<論説>在庫品の評価と在庫管理 : 確定決算主義が株主の利害にあたえる影響
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(2) 16 (230). 横浜経営研究. 第甜巻. 第 4 号 (1991). 投下した資金をほかの 投資機会に利用したなら ば得られるであ ろう期待収益であ る・他方,在 庫数量に反比例するのはストック・アウト・コ ストであ る.手持ちの在庫が少なければ急な需 要に応じられず ,そのことによって利益獲得 機 会を逸することになる. この品切れによって 生 じる損失がストック・アウト・コストと 呼ばれ. 経営者に経営上の 意思決定権 限を委譲している 場合には, 自己の効用を 最大化するために 行動 する経営者が 株主にとって 最適な在庫管理を 行 うとはかぎらない. これまでの在庫管理の 議論. る 3).. では,そうした株主と経営者との 利害の不一致. そうした二種類の 費用によって 決定される 「適正在庫水準」は , 多くの場合,経済的発注. が見逃されてきたといってよ. 量 (EOQ:Economic Order Quantity) といっ しょに議論されてきた・「適正在庫水準」を 維 持するために ,発注から納品までのリード・タ イムとその間の 需要量との双方を 予測し,手持 ちの在庫数量がどれくらい 減少したときに 追加 発注すべきかが検討される,そのことからもわ. 行動するかどうかは 断定できない. かちん,企 業の所有者が 自分で経営している 場合には,問 題はない・. しかし企業の 所有者であ る株主が. い.. これまでの 在. 庫 管理にかんする 研究成果をより 発展させるた めにも,税金コストを考慮した株主にとっての 最適在庫最や ,経営者をコントロールすること を通じた在庫管理のあ りかたを検討する 必要が あ ろう. むろん, これまでも,在庫品評価方法の選択 が株主の経済的な 利害に影響をあ たえることは ,. かる よう に,そこでは,在庫品の物的な数量だ. 在庫管理とはべっの 角度から研究がなされてき. けに関心が向けられてきたといってよい.在庫. た・在庫品評価方法の 変更と株価の 変動との 関. 品の購入価格が 変動しても, それは投下資金の 機会費用に影響をあ たえるだけで ,「適正在庫 水準」の決定にあ たって,どのような在庫品評 価方法を選択するかはまったく 考慮されていな. 係を分析した 諸研究は,そのひとつの例であ る. そこでは,公表財務諸表における会計方法の変 更が, たんに確定したキャッシュ・フロ 一の年 度間配分を変えるだけで ,あらたにキャッシ. いのであ る.. ュ,フロ一の変化をひき起こさないならば ,. しかし選択する 在庫品評価方法に 応じて, 「適正在庫水準」は 異なったものになるはずで あ る・なぜなら ,在庫品評価方法の違いは税金 支払額を変化させ ,保有在庫にかかる総費用が. の 変更は株価を 変化させないことがあ. 異なってくるからであ る・税金というキャッ 、ン ュ. ・アウト プ ロ一によって 企業価値は減少する. のであ り,その税金の支払いは,株主の立場か らみるかぎり ,企業成果の分配ではなくてコス トであ る・ したがって,株主にとって望ましい 在庫量は,その 税金コストを 在庫費用に含めた. うえで決定されなければならない.税金コスト を無視した従来の 在庫管理の議論は , 必ずしも,. されている・. そ. きらかに. その一方で,財務会計上の在庫品. 評価方法の変更が税務上の在庫品評価方法の 変 更と結びついている 場合には,その 変更は税金 というキャッシュ・フロ 一に変 ィヒ をもたらし 株価を変えることもあ きらかにされた 4). 株価 研究のこうした 実証結果は,在庫品口の評価 方 Y去 の選択が株主の 富に影響をあ たえることを 示し ているのであ る.. そうした在庫品評価方法の 選択の影響は ,そ のほかに,利益情報の事後,情報としての役割を 記述ないし分析する 研究においても 検討されて. 株主にとっての 最適在庫 量 をあ きらかにしてこ なかったのではなかろうか. それに加えて ,株主にとっての最適在庫量を. 害の不一致があ ることを前提として ,利益情報 の役割が契約などによって 決められた場合,そ. 決めることができても ,在庫管理の権 限を有し. の契約が経営者による 在庫品評価方法の 選択に. ている経営者がその 在庫水準を維持するように. どのような影響をあ たえるかが研究課題とされ. きた・. そこでは,株主と経営者とのあ いだに 利.
