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家庭科における性教育の特徴 と課題

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(1)

静岡大学教育学部研究報告 (教科教育学篇)第27号 (1996.3)175〜186

家庭科における性教育の特徴 と課題

―家庭科教育 研究者連盟 によ る実践報告 の分析 か ら一

The Characteristics and the Problems of Home Econonlics ]Education in the Human Sexuality Education

…ⅢAn Analysis of classes'reports of Home Econonlics by the lndependent Group "Kakyoren"一

小川裕子、佐野尚美・

Hiroko OGAWA and Naoml SANO

(平7年10月2日 受理)

は じめに

家庭科の教科理論研究における性 に関する教育の位置づけに注 目すると、以下のような顕著 な成果がある。まず、日教組0中央教育課程検討委員会『 教育課程改革試案』 (1976年5月 ) では、「生命 と生活の再生産にかかわる家庭の営みとその しくみを家庭科教育の独 自の対象」

ととらえ、そ こか ら「性・ 育児・ 出産・ 教育」を家庭科の教育内容の主要な一領域 とす る考え 方を示 した。その後、村田泰彦は、「家庭科 は、生活 と諸科学 (人文科学0社会科学 0自 然科 学 など)が結合 し交差す る領域で成立す る」という立場 に立 ち、教科内容構想 の視点 として、

一つには「男女 ともに、自らの能力を全面的に発揮 して、人生を選択 しつつ生 き抜いてい く生 き方を学ばせる視点」、二つには「生命の生産 と再生産の意義 とメカニズムを、人間性 を培 う ように学ばせ る視点」 (その他については略)を示 しつつ、教科内容の構成要素 として、①日々 の生理的エネルギーの回復過程を担 っている「衣生活文化」「食生活文化」「住生活文化」の 領域 とともに、②世代の再生産を担 う領域 として「保育・ 家族の文化」 に加 えて「 性 の文化」

を取 り上げている

1)。

また、村田泰彦は、他方で、日教組教育研究集会で女子教育 もんだい2)分科会 にかかわ っ ていたが、1983年「『 性の教育』のために」という講演3)の中で、性をその3側面であるセク ス、ジェンダ、セクシュア リティの「二つの部分の全体を視野 におさめて考えて いかないと、

この問題の本質をつかめないと思います」と述べている。そ して、その他の「性」を扱 う基本 視点 として、①「性」は、人間存在そのものであるが、男女の平等を人権 (と くに、生存権 と 労働権)と生命=生活の尊重に基づ く人間教育 として扱 うこと、②「性」は、男女 の対等 な人 間関係 と、男女の愛 とが結びつ くことによって、人間性を高め、人格形成にかかわるものであ ること、③「性」は、男女一人ひとりの自立 (「性」の自律性・ 自己管理を含む)と不可分 の ものであり、自分 自身の問題 として、コントロール (調0統)できるようにす ること、④

「性」は、男女の性的差異だけでな く、「性」の共通性、類似性 や個人差 など も理解 で きるよ うに扱 うとともに、「性」において男女が人間 として対等かつ相補的存在であることに注 目さ せ る、の4点をあげている。

以上のように、家庭科における性教育 には重要な視点が示 されており、また、「家庭科性教

*芝川町立中学校講師

(2)

小 川 裕 子 0佐 野 尚 美

育 の はたす役割 は、共修化 の中でます ます大 き くなるはずである。」4)筆者 らは、すでに、小・

中学校教員 の性意識 と性教育実践 の実態調査か ら、彼 らの家庭科 に対す る期待が、「家族 とは」

「 結婚、離婚」、そ して「 妊娠 、出産」にあ ることを明 らかに している

5)。

そ こで、本研 究 で は、さ らに家庭科 にお ける性 に関す る授業実践報告を分析す ることによって、家庭科 にお け る 性教育 の特徴 と今後 の課題 を明 らかにす ることを 目的 として、以下 の3項目につ いて検討 を試 み る。

1)小・ 中 0高等学校段階別 にみ る家庭科 における性 につ いての学習内容の特徴。

2)性に関す る学習内容 とそれを取 り上 げている家庭科の領域 または題材 との関係。

3)学習 の方法 と内容 との関連。

研究の方法

本研究 は、家庭科 における性教育 の特徴 と今後 の課題を明 らかにす るために、性 につ いて取 り上 げた家庭科 の授業実践報告を分析す るものである。すでに、授業実践報告を性 に関す る教 育 の視点か ら検討 した村 田泰彦 による研究報告6)がぁるが、 これには、性教育 の授業 実践 の分 析 の視点等 にはす ぐれた ものがあるものの、家庭科等の教科 の特徴 につ いての問題意識 はない。

1)分析資料

今回分析対象 と した家庭科 の授業実践 の掲載 されている雑誌 は、家庭科教育研究者連盟 (以 下 、

家教連 と略す)による『 月刊家庭科研究』である。家庭科 の授業実践 の掲載誌 と して は、

『 月刊家庭科研究』 と同等以上 の実績 を有す るものが他 に二誌 あ るが (家政教育社『 家庭科教 育』、We書房『 新 しい家庭科We』 (誌名等 の変更有))、 筆者 らの先行研究7)によれ ば、 これ

らの雑誌 に掲載 された家庭科 の全授業実践報告の内で性 について取 り上 げた報告数 の割合 が、

『 家庭科教育』 (1978年1月よ り1994年3月 まで)で2.3%、 『 新 しい家庭科We』 (1982年5月 1994年3月 まで)で8.8%と 非常 に少 ない。これに対 して『 月刊家庭科研究』 (1985年1月 1994年3月 まで)で17.3%を 占めている。これは、この雑誌を編集 している家教連 の、以下 に述べ るよ うな特徴 に因 るものと考え られる。

