• 検索結果がありません。

アミメカゲロウの卵発生におよぼす水温の影響-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "アミメカゲロウの卵発生におよぼす水温の影響-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

アミメカゲロウの卵発生におよぼす水温の影響

松 村 晴 子

〒765 善通寺市稲木町 善通寺市立東部小学校

Effect ofTemperature on theEggDevelopment of勒horon shigae (Ephemeroptera:Polymitarcidae)

Haruko MATSUMURA,ZentsL(jiTbubu PTiTnaT:y School,Inqgipcho,

Ze花£β扉云,風琴α∽α,Jqpα几 は じ め に カゲロウ塀の卵の僻化に.要する期間や貯化の 同調性に対して,水温が大きな影響を与え.るこ とが知られている(Humpesch & Elliott, 1980;Friesen et.al,1979)。アミメカゲロウ 属についてほ,Britt(1962)が,助ゐoro乃 α絶㍑mの卵が酵化に至るためには,0℃に近い低 温期を経過することが必要であることを明らか にしている。この報告にならって中村(1985)ほ, アミメカゲロウ劫加r・0花β九igαeの卵の低温処 理を行い,酵化のためには0℃で45日以上の低 温期間が必要なことを確かめて−いる。さらに, 中村・宇都宮大学生物研究会(1987)は,低湿 処理の温度や期間が卵の醇化率に与える影響を 調べている。しかし,中村らによる報告ほ,雌 だけから成る個体群から採取した単為発生卵と 考えられるものについての実験であり,両性生 殖卵についてほ,これまで調べられていない。 そこで本研究でほ,両性個体群からの卵の発生 におよぼす水温の影響を調べた結果を報告する。 本研究を進めるにあたり,終始ご指導をいた だいた香川大学教育学部の渡辺歯数授をほじめ 生物学教室の諸先生方,ならびに調査のご援助 をいただいた就実高校の森生枚数論および関西 高校の書鷹劇郎教諭に厚く御礼申し上げる。 材料 と方法 1987年9月12日に岡山県旭川の下流部で, 水銀灯に集まったアミメカゲロウの雌亜成虫か ら採取した卵を実験材料として用いた。これら の卵の採集ほ午後8時頃に行っているが,時間 的な雌の交尾率の変化を調べたWatanabe(印 刷中)の結果からみると,この時間の雌東成虫 表1 各実験群に対する温度条件の設定. いずれの場合にも低湿処理以前に 200cで60日間経過している. 低湿処理 再加温 実験群 温度 期間 温度 期間 (Oc) (日) (℃) (日) 12345 AAAAA 2211 50505 99999 00000 一一一一一 一一一一一 1234567 BBBBBBB 0000000 1134467

1611⊥629

2222222 0000000 7754421 9499481 1234 CCCC 5555 6162 1346 2222 0000 7542 4948 1234 DDDD 1 1 1 1 0000 1346 6162 2222 0000 7542 4948 12345 EEEEE 00000 66666 66666 2211 50505 22222 55555

(2)

ステ・−・ジⅧ 20℃で2日経過した状態で,卵 全体が薄茶色に変色して−いる。 ステーージⅡ 20℃で22日経過した状態であり, 5つの限点が認められる。この 段階以後卵発生ほいったん休止 状態に入る。 ステ1一ジⅣ 温度条件によって,この段階に 至るまでの期間は異なる。胚部 が細長くなり,幼虫の体がかな り完成してくる。 ステ・−ジ† 皆の部分が網目状で透明になり, 幼虫が動くのが観察される。こ の段階から酵化に至る。 以下の実験でほ,どの実験群も20℃で60日間 置いているので,亜成虫から採取した卵のすべ てがステ1−・ジⅡまでほ発生が進行した。その後 も適当な低温処理を施すことによって発生が進 行する。しかし,本実験でほ,原因ほ明瞭では ないが,最終的に膵化に至った卵ほ1個だけで あり,残りの卵はステ・−ジ†から鰐化しないま ま,しだいに黒く変色した。異化した卵ほおそ らく死亡したものと思われる。しかし,ステ・− ジ†までの発生ほ正常に進行したので,これを 本報でほ卵発生の最終段階と見なした。なお, はほとんど全てが交尾済みと見なしてよいもの と思われる。多数の雌から得られた卵塊を水中 で混合した後,約2c.cの水を入れた小型シャ1−・ レに卵を20∼30個づつ分けて入れ,底に付着 させた。実験室に持ち帰ったすべてのシャーレ を,20℃の水温に60日間保ったのち,低温処理 温度および処理期間のそれぞれ異なるグルー・プ に分サて発生過程を観察した。さらに,旭川で 採集された幼虫のうち,麹が十分に黒化して羽 化が近いと思われる個体から摘出した卵につい ても,亜成虫からの卵と同様に.低温処理を行っ て発生過程を調べた。表1に各実験群に与えら れた温度条件が示されている。なお,シャ−レ の水は水道水を煮沸して長時間放置したものを 用い,毎日換水した。また,温度設定にほ.温度 勾配恒温器(日本医化器製)を使用した。 結果および考察 1 卵の発生過程 図1ほ,アミメカゲロウの卵発生過程を,特 徴的なステ1−ジに分けて措いたものである。各 ステ1−ジの特徴を以下に示す。 ステ・−ジⅠ産卵直後の卵であり,全体が一・ 様にクリ・−・ム色をして「いる。

