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日本脳炎ウイルスの伝播と蚊との関係 第Ⅰ報

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(1)

(馬蝉墜輪錨肩揚)

日本脳炎ウイルスの伝播ご蚊ごの関係第1報

東京女子医科大学細菌学教室(主任平野憲正教授) 申 ナカ

u

西

ニシ

バヤシ

キ司

(受付昭和32年10月20H)

当:教室において小山i)がかつて日本脳炎ウイル

スが自然にマウスに保有されていることを証明

し,その後睾四ら2)は寝わらに日本脳炎ウイルス

を噴霧してハムスターを飼育するとハムスターが

日本脳炎に罹患することを認めた。今回私共は日

本脳炎と蚊との関係を追求するため主としてハム

スターを実験動物として研究を進めた。従来かか

る実験にはマウスが用いられたがマウスには前述

の小山の実験が示すように自然に脳:炎:ウイルスが

往々証明されるのでこれをさけたのである。ハム

スターはSchabe15)によって脳炎ウイルスに罹患

することが明らかにされ,当教室におけるこれま

での研究によって自然に日本脳炎ウdルスを保有

するものがないと考えられるので本ウイルスの研

究には適当な動物であると考えられる。

実 験 1

実験方法:昭和29年8月22目より9月23日までの実 験であって,その期間中の室温は最高35・5。C,最低 19・50Cであった。蚊は東京都新宿区原町附近の溝よ りボーフラを集めて羽化させたもので,アカ/ ・=力及 びコガタアカイエカの雌のみを集めて小瓶に小分けし て,その口をガーゼで蓋い,20%糖蜜によって飼育し ナこ。病毒としては日本脳炎ウイ7レス申山株のVウス脳 継代株を用いた。 蚊の有毒化:頻死の状態に陥った病毒罹患マウスの 脳をpH 7.6の普通ブイヨンで5倍乳剤とせるものを 3000r.P.m.15分間遠心し,その上清に滅菌した40%糖 蜜を等量加え,これを約4cm平方の滅菌ガーゼ片に 浸しそのガーゼを予め40時間前後空腹にした蚊のいれ てある瓶内に針金で吊し約2時間吸わせ腹部のふくれ た蚊だけを試験管で集め,その後20%糖蜜で飼育を続

回であるが,乳剤とした蚊の数は第1回,

回,第3回共40匹,第4回25匹であって接種液は

毎回無菌であった。接種されたハムスター一はいず

れも4∼5日で定型的弓痺:を起して死亡したがそ

の脳は無菌であり,脳乳剤の上清は次代マウスを

・事4日目で艶し,またそれらのマウスの脳1こは菌は けた。 蚊体内におけるウイルスの検査法:ウィルスを吸つ . た蚊の一定数を吸毒直後,吸呑後3日,8目,10日及 び14日に殺し,翅と脚を除いて秤量しpH 7・6の普通 ブ4ヨンで10倍乳剤としペニシリン200u/cc及びスb レプトマ■シン2mg/ccを加えて3000r.p.m.15分間遠 心し,上清の0.05・vO. lcc宛を生後2∼4週後の・・ムス タ・・の脳内に接種した。対照としては,蚊に吸わせた 病毒材料の一部を試験管に入れ,これを蚊が吸ってい る間室温に放置し,後pH 7.6の普通ブイヨンで10倍 に稀釈し,ペニシリンとス1・レプトマィシンを同様に 加えて遠心し,上清の0.05cc宛をノ・ムスPt eの脳内に 接種した。蚊を殺してからその乳剤をハムスターの脳 内に接種するまでに,ウィルスの減弱することを極力 避けるために,充分留意したことは勿論である。接種 後ハムスPt ・一を2週間観察し,その間に死亡した場合 には直ちに脳を無菌的にとり出し,乳剤接種側の脳の 一部分を普通寒天及び」血液寒天斜面に培養して無菌試 験を行い,残りをpH 7.6の普通ブイヨンで乳剤とし, 上清を次代マウス脳内に接種した。他側の脳はフォル マリンで固定して組織学的検査に用いた。次代接種を 行ったマウスが発症した場合には,死亡直後脳の無菌 試験を行い,雑菌による死亡であるか否かを確め,ま た脳の一半を組織学的検索にあてた。

実験成績:’吸毒直後の蚊の乳剤上清をハムスタ

…一

ノ接種した実験は,第1表に示すように合計4

第2

Kiyoko NAKANISHI, Chizu 1{OBAYASHI (Dept. of Bacteriology, Tokyo Women’s Med. College.) : On the role of mosquitoes in the dissemination of Japanese encephalitis viTus. Part 1.

