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〈研究ノート〉テレマーケティング詐欺に対する連邦取引委員会の戦い(その3)

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〈研究ノート〉

テレマーケティング詐欺に対する

連邦取引委員会の戦い(その3)

内  田  耕  作

1 はじめに  テレマーケティング詐欺に対する連邦取引委員会の戦いは,テレマーケティ ング詐欺の根絶とともに,被害を被った消費者の救済をめざしている。この点, 消費者救済が成功するか否かは,連邦取引委貝会が,消費者救済に充当される 基金をそもそも回復することができるか否かにかかっている。  消費者救済基金の回復としてまず考えられるのは,詐欺を行っているテレマ ーケッター(会社の役員等を含む。)からの回復である。しかし,それは,必ずし         1) も十分とはいえない。というのは,詐欺を行っているテレマーケッタ一等は, しばしば,収入を得るや否や消費してしまったり,国外に送金したり,隠匿し たりするからである。たとえそうではないとしても,収入の約4分の3は,家 賃,電話代,賃金・手数料,郵送・販売促進代,消費者リスト代などのために 支払われてしまっているからである。  そこで,改めて,詐欺を行っているテレマーケッター等以外の者から,消費       2) 者救済基金を回復することができるか否かが問題になる。ここでは,①詐欺を i)拙稿「テレマーケティング詐欺に対する連邦取引委員会の戦い(その1)」彦根論叢281号 123,135−136頁(1993年)参照。 2)問題状況については,次の文献を参照した。Barry J. Cutler, Developments in Consumer Protection at the Federal Trade Commission, 60 Antitrust L. J. 123, 130−31(1991) ; Willia皿C. Macleod, Consumer Protection Developments,60 Antitrust L. J.657,664− 65(1992).

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76  彦根論叢 第295号 行っているテレマーケッターに対して供給したり,それを支援したりしている 者(以下,「帯助者」という。)からの回復,②詐欺を行っているテレマーケッタ ー等に対する消費者救済基金の徴収を妨害している者(以下,「徴収妨害者」と いう。)からの回復が考えられる。実際にも,連邦取引委貝会は,詐欺を行って いるテレマーケッター等からの回復に加えて,三助者,徴収妨害者からの回復 に腐心している。  本稿では,消費者救済基金の回復のこの局面に焦点を当てることによって, テレマーケティング詐欺に対する連邦取引委員会の戦いの一端を明らかにする ことにする。まず蓄助者からの回復について,続いて徴収妨害者からの回復に ついて,問題となった事件を紹介しながら,その具体的様相を明らかにする。  なお,連邦取引委員会が消費者救済基金を回復することができるか否か,あ るいはだれから回復することができるかは,消費者救済の成否に関わりがある だけではない。それは,テレマーケティング詐欺それ自体の根絶にとっても, 多大な影響があるということができる。この点に着目すれば,本稿は,テレマ        3) 一ケティング詐欺の根絶に焦点を当てた前稿の,補完ともなっている。 II討助者からの消費者救済基金の回復 幣助者には,①詐欺を行っているテレマーケッターに対して供給したり,そ れを支援したりしているサプライヤー(会社の役員等を含む。),②詐欺を行って いるテレマーケッターを支援しているサプライヤー等以外の者,がある。以下, それぞれからの,消費者救済基金の回復の具体的様相を明らかにする。  (1)サプライヤー等からの回復  ここでは,サプライヤー等による供給・支援を問題とした事件を手がかりと して,消費者救済基金の回復の具体的様相を探ることにする。なお,該当事件        4) のいくつかについては,すでに前稿でその概要を紹介しているので,本稿では, 3)拙稿「テレマーケティング詐欺に対する連邦取引委員会の戦い(その2)」彦根論叢291号 8頂(1994年)。 4)拙稿・前掲(注3)89−96頁参照。

