性差意識の特徴と課題
著者 青木 幸子
雑誌名 東京家政大学博物館紀要
巻 16
ページ 59‑68
発行年 2011‑02
出版者 東京家政大学博物館
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010320/
The Construction and Its Problem of a Gender-equal Society
The Characteristics and the Problem of the Gender Consciousness of Adult Women Sachiko A
oki青木 幸子
男女共同参画社会の構築とその課題
成人女性の性差意識の特徴と課題
〔東京家政大学博物館紀要 第16集 p.59〜68, 2011〕
1.はじめに
2010 年は、「女子差別撤廃条約」の採択から 31 年、同条約の批准から 25 年を数え、しかも国連 女子差別撤廃委員会への第6回報告書に対する最終見解を踏まえ、我が国の男女共同参画社会の構 築に向けた第3次男女共同参画基本計画の策定に当たっての基本的考え方が示された年でもあった。
第3次基本計画の策定に当たって、政府は、意識啓発の段階から具体的な課題解決の段階へと施策 の転換を強調している1)。一方、多くの地方公共団体においても男女共同参画を推進する基本条例 が制定され、さまざまな場面における男女平等の意識啓発や慣習・慣行の見直しを図るなど、男女 共同参画社会の実現に向けて地道な施策が展開されている。
しかし、内閣府の調査「地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の 進捗状況(平成21年度)」によれば、地方公共団体における男女共同参画に関する条例の制定状況 は、都道府県では千葉県を除いた 46 都道府県で制定され、制定率は 97.9%である。一方、市区町 村では政令指定都市を含め 432 の地方公共団体で制定済みであり、制定率は 24.0%である。また、
条例の制定を検討中の地方公共団体は406(22.6%)に及ぶが、検討していない地方公共団体も962
(53.4%)と5割以上を占めている。
地方公共団体における取組は、決して足並みが揃っているわけではない。地方公共団体による温 度差は、男女共同参画に対する国民の温度差ともなっていないだろうか。1999年に制定された「男 女共同参画社会基本法」には、国、地方公共団体、国民がそれぞれ果たす責務が謳われている。そ の責務を果たすことで、男女共同参画社会の実現が図られていくのである。
一方、地道な取組をしている地方公共団体の施策展開における課題として、男性や若者を中心と して幅広い住民への理解や参加を得ること、分かりやすい・身近な問題による啓発などがもっとも 必要とされていることが、同じく内閣府の調査により明らかになっている2)。また、「男女共同参
栄養科 家庭科教育研究室
画社会に関する世論調査」(2009.10)によれば、学校教育の場がもっとも男女平等であるとする意 識が7割近くと高いが、家庭生活、職場、社会通念、慣習・慣行、法律などの制度上の平等意識は まだ低い。
固定化された男女の役割分担への意識や行動は、条約の批准以来確実に薄らいできている。それ は学校教育における平等な教育活動の成果でもあろうし、広く社会教育における取組の成果でもあ ろう。
それでもなお、人生を重ねてきた成人の価値観や行動様式を変更することは容易ではないはずで ある。物事を弾力的に、多面的に、複眼的に解釈して価値観を形成していくことができる年齢層 と、社会的役割分担の影響をもろに受けて形成した価値観の下で一定の行動様式に慣れ親しんでき た成人とでは、女子差別撤廃条約の内容に対する解釈や見解も異なるものと推察される。性別役割 分担を見直そうとする風潮について、成人はどのように性差を振り返り、役割分担の変更にどのよ うに対峙し、躊躇しながら性差観や役割分担観の着地点を見つけるのであろうか。
