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日外科系連会誌 38(1):16 20,2013 原著 非閉塞性腸間膜虚血症の検討 相澤病院外科高橋祐輔岸本浩史笹原孝太郎吉福清二郎沖一匡 内容要旨目的 : 非閉塞性腸間膜虚血症 (Non occlusive mesenteric ischemia: 以下 NOMI) の臨床的特徴から, 手術の絶対

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Academic year: 2021

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受付:2012年9月13日,採用:2012年11月22日  連絡先 高橋祐輔  〒390-8510 長野県松本市本庄2-5-1  相澤病院外科 NOMIはしばしば診断に難渋し,治療が遅れる ことで致死的な状態になりうる疾患であり,本邦 報告例での死亡率は21~56%とされている1)2) NOMIの診断,治療に関しては様々な報告がされ ているが,一定の治療指針は定まっていないのが 現状である.今回われわれは,当院で経験した NOMI症例について臨床的検討を行ったため,若 干の文献的考察を加えて報告する. 対象および方法 2006年1月から2011年8月までの間にICDコー ドK550(腸壊死)で登録された入院患者45例のう ち,腹部造影CT検査にて主要血管に閉塞がなく, 手術で腸管虚血もしくは壊死を認めて腸管切除が 施行された11例を対象とした. 11例を病理組織学的に粘膜壊死群(A群)と全 内容要旨 目的:非閉塞性腸間膜虚血症(Non occlusive mesenteric ischemia:以下NOMI)の臨床的特徴か ら,手術の絶対適応となる腸管全層壊死の早期発見の可能性について検討をした.対象および方法: 2006年1月から2011年8月までに腹部造影CT検査および手術所見からNOMIと診断され腸管切除が 施行された11例を対象とした.11例を病理組織学的に,腸管粘膜壊死群と腸管全層壊死群に分類し, それぞれ臨床検査所見,転帰などについて検討した.結果:平均年齢は78歳で11例中,在院死は1例 であった.腸管全層壊死群は腹膜刺激症状を呈しやすく,血液検査上はCRP値が高値を示す傾向にあ り,腸管全層壊死症例の早期発見の手がかりになりうると思われた.結語:NOMI11例について検討 を行い,文献的考察を加えて報告した. 索引用語:非閉塞性腸間膜虚血症,NOMI

原著

非閉塞性腸間膜虚血症の検討

相澤病院外科

高橋 祐輔 

岸本 浩史 

笹原孝太郎 

吉福清二郎 

沖  一匡

層壊死群(B群)に分類した.なお粘膜壊死は粘 膜固有層にゴースト化した腺管を認める症例,全 層壊死は固有筋層の構造が一部でも失われている 症例とした.A群,B群間で主訴や併存疾患,理学 的所見,初診時血液検査所見,転帰について臨床 的検討を行った.有意差検定にはMann-Whitney のU検定を用い,有意水準を5%未満とした. 症例の年齢,性別,主訴,基礎疾患をA群(粘 膜壊死群),B群(全層壊死群)に分けてTable 1 に示す.全症例の平均年齢は78歳で,A群の平均 年齢は76.5歳,B群では80.5歳であった.症状は, 腹痛を訴える症例が9例(81.8%)と最も多かっ た.その他,嘔吐,下血,タール便などの消化器 症状もみられた.Case1は冠動脈バイパス(以下, coronary artery bypass graft:CABG)術後2日 目の発症であり,交感神経作動薬が使用されてい た. 腹膜刺激症状を認めた症例は5例(A群:2例, B群:3例)で割合としてはB群の方が高かった (Table 2 ).A群で1例在院死を認めた.

(2)

