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二次性副甲状腺機能亢進症

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Academic year: 2021

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特  集 最近の耳鼻咽喉科治療

二次性副甲状腺機能亢進症

昭和大学横浜市北部病院耳鼻咽喉科

  門倉 義幸

は じ め に

 副甲状腺は 1850 年ロンドン動物園でインドサイ が死亡し解剖された際に Richard Owen が初めて発 見した臓器である.通常,甲状腺背側の左右上下に 合計 4 腺存在し,米粒大で重量は 40 mg 前後と人 体では最小の臓器である.

 副甲状腺外科治療の歴史は 1925 年 Felix Mandl の原発性副甲状腺機能亢進症に対する報告から始ま り,二次性副甲状腺機能亢進症外科治療に関しては 1960 年 Nicolson が初回である.われわれの施設で は開院当初より副甲状腺外科治療に関する研究報告 を行ってきた1‑3)

 二次性副甲状腺機能亢進症は慢性腎臓病に伴い発 症し,血管石灰化,骨代謝異常を呈し進行した場合 には生命予後不良となる疾患である.その発症に関 与するのは,1)腎の P 排泄低下に起因する血清 P 上昇,2)病腎での 1α,25(OH)2-D3 産生減少,3)

小腸からの Ca 吸収低下,4)血清 Ca イオン濃度低 下,5)PTH 感受性低下,6)副甲状腺におけるビ タミン D 受容体数の減少,などであり,さまざま な因子が複雑に関与し副甲状腺ホルモン過剰分泌か ら副甲状腺過形成を生じる.

 二次性副甲状腺機能亢進症の治療は,食事指導を 中心に炭酸カルシウム製剤,リン吸着剤,活性型ビ タミン D 製剤,シナカルセト塩酸塩等を投与する 内科的治療が第一選択となるが,制御困難な症例に 対しては副甲状腺摘出術(以下PTx)の適応となる.

 透析医学会ガイドラインでは,慢性腎臓病患者に 関して,生命予後改善を目的として血清 P 濃度 3.5

〜 6.0 mg/dl,血清補正 Ca 濃度 8.4 〜 10.0 mg/dl を 管理目標値として設定し,副甲状腺ホルモンは,

intactPTH( 以 下 iPTH)60 pg/ml 以 上 240 pg/ml 以下の範囲に管理することが望ましいとされてい

る.内科治療を行っても血清 P,Ca,iPTH の三つ の値を同時に管理目標内に維持できない場合には,

PTx を含めた副甲状腺インターベンション治療の 適応を検討するとされ,PTx の適応に関しては,

慢性腎臓病を管理する内科医が決定している現状に ある.

 特に iPTH500 pg/ml を超える場合には,高度な 二次性副甲状腺機能亢進症と捉えられ,こうした症 例に PTx を行うことで生命予後が改善する4‑8).  本稿では当科で施行した PTx 症例 272 例につい て,治療成績,生命予後を中心に解説する.

対象と方法

 観察期間は 2001 年 4 月から 2014 年 3 月までの 13 年間である.この期間に昭和大学横浜市北部病 院耳鼻咽喉科で施行された PTx 総数は 353 例ある.

内訳は原発性副甲状腺機能亢進症 56 例,二次性副 甲状腺機能亢進症初回手術 272 例,二次性副甲状腺 機能亢進症再手術 25 例である(表 1).

 二次性副甲状腺機能亢進症初回手術 272 例(男女 比 138:134,年齢 18 〜 82 歳,平均 55.7 歳,透析 期間 1 〜 36 年,平均 13.2 年,術前 iPTH83 〜 2,616  pg/ml,平均 831 pg/ml)を対象として,手術件数 の年次推移,摘出腺の病理組織,手術成績,合併 症,生命予後を調査した.手術成績については,富 永らの報告を参考に術後 iPTH の推移により評価し た.即ち術後 iPTH が速やかに 60 pg/ml 以下に低

表 1 手術件数 観察期間:2001 年 4 月〜 2014 年 3 月 副甲状腺手術総数:353 例

原発性副甲状腺機能亢進症:56 例

二次性副甲状腺機能亢進症初回手術:272 例 二次性副甲状腺機能亢進症再手術:25 例

(2)

下したものを全摘群,61 pg/ml 以上の症例を遺残 群とした9).合併症に関して術後出血と反回神経麻 痺の頻度を調査した.生命予後に関しては紹介元透 析 施 設 52 施 設 に 確 認 し 追 跡 可 能 症 例 に 対 し て Kaplan-Meier 法で生存率を算出した.