ステージⅠ ステー・ジⅢ ステージⅢ ステージⅣ ステージⅤ 図1 アミメカゲロウ卵の発生段階.

(3)

ル・−プも再び20℃に戻している。表でほ実験開 始後150日経過しノー時点での状況を示している ため,低温期間が長いほど,後の200cの期間の 長さほ短くなっている。まず,0℃で低温処理 を行った場合にほ(表3a),11日間の低温処 理を行ったBlでほ,ほとんどの卵ほステ・−ジ 肛あるいほⅣにとどまっている。低温処理期鷹 が長くなるにつれて,後の20℃の期間は短くな るのにもかかわらず,ステ・−ジYに達する割合 ほ高まっている。低湿処理期間62日以上では95 %以上の卵がステ・−・ジYに達している。 中村(1985)ほ単為発生卵で同様な実験を行 っているが,そこでは,0℃で45日以上低温処 理することによってほじめて酵化が起こり,31 日以下の処理でほ醇化がみられないとしている。 しかし,本実験の結果でほ,31日以下の低温処 理でも少数の卵がステージⅤに達しており,20 ℃のまま150日経過した場合に比べると(表2; A2),処理期間の長さに応じてステ・−ジⅤに 達する割合が順次増加している。このことほ, 低温処理が短期間であってもそれなりの発生促 進効果が見られることを示すものである。低温 処理期間が長いほど,僻化率の高まることは中 村(1985)でも示されている。 低温処理温度を5℃にしてその期間を4段階 に変えた場合にも(表3b),低温処理期間が 長くなるはどステージ†に到達する割合ほ高ま る。さらに,低温処理温度を10℃にした場合に ほ(衰3c),31日以上低温に眉■くことに.よっ てはとんどすべての卵がステージYに到達して いる。 図2は以上の結果をまとめて,低温処理温度 の違いによる卵発生への影響を示したものであ る。図から,低温処理の温度が高くなるはど, 短い処理期間で多くの卵がステー・ジ†に達する だけでなく,発生の進行がより強い同調性を示 すことがわかる。さらに,最終的にステージ† に達する割合も高くなる。したがって,低温処 理の水温としてほ,10℃がもっとも効果的に作 用し,この温度では31日間の処理期間で十分に 卵発生を促進させる効果のあることがわかる。 以下の表でほ,便宜上黒化した卵をステ・−・ジⅥ として表した。 2‖ 定温条件における卵発生 表2ほ,産卵後200cで60日間置いた後,5℃ から25℃の5段階の水温に移して,90日後の卵 発生状況をみたものである。まず,25℃に置い た場合にほ,全ての卵で発生が進行せず,ステ −ジⅡに.とどまっている。20℃から10℃までの 範囲でほ,水温が低いほどステージ†に達する 卵の割合が高くなるが,5℃では再びその割合 が低下する。初期の60日間と合わせて,20℃の 定温条件で150日間置いた場合でも(A2), 70%がステージ孤を脱して,そのうち5%ほス テ−ジ†に達する。すなわち,低温処理を行わ ない場合でも卵発生がステ−ジⅢ以上に.全く進 行しないわけでほない。したがって,卵ほ完全 に休眠状態にあるとは言えず,低温を経過しな い場合にほ発生の速度が著しく低下するものと 思われる。中村・宇都宮大学生物研究会も(1987), 80日間室温で経過した後,140cと18℃に長期間 置いた卵から散発的な醇化が起こり,合計で15 ∼20%の卵が貯化したことを報告してこいる。 表2 定温条件での卵発生状況.20℃で 60日経過後に各水温に驚き,90日 間経過したもの. 産卵後150日目に.おける ステ・−・ン/ 実験群 水温 V l・1 †+l・1 O 1 9 0 0 5 貯 弧 22 5 3 2 9 0 ハ∠ ﹁a 8 つん 3 6 5 8 7 1 0 2 ■⊥ 2 q︶ 1 2 1 0 9 1 ﹂ 0 5 2 9 9 6 5 1 0 0 0 ∩ひ 0 0 0 0 3 1 5 0 5 0 5 2 2 1 1 1 2 3 4 5 A A A A A 3.低温処理温度・処理期間の卵発生におよ ぽす影響 表3は,20℃で60日間置いたのち低温処理を 施した卵について,低温処理期間を変えた場合 の影響をみたものである。低温処理後ほどのグ

