• 検索結果がありません。

CT データが 必 要 とされるため 被 曝 線 量 を 考 慮 して 比 較 的 低 い 管 電 流 で 撮 像 が 行 われて いる 体 格 に 応 じてこの 設 定 は 変 化 させているものの 体 格 の 大 きな 被 検 者 では 診 断 を 目 的 とした CT と 比 較 して 画 質

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "CT データが 必 要 とされるため 被 曝 線 量 を 考 慮 して 比 較 的 低 い 管 電 流 で 撮 像 が 行 われて いる 体 格 に 応 じてこの 設 定 は 変 化 させているものの 体 格 の 大 きな 被 検 者 では 診 断 を 目 的 とした CT と 比 較 して 画 質"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

第4章 PET-CT

近年の腫瘍 PET に対する高い関心は、以前より核医学診療に携わってきた者にとっては 喜びであるとともに驚きでもあり、その過熱ぶりにいたっては、時に一抹の不安感さえ抱 かせられるものである。日本においては PET ブームであるが、アメリカでは現在 第二次 PET ブームとしての PET/CT ブームが到来していると言って差し支えない。1999 年の米国 核医学会(SNM)総会に於いて Townsend ら発表による PET/CT 像が ”Image of the Year” を 受賞し、華々しく PET/CT 時代の幕が開けられたのは記憶に新しいことであるが、2001 年 に GE Medical Systems 社により本格的な臨床用 PET/CT 装置が発売されて以降、この PET/CT ブームに拍車がかかった。一体型 PET/CT 装置によって鮮やかにモニターに映し出 される 同一断面上の PET、CT、及び両者の重ね合わせ像のインパクトは絶大であり、これ までの「核医学 = 不明瞭な画像」というイメージは PET/CT においては完全に払拭された。 現在 アメリカでは大学病院或いはがんセンター等の施設を中心に順次 PET/CT 装置が導入 され、かなりの勢いを持って確実に拡がりを見せている。日本においても昨年末に認可の 下った PET/CT 装置ではあるが、厳しい医療経済のもと、高額な装置でもあることから 急 速に普及するものとは考え難い。しかし、既にいくつかの病院・施設では導入が始められ 或 いは進められており、今後ますます PET/CT の話題を耳にする機会が増えることは間違い ないであろう。 本稿では、著者らのジョンズ・ホプキンス大での経験に基づき、PET/CT に関する基本的 事項について解説を行った。紙面の都合上、症例提示は 代表的なものにとどめた。また、 本稿においては、PET/CT とは F-18 FDG を用いた PET/CT を指すものとする。 2. 装置 PET/CT の最大の特徴は、改めて述べるまでもなく、従来の PET 装置に CT 装置が一体化 されている点である。開発初期の装置とは異なり、現在発売されている PET/CT 装置はす べてが、高性能の PET と CT を組み合わせたものである。特に CT 部分は Multi-detector row CT が用いられており、高画質の全身 CT 像が短時間(GE 社製4列 detector の場合、約 40 秒)で撮像可能となっている。 3. 撮像 ジョンズ・ホプキンス大で使用されている GE 社製 Discovery LS では、CT(経口造影剤 併用)の撮像に引き続き PET の撮像が行われている。PET/CT の特徴として、CT はマッピ ング用の画像として機能しているだけでなく、その撮像の際に得られる X 線吸収値のデー タが PET における吸収補正に用いられていることがあげられる。詳しくは後述するが、短 時間で吸収補正用データが収集可能となったため、従来の PET に比し 検査のスループット は大幅に向上した。 PET 部分の撮像に関しては 従来の PET と特に変わりはないが、CT 部分は 通常 診断目 的で行われている CT とは かなりの部分で異なっている。先ず、全身 PET/CT では全身の

(2)