(2)

第1表図心直後,吸雨後3,8,10,14日の蚊乳剤 によるハムスPt e脳内接種試験(実験1,昭和29年) 実験日 17一. .

直後

直後

蚊靴ムス・死亡届次代・・画面

(匹) No.

の日数ス発症脳炎病変l

e

ト ・・ 撃撃

I

4/4 1 + 4/4 士 40 4 5 4 4

4f4 +

4f4 ’ +

17

直後…401 8

1i l g

4 5 5 4/4 1 4/4 1 一

4/41士

陣後2511

[一 4 4 4f4 1 一 4/4 [ + j 1 一一1 19 3日目

奄Q8、8

19

4 4 4 5 4f4 tr ll i 一 ’i l 十 8日目 20 27 28 29

6

11 4(二三) 4f4 tl /1 十

34

35

10目目 21

36

37

4 4 4 4 4f4 11 t/ r1 14日目

38

18 」 39

40

4 5 5 4f4 f/ 17 十 対 照 ± ± 十 10 11 4 4 4/4 t/ 次代マウス発症…分母接種マウス数,分子発症した マウス数。脳炎病変…土は脳炎病変の不鮮明なもの。 回方後3,8,10日の実験は2回行ったが1回の成績 は省略す。

認められなかった。なお対照として室温に放置し

た病毒材料をハムスターの脳内に接種した場合も

やはりハムスターは4日後に三下を起して死亡

し,その脳は無菌であり,脳をマウスの脳内に接

種したものは4日目に死亡した。脳の組織学的検

査において脳炎の変化の認められるものもあり,

認められないものもあった。吸上後3,8,10日の

蚊乳剤接種の実験は2回ずつ行ったが,毎回大体

同様の成績が得られたので,本文では1回だけの

成績を述べ,2回目の実験成績は特に異った結果

が得られた盛合のほかは省略することとした。吸

毒後3日の蚊についての第1回の実験は第1表に

示すように28匹の蚊より乳剤を作り,前と同様に

処理してハムスターの脳内に接種したところ,ハ

ムスターは接種後4∼5日で死亡し,脳は無菌で

あり,次代接種マウスも4日後に死亡した。接種

液には少数の雑菌が存在したが組織学的にも脳膜

炎:の変化は認められず,また後にこの菌のみをハ ムスターの脳内に接種してみたが,ハムスターは

死亡しなかったので,第1回実験で死亡したハム

スタ…一は脳炎病毒によるものであると思われる。

第2回実験において生残したものは4週後に全採

血し,その血清について補体殴合反応を行った

が,1血清稀釈1:2で陰性であった。第1回実験

のハムスターは4匹中1匹だけが組織学的に脳炎

の変化を示した。

吸毒後8日の蚊乳剤は5匹の蚊より作り,前と

同様に処理して,3匹のハムスターに接種したが

全部生残した。接種液には3日後の場合と同様に

少数の雑菌が存在したが実験には影響がないもの

と思われる。4週後全採血しその』虹清について前

回同様,補体詰合反応を行ったが血清稀釈1:2

でいずれも陰性であった。第2回目は20匹の蚊よ

り乳剤を作り3匹のハムスターに接種したところ

6日及び11日後に死亡しその脳乳剤上清はマウス

ig 4日後に麗した。即ち,吸毒後8日の蚊乳剤を

接種した場合にはハムスターは罹患しないか,吸

毒直後のものに比し死期の延長がある。

吸毒後1G日の蚊乳剤を接種した場合にはハムス

ターはいずれも4∼5日後に発症死亡した。死亡

したハムスターの脳はいずれも無菌であり,脳乳

剤上清はマウスを4日目に定型的に発したので,

吸毒後10日の蚊の体内には脳炎ウイルスが存在し

ていると思われるが,これを接種して死亡したハ

ムスターの脳の組織学的検索において脳炎の確実

な変化の現れたものは,第2回実験のハムスター

No.37の1匹のみである。

次に吸毒心14日の蚊の体内の脳炎ウイルスの存

否を確める実験を行ったが蚊が少かったので1回

実施したのみである。18匹の蚊の乳剤を接種され

たハムスターは3匹共4∼5日後に死亡し脳は無菌

でありウイルスはマウスに接種可能であった。死

亡したハムスターの脳の組織学的検索は2匹にお

いては不明であった。今回も接種液に少数の雑菌

を証明したが実験に影響はないものと思われる。

実 験 H

一29一

(3)

