• 検索結果がありません。

右鋏脚の自切によるテナガホンヤドカリの捕食者回避行動

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "右鋏脚の自切によるテナガホンヤドカリの捕食者回避行動"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Carcinological Society ofJapan

右鉄脚の自切によるテナガホンヤドカリの捕食者回避行動

Autotomy of the major cheliped as the anti-predatory behavior in the hermit crab Pagurus

middendo

f

f

i

i

松尾謙人

l

・石原(安田)千晶

l

・和田

l Kento Matsuo

Chiaki I. Yasuda and SatoshiWada

. は じ め に 甲殻類は捕食者回避行動のーっとして,捕食者に 捕獲および攻撃された場合に付属肢を反射的に自ら 切断する,自切と呼ばれる行動をとることが知られ ている(Juanes& Srnith, 1995; Maginnis, 2006).甲 殻類の自切による捕食者回避行動の研究は十脚目甲 殻類の様々な種で行われているが (Juanes& Smith, 1995; Maginnis, 2006),ホンヤドカリ属のヤドカリ においては詳細な記載例がない.本稿では, ヨツハ モガニPugettiacf.quadridensの捕食行動に対してテ ナガホンヤドカリPagurusmiddendorffii8randt, 1851 が右鉄脚の自切によって回避することを観察したの で,捕食実験の結果と合わせて報告する. . 材 料 と 方 法 ヨツハモガニがテナガホンヤドカリを捕食するこ とを確かめるために, 2013年 5

26日から同年 7

7日にかけて北海道東部厚岸湾の東岸に位置する愛 冠仰周辺 (43001'N 144050.5' E)の岩礁潮間帯でテ ナガホンヤドカリPagurusmiddendo場iBrandt, 1851 とヨツハモガニPugettiαcf.quadridensを採集して室 内実験をおこなった.まず,野外から実験室に持ち l北 海 道 大 学 大 学 院 水 産 科 学 院 海 洋 生 物 学 講 座 : 干041-0822北海道函館市港町3ー1-1 Labor百toryof MarineBio1ogy, Graduate Schoo1 of Fisheries Sciences, HokkaidoUniversity, Minato-cho, Hakodate, Hokkaido041-8611, Japan E・mail:kento.matsuoI990@伊 ail

m 帰 っ た 直 後 の ヨ ツ ハ モ ガ ニl個体(甲幅17.45mm から30.45mm)とテナガホンヤドカリ 10個体をア クリル水槽 (40X25X28 cm,水深約3cm)に入れ て24時間静置した.その後,テナガホンヤドカリ の死亡個体数と,右鉄脚を失ったテナガホンヤドカ リの生存個体数を記録した.なお,本調査地では 70%以上のテナガホンヤドカリがクロタマキビ Lit -torina sitkana Philippi, 1846の 貝 殻 を 利 用 し て お り (Oba eta,.l2008),本実験で用いた全個体がクロタ マキビの貝殻を利用していた. 本種の自切を詳細に観察するために, 2013年5

29日および5月31日にかけて,北海道大学北方生 物園フィールド科学センター厚岸臨海実験所の水族 室内で,自切を含む一連の捕食回避行動の撮影なら びに目視観察をおこなった.撮影・観察に使用した ヨツハモガニおよびテナガホンヤドカリは, 2013 年5月26日の干潮時に愛冠岬で採集した.そしてヨ ツハモガニとテナガホンヤドカリをl個体ずつアク リル水槽 (40X2SX28 cm,水深約3cm)に入れて 水槽上部から撮影ならびに目視観察をおこなった. 実験で使用したテナガホンヤドカリの全個体がクロ タマキビの貝殻を利用していた.