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旧稿で取り上げた事件を中心として,消費者救済基金の回復がいかに図られた        5) かに限定して,紹介を行うことにする。        6)  (a)マイテル・インターナショナル事件  本件では,被告会社であるマイ テル(直接に,また他の販売会社を通じて複写機補給品を三二的に販売したと問 擬された,複写機補給品のテレマーケッター)が,当該問擬を和解で解決するた めに,25万ドルを合衆国国庫に支払うことに合意した(なお,会社役員である個 人被告に関しては,消費者救済基金への支払いは,和解の合意事項とされてい ない。)。       7)  (b)レアー・コインズ・オブ・ジョージア事件  本件では,テレマーケッ ターに卸売りしたコインのクオリティーを誇張したと問擬された被告会社(コ インの卸売業者であるレアー・コインズ・オブ・ジョージアと,コインにグレ ード付けをし,グレード評価証明書を発行していたIGA)と個人被告(会社役 員)が,当該三三を和解で解決するために,消費者救済として15万ドルを支払う ことに合意した。        8)  (c)プロモーション・スペシャリスツ事件  本件では,被告会社であるプ ロモーション・スペシャリスツ(ビタミン等の販売のために賞品を販売促進手段 としたテレマーケティングのボイラー・ルームのサプライヤー)と個人被告(4 人のオーナー)が,連邦取引委員会の問擬を和解で解決するために,2年間にわ たり,20万ドルとその利子を支払うことに合意した。当該金額は,詐欺の犠牲 者(約1万7,000人)に対する部分的な返金のために用いられた。 5)なお,壷皿・エフ・エス事件(AFS, Inc., et a1,[1987−1993 Transfer Binder]Trade Reg. Rep.§23,101(1991))では,消費者救済基金への支払いは,和解の合意事項とされていな い。 6) Mytel lnternational, lnc., et al, [1987−1993 Transfer Binder] Trade Reg. Rep. S22, 620(1988). 7) Rare Coins of Georgia, et al, [1987−1993 Transfer Binder] Trade Reg. Rep. g22, 628(1988). 8) Promotion Specialists, lnc., et al, [1987−1993 Transfer Binder] Trade Reg. Rep. g23, 021(1991).

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78  彦根論叢 第295号        9)  (d)ヘリテージ・キャピタル事件  本件は,レアー・コインズ・オブ・ジ ョージア事件と同様に,稀少コインの卸売と評価が問題となったものである。 本件では,古銭評価証明機関であるNCIと,その子会社であり,かつコイン の小売業者に実質的な援助を提供していたヘリテージが,連邦取引委員会の問 擬を和解で解決するために,120万ドルを,コインの小売業者の顧客のための消 費者救済プランに拠出することに合意した(なお,NCIの社長である個人被告 に関しては,消費者救済基金への支払いは,和解の合意事項とされていない。)。       10)  (e)ユニメット・クレジット事件  本件では,テレマーケッター3社(貴金 属・外国通貨に対する信用供与付きの投資を欺隔的にテレマーケティングした とされる。)に対して,多様な形態の援助(①投資者に対する信用貸付,②貴金属 ・外国通貨の現物供給,③地金・外国通貨の現金化,保管の手配,④テレマー ケッターの訓練,マーケティング・販売促進資料の提供)を与えるなどしていた 被告会社2社が,連邦取引委員会の問擬を和解で解決するために,190万ドルを 消費者救済のために支払うことに合意した(なお,業務担当副社長ほか2人の個 人被告に関しては,消費者救済のための支払いは,和解の合意事項とされてい ない。)。その後,170万ドル(別のクラスアクションによる回復も含まれる。)が, 約6,400人の消費者に分配されることが決定された。  なお,テレマーケッター等に対する訴訟の結果は,次のようであった。ウェ スタン・トレーディング・グループに対しては欠席判決が下されたが,廃業し       11) たこともあり,消費者救済の支払いは命じられなかった(なお,個人被告である 社長と販売マネージャーは,連邦取引委員会の問擬を和解で解決することに合 意したが,消費者救済のための支払いは,和解の合意事項とされていない。)。 9) Heritage Capital Corp., [1987−1993 Transfer Binder] Trade Reg. Rep. S22,  706(1989). 10) Unimet Credit Corp., et al, [1987−1993 Transfer Binder] Trade Reg. Rep. g23,  261(1992), 5 Trade Reg. Rep. g23, 730(1994) ; Trade Regulation Reports, no. 360, p.  6(1995). 11) Western Trading Group, Ltd., et al ; Osborne Precious Metals, lnc., et al, [1987一一1993  Transfer Binder] Trade Reg. Rep. S23,232 (!992) /Western Trading Group, Ltd., et al,  5 Trade Reg. Rep. S23,401(1993).