家教連 は、 日教組教育研究集会家庭科教育分科会を母体 と して1966年8月 に発足 した、 わが 国で唯― の 自主 的な家庭科研究 の民間教育研究団体 である。その活動の経緯 や成果 は、機 関誌

『 家庭科研究』 (通82号発行)や1985年1月以降 は市販 されて いる『 月刊家庭科研究』 に報 告 されてい る。

家教連 で は、家庭科 の目標を「 生命 と生活の再生産 にかかわる文化価値を継承0発展 させ る こと」8)ととらえ、それを実践的に追求す る努力を続 けて きた。「 生命 の生産 (誕)に と っ

て『 性』 は欠 くことので きない要素ですか ら、『 生命の再生産』すなわちいのちを生 み、育て、

発展 させ ることを教育対象 にすえ る家庭科教育 にとって、性教育 は中心的な課題 として位置づ か ざるを得 ない」8)と考 えて いる。また、家庭科 の男女 の履修 に関 して は、「 女子 のみ必修」

家庭科 は性別役割分担 の再生産 に手を貸す よ うな もの との共通認識か ら、1989年の学 習指導要 領 改訂 以 前 か ら、可 能 な ところか ら一 つ ひ とつ共学 実践 を積 み上 げて きた実績 を持 って い

9)。

以上 のよ うな背景 を もつ雑誌 であることか ら、本研究では『 月刊家庭科研究』 を資料 と して分析す ることに した。

分析対象 と した『 月刊家庭科研究』の期間 は、1985年1月 の発刊以 降1995年9月 までで あ る。

前述 したよ うに家教連 による機関誌『 家庭科研究』は1985年以前 も発行 されて いたが、性 に関 わ る実践 は、制度 にお いて男女共学家庭科が具体的な日程 にのぼ った時期 とも重 なる雑誌発刊

(3)

家庭科 における性教育の特徴 と課題

分析対象とした実践一覧 (家庭科教育研究翻 編『月刊・家酬 究』1985年 1月1995年9月

)

斉藤泰子 (東京都小金井市立南小学校

)

「『 おへそ』か らは じめた家族の学習 (1)あ なたのおへそ (2)わ たしの生 まれてか ら今まで (3)アマ ラと カマラ (4)役割 と協力」1985年1,2,3月 (No。 1,2,3)

島崎秀子 (京都府大宮町立大宮中学校

)

「『 生命の尊厳』 と『 己の生 き方』を結びつける保育学習」1985年1,2.3月 (No.1.2.3) 中嶋康子 (千葉県船橋市立坪井中学校

)

「 かけがえのない自分の存在を認識す る (1)男 女共学 にふみきって (2)性 教育 ビデオ・ フィルムを見せて (3)家族 と私」1985年 7,3=9月(No,7,309)

海野 りつ子 (東京都江戸川区立大杉東小学校

)

「 小学生か ら性教育を (1)正しい知識をつけるために (2)生 命の誕生 と男女の関係 (3)男女のちがいと男女平等 1985年10,H,12月

(No。

10,11012)

井上ケイ子 (大阪府豊中市立第七中学校

)

「 共学の『 保育』にとりくんで (1)ア ンケー トにみる生徒の関心 (2)生 徒か らの感想・ 意見をひきだす (3) 初めて2共学の反省 と今後の予定」1985年10,11,12月 (‖o。10,11,12)

石田千栄子 (奈良県三郷町立三郷中学校

)

「 生 きかたを考 える『 保育』での性」1985年

11月

(No.11) 近江真理 (東京都立深沢高等学校

)

「 思春期の心 と身体の発達 を踏 まえた保育学習 (1)今 の自分にひきよせて考 える (2)生き方の中に生かせるよう に」1986年8。

9月 (No。

20,21)

忍足良夫 (埼玉県人間市立藤沢中学校

)

「『 保育』の授業 を通 して」1986年

10月

(No。

22)

大脇夏子 (東京都豊島区立池袋第五小学校

)

「 私たちの家庭生活 (1)生きるために必要なことは (2)い ろいろな家庭 と子 ども達の生活」1986年

12月

1987年

1月 (No.24。 25)

10浅見喜美 (東京都江戸川区立葛西第二中学校

)

「 男女共学 の保育 の授業  (1)『 育て る』より『 育つ』側に立 った授業を (2)体の しくみか ら精神的なものヘ

(3)自

分の発達 とつなげて」1986年

12月

1987年1.2月(‖o.24,25,26) 0111松 田三千代 (金沢市北陸学院高等学校

)

「 子 どもと雑誌 と性 と一高一で どう扱 ったか―」1987年

1月

(lo.25) 12永野富美子 (高知県土佐山田町立鏡野中学校

)

「『 生 き方』を考える保育学習」1987年

6月

(‖o.30) 13中村法子、大野瑞穂 (長野県立北部高等学校

)

「 家族関係・ 保育の実践 一学習ノー トを中心 とした授業づ くリー」1987年536,7月

(No.29。

30.31) 14平岡佐斗子 (奈良県三郷町三郷中学校

)

家族"を考 える」1987年

3月

(lo.32) 15森 陽子 (大阪府高槻市立第四中学校

)

「 男女共学の『 保育・ 家族』 (1)人間 とは、生命の尊 きについて (2)保育所訪間の取 り組 み (3)自 立への道」

1988年1。2,3月

(No.37.38。 39)

16中沢美智代 (川崎市立野島中学校

)

「 中学『 家族 0家 庭』の授業」1988年

3月

(No.39) 17比嘉純子 (沖縄県立浦添高等学校

)

「 結婚のあ り方を考える一VTR『アジアか らの花嫁を考える』を通 してのグループ学習(1)(2)(3)」 1988年 1,2.3月

(No。

49,50.51)

18大脇夏子 (東京都豊島区立駒込小学校

)