全例初診時に腹部造影CT検査が施行されてい た.腸管虚血を疑う所見として①mesenteric isch-emia(腸管壁の造影効果の低下),②intestinal  pneumatosis(腸管気腫),③portal vein gas(門 脈内ガス)について集計を行ったところ,A群で は7例中6例(85.7%)に腸管造影効果の低下を 認めたが,B群で腸管の造影効果が低下していた 症例は1例のみであった.上記3つの所見いずれ も認めない症例は4例中2例(症例9,10:50%) であった.術前にNOMIと診断された症例は11例 中1例のみで,その他は急性腹症,汎発性腹膜炎, 腸管壊死や腸管虚血といった診断で手術に移行し ていた. A群,B群における初診時の血液検査およびbase  excess(BE)値をTable 3 に示す.初診時にBUN/ Cr比が上昇している症例が多く認められた.BE値 については,全層壊死症例で必ずしも低下は認め られなかった.WBC値,CRP値,LDH値,CK値 について中央値の比較を行った.いずれも統計学 的に有意差は認めなかったが,B群では全層壊死 にもかかわらずWBC値は低い傾向にあり,逆に CRP値は高値を示す傾向にあった(Fig. 1 ). なお今回の検討では転帰に影響する因子に関し て詳細な検討はしていないが,case7では来院時 既に高度な代謝性アシドーシス(BE値-16)を呈 し,敗血症性ショックの状態であった.手術所見 では小腸が全範囲で分節的な虚血を認めたため小 腸を全切除し,十二指腸と横行結腸を吻合したが 敗血症性ショックから離脱できず死亡した.病理 組織学的には可逆的な粘膜壊死であるが,粘膜壊 Group Case Age sex Chief complaint underlying disease

A

1 81 M abdominal pain CABG,Hypertension 2 85 F abdominal pain CI,nephrosis

3 92 F vomit,fever Hypertension, DM, IHD, CI 4 73 M abdominal pain Hypertension

5 87 F abdominal pain, vomit, diarrhea Hypertension, Af 6 62 M abdominal pain, diarrhea DM

7 56 M abdominal pain, tarry stool gastric ulcer B

8 72 M melena, vomit Hypertension, CI, MD 9 83 F abdominal pain, vomit, diarrhea Hypertension, stoma 10 84 M abdominal pain Hypertension 11 83 M abdominal pain, vomit Hypertension, DM, Af

Table 1  Characteristics of 11 NOMI patients

CD : cousciousness disorder, CRF : chronic renal failure.

MD : mental diisorder, CI : cerebral infarction, CABG : coronary artery bypass graft. DM : diabetes mellitus, IHD : ischemic heart disease, Af : atrial fibrillation.

Group Case peritonitis ①m. ischemia ②pneumatosisCT findings ③PV gas preoperative diagnosis outcome

A

1 + + + intestinal necrosis alive 2 + gastrointestinal perforation alive 3 + + intestinal necrosis alive

4 + NOMI alive

5 + + intestinal ischemia alive 6 + intestinal necrosis alive 7 + + + intestinal necrosis death B

8 + + ileus alive

9 + panperitonitis alive

10 + acute abdomen alive

11 + + + panperitonitis alive

peritonitis means peritoneal irritation by physical examination.

A: The group of the ressected intestine with only mucosa necrosis pathologically. B: The group of the ressected intestine with penetrating necrosis pathologically.

Table 2    Peritoneal  irritation,  Abdominal  Computed  tomography  (CT)  findings,  preoperative  diagnosis,  and  outcome

(3)

死が生じる範囲が広範になれば予後不良因子とな ることが示唆された. NOMIは1958年にEnde3)が3例の心不全患者に みられた腸管壊死症例として初めて報告し,欧米 の報告では,急性腸管虚血症の20~30%4)5),本邦 の報告例では15~27%2)6)を占めるとされている. またNOMIと壊死型の虚血性腸炎との関連に関し ては,同一疾患として扱うとする考え7)8)や,両者 を区別して扱うべきとする考え9)10)もあり一定の 見解が得られていないのが現状である.また,腹 部CT検査で腸管虚血の所見を指摘できなければ, 臨床検査のみでNOMIと確定診断することは難し く,手術所見を含めて最終的に診断に至る症例も ある.そこで,今回のわれわれの検討では,腹部 造影CT検査で主要血管に閉塞がなく,手術所見か ら腸管虚血もしくは壊死が認められ,腸管切除を 施行した症例のみを検討対象とした.さらに腸管 切除の適応,腸管温存の可能性の観点から,病理 組織学的に粘膜壊死のみの症例と全層壊死の症例 に分類し比較検討を行った. NOMIの発生機序は解明されていないが,心不 全やショック状態,脱水などによって全身におけ る血液灌流が低下した際に,重要臓器への血流を 維持するために血流再分配が生じ,その結果とし て腸管血流が低下し,末梢辺縁動脈の交感神経が 反応性に血管攣縮を引き起こしてNOMIを発症す るとされている11).また,病理組織学的には,器 質的血管閉塞は認めないが直動脈の内膜肥厚や動 脈炎が認められ,発症の一因と考えられている1) したがってNOMIの併存疾患としては,動脈硬化 性の高血圧症や,うっ血性心不全,虚血性心疾患, 不整脈,脳梗塞などの心血管系の併存疾患を有す る症例が多く,高齢者に発症することが特徴とさ れている.さらに,開心術後や維持透析を行って いる症例においても稀にNOMIを発症する症例が あ り, こ れ ら の 症 例 は 術 後 のlow output syn-dromeや交感神経作動薬の使用,透析による血圧 低下など全身の低灌流状態をきたしやすい点から 危険群と考えられている12)13) われわれの検討では,11例の平均年齢は78歳と 高齢で,高血圧症を8例(72.7%)と高率に認め たが,脳梗塞は3例(27.2%),虚血性心疾患や不 整脈は4例(36.3%)と既報告例の危険因子を有 している症例の比率は低かった.case1はCABG Group Case WBC /ul LDH U/L IU/LCK mg/dlCr mg/dlBUN BUN/Cr mg/dlCRP B.E.