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ファースト・アメリカン・トレーディング・ハウスに対しては欠席判決が下さ       12) れ,消費者損失の総額の内での金銭ジャッジメント(確定は後日)が裁定された (なお,個人被告である元役員は,連邦取引委員会の問擬を和解で解決すること に合意したが,消費者救済のための支払いは,和解の合意事項とされていな い。)。オズボーン・プレシャス・メタルほか1社と個人被告(会社の経営最高責 任者)に対しては,即決判決が下され,1,330万ドルのジャッジメントが消費者       13) 救済のために命じられた。しかし,そのうちのいくらが徴収され,またいくら が分配されるかは分からないというのが,連邦取引委貝会の見方であった。  (f)小繋  サプライヤー等による供給・支援を問題とした事件から入手で きる情報量は,極めて少ない。とりわけ,テレマーケッター等から回復された 消費者救済基金を含む,基金の総額が不明である。そこで,サプライヤー等か らの回復が,基金総額においてどの程度の割合を占めるのか,数字をもって明 らかにすることはできない。しかし,サプライヤー等からの回復が基金の回復 に大きく寄与していることだけは,疑いようのない事実である。  (2)その他の腎助者からの回復  ここでは,保険仲買人,保険会社,弁護士・その法律事務所,会計事務所, 金融機関,ベター・ビジネス・ビューロー/ベター・ビジネス・ビューU一評 議会からの回復を問題とした,ユー・エス・オイル・アンド・ガス事件を取り       14) 15) 上げ,回復の具体的様相を明らかにする。これらの者が問擬されたのは,詐欺 12) First American Trading House, lnc., et al, [1987−1993 Transfer Binder] Trade Reg.  Rep. gg23,134, 23,257(1992). 13) Westem Trading Group, Ltd., et al ; Osborne Precious Metals, lnc., et al, [1987−1993  Transfer Binder] Trade Reg. Rep. g23,232(1992)/Osborne Precious Metals, lnc., et  al, 5 Trade Reg. Rep. g23,573(1994). 14)以下の叙述は,U.S. Oil and Gas Corp., et a1,[1983−1987 Transfer Binder]Trade  Reg. Rep. g g22,062, 22,092(1983), 22,182(1984), [1987−1993 Transfer Binder] Trade  Reg. Rep.§22,985(1991)に依拠した。 15)なお,前稿(前掲注(3))において,その他の耕助者による支援を問題とした事件として取  り上げたエレクトロニック・クリアリング・ハウス事件(Electronic Clearing House, Inc.,  5Trade Reg. Rep.§23,517(1993))では,消費者救済基金への支払いは,和解の合意事項  とされていない。

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80  彦根論叢 第295号 を故意に助けたからであった。幣助者に対する訴訟は,派生訴訟として提起さ 16) れ,その後,テレマーケッター等に対する連邦取引委員会訴訟と併合されてい る。そこで,蓄助者に対する派生訴訟について述べる前に,テレマーケッタ一 等に対する連邦取引委貝会訴訟について述べておくのが,便宜である。  (a)テレマーケッター等に対する連邦取引委員会訴訟  本訴訟で被告とさ れたのは,単一の結合事業として経営されていた3つの会社と10人の個人(被告 会社の役員5人とセールスマン5人)である。  ア 問題とされた行為  問題とされたのは,石油・ガス抽選(国務省が,区 分された連邦所有地上の石油・ガス採掘権のリースを抽選によって授与するも の)の申請サービスのテレマーケティングにおいて,被告が用いた虚偽かつ欺隔 的な慣行である。より具体的には,次のことが問題とされた。  1つは,被告が,抽選への参加に内在する危険を排除するその能力について, 虚偽に表示したということである。すなわち,被告は,その専門性,価値ある 区画についての独占的知識,リースを勝ち取る蓋然性,各々のリースのために 競合する顧客の申請の数,顧客がリースを勝ち取るのを援助することでの会社 の以前の成功度,について不実表示した。実際には,1982年9月から1983年7 月まで,被告の顧客は6万6,000以上の申請を行ったが,わずか60のリースを勝 ち取ったにすぎなかった。  もう1つは,顧客がリースを勝ち取るか否かにかかわらず,7年後には元の 投資額を取り戻すであろうと,被告が虚偽に約束したということである。この 点,被告は,返金の準備のために,各々の投資者が支払った申請費用の一部を 年金の購入に充当するプログラムを創設した。しかし,実際には,投資者がこ れらの年金の受取人とされることは,断じてなかった。なお,被告は,申請1 件に対して300ドル,複数申請に対して数千ドル(申請は,30件を1パッケージ として9,000ドルで販売促進された。)を費用として請求したが,申請1件当たり 16)なお,連邦取引委貝会は,銀行,貯蓄貸付機関等に対する管轄権限を有しないので,常  助者が銀行,貯蓄貸付会社である場合には,それらに対して自ら訴訟を提起することがで  きない(連邦取引委員会法5条(a)項②号参照)。