(3) 在庫品の評価と 在庫管理伏日方. 隆). (231). 17. ・米国における 研究で,利益情報を経営者の 業績指標として 利用する事例のなかでとくに 注. すべき対象は ,企業会計の外側で決められるそ. 目されているのは ,経営者への報酬であ る.経. 利益計算において 配分対象となる 後者のキャッ. 営者報酬制度があ るか否かによって 在庫品評価. 、ンュ ・フロ一の変化は ,企業の投資政策の変更. 万法の選択に 違いが現れるかということに. によって生じるものであ. る. , 検. の分配ルールそのものであ. る. それにたいして ,. この場合, まず,. る・. 証 Ⅰ作業の主たる 関心が向けられているわけであ. その投資政策への 影響が, そこでの局地的な 成. る㍉・. 果分配ルールに 起因するものか ,あるいは会計. もっとも,そうした研究では,年度利益を計. 上の利益計算ルールに 起因するものかを 峻別し. 算ないし確定した 後に生じるキャッシュ・ フ. なければならない・. ロ 一に目が向けられているにすぎない.. 操作によっては 対処できない 問題,すなわち会. そこで. そのうえで,分配ルールの. 考えられているキャッシュ・フロ 一の変化は, 経営者報酬などの 成果分配 や ,財務制限条項に かかわって変化する 将来の資本調達コストにか んするものであ る・ それらは,年度利益の確定 にともなって 生じるものであ り,在庫品評価方 法の選択ないし 変更が直接変化させているわけ ではない・ たしかに,利益情報の利用のされか たが固定化されているかぎりでは ,在庫品評価 方法の変更がそうしたキャッシュ・フロ 一の変 化を生じさせる. しかし たとえ会計方法に 変 更がなくても ,契約の変更などによって利益情 報の利用のされかたが 変化すれば,年度利益確. 計ルールに固有の , ないしは本質的な 問題を検. 定後のキャッシュ・フローは. 己の効用最大化のために 行動する経営者は , 名. 変化するのであ る. ひとくちに,在庫品吉平価方法の 選択が企業の キャッシュ・フローを 変化させるといっても ,. そのキャッシュ・フロ 一には,年度利益の確定. にともなって 生じるものと ,年度利益の計算の ために配分される 計算対象としてのキャッシ ュ・フローとがあ る.在庫品評価方法の意味を 考えるにあ たって,その二つは区別されなけれ ばならない. なぜなら,二つの局面には,理論. 討することになるのであ. る.. たとえば,利益情報の使われかたを 経営者が 知っているならば ,経営者は,在庫品評価方法 の 選択ばかりでなく ,在庫管理でもその使われ かたを考慮するであ ろう. かりに,在庫品評価 方法の変更に 応じて報酬額の 計算式が変更され たり,在庫品評価方法の継続性 (変更の制限 ) などが私的な 契約や制度上のルールによって 決 められているならば ,在庫品評価方法を変更し た場合,経営者はその違反コストを 負担するこ. とになる・そのような 制約があ るときには,. 自. 目的な会計操作ではなく , むしろ,実態上の操. 作, たとえば, 自分の裁量で 自由に決定できる 在庫数量のほうを ヰ栗ィモ するであ ろう. このよう な在庫操作のケースでは ,成果分配ルールに か んする問題だけではなく ,. そもそも会計ルール. が在庫操作への 誘因を提供していないかという ことも問題になるわけであ る. その ょう に,選択する在庫品評価方法を 前提. 上, それぞれ異なった 問題が存在しているから. として,その評価方法が経営者の 在庫管理にど. であ る.. のような影響をあ たえるかを分析するためには. いずれのキャッシュ・フロ 一の変化も株主の 持分価値に影響をあ たえることにかわりはない が,前者のキャッシュ・フローは利益情報を利 崩 している契約ないし 成果分配ルールにおおき く依存しているのであ り,会計ルールはもっぱ. まず,在庫数量が増減する状況にそくして 在庫 品評価方法の 計算上の特質があ きらかにされな. らその分配ルールを 機能させているにすぎない. ように年度間に 配分するのかが 検討課題であ る. かりに成果分配にかんして 問題があ れば,検討. 期首と期末で 在庫量が等しいときはともかく. ,. ければならない.在庫品の購入というオペレー ティンバ・キャッシュ・フロ. 一に税金を含めた. キャッシュ・フローを ,在庫品評価方法がどの ,.
