はじめに:
一般内科診療におけるSLE診断の意義
膠原病一般について,治療は経験者に任せる のがよいであろうが,診断は,強皮症と筋炎に わかりやすい特徴があり,全身性エリテマトー デス(systemic lupus erythematosus:SLE)に有 用な分類基準があるので,プライマリ・ケアの 範疇と思える.事実,筆者らが診療する膠原病 のほとんどは,前医が診断ないし推定した紹介 例である.問題は逆のことにあり,膠原病を“除 外”するのは疑うよりも難しいので,一般内科 の守備範囲である日常感染症が,しばしば膠原 病疑いとされる.当科への紹介不明熱の多くは 細菌感染症,次いで悪性リンパ腫,残りが血管 炎,Still病,ウイルス性を含む非定型病態,希 少疾患である.SLEは不明熱になりにくいが, 発症時の病態が非定型なSLEの診断,初期SLEと 関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)初期 の区別は容易でないので,SLE分類基準の読み 方を知る意義がある. SLEは日本で医療扶助申請者6万人,推定有病 率30~50/10万人,男女比1:9,発症ピークは 妊娠年齢の 20~30 歳代にあるが,小児から高 齢者までみられる.小児は高疾患活動性の例が 多いが,予後不良には直結しない.高齢者は腎・ 中枢神経障害が少ない傾向がある.1.SLE初期の臨床像
以下の初期臨床像+抗核抗体陽性のとき, SLE分類基準に満たなくても,専門家はステロ イド治療を始めることがあるが,鑑別一覧の知 識が前提になる.冒頭の要旨を補足すれば,i) SLEを疑う軽症病態が分類基準に満たないな ら,経過観察または専門科に紹介,ii)臓器障害全身性エリテマトーデス
要 旨 三森 明夫 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は,症状・血液尿検査・胸部X線所見が,時期を隔てた所見も含めてSLE分類 基準を満たす場合に診断できる.基準に満たないのであれば保留,または 否定して他疾患を検索する.現行のSLE分類基準は感度・特異度が高く, 診断の肯定・否定にとって実用的である.治療法は,ステロイド用量と減 量日程,併用する免疫抑制薬に選択の幅があり,国際的ガイドラインも概 略ないし総論にとどまっている. 〔日内会誌 104:2118~2124,2015〕
Key words SLE分類基準,ループス腎炎,神経精神SLE
国立国際医療研究センター膠原病科
Diagnostic(Classification)Criteria and Treatment Guidelines of Collagen-vascular Diseases:How to Use and Cautions on Applying Them for General Physicians. Topics:II. Systemic lupus erythematosus(SLE).
が明瞭な状態で分類基準に満たないなら,迅速 に他疾患を検索,といえる. 1)臨床所見 (1)変動性・移動性の関節炎を,関節の大小 を問わず高率にみる(RA関節炎も初期は変動し 得るので,後述の鑑別が重要である).腫脹圧痛 が遠位指節間(distal interphalangeal:DIP)関 節にあるなら,SLEか乾癬性関節炎を思わせる. (2)特徴的皮疹を一部の患者にみる:頬部紅 斑・蝶形紅斑(変動や出没もある.経過中の頻 度 集 計 20~60%), 脱 毛(可 逆 的 な 毛 髪 脆 弱 化),円板状ループス(discoid lupus,経過中頻 度 15%;播種性の皮疹はSLEの語源である狼/ lupusの咬み傷様,頭皮で不可逆的脱毛も招く), 爪周囲紅斑,凍瘡様ループス,深在性ループス (無痛性脂肪織炎),口腔鼻腔潰瘍(多くは無痛 性). (3)発熱,蛋白尿を契機に,下記の検査所見 でみつかるSLEもある. 2)問診所見 (1)Raynaud現象(寒冷などによる短時間の 末端色調変化,白→紫→赤みの回復;集計頻度 30~50%)が,SLE発症まで年余に先行するこ ともある.日光過敏(紫外線による皮疹・熱・ 関節痛の誘発),頬部紅斑の既往を,問診で知る こともある. (2)SLEとRAを含む膠原病および類縁疾患に は,共通の疾患感受性遺伝子が複数ある.これ らの疾患の家族歴があれば,症状が微熱・倦 怠・筋痛など曖昧でも,SLEを考慮して経過を 追う(逆に,SLE患者の同胞に白血球減少のみ, 抗核抗体のみの未発症者をみた逸話もある). 