条約の趣旨を実効化するために制定されたのが男女共同参画社会基本法であり、そこに謳われた 社会の実現こそが 21 世紀社会の喫緊の課題であるならば、学校教育と同時に社会教育における意 識啓発も大きな課題である。生涯に亘り人間らしい安定した生活を送るためのジェンダー視点から の社会政策の課題に関する研究(木本他,2010:伊藤,2003)が提示するように、日常生活におけ るさまざまな課題に対するきめ細かな政策の展開が求められる3)。
学校教育における男女平等教育は人権教育の一環として実施されることが多いが、社会教育では 地方公共団体の男女共同参画セミナー等を通して実施されることが多い。
そこで、本稿では社会教育における男女平等の意識啓発を促進するため、地方公共団体が主催す る男女共同参画セミナー等の受講者の多くを占める成人女性を対象とした調査を実施し、成人女性 の性差観の特徴と課題を明らかにすることを目的とする。
2.研究方法
1) 対象者;東京都、埼玉県の2つの地方公共団体の男女共同参画セミナー参加者のうち女性のみ 60名
2)調査時期;平成22年6月、9月 3)研究方法
① 筆者らが制作した「男女平等を考える教育カルタ」を用いたワークショップ形式のセミナー において、参加者が作成したワークシートとジェンダーチェックシートの内容を分析する。
② その内容を女子大学生や他調査の成人の結果と比較し、成人女性の特徴と課題を明らかにする。
3.もっとも気になったカルタの標語
両セミナーとも、女子差別撤廃条約の趣旨についての簡潔な説明の後、カルタ大会を実施し、カ ルタとグループ討論をベースに展開した。
男女共同参画社会の構築とその課題
先ず、ワークシートの設問のうち、成人女性が「もっとも気になったカルタの標語」は、表1の とおりである。
カルタ総数 44 枚のうち、24 枚のカルタが選ばれ、その選択率は 54.5%である。表 1 には、選択 率の高い順に頭文字を並べた。例えば、網掛けを施した12枚の札のうち、もっとも多い5名の人が 選んだカルタは「わ:分かってほしい介護の負担 介護者の 7 割以上が女性です」「き:急な解雇 母になっただけなのに」「そ:尊重しあい思いやる みんなで目指す差別ゼロ」の 3 枚である。
同様に 4 名の選択者の札は「ふ:夫婦は一つ 個性は二つ 権利はいくつ?」「お:お父さんの育 児休暇 増えたらいいな 父子手帳」「ら:ランドセル 男子は黒 女子は赤 何でかな?」の 3 枚、3 名の選択者の札は「は:肌の色は違っても 人の価値は変わらない」「へ:変じゃない?
同じ仕事でも男女で違うお給料」「み:みるみる昇格同期の彼 私はみるみるお局様」「や:止めさ
頭文字 選択者 気づく 考える 分かる 意思表示 総計
わ 5 1 2 1 3 7
き 5 2 2 2 6
そ 5 2 4 6
ふ 4 1 1 1 2 5
お 4 2 1 2 5
ら 4 1 3 4
は 3 2 1 3
へ 3 1 1 1 3
み 3 1 1 2 4
や 3 1 2 1 4
ゆ 3 1 1 2 4
ろ 3 2 1 3
12 枚 45 7 15 11 21 54
割合 50.0% 75.0 100 93.8 57.9 70.0 75.0
い 2 1 1 2
け 1 1 1
ち 2 1 2 3
つ 2 1 1 2
か 1 1 1
こ 1 1 1
さ 1 1 1
す 1 1 1 2
せ 1 1 1
ね 1 1 1
ひ 1 1 1 2
ほ 1 1 1
12 枚 15 0 1 8 9 18
割合 50.0% 25.0 0 6.3 42.1 30.0 25.0
全体 24 枚 60 7 16 19 30 72
割合 54.5% 100 9.7 22.2 26.4 41.7 100
表1 もっとも気になったカルタの標語とコラムを読んでの感想
せたい 発展途上国の児童婚」「ゆ:許さない 男だから女だからは もう差別」「ろ:労働条件見 直して 仕事できるのに地位低迷」の 6 枚である。12 枚の選択者の合計は 45 名であり、参加者全 体の75.0%を占める。他の12枚の札は15名(25.0%)の人に選択された。
これを女子大学生の結果と比較すると、大学生の「もっとも気になったカルタ」の選択率は 75.0%であった。選択率の高かった札のうち両者に共通するのは「お:お父さんの育児休暇 増え たらいいな 父子手帳」「へ:変じゃない?同じ仕事でも男女でちがうお給料」「き:急な解雇 母 になっただけなのに」「は:肌の色や性別は違っても 人の価値は変わらない」の4枚であった。