(4) 18@ (232). 横浜経営研究. 第Ⅲ巻. 在庫量が増減した 場合,その配分のあ りかたは. 第 4 号 (1991). は,そのキャッシュ・フロ 一の配分のあ りかた. .期末の需要が 期首時点の見積りどおりであ 在庫 量も 「適正 ったとすれば ,当然に,期末の 在庫水準」となる・ 本稿では, この状況をべン. を見てみよう.. チマークとする. この状況で LlFo. それほどあ きらかなことではない. つぎの節で. る. と FIFO. とによってそれぞれ 在庫品を評価したならば , Ⅲ. 1). その期のキャッシュ・フローや. 在庫主増減の 影 審. 基準状況. ここでは,在庫の積み増し取り 崩しと. 上ヒ駁. されるべンチマー ク (基準状況 ) を設定し. そ. のべンチマークのもとで ,財務会計上も税務会 計上も同一の 在庫品評価方法をもち い るものと して, FIFO. と. LIFO. のそれぞれのキャッシ. 期間利益は第 1. 図のようになる. まず, LIFO によって在庫品を 評価した場合 には,期首と期末の在庫量が等しければ,たと えそれが「適正在庫水準」ではなくても ,在庫 品購入に要したキャッシュ・アウトフローがす べてその期の 費用となる. その結果,税金支払 額を除いたネット・キャッシュ・フロー (以下,. ュ・フロ一の 年度間配分のあ りかたを整理する. これを税引前ネット・キャッシュ・フロー. 具体 りな考察にはいるまえに ,議論の焦点を 明. (IIr 二 NC), 税 別後利益と税引 後 ネット・キャッシュ・フロー とは等しくなる (IIT* 二 NCI,*). ここでは, h だけの実現保有利得が 年度利益から 当面は除 かれ,課税されないまま含み益として 将来に繰 り越されることになる. 他方, FIFO の場合には,過去の 期のキャッ. 自. 確にするため ,. この節でもちいる 二組の仮定を. 示しておきたい. ひとつは,財務会計上の期間費用および期間 収益は, すべてその期の 現金資金 ( キャッシ ュ ) の収入,支出をともなうという 仮定であ る. ぶ). と 税引前利益とは. と呼. 等しく. 在庫品の売買はもちろん ,資本設備にかんする 期間費用も, その期にキャッシュ・アウトフ ローとして生じ ,かつ,その 額は毎期一定とす. 配分され,当期のキャッシュ ,アウト プ ロ一の. ただし期末の 手持ち在庫品にかかる 変. 一部は, 翌期以降の費用として 配分される. た. る 6),. 、ンュ ・アウトフローから 優先古りに当期の 費用に. 動的な保管費用は 在庫品の取得原価に 算入され, その期の利益計算からは 除かれるものとする. もうひとつは ,在庫量の増減にかんするもので あ る・ ごく短い期間を 一会計期間とし 在庫品 の購入は期首時点で 期末の需要量を 見積もって 一括的に行うものと 仮定する・他方,在庫品の 売却は期末時点でのみ 行われるものとする. こ のように一期間の 途中では在庫品の 売買がいっ さい行われないと 仮定することによって ,在庫. とえ期首と期末で 同一の在庫量を 保有していて も,在庫品購入価格の上昇の影響を ぅ けて,期 末の在庫品評価額は ,期末在庫に 生じた実現 保 有利得の分だけ 期首のそれよりも 大きくなる. その結果, FIFO の場合の税別前利益は LIFO に比べてその 保有利得の分だけ 大きくなる (n L 二 nF 十 h). 同様に,税別双利益は税引前キ ャッシュ・フローよりも 期末在庫の実現保有利 得 の 分 だけ大きいのであ る (IIF=NCF+h).. 量 増減の影響は よ り明確になるはずであ る. な. 課税所得の大小にかかわらず 税率 (,) が一定. お,在庫品の購入価格は継続的に 上昇している. と仮定すると ,当然,税金支払額はその 実現保 有利得にかかる 分だけ LIFO よりも大きい (TPF 二 TP,+ h) 乃 在庫品口を FIFO で評価した場合, こうした期 間利益とキャッシュ・フローとの 関係は,税金 を支払った後にも 成立する.税別後利益は 税引. ものとする.. 以上のことを 前提としたうえで ,前期から繰 り越された期首の 在庫量が「適正在庫水準」で あ ったとしてみよう ,. この「適正在庫水準」は ,. 税 負担を考慮しないで 決められているものとす. 「. ・.
