

会計参与は︑株主総会において︑株主から計算書類に関する事項について説明を求められた場合には︑当該事項に

︵法三一四︶︒会計参与は︑取締役と﹁共同して﹂計算書類を作成すること

認な

ど︑

( 2 3 )  

計算書類についても説明義務はない︒

︵ 同

条 ②

︶ ︒

25‑3・4‑161 (香法2006)

(14)

らの者は連帯債務者とする になっているためである︒その結果︑作成した計算書類は会計参与も取締役もすべて自分が目を通して共同で全部を作成したことになり︑当然のことながら︵確かに内部分担の中で自分が作成したところと取締役が作成したところと

( 2 6 )  

があるとしても︶それは全体としての計算書類の作成についての説明義務を負うと考えられる︒なお︑﹁会計帳簿の

記録等であっても︑説明の範囲に含まれてくるとみられる︒その意味において︑会計参与の義務範囲は帳簿記帳以降

( 2 7 )  

の計算書類作成という限定した範囲ではなく︑会計行為の全般に及ぶものと解される﹂と考えられる︒ただ︑通常︑

函 ︶

非常勤務の会計参与力﹁会計行為﹂全般に係る取引内容を詳細に把握する責任や役割を負うことは困難であること

から︑当該説明義務は︑原則︑記帳以降計算書類を作成するまでの範囲に限定されるべきと考える︒

会計参与の責任

会計参与は︑会杜に対して委任または準委任の関係に立ち︵法三三

0)

︑善管注意義務︵民法六四四︶を負う︒し

たがって︑具体的な法律または定款の規定に違反した場合はもちろん︑

を与えたときは︑民法上の債務不履行の一般原則︵民法四一五︶により︑会社に対して損害賠償責任を負うことにな

また︑会計参与は計算書類の作成をする業務を執行する会社の機関であるから︑法定の要件の下︑計算書類の作成

に関して会社あるいは第三者に対して損害を与えた場合には︑会社あるいは当該第三者に対して法的責任を負う︵法

四一一三①︑四二九①︑②二︶︒さらに︑役員等︵取締役・執行役・会計参与・監壺役・会計監査人︶が会杜または第

一二者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において︑他の役員等も当該損害を賠償する責任を負うときには︑これ る ︒

︵ 法

四 ︱

1 0

)

一般的な善管注意義務に違反して会社に損害

一 四

25-3•4-162 (香法2006)

(15)

「会計参与」に係る諸問題(浪花)

対内的︵会社に対する︶責任

一 五

① 

会計参与は︑その任務を怠ったときは︑会社に対してこれによって生じた損害を賠償する責任を負う︵法四二三①︶︒

具体的には︑会計参与が計算書類の作成に関して粉飾等の不正経理をしたために会社が損害を受けた場合に︑会社に

対して生じる債務不履行責任である︒この責任は過失責任であるが︑会計参与がこの責任を負わないためには︑会計

参与の行為に責めに帰すべき事由がなかったことを立証する必要がある︒この会計参与の会社に対する損害賠償責任

︵法

四ニ

︱︱

︱①

︑法

八四

七①

︶︒

この会社に対する責任は︑原則として︑総株主の同意がなければ免除することができない

会計参与がその職務を行うことにつき善意で重大な過失がない場合には︑株主総会の特別決議で

その責任の一部を免除することができる︵法三二五①︶︒また︑監査役設置会社︵取締役が二人以上ある場合に限る︶

または委員会設置会社は︑定款に取締役の過半数︵当該責任を負う取締役を除く︶

ては︑取締役会の決議︶

年分相当額となる

︵法

四二

五①

︵法

四二

四︶

︒た

だし

︵ 法

︱ ︱

1 0

九 ②

八 ︶

によって会計参与の任務僻怠による損害賠償責任の一部を免除できる定めがあるときには︑

この場合の会計参与として会社に負担すべき責任額は︑会計参与が当該会社から会計参与として受け取る報酬の一︱

四一六⑰︒

さらに︑会計参与の当該任務愕怠責任について︑会社があらかじめ定款に定められた額の範囲内で︑会社の定めた

額または最低責任限度額のいずれか高い額を限度とする旨の契約を会計参与と締結できる旨の定めが定款にある場

合︑会計参与は責任限定契約を会社との間で結ぶことができる︵法四︱︱七心︶︒

当該︑﹁会社に対する会計参与の責任の一部免除については︑社外取締役と同じ扱いをしている︒もっとも︑社外 その決議により当該免除をすることができる

︵法

四一

六①

︶︒

に関しては︑株主代表訴訟の対象となる

の同意︵取締役会設置会社にあっ

25-3•4-163 (香法2006)

