143 欝6巻L帝王号(、Ⅰ954)
描画によるプロ、ジ・エク
域 田 耕 治 井 川 正 実Research onthePro5ective Technique byDrawing
ByKojiSAKAIDA andMasamiIGAWA
(Labor・atOr・yOf Psycholo草y) (Received Apri130,1954) 緒 この研究ほ,性格診断法として行われているプロ汐エクデイブ・テク1ニィクの・一つとして試みられ たものである…現在主と.して・言語紅よるもの戎ほ視覚的利敵を用いて,一その刺激に対する極め▲て多様 な姿をもつ反応から性格を診断する方法が行われている?であるが;綺由を通じてその日的を達する ことは不可能であろうか.従来自由由を描かせることによって,用いる色彩の種類・分巌・董卓そ・の 藤色と旅との関係等や明暗凰描法において見られる描く方向・圧力・形隊−・「触感や,,′与えち′れ、た周 紙の利用法一便用部位・面積・順序等,戎ほ又表明している内容や作品にみられるリズムな一どか.ら 合的に性格を診断する研究がなされて来ている.しかしこの方法を更に範囲を・狭めて,最も不愉快な ものを描くよう一億の指示を与え,この指示に対サる反応から性格を診断する手っとり早く且つ簡単 な方法による研究を試みたのである.、しかも個人に対すると同様大きなグループに▼対しても行われ得 るし.分類の上にも容易であり,更二に.心理的妨害の中心戎ほ重点を遠かに誘い出すことにも有効であ ろう. 然しながら性格診断のどの方法も未だ決定的な結論を下すにはいさゝか躊躇ゼざるを得ない・性格 そのものが秘めて広範な意味と内容を持つことから考えても.その確かな把渥は至難のことであるt 従ってそれぞれ艮短をもつ他の方法に.よる診断の結果とも相侯って−■つの性格像を描き出すことが 望ましいと云えるであろう.この様な意味から本研究では,ローール㌢ヤツノ、タスt及び内田・クレぺ リン精神作業検査法に.よる性格診断の結果との比較照合をしながら研究を進めて行ったり本論畔予牢 としてその予嘩テス†の結果を報告したものであって主として性格類型からみた描画内容の分析を取 り扱うことにした. 本 このデス†ほ,満13才から滞14才に.わたる[ll学生94名に.対して実施したものである・先ず被験者に 30cm平方の画用紙1枚ずつを配布し,鉛筆を用意させる.描由中の全般について観察をなるべく細 かに且つ正確を期するため紅個別式に行う方がより効果的であるが,研究の鱒果如何によっては更に 多数による団体式も可能であろう.本テストでは一応5名ずっを1組として.他の画を見たり模赦し たり出来ないように.距離間隔を開かせ.・一常に着手させた.テスFを始めるに・当って与える指示ほ次 の如くである. 「あなたが山番不愉快だと考えることは何ですか」 又は 「あなたの想像出来る一番不愉快なことについて考えで下さい」 約1分してから 「’でほそれを絵にかいで下さい.あなたが好きなようにどんなに・書いても良いのです」 これで描由を開始する.開始後終了までの時間は20分とした.開始してからは常砿被験者の衷情・動 作.描き出した時間・考えこむ時間・終了した時間・紙面の利用法・筆順・描法・内容等を細かに観 察記録して置くのである.更に描画が終了したならば.各自何を意味する絵であるか,どうして不愉快14去・一 番川県温顔科大学学術報常
か等を質問して記録三しご一視ごぺ窪め鮎釆を綜合して診断を下さな摺れ攫な‘即姉漣咋あるが,本予備テ
ス=こおいては結果の処理と解釈の堺準設定に結論を出す迄には至って居らず,従ってこゝでほ他の 方法に・よる性格診断の結界とノ李芦不ノ嗜与って描いた一法も不・愉快な,もめ」の内容及び描法●紙面の 利用等に範囲を限定して±三句賞例を示しつ}論を遽あ七布きた 先ず始めに,最も不愉快なもの紅潮レて東野した鱒の内容申分折から始めよう√本テストで行った ものほ剤釧矢の方向に従って大体次の申?の分掛こ・如埴よう■である−即ち第一偲最も中心自勺且・一般的であると考えられるグループであり,−とゐグル⊥プを◆中心として方向が定まり,第二が内的な不愉