A 1 15,180 422 758 0.98 40.0 40.8 5.4 -1.2 2 17,150 211 57 1.9 88.1 46.4 5.9 -1.3 3 27,820 253 294 1.6 49.6 31.0 37.6 -1.8 4 1,920 228 163 0.82 22.4 27.3 0.1 1.3 5 9,080 202 43 0.86 18.4 21.4 0.0 6 17,390 235 649 0.7 23.0 32.9 5.5 7 7,130 1,479 397 2.6 39.6 15.2 0.3 -16 median 15,180 235 294 5.4 B 8 4,990 233 260 2.2 48.3 22.0 22.2 -6.7 9 21,580 231 28 0.54 20.1 37.2 0.0 0.3 10 6,840 345 240 2.48 45.2 18.2 21.5 11 10,320 150 13 1.1 25.5 23.2 15.8 -0.5 median 8,580 232 134 18.65 B.E. : base excess. Table 3  Laboratory data of A and B group Fig. 1 Comparison of WBC and CRP between  A and B group.

(4)

術後に交感神経作動薬を使用している症例であっ たが,維持透析を行っている症例は認められなか った. NOMIの臨床症状は,重篤な病態であることに 比し特異的な症状に欠けることが多いとされてい る.われわれの検討でも症状としては腹痛が9例 (81.8%)と最も多かったが,その他,嘔吐や発 熱などの非特異的な症状もみられ,臨床症状だけ では積極的にNOMIを疑うことは困難であった. 理学的所見では,腹膜刺激症状を認めた症例は11 例中5例で半数程度にしか認めなかった.しかし B群のみに限定すると4例中3例(75%)に腹膜 刺激症状を認めており腹膜刺激症状を認める症例 は全層壊死を疑う一つのきっかけになりうると思 われた. 腹部造影CT検査所見で,腸管虚血を疑う典型的 な所見である「腸管の造影効果の低下」はB群で は4例中3例(75%),A群では7例中1例で陰性 であったことから,NOMIの場合には,腹部造影 CT所見から腸管のViabilityを推定することは困 難であることが示唆された. 初診時の血液検査におけるWBC値,CRP値, LDH値,CK値に関しては例数が少なく統計学的 な有意差は見出せなかったが,Fig. 1 のようにB 群ではWBCが上昇せず,逆にCRP値がA群に比し 高値を示す傾向にあった.敗血症になるとWBC値 はむしろ下がることもしばしばあり,全層壊死群 では全身状態が悪化していたためにWBCが高値 を示さなかった可能性が考えられた.また,症例 3では腸管全層壊死は認めなかったが,CRP値が 非常に高い値であった.発症から2日経過し敗血 症性ショックの状態で他院から転送され,小腸約 40cmの範囲で虚血の所見が認められた症例であ った.それに対し症例9はCRPが陰性で全層壊死 を認めた症例であったが,発症当日に受診し,横 行結腸の小範囲が壊死に陥っていた症例であっ た.このようにCRP値は発症から来院までの時間 や虚血・壊死の範囲にも影響を受ける可能性があ るものと考えられた. NOMIは血管孿縮を背景に,可逆性のある腸管 虚血(粘膜壊死)の状態から不可逆的な腸管全層 壊死まで移行する疾患であるが,臨床上は手術の 絶対適応となる腸管全層壊死を早期に判断するこ とが重要となる. われわれの検討では,全層壊死の症例は腹膜刺 激症状を呈しやすく,血液検査上,CRP値が高値 を示す傾向にあり早期発見の手がかりになりうる と思われた. 今回われわれはNOMI11例について検討を行 い,若干の文献的考察を加えて報告した.全層壊 死群では腹膜刺激症状を呈しやすく,CRP値が高 い傾向にあり早期発見の手がかりになりうると思 われた.なお,本論文の要旨は第67回日本消化器 外科学会総会にて報告した.  1) 菅原 元,山口晃弘,磯谷正敏,他:非閉塞性腸 管梗塞症19手術例の臨床病理学的検討.日消外会 誌  34:1713-1717,2001  2) 田畑峰雄,矢野武志,門野 潤,他:非閉塞性腸 管虚血症17例の臨床的検討.日臨外会誌  64:557-564,2003  3) Ende N : Infarction of the bowel in cardiac fail-ure.  N Eng J Med  258 : 879-881, 1958