(16)

取締役が会社の業務を執行した場合には社外取締役としての責任限度額を主張できなくなるのに対し

⑤︑同一一六六⑳︶︑会計参与が事実上会社の業務を執行した場合︵﹁社外取締役﹂的な実体を欠く場合︶でも︑社外取

締役と同じ責任制限の利益︵商法二六六⑱︑⑲︶が失われるわけではない︒それは︑会計参与が会社の業務を執行し

ても︑会計参与としての任務の淵怠となるに過ぎず︑業務担当取締役の地位につくことはないからである﹂との見解

が示されてい︵翠

それに対し︑この事前契約による責任の一部免除については︑会計参与は計算書類などの共同作成者としての責任

( 3 2 )  

を負うことを理由として︑反対の見解も示されている︒すなわち︑計算書類などの作成権限を有する会計参与の責任

( 3 3 )  

を事前契約により免除することは行き過ぎ︑との見解である︒

ただし︑当該免除規定は︑﹁その職務を行うことにつき善意で重大な過失がない場合﹂を前提としており︑会計専

門家である会計参与は︑通常の社外取締役よりは善管注意義務の程度は高いと考えられ︑当該規定が実際上︑どれほ

ど有効であるかは疑問を持たざるを得ない︵後で検討︶︒また︑会計参与が﹁共同して﹂計算書類等を作成するとい

一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従い計算書類等を作成することうことは︑既存の﹁会計行為﹂から︑

( 3 4 )  

であり︵法四三一︶︑通常︑﹁会計行為﹂

である︒これらの意味において︑ の内容︑すなわち︑会社の取引に直接関わる業務ではないことに留意すべき

( 3 5 )  

いわゆる﹁責任制限契約に基づく責任制限﹂規定は存在してよいとも考えられる︒

対外的︵第三者に対する︶責任

② 

会計参与は︑その職務を行うことについて悪意または重大な過失があったときは︑これによって第三者に生じた損

害を賠償する責任を負う︵法四二九①︶︒また︑会計参与は︑計算書類等に記載し︑または記録すべき重要な事項に

︵商

法二

0

一 六

25‑3・4‑164 (香法2006)

(17)

「会計参与

J

に係る諸問題(浪花)

﹁税理士は︑税務に関する専門家として︑独立した公正な立場において︑申告納税制度の理念にそって︑納税義務

者の信頼にこたえ︑租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする﹂︵税理士の使命︶

一般に職業専門家と称されるものには︑弁護士︑医師︑建築士︑公認会計士︑不と規定されている

︵税

理士

法一

︶︒

(—) と思われるものの内︑﹁会計参与と顧間税理士の兼務﹂の問題と︑職業専門家として考えるべき﹁会計参与の受任に 上記確認したように︑会計参与を税理士が受任する場合の問題点は数多く存在する︒ここでは︑その中で最も重要

会計参与と顧間税理士の兼務 係る責任﹂について検討を加えたい︒

四 税 理 士 に 係 る

の問題点

一 七

ついて虚偽の記載もしくは記録をし︑それによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う︵同条②︶︒この場合︑

会計参与がこの責任を免れるためには︑当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明しなければなら

( 3 7 )  

ない︵同項︑但書︶と規定され︑立証責任の転換が図られている︒なお︑以上の一項または二項の要件がみたされれ

( 3 8 )  

ば︑一般の不法行為の要件︵民七0九︶がなくても︑第一二者は会計参与に損害賠償を請求することができる︒

もちろん︑当該第一二者に対する責任については︑当該損害を与えた額を限度として損害賠償責任を負うことになり︑

上記﹁対内的責任﹂のような責任軽減の取り扱いは適用されない︒したがって︑中小企業に関与する税理士が︑会計

参与になる場合には︑このようなかなりの損害賠償に係るリスクが存在していることを認識しなければならない︒

﹁ 会

計 参

与 ﹂

25‑3・4‑165 (香法2006)

(18)

動産鑑定士等︑税理士以外にも多くのものが存在している︒しかし︑職業専門家としての成熟度においては︑格差が

生じているのが現状である︒なかでも︑税理士はその制度の沿革において多くの問題点を包含しており︑いまだ現在

( 3 9 )  