手術手技副甲状腺全摘術

 前頸部に 4 cm の横切開を行い,電気メスで皮弁 を挙上,ラッププロテクター(3 〜 5 cm)を挿入 する.白線上を剥離して甲状腺峡部を露出,探索側 の甲状腺葉と前頸筋を分離して,そのまま外側で頸 動脈を確認し,頸動脈鞘を剥離しつつ中甲状腺静脈 を結紮処理する.甲状腺は吸収糸(各葉 3 本縫合)

を用いて牽引しつつ,甲状腺背側を中心に副甲状腺 の探索に入る.この際,入念な視触診を行う.特に 触診については指の腹を用いるよう意識することで 周囲組織との可動性の違いが判別可能となり,小さ く軟らかい副甲状腺も確認できる.5 腺以上存在す る過剰腺症例に対応するため,たとえ 4 腺摘出して も必ず胸腺舌部を切除する.

 頸部操作を終了した後に移植腺を選択する.移植 腺は迅速病理診断で副甲状腺であることを必ず確認 して行い,非シャント側の腕橈骨筋上の皮膚を

15mm 程切開し筋肉内に 1

×

1

×

1 mm 程度に細切 した副甲状腺を 5 片移植する.

 摘出した副甲状腺が 3 腺以下の症例および摘出腺 が全て高度に腫大した症例では再発する可能性が否 定できない為に移植は行わない(図 1).

術前禁煙治療

 喫煙者への外科治療においては,術後合併症を有 意に上昇させることが報告されている10).合併症を 予防するためにも外科治療は喫煙者を禁煙へ誘導す る良い契機と考えられる.

 PTx を行う最大の理由は心血管イベントの回避,

ひいては生命予後の改善であるが,全 272 例中 60 例 22%が現在喫煙者であった.ニコチン依存度質 問 票(TDS:Tobacoo Dependence Screener) を 用いて調査したところ全ての喫煙者がニコチン依存 症であった.喫煙は心血管イベントの最大の原因で あり,内科医と共同で PTx 術前から禁煙支援を行 うことが大切である.全例にバレニクリン投薬を中 心とした禁煙治療を行った.

 当科では頭頸部外科治療前の患者を中心に 230 例 のニコチン依存症患者に禁煙治療を行い 72%が禁 煙を達成している.

図 1 副甲状腺全摘術について 1.前頸部 4 cm 横切開

2.電気メスで皮弁挙上,ラッププロテクター(3 〜 5 cm)挿入 3.白線上を剥離し甲状腺峡部露出,甲状腺と前頸筋を分離 4.頸動脈鞘を剥離し直上で中甲状腺静脈を結紮切離 5.甲状腺を吸収糸(各葉 3 本)で牽引

6.副甲状腺の探索

  (指の腹を用いた入念な触診で小さな副甲状腺も確認できる)

7.胸腺舌部切除

8.自家移植(副甲状腺を 1×1×1 mm 片に細切後,5 片程度を腕橈骨筋内へ移植.摘出腺 数が 3 腺以下,全腺高度腫大例は移植しない)

(3)

結 果

 手術件数の年次推移は,シナカルセト導入後の 2008 年をピークに減少傾向となった(図 2).

 摘出総腺数は 1,078 腺,病理診断は全て副甲状腺 過形成で悪性化した症例は無かった.各症例の摘出 腺数は 6 腺 3 例(1%),5 腺 13 例(5%),4 腺 231 例(84%),3 腺 22 例(8%),2 腺 2 例(0.7%),1 腺 1 例(0.3%),平均 3.96 腺,5 腺以上の過剰腺症 例は 15 例(6%)であった(表 2).