「 命のは じまりか ら始め る家族領域」1989年

4月 (No。 52)

19山田由紀代 (名古屋市・ 私立同胞高等学校

)

「 私 もや ってみま した共学家庭科 (3)心 をゆさぶる『 命』 と『 性』に挑戦」1989年

6月

(No.54) 20脇若恵子 (東京都千代田区立練成中学校

)

「 今、中学生 は性 をどうとらえ、どう考えているか」1989年

7月

(‖o.55) 21滑川岸子 (東京都葛飾区立桜道中学校

)

「生徒の問題意識に即 した授業を ,(1) 生育史"と 恋愛 について"と  (2)性の学習か ら生命の大切 さにふれる 学習 (3)家族・家庭生活 アンケー トと授業の感想」1989年7,8,9月 (lo.55.56,57)

22加藤路子 (茨城県立小川高等学校

)

「 家庭科男女共学実践 1年 目の記録 (2)性 別役割分担 と家庭内の男女平等」,1989年

3月

(No.56) 23久保清栄 (東京都立葛飾商業高等学校

)

「 共学家庭科 と取 り組んで (3)保 育で何を教えるか」1990年

1月

(No.61) 24武市成子 (東京都青梅市立第二中学校

)

「私の『 家族・ 家庭』の学習―自分自身を教材にして一」1990年

4月

(No.64) 25今井敬子(岡山県吉井町立吉井中学校

)

「 男女共学『 家族・ 保育』に取 り組んで (1)別学・ 共学か ら学んだ こと (2)命の尊 さと家庭のあ り方を考える (3)発達の法則・ 遊 びとしつけの大切さ」1990年4,5.6月

(No。

64,65,66)

26内藤 しを り(北海道網走向陽高等学校

)

「滝上高校男女共学四単位の実践」1も9o年

6月

(No。 66):

(4)

178 小 川 裕 子・ 佐 野 尚 美

27尾栢米子 (静岡県立浜名高等学校

)

「恐 く黙い『 男子の家庭科』 (1)とはいっても現実は (2)『 保育』授業内容と男女生徒の反応 (3)『 保育』授業 方法 と男女生徒の反応 」199o年 9,10,12月 (No.69,70,72)

28寛 敏子 (東京都国分寺市立第二中学校

)

「 あなたの考える望ましい家族・家庭とは」1991年

3月

(No.75) 29森 裕子 (滋賀県立八幡高等学校)     

「『 家族・ 家庭経営』の実践―自分の生活と切り結んで主体的にとりくめる授業を一」1991年

3月

(lo.75) 30畑沢セイ子 (私立柏 日体高等学校

)

「愛 と性一生徒 とともに授業 をつ くる」1991年

5月

(No.77) 31中野彗子 (京都府立鴨折高等学校

)

「 人間 らしい労働観・ 家族観を育てる 『 婦人問題 と女性の生 き方』の学習」1991年

7月 (No。 79)

32黒沢悦子 (茨城県立 日立第一高等学校

)

「 家族・ 家庭の学習 テーマー性別役割分業意識 と子 どもたち,」 1991年

8月

(No.30) 33藤本隆恵 (東京都立市 ヶ谷商業高等学校

)

「家庭科男女共学で何を教えるのか (1)青 年期の愛 と性」1992年

2月

(No,86) 34脇若恵子 (東京都千代田区立練成中学校

)

「 家族 と家庭 の仕事 (1)家族 の生活時間調べか ら (2)子どもの家事分担の意味 0男 女差」1992年3,4月(lo。 87,38 35柳町幸子 (茨城県立鹿島高等学校

)

「 自立 した性 をめ ざ して一知識注入型の教育か ら生 き方を見つめる教育へ」1992年

4月 (No。 38)

36望月一枝 (つくば市・ 私立を渓学園中学校高等学校

)

「 家族 を考え る (1)家族 と性 (2)夫 婦別姓などか ら家族観を広げる (3)『 不倫』と『 お墓』か ら家族のあり方を 考える」1992年12月1993年

1,2月

(No。 96,97,98)

37切 哲・ 永野富美子 (高知県土佐山田町立鏡野中学校

)

「生 き方を考 える保育学習 (1)技 術科教師 と家庭科教師でつ くりあげた男女共学保育学習 (2)命のは ぐくみ/

命の誕生 (3)命のは ぐくみ/小さな卵か らひとりの人間へ (4)い ま、私たちはどう生 きるか」1993年6,7,8,9月

(lo。 102,103,104,105)

38脇若恵子 (東京都大田区立安方中学校

)

「 だれがす るのか?家事労働は」1993年

8月

(No.104)

39辻 洋子、寺島紘子、水谷千鶴子 (石川県立金沢向陽高等学校、同二水高等学校、星稜女子短期大学

)

「 家庭科に女性学 を (1)『共学家庭科』新教科書を読んで (2)女 性の労働権の確立をめざして (3)『 家庭』と

『 職場』の ジェングーギ ャップ」1993年809,10月 (lo。 104.105,106) 40望月一枝 (つくば市・ 私立名渓学園中学校高等学校

)

「 歴史 と文化の中で 自分の性を考える授業」1993年

10月

(No。

106)

41栢野礼子 (川崎市立南生田小学校

)

5年生 の『 わた しと家族』単元をどう実践 したか―子 どもたちは家族がとて も好 き」1994年

1月 (No。

109) 42富田初代 (東京都立農林高等学校

)

「 家庭科男女共修二十年一東京都立農林高校の実践

(2)一

1994年

1月

(lo。

109)

43肇見喜美 (東京都清瀬市立清瀬第二中学校

)

「発達途上人間 としての自分を見つめて一性教育を中心 とした保育の授業1。2‑」 1994年1,2月

(No.109。

1lo) 44石井宏美 (茨城県立神栖高等学校

)