(5) 在庫品の評価と 在庫管理 (大日方. 後 ネット・キャッシュ・フローよりも. 実現保有. 隆). (233) 19. 基準状況と同一の 数値になる・つまり ,. これら. 利得の分だけ 大きい (IIF,二 NCF*+h).. 税別. の数値は在庫 量 増減の影響をまったくうけない. 後利益と税引 後 ネット・キャッシュ・フロ. 一に. のであ. ついて LIFO. と FIFO. とを比べてみると ,. い. (IIF*=ni*+(1. NCF*=NCi,. 一丁. h).. 較して FIFO. は , h だけの実現保有利得を 期間. 一. 「. これにたいして ,. ネット・キャッシ. ュ・フローは , 積み増しの場合には 追加的な現. ずれも期末在庫の 実現保有利得に 課税される 分 だけ 違 いが生じる. る・. 金支払 額 。 a) だけ減少し取り 崩しの場合に. )h,. は 現金節約 額 (m) だけ増加することになる.. と比. このことは, 税別前であ っても税別後であ って. ここでは, LIFO. も同様であ る, ここでは, FIFO. を用いた場合. 利益に算入しそれに 課税される結果,税別後. には,在庫数量の増減は期間利益にまったく 反. 利益を (1. 映されないことを 確認しておこう.. 一. 「. )h だけ増加させ ,. ト・キャッシュ・フローを「. 税別後ネッ. h だけ減少させる. 3). ことを確認しておけばよ い であ ろう.. 2). 在庫量が増減した 場合の FIFO. ノ. ン ユ. ・. に よ る在. による在庫品の 評価がキャ. まず,在庫積み増しのケースを 見てみよう. 在庫の積み増しが 行われた場合,税別双キャッ. フローや期間利益にあ たえる影響を 検. 討しよう・その 際,前節の基準状況と ヒ校 する ため,前期から繰り越された 期首の在庫 量憶 「適正在庫水準」であ ったとして議論を 進める.. 、ンュ. 上. 一般に,在庫量が増減するケースとしては. なる代わりに ,期首の購入量 のうち過剰 分が,. 積み増された 在庫品の評価額 (b) として翌期. (期. 以降に繰り越される・その. 首 ) の購入量がすべて 売却された後, さらに追 加的に在庫品を 購入したものとする 8,.つぎに, 在庫の取り崩しが 生じるケースについては ,期 首時点の購入量が 不足していたにもかかわらず. 期末時点では「適正在庫水準」までの わなかったと 想定する・なお ,. 握されない. ( その期の利益の. ,. 補充を行. この積み増しと. 取り崩しのいずれのケースにおいても 失 であ るストック・アウト・コストは. しかし. LIFO と FlFo とでは大きく 異なる. LIFO の 場合には,追加的に 購入した 分 (a) が費用と. ,. まず,在庫の積み増しが. 生じるケースとして ,期末時点で, 当期. の場合とかわりはない・. その積み増しが 期間利益にあ たえる影響は ,. るが,両者についても,前節の諸仮定と 同様. に 規定しておきた い ,. ・フローが追加的支出 分 (a) だけ減少す. ることは FIFO. 在庫の積み増しと 取り崩しとの 二つのケースが あ. によ る. 在庫品評価 LIFO で在庫品を評価すると ,在庫の積み増 し 取り崩しがあ った場合の諸数値は 第 3, 4 図のようになる.. 庫品評価 つぎに,期首の在庫 量と 期末の在庫 量 とが異 なる場合に, FIFO. 在庫量が増減した 場合の LIFO. 結果,税別前利益は ,. 積み増された 在庫分の当期中に 生じた実現保有 利得 (a 一 b) だけ減少する・ 支払税額も , そ の 実現保有利得にかかる 分 (, (a 一 b)) だけ 減少することになる・ 以上のことから ,購入価 格が上昇している 局面では,追加的購入による 在庫の積み増しは 節税効果をもっていることが. ,機会損. わかる.. 会計上把. しかし こうした積み 増しによる節税額は , 同時に生じている 税引前利益の 減少額よりも 小. 減少としては 現れ. ない ) ことに注意しておこう.. さい・. 上述したような 在庫の積み増し 取り崩しが あ った場合に在庫品を FIFO で評価すると ,基. それよりも ( 1. したがって,税別後利益は,基準状況の 一. 「. ) (a 一 b) だけ圧縮されるこ. とになる 91. これと同様に ,税別後キャッシ. 準状況で検討した 諸数値は第 2 図のようになる. ュ. 積み増しと取り 崩しとのいずれの 場合にも,税. 果 よりも追加的な 購入支出のマイナスの 影響の. 別前利益,税金支払額 ,税別後利益の三つは,. ほうが大きく ,基準状況に上 ヒ べて (l 一 T)a+. ・フロ一についても ,積み増しによる節税 効.
