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雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要

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Academic year: 2021

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(1)

児童・思春期精神科病棟における家族支援の現状 : アンケート自由記述の分析による自信に影響する要

著者 藤田 藍津子, 石田 徹

雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要

巻 17

ページ 17‑22

発行年 2017‑03

出版者 東京家政大学附属臨床相談センター

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010105/

(2)

1.はじめに

 近年、児童虐待や子どもに対する残酷な犯罪、

少年犯罪など、子どもをめぐる様々な事件につ いて報道されている中、児童・思春期にある子 どもに対するケアへの関心が高まり、児童・思 春期精神科病棟を含めた医療の必要性が求めら れている。平成 27 年4月時点では、全国児童 青年精神科医療施設協議会の 26 の正会員施設 が設置され、今後も都道府県単位で整備が進め られる予定である

1)

。このような現状の中で、

子どもの心を専門とする、児童・思春期精神科 看護のニーズが高くなっていることが予測され る。児童・思春期精神科病棟に勤務している看 護師は、病棟で子どもの心のケアをする一方、

多くの看護師が家族も支援している。しかし、

看護師は、家族支援に対し困難感を抱いて従事 している

2)

。本来子どもが育ち、成長する場所 は家族の元であり、看護師が家族支援に対する 困難感を明らかにすることは、家族支援への具 体的な支援方法の検討において意義があると考 える。

 以上のことにより、本研究の目的は、児童・

思春期精神科病棟の看護師が実践する家族支援 の現状を調査することによって、児精病棟の家 族支援の自信の程度とそれに影響する要因を明 らかにする。

2.用語の定義

 本研究では、「家族支援」を以下のように定 義する。

 「家族支援」とは、支援者(看護師)は、家 族とパートナーシップを結びながら、家族のセ

児童・思春期精神科病棟における家族支援の現状

―アンケート自由記述の分析による自信に影響する要因―

藤田 藍津子

1)

 石田 徹

2)

Current condition of family support at child and adolescent psychiatric wards : -

Factors affecting confidence based on analysis of free responses on questionnaires

-

Atsuko FUJITA1)  Toru ISHIDA2)

要約

 本研究の目的は、児童・思春期精神科病棟における家族支援の自信の程度に影響を与える要因を明らかにすることである。

全国児童青年精神科医療施設協議会の正会員26施設のうち、協力が得られた20施設の病棟看護師384名に質問紙(管理職 を除く)を配布し、229名から回答(回収率59.6%)を得た。本研究は、調査対象者の基本属性と家族支援の自信の程度を 5件法で調査し、その選択理由について自由に記述してもらい、自由記述欄を、分析対象データとした。自由記述の分析方 法は、Berelsonの内容分析の手法を参考に分析した。結果は、児童・思春期精神科病棟における家族支援の自信の程度に影 響を与える要因は、【介入・評価】、【知識・経験】、【多職種連携】であり、要因を構成しているものは、家族との関係構築、

具体的な介入・評価方法、時間の確保、知識・技術の習得、多職種連携の可否であった。したがって、看護師の評価・介入 方法が明確になり、知識・経験の獲得へとつながる、家族支援ガイドラインの開発を検討する必要性が示唆された。

キーワード:児童・思春期精神科病棟、家族支援、自由記述

(3)

児童・思春期精神科病棟における家族支援の現状 ―アンケート自由記述の分析による自信に影響する要因―

きるように支援すること

3)

を指す。

3.対象と方法 1)対象者

 対象施設は、全国児童青年精神科医療施設協 議会に属する正会員 26 施設(平成 27 年4月現 在)の中で、協力が得られた 20 施設とした。

対象者は、児童・思春期精神科病棟に配属され ている看護師とした。

2)データ収集方法と分析対象データ

 研究協力を得られた施設の看護部長を介し て、児童・思春期精神科病棟に勤務している看 護師に質問紙を配布してもらった。回収は、各 自封筒を厳封の上、郵送法で実施した。調査期 間は、平成28年1〜2月であった。