3)検査所見 (1)血算 白血球または血小板の一過性でない低値,鉄 欠乏性でない貧血をみれば,原因検索を要し, SLEは主要候補である.特発性血小板減少性紫 斑 病(idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP)の10%にSLEが続発した集計があるが,一 部のITPまたはピロリ除菌に反応しないITPは, SLE初期症状かもしれない. (2)自己抗体 抗核抗体はSLEのホールマークだが,時期に より低値~陰性もある.臓器障害の時期にも陰 性の例を,SLE患者の数%にみるが,再燃時の 陽転化例もある. SLEのスクリーニング項目を例示すれば:1. 抗核抗体(蛍光法)・抗SSA抗体・抗リン脂質抗 体,2.抗二本鎖/ds-DNA抗体,3.抗Sm抗体・ 抗RNP抗体,4.Coombs抗体. 区分1~3は次の文献情報に対応する:米軍人 の保存血清多数で自己抗体を測り,SLE発症者 と照合したら,陽性の先行年数は1が最も長く, 次いで 2,3 の順であり,抗核抗体は発症者の 78%で平均3.4年前に陽性だった(N Engl J Med 349:1526, 2003).抗体陽性が常に発症に先行 するのではなく,病勢に応じた抗ds-DNA抗体, 抗Sm抗体の出現はよくある.抗体価一般は変動 するが,抗SSA抗体(SLE,Sjögren症候群で陽 性)の陽性者では,病勢や治療に影響されな い持続陽性をみる.抗RNP抗体(SLE,混合性 結合組織病(mixed connective tissue disease: MCTD),強皮症で陽性)測定も望ましいが,抗 RNP抗体陽性のSLEは抗Sm抗体も陽性(共通エ ピトープに反応)という経験則がある. (3)尿検査 SLE患者の40~50%にループス腎炎を伴うと 集計され,ループス腎炎の7割はSLE初期から存 在すると推計される.SLE初期の尿異常は,一 過性で前医の情報に頼ることもある.尿沈渣異 常(細胞円柱,赤血球,無菌性の白血球),蓄尿 1 日蛋白または尿蛋白濃度/尿Cr濃度比で評価 する.異常が軽度でも,SLEを疑う場合は腎生 検の意義がある.
4)抗体検査と経過観察による関節炎の鑑別 関節炎主体のSLEなら,迅速治療を要しない ので,鑑別に時間をかけても不利益はない.6 週以上固定した関節腫脹,または抗CCP抗体陽 性ならRA(早期での陽性率 5 割)を考える.抗 B19-IgM抗体陽性ならパルボウイルスB19 感染 症(伝染性紅斑)であり一過性の筈である.リ ウマトイド因子(rheumatoid factor:RF)また は抗核抗体が陽性なら,SLE,Sjögren症候群, RAいずれもあり得る.ヒト免疫不全ウイルス (human immunodeficiency virus:HIV)による 関節炎,クラミジアまたは溶連菌による反応性 関節炎にも抗体検査が役立つ.
2.SLEが診断されるときの臨床像
SLEは,前項に記した病初期には必ずしも診 断できず,年余の後に分類基準を満たす例もあ り,進行して初診する例もある.それらの時間 差が難治化に直結しないことも病歴分析で知ら れる.様々な病態(表 1)は通常,診断後の維 持中にみるから再燃SLEとわかるが,初診時は わかりにくい. 1)患者群の大半を占める典型的なSLE 関節炎で来院し,前項の皮膚所見を見るか既 往を聴取し,白血球/リンパ球減少に気づいて抗 核抗体を検査したら陽性,低補体もありという 経緯が定型的である.尿蛋白または沈渣血球, および炎症性貧血をみる頻度も高い(溶血性貧 血は高頻度でない). 初診時に,胸膜炎・心外膜炎(胸痛),高度の 血小板減少(免疫性なら出血傾向は低率),急性 ループス肺炎(咳,息切れ)を認める例もある. これらがSLE初期像からどのくらいの年月を経 て現われるかは不明である.妊娠・出産・中絶 を契機に顕在化するSLEも定型的である. 2) 初診SLEとして非定型な例, または重症病態の初診例 この群は,i)進行後の受診,ii)脳血管障害 を含む重症病態で初発した稀な例であり,迅速 診断が容易といえないが,迅速治療を要するの で臨床的に重要である. 痙攣と脳血管障害は経過中に稀でないが,初 診時は稀である(痙攣はふつう軽症病態に対す る中等度治療中に,SLE病勢が高まって続発す る).ネフローゼ症候群,急速進行性糸球体腎炎 (rapidly progressive glomerulonephritis:RPGN)の初診例も存在するが,検査異常は長期に潜在 したと想像される. 