4.コラムを読んでの感想
成人女性のベスト 12 の札のコラムを読んで、どのようなことに「気づき、考え、分かり、疑問 や課題だと思った」のか、その感想について分析した。表 1 の「気づく」「考える」「分かる」「意 思表示」は、分析の結果を類型化したものである。
その結果、全体平均では、成人女性は、自分に引き寄せての行動・疑問 ・ 課題など「意思表示」
が 41.7%、次いで標語の内容や関連事項が「分かった」人が 26.4%、「考えた」人が 22.2%、新た な「気づき」があった人は 9.7%であった。つまり、成人女性は、意思表示>分かる>考える>気 づく、の順に学んだことが分かる。60 名の参加者が 72 件の感想を述べており、一人当たり 1.20 の 観点から記述していることになる。大学生の1.38に比べるとやや低い。
そこで、カルタの選択率が高かったベスト12の札について同様に分析したところ、「気づく」が 100%、「考える」が93.8%、「意思表示」が70.0%、「分かる」が57.9%で、気づく>考える>意思 表示>分かる、の順に学んだことが分かる。つまり、新たな気づきをもたらし、考える契機とな り、また自らに置き換えて課題や行動への指針を確認することが出来た人ほど、標語の選択者が多 くなったことが推測される。それは自らの人生経験と標語そしてコラムを重ね合わせた結果の学び とりであり、人生経験が大きく影響していることはその記述内容からも明らかである。
コラムを読んでの感想の一例を次に挙げる。( )はカルタの頭文字を表す。
(や) 選んだ札が差別とは思わず風習だと思ってみていたが、差別なら早くなくなればいいと思っ た。小さい子どもが出産するのは体に影響はないか、無理な負担のように感じます。自由に 恋愛、結婚ができればと思いました。(30代)
(や) 人生の早いうちに性行為や出産を強制されることは、本人にとって大変なダメージであるが、
慣習のみならずそうせざるを得ない貧困に対する問題を解決しなければならないと思った。
(40代)
(き) 妊娠と出産を抱え仕事をする女性が持つハンディを色々な法律でケアしても、実際の仕事の 現場ではまだまだ手が届くところが少なく、法律の効力がどう実行されているのかが疑問。
(30代)
(き) 少子化が問題だといわれながら、母親が働き続けるには企業、家庭、地域もろもろの社会の 努力不足なのが現状。(30代)
男女共同参画社会の構築とその課題
(お) 先ず父子手帳の存在自体知りませんでした。行政が国民に向けてこういった考え方を広めて いくことにさらに力を注いでほしいのはもちろんです。会社組織と社会通念は残念ながら別 次元の問題だと感じています。そこでもっと男性の属する会社規程に直接踏み込むような形 での男女共同参画に務めてほしいと思います。(30代)
(お) まだまだ気づかない男女の役割という刷り込みが意識の中に残っているものだと思いました。
(40代)
(わ) いまだになんとなくこれは女性のほうに負担がかかるようだ。(70代)
(わ) 仕事、家事などでの差別があることは分かっていたが、世界の中での差別、結婚観など気づ いていなかったことに気づかされました。個人だけでなく、社会の中で見直すことに努力し なければと思いました。(50代)
(ろ) 男女共同参画以前の世代である私たちは学歴があることが生意気だと企業への雇用条件から 外されていた。寿退社でなくとも産休は望むべくもなかった。退職当然。夫の家事協力がな い以上それもできなかった。(70代)
(ろ) 男女雇用機会均等法の施行から20年余経った今日でも、全産業者に占める女性の割合は、部 長で2%、課長で3.6%という少数派であります。(40代)
(き) 同僚が妊娠したとき、上司等との関係を見ていると、両方とも言い分はあるとつくづくと思 いました。(60代)
(そ) 差別ゼロを目指して頑張りたいと思います。(70代)
(ふ) 共通の目的、目標に向かい約束事、決め事をすることで夫婦らしさが、同じ家に住むことで 助け合い思いやりが生まれてくる。(60代)
(は) 今の日本は一見平等なように見えますが、気づかぬうちに差別しているのかも知れません。