 調査対象者の基本属性と家族支援の自信の程 度を5件法で調査し、その選択理由について自 由に記述してもらった。家族支援の自信の程度、

選択理由の自由記述欄を、分析対象データとし た。

3)データの分析方法

 自由記述の分析方法は、Berelsonの内容分析 の手法

4)

を参考に分析した。記録単位は家族、

家族支援、自信、現状と課題に関しては主語と 述語からなる1文章(単文)とした。文脈単位 は1データ(記述者数)とした。記録単位を内 容の共通性に従ってサブカテゴリ、カテゴリを 集約した。(【 】カテゴリ、 「 」サブカテゴリ、

( )単位数を示す。)

 本研究の分析において質的研究者から指導を 受け、分析内容の信頼性と妥当性の確保に努め た。

4)倫理的配慮

対象には、研究の概要、個人情報の保護、調査 への参加の任意性、協力しなくとも不利益を被 らないこと、結果の公表について書面で説明し、

質問紙の回答・返信をもって研究協力の同意と した。なお、本研究は、共立女子大学研究倫理 審査委員会の承認(KWU・IRBA#15084)を 得て実施した。

4.結果

 全国児童青年精神科医療施設協議会の正会員 26 施設のうち、協力が得られた 20 施設の病棟 看護師 412 名に質問紙を配布し、264 名から回 答(回収率64.1%)を得た。対象者の属性を表 1に示す。家族支援の自信に関して、自信をもっ て家族支援が実践できていると思うかとの問い に対し、全く思わない 29 名(12.6%)、あまり 思わない 85 名(37.1%)、どちらとも言えない 89 名(40.2%)、 だ い た い 思 う 23 名(10.0%)、

思う2名(0.08%)であった。その回答理由に ついての自由記述が記載されていたのは264名 中181名(68.5%)であった。

 分析の手順に従い、記録単位は合計224であっ た。得られたカテゴリ【 】とサブカテゴリ「 」、

記録単位数( )は、【介入・評価】(103)が、

「家族との関係構築の程度」(50)「具体的介入 方法の困難感」(36)「評価の難しさ」(17)、 【知 識・経験】(93)は、「知識・技術の有無」(37)

「経験年数の程度」(29)「時間の確保の有無」

(27)、 【多職種連携】(28)は、 「医師の役割」(15)

「多職種連携の可否」(13)であった。表2はカ

テゴリと、サブカテゴリを導いた記述内容の一

部である。

(4)

表1:属性

平均年齢 41.3歳、範囲:21歳〜66歳

性別 女性205名(77.3%)、男性59名(22.3%)

看護職全体の経験歴 平均17.5(±10.3)年目、範囲:1年目〜43年目 児精病棟の経験歴 平均5.0(±4.6)年目、範囲:1年目〜32年目

表2:児童・思春期精神科病棟における家族支援の自信の程度に関する記述内容

(問)自信をもって家族支援ができているかと思うか

【カテゴリ】

(記録単位数) 【サブカテゴリ】

(記録単位数) 記述内容

【介入・評価】

(103)

「家族との関係構築の程度」

(50)

家族との関係性作りが出来ず、難しい。

どこまで入っていっていいのか、判断に迷い、関係が 浅くなっている。

家庭環境の複雑な児が多く、家族も精神科疾患を患っ ているなど十分なコンタクトを取れないケースが多 い。

「具体的介入方法の困難感」

(36)

家族にはデリケートな問題が多く、アプローチの仕方 や躊躇を感じる。

家族機能が脆弱した家庭が多く、信頼関係を築くのに 時間を要するし、困難な場合が多い。

「評価の難しさ」

(17)

家族からの評価が“良かった”と感じた事が少ない。

家族支援に対するガイドラインがなく、何が正しいの か、正しくないのかを評価する事は困難な状況である。

家族の問題解決に至らないケースもあり、支援方法が よかったのか評価できず。

【知識・経験】

(93)

「知識・技術の有無」

(37)

複雑なのケースも多く、様々な知識が必要である。多 くのケースを持っておらず、知識に対して自信がもて ない。知識・経験不足のため、家族支援への自信がない。

「経験年数の程度」(29)