「 共学で性役割 を考える一男女の新 しい地平への模索―」1994年

4月

(No.112) 45勝俣順子 (東京都町田市立鶴川中学校

)

「 人間の発達 0保 育 (1)オ リエンテー ションか ら性行動 まで (2)『 性にっぃて』から『 幼時期』まで (3)児 童観 の変遷か らまとめまで」1994年4,5,6月 (Nb。 2,113,114)

46森 裕子 (滋賀県立八幡高等学校

)

「『 家族・ 家庭経営』分野をどう指導す るか―家庭科だよりを活用 して一」1994年

5月

(No.113) 47高月佳子 (東京都立上野高等学校

)

「『 結婚の歴史』か ら一現代家族・ 家庭の現状 と問題点―」1994年

6月

(‖o.H4) 48沢田悦子 (東京都田無市立上向台小学校

)

「 わた しと家族」1994年

3月

(No.116) 49渋谷絹子 (東京都葛飾区立本田中学校

)

「 ともに生 きる社会 を考 える」1994年

12月

(No。

120)

50加藤路子 (茨城県立小川高等学校

)

「『 性』を生 き方 と して考えよう一男子高校生を対象 とした『 性』の授業」1995年

2月

(No.122) 51勝俣順子 (東京都町田市立鶴川中学校

)

「 性をめ ぐる環境 ―性の商品化を考える一」1995年

2月

(No.122) 52斉藤 まさ子 (長野 県立松本蟻 ヶ崎高等学校

)

「 家族・ 家庭領域 の学習 (1) 社会 との関連でとらえ、どう生 きるか"の模索 (2)生 徒の家族・ 家庭観、

家事労働」1995年2.3月 (No.122.123)

53望月一枝 (つくば市 。私立著渓学園高等学校

)

「 ジェングーアイデ ンテ ィティーを探 って一高校生の性別役割分業観に切 り込む―」1995年

3月

(No.123)

(5)

家庭科 における性教育の特徴 と課題

以降に急増す ると考え られるためである。

なお、ここで分析対象 とした実践報告の単位 は、領域または題材 とす る。

本研究で分析の対象 とした実践報告 は、表 1に 示す通 りである。家教連のメンバーによる性 に関す る内容を含めた家庭科の授業実践報告(領域または題材単位)は、小学校6件 、中学校22 件、高等学校25件で計53件であった。

2)分析の方法

家庭科における性 に関す る学習内容や学習方法を解明するために、個々の実践報告について、

男女の学習形態、性について取 り上 げた家庭科の領域または題材、学習内容、学習方法 につ い て分析 した。これ らの うち学習内容 については、前述 したような村田泰彦の研究成果に基づ い て、まず、性の三側面であるSex、 Gender、 Sexualityを大 きな項 目として把握す ることに し た。さらに下位の項 目としては、実践報告の内容を解読す ることによって共通 して現出す る項 目を設定 した。Sexを 構成す る要素 としては、生物学や心理学 といった性 の 自然科学 的な側面 を基盤 とす る学習内容を小項 目として設定 した。具体的な項 目としては、「 男性・ 女性の身体」

「男性・ 女性の心理、性欲の差異、男女交際のルール」「生命の連続性、尊厳」「 受精、胎内 の胎児、生命誕生」 Dい身の障害」「妊娠、出産」「 避妊、中絶」「 性病、エイズ」 であ る。

Genderは社会的、文化的に造 られた性の側面であり、学習内容 の下位の項 目と して は「 性別 役割分業、男 らしさ・ 女 らしさ」「性差別、男女平等、人権」「 性情報、性被害、売春等」

「結婚・ 家族の歴史や制度」「女性の労働、母性保護」「 将来 の職業、 どんな家族 を創 り、 ど んな親 になるか」を設定 した。全人格的な性 といわれるSexualityに ついては、「恋愛、愛 と性」

「人間の性行動、性の自己管理」、そ して「 自立 と共生」という小項 目を設定 した。

学習方法 に関 しては、一つは、すでに先行研究6)において性教育のために数多 く用意 されて いる市販のスライ ドや

VTRの

多用や、それ らの視聴後の学習への活用の不十分 さが指摘 され ているので、本研究において も注 目することに した。もう一つは、家庭科の学習方法上 の特徴 と考え られる実践的・ 体験的活動の一つである子 ども自身による調査等 の活動 による成果が、

授業に組み込 まれているかどうか という事項である。

なお、本研究では、性教育の目的、日標については、それ 自体 として は取 り上 げて いない。

それは、家庭科 における性教育 は、保育や家族 といった領域 または題材の一部で取 り上 げ られ ることが多いため、その目的は性以外にも及ぶ場合が多いためである。各々の実践 における性 教育の目的 は、具体的に内容をみることか らも把握できると考えている。

結果 と考察

2、 3には、家庭科の授業実践報告における性 に関す る教育の位置づけや学習内容 の構成 要素の分布 について、小・ 中・ 高等学校の段階別に示 した。

1)家

庭科における性に関する学習内容の特徴

まず、性 に関す る学習内容の特徴について、小・ 中・ 高等学校の段階別にみてい く。

(1)小学校

 

性 に関す る独立 した単元を設 けた実践 (研4)を除 くと、Sexま たはGenderと い う大 きな項 目のいずれか一つ、さらにその中の構成要素の一つを取 り上 げた実践ばか りであ る 点が特徴である。小学校 の家族領域 の中での性 に関す る教育 で は、Sexに 関わ る学習内容 は

「生命の尊厳」と「生命誕生」が中心である。 しか し、Genderを 取 り上 げた実践の一つ (研48) では、子 ども達に「家族にかかわる なぜ"」 を書いて もらい、その結果、性別役割分担 に関

(6)