 異所性副甲状腺は 6 腺(2.2%)あり縦隔 3 例

(1.1%),上頸部(声門レベル)1 例(0.4%),頸動 脈鞘内 1 例(0.4%),甲状腺内 1 例(0.4%)であっ た(図 3,4,5).

 術直後の成績を iPTH 値で評価すると, 術直後 iPTH は 1 〜 1,292 pg/ml(平均 34.6 pg/ml)であり,

副甲状腺全摘群(術直後 iPTH ≦ 60 pg/ml)242 例

図 2 手術件数の年次推移

シナカルセト塩酸塩導入後に手術件数が減少した.

シナカルセト導入

図 3 異所性副甲状腺と頻度

異所性副甲状腺は 6 例に認め縦隔が半数を占めた.

表 2 摘出副甲状腺数の詳細 91%の症例で 4 腺以上摘出できた.

腺数 症例数(%)

6 5 4 3 2 1

  3( 1%)

 13( 5%)

231(85%)

 22( 8%)

  2(0.7%)

  1(0.3%)

総摘出腺数:1,078 腺

図 4 左上頸部異所性副甲状腺症例の CT 声門レベルに副甲状腺腫が確認できる.

図 5 甲状腺内副甲状腺症例 甲状腺を切開すると副甲状腺が確認できた.

(4)

(88.9%),副甲状腺遺残群(iPTH > 60 pg/ml)30 例(11.1%)となった(表 3).

 合併症は,術後出血による再手術 2 例(0.7%),

反回神経麻痺は 14 例に認めたが 10 例が回復し,永 続性反回神経麻痺を 2 例(0.7%)に認めた(表 4).

 祖生存率は評価可能症例 251 例で,5 年生存率 92.2%,10 年生存率 82.2%であった(図 6).

副甲状腺外科治療

 副甲状腺外科治療に際し重要なことは,副甲状腺 の発生学的特徴,すなわち,第 3 咽頭嚢より下副甲 状腺が,第 4 咽頭嚢から上副甲状腺がそれぞれ発生 するという特徴を知ることにある.発生第 5 週,第 3 咽頭嚢はその背側翼が分化し下副甲状腺となり,

その腹側翼が胸腺を形成する.やがて両腺の原基は 咽頭壁との連絡を失い,胸腺は下副甲状腺をひきつ けながら尾内方に下降する.次いで,下副甲状腺は 甲状腺の背表で定位し,胸腺は胸郭内の最終的位置 へ急速に移動し,そこで反対側の対応部と癒合す る.対して上副甲状腺は第 4 咽頭嚢の背側翼の上皮 が副甲状腺を形成し,咽頭壁との連絡を失うと尾方 に移動してきた甲状腺に接着し,ついには甲状腺の 背表に上副甲状腺として見い出されるようにな る11).この際,移動距離の長い下副甲状腺に位置異 常が多く,手術に際し時に胸腺内に副甲状腺が発見 されることも理解しやすい.

 一方で 5 腺以上存在する過剰腺を有する頻度につ

いては,登らが 754 例の剖検にて 70 例 9.3%に存在 したと報告している12)

 われわれの施設での過剰腺頻度も 6%とほぼ同様 の結果であり,副甲状腺が 5 腺以上存在する可能性 を常に考慮する必要がある.

 過剰腺が甲状腺から離れた部位に異所性副甲状腺 として存在することもあり,異所性副甲状腺の生じ やすい縦隔,甲状腺内,上頸部に関しては術前から 画像検査で確認しておく必要がある.異所性副甲状 腺の頻度については,原発性副甲状腺機能亢進症手 術 866 例中 13.9%に認め,胸腺内に多く存在し,次 いで甲状腺内,縦隔内に存在したとする報告があ る13).極めて稀に迷走神経鞘内や下咽頭梨状陥凹に 存在した報告もある3,14)

 以上よりわれわれの施設における術前検査では,

全例に頸胸部 CT と頸部超音波検査を施行してい る.超音波検査では副甲状腺は,境界明瞭でエコー レベルが甲状腺より低く比較的均一な内部エコーを  有する腫瘤として描出される.CT における density  は,筋肉と甲状腺の中間位であることが多いが,と きに嚢胞状となることがある.CT・超音波検査に 加え副甲状腺シンチグラムを行っても,多くの症例 で摘出すべき全腺の描出率は低く,手術時の入念な 探索が重要となる.