(6) 20 (234). 横浜経営研究. 第 4 号 (1991). 第 Ⅲ巻. rb だけ減少するのであ る.税別後 ネット・キ. いう問題に十分に 答えることができない.. ャッシュ・フロー と 税引 後 利益との関係を 見て. では,企業の所有者が経営者であ る場合と,所. みると,当期に支出されたが 当期の費用となら なかった部分,すなわち,在庫の積み増しとし て次期以降に 繰り越された 額 (b) だけ,両者 の あ い だには差が生じることになる (nl,* Ⅰ ). 有者と経営者とが異なる場合とに 分けて,議論. 二 NCi*(+)+b).. うに行動する.持分証券の市場での評価を 議論. つぎに,在庫の取り崩しのケースを 検討しょ う・ このケースは ,すでに見た積み増しの ケ一. から除くとすれば ,在庫の保管から生じる正味. スと 対照的であ るので,重要なことだけをごく. 簡単に述べておく.在庫品の購入価格が継続的. 小 化する在庫量が ,経営者すなわち企業の所有 者にとっての 最適な在庫 量 であ る・ここでは ,. に上昇している 場合には,期首在庫が 取り崩さ. 議論を簡単にするため , 税 負担を含めた 一期間. れると,税別前利益も税別後利益もともに 増加 する・それは ,取り崩された在庫 量 に生じてい た 実現保有利得 (m 一 n) が税別前利益に 算入. の 保管費用を最小化させる 在庫水準を考え ,そ れを「最適在庫 量 」と呼ぶことにする. ここで. されるためであ る. その結果,税金支払額は増. 加するが,購入不足を 在庫の取り崩しで 補った. おけるその「最適在庫 量 」が,税金を考慮しな いで決定される「適正在庫水準」とどのように. ため,税別後ネット・キャッシュ・フローは基. 異なるのかということになる.. 準 状況よりも増加することになる 二 NCT*(-)+(1. 一. 「. )m+Tn).. を整理してみたい ,. 1). 企業の所有者が 経営者であ る場合. この場合,経営者は企業価値を最大化するよ. キャッシュ・アウト プ ロ一の現在割引価値を 最. 0 間 題は ,. (NCT*(-) この取り崩し. ここ. それぞれの在庫品評価方法のもとに. まず, FIFO. の場合には,前節の 考察から判. 明するように ,「適正在庫水準」を 維持しても,. の場合にも,先の積み増しの場合と 同様に,税. あ るいは在庫の 積み増しや取り 崩しを行っても ,. 別後 ネット・キャッシュ・フロー. 後 利益. 税金支払額はすべて 同額であ る. 税 負担の有無. とのあ いだには取り 崩された在庫品の 評価額だ. は在庫量の決定に 影響をあ たえないのであ る.. けの差が生じる. (n ,* (-) 二 NC,*. と 税引. (-) 一 n).. したがって, FIFO. を採用しているときの「最. を検討した・ここでの 検討課題は,そのキャッ. 在庫を取り崩すのが 合理的な行動であ る. しか. Ⅳ. ュ ・フローをどのように 年度間に配分するのか. 適在庫 量 」は,税金を考慮しない「適正在庫水 準」と等しい・ むろん,在庫に投下した資金の 機会費用を上回るだけの 保有利得が期待できる ことが期末になって 判明した場合には ,期首よ りも在庫を積み 増すであ ろう・ あ るいは,期末 時点で需要量の 減少が予測されるならば ,期首. 在庫品評価方法が 在庫管理にあ たえる 影 T. 前節では,在庫数量が 増減する状況にそくし ながら, FIFO. と LIFO. とはそれぞれキャッ 、ン. -ンュ ・フロ一の配分のあ りかたの 違 いが在庫 管. し. それらはいずれも , 期末時点での 予測の修. 理 にどのような 違いをもたらすのかということ. 正にもとづく「適正在庫水準」の. であ. そうした在庫管理活動を 考慮にじれても ,. る・. 第. 2. 節でも述べた よう に, これまでの. 改訂であ る. 「適. 「適正在庫水準」にかんする 議論では,税金が. 正在庫水準」が「最適在庫 量 」でもあ ることに. 在庫費用から 除かれていること ,および株主と. かわりはない.. 経営者との利害対立が 考慮されていないために ,. 他方, LIFO. 「適正在庫水準」がはたして 株主にとって 最適 な在庫 量 であ るのか,あ るいは,経営者は「適 正在庫水準」を 維持するために 行動するのかと. と「最適在庫 量. の場合には, 「適正在庫水準」 」. との関係はどうなるのであ ろ. うか・そのことを 確かめるには , FIFO での「最適在庫 量. 」. (二. のもと. 「適正在庫水準」. ). と.