180 小 川 裕 子 。佐 野 尚 美

11空

:視

聴党教材の使用なし 1:視

聴後、感想文を書いて終わっている

2:視

聴後、認識の定着が図 られた り、学習の発展がみ られる

3:視

聴党教材を使用 しているが、それについて詳 しい対応の実際が記述 されていない

小・ 中学校における性に関する学習内容と方法

子 ど も 自 身 に よ る 調 査 結 果 の 活 用 の 有 無   有 田 O

家 庭科 にお け る。

性 につ い ての教育 を 取 り上 げ た領域

1986 

2

1986 

8

1987 

12

1988 

15

1989 

研 20

1990 

24

1991 

28 1992 

34 1998  研 37

1994 

43

1995 

51

(7)

家庭科 における性教育の特徴 と課題

'1空

:視

聴 覚 教 材 の 使 用 な し 1:視聴 後 、感 想 文 を 書 い て 終 わ って い る

23視

聴後、昭餞の定着が図 られたり、学習の発展がみ られる

3:視

聴覚教材を使用 しているが、 ‐

それについて鮮 しい対応の実際が記述 されていなもヽ

2「

保育」とは、それ以外 (例 えば、保育

)が

、「 家庭一般」における保育領域を意味 しているのに対 して、

「家庭一般」 と並ぶ家庭科の

1教

科を指 している。

181

高等学校における性に関する学習内容 と方法

子 ど も 自 身 に よ る 調 査 結 果 の 活 用 の 有 無   有 1 0 家庭科における、

性についての教育を 取 り上げた領域

1986 

7 1987 

11

1988 

17

1989 

19

1990 

23

1991 

29

1992  研

33

1993 

39

1994 

42

1995 

50

『保育 J・

8

(8)

小 川 裕 子・ 佐 野 尚 美

わ る疑間を取 り上 げた者 が10名近 くいる (ただ し、母数 は不明)と い うことか ら取 り組 む こと を決 めて いる。小学校 におけるGenderの 教育 については、 この実践 にみ られ るよ うに子 ど も の実態 か ら取 り上 げるかどうかを決めてい くことが大切 であろ う。Sexualityに つ いて取 り上 げた事例 は皆無 であ った。

121  中学校 Sexに関わ る学習内容、中で も「受精、胎内の胎児、生命誕生」 と「妊娠 、 出産」

が多 く取 り上 げ られている。 これ らの内容 は、中学校家庭科 (技術・ 家庭科)の保育領域 の学 習 との関連 が強 いためであろ う。さ らに、「 男性・ 女性の身体」「 男性・ 女性 の心理 、性欲 、 男女交際のルール」 といった子 ども達 が「今」かかえているテーマにつ いて も、ほ とん どの実 践 で取 り上 げ られて いる。 これ は、子 どもの生活 の現実か ら出発す る家教連 の実践 の特徴 とい え るものであろ う。

Genderの 取 り扱 いは中学校 で急増す るが、 これ は1990年前後 に変化 す る ことに注 目 して お きたい。すなわち、1989年以前 の実践 では、「保育 」 を中心 とす る題材 にお いて12件 中9件 で Sexと 共 にGenderの 内容 も取 り上 げ られているが、199o年以 降 は10件中6件 とやや減 少 して い る。 これ は、1989年学習指導要領 において保育領域 とは別 に「 家庭生活」が必修領域 と して新 設 された ことが影響 していると考 え られる。 この結果、保育 は選択領域 の一つ とな り、時 間数 も少 な くな らざるを得ず、内容面 で は前述 したよ うな状況 が生 じた ことが推測 され る。減少 し Genderを 中心 とす る内容 は家庭生活領域 で取 り上 げることが考 え られ るが、 まだ、 それ に つ いての実践報告 は2件 (研34、 38)あ るにす ぎない。Sexualityにつ いて は22の実践報告 中8 件 で取 り上 げ られて いるが、 これは、近年 (1993年以降)増加す る傾向が認 め られ る。

131  高等学校

 

中学校 と比較す る と、Sexに つ いて の学 習 内容 が減少 し、代 わ りにGenderと Sexualityに 関す る学習内容 の取 り扱 いが増加 している。Sexに 関す る内容が減少 した背景 には、

中学校 までの学習や他 の教科等 での取 り組 み とも関連す ると考 え られ る。高等学校 におけ る性 につ いての学習内容 は、男女の学習形態や性 について取 り上 げた領域 と関連 させて把握すると、

以下 のよ うな興味深 い傾向を見 い出す ことがで きる。

まず、領域名 に「 保育」が加わ った場合の実践では、Sexの 内容 が必ず含 まれて い る。 さ ら に、 これ らの実践 では、Gender、 さ らにSexualityを も学習内容 と して組 み込んだ ものが多 い。

それに対 して、領域名 に「 保育」の含 まれない家族・ 家庭経営等の領域 における実践 で は、最 も新 しい実践 (研53)を除 いて、Genderの みの学習内容で構成 されている。さ らに、 これ らの 実践 で は、9件7件までが「女子のみ」で学習 していることも特徴である。すなわ ち、高等学 校 の実践 で は、保育領域の中で取 り組 まれた場合 には、性 の三側面 をすべて押 さえ る実践 が ほ とん どであ るが、家族 0家庭経営領域 で取 り組む場合 に はGenderの 内容 に偏 る傾 向 が認 め ら れ、次節 にお いて さ らに検討す ることにす る。

以上 の他 に、小・ 中・ 高等学校 で共通 して少 ない項 目に注 目す ると、Sexに 関す る学 習 内容 で は「 生命の連続性・ 尊厳」 陽い身 の障害」「性病、エイズ」、Sexualityに つ いての内容 で は