男女の違い、人種の違い、職業の違いなど、人の価値についてもう一度じっくりと考えてみ たいと思います。(40代)
(へ) 中高年はパート職に、正社員と同じ職種に就いていても給料が大変低く格差を感じている。
(50代)
(ゆ) 男らしさ、女らしさは大切だと思うし、完全になくしてしまってもよくないと思う。それが 差別になっていると問題視されてしまうと、やはりよくないのかなと思った。(20代)
(ら) 上の女の子はピンクを選び、弟はパステルブルーを選びました。私と夫がその色は女の子み たいだから茶色を進め選ばせてしまいました。クラスの男の子達は黒や濃紺が多いようです が、ほとんど本人が選んでいるようです。(40代)
(い) 育児休暇の取れる人はいいけれど、取れない人はやむを得ず止めなければならない。子ども を預けて働くしかない人でも預けるところがないから働けない。(50代)
カルタ大会、グループ討論、そして創作カルタへの挑戦を経てワークシートを完成した後、最後 に記入してもらったジェンダーチェックシートについて分析した。
5.ジェンダー意識
(1)性差意識の得点分布
ジェンダーチェック項目は 41 項目あり、最後の 1 項目を除いた 40 項目は、江原由美子氏による
「性差意識調査」4)の項目を援用した。各項目について、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」
「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の順に 4・3・2・1 の得点を与え、アスタリス クのついた 6 項目(x1、x 2、x 3、x 4、x 5、x 20)は得点を逆に配点した。表 2 は、成人女性 と女子大学生の性差意識の結果である。
成人女性について41項目の得点の平均値を見ると、ジェンダーに敏感な項目は「x1 知的な能 力は性差より個人差のほうが大きい*」「x 2 クリエイティブな仕事に性差はない*」「x 3 体 力を要しない大部分の仕事で、男女に能力の差はない*」「x 4 男性は家事や育児の能力も必要 である*」「x5 男もおしゃれに気を配る必要がある*」の5項目である。そして、どちらかとい えば固定的なジェンダー観が強い項目は「x40 男性と女性は本質的に違う」の1項目である。
41 項目について女子大学生の結果と比較すると、網掛けをした「x 6 男は背が高くなければ、
と思う」「x 13 セックスにおいて男性がリードするのは当然である」「x 20 将来、マラソンな ど持久力を競う種目において、女性は男性と肩を並べると思う*」「x 23 たくましい精悍な体つ きは、男の魅力として重要である」「x 26 男性の性欲は概して女性に比べて強い」「x 29 女性 の美はそれだけで十分価値がある」「x 30 一家の生計を支えられないような経済力のない男性は 男として失格である」「x 32 女が人前でタバコを吸うのは好ましくない」「x 33 子どものこと よりも自分のことを優先して考えるような女性は、母親になるべきではない」の 9 項目 (22.0% ) に おいて成人女性の平均値が低く、それ以外の32項目(78.0%)は全て女子大学生の平均値が低かっ た。それは成人女性が女子大学生より固定的な性差意識が強いことを表している。
(2)個人差の傾向
各項目の偏差値を比較すると、偏差値1以上を示しているやや個人差が見られる項目は、成人女 性19項目に対して女子大学生3項目であり、大きな違いが見られる。平均値が低くても偏差値が高 いのは個人間の意識の振幅が大きく、両者とも低いのは意識傾向が比較的一定していることを意味 する。
例えば、「x6 男は背が高くなければ、と思う」意識について、成人女性の平均値は2.07、女子 大学生は2.13で成人女性のほうが身長へのこだわりは若干低い傾向を示している。しかし、偏差値 を見ると前者が1.10、後者が0.91であり、成人女性の方が個人差があることが分かる。
個人差があることは今後のジェンダー観をリセットする余地が大きい傾向にあると考えられる が、長い人生の歩みのなかで形成された成人のジェンダー観の見直しには、学齢期の場合と比べ、