(4)

衰3 低温処理期間の卵発生におよぼす影響..20℃で60日間経過後 低温処理を行い,その後再び20℃に加温したもの. a.低温処理偏度:0℃ 産卵後150日目におけるステ・−ジ 実験群 処理期間 lV † Ⅵ †+Ⅵ 1 2 34 5 6 7 B B B B B B B 1 1 3 4 4 67 1 6 1 1 6 2 9 7 7 5 4 4 2 1 9 4 9 9 4 8 1 4 57 42 9555244 1 8 49633 4 3 3 4 7 2 2 0 0 49078 7q︶4■l∵け5こU 5 3 0 4 67 7 1 5 7 9 9 5 0030000 797 1055 53 54 67 7 1 5 7 99 b.低温処理温度:5℃ 産卵後150日目におけるステ・−ジ 実験群 処理期間 l† † Ⅳ †+1汀 1 2 3 4 CCCC 1 3 4 6 6 1 6 2 7 5 4 2 4948 l 8051⊥ 9 9 4 6 2 4 2 0 0 1 8 1 7 9 9 7ウリ48 0 7 1 6 5 0300 1 7 9 9 7 ︻−・4 8 0 2 1 6 c.低温処理温度:10℃ 産卵後150日日におけるステ・一ジ 実験群 処理期間 加温期間 (20℃) lV Y l† †+Ⅵ 21.2 231 98い2 100…0 98“7 987 100..0 1000 0 0 0 0 7 601十0 9 3 1︺100 9 8 1 2 34 D D D D 13 46 6 1 62 7 5 4 2 494 8 度との関係をみたものである。卵の発生速度は 50%の卵がステ、−ジ†に到達するまでの日数で 表している。固から低温処理後の水温が高いほ ど発生の進行が速いことがわかる。 今回は初期の20℃での期間の長さについてほ 検討を行わなかったが,これが十分であれば, 10℃で30日程度の低温処理期間を経たのち,Ⅰ5 ∼20℃にもどすことによって,卵発生が最も効 果的に促進されることが明らかになった。 5.終令幼虫からの卵の発生 麹芽が異化して羽化が近いと思われる幼虫か 4.低温処理後の水温の卵発生におよぽす影 響 表4は,産卵後20℃で60日間置いた卵を,0 ℃で66日間にわたる十分な低温処理を施した後, 5段階の異なる水温に戻し,25日を経過した時 点での卵の発生状況をみたものである。5℃に 戻した場合にほステ1−ジⅡ以上の発生の進行は 見られなかったが,その他の水温に戻した場合 には,いずれも90%以上の卵がステ1−ジ†に.到 達している。しかし,その割合は20℃と15℃に 戻した場合が最も高い。 囲3は,低温処理後の水温と卵発生の進行速

(5)

ステージⅤ以上に達した卵の割合 ︵%︶ 41 46 62 79 1116 こil 低温処理期間(日) 図2 低湿処理温度と卵発生速度との関係. 加温後50%の卯がス子ジⅤに至るまでの日数︵日︶ 0 5 0 5 l 1⊥ 2 2 表4 低温処理後の温度による影響.20℃ で60日間経過後,0℃で66日の低湿 処理を行い,その後各水温で25日経 過したもの. セの水温 加温段階 実験 群 産卵後151日日における ステ1−ジ Ⅳ † 1汀 †+Ⅵ 3 2 0 0 7 只U 9 9 9 3 2 0 0 7 6 9 9 9 3 0 0 0 3 0 1 0 0 0 2 0 0 7 8 0 0 0 qい 2 つム 0 0 1 0 1 5 0 5 0 5 2 2 1 1 1 2 3 4 5 E E E E E 5 10 15 20 25 低温処理後の水温(OC) 囲3 再加温後の水温と卵発生速度との関係.