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75ドルを国務省に手数料として支払ったに過ぎなかった。  イ 訴訟の推移  1983年7月,連邦取引委員会は,連邦地方裁判所に訴訟 を提起した。その後,1983年10月には,連邦地方裁判所は,暫定的差止命令に おいて,1,200万ドルの会社資産を凍結し,会社等による将来の欺隔的な販売慣 行を禁止した。また,個人被告の個人資産が,1984年の1月と3月に凍結され た。  その間,1983年11月には,連邦取引委員会の要請で,裁判所は,財産保全管 理人を選任し,3つの被告会社の物理的コントロールを行わせ,またその資産, 記録およびその他の財産を保全させた。続いて,裁判所は,別のクラスの被害 者に属する投資者を代理させるために,当該財産保全管理人と2人の追加の弁 護士を選任した。  1984年7月には,セールスマンである個人被告の1人は,消費者救済として 11万5,000ドルを支払うことに合意し,また,虚偽主張を行うのを禁止する,訴 訟上の合意に基づく命令に署名した。  (b)幕助者に対する派生訴訟  裁判所は,財産保全管理人と追加の弁護士 が,石油・ガスの採掘権のリースにかかる詐欺を故意に助けた会社・個人に対 して,民事訴訟を提起する権限を付与した。この授権に基づき,派生訴訟が提 起された。その後,それらは,連邦取引委貝会訴訟と併合された。  派生訴訟において問題とされたのは,次のような者の,次のような行為であ った。  ①保険仲買人(1社) 本件詐欺事件の被告がにせの年金プログラムを創 設・販売促進・運用するのを助けた。  ②保険会社(3社) 消費者からだまし取る仕組みの一部であることを知 りながら,年金を発行した。  ③ 弁護士・その法律事務所  にせの年金プログラムを企画するのを助け た。また,本件詐欺事件の個人被告が会社被告の資産から500万ドルを不正利得 することに帰結した,会社組織の変更を企画・実施するのを助けた。  ④ 会計事務所(2社) 本件詐欺事件の被告がにせの年金プログラムを創

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82  彦根論叢 第295号 設するのを助け,かつ,詐欺とその利得の隠匿にとって不可欠なその他の会計 サービスを提供した。  ⑤ 金融機関(連邦免許銀行・貯蓄貸付会社) 本件詐欺事件の被告のプロ グラムが詐欺的であることを知っていたか,知るべきであったときに,被告の 販売促進資料でそれらの名前が紹介先として使用されるのを許した。  ⑥ベター・ビジネス・ビューロー/ベター・ビジネス・ビューロー評議会   前者は,本件詐欺事件の被告のための紹介先として用いられるのを許した。 また,後者は,前者の行為を適切に監督しなかった。  (c)訴訟の結末  1991年4月,訴訟は和解で解決された。連邦取引委員会 は,将来の欺隔的慣行の広範な禁止,消費者救済のための基金の両者を含む同 意判決でもって,本件詐欺事件の被告のいくらか(セールスマンの1人とは, 1984年7月に,訴訟上の合意が成立していた。)と和解した。そして,消費者救 済のために支払われた基金は財産保全管理人に移転された。他方,派生訴訟に おいて被告とされた個人・会社は,3,000万ドルを支払うことで財産保全管理人 と和解した。        17)  その結果,財産保全管理人が所有しているその他の基金を合わせて,約4,700 万ドルが,当該仕組みの被害者への返金のために利用可能となった。  (d)本件の評価  幣助者の責任を追及したことは,2つの点で評価できる。 1つは,消費者救済が厚くなったということである。この点,坐臥者から3,000 万ドルが回復されることとなった結果,消費者救済のために利用可能な基金は 約4,700万ドルに上った。被害総額は5,100万ドル超(被害者は8,230入で,各々 の被害額は5,000ドルから10,000ドル)であったので,被害者は,!ドルにつき 90セント以上の返還を得ることができるようになった。  そして,もう1つは,柑助者に対する強い警告となったということである。 この点,連邦取引直心会委員長は,消費者返還を発表するに当たり,次のよう 17)例えば,別途刑事訴追されたユー・エス・オイル・アンド・ガスの元セールスマンの1  人は,消費者救済として6万5,000ドルを支払うよう求める永久的差止命令に合意してい  た。