難しさもあるのではないかと推測される5)。
男女共同参画社会の構築とその課題
記号 項 目 成人女性(n=60) 女子大学生(n=69)
平均値 偏差値 平均値 偏差値 x1 知的な能力は性差より個人差の方が大きい* 1.52 0.89 1.25 0.67
x2 クリエイティブな仕事に性差はない* 1.53 0.93 1.33 0.72
x3 体力を要しない大部分の仕事で、男女に能力の差はない* 1.67 0.91 1.65 0.82
x4 男性は家事や育児の能力も必要である* 1.82 0.89 1.23 0.43
x5 男もおしゃれに気を配る必要がある* 1.78 0.80 1.54 0.58
x6 男は背が高くなければ、と思う 2.07 1.10 2.13 0.91
x7 女性は男性に比べ臆病だ 2.05 1.14 1.71 0.88
x8 中学生になると男の子が成績の方が伸びる 2.17 1.08 1.52 0.72
x9 女性は男性に比べ手が器用である 2.30 1.12 2.16 1.07
x10 体力において男性が勝る以上、社会のあらゆる場で男性が優位
な地位を占めるのは止むを得ない 2.08 1.01 1.61 0.79
x11 男性は女性に比べ人を使うのが上手である 2.02 1.03 1.65 0.70
x12 女性の優れた思想家はあまり出ない 2.15 0.94 1.87 0.87
x13 セックスにおいて男性がリードするのは当然である 2.10 0.92 2.28 0.86 x14 女性は何かにつけて責任を回避しがちである 2.28 0.99 1.86 0.81
x15 女性は視野が狭い 2.23 1.02 1.49 0.74
x16 論理的思考は男性の方が優れている 2.42 0.91 2.07 0.93
x17 子どもを他人に預けてまで母親が働くことはない 2.15 1.01 1.93 0.88 x18 女性は出産する可能性があるため男性と仕事の上で互角に並ぶ
のは無理である 2.33 0.97 1.91 0.74
x19 女性が入れたお茶はやはりおいしい 2.12 1.01 2.07 0.91
x20 将来、マラソンなど持久力を競う種目において、女性は男性と
肩を並べると思う* 2.18 1.08 2.74 0.98
x21 女性は体力や精神力の点でパイロットなど人命を預ける仕事に
は向いていない 2.35 0.95 1.72 0.82
x22 男性は女性に比べ攻撃的である 2.47 1.00 2.03 0.94
x23 たくましい精悍な体つきは、男の魅力として重要である 2.42 0.94 2.67 0.83 x24 冒険心やロマンは、男の究極のよりどころである 2.47 1.00 2.14 0.86 x25 家庭のこまごました管理は女性でなくては、と思う 2.35 1.09 1.90 0.84
x26 男性の性欲は概して女性に比べて強い 2.57 1.00 2.68 0.92
x27 最終的に頼りになるのは、やはり男性である 2.33 1.05 2.00 0.92 x28 女性は月経があるので精神的に不安定である 2.72 0.92 2.51 0.87
x29 女性の美はそれだけで十分価値がある 2.42 0.93 2.51 0.96
x30 一家の生計を支えられないような経済力のない男性は男として
失格である 2.13 0.85 2.42 0.95
x31 子育てはやはり母親でなくては、と思う 2.43 0.96 1.94 0.86 x32 女が人前でタバコを吸うのは好ましくない 2.60 1.08 2.64 1.04 x33 子どものことよりも自分のことを優先して考えるような女性は、
母親になるべきではない 2.43 0.91 2.80 0.78
x34 男はむやみに弱音を吐くものではない 2.27 0.94 2.03 0.86
x35 女性は男性に比べ感情的である 2.67 0.90 2.41 0.90
x36 男の生理からして売買春はいつの時代もなくならない 2.67 0.95 2.43 0.93
x37 男は強くなければ、と思う 2.57 1.00 2.57 0.92
x38 女性は子どもを産めば母性愛が自然にわいてくるものだ 2.75 0.99 2.71 1.02