快の方向を示すものであり,第三の方向は外的な不一愉快を,一そして第四の方向ほ描画の拒否もしくは
無意味なグル十・プの四つである.次.にかゝげる家は.これ等四つのグループ毎に表現した不愉快疎も
恥酒客を;▲内野クレパ./リン滞神作業検賓準よる性格P反応封別に分類したものである・ 不愉快な も の と性格反応却 (男) 、、− .・二 不愉快なもの 争弾 爆 予 戦原死交病注 †酸助な奄の 故累射 事 邁 1⊥ ユ 2 1 1﹂l l 各丸かう峯結ん強字び棒縫撃業根 る た.ば た 庭 け 七 のろ ひ暴ゆど病曲し勉習試飲裁畳磨大 1−†⊥ 3 内 的 な﹂常 の 蛇葡猫火家放っう台叱 ハ烈.的なも i 罪「・のグループほ極め七現実的で超個人的・論理的且つ一澱的な分野として取り扱った∴特性戦争 や鱒子爆弾が「ネ愉快なこと」として多くの人に恐怖の念が抱かれていることは正当であろう・更紅モのクルー九ほ赦関ずるものや,一廉恥肉体的苦痛を感ずるものをあげて凱、た・性格類鮒
笹薮れば,男女共比定常な状態にあるものが最も多く,抑酢吋傾向にあるものが之に次いでタぐな章
欝6巻欝1号(1954) 145 ている/ 策士のグル十ブほ内的なネ愉快を示すものである.こゝせは一廠性や客観性飢ミうよりふ、各自ゐ 特殊な心理的状態や,「ひぁたま」の如き奇怪な幻想一偏見専を表現してあるものを、まとめーてこある. 第三ほ;外的な不愉快を表すもので,こゝでほ世界を動かすような大きな事でなく,例えば欠番の 絵は外的な木愉快な事柄として妥当しているであろうも,又これについせ蛇・腎虚。緬等のホさな動物 や入間の持っている苦悩等を表現するものであり七,このグル十ブほ第二のグループと共ぬ,描画が 梅あて異常であり,償っで性格的に異常性の多い㊨のを予想する事例が多くなってし、る、 欝四ほ撫能或ほ性格的異状のあるもので,描画の内容が知恵味であるか∴或は何等の表現もな凄ず 失敗と.考えられるグル−プであるu 省こで以上の方向紅よる分類に従いながら更に性格類型を考慮に.入れつゝ代衷的な絵を引用して説 明を加えたいと思う. 最初風∵・般的グル・−プの検討から始めよう..この中で最も不愉快なものゝ数に於いて戦争が酵を放 しヾて多く,男子30名女子8名であり,戦争の悲惨や恐怖の憎が最も多く抱かれていることにノなる.七れ 等のうち性格的紅常態と考えられるものが男女計17名居り,‡.Qほ90′}138の間を占め平均王‖Qはi13 となっている.大部分が空襲で爆弾が落下し,家が焼け,人々が死傷し退避している場面や∴陸や海 で戦斗している所であり,描法においても事物,人物等ほ均衡を保ち,紙面も大体中央戌ほ全面を有 効に使っている.次に躁欝型に属すると思われる者3名ほ,戦場或は空襲の場面紅必ず原子爆弾の爆 発紅よるキノコ型の雲をつけ加えている′ことほ興味深い.このグル−ウ0の男子で躁欝型と√みなされる 老8名紅,同じぐ躁欝型で原子爆弾のみを描いた者1名を加えて.何れも原子爆弾の爆発↓宅いる所 つまりキノコ型の絵を描いたことけ,性格的に極めて蚤翠な意味を持つも、のと考えなければならな い.その−一例ほ(figl)に示す通りである. 所で鱒子爆弾の投影も抑欝的傾向に・ある者になると侮2)に・あげた様に描由によか表現が仝、く 違っ・ている.躁欝型がのびのぴとした凍で衣してあるのに放し,抑静的傾向の看では短い加数め曲線を もっ′七卵塾に表現しているのである・それならぼ同じ抑欝傾向疫ふる者ゐ戦争の薇影は−倦如何なる ものであろうか.男女計11名の内8“名までが画面の中心をほずれ,極めて片隅た小さく描いたもゐセ あり,筆勢も弱く,細い短い線を用いて屠り,戦争の絵中パラレ・ユ・一千で落下サる兵士を描いた呈名 はこゝた属し七いる.