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に述べた。「本日の発表は,詐欺を二二する利益によって誘惑されるかもしれな い,金融・法曹・会計界の人々に対して,重大なメッセージを送っている。」「本 件は,その詐欺が知られている主犯者を超えて執行行為を採り,その詐欺を支 える基盤をも同様に追及するという委員会の意思を示している。」 III 徴収妨害者からの消費者救済基金の回復  ここでは,法律事務所,銀行等が,消費者救済基金の徴収を妨害したのを問 題とした一連の事件を手がかりとして,徴収妨害者からの消費者救済基金の回 復の具体的様相を明らかにする。なお,徴収妨害者に対する訴訟は,テレマー ケッター等に対する連邦取引委員会訴訟が決着を見た後に提起されているので, ここでも,検討は,テレマーケッター等に対する連邦取引委員会訴訟から始め ることにする。  (1)テレマーケッタ一等に対する連邦取引委員会訴訟  本件で被告とされたのは,3つの会社と1人の個人(3被告会社の杜長等であ        18) り,以下,「U」という。)である。  (a)問題とされた行為  被告は,稀少コイン(大部分の消費者にとってなじ みのない高度に技術的な特異な商品)の販売をビジネスとしており,電話勧誘等 を通じてコインを販売していた。被告は,コインが,市場価値かその近くで販 売される,リスクの少ない換価しやすい収益性の高い,優れた投資であると表 示する一方,真の価値の数倍でコインを販売していた。そこで,その表示は, コインの価格,コインの投資価値を不実表示するものであった。また,被告は, リスクについての消費者の懸念を取り除こうとして,現行の販売価格から一定 額を割り引いてコインを買い戻す,「買い戻し」政策の存在を重点的に唱えた。 しかし,それは,当該政策の真の性質を不実表示するものであった。  (b)訴訟の推移  1986年12月,連邦取引委員会は,被告に対する訴訟を連 邦地方裁判所に提起し,永久的差止命令とともに,2,000万ドルを超える消費者 18>以下の叙述は,主として,FTC v. Security Rare Coin&Bullion Corp.,ユ991−1 Trade  Cases§69,423(8th Cir.1991)に依拠した。

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84  彦根論叢 第295号 救済を求めた。それに対し,地方裁判所は,1989年9月,永久的差止命令を行       19) うとともに,1,120万ドルのジャッジメントを連邦取引委員会に付与した。その 後,被告は控訴したが,1991年5月,控訴は棄却された。  (2)徴収妨害者に対する訴訟  一連の事件において徴収を妨害したとして問題にされたのは,資産隠匿のた めの信託に関与した法律事務所・銀行,詐欺事件の被告を代理した法律事務所, コイン・ディーラーである。  (a)信託に関与した銀行・法律事務所  以下,訴訟の概要,問題とされた        2Q) 行為,訴訟の推移に分けて,やや詳しく紹介する。  ア 訴訟の概要  連邦取引委員会は,テレマーケッター等に対する訴訟に おいて,消費者救済のためのジャッジメントとして1,120万ドルを勝ち取ってい た。しかし,それは,ほとんど取り立てられないままであった。  この点,ミネソタ州の法律事務所とミネソタ州の銀行は,Uが,数百万ドル の稀少コインをその3人の娘のための信託に詐欺的に移し替え,その後,相当 割合のコインを自分で使用するために横領するのを助けていた。また,それら は,Uに帰属する資産を隠匿したり,連邦取引委貝会の権限が及ばないところ にその資産を置いたりするために,違法かつ不正に行為していた。  そこで,連邦取引委員会は,当該ジャッジメントに基づいて委員会が徴収す るのを妨害することに不正に合意したとして,当該の法律事務所と銀行を問擬 することとした。かくして,1992年12月,連邦取引委員会の要請に基づいて, 訴状が司法省により連邦地方裁判所に提出された。  訴状において,連邦取引委員会は,次のことを求めた。①被告への金銭の違 法な移転のすべてを,連邦法,州法に従って無効とすること,②常助,共謀, 信認義務違反(銀行に関してのみ)を理由とする,被告に対する補償的損害賠償 19) FTC v. Security Rare Coin & Bullion Corp., 1989−2 Trade Cases g68,807(D. Minn.  1989) . 20)以下の叙述は,Larkin, Hoffman, Daly&Lindgren, Ltd., et al,[1987−1993 Transfer  Binder]Trade Reg. Rep.§23,293(1992),5 Trade Reg, Rep.§23,618(1994)に依拠した。