精神科の経験も浅く支援が十分にできていない。自分 の経験年数が浅いため、自信をもって家族支援ができ ない。子育て経験がなく、母親や家族に支援をしてい いのか困る。

「時間の確保の有無」

(27)

家族と関わる時間をあまりもてていない。ゆっくりと 話す時間がない。業務が忙しく家族対応に時間がとれ ない。面会に来た時、外出、外泊の迎えに来た時、限 られた時間の中で少し話す程度。

【多職種連携】

(28)

「医師の役割」

(15)

家族対応は主治医が統一しており、顔を合わせない。

本児とは密に関わるが、親は医師が面接するのであま り関われていない。

「多職種連携の可否」

(13)

様々な職種間の連携役として、重要な役割を看護師が

担っている。多職種の協力を得て行っている。多職種

なしでは無理だと思う。家族とのコミュニケーション

を図り、多職種連携しながら支援することで自信が持

(5)

児童・思春期精神科病棟における家族支援の現状 ―アンケート自由記述の分析による自信に影響する要因―

 家族支援の自信の程度、選択理由の自由記述 において、カテゴリは3つあり、サブカテゴリ はそれぞれのカテゴリに対して複数導き出され た。得られたカテゴリは、多い順に【介入・評 価】(103)、【知識・経験】(93)、【多職種連携】

(28)であった。

 【介入・評価】(103)では、サブカテゴリが 多い順に「家族との関係構築の程度」(50)「具 体的介入方法の困難感」(36)「評価の難しさ」

(17)で構成されていた。具体的な記述内容では、

もっとも記述数の多かった「家族との関係構築 の程度」では、家族との関係性作りが出来ず、

難しい。どこまで入っていっていいのか、判断 に迷い、関係が浅くなっている。家庭環境の複 雑な児が多く、家族も精神科疾患を患っている など十分なコンタクトを取れないケースが多 い。と、記述されていた。【知識・経験】 (93)は、

「知識・技術の有無」 (37) 「経験年数の程度」 (29)

「時間の確保の有無」(27)でサブカテゴリが構 成されており、「知識・技術の有無」がもっと も多く、具体的な記述内容は、複雑なのケース も多く、様々な知識が必要である。多くのケー スを持っておらず、知識に対して自信がもてな い。知識・経験不足のため、家族支援への自信 がない。と、記述されていた。 【多職種連携】 (28)

は、 「医師の役割」 (15) 「多職種連携の可否」 (13)

のサブカテゴリで構成されており、「医師の役 割」では、家族対応は主治医が統一しており、

顔を合わせない。本児とは密に関わるが、親は 医師が面接するのであまり関われていない。 「多 職種連携の可否」では、様々な職種間の連携役 として、重要な役割を看護師が担っている。他 職種の協力を得て行っている。多職種なしでは 無理だと思う。家族とのコミュニケーションを 図り、多職種連携しながら支援することで自信 が持てる。との、記述があった。

5.考察

 児童・思春期精神科病棟における家族支援の 自信の程度に影響を与える構成要因は、結果に 示したように、カテゴリでは、 【介入・評価】 (103)

がもっとも多かった。これは、「家族との関係 構築の程度」「具体的介入方法の困難感」「評価 の難しさ」から、支援をする家族との関係構築 の困難さ、家族自身に精神疾患があり、家族支 援の初段階である関係構築の難しさが表され た。また、関係が築き始めても、評価方法がわ からない等の、明確な評価基準がないことに よって、手ごたえのつかめないことが推測され る。次に多かった、 【知識・経験】(93)では、 「知 識・技術の有無」「経験年数の程度」、「時間の 確保の有無」、の側面から構成されており、時 間の確保、経験と共に身につく、知識・技術の 習得の必要性が考えられる。また、「知識・技 術の有無」に関しては、多くの看護師が家族支 援に関する知識・技術を身に付けることが自信 につながると記述しており、知識・技術の習得 が、家族支援の自信に影響を与えるものとなっ ている。最後に、 【多職種連携】(28)において、

多職種連携があってこその家族支援との、記述 が多く、職種ごとの役割の明確化と、多職種連 携が児童・思春期精神科病棟における家族支援 の自信の程度に影響を与える要因であると考え られた。