CT データが必要とされるため、被曝線量を考慮して 比較的低い管電流で撮像が行われて いる。体格に応じてこの設定は変化させているものの、体格の大きな被検者では 診断を目 的とした CT と比較して、画質が劣っていることは否めない。参考までに 現在 ジョンズ・ ホプキンス大で用いられている管電流をあげておくと、体重 45 kg未満: 40 mA、45~68 kg: 60 mA、68~90 kg: 80 mA、90~136 kg: 120 mA、136 kg 以上: 160 mA である。また、短時間 とはいえ 撮像中を通しての息止めは困難なため、息止めなしのいわゆる「浅い」呼吸状態 で撮像せざるを得ない。これは、時に 少しぼけた CT 像の原因となるだけでなく、重ね合 わせの際の「ずれ」の大きな要因となっている。また、30 分程度の時間を要する PET の撮 像のために CT 開始時から両腕を下ろして撮像されることも多く、これを原因とする CT 画 質の劣化もしばしば経験される。 4. X 線吸収値を用いた吸収補正 PET/CT では CT によって得た X 線吸収値を用いて PET の吸収補正を行っている点が大 きな特徴のひとつであるが、従来の PET で用いられている 511 KeV フォトンに比し X 線の エネルギーは弱いために、いくつか注意を要する現象が観察される。PET/CT であっても Ge-68 或いは Cs-137 を搭載している限り 従来と同じ方法で吸収補正が可能であるので、 我々の施設では 正常臓器及び腫瘍病変において、CT 及び Ge-68 法 双方によって得られ た吸収補正 PET 像における 放射線定量値についての検討を行った1)。それによると、両方 法による定量値は概ね等しいと考えられるものの、CT 法による定量値は 肺を除く全ての 臓器において、関心領域内の平均値及び最大値の差として約 4 -15 % Ge-68 法に比し高い 値を示した。また、腫瘍病変における検討では、骨にある病変の放射線定量値が約 11 %、 CT 法において高く観察された。CT 法、Ge-68 法の定量値の差を Ge-68 法の定量値で除し た値は、CT における Hounsfield units(HU)値と弱い正の相関を示すことも明らかになった。 従って、通常の組織においては CT を用いた吸収補正の影響はほとんど意識する必要はな いが、骨などの CT 上高吸収を示す組織では、放射線定量値が過大評価されていることを考 慮すべきである。さらに この件に関連して、超高 HU 値をもたらす可能性のある 経口及び 経静脈性陽性造影剤、或いはペース・メーカー等の金属類は、吸収補正値に影響を及ぼす ことで PET/CT 特有のアーチファクトを引き起こす原因となり得ることも記憶しておくべ きである。 5. PET と CT 像の重ね合わせ PET と CT の明瞭な重ね合わせ像を得られることが PET/CT の最大の特徴であるが、実際 の検査において 全身を通して「ずれ」のない完全な重ね合わせ像が得られることは、まず あり得ないと考えておいた方がよい。ごく短時間、秒のオーダーで撮像される CT に対し、 PET は通常 1ベッドポジションあたり5分以上かけて撮像されるために(2D 撮像の場合)、 両者の画像の間に 呼吸や腸の蠕動運動、時に被検者の体動に起因するずれが生じる。従っ て、重ね合わせ像にのみ頼って診断を行うことは 厳重に慎まなくてはならない。重ね合わ せ前の PET と CT 像を各々検討し、その上で重ね合わせ像をチェックすることで 正確な診 断が可能となる。この過程には、少なくとも PET 及び CT 双方の 最低限の読影能力が必要 とされる。

(3)