「 自立 と共生」であ る。 これ らの項 目をみると、 Dい身 の障害」「 性病、エイズ」 は、Sexの 内 容 と して個別 に取 り上 げることももちろん可能 であ るが、その学習 には「 自立 と共生」 の視点 が不可欠 と考 え られ るが、 これ らを統合 して取 り上 げた実践 は、今回の資料のなかでは中学校 2実 (研37、 49)に留 まることがわか った。

2)家

庭科の性 に関する学習の領域 における位置づけ

小学校家庭科 にお ける性 に関す る学習 は家族領域 で取 り上 げられるが、それは二通 りのパ ター

(9)

家庭科 における性教育の特徴 と課題

ンがある。一つは、家族学習の最初に位置させ、同時に家庭科学習の原点 として「命 のは じま り」として取 り上げるものである(研

1、

18)。 この学習 は家族 の中の自分 の位置や役割 の 学習へ と発展す る。いま一つは、家族の仕事の学習において性別役割分業を取 り上 げる もので

ある。

中学校技術0家庭科における性に関する教育 は、前述 したように、ほとんどの場合保育領域 に位置づけられている。学習指導要領 (1989年)における保育領域の内容 は、①幼児 の心身 の 発達、②幼児の生活 (遊び、衣0食生活、生活習慣)、 ③幼児の発達 と環境か ら成 る。 これ ら の学習内容 に関 して、家教連では、中学生の今の生活 とのかい離を指摘 して、早 くか ら導入 と して「生いたちの記」を書 く等の実践を積み上げてきた。性についての内容 との関連 に注 目 し て も、いきなり幼児を登場 させるのではな く、まず、中学生の今の自分の問題である「 思春期 の男女関係」「男女の性のしくみ」等か ら始め、「妊娠 0出 産」「生命誕生」の学習を経 た後 に、指導要領 にある保育学習を位置づけ、最後 に、「家族、家庭の意味」を取 り扱 う展開があ (研14、 15、 20、 21等)。 また、「生命誕生」を導入 として人間の発達・ 環境を学 び、

その後に、中学生の今の自分の問題「男女交際」等 と自分の将来の問題である「結婚」、「 職 業」「親になること」等へつなげた実践 も多い (研

5、

25、 28等)。 以上のように、中学校 の保育領域の中で性の学習を位置づける実践では、子 ども達の興味・ 関心に添 って一連の学習 を展開できることがす ぐれた点である。特に後者の展開では、Sexに 関す る内容 と して は「 生 命誕生」や「男女交際」等、Genderに ついては自分の将来の問題である「結婚」「職業」「 親 になること」等、Sexualityに ついては「恋愛、愛 と性」と、性の三側面すべてを押 さえること ができるという良 さが指摘できる。

しか しなが ら、前述 したように、1990年以降の実践 においてGenderの 側面 につ いての学習 が減少 してお り、1989年の学習指導要領において新設 された家庭生活領域において、 まだ、性 を盛 り込んだ授業がほとんど実践 されていないことがわか り、問題点 として指摘できる。

高等学校家庭科における性 に関する教育 は、すでにみたように保育領域 と家族・ 家庭経営領 域 に三分 される。これ らの うち、保育領域における性に関す る教育の位置づけは、中学校 の場 合 とほぼ同様であり、まず、高校生の今の自分の問題か ら入 り、「妊娠・ 出産」「 生命誕生」

に続 いて、人間の発達、保育問題 といった学習へと展開する。中学校 と異なる点 は、「 男女 の 生理、心理」だけではな く「性愛、性行動」、また、「妊娠 0出 産」だけではな く「 避妊・ 中 絶」について も取 り上 げられるなど、発達段階に応 じた内容の深まりやより実践的な課題への 展開がみ られることである。これに対 して、家族・ 家庭経営領域 における性の学習の位置づ け は、実践 ごとに個別性がある。例えば、主 として子 ども達の調査活動による成果をもとにして、

題材全体でGenderの 問題を広 く取 り上げたもの (研36)、 そ して、1。結婚や家族の歴史・ 法律、

2。家族の実態 と家族観、3.家事労働 と職業労働、4.高齢化社会と家族 0家庭、5社会保障と家族

0

家庭 という構成の中の、主 として1や3で取 り組む もの (研52)等々様々である。

さて、前述 したように、性を家族・ 家庭経営領域 で取 り上 げた場合 には、Genderに偏 ると い う問題があった。そこで、家族・ 家庭経営の領域 における実践で例外的に性の3側面 をすべ て取 り上げている実践 (研53)に注 目してみた。まず、この授業者 は、研36の授業者で もあり、

36から研53の実践の間に、学習形態が女子のみか ら男女共学へ と変化 していることに も注 目 してお く。授業者 は、男女共学第一回目の授業において女子のみの授業 と同様 に臨んだが、そ の時の授業の感想文の中に「女性差別なんて うざったい授業は苦手だ」というものがあ った こ

183

(10)

184 小 川 裕 子・ 佐 野 尚 美

とか ら、 これまでの授業 の展開を変えることを決断 している。授業者 は、女子のみの授業 の時 か ら「 授業の大半を生徒達 の レポー トで進める」のであるが、その際、女子 のみの授業 で は良 じとして きた「 女性 は差別 されて きた し、いま も差別 されている」 とい うレポー トの課題 の枠 組 みを、共学 の授業 で は取 りはずそ うと考えた ことが大 きな変更点 である。その後 は、他 の領 域 の学習をすす め、生徒達 に現代 の家族問題か ら広 く課題 を選 び レポー トさせ ることか らこの 題材 を再開 し、「生徒の今がみえ るよ うな レポー ト」を選 んで発表 させて い る0。 そ の結 果 、

この実践 における学習内容 は、表3に示す よ うに、Genderの みな らず、Sex、 Sexualityの 内容 に も広 が ることにな った。 このように、子 どもの学習要求 に添 うことによ って、当初 か らの教 師のね らいであ るジェンダーアイデ ンティテ ィーの形成 に一層近づ くことを可能にしたことが、