 PTx を行う術者は第 5 腺目の存在する可能性,

副甲状腺が甲状腺周囲に存在しない異所性副甲状腺 の可能性を常に認識する必要がある.

表 4 術後合併症

1.反回神経麻痺    14/272(5.1%)

     永続性     2/272(0.7%)

     一過性    10/272(3.7%)

     不明      2/272(0.7%)

2.術後出血       2/272(0.7%)

反回神経永続麻痺を 0.7%に認めた.

表 3 手術成績

全摘群(iPTH ≦ 60 pg/ml):242 例(88.9%)

遺残群(iPTH > 60 pg/ml):   30 例(11.1%)

(再手術:6 例…頸部遺残腺 3 例,縦隔遺残腺 3 例)

術後 iPTH による評価で 88.9%が全摘群となった.

図 6 生存曲線

追跡可能症例 251 例の 5 年生存率 92.2%,10 年生存率 82.2%であった.

(5)

 術後合併症として,反回神経永続麻痺を 2 例,止 血処置を要した術後出血を 2 例に認めたが反回神経 永続麻痺について,当科では 0.7%と低率と思われ たが,Steurer らは 0%であったと報告しており15), 神経走行の個体差を考慮したより慎重な神経周囲操 作が必要と考えられた.

   頭頸部外科手術における脳梗塞発症リスクは非 頭頸部手術で 0.08 〜 0.2%に対して頭頸部外科手術 で 4.8%生じるとした報告がある16‑18).PTx を含め た頸動脈周囲操作を伴う頭頸部外科手技において,

頸動脈鞘周囲の剥離操作は常に愛護的に行う必要が ある.頸動脈に対しての器械的刺激を最小限にする ことによって,術後の脳梗塞発症リスクを低減させ ることができる.

 二次性副甲状腺機能亢進症手術後の治療効果判定 として,手術前後の iPTH を測定し,その推移を知 ることが重要である.副甲状腺が遺残すれば iPTH は持続高値を呈することになる.当院においては 272 例中 242 例で速やかに iPTH は低下した.しか しながら 30 例において術後 iPTH が 61 pg/ml 以上 の高値となった.これらは,いわば手術不成功例で あり異所性副甲状腺の存在も考慮しつつ遺残腺の再 検索が必要と考えられる.

再発症例への二次治療

 初回手術後の経過観察中に副甲状腺が遺残したと 思われた 30 例のうち 6 例に再手術を行った.内訳 は縦隔遺腺摘出症例 3 例,頸部遺残腺摘出 3 例で あった.頸部に遺残した 3 例については,初回手術 で摘出できた可能性がある反省症例である.

 再手術後の 6 例は iPTH が速やかに低下し正常化 した.現在,残り 24 例については内科的治療で制 御されている.

 手術成績は全対象 272 例に対して 248 例(91.2%)

が外科治療で制御され,10 年祖生存率 82.2%と良 好な結果となった.

 二次性副甲状腺機能亢進症を PTx で制御するた めには初回手術時に過剰腺,異所性腺の可能性を念 頭に置き,副甲状腺を播種させることなく確実に全 摘することが重要である.

二次性副甲状腺機能亢進症に対するPTx研究会  二次性副甲状腺機能亢進症に対する PTx 研究会

(Parathyroid Surgeon of Society in Japan:PSSJ)

は,二次性副甲状腺機能亢進症を外科治療で適切に 制御することを目的に 2009 年に設立され,国内 105 施設と連携し PTx 症例の集積,登録管理を行っ ている.登録された症例数は 2010 年 458 例,2011 年 395 例,2012 年 365 例,2013 年 276 例,2014 年 264 例である.こうした登録症例を元に PTx の適 応に関する外科サイドからの提言を行っている.

文  献

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参照

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