(6)

文 献

Britt,N.W.1962Biologyof twospecies Of Lake Erie mayflies,鞄hoT・On albuTn

(Say)and EbhemeT・a SuTnulans Walker. 及招.仇わ 月わZ.S弘r・U.1:1−70

Friesen,M.K.,J.F.Flannagan,and S.G.

Lawrence.1979Effects of temperature

and cold storage on development time

and viability of the burrowlngmayfly

Hexagenia rigida(Ephemer・Optera:Ephem− eridae).(九nad.肋tomol.111:665−673

Humpesch,U..H.andJ.M.Elliott.1980

Effect of temperature on the hatching

time of eggs of thr・ee Rhithrogena spp. (Ephemeroptera)from Austrianstreams and an English streamandriver..].Ani7n.

βcoZ… 49:643−・661 中村和夫.1985アミメカゲロウの卵の発生条 件.イソセクト35:83−86 ら摘出した未受精卵を20℃で75日間置二いた後, 0◇cで75日間の低温処理を施した場合にほ,卵 の82矧は褐色に変化せず,発生が全く進行しな かった。しかし,残りの褐色化した卵ほ正常に 発生が進行し,低温処理後20℃にもどしてから 5日目にすべてが一斉にステージYに達した。 このことほ,幼虫期の終りには卵の少なくとも −・部は成熟していること,および両性個体群で ある旭川のアミメカゲロウでも単為発生が起こ り得ることを示すものである。 要 約 岡山県旭川のアミメカゲロウの両性個体群か ら採取した卵について,発生ステ1−ジをⅠ∼† の各段階に分けて,水温が卵発生におよぼす影 響を調べた。亜成虫から採取した卵(ほとんど が受精卵と考えられる)のすべてが,20℃で60 日間経過することによって,ステ・−・ジ孤に達す るが,この段階で−・旦発生ほ休止状態となる。 それ以後の発生は,低温処理を施した後再び20 ℃に戻すことによって促進される。0℃,5℃ および10℃での低温処理を比較すると,水温が 高いほど短期間の処理で卵発生促進効果が認め られ,かつ,発生の同調性が高まる。また,ど の水温でも低温処理期間が長いはどステ・−ジ† に対する割合が高まる。終令幼虫から採取した 末受精卵でも,一・部の卵でほ低温処理を施すこ とによって正常に発生が進行した。 ・宇都宮大学生物研究会.1987.アミ メカゲロウ卵の貯化 【処理温度及び野外で の状況【.インセクト38:77−81

Watanabe,N.C.1989・Timing of emer−

genCe Of males and females of 劫horon

shなae(EphemeropterIa:Polymitarcyida6).

参照

関連したドキュメント

データベースには,1900 年以降に発生した 2 万 2 千件以上の世界中の大規模災 害の情報がある

1.3で示した想定シナリオにおいて,格納容器ベントの実施は事象発生から 38 時間後 であるため,上記フェーズⅠ~フェーズⅣは以下の時間帯となる。 フェーズⅠ 事象発生後

過去に発生した災害および被害の実情,河床上昇等を加味した水位予想に,

1.水害対策 (1)水力発電設備

・水素爆発の影響により正規の位置 からズレが生じたと考えられるウェル

一貫教育ならではの ビッグブラ ザーシステム 。大学生が学生 コーチとして高等部や中学部の

人間は科学技術を発達させ、より大きな力を獲得してきました。しかし、現代の科学技術によっても、自然の世界は人間にとって未知なことが

格納容器圧力は、 RCIC の排気蒸気が S/C に流入するのに伴い上昇するが、仮 定したトーラス室に浸水した海水による除熱の影響で、計測値と同様に地震発