(7) 在庫品の評価と 在庫管理 (大日方. (235)@2]. 隆). LIFO を採用していれば ,購入価格が上昇を続 けているかぎり ,手持ち在庫量を増加させるこ とによって税金支払 額 そより減少させることが できる. その節税による 保管費用の減少の 程度 は ,実効税率,および 期末在庫の実現保有利得 を左右する在庫品購入価格の 上昇率と期末の 手. 合 には,経営者が企業価値を最大化する 2 3 に 行動するという 保証はな い .経営者は自己の効 用を最大化するために 行動するのであ り,場合 によってはその 行動が企業価値の 減少をひき起 こし株主に損害をあ たえることもあ ろう・ 株 王 にとっての関心は ,経営者の行動をどのよう にして企業価値の 最大化に向かわせるかという. 持ち在庫 量 ,. ことにあ る, 株王は ,. LIFO) のもとでのそれとを 比較しでみればよい. これらの. 3. つの要因に依存する. 10,.購入価格の 上昇率と実効税率とを 与件と すると, LIFO の採用による 節税額は手持ちの 在庫数量に正上ヒ 倒 することになる ,. い ま, 税 負担を考慮しない「適正在庫水準」 よりも. 1. その場合, 「適正在庫水準」のときょりも 税金 上昇するものの. 害とを一致させるために. ,. さまざまなインセン. ティヴ・プランを 設定するであ ろう.すでに述 べたように, そのインセンティヴとしてしばし ば注目されているのは ,経営者報酬制度であ る. 単位だけ在庫を 多く保有するとしょう. を 考慮しない保管費用は. 自分の利害と 経営者の利. ,節税. 額がその上昇分を 上回るならば , 税 負担を含め. た総保管費用は「適正在庫水準」のときよりも 減少するのであ る. LrFo のもとで保管費用を 最小化するという 前提では,税金コストを考慮 した「最適在庫 量 」は , 少なくとも「適正在庫. 水準」よりも 小さくなることはない・ 単純化し ていうと,在庫投資額の増大にともなって 累進 的に逓増する 機会費用が節税によって 補われる ならば,「最適在庫 量 」は「適正在庫水準」よ りも大きくなるであ ろう,実際,FIF03 を採用 している企業よりも LlFo を採用している 企 業のほうが手持ち 在庫量が大きい 傾向にあ ると 指摘する研究調査もあ る 111. もちろん, ここで議論しているのは ,期首と 期末とで同一量を 保有する場合の 最適な在庫 量 であ る.前節であ きらかにしたよ う に, たんに 節税だけを目的として ,適正な在庫を超えて 追. 本稿では,議論を単純 とするため,年度の 税 イ. 引 徳利益に上 ヒ倒 した現金ボーナスが 経営者にあ. たえられるという 報酬制度を仮設して ,経営者 の短期的な行動に 焦点をあ てることにするⅨ. そのような現金ボーナス 制度を設定しても , 経. 冨 者は,株主にとっての「最適在庫量 」を維持 する積極的なインセンティヴをもっていない. ,. その場合に,採用する在庫品評価方法があ らか じめ定められているならば ,経営者はどのよう な在庫管理を 行うのであ ろうか・ つまり, 最 適 在庫 量 」は維持されるのであ ろうか・ その在 庫管理によって ,株主の経済的な利害はどのよ うな影響をうけるのであ ろうか・ FIFOJ と 「. LIFO について, この 2 仮を検討するのがここ での課題であ る. まず, FIFO. を採用している 場合には,利益. を目的として ,経営者が在庫の積み増しや 取り崩しを行うことはないであ ろう・ FIFO) の. ヰ栗ィモ. もとでは,期末の在庫数量を操作してみても. ,. 期首在庫を積み 増すか取り崩すかということと. 税別後利益は 変化しないのであ る・ この点では, 経営者が「最適在庫 量 」を維持することを 株主 は消極的ながらも 期待できる. ただし この場 合には,株主が公表財務諸表から 在庫管理のⅡ・大. は べ つの問題であ る. ともあ れ, ここでは, 選. 呪 る モニターするのには 限界があ. 択 する在庫品評価方法によって「最適在庫. 庫の取り崩しや 積み増しが 生,じても, FIFO). 加 的に在庫投資をすることは. , けっして企業価. 値を高めない.維持すべき在庫量の大きさと ,. 量. 」. が異なってくることを 確認、しておこう・. 2). 企業の所有者と 経営者とが異なる 場合 企業の所有者 (株主 ) と経営者とが 異なる 場. よ. る・. もしも 在 に. る在庫品評価額の 増減には在庫品数量の 変化. 分 と購入価格の 変化 分 とが混在しているため ,. 公表財務諸表だけでは 在庫操作の存在を 把握で.