(軸3)揉その一例である巾 これは男子滴14才3ケ月の子供であるが‡.Qほ68 学東成横木振で学友とも殆んど亘をきかず,やせで病冒葛の為学校も休みがちであり,教師からほ睡格 異常児と見なされている.家庭ほ父親が大工で毎日働きに出か仇母親ががみがみ云う為に面白ぐな し、らしく,テス†後の面接でほ履の中が蘭白くなく,学た交でほ友達かいぢめると答え.ている・磯翠ゐ 絵を更に由方から線でかこむことも内向的な自己を閉じ込める性格の現れではなかろうか. 広い意味でほ,不愉快なものとしての戦争を意味するものゝヰlに死ほ含まれる場合が多いし,又交 通事故や柄気は死に閑僻し,肉体的苦痛を現すものほ一応静態と考えられ,又本研究の結果でほ.特に 異状を認める結果ほ.出ていないようである. 次に内的な不一愉快を示すものでほ投影の範顆が非常に多い¶(fig・4)ほ「ひのたま」を描いた例で ある.滴13才9ケ月の男子で,‡.Qほ64学業ほ極めて振わず,学校では劣等児とみなされて居り, よく物忘れし,学友と遊ぶことをあまり好まず,常に一一L人ぼっちである.家庭は農業で父母健在,妹 が一人あるが貧乏で家の中が砥い.性格検査による反応型ほ抑欝傾向である.ネタス†を始めてから も一向に.落ち着かずきょろきょろあたりを見廻していた・開始後8分で先ず氏細い円を描き,5分程 細かな短い線でぬりつぶしていたが急に2本の木らしいものを描いて15分で終了し,後ほじっと考え こんでいた.ローールレヤツハテストに.おいてほ多くの奇怪な反応を示している. (fig5)は不愉快なものとして「曲った線」を家現している∪ 潤14才10ケ月の女子でⅠQは王32い 学
香川県立厳科大学学術報告 146 業成績ほ優秀である.クラスの指導的地位に.立っているが非常に短気である∴精神反応は不安型を示 しでいる.家庭は父が無く母と兄2人,姉2人あるが大官姓の為に仕事濫追われ,落ちついて勉強か由 来ないと説明した.本デス†・では,周囲を見廻したり,じっと下をみたりして,衰えた末1土倉目た3 本や曲線を左端に・番き,更に3分してi本追加し,やや考えた挙句下の曲線のかたまりを描いて終っ ている.非常に神経質な性格を持つ子供でほ.なかろうか.同じく不安型と見なされる女子2名の摸影 ほ共匹泥棒であり,その何れ′も由帝の左上隅に小さく取り扱っている・但し1名はかつて家に泥棒に 入られた特殊の経験を持って居り,恐怖が常には抑制されているものと.思われる・生活経験から来季 為か,とのテストり被験者は大部分農村の子供である為笹農業を液も不愉快とするものが多い.靡業 に肉体的労働を強制され,心理助に.も束縛される結果であろうが,授影の殆んどが農事庭従事してい る場面や畑.田圃の絵であり,恐らく診断的価値は少いと云えよう.他に.特殊なものとしては「勉強」 を不愉快とするものがある,男子でⅠ.QlO6学菜成績ほ普通であるが性格ほ逃避型の反応をしてい る.教増の上に立つ教師ほ丸味を持った頭で,白骨の頭を真四角な形に表現して居るのは,心理的束 縛と,教師の質問に答えられない,或は怒られる恐怖等による心的硬直:を示すものと考え・られよう・ 欝三の方向,即ち外的なものを不愉快とするグルー・フには.先ず小さな動物をあげることが出来る・ 例えば蛇の描由をなした者が男女各2名ずつみられるが,男子における媒欝的傾向のあるものはⅠ・Q 140(被験者中Ⅰ・Q最高)であるが,頭部がや」人間の頭及び顔の形を想わせる点ほあるもの⊥,全 体と.して概ね普通の曲りくねった蛇を描いている・これに対して同じ男子(Ⅰ・Q94)の抑欝的傾向にあ る者は(fig6)小魚の様な直線的な蛇を衷現してし「る・又女子の1名(Ⅰ・Q96)は正常な反応型を示 し,描由もと.