上記のため,神経内科,腎臓内科を初診する ほか,以下の病態で循環器科,血液科,眼科, 外科・消化器科,泌尿器科を初診するSLEもあ る:心筋症(心不全,心原性ショック),血栓性 血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocyto-penic purpura:TTP),網膜症(視力障害),ルー プス腸炎(下痢,偽性腸閉塞,下血,腸穿孔, 急性腹症),ループス膀胱炎(頻尿,膀胱萎縮, 水腎症:ループス腸炎と共存しやすい). 表1 SLEの病態一覧 関節炎,発熱,リンパ節腫脹,日光過敏,皮疹(表3,4),および下記の臓器所見 神経精神 神経精神ループス(脳,脊髄,末梢神経:表5参照)TTP 腎・尿路 腎炎 ネフローゼ症候群 RPGN TTP ループス膀胱炎 胸部 胸膜炎 心外膜炎 肺胞出血 間質性肺炎 肺高血圧症 肺塞栓症 心筋症 腹部 ループス腸炎 蛋白漏出性胃腸症 抗リン脂質抗体による虚血性腹痛腹部血管炎 ループス腹膜炎 急性膵炎 眼 網膜血管炎 視神経炎
3)前項2)の病像をSLEと診断する過程 熱性または若年者の脳血管障害は,細菌性心 内膜炎,抗リン脂質抗体症候群,SLEを示唆す る.腎障害,心筋症,血算異常,眼底所見では, 各科医師がSLEを候補に入れるから,抗核抗体 が検査される.しかし,急性胃腸炎様,イレウ ス様,急性腹症では問題がある.強い炎症は白 血球を上昇させ,炎症性の補体産生が消費性低 下を相殺してSLEらしさを隠し,紅斑や蛋白尿 が共存しなければ診断に迷う(CRP陰性の高熱 は,一部のSLEとウイルス性髄膜炎を特徴づけ る).間質性膀胱炎は,泌尿器科でよく知られる が,SLEによる頻度は低いので考慮されにくい. 無菌性の頻尿が,一般内科で長らく心身症とみ なされた例もある.
3.分類基準を用いたSLEの診断(
表2,3
)
米国リウマチ学会(American College of Rheu-matology:ACR)の項目は(表2),出現頻度でな くSLEと他疾患を区別するよう選ばれた.出現 時期の一致を問わないという注釈は重要であ る.症状や検査異常は変動するので,既往の問 診,データ再検に努める.血球減少はウイルス 感染症でも一過性にみるので,項目 9 は 2 度以 上の条件がつく.パルボウイルス感染症(頬部 紅斑,関節炎,血球減少),クリオグロブリン性 血管炎(Raynaud現象,関節炎,低補体,腎障 害)はSLEと似るが,4 項目は満たしにくい. Sjögren症候群は 4 項目を満たし得るが,治療は 臓器障害に応じるので,軽症SLEとの鑑別に困 ることは少ない.薬剤性ループス(発熱+表 2 の1,5,6,9,11 )を疑えば,まず被疑薬(pro-cainamide,hydralazine,isoniazid,methyldopa, 抗甲状腺薬など)を中止する. ACR基準と別に,新たなSLE分類基準(表 3) が提案され1),「多彩な皮膚ループス,多彩な神 経精神所見,脱毛,Coombs抗体,低補体」を取 り入れ,また「免疫複合体性腎炎の病理+血清 抗核抗体または抗dsDNA抗体陽性ならSLEと診 断する」としているが,国際的合意には達して いない.日本では,抗β2-GP1抗体(免疫項目の 4)でなく,β2-GP1 依存性抗cardiolipin抗体を 測っているという相違がある.表2 ACR(American College of Rheumatology)SLE分類基準(1997年改訂版)
1 頬部皮疹 頬部の紅斑.鼻唇溝より下に及ばない.鼻根部を含めば蝶形紅斑という 2 円板状皮疹 discoid lupus:頭頸部,四肢の丘疹(紅斑性,角化鱗屑,毛嚢塞栓,萎縮) 3 日光過敏 紫外線曝露による異常反応としての皮疹,ときに発熱,関節痛を伴う 4 口腔潰瘍 口腔,鼻咽喉に生じ,無痛性のことが多い 5 関節炎 2領域以上の末梢関節の圧痛,腫脹.非破壊性 6 漿膜炎 a.胸膜炎,b.心外膜炎 のいずれか 7 腎障害 a.尿蛋白>0.5 g/dayまたは>3+,b.細胞円柱 のいずれか 8 神経障害 a.痙攣,b.精神症状 のいずれか(他の誘因がないもの) 9 血液異常 a.溶血性貧血,b.白血球<4000 /μl(2度以上),c.リンパ球<1500 /μl(2度以上),d.血小板<10万 /μl(薬剤によらない)のいずれか 10 免疫異常 a.抗二本鎖(double strand,ds)DNA抗体,b.抗Sm抗体,c.抗リン脂質抗体(抗カルジオリピンIgGまたはIgM,ループスアンチコアグラント,または梅毒反応偽陽性)のいずれか 11 抗核抗体 蛍光抗体法による.どの時点で陽性でもよい 上記11項目中,4項目以上陽性ならSLEと分類する.出現時期は一致しなくてよい.