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を認めること,③1,120万ドルを超えない懲罰的損害賠償を認めること,であ る。  イ 問題とされた行為  連邦取引委員会のスタッフは,1986年置夏に,U を調査し始め,次のことを信じるようになった。すなわち,Uは,コインがそ の市場価値でまたはその近くで売られる低リスクで高利益の投資であると表示 する一方,その真の価値の数倍でコインを売っていた。  1986年の秋から1987年の冬にかけて,Uの弁護士と銀行は, Uの連邦取引委 員会問題での潜在的責任は,数千万ドルに等しくなる可能性があるということ を知った。しかし,1986年の秋に始まって,1991年の5月まで,Uは,連邦取 引委貝会の権限の及ぶ範囲から彼の資産を遠ざけ,隠匿し,かつ防護するため の違法な計略において,法律事務所および銀行と共謀したり,それらによって 幣助された。このことは,一連の詐欺的な譲渡およびその他の違法な取引を通 じて達成された。その結果,Uは,事実上,判決執行不能となるのに成功した。  以下,法律事務所と銀行に分けて,問題とされた行為を具体的に述べる。  i 法律事務所の行為  1986年秋に,Uは,当該法律事務所の援助を受け て,彼が所有する稀少コインの相当量を3つの同一の信託(1985年にUが,当該 法律事務所の助けを借りて,彼の娘のために設定したもの)に移そうと試みた。 当該法律事務所の弁護士は,Uが連邦取引委員会の調査について知るところと なる前に,コインが信託に移されたかのように見せかけるために,計略(書類の 日付を遡らせることや,作成日付コードを削除するために書類を改変すること を含んでいた。)を立てるべくUと協働した。  後に,当該法律事務所の弁護士は,宣誓証言の中で,虚偽の陳述を数多く行 い,また,宣誓供述書において,信託への贈与が実際にはいつなされていたと 信じていたかについて裁判所をミスリードした。  ii 銀行の行為  1987年4月,当該銀行は,複数の行員が, Uには法律上 の疑義があり,また,違法な動機で銀行を受託者として利用する可能性がある ということを懸念して反対したにもかかわらず,Uの信託の会社受託者として の地位を引き受けた。その後,「贈与された」コインは当該銀行の金庫室に実際

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86  彦根論叢第295号 に移された。また,当該銀行とUは,州法および連邦銀行規則によって要求さ れるように,コインを換価しないことに合意した。  1989年6月から1991年4月まで,当該銀行は,連邦取引委員会から資産を隠 匿するUの策謀を実質的に援助した。それは,銀行の法的責任に反して,Uが 選定する信託財産を管理したり換価したりする自由を彼に与えることによって であった。銀行は,コインを換価するためにUをその代理人として選任し,銀 行の金庫室からコインを持ち出すのを許した。販売に供されたコインは,1987 年には数百万ドルを超える価値があると銀行によって評価されていたが,信託 勘定は,その販売から26万6,000ドルを受け取ったに過ぎなかった。Uは,コイ ン販売の売上高のうち約40万ドルを彼自身が使用するために横領した。信託さ れたコインに関するUの自由は,信託財産の価値が実質的に減少させられてき たことが当該銀行に明らかになった後も,長く続いた。  ウ 訴訟の推移  その後,法律事務所は,1994年5月になって,Uの代理 に起因する画意を和解で解決するために,2年間にわたり37万5,000ドルを支払 うことに合意した。  他方,銀行は,1994年10月,信託の監督に関連する問擬を和解で解決するた       21) めに,39万9,750ドルと1994年7月以降の利子を支払うことに合意した。  (b)法律事務所(訴訟代理人) 詐欺事件の被告の訴訟代理人であったミネ ソタ州の法律事務所(信託に関与した法律事務所とは別)は,1993年5月,次の ことを内容とする和解に同意することによって,Uの代理に関連する連邦訴訟     22) を回避した。すなわち,前のクライアントであるUがかつて所有していた家屋 に対して,現在それがもつ25万ドルのリーエンを連邦取引委員会に譲渡し,ま た3万5,000ドルの現金を連邦取引委員会に支払うということである。和解の金 額は,「連邦取引委員会に対する予期された債務を回避するために,Uが当該法 21)叙述は,National City Bank of Minneapolis,5Trade Reg. Rep.§23,701(1994)に依  冒した。 22)以下の叙述は,0’Connor&Hannan, et al,[1987−1993 Transfer Binder]Trade Reg.  Rep.§23,341(1993)に依拠した。