重ね合わせの際に生じるずれの原因として、最も問題となるのは 呼吸に伴う臓器の変動 である。現時点では、CT を浅い呼気の状態で撮像することが ずれを最小限に抑えるため に最良であると考えられている。呼吸性変動の PET 像への影響は、肺底部から肝上部にか けての領域で顕著であり、肺底部での弧状のコールド・アーチファクト(図1)や肝病変 が PET 像上 肺病変と誤って描出される現象2)が報告されている。 実際の肺結節病変における PET と CT のずれに関しての検討では、病変の中心は両画像 間で 8 mm 程度ずれており、この現象は肺底部で顕著であった3)。また、腹部正常臓器にお ける検討では、肝臓及び脾臓を中心に存在部位のずれが両画像間で観察された4)。ただし、 これらのずれが生じていることの認識、或いは ずれの生じている画像から実際の病変部位 を特定することは、画像診断のトレーニングを受けた者であれば決して難しいことではな く、実際の読影において問題となることは ほとんどあり得ない。 一体型 PET/CT 装置を用いても 重ね合わせの際のずれは避けられないことから、別々の 機会に得た PET と CT を高精度で重ね合わせることには かなりの困難が予想される。しか し、一体型 PET/CT 装置によって得られた重ね合わせ像と 別々の機会に撮像を行った PET と CT の「頭の中」での重ね合わせの比較では、PET/CT による重ね合わせの方が有意によ り正確であったとの報告5)があることから、重ね合わせ像を用いての診断そのものに意義 があるものと考えられる。その意味では、PET/CT によって得られた「ずれ」に関する様々 な知見を、別々の機会に得た画像の重ね合わせに還元する努力も望まれる。ただし 現時点 では、PET/CT が精度、時間的効率の点で 最も優れた重ね合わせ画像を提供する装置であ ることに間違いはない。 6. CT 用造影剤 腸管の描出を目的とした経口造影剤(バリウム)の投与は、日常診療において PET/CT が使用され始めて 比較的早い時期から行われるようになった。経静脈性造影剤に比べ投与 が容易であり、副作用の頻度が少ないことが要因と思われる。高濃度で用いられた場合に は、アーチファクト及び定量値測定の際の過大評価が問題となり得るが、希釈した造影剤 を用いることで それらの可能性を最小限に抑えることが可能である。最近では、陰性の経 口造影剤の有用性も報告されている。CT 像での腸管の描出を行うことによって、腸の病変 とともに 腸間膜リンパ節、腹膜播種病変等の検出向上に役立っている。 経静脈性ヨード造影剤は、投与のタイミング、副作用の問題等が経口造影剤に比べ複雑 であり、現時点では積極的に用いられていないのが現状である。しかし、さらなる PET/CT の診断能の向上は確実に期待される。経口陽性造影剤と同様に、高 HU 値を示す部分では PET 像におけるアーチファクト或いは放射線定量値の過大評価に留意すべきである。今後、 経静脈性造影剤を併用した PET/CT のデータの蓄積、適切なプロトコールの開発に期待が 持たれる。ただし、被曝線量を考慮して、通常の腹部造影 CT で行われているような多相プ ロトコールに PET を組み合わせることは、今後も難しいことが予想される。 7. PET/CT 特有のアーチファクト 前述のごとく、PET/CT においては CT 部分に起因する特徴的なアーチファクトが見られ る。X 線吸収値を用いた吸収補正が関連した PET 像上のアーチファクトは、高濃度の造影

(4)

剤や金属の存在下で生じ得る。我々が現在までに経験した 金属に関連したアーチファクト としては、歯科矯正具、ペース・メーカー、静注用ポート、人工関節関連部品等が原因で 生じていたものであった。また、肺の呼吸性変動を原因として、肺底部における弧状のコ ールド・アーチファクト(図1)がしばしば観察される。 8. 症例提示 肺癌、多発リンパ節及び肝転移 肺右中葉に大きな腫瘍があり、FDG の強い集積を認める(図1右上:PET 像 矢印)。右 気管支-食道間にもリンパ節転移が明らかである(同図 矢頭、左上:CT 像 白矢頭)。そ の頭側では、気管前方の小リンパ節(図2:左上:CT 像 白矢印)に対応して FDG の強 い集積を認める(同図 右上:PET 像 矢印)(その他 非提示の縦隔リンパ節転移多数)。 また、腹部では肝に多発転移を認め(図3:右上:PET 像 矢印)、肝門部にもリンパ節転 移が明らかである(同図 右上:PET 像 矢頭、左上:CT 像 白矢頭)。 がんの診療・治療においては、CT(あるいは MRI)画像上での 病変の存在部位の把握が 不可欠であり、従来の PET で撮像が行われた場合にも、異常集積に対応する CT 像上の病 変の指摘が必要とされてきた。しかし、この作業が時に容易なものでないことは、腫瘍 PET の診断に携わっておられる方なら 幾度も経験されていることと思われる。本例においても、 図2B の縦隔リンパ節、図2C の肝門部リンパ節の CT 像での対応病変の指摘は、CT の撮 像条件如何では 難しい場合も十分に想定される。PET/CT の出現以降 この様な病変の指摘 は、容易に自信を持って行えるようになった。 図1:上段左、図2:上段右、図3:下

(5)

<文献>

1. Nakamoto Y, Osman M, Cohade C, et al: PET/CT: comparison of quantitative tracer uptake between germanium and CT transmission attenuation-corrected images. J Nucl Med 43: 1137-43,2002.

2. Osman MM, Cohade C, Nakamoto Y, et al: Respiratory motion artifacts on PET emission images obtained using CT attenuation correction on PET-CT. Eur J Nucl Med Mol Imaging 30: 603-6, 2003.

3. Cohade C, Osman M, Marshall LN, et al: PET-CT: accuracy of PET and CT spatial registration of lung lesions. Eur J Nucl Med Mol Imaging 30: 721-6, 2003.

