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家具製造に伴い発生する無垢端材の有効活用のための研究開発
石川 弘之*1 西村 博之*1 楠本 幸裕*1
Research and Development for Effective Use of Pure Listing Occurs with Production of Furniture
Hiroyuki Ishikawa, Hiroyuki Nishimura and Yukihiro Kusumoto
大川地域の無垢材を取り扱う家具メーカーでは,主に部材を加工する際に生じる端材の一部は形状等の特徴から 加工できずやむを得なく廃棄されている。そこで本研究では,端材の有効活用を目的とし端材の加工法の開発およ び端材を用いた小物製品の検討を行った。端材の特徴を調査し,定形的な矩形の形状に加工できる固定治具を製作 し,固定治具と木工工作機械を用いて,安定して端材を加工できる方法を開発した。続いて,乳幼児を対象とする 人間工学技術を採り入れて付加価値を高めた,加工後の端材から製作する木製のカトラリー等の食具の開発に取り 組んだ。乳幼児の食事の様子を観察し,食事を補助しマナーの習得を促すことができると考えられる食器やカトラ リー等の食具の検討および提案を行った。
1 はじめに
家具製造時に発生する木材等の木質材料の端材は,
その一部は家具の部材等に再利用されるが,残りの多 くは産業廃棄物として処理されている。また,昨今は ウォールナット材やオーク材といった高級な樹種の無 垢材を用いた家具が人気を集めている。これらの材料 は高価格かつ希少性も高いため,端材も家具の部材や 雑貨などの小物製品に積極的に再利用されている。し かし,加工して再利用する上で必要となるサイズや形 状の基準を満たさない端材は,やむを得なく廃棄され ているのが現状である。
大川市役所はおおかわセールス課を新設し,全国各 地で市の広報活動を積極的に行っているが,小物製品 のバリエーションを増やして広報活動に利用したい意 向がある。また,小物製品は店舗内の滞在時間を増や すだけでなく,手軽に企業イメージを広報する上でも 重用される。よって,小物製品を取り扱う大川地域の 家具メーカーにおいて,これまで主要な取引先であっ た全国チェーンの家具量販店だけではなく,小物製品 を取り扱うインテリアショップ等の小規模店舗との取 引も増加傾向である。このように,高級な樹種の木材 を用いた小物製品に対するニーズは高まりつつあるが,
大川地域で小物製品を製造している企業は少ない。
そこで,本研究は無垢材の端材(以下端材)を用い,
人間工学技術を採り入れて付加価値を高めた木製の小
物製品の開発を行うことを目的とした。将来的には,
本研究の成果が活かされ,端材が有効活用される流れ
(図1)が構築されることを展望している。本報では,
端材を,小物製品を製作する上で必要となる長さや幅 等が整った定形的な矩形の形状に加工する技術の開発 と,人間工学的な技術を採り入れて付加価値を高めた 木製小物製品の開発に関する内容を報告する。
図1 端材の有効活用における本研究の位置付け
2 方法
2-1 端材の調査
端材の特徴を確認するため,2016年7月から10月に かけて大川地域において無垢材を取り扱う家具メーカ ー計9社を対象に,端材の調査を行った。端材となる 社内基準等を聞き取り,端材の形状等の特徴を調べた。
また,現在の端材の活用状況や,端材固定治具を用い た加工方法,木製小物製品に対しての意見を聴取した。
*1 インテリア研究所
- 18 - 2-2 端材の加工法の検討
端材は,反りや節があるなどの特徴があるが,具体 的に各メーカーがどのような基準で端材として処理し ているのか,加えて端材の再利用や雑貨の製作,将来 的な再利用の可能性等といった点を調査した。また,
調査結果を元に,複数の端材を固定する治具の製作お よび,木工工作機械を用いた加工技術の検討を行った。
2-3 人間工学技術を採り入れた木製小物製品の開発 端材を用いた木製の小物製品は市場に数多く存在し ている。これらの製品との差別化を図るため,人間工 学技術を採り入れ付加価値を高めた小物製品を開発す ることとした。そこで,比較的高価格でも市場に受け 入れられると思われる乳幼児・子供をターゲットとし たカトラリー等の木製小物製品の検討を行った。2017 年3月に県内の認定こども園を訪問し,乳幼児の食事 場面を調査することで,必要となるカトラリー等の食 具の条件等を検討した。
3 結果と考察
3-1 無垢端材の調査結果
家具メーカーにおける調査において,計79個の矩形 の端材を収集した。厚み32 mmと35~38 mmの端材につ いて,木の繊維方向を長さとした幅を図2,図3に示す。
図2 厚み32 mmの端材の長さと幅
図3 厚み35~38 mmの端材の長さと幅
大川地域の家具メーカーでは,25 mm,32 mm,38 mm 厚の無垢材の挽き板が主に使用されており,調査した 端材においても32 mm,35 mm厚の割合が高かった。ま た,長さが概ね300 mm以下で自動鉋盤を用いた平面の 切削加工が不可能なものや,節や割れ等の特徴を有す るものが多かった。また,調査を行った各社に共通し て端材の処理について問題意識を持っていた。そして,
