Title
ラットにおける副甲状腺ホルモンの骨への作用に関する病
理学的研究( 内容の要旨 )
Author(s)
千葉, 修一
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第111号
Issue Date
2002-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2165
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要.件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 千 葉 修 一(東京都) 博士(獣医) 獣医博甲第111号 平成14年3月13日 学位規則第4条第1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 岩手大学 ラットにおける副甲状腺ホルモンの骨への作用に関 する病理学的研究 主査 岩 手 大 学 副査 帯広畜産大学 副査 岩 手 大 学 副査 東京農工大学 副査 岐 阜 大 学 授 授 授 授 授 教 教 教 教 教 助 峯 男 敏 昭 幸 高 晴 国 利 田 井 林 森 木 岡 松 小 三 柵 論 文 の 内 容 の 要 旨 外部より間欠的に反復投与された副甲状腺ホルモン(上皮小体ホルモン、以 下 PTH)の骨における薬理作用の機序を解明するため、ラットを用いて病理学 的な解析を試みたム PTHが骨の局所でInterleukin6(IL-6)mRNAを制御することを検証するため、 4 適齢ラットに recombinant human PTH(rhPTH)225FLg/kg を単回投与し、投
与後 6時間までのIL-6 mRNA発現をi8 5i七日 ハイプリダイゼーションにより検
索した。投与前には発現が認められなかったIL-6mRNA は、投与後 0.5 から1
時間まで骨幹鹿の海綿骨骨梁間の一部の問質細胞で一過性に衰現した。同
mRNA の発現は、検索したいずれの時点においても、その他の細胞では認められなか った。IL-6 は破骨細胞分化因子の一つであることから、PTH が問質細胞に作用 してⅠレ6を産生させ、間接的に破骨細胞を活性化することが示唆された。 第二に rhPTH を若齢ラットに8日間反復または持続投与し、PTH レセプター(PTHIR)の分布と骨における early gene の発現を検討した。PTH 投与による
PTHIR mRNA の分布に変化は認められなかった。IL-6 mRNA は8日間反復投与後
1時間に問質細胞から、Cイ05mRNA は投与後 0.25∼0.5 時間に骨芽細胞から、
さらに投与後1時間に問質細胞から単回投与時と同様に一過性の発現を示した。
持続投与では、これらの early gene の反応は認められなかったことから、骨形
成作用を示す反復投与では、一過性の骨芽細胞、続いて問質細胞におけるearly geneの反応が繰り返される事が明らかと.なった。PTH反復投与による骨形成作 用は、骨芽細胞からの直接的な細胞間相互作用あるいは何らかのサイトカイン 等の因子を介した間接的な作用により一過性に活性化された問質細胞が _Ⅰレ6お よびその他の因子により破骨細胞を制御することで発現していることが示唆さ れた。PTH持続投与時には、これらのearlygeneは反応せず、ReceptorActivator of NトT(B Ligand等の因子が PTH に反応して、破骨細胞を活性化して骨吸収作 用を発現するものと考えられた。 成熟雄ラットのドリルによる穴あけ骨欠損治癒での骨芽細胞性マーカーの mRNA発現をin5上亡Uハイプリダイゼーションによって解析した。欠損部は手術 後3日に血腫七充填され、Ⅰ型コラーゲンmRNAを発現した。血腫は、骨髄腔側 から、手術後7日に線維性組織に、手術後10 日には新生海綿骨により、それぞ れ置換された。Ⅰ型コラーゲン、PTHIRおよびアルカリフォスファターゼ(ALP) mRNAが新生海綿骨と線維性組織の境界部および新生骨組織表面の骨芽細胞にお いて発現した。その後、破骨細胞を伴う造血性骨髄組織が骨髄側から骨欠規部 に侵入し、骨膜下の薄い骨組織を残して手術後21日までに全ての新生海綿骨を 置換した。治癒過程では組織学的に軟骨形成は認められなかったが、Ⅱ型コラ ーゲンmRNAは新生海綿骨表面の大部分の骨芽細胞で、僅かに検出された。 ラット骨欠損モデルにおける PTH 反復投与の効果を病理組織学的観察と組織 形態計測により検討した。骨欠損手術直後より 4週間までrhPTRを 45、90およ び180〃g/kg/日の用量で、1日1回皮下反復投与した。最初の 2週間では、溶 媒および rhPTH 投与群ともに、海綿骨が急速に形成された。