4. Nakamoto Y, Tatsumi M, Cohade C, et al: Accuracy of image fusion of normal upper abdominal organs visualized with PET/CT. Eur J Nucl Med Mol Imaging 30: 597-602, 2003.

5. Lardinois D, Weder W, Hany TF, Kamel EM, Korom S, Seifert B, von Schulthess GK, Steinert HC. Staging of non-small-cell lung cancer with integrated positron-emission tomography and computed tomography. N Engl J Med 348: 2500-7, 2003.

「クリニカル PET の最前線」(先端医療技術研究所)2004 年 7 月刊行予定の原稿を一部 改変。

(6)

第5章 悪性腫瘍診断の手順

ここでは、実際の症例を診断しながら、FDG-PETによる悪性腫瘍診断の考え方、手順を 解説する。 1.問題: 症例: 69歳、男性、身長153cm、体重50kg。 既往歴:2001年1月、直腸癌にて腹会陰式直腸切断術施行。中分化腺癌, a2n1P0H0, stage IIIb 。 2001 年 5 月 、 右 鼠 径 リ ン パ 節 腫 大 を 認 め た た め 、

2-deoxy-2-[18F]fluoro-D-glucose(18FDG)によるPET検査を施行。なお、腫瘍

マーカーCEAは正常。 撮像条件:4時間の食事制限後、18 FDG(433MBq)を静脈投与。座位にて30分間 安静後、眼窩下縁から大腿部の体軸断層像を撮像。検査前の血糖値は 99mg/dl。冠状断層像に再構成し、背側(左上)から腹側(右下)に 順に提示。 図1

(7)

図2 1 2 3 5 4 6 15 14 14 8 13 12 16 b b a a 図3 11 10 7 9 c

(8)

2.診断の手順 画像所見の読影 FDG-PET 冠状断層像では、心筋1、両側腎盂・腎盃2、膀胱3、縦隔内a、両側鼠径部b に高度の FDG 集積、肝4、胃底部5、腸管6、甲状腺7、脊椎骨骨髄8、上行大動脈9、大 動脈弓部10 、総頸動脈11 、大腿動脈12 、肩関節周囲13 、上腕、前腕の筋肉14 、肛門15 、陰 嚢16、左下腹部腹壁cに軽度の FDG 集積を認める。これらの集積の中で、縦隔内、両側 鼠径部、左下腹部の腹壁以外の集積は、正常(心筋、尿路、消化管、筋、甲状腺、肝) もしくは非腫瘍性集積(動脈壁粥種、骨髄)と考えられる(図1)。 臨床経過と FDG-PET 検査から、1)直腸癌の縦隔内リンパ節転移と両側鼠径リンパ節 転移、2)その他の悪性腫瘍のリンパ節転移、が考えられるが、FDG-PET 画像からこれ らを鑑別することはできない。 診断 食道癌(異時性重複癌)、および食道癌の縦隔リンパ節・鼠径リンパ節転移 (図2、3) 解説 FDG-PET 検査は、2002年4月から、悪性腫瘍(脳腫瘍、頭頚部腫瘍、乳癌、肺癌、 転移性肝臓癌、膵臓癌、直腸癌、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、原発不明癌)、虚血性心疾患、 てんかんの診断で保険適応を受け、現在国内約50施設で一般診療に用いられている。癌 診療では、腫瘍の良悪性の鑑別、悪性度診断、病期診断(局所進展、転移の有無)、原発巣 の検索、治療の評価(術後残存腫瘍組織の有無、放射線・化学療法の効果)、再発診断(有 無、部位)に役立っている。 FDG-PET による悪性腫瘍診断は、以下のプロセスで行う。 1) FDG 集積部の同定(体軸断層像、冠状断層像、矢状断層像) 体軸断層像を元に、全身の冠状断層像と矢状断層像を画像再構成する(PET 装置に付属 したソフトウェアを用いる)。冠状断層像と矢状断層像を含め、FDG の集積を読影する。 2) 生理的集積、非腫瘍性集積、腫瘍への集積の鑑別 本症例で認められた部位以外に、唾液線、口蓋扁桃、舌、声帯・顔筋(会話時)、眼筋、 褐色細胞、胸線(若年者)への集積が知られている。また、歯肉炎、副鼻腔炎、結核、サ ルコイドーシス、真菌症などにも活動期には集積する。 3) 腫瘍組織への集積の進展範囲 FDG-PET のみでは、高集積を示す部位を同定することが困難な場合があり、腫瘍組織へ の集積の進展を知るには形態画像との重ね合わせが有用である。