子 ど も達 の「 男 と しての自分、女 としての自分」 とい うテーマの作文。か ら確認す る ことがで きる。

以上 の実践事例か ら、家族・ 家庭経営等 の領域 におけるジェンダーアイデ ンティティーの形 成 を 目的 と した授業 では、学習内容 をGenderに 限定 して構成 した場合 、 と くに、男女共学授 業 にお いて は一部 の生徒 に学習意欲を もたせ ることが困難であ り、その改善 にあたっては、学 習内容 をGenderの みに限定せず、Sex、 Sexualityの内容へ も広 げる必要性が明 らか にな った。

3)家

庭科 にお ける性 に関する学習指導方法上の特徴

2、 3には、家庭科 の授業実践報告 における性 に関す る学習指導方法上 の特徴 につ いて、

視聴覚教材 の利用状況 と子 ど も自身 による調査結果 の活用の有無の2項目で示 した。

性 に関す る学習指導方法上 の問題 の一つ として、市販のスライ ドや

VTRの

多用や、その後 の学習への活用 の不十分 さが指摘 されていたが

6)、

今回対象 と した家教連 の実践 にみ る限 り、

多用 の傾向 は認 め られ るものの、前後 の学習への活用 は多 くの場合 に果 たされていると判 断 さ れ た。また、特 にその後 の授業で活用 しない場合で も、市販のスライ ドを作 り変え るとい った 努力 も読 み取 ることがで きた (研 15)。 先行研究 の時期 (1987年)か ら今 日まで に8年 が経過 してお り、その間の視聴覚教材 の浸透、経験の積み上 げの成果 には大 きな ものがあ った と考 え られ る。 しか し、実践報告を行 な う程 の授業者 はともか くも、 この問題 は現場 の多 くの教 師 に は今 日 も間われ る課題 の一つ といえよ う。

家庭科 で は実践的0体験的学習方法 が重視 され る。そ こで、家庭科 の性 に関す る学習 にお い て もその学習方法 のあ り方を探求す るにあた り、今回対象 とした実践報告 について、子 ど も達 自身 による調査活動等 の成果を組 み込 んだ ものであ ったか ど うかにつ いて注 目 してみた。 と こ ろが、 この結果 は小、中学校 において は皆無であ り、高等学校 において は約半数 の実践 で取 り 組 まれていた。 これ らの ことは、小・ 中学校の発達段階にある子 ども達 にとって、性 の問題 は 主体的に取 り組 む学習の課題 として は難 しいことを示 していると推察 され る。

また、今回、家庭科 における性 に関す る実践報告を検討す る過程で、子 ども達 の様子 に関す る問題 で最 も頻繁 に出て きた ことは、子 ども達の間で討論が成立 しない とい う問題 であ った。

この ことは、中学校、高等学校 に共通 し、かつ、女子のみ、共学の授業 にかかわ らず共通 して いる。また、クラス討論 はもちろんの こと、グループ討論 において も成立 していない実態 が数 多 く報告 され、何 とかそれに代わ る方法 を模索 している様子が うかがわれた。これに関 して本 資料 で多 く用 い られているのは、紙上討論 とい う方法であ った。 これは、まず、一 人一 人 に感 想 や意見 を書かせ、それを班で回 し読 み して班 ごとにプ リン トして クラス全員 に配布 (班 ごと の回 し読 みを略 したケース も多 い)し、それを クラス全体で読み合 うことでお互 い (個人 や男

(11)

家庭科における性教育の特徴と課題

)の考 えを知 る、さ らにはプ リン トされた感想等 を もとに評論 じ合 うとい うものであ る。 し か し、本来、性 につ いての学習が 自立 と共生 を 目指す ものであるな らば、それは、討 論 、 お互 いの意見を交換 し合 うことの中で こそ、達成 され るものであろ う。討論 の能力 につ いて は、 日 本人の国民性 に始 まって、今 日の子 どもの置かれた社会的な状況 に も強 く規制 されていようが、

教育 のプ ログラムの中に効果的に組 み込んでい くことを早急 に考 えな くて はな るまい。

次 に、まだ特別 な例 であると思われ るが、中学校 の実践で、家庭科教 師が技術科教 師 と共 に 教壇 に立 ち、二人 で性 につ いての授業を進 めるものがあった (研37)。 二人 の教 師 が、女性 と 男性 とい う立場 で、性 の問題 につ いて本音を語 ることによ つて、子 ど も達 の意見を引 き出 そ う と努力 して いる。性 につ いて男女 が共 に学ぶ ことを、男女二人 の教師が自分 自身 の体験 を交 え なが ら支 えた授業 は貴重 な例 であろ う。テ ィーム・ テ ィーチ ングの方法 が教育行政上 も推進 さ れ よ うと してい る中で、家庭科 (中で も、中学校 の技術0家庭科)における性 に関す る教育 の 方法上 の特徴 の一つ とす る可能性 は大 きいといえよ う。

まとめ

男女平等教育 を掲 げる家庭科教育研究者連盟 の編集す る雑誌 (1985年1月〜 1995年9月 )に

ける家庭科 の授業実践 の うち、性 について取 り上 げた小、中、高等学校 の実践 を資料 と して分 析 した結果 、家庭科 における性 に関す る教育 の特徴 と課題 につ いて、以下 のよ うな知見 が得 ら