においても発展途上段階にある職業専門家の一っであるといえる︒ただし︑今回の﹁会計参与制度﹂導入の結果︑会

( 4 0 )  

計参与と顧問税理士の兼任を認めたという点において︑この税理士制度は職業専門家へ道を後退した感がある︒

なぜならば︑今回の会計参与制度では︑税理士業務︵税理士法二︶における職業専門家としての独立性が侵害され

るおそれがある︒職業専門家の要件としては︑次の五つの要素が考えられる︒﹁①業務に係る一般原理の確立︑②免

( 4 1 )  

許資格制度の確立︑③職能団体の結成と自律制の確保︑④常利制の排除︑⑤独立性の確立﹂である︒この中で税理士

制度を維持する上︑最も璽要と考えられる要素が︑職業専門家としての独立性の間題である︒すなわち︑税理士が職

業専門家として存在するためには︑言い換えると︑税理士業務を行う場合は︑その職務の対象となる企業の﹁内部﹂

上記で確認したように︑会計参与は︑取締役・執行役と共同して︑計箕書類等を作成することを職務とする︒この

﹁共同して﹂とは︑取締役・執行役は単独では計算書類を有効に作成できないということであり︑会計参与は︑会社

の外部者として計算書類を作成するのではなく︑会社の機関として作成するのである︒

さらに︑会計参与の資格者は︑公認会計士︵監査法人を含む︶または税理上︵税理士法人を含む︶でなければなら

ないが︵法三三一︱︱①)︑兼務禁止規定があり︑会計参与は︑株式会社またはその子会社の取締役︑執行役︑監査役︑

支配人︑その他の使用人︵法三三三③一︶および会計監査人を兼ねることはできない︵法三三七③二︶︑とされてい

会計参与は︑会社内部の独立した機関であるから︑他の独立した機関︑使用人を兼任できないのは当然である︒ま る ︒ ︵

会杜

の機

関︶

であってはならないということである︒

25‑3・4‑166 (香法2006)

(19)

「会計参与」に係る諸問題(浪花)

一 九

た︑会計監木且人が会計参与を兼任できないのは︑会計監査人自らが作成した計算書類等を自らが監木且したのでは︑外

( 4 2 )  

部監査としての意義がなくなるから︑といわれる︒当該会計監査人の兼務禁止に係る根拠は︑その業務内容を考慮し

たものであるが︑会計監壺人が会計参与を兼任できない重要な根拠は︑やはり︑公認会計士︵監査法人を含む︶が職

﹁公認会計士は︑監査及び会計の専門家として︑独立した立場において︑財務書類その他の財務に関する情報の信

頼性を確保することにより︑会社等の公正な事業活動︑投資者及び債権者の保護等を図り︑もって国民経済の健全な

発展に寄与することを使命とする﹂︵公認会計士の使命︶と規定されている︵公認会計士法一︶︒会計監壺人が会計参

与を兼任した場合には︑当該職業専門家としての独立性が侵害されるのである︒

( 4 3 )  

ただし︑公認会計士制度の場合はいずれの理由にせよ︑結果として職業専門家の独立性は維持されることになる︒

それに比して︑税理士業務が当該兼務禁止規定に掲げられていないことから︑﹁顧間税理士は︑通常︑その株式会

( 4 4 )  

杜の使用人等でないので顧問税理士のままで会計参与となることができる﹂とされている︒

しかし︑税理士という職業専門家が税理士業務を対象とする関与先企業に接する場面は︑元来︑外部者︵今後︑﹁取

締役との﹃計算書類等の共同作成者﹄でない﹂という意味︶としての立場からである︒税理士業務の本来的性格は︑

職業専門家としての﹁専門性﹂と﹁独立性﹂と﹁信頼性﹂とを兼ね備えた﹁外部者﹂としての立場からの業務である

そのような職業専門家としての税理士を念頭に置くとき︑顧間税理士が会計参与という内部者となって経営者の下

で取締役と共同して計算書類を作成するということは︑当該税理士の性格からみると馴染めないものとなっている︒

また︑最高裁も税理士業務に対し︑﹁税理士は納税者の求めに応じて税務代理︑税務書類の作成等の事務を行うこと と

いえ

る︒

業専門家であることに依拠すべきと考える︒

25‑3・4‑167 (香法2006)

(20)

(二)