(8) 22@ (236). 横浜経営研究. きない・株主が「最適在庫 量 」の維持を積極. 第 Ⅲ巻. 由. り. 第 4 号 (1991). 場合とでは,利益を年度配分するための 在庫操. に望むのであ れば,公表財務諸表以外の手段に. 作のあ りかたも異なるであ ろう.本稿ではさし. よって在庫の 管理状況をモニターする 必要があ. あ たり前者しか. ろう.. たとおりであ る.. つぎに, LIFO. 扱っていないのは ,すでに述べ. の採用があ らかじめ定められ. もうひとつは ,経営者報酬制度における報酬. ているならば ,経営者はどのような在庫管理を. の 決めかたであ る.株主が報酬額の算定を工夫. 行うのであ ろうか・前節でみた よ うに,価格上 昇下で LIFO を採用した場合, 税別後利益は. することによって ,経営者の在庫管理行動をコ. 在庫の積み増しによって 減少し取り崩しによっ. たような在庫品評価方法の 特質は,ただちに,. て 増加するのであ った・ その特質を利用して ,. それぞれの方法の 欠点を意味しているわけでは. 経営者は,在庫操作を通じて受取報酬額を 自分. ない・制度上採用できる 評価方法があ らかじめ. の期待する額に 近づけることができる. たとえ. 定められており ,. ば,当期の報酬を増やすのであ れば,在庫のす べてを取り崩してしまえばよい. 当期と翌期の 報酬を平準化したいと 考えるのであ れば,在庫 の積み増しと 取り崩しとを ,適宜,使い 分けれ. いのであ れば,私的な報酬契約のほうを 工夫す ることが株主にとっては 合理的な行動なのであ. ばよい・. LIFO. で在庫品を評価していると. ,. そ. ントロールすることもできょ. る. ぅ. .. これまで述べ. それが短期的には 変更されな. 13). ここまでは,税別後利益に単純比例してあ た. えられる経営者報酬制度を. 前提とし主として. うした在庫操作によって 利益を年度間に 配分し 直すことができるのであ る. そのような在庫操作によって ,企業のキャッ. 経営者の在庫操作へのインセンティヴを. 、ンュ ・フローは変化し. 報酬額を増減させることができるため. 株主の経済的な 利害は. 影響をうける.最適な一定在庫が維持されてい る場合に比べて ,在庫の積み増しはネット・ キ マッシュ・フローを 減少させ,企業価値も減少. FIFO た・. と. LIFO. LIFO. とのそれぞれものもとにおける. 検討し. の場合には,在庫操作によって 受取. ,利益操. 作の手段として 在庫量を操作する 可能性があ. る. ことが判明した・ 株主は,経営者が適切な在庫 管理をするようにコントロールするために ,報. させる・他方,在庫の取り崩しはその 期のネッ ト・キャッシュ・フローを 増加させる・ しかし その増加が株主にとって 持分価値の増加をもた らすかどうかは 疑わしい. 「最適在庫 量 」の取. 酬支払という 成果分配のルールそのものを. り崩しはストック・アウト・コストを 生じさせ, 将来に期待されるキャッシュ・フローを 減少 さ. 選択された在庫品評価方法が 経営者の在庫操作 インセンティヴにあ たえる影響だけが 問題では. せるであ ろう・短期的に 税引 後 利益を増大させ. なく,そのことが株主の持分価値にどのような. るための在庫操作は ,. 影響をあ たえるのかが 問題なのであ る.. かえって企業価値を 下落. ,. 工夫. するであ ろう. そうしたコントロールにあ たっ. て,追加的なコストが生じることなく 在庫操作 を. 防止できれば ,株主の持分価値は減少しない. させかれない・ 在庫の取り崩しも ,最適な水準 を下回れば,株主の利害を害することになる. もちろん,経営者がどの程度在庫を操作する. 額の増減として 現れる・株主にとって ,. かは, つ ぎの二つぼ依存するであ ろう. ひとっ. とはモニタリンバ・コストが. は,経営者がどのような受取報酬の流列を 望む. も 削減されることを. のかという,経営者の報酬にたいする 選好であ. 庫品評価額の 増減を報酬額の 算定に利用しても ,. る・黄肌報酬額の 短期 りな最大化を 目的にする 場合と, 長期的に最大化することを 目的にする. 在庫操作によって 株主が負担しなければならな いコストをゼロにできる 保証はない. 残余損失. 自. LIFO で在庫品を評価しているならば ,在庫 数量の増減は 必ず公表財務諸表上の 在庫品評価 FIFO. このこ. の場合 よ. り. 意味している. しかし在.