その後、溶媒投与 群では、造血性骨髄組織によって欠損部の海綿骨が急速に吸収されたが、rhPTH 投与群では、欠損部内でrhPTH投与量に応じた骨量が維持された。全てのrhPTH 投与群では、紡錘形の問質細胞が骨染間隙を満たし、活性化した骨芽細胞と多 核の破骨細胞が海綿骨表面を覆っていたのに対し、溶媒投与群では多量の造血 性骨髄組織が存在した。以上より、PTH 反復投与による欠損部での海綿骨増生 推持には、問質細胞の維持と一過性かつ反復的な early gene の発現による問質 細胞を中心としたサイトカインネットワークの活性化が重要であると考えられ た。 225FLg/kg/日の rhPTH を手術後 9 週まで同様のモデルに反復投与した、骨欠 損手術後 3、5 および9週における治癒過程を検討した。同時に、rhPTH反復投 与中止後の欠損部の状況についても検討した。手術後 9 週では rhPTH 投与群で は、骨欠損部は、海綿骨でほとんど充填されたが、溶媒投与群では手術後 9 週 においても、欠損部内に薄い皮質骨を形成するのみであった。このことから、PTH は骨粗老症以外に、軟骨形成を経ず骨化して治癒する脛骨延長術の入院期間の 短縮に臨床応用可能である事が示唆された。
-215-審 査 結 果 の 要 旨 副甲状腺ホルモン(上皮小体ホルモン、以下PTH)の骨形成作用機序をラットで血βカロハ イプリグイゼーションにより病理学的に解析を試みた本研究では、PTE反復投与後に一過 性のInterleukin6(II.・6)mRNAが、骨の問質細胞から継続して発現する事が明らかにさ れた。PTⅡレセプター(PTHIR)は反復投与時においても、.対照群と同様に主に骨芽細胞 で発現しており、pTHに対する反応の指標であるc-ゐ寧mRNAは一次鱒に骨芽細胞で発現 し、PTHIRを発現していない問質細胞における二次的なc-jbsmRNAの発現がIL-6mRNA の発現と時間的に一致していた。このことから、反復投与によって認められる骨形成一作用は、 骨芽細胞を介した問質細胞の反応によるものと考えられた。一方、骨吸収作用を示すとされ る持続投与時にはこれらの反応は認められず、PTⅡの投与方鞋による相反する薬理作用を 説明するための重要な証拠であると考えられた。 PTH の薬理作用を短期に評価する実験系として、ラット骨欠損モデルに着目し、同モデ ルおけるPTHIRおよび骨芽細胞系マーカーの解析を元=流血ハイプリグイゼーションによ り試みた。骨欠損部では急速な骨吸収とそれに引き続く骨吸収過程が観察され、形成された 海綿骨表面の骨芽細胞では、PTHIRが発現している事からPTHの作用を本モデルを使用 して解析可能である事が証明された。また、骨形成期の非常に活性の高い骨芽細胞では本来 軟骨細胞のマーカーであるⅡ型コラーゲンmRNAが発現する事が明らかとなった。 骨欠損モデルにPでEを一投与した結果、治癒過程後半の骨髄組織による海綿骨の吸収が認 められず、PTH投与により骨梁間で増殖した問質細胞の増殖が海綿骨の維持に重要な役割 を果たしている事が示唆された。 骨欠損モデルに対するPTHの長期投与実験では、完全に治癒しない本モデルの欠損部を 骨組経で充分に充填し、一定期間投与後に投与中止しても形成された骨組織は維持される事 が確認された。この事はPTHが従来知られている骨粗老症以外に軟骨形成を経ず骨化して 治癒する脛骨延長術の入院期間の短縮に臨床応用可能である事を示唆した。 以上について、審査委貞全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位論文として 十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文
1)題 目:Molecular analysis of defect healingin rat diaphysealbone 著 者 名:ChibaShuichi,OkadaEosuke,LeeKaechoong,SegreGinoVictorandNeerRobert
Marcus
学術雑誌名:TheJournalof Veterinary MedicalScience
巻・号・頁・発行年:63(4):603
-608,2001
既発表学術論文
1)題 目:SerⅧparathyroidhormoneandcalcitoninlevelsinracehorsesvithfracture
著 者 名:Chiba Shuichi,Kanematsu Shigeto,MurakamiKenji,Satoh Akira,Asahina
Masatoshi,NumakunaiShigeru,Goryo Masanobu,Ohshima Ran-ichiand Okada Eosuke
学術雑誌名:TheJournalof Yeterinary MedicalScience
巻・号・貢・発行年:62(4):361- 365,2000