を業とするものであるから︵税理士法二︶︑税理士に対する所得の秘匿等の行為を税務官公署に対するそれと同視す

ることはできないが︑他面︑税理士は︑税務に関する専門家として︑独立した公正な立場において納税義務の適正な

実現を図ることを使命とするものであり︵税理士法一︶︑納税者が課税標準等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽し︑

又は仮装していることを知ったときは︑その是正をするよう助言する義務を負い︵税理士法四一の三︶︑右事務を行

うについて納税者の家族や使用人のようにその単なる履行補助者の立場にとどまるものではないこと︑右によれば︑

Xは︑当初から所得を過少に申告することを意図した上︑その意図を外部からも窺い得る特段の行動をしたものであ

( 4 5 )

4 6 )

 

るから﹂と判不し︑税理士業務は関与先企業の﹁外部﹂として行われるとの判断を示している︒

したがって︑税理士が会計参与に就任すること自体に問題はないと考えるが︑税理士が当該企業の顧問税理士を兼

務することには︑職業専門家としての税理士の存在意義に係る重要な問題である︒同一の関与先企業に対して︑職業

専門家が︑あるときは当該企業の﹁内部﹂として︑またあるときは﹁外部﹂としてその粟務を履行することは︑本来

の税理士業務における職業専門家性が侵害される結果となる︒当該兼務についての商法上の禁止規定は存在しない

が︑会計参与に就任した税理士は︑従来の税理士制度を維持する上で当該会社の顧間税理士に就任すべきではない︒

会計参与の受任に係る﹁会計専門家﹂たる責任

上記のように︑会計参与に対しては一一種類の責任を負わされる︒﹁対内的責任﹂について会計参与は︑社外性を有

することから︑社外取締役に認められる責任制限制度︵①株主総会決議による責任制限︑②定款規定+取締役会決議

に基づく責任制限︑③定款規定+責任制限契約に基づく責任制限︶が認められ︑この責任制限制度は︑いずれも︑会

計参与が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときに限り︑最大限︑会計参与が会杜から受ける報酬等の二

1

0  

25‑3・4‑168 (香法2006)

(21)

「会計参与」に係る諸問題(浪花)

この責任制限制度の存在から︑税理士の中には︑﹁会計参与を受任しても︑その損害賠償責任は恐れるに足りない﹂

との風潮も存在する︒ここでは︑当該責任が︑それほど軽いものではないことを確認してみたい︒

当該責任の中心は︑民事責任の一種である︑いわゆる善管注意義務の履行問題といえる︒今回︑会計参与の受任資

格として税理士が含められたのは︑税理士法二条一一項に﹁税理士は︑前項に規定する業務︵以下﹁税理士業務﹂とい

う ︒ ︶

のほか︑税理士の名称を用いて︑他人の求めに応じ︑税理士業務に付随して︑財務書類の作成︑会計帳簿の記

( 4 8 )  

帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる﹂との規定に依拠するものであり︑また︑実際︑中小

企業等において税理士は︑当該企業の会計分野の担当を行ってきたためでもある︒そこで検討を要する点は︑上記職

業専門家︵会計専門家︶である税理士が会計参与を受任することに依拠する当該責任は︑職業専門家でない社外取締

( 4 9 )  

役に対する当該責任等と比べて︑より重い責任が課される可能性があるという問題である︒

ここにいう職業専門家たる善管注意義務とは︑職業専門家が自己の特殊な技能ないし知識を傾注することを前提と

して︑顧客との間でなんらかの給付を行う関係に入ったとき︑この職業専門家は︑当該具体的取引の基礎を形成して

( 5 0 )  

いる技能ないし知識を傾注して︑給付を行わなければならないという義務である︒この職業専門家の義務は︑一般人

の有する義務と異なり︑専門的知識︑技能に応じた﹁高度の注意義務﹂を負うという面と︑依頼者から信任を受けて

裁量的判断をしなければならないという意味での﹁忠実義務﹂を負うという側面の一︱つに区分して考えられるべきで

( 5 1 )  

あるとする見解もある︒

ただし︑職業専門家たる税理士の善管注意義務の中心的課題は︑情報開示・説明義務であり︑高度の注意義務の根

( 5 2 )  

底を成すものといえる︒したがって︑税理士業務についての善管注意義務に対する責任は︑殊更に︑﹁高度の注意義 年分を超える部分を免除することができるとされている︒

25‑3・4‑169 (香法2006)