4.ループス腎炎
2)(
表4
)
ネフローゼ症候群はclass IV,V,RPGNはIVで 生じる.以下の対応は不確実なので生検が望ま しい.I;尿正常.II;尿正常または軽度蛋白and/ or顕微鏡的血尿.III;蛋白・沈渣異常あり,血 清Cr上昇は軽度.IV;蛋白・沈渣異常は明確, ネフローゼ例,血清Cr上昇例がある.V;蛋白・ 沈渣異常は軽度~明確,ネフローゼ例は多い が,腎機能は低下しにくい.表3 SLICC(Systemic Lupus International Collaborating Clinics)SLE分類基準(2012年)1) 臨床項目(各項目中どれかがあれば,その項目を陽性 1 項目と数える) 1.急性皮膚ループス(皮膚筋炎または亜急性皮膚ループスによるものを除外する) 頬部紅斑(頬部の円板状ループスと重複算定しない) 中毒性表皮壊死,toxic epidermal necrolysis variant of SLE 斑点状丘疹,macropapular lupus rash 光線過敏 2.慢性皮膚ループス 古典的円板状ループス(頭頸部または全身性のdiscoid lupus erythematosus/DLE) 増殖性(疣贅性)ループス,hypertrophic lupus 深在性ループス,lupus panniculitis(profundus) 粘膜ループス,mucosal lupus 腫瘍性紅斑性ループス,lupus erythematosus tumidus 凍瘡様ループス,chillblains lupus 円板状ループス/扁平苔癬重複,discoid lupus/lichen planus overlap 3.口内潰瘍または鼻咽腔潰瘍(Behcet病など他疾患を除く) 4.非瘢痕性の脱毛(細く脆い毛が特徴,ほかの明らかな原因によるものを除く) 5.2ヶ所以上の関節炎 滑膜炎;腫脹,または圧痛+30分以上の朝のこわばり 6.胸膜炎,心外膜炎(一過性でもよい.ほかの明らかな原因によるものを除く) 7.蛋白>0.5 g/日(尿蛋白/尿Cr比または24時間蓄尿による),または赤血球円柱 8.神経学的異常 痙攣 精神症状,psychosis 複合性単神経炎(血管炎症候群によるものを除く) 脊髄炎 末梢神経または脳神経障害(血管炎症候群,感染,糖尿病などによるものを除く) 急性錯乱(中毒,代謝性,尿毒症,薬剤など,ほかの原因を除く) 9.溶血性貧血 10.白血球<4000,またはリンパ球<1000,1回の測定でもよい(ほかの明らかな原因を除く) 11.血小板<10万,1回の測定でもよい(ほかの明らかな原因によるものを除く) 免疫項目 1.抗核抗体陽性 2.抗dsDNA抗体陽性(ELISAの場合は,基準値の2倍以上) 3.抗Sm抗体 4.抗リン脂質抗体陽性 lupus anticoaglant陽性 梅毒反応(rapid plasma reagin)偽陽性 抗cardiolipin- IgA,IgG,or IgM中等度以上の陽性 抗β2-GP1-IgA,IgG,or IgM陽性 5.低補体値(C3,C4,or CH50) 6.直接Coombsテスト陽性(溶血性貧血と重複算定しない) 臨床項目,免疫項目の両者の少なくとも1つを含み,計4項目陽性ならSLEとする. (臨床だけで4つ,免疫だけで4つという算定はしない.所見の出現は同時でなくてよい)
5.神経精神SLE
3)(
表5
)
中枢神経障害(表 5 の 1)はいずれも髄液蛋 白・細胞数上昇を伴う.細胞・蛋白上昇,糖正 常 ~ 低 下,IgG index(髄 液IgG/Alb÷ 血 清IgG/ Alb)>0.8,IL-6上昇,IFNα上昇がみられ,髄液 細胞は好中球優位,リンパ球優位いずれもあ る.病原体検査提出と同時に全体像でSLEを迅 速判断する.痙攣と横断性脊髄障害は,とくに 迅速治療を要する.脳MRIは,急性期の可逆的 な虚血性浮腫または梗塞を示す.脳X線CTで低 頻度にみる石灰化は,血管病変の痕跡を示す. 精神症状は,しばしばMRI・髄液異常を欠く. 錯乱や精神病様症状(統合失調症様,双極性障 害様)は高率でない.認知障害は,活動期の軽 度異常も含めれば頻度が高い.