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律事務所に不正に支払った」弁護士報酬に根拠を置くものであった。  (c)コイン・ディーラー  3つの全国規模のコイン・ディーラーは,1993 年5月,連邦取引委員会がUに対する1,120万ドルのジャッジメントを取り立て るのを欺くために,Uと共謀したりそれを常助したりしたとの問擬を和解で解 決するために,連邦取引委員会に合計で16万ドル弱のUの家屋に対する約定担       23) 保権を譲渡したり,2万ドル弱の現金の支払いをすることに合意した。  (d)筆跡  連邦取引委員会がテレマーケッタ一等に対する訴訟において勝 ち取った1,120万ドルのジャッジメントは,ほとんど取り立てられないままであ った。しかし,徴収妨害者に対する派生訴訟を通じて,約83万ドルの現金が回 復され,また合わせて約41万ドルになるリーエンと約定担保権が連邦取引委員 会に譲渡されることとなった。  このことは,まず,次のことを意味する。テレマーケッター等以外の者から の回復がなければ消費者救済が不可能であったところ,徴収妨害者からの回復 があったことによって,消費者救済が可能となった。なお,被害者は9,000人で あり,また,最終的に徴収妨害者から回復される基金の総額は約83万ドルを下 回ることはないように思われるので,消費者に対する返金が行われるとすれば, 計算上は,1人当たり90ドル強を下回らない額になると推定される。  そして,このことは,次に,テレマーケティング詐欺それ自体の根絶に資す るということを意味する。というのは,消費者救済基金の徴収を妨害する道を 閉ざすことは,テレマーケッタ一等が,資産を隠匿するインセンティブを失う ことになり,ひいてはテレマーケティング詐欺を行うインセンティブを弱める ことに連なるからである。 IV まとめ  以上の紹介から明らかになるのは,次のことである。第1は,連邦取引委員 会が,需助者から消費者救済基金を回復することができるということである。 このことは,半助者が,サプライヤー等である場合だけではなく,サプライヤ 23)叙述は,0’Connor&Hannan, supra note(22)に依拠した。

(14)

88  彦根論叢 第295号 一等以外の者である場合にも,当てはまる。実際の事件では,保険仲買入,保 険会社,弁護士・その法律事務所,会計事務所,金融機関,ベター・ビジネス ・ビューロー/ベター・ビジネス・ビューロー評議会が,サプライヤー等以外 のE助者とされ,消費者救済基金が回復されている。  第2は,連邦取引委員会が,徴収妨害者から消費者救済基金を回復すること ができるということである。実際の事件では,法律事務所,銀行,コイン・デ ィーラーが,徴収妨害者とされ,消費者救済基金が回復されている。  そして,第3は,幕助者や徴収妨害者からの回復は,テレマーケッター等か らの回復と合一されることによって,消費者救済に充当される基金を豊富にす るということである。テレマーケッター等からの回復が事実上不可能であるか, 僅少である場合には,蓄助者や徴収妨害者からの回復は,なおさら大きな意味 を持つことになる。  そこで,本稿で紹介したような,消費者救済基金の回復のための連邦取引委 員会の努力は,より十全な消費者救済の実現に資するものとして,高い評価を         24) 与えることができる。また,それは,テレマーケティング詐欺それ自体の根絶 に資するものとしても,評価することができる。 24)もっとも,消費者救済の全体(テレマーケティング詐欺に関連する消費者救済に限定され  ない。)を見れば,連邦取引委員会は,取り上げた事件の28%で消費者に返金をしているに  過ぎない。このことからすれば,消費者救済プログラムの運用は,必ずしも十分とはいえ  ず,改善の余地があるということになろう。実際にも,アメリカ消費者連合は,連邦取引 委員会が,ジャッジメント,徴収,分配についての統一的で包括的な記録を保持しておら  ず,また,消費者救済を遂行する標準化された手続を持っていないと非難して,組織変更  を含む具体的な改善策を提示している。もっとも,本稿では,その点についての検討はな  し得ない。Trade Regulation Reports, no.・343, p.2(1994)参照。

参照

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