ぐろを巻いて長い舌を出したものを投影しているが,これに対して他の1名(Ⅰ.QlO6)ほ 緊張型と見なされ,(fig7)に.示すように.胴の中程で1回とぐろをまいて居り,頭をもたげて極めて 不自然な形を表現している.又同じく緊張型の女子に.青虫をあげた者もあり,大きな野菜の菓匿百恵 が4匹這っている. このグル十プに属する内容のものほ小数の常態と考えられる者を除いて−,他に・火事・家庭め不和て 特殊な人間等があり,殆んど躁欝型・緊張型・抑欝型にみられることほ,更に分析を続けて行くと興 嘩深い性格的関聯を見出すであろう・(fig8)は緊張型の男子でエQは70を示し,性格的異常と判 定される者の最も不愉快なものとしての「蘭」の投影である. 第四のグル−プほ如何なる助言に.も質問にも反応せず,世の中に不愉快なものほないとして全然応 じなかったものである.男子くⅠ.、Q62)で偏執型の反応を示してい で逃避的傾向を有し,何等の関聯の認められない無意味と思われる城。兎、・山2つ′・グライダー・松 の木2本の間に月が出ている絵を描いている・これ等はテスtの意味が不明であったか,性格的にか 或はテスト時において何等かの心理的妨害が生起している為に拒否し,又躊躇したのではなふろうか,
147 肇6巻欝ま一骨(柑54) ==:=≡ニ三≧オ…■ ..、
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F工G.6.男14牙抑欝型(鹿)
FIG8… 男14才緊張型(猶) FIGl.7.女13才緊張型(蛇)
149 第6巻第1号(i954) 結 「最も不愉快なもの」を絵紅表現することによって,如何に性格をそれに授影するかは非常に・興味 深い問題である.プロ汐エクデイブ・タグニィクに−よる性格診断の−一・方法としての“T血e Most Unpleasan七ConceptTest”は未だ実験途上に.あり,如何なる要素を,如何に・整理し,これ等に対して どの様な性格診断を下すかについて信頼すべき・成果は挙っていない様である。今まで述べて釆た所は, 他の性格診断の結果を本デス†・に照合して考察したものであって,特に不愉快の内容・描法・紙面の 利用等の面から考え得る性柏は,具体的例として掲げた絵に.よってみても相互密接な関聯があり, UnpleasantConcep七Te8tによるプロ汐エクト法が性格の診断に極めて有効な価値を持ら,且他のド ロウイング法と同じく,その原型をうつす所の材料として.すべてが心理療法にも役立.つことを基づ けるものである. ●
蓼  ̄考文 部
Bell,J,E一 :PfO.ラec乞えve Tecbnきqu.e.
Harrower,M,R.:7he Most Unp!easant Concept Test.
(Jou∑nalof C指nicalPsyc王10ヱ叩y,匝1y,1950)
戸 川 行 男 : 性格診断法
本 明 究 : 性柏診断法
児 玉 省 : 性格診断法
高 良 武 久 : 性格の類型論 塩 入 円 祐 : 異 常 人 格 心 蓮華計蓮 児産由の見方と指導 : 児藍研究会編 大 伴 茂 : 実験児感心理学嵩 良 武 久 : 性 格 学
内田労三郎 : 実用クレぺジン内田作業素質検査法手引 本 明 冤 : 臨床的楷神診断法解説 R¢sum企This Researchis aP工0jective techniqpLe Ca11ed“The Most Unpleasant Concept Test”andits
results are comparedwiththose of the UchidaKraepelin Test and the RorSChar・Ch Te$t。
The direction of reactions on払istesto董94ca$e$まs classifiedintofour areas such as centr・al,