 4) Wilcox  MG,  Howard  TJ,  Plaskon  LA,  et  al :   Current theories of pathogenesis and treatment  of nonocclusive mesenteric ischemia.  Dig Dis  Sci  40 : 709-716, 1995

 5) Bassiouny  HS : Nonocclusive mesenteric  isch-emia.  Surg Clin North Am  77 : 319-326, 1997  6) Mishima Y : Acute mesenteric ischemia.  Jpn J 

Surg  18 : 615-619, 1988

 7) Sakai L, Keltner R, Kaminski D : Spontaneous  and  shock-associated  ischemic  colitis.    Am  J  Surg  140 : 755-760, 1980  8) 稲次直樹,吉川周作,高村寿雄,他:虚血性腸炎 の成因とその病態.臨消内科  17:1653-1659,2002  9) 田上創一,佐藤裕二,村田祐二郎,他:救命しえ た壊死型虚血性大腸炎の3例.日本大腸肛門病会 誌  61:27-32,2008 10) Williams LF Jr, Wittenberg J : Ischemic colitis :   an useful clinical diagnosis, but is it ischemic?   Ann Surg  182 : 439-448, 1975 11) 重松邦広:非閉塞性腸間膜虚血症(非閉塞性腸間 膜梗塞症).血管外科  25:23-25,2006 12) 清永夏絵,今林 徹,村山裕美,他:開心術後の

(5)

非 閉 塞 性 腸 管 虚 血(Non-occlusive mesenteric  ischemia)の6症例.ICUとCCU  33:161-163, 2009 13) 高久秀哉,鈴木俊繁,長倉成憲,他:血液透析患 者に生じた盲腸壊死の2例.外科  9:1009-1012, 2009

Evaluation of Non Occlusive Mesenteric Ischemia (NOMI)

Yusuke Takahashi, Hirohumi Kishimoto, Kotaro Sasahara, Seijiro Yoshihuku  and Kazutada Oki Department of Surgery, Aizawa Hospital Purpose: The possibility of the early detection of all the intestinal tract layer necroses of an operation  which are adapted absolutely was examined from the clinical characteristics of non occlusive mesen-teric ischemia: NOMI.  Inclusion and methods: It was aimed at 11 examples by which it was diagnosed  as NOMI from the abdominal CT imaging and the operative findings with intestinal resection from  January, 2006 to August, 2011.  11 examples were classified pathologically into the intestinal tract  membrane necrosis group and all the intestinal tract layer necrosis group, and clinical examination  view, outcome, etc.  were evaluated, respectively.  Results: The average age among 11 examples was  78 and one example was died.  All the intestinal tract layer necrosis group tended to present a perito-neal irritation symptom, and it seemed that the serum CRP value tends to show high.  Conclusions :  A peritoneal irritation symptom and the serum CRP value can serve as a key of early detection in all  the intestinal tract layer necrosis cases.

Key words:  non occlusive mesenteric ischemia, NOMI

Table 2    Peritoneal  irritation,  Abdominal  Computed  tomography  (CT)  findings,  preoperative  diagnosis,  and  outcome

参照

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