れた。

1)家庭科 にお ける性 につ いての学習内容 の特徴 ;小学校 で はSexま た はGenderの一部 の内容 に限 られて いた。中学校 で は、Sexの 内容「 妊娠、出産」「 男性 0女性 の身体 」等 が 中心 で あ るが、同時 にGenderの 内容 も多 くなる。ただ し、Genderの 内容 につ いて は、1989年 の学 習指 導要領以降減少傾向 にあ る。Sexualityの内容 につ いて は近年増加傾 向が認 め られ た。高等学 校 の場合 は、Sex、 Gender、 Sexualityの内容 をすべて含 めた実践 と、Genderのみ の内容 に偏

る実践 の二通 りに分 かれ る傾 向が認 め られた。

2)学習内容 とそれが取 り上 げ られて いる領域 または題材 との関係 ;ま ず 、保育領域 で実践 し た場合、幼児 の発達 についての学習 に留 ま らず、中学校、高等学校 の発達段階 にあ る学 習者 自 身 の性 に関わ る「 思春期 の性」の問題か ら出発 し、「 妊娠・ 出産」「 生命 の誕生 」 の学 習 を経 て幼児 の学習 に発展 させ ることは、子 ども達 の学習関心 に添 って い ると判 断 され る。 また は、

「 生命 の誕生」か ら始 め、幼児 の学習のあとで、今の自分、将来 の 自分へ と広 げ る展 開 も、同 様 な ことが言 え る。後者 の場合 には、将来 の職業 や親 にな る こと等 、性 のGenderの側面 につ いての展開 も多 くの実践 で認 め られた。

家族・ 家庭管理領域 において性 を取 り上 げた実践 で はGenderの側面 の学 習 が中心 とな って いるが、男女共学 のGenderの みの授業 で は子 ど も達 の学 習意欲 の面 で困難 が生 じる ことが あ る。 この点 を改善す るためには、学 習 内容 をGenderのみ に限定 せず 、SexやSexualityの 側面 へ広 げてい くことが有効であることが示唆 された。

3)学習の方法 につ いて ;視聴覚教材 の多用等 に関わ る問題 につ いて は、今 回対 象 と した実践 報告 において はあま り問題がないことがわか った。子 ども達 自身 による調査活動 の成果が性 に つ いての学習の中に組み込 まれて いる実践 は、小・ 中学校 では皆無 であ るが、高等学校 にお い て は約半数 を占めて いた。実践上 の課題 として は、子 ど も達 の間で討論が成立 しない とい う問 題 が最 も切実であるが、今回の対象 では多 くの場合紙面 による意見交換 とい う方法 が用 い られ

185

(12)

186 小 川 裕 子・ 佐 野 尚 美

ていた。また、中学校において、家庭科 と技術科、すなわち女性 と男性の二人の教師による家 庭科における性 に関する授業の効果が今後の新たな展開方法の方向性を示す ことがわか った。

以上の結果をふまえて、今後の家庭科における性に関する教育の課題について述べる。

まず、性 に関す る学習内容 は、保育領域において取 り上げられた場合には、性の三側面であ Sex、 Gender、 Sexualityの全体に及ぶ ことが多 く、性の本質をつかませ易いといえる。 しか し、保育領域 ということで「受精、胎内の胎児、生命誕生」や「妊娠、出産」 はほとんどの実 践で取 り扱 うにもかかわ らず、同時に Dい身の障害」について取 り上 げた例 はわずかであ り、

「 自立 と共生」まで言及 した実践 も少ない。このような学習内容の展開は今後の課題である。

また、性教育を家族領域で取 り上 げた場合に多 く認 め られたGenderの学習では、その内容 が家庭内の仕事の性別役割分業にとどまらず、将来の (女性の)職業にまで広げた実践が多かっ た。この ことは、性教育を取 り入れることによって、家庭科の教育内容に関連 して「 家庭責任 には家事0育児だけではな く経済的責任を含めること」"を実現 したことになる。 これは今後 さらに実践を積み上 げていくべき課題 といえる。

引用文献、註

1)・ 村田泰彦「第2章

 

共学家庭科の構想」『 共学家庭科の理論』光生館 、1986年3月 pp.41‑45

2)「女 子教 育 」 は様 々な意 味 に用 い られ るが、 ここで は、「 教育基本法 の教 育 理 念 の もと で、性別役割分業を問い直 して女子の自立を促 し、男女の平等 と人権の確立をめざす女子 教育 」という意味で用いている。 (出典 :6))

3)村田泰彦「第4章

 

『性の教育』のために」『 自立 と生活文化の教育』労働教育セ ンター、

1992年8月pp.59〜 75

4)村

瀬幸浩「家族0家庭 は子 どもの性 (セ クシュア リティ)をどう育てるか」家教連編『 月 刊家庭科研究』No.88、 1992年4月pp.4〜 9

5)小川裕子、佐野尚美「性に関する教育の展開と家庭科教育へのアプローチー静岡県下小・

中学校教員の性意識 と性教育実践か らの考察―」静岡大学教育学部『 教育実践研究指導 セ ンター紀要』1995年、印刷中

6)村田泰彦「『 性の教育』実践の傾向」『 主体 と共生の教育論―男女の新 しい関係づ くりの ために―』労働教育センター、1993年9月pp.71〜 77

7)佐野尚美「性に関する教育の展開 と家庭科教育へのアプローチ」1994年度静岡大学大学院 教育学研究科修士論文 p.238

8)和田典子「家庭科で性教育をどうすすめるか」家教連編『 月刊家庭科研究』No。11、

1985年11月pp.2〜5

9)家庭科教育研究者連盟編『家教連20年のあゆみ―男女共学ひとす じ―』 ドメス出版、

1988年7月

10)望月一枝「 ジェンダーアイデンティディーを探 って―高校生の性別役割分業観に切 り込む」

家教連編『 月刊家庭科研究』No。123、 1995年3月pp.27〜 32

11)鈴木敏子「『 家庭生活』領域の特徴 と設置の背景」家教連編『月刊家庭科研究』No.64、

1990年4月pp.4〜 9

参照

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