この実験は昭和30年8月18日より10月25日迄に行わ れたものであり.この期間中の室温は33.8。C∼14.4。C であった。 実験方法:実験1と大体同様であるが,前回接種液 に雑菌が混在したので今回はこれを除きたいと考え, 蚊乳剤に加える抗生物質をtk・=シリン1000u/cc,ス} レプトマィシン3 mg/ccとした。本実験において雑菌 の混入の少かったのはこのためと思う。この実験にお いては吸毒直後,吸毒後3日,8日,9日,10日,11 日,14口,21日,22日後に蚊の一定数を殺して乳剤と し,これをハムスターに接種した。観察及び実験の方 法は前回と同様なので省略する。但し今回はさらに次 の実験を追加した。安東5)によると三三蚊が吸血する とウわレスが増殖するという。この実験においてはこ れを追試するために,吸毒後8,10,15及び21日の蚊 にハムスPt ・一から7∼8時間吸血させ,その吸血蚊乳 剤をハムスタ 一一脳内に接種し,吸血による生体内の病 毒の増減を試験した。その方法はつぎの通りである。 ハムスターを木板上に固定して金網籠に入れその中 第2表吸毒後8,9,10,11,15122目の蚊乳剤に よるハムスター脳内接種試験(実験H 昭和30年)

興誘幅タ灘弓袋孟「灘嬰

へ蚊を放ち,一夜放馬して吸血きせ,翌朝吸.血により 腹部が赤くなっているものを採集し,それを乳剤とし てベニシ1)ン,ス}レプト .Y・fシンを加え3000r.p.m. 15分遠心し,上清を0.1cc宛4匹のハムスターの脳内 に接i回した。 実験日

lsHH1 20

1

64 生

65 生

66 生

9日目… 12 1 74 75 76 77 6 6 7 7 4f4 11 tl tl 十 10日目 18 78 79 80 81 生 生 生 生 4f4 rl I/ rl 第3表吸毒後8,10,15,21日に於てノ・ムスター を吸血した蚊の乳剤による脳内接種実験 (実験H 昭和30年) 吸血した 日 (吸毒後) 8日目 8日目 88 89 90 91 5 5 5 10 10日目 11日目 12 92 93 94 95 6 6 6 13

吸血

蚊数

(匹) 22 15日目 15 101 102 103 生 生 生 12 ハムスタ r一” NO・ 22日目 16 67 68 69 70 死亡迄 の日数 5 5 5 5 次代マウ ス発症 4f4 tf ゲ I1 71 72 73 82 83 84 生 生 生 組織学的 脳炎病変 i 12 1 6−P’一ll, 6 旨 〃 6 グ

1一

十 十 4f4 rl t/ t/

対照8,9,10,11,15,22日の対照全音醗症

85

・・蜘・8186

87 7 生 生 96 1 34

97 生

98 生 Of4 15目目 16 Of4

21日目i 13

1g.g…j99 12 13 4f4 .4f4 十 十 対 照 8,10,15,21日の対照全部発症 実験成績:吸毒直後,吸毒後3日(蚊の数11匹), 8日(蚊の数20匹),9日(蚊の数12匹),10日(蚊の 数18匹),11日(蚊の数12匹),15日(蚊の数15匹), 22日目蚊の数16匹)の蚊の体内には8日,10日及び

22日を除きウイルスが証明されたが,吸毒した蚊

を健康ハムスターの容器に入れて吸血させその蚊

を乳剤としてハムスターに接種した揚合には次の

ような成績がえられた。

淋毒後8日の蚊20匹を乳剤としてハムスターに

注射した揚合ウイルスは証明されなかった。しか

しそのときの蚊をハムスタ・・一一の容器に入れて吸血

させた場合には,第1回目の実験ではウイルスは

証明されたが次の実験では逆の成績がえられた。

吸毒後10日の蚊についての実験成績も8日の話合

と同様である。吸毒後15日の蚊の体内にはウイル

一30一

(4)

スが存在したが,それがハムスターを吸」]31.した後 にはウイルスは証明きれなかった。除毒後2ユ日の

蚊がハムスターを吸血した後は体内にウイルスが

証明された。(第2表,第3表参照)