(22)

( 5 3 )  

務﹂と﹁忠実義務﹂に区分して考えられる必要性は少ないと考える︒すなわち︑税理士の善管注意義務は︑職業専門

家としての特殊な技能ないし能力を傾注することを前提として︑依頻者との間でなんらかの給付を行う関係に入った

とき︑当該税理士は︑税理士が形成した税法・会計等についての原理とその応用を履行することにより︑当該依頼者

の会計等に係る利益が最大となるように︑その給付を行わなければならない義務といえる︒

したがって︑当該﹁対内的責任﹂について︑税理士が会計参与としての通常の職務僻怠について責任を負うことは

もちろんであるが︑職業専門家︵﹁会計専門家﹂︶である税理士が負う︑ある意味で特別の﹁会計業務に係る責任﹂が

( 5 4 )  

存在していることに留意しなければならない︒すなわち︑﹁対内的責任﹂に対する﹁責任制限制度﹂の適用は︑会計

参与が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときに限り認められるものであるから︑職業専門家である税理

︑︑

︑︑

︑︑

士が会計参与を受任した場合︑当該﹁責任制限制度﹂が適用されないケースが多くなるのではなかろうか︒

一方︑会計参与を受任した税理士に対する第一二者責任についても間題は多く存在し︑ある意味ではより重大な問題

を包含するともいえる︒そこで︑まず︑会社法四一一九条の前身である商法二六六条ノ︱︱‑︵以下︑﹁旧法﹂という︒︶に

ついて若干の検討を加えることにする︒

旧法は︑取締役の違法な職務執行によって第一二者が損害を受けた場合に︑取締役個人がその第三者に対して︑損害

賠償責任を負うことを定めたものである︒裁判例での事案は︑契約や不法行為に基づき会社に対して請求権を持つ第

( 5 5 )  

三者が︑会社の倒産などのために満足を得られず︑当該条項を利用して取締役個人の責任を追及することが多い︒

旧法一項は︑職務を行うにつき悪意または重過失のあった取締役の責任について規定している︒この責任の法的性

函 ︶

質については学説が対立している力︑最高裁は︑﹁本条一項前段の規定は︑株式会社の取締役が悪意または重大な過

25‑3・4‑170 (香法2006)

(23)

「会計参与」に係る諸問題(浪花)

失により︑会社に対する善管義務︑忠実義務に違反し︑これによって第三者に損害を被らせたときは︑取締役の任務

僻怠の行為と第三者の損害との間に相当の因果関係がある限り︑会社がこれによって損害を被った結果︑ひいて第三

者に損害を生じた場合であると︑直接第三者が損害を被った場合であるとを問うことなく︑当該取締役が直接第三者

( 5 7 )  

に対し損害賠償の責に任ずべきことを定めたものである︒﹂との見解を示した︒

旧法二項は︑株式申込証の用紙等や計算書類︑その他附属明細書の重要な記載について︑虚偽記載等をした取締役

の責任について規定している︒当該条項は︑昭和五六年に改正が行われ︑上記虚偽記載等をなすことについて注意を

怠らなかったことを取締役が証明すれば責任を負わないというただし害きが設けられ︑取締役の責任は過失責任とな

り︑証明責任が取締役側に転換された︒当該証明については︑﹁法第一一項は︑単に﹃注意ヲ怠ラザリシコトヲ証明シ

タルトキハ﹄と規定していることからみて︑取締役は軽過失がないことを証明することを要し︑重過失がないことの

( 5 8 )  

証明のみは責任を免れることはできない﹂と解すべきとの見解も存在する︒

上記旧法を踏まえて︑会社法四︱一九条に係る会計参与の第三者責任を考えると︑責任問題が問われるケースとして

は︑同条二項による責任追及が中心となるのではなかろうか︒つまり︑会計参与は︑計算書類等に記載し︑または記

録すべき重要な事項について虚偽の記載もしくは記録をし︑それによって第三者に生じた損害を賠償する責任を追及

される場合が多いと思われる︒この場合︑会計参与がこの責任を免れるためには︑当該行為をすることについて注意

を怠らなかったことを証明しなければならない︵同項︑但書︶と規定され︑立証責任の転換が図られている︒やはり︑

当該証明についても会計参与は︑軽過失がないことを証明することを要し︑重過失がないことの証明のみは責任を免

れることはできないと解される可能性は高いと考える︒

ただし︑旧法の昭和五六年改正後は︑同二項の責任についての裁判例は少なく︑かつ︑取締役の責任が否定された

25-3•4-171 (香法2006)