端材を固定する治具を用いた加工技術に興味を持つメ ーカーや,将来的に小物製品の開発を視野に入れてい るメーカーも存在した。家具メーカーの,端材と小物 製品に対する考え方等について図4に示す。
図4 調査対象9社の端材に関する現状と将来の展望
3-2 無垢端材固定治具の製作
端材の調査結果を元に,真空発生器を介して圧縮空 気から真空をつくる真空吸着ユニットを用い,最大3 つまで同時に固定・加工可能な治具を製作した(図5)。
固定治具は,可搬性を考慮し全長は800 mm以下,短辺 側が200 mm以下の端材を3つ同時に固定可能,真空吸 着技術を用いることで治具への端材の脱着が比較的容 易に可能といった形状的・機能的特徴を持つ。また,
固定治具と一般的な木工工作機械(パネルソーと手押 し鉋盤)を用いて,端材を定形的な矩形の形状にする 加工方法について検討した(図6)。
- 19 - 図5 端材を固定する治具
図6 木工機械と固定治具を用いた端材の加工方法
上記の加工手順により3つの端材を定形的な矩形の 形状に加工した結果,厚みがほぼ同一の端材であれば,
3点の端材を同時に加工できることを確認した(図7)。
また,長さが300 mmに満たない端材も,当該方法で加 工することで,隣接する各平面が直角に交わる矩形の 形状に加工することができた。
図7 加工前後の端材の比較
3-3 人間工学技術を採り入れた木製小物製品の開発
乳幼児・子供向けの食具に求められる要素を抽出す ることを目的として,県内の認定こども園を訪問し,
園児の食事の場面を観察した。また,食事を補助する 保育士に対して,園児の食事に関する事項についての 聞き取り調査も実施した。観察の結果,以下a~cの特 徴が確認された。
a 箸を把持したままでの食事や会話(図8)
b 内側に親指を入れる茶碗の持ち方(図9)
c 食器類が正しい配膳位置に置かれていない(図10)
図8 箸を把持したままでの食事や会話を行う様子
- 20 - 図9 茶碗の内側に親指を入れる持ち方の様子
図10 食器が正しい配膳位置に置かれていない様子
調査に協力を得た認定こども園は,3歳児クラス以 上は基本的に箸を用いていた。食事中は常に利き手で 箸を把持しており,箸を把持した状態で隣席の園児と の会話や,食器の持ち替えを行う様子が頻繁に観察さ れた。箸置きなど,箸を一旦休める食具を用いること で,食事中のマナーの習得ができると考えられる。
調査対象となった4歳児の平均の手指長は43 mm1)で,
市販されている幼児向けの茶碗の口径は多くが110 mm 程度である。一方,成人男性の茶碗の径に対して平均 の手指長は約71 mmで,諸説あるが茶碗の平均的な口 径は120 mmである。このことからも,幼児向け茶碗の 口径は手のサイズに対して大きいと考えられる。また,
茶碗は,樹脂製で側面の形状や縁の形状は衛生面を考 慮して洗浄し易いよう凹凸をできるだけ少なくした平 滑な形状となっているため,幼児が把持する際に滑り やすい形状である。食具を持たないもう一方の手が食 器を支えることが,食具に食物をのせる上で有効に作 用している2)との報告もある。よって,茶碗の側面に 対する手指との把持性を高める形状や,縁に把持を目 的とした木製の取っ手等を付与することで茶碗を把持
し易くなると考えられる。
和食においては,食器の正しい配膳位置が決められ ており,主食や一汁は身体側に置き,主菜等は身体か ら遠い位置に置くとされている。正しい配膳位置への 食器の配置を促す食具を用い,日常的に使用すること で,食器を正しく置く習慣が身に付くと考えられる。
日本の食文化は,箸特有の「はさむ」機能に応じて 箸が使い易いように調理や食器が選定され,配膳やマ ナーが形成・伝承されてきたと言われる3)。日本は乳 児から幼児期にかけて,スプーンやフォークといった ものから,箸へと使用する食具が移行する食文化圏で ある。当該こども園においても2歳児クラスまではス プーンを用いていた。使用する食具の移行に伴い,正
しい箸の使い方や食器の配膳位置等,食事に関するマ ナーの習得は重要であると考えられ,それをサポート する食具の必要性は高いと考えられる。
4 まとめ
本研究では,端材を定形的な矩形の形状に加工する 方法の開発及び,人間工学的側面から機能を検討し付 加価値を高めた木製の小物製品の開発を行った。その 結果,複数の端材を固定する治具と,固定治具と一般 的な木工工作機械を用いた加工方法を検討・開発した。
当該加工方法を用いて端材を加工した結果,隣接する 各平面が直角に交わる矩形の形状に加工可能であるこ とを確認した。また,乳幼児向けの食具の開発を目的 とし,開発のヒントを得るべく幼児の食事場面を観察 した。その結果,茶碗の把持をサポートする食具や,
箸を置くことや,食器を正しく配膳するといった食事 のマナー習得に関連する開発要素を得た。
今後は,家具メーカーの製造現場において固定治具
の評価を行い,更なるハンドリング性の向上を図る。
また,木製の食具については,幼児を対象として人間 工学的手法を用いた実験を行い、使用性を検証する予 定である。
5 参考文献
1) 村上徹:子どものからだ図鑑,pp. 56-57(2013) 2) 酒 井治 子:山 梨県立 女子短大紀要 ,第34号,pp.
143-152(2001)
3) 伊与田治子,足立己幸:小児保健研究,第57巻, pp. 529-539(1998)