実 験 皿 この実験は昭和31年5月18日より8月15日迄に行つ た.今回は蚊の体内における増減を日を逐うて測定 し,滅少し始める時期及び再び増加する時期などにつ いて詳しく実験を行った。 実験方法=実験丑の場合と同様である。 第1回実験は吸毒直後,吸心後3日の蚊がハムスタ 第4表 吸毒各日数後の蚊乳剤及びハムスターを吸 血させた吸毒蚊乳剤によるハムスター脳内接種試験 (実験皿 昭和31年)

蹴欄轡

ノ、ムスタ r一一 NO. 1 31 119 120

鎌譲饒i欝

4 1 3f3

4 1 3/3 i + ll i 23 i 123 4 i}7i,}一

P

…1 一の血を吸った後,吸融雪4日及び11日にウイ7レスの 消長を追求した。第2回目の実験は吸毒直後,吸毒後 1日,2日,3日,8日,11日の蚊の体内のウ々レスの 消長と,吸毒後3fll,8目の蚊がハムスターを吸血し た後のウィルスの消長を検討した。第3回目は吸毒直 後,吸毒後1日,2日,3日,5日,10目の蚊の体内の ウイルスの消長と,吸二丁3日,5日の蚊がハムスu 一を吸血した後のウィルスについて検討した。第4回 目には蚊の体内のウィルス量を測定した。吸毒直後, 吸毒後3日,8日,10日,14日,21日の蚊の一定数を 殺し実験1と同様の方法で乳剤とし,抗生物質を加え て遠心しその上清を10−1液とし,更に普通ブイヨンで 第5表 吸毒各貝回後の蚊乳剤及びハムスターを吸 血させた吸毒蚊乳剤によるハムスター脳内接種試験 (実験皿 昭和31年)

1実験磯離響.鷲.響蘂灘

124 皿 1 20 139 140 4 4 2/2 5 2f2 rv 32

12s 1 6

126 6 3f3 1 一 3f3 1 一 p 12 127 128 16 逃 2f2

v

12 129 130 生 生

W

30 131 132 5 5 3f3 4f4 133 5 2/3 2f2 II 21 20 143 144 5 5 4f4 3f3 皿

W

134 皿 23 135 136 5 3f3 5 5 4f4 4f4 27 137 138 4 4 4f4 4f4 1 対 照1 … 121 122 4 4 3f3 3f3 rv 2P“ 145 146 147 [ 20

@14s E

6

V

23 149 150 6 3f3 1 ,f3 [

6 1 3f3

6 3f3 6 生 3f3 18 151 152 153 生 生

W

22 154 5 7 ,f3 1 3f3 」 一 40 155 156 5 5 3f3 12 3f3

’57 1生

158 生 1

対劇

1 141 4(共寝)「

142 1 s 1 3f3

実験材料 1…吸毒直後の蚊乳剤,ll:…吸毒1日後の 蚊乳剤,m…吸毒2日後の蚊乳剤, W…吸毒3日後の 蚊乳剤,V…丹毒3日後ハムスPt ・一を吸血した蚊の乳 剤,W…吸毒8日後の蚊乳剤,田…吸毒8日後ハムス Pt 一一を吸血した蚊の乳剤,㍉皿…吸毒11日後の蚊乳剤。 実験材料 1…吸毒直後の蚊乳剤,ll…吸毒1日後の 蚊乳剤,皿…吸毒2日後の蚊乳剤,IV…吸毒3目後の 蚊乳剤,V…吸毒3日後ハムスターを吸血した蚊の乳 剤,VI…無毒5日後の蚊乳剤, W…吸出5EI後ハムス タ 一一 L.吸血した蚊の乳剤,冊…吸毒10目後の蚊乳剤。 T .e^ ’

(5)

稀釈して10−2,10“’・R,10一4液をイ4三り,0.025cc宛をマ ゥス脳内に接種した。

雲験成績:今回の実験では初夏における蚊の発

生時期に第1回の実験を行ったが,盛夏の候の実

験と同様の威績をえた。即ち,吸毒直後の蚊及び

吸毒後11日の蚊の体内にはウイルスが存在した

が,論調後4日の進め体内にはウイルスを証明し・ えず,吸即興3日の蚊がハムスターを吸!h1した場

合は3群の蚊の中1群にのみウイルスが存:在し

た。(表省略)(第2回,第3回の実験成績は第4

表,第5表を参照)。 第6表 吸毒各函数後の蚊乳剤のハムスター及びマ ウスの脳内接種試験(実験IH 昭和31年) 1実験

嗣料

1 皿 (匹)