(24)

事例は︑大部分が因果関係のないことを理由としているため︑当該過失の有無について判断を示した事例は殆どない

( 5 9 )  

とされる︒しかし︑今回︑会計参与という新しい責任追及対象者が現れるのであるから︑旧法時代のように当該責任

追及事案が希である可能性は低いと考える︒

それは︑特に︑税理士が関係するであろう会杜は︑中小企業であることに関連する︒例えば︑中小企業が倒産した

場合を考える︒当該会社の債権者は︑当該会社からの損害回復は難しい場合が多い︒さらに︑当該会社の取締役は︑

当該会社の借入金等の連帯保証人をしていることが少なくなく︑当該会社が倒産すれば︑同時に︑取締役の支払能力

もなくなっている場合が多い︒その結果︑会社が倒産した場合︑損害賠償能力が残るのは会計参与だけということも

( 6 0 )  

充分考えられる︒そのため︑会計参与の個人財産から当該損害回復を図ろうとする債権者が出てくることは十分予想

( 6 1 )  

される事態なのである︒

つぎに︑将来︑﹁会計参与を引き受けた税理士等が﹁遭遇するだろうと考えられる類似事例﹂として︑﹁旧法二項に

( 6 2 )  

おける取締役責任﹂の追及事例を簡単に確認したい︒当該追及事例の概要はつぎの通りである︒

原告X

は ︑

A社から受注した下請け工事を完成して引き渡したが︑その後︑A社が破産し︑当該工事の代金支払い

のために同社から交付されていた約束手形が決済不能となり︑その手形相当額の損害を被った︒原告

Xは︑﹁当該損

害は

A社が粉飾決算を行い︑その結果︑XがA社の財務状況を誤信して工事を受注したために生じたものである﹂

( 6 3 )  

と主

張し

A社の取締役であったYに対し︑旧法二項に基づき︑当該手形相当額の損害賠償の請求をした事例である︒

A社の粉飾決算と下請工事業者Xの工事代金貸倒れ損失との間の相当因果関係について裁判所は︑﹁A社は︑バブ

ル経済の崩壊による売上高減少により平成五年四月期決算当時には金融機関から新規融資を受けることができない状

ニ四

25‑3・4‑172 (香法2006)

(25)

「会計参与」に係る諸問題(浪花)

態にあったが︑同年度及び翌年度の売上高を水増しして︑損益が赤字であるにもかかわらず黒字であるかのように偽

装した粉飾決算を行い︑また︑

J

41│ 

A

杜は︑平成六年六月︑B社からビル新築工事を受注し︑その内装工事を

X

に発注し

た ︒

X

は︑本件内装工事がA社との初めての取引であったので︑取引銀行にA社の信用調査を依頼したところ︑同銀

A

社の信用状態に特に間題はない旨の回答を

した

A

杜の粉飾決算に依拠した倍用調査機関の調査報告書に基づき︑

X

は︑本件内装工事を受注し︑その工事を完成して引き渡したが︑工事代金として受け取った

A

社振出の約束

手形九通合計四︑六六六万円が決済不能となり︑A社は破産したことが認められる︒A

社の粉飾決算の目的は︑特定 建設業許可の取得︑銀行借入れ及び工事の受発注を可能にすることにあったが︑金融機関が借替えを拒否すれば倒産

することが見込まれる状態にあったのであるから︑右粉飾決算と

X

の工事受注及び工事代金の貸倒れ損失との間には

相当因果関係があると認められる︒﹂と判示した︒

そして︑経理担当の取締役総務部長

Y

が関与したとされる会社の粉飾決算について︑

に過失がなかったかどうかの問題となる︒この問題に対し裁判所は︑﹁

Y

は ︑

︱ 一 五

Y

が当該決算書を作成した際

A

杜の粉飾決算に係る決算書類を作成 したのであるから︑決算書類の作成につき注意を怠らなかったとは到底認められないのみならず︑粉飾決算に係る決 算書類の作成に異議を述べることが困難であった事情はないから︑これを阻止する期待可能性がなかったともいえな

い︒

また

Y

が使用人兼務役員であって︑部長の名目で給与を受け︑役員報酬の名目では報酬を得ていないとしても︑

取締役としての責任を阻却しない︒したがって︑

Y

は︑会杜の粉飾決算及び相当因果関係を有する損害について責任

( 6 4 )  