x39 人前では妻は夫を立てた方がよい 2.75 0.91 2.54 0.95
x40 男性と女性は本質的に違う 3.17 1.01 2.83 0.94
x41 「男は仕事、女は家庭」の考え方に賛成である 2.08 1.01 1.57 0.74 表2 性差意識の得点分布―成人女性・女子大学生との比較
(3)因子分析による項目間の関連性
前述の性差意識の分布に対して、因子分析を行なった結果、4つの因子を抽出することができた。
因子の特徴を表す名称を付与し、女子大学生と比較したのが表3である。
因子 1 は男性・女性の生理的特性の強調と役割分担の追認、因子 2 は男性の能力的優位性を、因 子 3 は男性の体力的優位性と女性役割への期待、因子 4 は能力的平等志向を特徴としている。因子 分析における成人女性と女子大学生に共通しているのは、各因子のなかに女性役割・母親役割の分 担意識が垣間見えることである。成人女性は、結婚、出産、子育て、介護などの経験を通して役割 分担意識の呪縛から抜け出せないある種の思いを引きずり、また女子大学生は多くの未経験の事柄 についても役割分担の可能性を予知していると推測される。同じような傾向でも、背景の違いは理 解しなければならない。
(4)因子群の平均値
次に因子を構成する各項目の得点を合計し、因子の平均値を求めた。表3に示したとおり、成人 女性でもっともジェンダー意識の高い因子 4 の得点は「1.66」であり、この因子は男女の能力的平 等を志向する項目の平均値である。反対に固定的な役割分担意識にとらわれ気味の因子1は「2.57」
であり、男性・女性役割を強調する項目で構成されている。これらに対応する女子大学生のもっと もジェンダー意識の高い因子得点は「1.52」であり、固定的な役割分担にとらわれた因子得点は
「2.49」であり、成人女性の得点と近似している。
成人女性の因子 2、因子 3 は、男性の能力的・体力的優位性と女性役割に対する項目から成って おり、役割分担に対する葛藤を抱え込んでいることが読み取れる。
因子 特 徴 項 目 番 号 ・ 得 点
特 徴
成人女性 平均値 大学生 平均値
1 男女の特性と役割の強調 x39、31、25、37、
29、24、38、30、
40、23、35 2.57
x38、23、16、24、
x21、26、6 2.3
身体的特性と役割
2 男性の能力的優位性 x11、21、8、13、
14、12、18、16 2.23 x12、14、7、15、
x34、13 1.87 男性の能力的優位性 3 男性の体力的優位性と
女性役割への期待 x41、7、10、34、9、
27、6、17、19、 2.16 x36、39、35、4
2.38 生理的・行動特性
4 能力的平等志向 x2、4、3、5、1 1.66 x5、3、2、41 1.52 能力平等志向と役割特性
5 x20、17、33
2.49 身体的能力平等志向と 母親役割の強調
表3 因子分析による項目間の関連性と因子の平均値
男女共同参画社会の構築とその課題
(5)性差意識の比較
表 2 の性差意識の得点分布をグラフにしたのが図 1 である。今回の調査結果と江原氏の調査結果 のグラフとはおおよそ同じ軌跡を描いているが、x33〜x40に関しては異なる。これは、江原氏の 調査対象者が 20〜50 代であったのに比べ、今回の対象者は 50〜70 代を中心に 20〜70 代の広い層 に及び、しかもセミナー参加者であり、男女共同参画に何がしかの興味・関心をもった人たちであ ることに由来するものと考えられる。また、女子大学生は、項目によりグラフの振幅が大きいが、
成人女性よりは全体的にジェンダー意識が高いことが分かる。
6.要約
男女共同参画社会の構築を目指して、国を始め地方公共団体においては積極的な取組が行なわれ ている。政府は、第3次男女共同参画基本計画の策定においては意識啓発の段階からステップアッ プし、課題解決の段階への移行を強調している。しかし、市区町村の男女共同参画に関する条例の 制定は必ずしも順調に進捗しているとは言えず、地域間の意識の温度差は明らかであり、それは実 効性についても疑問符をつけざるを得ない状況といえよう。