雛・ス・」死亡輪裂織脇

一No・の日数僥症蜘病

変致死量

54 1 159 160 163 5 68 164

i 165

18 1 166 5 生 生 生 r

167

rv i 23 1 . 1 i68 生 4 4 2f2 [ ’ 10−1 3/3 i l ttt t ttt lttt i 生(10一一1)

V

1対照 33 15 169 170 171 172 5 173 174 6 6 1生(10−i) 4/4 3f4 2f2 3/3 3f3 1e 1 4f4 6 [ 4/4 6 161@i 4〔共喰・

162 i 4

4f4 3f3

一1

10−2 10−2 一「』一一

u

[ io−2 実験材料 1…吸毒直後の蚊乳剤,H… の蚊乳剤,皿…吸毒8日後の蚊乳剤,IV…吸毒10目 後の蚊乳剤,V…吸毒14日後の蚊乳剤, VI…吸血21 日後の蚊乳剤。

蚊の体内のウイルスを日をおうて追求してみる

と吸込直後が最も多く,酒毒後日を経るに従って 減少し3日目には証明されない揚合もあったが,

三二後5日,10日置14日において再びウイルスは

増加した。定量的に実験した第4回目の成績によ

ると(第6表参照),増’加する時期のウイルス量は [ 10−4 ..L 吸毒3日後

直後のそれより少量であった。今回の実験におけ

るハムスターの脳の組織学的検索においては明ら かに脳:炎の変化の認められたものは少く,わずか に吸毒直後の蚊乳剤を接種したハムスターの1:・匹 の脳に脳:炎の変化を認めたのみである。

総括及び考按

私共は昭和29年より31年迄3年問にわたって日

本脳:炎ウイルスを吸った蚊の体内におけるウイル スの消長を迫派した。日本脳:炎が蚊により伝播さ

れるのではないかと疑問がもたれてより多くの人

々によって実験が行われてきたが,その成績につ

いては三田村6・7),Ha㎜on8,ら磁白描定説と

安東4・5、,松本9),Smithlo)らの否定説とがある。

私共は従来実験動物として用いられていたマウ

スの代りにハムスターを用い,また実験材料を細

菌濾過器で濾過すると病毒が減少する(大西11, 小材12’,三田村18)ので私共はペニシリンとスト レプトマイシンで雑菌の癸育を阻止して本実験を 行った。マウスに臼本命:炎の不顕性記紀があるこ とは小山1),川村15),三田村7)らにより証明され

たが私共の研究によるとハムスターにはない。し

かもSchabe1が述べたように脳炎ウdルスに感受

性が強い。従ってハムスターは日本脳:炎の研究に は適した動物と思う。 人工的に有毒化せしめた蚊の体内におけるウイ ルスの消長に関しては安東4/5)の詳細な実験があ り,それによれば,人工有毒蚊体内のウイルスは

一時減少し,後,急激に増加するがこの増加は吸

毒直後の蚊体内ウイルス濃度と同程度かまたはそ

れ以下であるという。松本9)も同様な成績を報告 している。大西ユユ),小林ユ2)らによれば,酒毒後1日,

4日,9日,20日において,蚊の体内にはウイル

スは存在しなかったというが,実験:方法の相違に よるものではないかと考えられる。私共の実験に

おいてはウイルス材料を吸わせた直後においては

毎回蚊体内よりウイルスが証明された。大体吸毒

後3日にはウイルスは証明されなくなり,吸病後

8日,10日,14日,21日では,再び体内にウイル

スを証明するようになった。しかし第7表に示す

ように吸毒後3日にもウイルスが証明され,吸心

後8日において証明されず,10日,14日に再び証

明される帳合もあった。淫乱後3日に既に減少を

示しているものでは8日または10日目に増加を示

しているものが多い。しかし,吸毒後11日まで体

一 82 一一

(6)

等7表 蚊体内に於ける日本脳炎ウイルスの消長 実験年月日 百艦 暴 毒

〈屍 奏橡 十覆 二L. 颪星 蓋髭 泉蚤士 @星 量 照和z麻 Q殆 33’ 市2η 暦

〆@ ’ Q弔5 2.2 皐 300 32.0 振 2ア1 34ρ 搬 265 28.0 E召和30年

303 廓君 「 倣 θ

e

275 3α3 229 漁 i搬 命 一 26タ 3.0 229 2z7 ノ6.6 日冠和31年 一 1% % 一 △ ム! 2 92 o280 299 2‘o 2.0 L