E

語 果

l個体のヨツハモガニと10個体のテナガホンヤド カリを同一水槽に入れた実験では, 16例中12例で 本種の死亡個体が観察された.死亡個体が観察され た水槽では1.92士0.90個体(平均±標準偏差)が死

2

1

(2)

松尾謙人・石原〈安田)千品・和田哲 亡していた.また,死亡個体はすべて右鉄脚がない 状態で発見された.死亡個体が保持していた貝殻の 一部には関口部の欠損がみられた.さらに,生存し ていたが右欽脚を失ったテナガホンヤドカリも16 例中12例で観察された.右鉄脚を失った個体が観 察された水槽では, 1.62

:

:

t

0.65個体が右鉄脚を失っ ており,さらに歩脚を失っている個体も観察され た. 自切を含む一連の捕食回避行動を撮影・観察した 結果,テナガホンヤドカリはヨツハモカ。ニから攻撃 を受けた場合,最初に逃げるか,あるいは貝殻に隠 れるといった捕食者回避行動を示した.ヨツハモガ ニはヤドカリの入った貝殻を鉛脚で掴んで,鉄脚を 貝殻に挿入することによって,貝殻に隠れているヤ ドカリでも捕食することがあった.いっぽう,テナ ガホンヤドカリでは,員殻に隠れた後も,貝殻の開 口部から右鉄脚を伸長させることによって, ヨツハ モガニの鉄脚による攻撃を防止しようとする行動が 見られた.この行動によって, ヨツハモガニがヤド カリを放して,ヤドカリが捕食回避に成功した例 や, ヨツハモガニが鉄脚でヤドカリの右鉄脚を掴ん だ際にヤドカリが右鉄脚を自切してヨツハモカ、ニか ら逃れることに成功した例,そして,自切したにも かかわらず捕食された例が観察された(動画 URL: http://youtu.be/tOjfBM3hqRQ).

置 有

本研究の結果から,テナカ、ホンヤドカリが右鉄脚 を伸長させたり,右鉄脚を自切することによって捕 食回避をおこなっていることが示唆される.これま で,ホンヤドカリ属における右鉄脚の利用は,員殻 をめぐる闘争や繁殖期のメスをめぐるオス間闘争な ど の 資 源 を め ぐ る 争 い で 研 究 さ れ て き た (Nei1,

1985; E1wood & Nei1, 1992; Yasuda et a.l, 2011, 2014; Matsuo eta,.lin press). しかし,捕食回避における 右鉄脚の機能を記載したのは,本研究が初めてであ る. 従来,ヤドカリは員殻に隠れることによって捕食 者から身を守ると考えられてきた.本研究の結果は この見解を修正するものといえよう.貝殻の形状や 材質は巻貝の種によって大きく異なり,カニがヤド 22

I

C釘 鴎

r

24 (2015) カリを捕食する頻度は,ヤドカリが利用している貝 殻の種によって左右される (Mimaetal., 2003).例 えば, ヒライソカ、ニ Gaeticedepressus(Oe Haan, 1835)は,水槽内でホソウミニナ Batillariacumingii (Crosse, 1862)やク ロスジムシロReticunassaj均ter・ cula(Ounker, 1860)の貝殻を利用しているホンヤ ドカリ Pagurusfilholi(Oe Man, 1887)を全く捕食し ないが,ヤマザンショウガイHomalopomasanga -rense(Schrenck, 1862)の貝殻を利用しているホン ヤドカリを高頻度で捕食する (Mimaeta,.l2003). 本研究において, ヨツハモヵーニはテナガホンヤドカ リを捕獲した後,両鉄脚を使用してクロタマキビの 貝殻の開口部を破壊する行動や,両鉄脚を開口部か ら貝殻内部に挿入してヤドカリを捕食する行動を示 した.また,イソガニHemigrapsussanguineus(De Haan, 1835)は貝殻を割ることによってクロタマキ ビを容易に捕食することが知られている (Ojima& Wada, 20l3).これらのことから,クロタマキビの 貝殻はカニの捕食に対する防御力が低いと考えら れ,テナガホンヤドカリにとって,クロタマキビの 貝殻に隠れる防衛手段はヨツハモガニの捕食に対し て有効な手段とは言えない.しかし北海道東部厚岸 湾の岩礁潮間帯ではク ロタマキどが優占しており, 多くのヤドカリがクロタマキビの貝殻を利用してい る (Obaet al.