(9)

第6章 がん検診と FDG-PET

1. 検診の現状 わが国では、全国の職場や市町村で検診が行われている。胃がん、肺がん、乳がん、子 宮がん、大腸がんなどを対象としたがん検診受診者は、一年間に一千万人を越え、健康に 対する国民の関心は非常に高い。厚生労働省では、国民の健康向上を目指して新たな政策 「健康日本21」を策定した。この中では、がん検診の受診率を現在よりもさらに高くす ることが目標になっている。例えば、胃がん検診の受診率を22%(1997年現在)か ら33%(2010年)へ、肺がん検診の受診率を16%(同)から24%(同)へ、と 具体的な数値目標が示されている。 検診の普及がはかられる一方、検診の有効性の評価が増々重要になっている。厚生労働 省研究班によるがん検診の評価(2001 年)によると、擦過細胞診による子宮がん検診、視 触診とマンモグラフィの併用による乳がん検診(50才以上)、便潜血検査による大腸がん 検診は、「検診による死亡率減少効果があるとする、充分な根拠がある」がん検診と評価さ れている。また、胃 X 線検査による胃がん検診、視触診とマンモグラフィの併用による乳 がん検診(40才台)、胸部 X 線検査とハイリスク群に対する喀痰細胞診の併用による肺が ん検診、肝炎ウィルスキャリア検査による肝臓がん検診は、「検診による死亡率減少効果が あるとする、相応な根拠がある」がん検診とされている。一方、視触診単独による乳がん 検診は、「検診による死亡率減少効果がないとする、相応な根拠がある」と評価されている。 乳がん検診は、画像診断機器の併用により、がん検診の有効性が改善された点が注目され る。 2.PET

Positron Emission Tomography(PET)は、医学研究の中で“生体機能の画像化”という重 要な役割を担っている。1970 年代後半に開発され、初期にはごく限られた研究機関に設置 されて中枢神経系、循環器系、呼吸器系、消化器系の生理機能の研究に用いられた。近年 は、再生医療における生体機能の回復、遺伝子治療における遺伝子の導入と発現、創薬に おける新規治療薬剤の体内動態などの客観的評価になくてはならない手法となっている。 3.臨床 PET 医学研究の重要な手法として発展する一方、その成果を個々の患者さんに還元する努力 が続けられてきた。日本アイソトープ協会 医学・薬学部会サイクロトロン核医学利用専 門委員会による「サイクロトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性 薬剤の基準と臨床利用の指針」(1)、核医工学ワーキンググループによる「PET 装置の性 能評価のための測定指針」(2)、日本核医学会による「院内製造された FDG を用いて PET 検査を行うためのガイドライン」(3)などが策定され、臨床 PET を推進するための環境整 備が行われてきた。 脳および冠循環代謝の領域では、15 O 標識ガス(C15O2、15O2、C150)による血流量・酸

(10)