令 幽 280 2 o .26ジ27∫ LZ乳o 330 癒 k 3Zゲ 皇 i Q75 .25.∫ 305 十2阜o $一一一一ワイノレス多量言正1明 ㊧一一一ウィノレス小量言正明 e一一一一ウィ}レ又存fEttず △一一一・ハムスダー吸血後の蚊孚L剤にてウイルス証日月 △…一’@〃 ウイルス存在せず 数:宇は実彰夷日の最窩i室温’C

内にウイルスの証明された鮮もあり,吸毒後5日

まではウイ.ルスが証明されたが,ユO日目には消失

してしまつた黙もあろ。大体において室温の高い

程蚊の体内のウイルスは急に減少し,或期閥後再

び増’加するようであり,この増加した時期に蚊が 伝染力を有するか否かは次の実験に述べる’予定で ある。増’加するまでの期間は気温などによつてい

ろいろであるが大体1週間位ではないかと考えら

れる。 三田村14),野村15),Hammoni6), Reevesi7),

Smith10)らは吸毒後7∼25日において伝染が可能

であるとのべていることから考えると蚊の体内の

ウィルスの増加する時期となんらかの関連がある

ように思われる。なお私共の実験に用いた蚊は糖

蜜のみで飼育し血液を与えていないので,安東の

いうようにウイルスの有毒化に.血液を吸うことも

必要なのではないかとも考え,吸毒した蚊にハム

スターの血を吸わせて実験してみたが,特に吸1血

後の蚊においてウイルスが増’加したとは考えられ なかつたQ 結 論 Li. 日本脳炎ウイルスを吸つた蚊の体内には, 吸毒鷹後にはウイルスが証明きれる。

2.吸毒後3日の蚊の体内においてはウイルス

の証明されない揚合が多い。

3. 吸毒後8日,9日,10日,11日の蚊の休内

においては,ウイルスの証明される蜴合の方が多

い。 4. 吸毒後ユ4日の蚊の体内にはウイルスが証明 される。

5.吸毒後21日の蚊の体内にもウイルスは存在

すると思われる。

6.以上の成績より,蚊の体内に吸われたウイ

ルスは一9’1減少し,後或期閣を経て増加する。し かし吸毒直後のものよりは増.加しない。そして増

加するまでの期間は気温などにより種々である。

7.蚊の有毒化に頚1液を吸わせることが必要で

あるとは考えられない。 終りに御指遵,御咬閲を賜わりました平野教授並に 病理学的検査を御指導頂きました病班学,今井教授に 厚く御礼申し上げます。 〔本論交の一部は第.20四唄{京女子医料大学々会総会 (昭和29年)及び第31π1ウイ7レス学会総会(日翫ミロ30.年) において発夫した。) 文 献 1)小山千代:紬菌学雑誌,2,3(昭22) 2)中彌清子他;束京女医大誌,25(8),315(昭30) 3) Schabel, F..M. Jr.:」. ln£ Dis. g8, 32(1949) 4)安東 清他:細菌学雑誌,(559),437(昭17) 5)安東 藩他;細菌学雑誌,(560),481(昭17) 6)蕊田村篤志郎他:東京医.事新誌,3076,42(昭 13) 7)議田村篤志郎他:東京医事新誌,3077,820(昭 13)

8) Ham.meR, W.D., et al.:Am. J. Hygiene. 5g,

51 (1949)

9)松本 稔:学術月報別冊資料,19,103(昭27)

10) Smith, M.G., et al.:J. Exp. Med. 87, 2

(1948) 11)大西俊ew:細菌学雑誌,(527),33(昭15) 12)小林六造他;東京医事新誌,3075,4(昭13) 13)]ll村麟也他:東京医事新誌,3128,1(昭14) ユ4)三田村篤志郎他;東京医事新誌,2957,46(昭 10) 15)野村幸男:十全医学会雑誌,57,1540(昭30)

一88一

(7)

16) Hainmon, W.’D. :.. Am.・ J. Hygiene. 50, 46

(1946)

17) Reeves, W.C.:J. Exp. Med. 83, 185(1946]

18)罵田村篤志郎他:東京医事新誌,3076,9(昭13:

参照

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