2008).ヤドカリにとって右鉄脚の伸 長行動や自切は,とりわけ防御力の低い貝殻を利用 している状況でカニの捕食から逃れるために有効な 行動だと考えられる.

園 語 辞

本研究を行うにあたり,実験機材を貸していただ いた北海道大学北方生物圏フィールド科学センター 厚岸臨海実験場の仲間雅裕教授に深謝いたします. また,北海道大学水産学部の為近昌美氏には参考と なる動画の編集にご協力いただいた. . 文 献 Elwood, R.w.,& Neil, S., 1992.Assessment andDecisions: A study ofinformationGatheringby HermitCrabs Chapman and Hall, London, 192pp

(3)

Juanes, F., & Smith, L. D., 1995. The eco10gica1 conse -quencesof1imb damage and10ss in decapodcrusta -ceans: a reviewandprospectus.Joumal of Experimental Marine Bio10gy and Ecology, 193: 197-223. Maginnis, T.L., 2006. The costs of autotomy andregenera -tion inanimals: a review and framework for future re -search.BehavioralEcology, 17:857-872.

Matsuo, K., Tanikawa, D., Yasuda, C. 1., & Wada, S. (in

press).Sex-relateddifferences insize, functionandre

-generation ofthe majorchelipedin the hermitcrab Pagurus

.

f

i

lholi. Marine Ecology.

Mima, A., Wada, S., & Goshima, S., 2003. Antipredatorde

-fence ofthe hermitcrabPagu問s

.

f

i

lholiinduced by

predatorycrabs.Oikos, 102:104ー110

Neil, S.J., 1985.Sizeassessmentand cues: studies ofhermit

crab contests. Behaviour, 92: 22-38.

Oba, T., Wada, S., & Goshima, S., 2008.Shell partitioning

ヤドカリの右錬脚自切による擦食者回避

of two sympa仕ichermitcrabs, Pagurus middendo伊2

and P brachiomastus, innorth-eastemHokkaido,

Japan.Joumal of the Marine Biological Association of

theUnitedKingdom, 88: 103-109

Ojima, H., & Wada, S., 2013. Contrasting antトpredationre

-sponses inthe intertidal periwink1eLittorina sitkana effects of chemical cue, body size and time ofday. Planktonand BenthosResearch, 8: 38-45

Yasuda, C. .1, Matsuo, K., & Wada, S., 2014. Rapidregener

-ation of血em勾orchelipedin relation toits functionin male-male contestsin the hermitcrab Pagurusmidden -do伊 i.PlanktonandBenthos Research, 9:122-131 Yasuda, c,. Suzuki, Y., & Wada, S., 20日 Functionof白e m勾orche1ipedin male-malecompetitioninthehermit crab Pagurus nigrofascia.MarineBiology, 158: 2327-2334. 。 創 鳩 町

24(

1

5

)

I

23

参照

関連したドキュメント

ともわからず,この世のものともあの世のものとも鼠り知れないwitchesの出

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

この分厚い貝層は、ハマグリとマガキの純貝層によって形成されることや、周辺に居住域が未確

脱型時期などの違いが強度発現に大きな差を及ぼすと

自発的な文の生成の場合には、何らかの方法で numeration formation が 行われて、Lexicon の中の語彙から numeration

(自分で感じられ得る[もの])という用例は注目に値する(脚注 24 ).接頭辞の sam は「正しい」と

雇用契約としての扱い等の検討が行われている︒しかしながらこれらの尽力によっても︑婚姻制度上の難点や人格的

夫婦間のこれらの関係の破綻状態とに比例したかたちで分担額