6.SLE治療の概略
軽症(皮疹,関節炎,白血球減少),中等症 (胸膜炎,免疫性血小板減少症),重症(class III・IV・V腎炎,神経精神SLE,諸臓器障害), 最重症(RPGN,痙攣)に応じたステロイド用量 で初期治療し,以下の免疫抑制薬を併用する4): カルシニューリン阻害薬tacrolimus(T細胞抑 制),cyclophosphamide間欠静注(細胞毒),抗 CD20 モノクローナル抗体rituximab(B細胞除 去),mycophenolate mofetil(リンパ球抑制). 日和見感染症の予防,監視が必須である.活動 期の病的リンパ球増殖とサイトカイン産生を, 高用量ステロイド治療で抑えると,あとは漸減 して少量で低活動性を維持できる経験則があ る. 欧米グループが推奨する治療目標(Ann Rheum Dis 73:958, 2014)は再燃防止を重視 表4 ループス腎炎/LNの生検病理class分類(International Society of Nephrology/Renal Pathology Society,ISN/RPS,2003)2)
Ⅰ 微小メサンギウムLN:光顕正常,免疫染色で免疫複合体沈着あり Ⅱ メサンギウム増殖LN Ⅲ 巣状(focal)LN:A,A/C,Cを付記する Ⅳ びまん性(diffuse)LN:全糸球体50%以上がsegmental病変ならⅣ-S,50%以上がglobal病変ならⅣ-Gとし, A,A/C,Cを付記する.例;Ⅳ-S(A) Ⅴ 膜性LN Ⅵ 糸球体硬化 注釈:全視野中の罹患糸球体率<50%はfocal(class Ⅲ),≧50%は diffuse(class Ⅳ)とする.或る糸球体で,病変範囲が毛細血管 壁(係蹄)の半分までなら分節性(segmental),病変が全面的なら全節性(global)と呼び,class Ⅳを表記の基準でS,Gに区分する. class Ⅲ,Ⅳで糸球体病変を,Active;増殖性,Chronic;硬化性,A/C;混在に分類する.壊死性病変は活動性であり,管内細胞増 殖から管外増殖(細胞半月体形成)へと連続する. class Ⅲ,Ⅳにおいて,膜性病変(Ⅴ)を糸球体毛細血管壁(係蹄)の>50%に認める糸球体が,全視野糸球体の>50%にあれば, Ⅲ+Ⅴ,またはⅣ+Ⅴと記す. 表5 神経精神(neuro-psychiatric)SLE;ACRの病態区分3) 1.中枢神経障害 頭痛(>50%) 痙攣(10%) 脳血管障害(10%) 不随意運動(2%) 脊髄障害(2%) 脱髄症候群(稀) 髄膜炎(稀) 2.末梢神経障害 多発神経障害(25%) 脳神経障害(5%) 単神経障害・多発性単神経障害(4%) 3.精神症状 認知障害(80%) 気分障害(30%) 不安障害(20%) 錯乱(4%) 精神病様/psychosis(3%) ( )内に諸文献のおもな頻度を挙げた.
しているが,減量速度と維持治療を終了できる 目安は確立していない.
まとめ
SLEの治療は専門性が高いので,本稿では診 断の実際を述べた.SLEの診断は,血算,尿, 日常の自己抗体検査,胸部単純X線でなされる ので,一般内科で十分に可能と思われる. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表内容 に関連して特に申告なし 文 献1) Petri M, et al : Derivation and validation of the Systemic Lupus International Collaborating Clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum 64 : 2677―2686, 2012.
2) Weening JJ, et al : International Society of Nephrology/Renal Pathology Society. The classification of glomerulo-nephritis in systemic lupus erythematosus revisited. J Am Soc Nephrol 15 : 241―250, 2004.
3) The American College of Rheumatology nomenclature and case definitions for neuropsychiatric lupus syndromes. Arthritis Rheum 42 : 599―608, 1999.
4) 三森明夫:膠原病診療ノート.第 3 版,日本医事新報社,東京,2013, 93―223.