 Phirip Barker

5)

は、子どもと家族のアセス

メントには柔軟なアプローチがされ、様々な視

点からの正確にアセスメントすることの必要性

を述べている。齊藤

6)

は、子どもの心の問題

を子ども自身の問題として理解するのでは、解

決は得られない。家族を1つのシステムととら

れ、子どもと環境(家族や学校社会)の相互作

用あるいは関係性の問題として理解すべきだと

し、環境(家族や学校社会)要因の改善を穏や

(6)

かに、しかし確実に取り組む必要があると述べ ている。いずれも、家族へ介入・支援が必要と されているが、児童・思春期精神科病棟に従事 する多くの看護師が、家族支援に対して困難感 をもち、【介入・評価】、【知識・経験】、【多職 種連携】の3つの側面が家族支援の自信の程度 に影響する要因であることが考えられた。

6.結論

 児童・思春期精神科病棟における家族支援の 自信の程度に影響を与える要因は、【介入・評 価】、【知識・経験】、【多職種連携】であり、要 因を構成しているものは、家族との関係構築、

具体的な介入・評価方法、時間の確保、知識・

技術の習得、多職種連携の可否であった。以上 の結果から、多くの看護師が自信を持てず、困 難さを抱えながら家族支援を捉えており、家族 支援が実践されていないと予測される。した がって、看護師の評価・介入方法が明確になり、

知識・経験の獲得へとつながる、家族支援ガイ ドラインの開発を検討する必要性が示唆され た。

6・本研究の限界と今後の課題

 本研究において、児童・思春期精神科病棟に おける家族支援の自信の程度に影響を与える要 因が明らかになった。しかし、児童・思春期の 疾患や精神症状、年齢、家族背景による関連性 は検討していない。また、施設の特性による違

いも検討し、今後は、さらに調査対象を広げて 結果を検証する必要がある。

7.謝辞

   本研究にご協力いただきました看護師の皆 様に深く感謝申し上げます。

   なお本研究は、JSPS科研費JP15K11681の 助成を受けて行われ、第 36 回日本看護科学 学会学術集会にて発表した。

文献

1) 子 ど も の こ こ ろ の ケ ア と 看 護、http://

capsychnurs.jp/hospitals/( 平 成 28 年 9 月13 日アクセス)

2)関根正、内田正樹、木村共美、他: 児童 思春期病棟に勤務する看護師の看護に関す る意識、群馬県立県民健康科学大学紀要 7、P. 63-74、2012

3)法橋尚宏、本多順子:新しい家族看護学 理論・実践・研究、メジカルフレンド社、P.

38-39、2010年

4)舟島なをみ:質的研究への挑戦、医学書院、

P. 42-53、1999

5)Phirip Barker(1995)/山本康裕、岸本寛 史 監訳、児童精神医学の基礎、金剛出版、

P. 51-78、2002

6)上島国利、齊藤万比古:児童期精神障害  メジカルビュー社 P. 2-13、2005

Abstract

A questionnaire on factors affecting the level of confidence in family support at child and

adolescent psychiatric wards was distributed to 384 ward nurses (excluding managerial staff) at

20 of 26 facilities that agreed to cooperate, that are full members of the Japanese Council of Child

(7)

児童・思春期精神科病棟における家族支援の現状 ―アンケート自由記述の分析による自信に影響する要因―

the present study, the subjects’ basic attributes and level of confidence in family support (on a five-point scale) were investigated, and reasons for selecting a given level of confidence were provided in a free-response format and analyzed using Berelson’s content analysis method a reference. The factors affecting the level of confidence in family support at child and adolescent psychiatric wards were “intervention and evaluation,” “knowledge and experience,” and

“multidisciplinary cooperation,” and these factors comprised the following : development of relationships with family, specific intervention and evaluation methods, securing time, acquisition of knowledge and techniques, and feasibility of multidisciplinary cooperation. These results therefore suggest a need to investigate the development of family support guidelines that clarify nurses’ evaluation and intervention methods, and lead to acquisition of knowledge and experience.

Keywords : child and adolescent psychiatric wards, family support, free response

参照

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