素 代 謝 ・ 血 液 量 測 定 の 高 度 先 進 医 療 化 と 保 険 収 載 ( 平 成 6 年 ) と し て 結 実 し た 。 2-deoxy-2-[18F]fluoro-D-glucose(18FDG)によるブドウ糖代謝の研究は、てんかん、虚血性心 疾患、悪性腫瘍診断の高度先進医療化と保険収載(平成14年)という形で結実した。臨 床 PET 検査は、脳血管障害の脳循環代謝の病態診断、てんかんの焦点診断、虚血性心疾患 における冠循環・心筋代謝の病態診断、悪性腫瘍の部位、悪性度、病期診断、治療効果判 定、再発診断を中心に、国内の50をこえる医療機関で実施されている。 4.PET 検診 (1)PET による検診 PET は、脳血管障害・痴呆性疾患、虚血性心疾患のスクリーニングにも用いられるが、 現在のところがん検診への期待が最も高い。1994 年、PET を中心とする画像診断機器を用 いた成人病検診が開始された(4)。従来の画像による検診では、脳、胸部、消化管、乳房 など個々の臓器ごとのスクリーニングが行われたのに対し、PET 検診では全身まるごとの スクリーニングが可能である。PET を中心としたがん検診では、被験者約6000例中、 がん発見率は2.3%、このうち PET 陽性1.27%、PET 陰性が1.03%であった。 PET 陰性例は、前立腺がん、腎がん、膀胱がん、子宮頚がん、肝細胞がんに多く、これら は超音波検査、CT、MRI、血液腫瘍マーカーで発見されている。この検診システムは非常 に高いがん発見率で注目を集めたが、全身のがんスクリーニングを前提にした場合、PET のみでは不十分であり、超音波検査、CT、MR などの画像診断機器と組み合わせたシステ ムが必要であることを示した(5)。 2)PET 検診の有効性の検討 検診の目的は、「早期発見・早期治療」ではない。がん検診を受診なさる方々の目的は、 がんで死亡する危険を減らすことであろう。したがって、がん検診の有効性は、受診によ る「死亡率の減少」が基準となる。PET を中心としたがん検診の有効性を証明するために は、多数例かつ長期にわたる大規模研究を行い、受診者の死亡率減少効果を証明する必要 がある。これには、単独の施設では限界がある。現在、PET によるがん検診は民間の医療 機関を中心に自由診療で行われているが、受診者の登録、追跡、予後評価等を標準化し、 がん検診施設間の協力体制を構築することが必要と思われる。すでに多くのがん領域で検 診(肺がん、乳がん、胃がん、子宮がんなど)が行われている。これらの検診システムと の優劣、費用、効果の評価を行わなければならない。PET 検診というよりは、検診システ ムの中で PET の果たす役割を明確にすべきであろう。 3)PET 装置開発の方向 がん検診に関しては、高感度の装置の開発が望まれる。これにより、投与放射能量の低 下、被験者、験者の被曝の軽減が可能になる。検査時間の短縮、一台当たりの検査件数の 増加が見込まれる。形態画像との重ね合わせが診断能を向上させる。したがって、PET-CT もしくは重ね合わせのための解析ソフトウェアが必須となる。 4)PET 検査薬剤の開発 現在の検診は FDG を中心に行われているが、生理的集積、非腫瘍性集積が多い。さらに 腫瘍特異性の高い放射性トレーサの開発が必要であろう。

(11)

PET によるがん検診の有効性(死亡率減少効果)についてのエビデンスはまだない。部 位別に見た悪性新生物(がん)の人口10万人対年齢調整死亡率の年次推移(厚生労働省) では、胃がん、子宮がんが減少し、肺がん、結腸がん、乳がん、膵臓がんなどが増加して いる。増加しつつあるがんは、いずれも PET が得意とする領域である。画像診断機器の導 入ががん検診の有効性の向上に寄与することは、乳がんにおけるマンモグラフィの例でも 明らかである。 “PET を検診に”という発想は、いまのところ欧米各国にはないようであ る。かつて PET を用いた悪性腫瘍診断を提唱したのは、1980年代はじめの日本の PET 研究者たちであった。20年後の今、PET 検診の有効性を検証し、世界に発する時期がき ているのかも知れない。 参考文献 1)(社)日本アイソトープ協会 医学・薬学部会サイクロトロン核医学利用専門委員会に よる「サイクロトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準 と臨床利用の指針」Radioisotope 2001;50(7):190-204 2)(社)日本アイソトープ協会 医学・薬学部会サイクロトロン核医学利用専門委員会 核 医工学ワーキンググループ:PET 装置の性能評価のための測定指針 Radioisotope 1994; 43: 115-135 3)福田寛、鳥塚完爾、佐治英郎、小西淳二 他:院内製造された FDG を用いて PET 検査 を行うためのガイドライン 日本核医学会. 核医学 2001;38:131-137 4)正津晃、井出満、高木繁治ら:最新の画像診断機器を用いた成人病検診 日本医事新 報、1996; 3754: 43-45

5)Yasuda S, Ide M, Fujii H, et al. Application of positron emission tomography imaging to cancer screening. Brit J Can 2000;83:1607-1611

参照

関連したドキュメント

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

睡眠を十分とらないと身体にこたえる 社会的な人とのつき合いは大切にしている

これらの定義でも分かるように, Impairment に関しては解剖学的または生理学的な異常 としてほぼ続一されているが, disability と

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

 親権者等の同意に関して COPPA 及び COPPA 規 則が定めるこうした仕組みに対しては、現実的に機

を行っている市民の割合は全体の 11.9%と低いものの、 「以前やっていた(9.5%) 」 「機会があれば

キャンパスの軸線とな るよう設計した。時計台 は永きにわたり図書館 として使 用され、学 生 の勉学の場となってい たが、9 7 年の新 大

巣造りから雛が生まれるころの大事な時 期は、深い雪に被われて人が入っていけ