を負う︒﹂との判断を示した︒

なお︑過去の裁判例からすると虚偽記載があった決算書類等を原告側が見ていなかった場合は︑当該決算書類等と

( 6 5 )  

第一二者が被った損害との因果関係が否定される事例が多い︒この事例の場合︑当該虚偽記載がなかったとすれば銀行

25-3•4-173 (香法2006)

(26)

や調査会社などの第一二者の回答や行動が違ったものになり︑原告が取引を開始・継続することはなかったと考えられ

るため︑当該判決では虚偽記載と損害との間に因果関係が認められたものである︒しかし︑前述の通り同二項の責任

についての裁判例は少ないことから︑誰がいかなる注意義務を尽くしたときに無過失の立証があったとみるべきかに

ついては︑未だ裁判例が十分に積み重ねられているとはいえない︒その意味においてもこの事例は︑当該責任につい

( 6 6 )  

て直接判断を示した数少ない一例として参考になる︒

上記事例を参考にすると︑会計参与を受任した税理士等が︑当該損害賠償についてその責任を追及され︑その責任

が肯定される可能性はどうであろうか︒

そもそも会計参与制度の﹁意義﹂は︑﹁会計参与とは︑株主総会により選任され︑会計に関する専門的識見を有す

る者として︑取締役・執行役と共同して計賃書類を作成するとともに︑当該計算書類を取締役・執行役とは別に保存

し︑株主・会社債権者に対して開示すること等をその職務とする株式会社の機関﹂であり︑会計参与の﹁機能﹂は︑

﹁特に︑会計監査人の設置されていない中小企業において︑計算書類の調整・作成等の業務を行う有資格者である税

理士・公認会計士等が︑取締役・執行役と共同して計算書顆を作成し︑取締役・執行役とは別に計算書類を保存・開

示する職務を担うことにより︑取締役・執行役による計算書類の虚偽記載や改ざんを抑止し︑計算書類の記載の正確

( 6 7 )  

さに対する信頼を高めること﹂である︒

よって︑会計参与が関与した計算書類等である場合︑当該計算書類の虚偽記載等と第三者が被る損害の因呆関係は︑

旧法に係る取締役の事例に比べて高い確率で肯定される可能性があると思われる︒実際︑旧法に係る取締役の事例に

ついても︑﹁確かに︑第二番原告らが計算書類そのものを見ていなくても︑銀行等他の第一二者が真実の計算書類等を

二六

25-3•4-174 (香法2006)

(27)

「会計参与」に係る諸問題(浪花)

五 む す び に か え て

したがって︑﹁会計参与を受任した税理士﹂

つ︑当該責任が肯定される事例が起こる可能性が高いことが懸念される︒

法務省は一︱月一一九日︑会社法に委任された技術的・細目的事項を定めるため﹁会社法施行規則案﹂のほか八つの

法務省令を公表︑パブリックコメントに付した︵平成一七年︱一月二九日から同年︱二月二八日まで︶︒会計参与に

係る部分としては︑法三七四条の﹁会計参与報告書の作成﹂に関する﹁省令六五条︵案︶﹂である︒

当該条項の設定理由・背景として法務省は︑﹁会計参与については︑会計に関する有資格者として会社の計算書類

の作成の適正さを担保する役割を担うことが期待されている︒しかしながら︑計箕書類そのものからは︑当該会計参

与がどのようにその作成に関与したかが明らかとならないため︑関与の内容を参与報告の記載事項とし︑株主・債権

者に対して開示することとした︒﹂と述べていが︒ な状況になると考える︒ 見ていればー

︵第

一審

被告

二七

の信用不安が増大して︑その結果第一審原告らも取引を中止していたであろうといえる

( 6 8 )  

ような事情があれば︑右因果関係を肯定することも可能ではある﹂と︑原告側が虚偽記載の決算書等を直接見ていな

くても︑当該因果関係は肯定されることが可能であると判示した事例が存在していることに注日すべきである︒

また︑会社法四二九条二項に係る損害賠償責任の追及についても同様に︑会計参与の﹁意義﹂や﹁機能﹂から︑会

計参与がこの責任を免れるために当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明することはかなり困難

の第三者に対する責任追及は︑今後︑充分起こりうると考えられ︑か

25‑3・4‑175 (香法2006)

参照

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