それは、男女共同参画社会基本法に謳われた国、地方公共団体、そして国民がそれぞれの責務を 果たすことで達成される男女共同参画社会の実現を危うくするものでもある。進捗状況の異なる地 方公共団体を前に政府としては第2ステージに舵を切ったが、後発の地方公共団体における意識啓 発にもなお力を注ぐ必要性を認識しなければならない。
そこで、地方公共団体が主催する男女共同参画セミナーの参加者を対象に、学校教育における男 女平等意識の涵養に資するために開発した「男女平等を考える教育カルタ」を使用し、男女平等意 識の啓発を目的にワークショップを実施し、参加者のジェンダー意識について調査・分析した。そ の結果、次のような特徴と課題が確認された。
① 成人女性が「もっとも気になったカルタ」は、44枚中24枚であり、選択率は54.5%であった。
図1 成人女性の性差意識分布
今 回 結 果 江 原 結 果 大学生
項 目
得 点 x2 x4 x6 x8 x10 x12 x14 x16 x18 x20 x22 x24 x26 x28 x30 x32 x34 x36 x38 x40
4 3.5 3 2.5 2 1.5 1
女子大学生の75.0%の選択率に比べると低い。
② カルタのコラムを読んでの感想から、成人女性は、意思表示>分かる>考える>気づく、の順 に学びとったことが分かる。これは女子大学生の、考える>分かる=意思表に>気づく、の学 びとりとは異なる傾向を示している。つまり、カルタは学び手の発達段階や問題意識、興味関 心、経験などから多様な学びとりができることを裏付けている。
③ ジェンダーチェックシートの分析から、成人女性は女子大学生に比べて固定的な役割分担意識 が強いが、個人差が大きいのも特徴である。それは、今日まで積み重ねてきた人生の履歴に よって形成された価値観によるところが大きいと思われる。しかし、両者に共通しているの は、どんなに能力的平等を志向しても、体力・セクシュアリティと役割分担との葛藤のなかに いることである。
④ ジェンダー観の形成期にある女子大学生はこれからの人生に予想される女性役割・母親役割を 視野に入れての意識であり、成人女性はそれらの経験を踏まえての意識である。幅広い層の住 民への理解や参加を促すためにも社会教育の拡充がより一層求められる。学齢期の児童・生徒 の教育を担う学校教育の充実とともに、社会教育においてはまだまだ意識啓発が必要である。
先ずは足元の家庭生活で、職場で、地域社会での慣習・慣行を見直すべく、分かりやすい・身 近な問題による意識啓発が必要である。
⑤ カルタ教材を媒介としたセミナーは参加者にとって「親しみやすく、楽しく学ぶことができ た」「男女共同参画を身近に感じることができた」「カルタづくりは初めての経験だったが、ま すます興味が湧いてきた」「日常生活にいかして生きたい」「多様な年代の方と話をする場をい ただけてよかった」「男女の別はともかく、世代、居住環境によっても異なるものなんだと実 感しました。この実感をどう差別撤廃に繋げていくかは正直これからの課題だなと思いまし た」「学生の方が作ったカルタと聞き、これからの日本を創っていく基礎となる子どもたちを 教育する人たち、希望を見出すことができました」など、好意的に受け入れられた。
カルタ教材の汎用性を高めるべく、今後もカルタの標語やコラムについて検討していきたい。
註
1) 内閣府男女共同参画局.第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(答申)(平 成22年7月)http://www.gender.go.jp
2) 内閣府男女共同参画局.男女共同参画会議基本問題調査会(H20.12.24)資料 http://www.gender.go.jp
3) 木本喜美子・大森真紀・室住眞麻子編著.社会政策のなかのジェンダー.東京,明石書店,2010,
260p.
伊藤公雄.男女共同参画が問いかけるもの,東京,インパクト出版会,2003,286p.
4) 江原由美子.男子高校生の性差意識.ジェンダーと教育.横浜,世織書房,1999,p.196.
5) 青木幸子・崇田友江.女子中学生のジェンダー観の涵養と教育カルタの効果.日本家庭科教育学会 誌投稿中.