(9) 在庫品の評価と 在庫管理 (大日方. (ResidualLoss)が存在するわけであ. る. 14,. 他. 方,公表財務諸表以外の手段によって 在庫の管. (237)@ 23. 隆). さしあ たり,準備作業としての意味をもってい る. 理状況をモニターした 場合は, そのモニタリン グ・コストが FIFO. と同じになり ,経営者に在. 庫操作へのインセンティヴを 生じさせる FIFO. のほうが,株主の持分価値を減少させる 可能性 は高 い. ここには,局地的な成果分配ルールを. ・. V. 税法規定と株主の 利害 ( 一一方法の選択. 前節までは, 税務会計で LIFO. LIFO. 操作しても解決されない 問題,すなわち会計 ルールをめぐる 重要な問題が 存在している. 在. 場合には財務会計においても. 庫 に固定在高が 存在しない場合にも LIFO. べたように, わが国でも米国でも ,. 採用を認めている 会計ルールが , シー. ・. の. エイジェン. コストを生じさせているのであ. を選択する を選択す. るものとして 議論を進めてきた. はじめにも 述 そうした選. 択が税法によって 義務づけられているからであ る, この節とつぎの 節では,その税法規定の影. る 15). 一般に,在庫品の購入価格が上昇している 場 合, LIFO の選択による 節税メリットを 考え れば, FIFO よりも LIFO のほうが株主にとっ ては好ましい. しかし経営者の 在庫操作を防 ぐためのインセンティヴの 提供は,その節税メ. 響について考える.在庫品の評価について ,. い. Confor ㎞ ty Rule (以下では, たんに一致原則という ) は株主の. わゆる確定決算主義ないし. 経済的利害にどのような 影響をあ たえるのか, それが以下での 検討課題であ る.. の場合よりも. まず, この節では,経営者は在庫量の操作を しないものとして ,在庫品評価方法の選択だけ. る, それどころ. を考察対象とする.株主と経営者とのあ い だに. の採用によって , かえって株主の 持. 利害の対立があ る場合に,経営者はどの評価方. LTFO に節税. 法を選択するのであ ろうか.議論の単純化のた. リットを消失させかれない・. 必ずしも, LIFO. の 採用が株主の 持分価値を FIFO 増加させるとはいえないのであ か, LIFO. 1 ). 分価値は減少するかもしれない.. 効果があ りながら,実際には, LTO ない企業もあ. る・. を採用し. その評価方法の 選択は,株主. め, ここでも前節と 同様に,税別後利益にリン ク した経営者報酬制度が 設定されているものと. にとって不合理であ るとはいいきれないであ ろ. しよう.その場合,前節で触れたように ,経営. う・経営者の 在庫操作が制限されないかぎり. 者は受取報酬にたいする. 株主はその節税メリットを. ,. 十分に享受すること. 自分の選時にしたがっ. て,年度によって在庫品評価方法を 使い分ける であ ろう. たとえば,在庫品の購入価格が上昇. ができないこともあ るからであ る.. 者の在庫管理を 株主がコントロールする 方法は. しているならば ,税別後利益を増加させて報酬 を増やしたいときには FIFO) を選択すると 予測 できる.他方,株主にとっては ,税金コストを. 異なってくる ,. 削減するように ,税別前利益をできるだけ小さ. このように, どの在庫品評価方法を 採用する かによって,在庫管理のあ りかた, および経営 そうした違いは ,. それぞれの 評. 仙方法のキャッシュ・フロ 一の配分のあ りかた. くする FIFO の選択が望ましい. このように,. の違いとともに ,株主と経営者との利害の不一. 一致原則は,在庫品評価方法の選択にかんして ,. 致にも起因している.双節ではキャッシュ・フ. 株主と経営者との 利害対立をいっそう 複雑なも. ロ一の配分にかんする lJIFo. のにしている.. 式 的な比較を試みたが ,. と. FIFO. との形. この節では,前節の分. こうした利害対立は ,経営者報酬制度を工夫. 析結果を具体 りな利害状況のなかで 捉え直した. することによって ,. わけであ る. ここでの考察は ,具体りな利害状. できる. たとえば,在庫品の購入価格が上昇し ている局面では ,報酬額を算定する際に税引 後. 自. 自. 況のなかで税法規定を 検討することにとって ,. あ る程度は緩和することが.
(10) 24@ (238). 横浜経営研究. 第 Ⅲ巻. 利益に乗じる 係数を FIFO を選択した場合には 小さく LTFO を選択した場合には 大きくし 選択された評価方法に 応じて報酬額の 算定を変. タ. 第 4 号 (1991) レスト・カバレッジ・ ワ シ オ の維持などを 社. 経営者に特別ボーナスを 支払ってもよいであ ろ う・前述したように ,制度上は一致原則が 固定. 債発行企業と 契約する.社債発行に 一定の制限 を課している 通情基準や債券の 格付けも, ここ では財務制限条項と 同様に考えてよい、 8). その ょう な財務制限条項は ,営業利益,経常 利益,税別後 利益など財務会計上の 多段階の利. 化されているならば ,上ヒ較 的に柔軟な報酬契約. 益にかんする 財務比率を規制することが 多 い .. のほうを操作すればよいのであ る・実際に,在 庫品評価方法の 変更に際してそのように 報酬 契. もしも報告利益の 水準が低下して 契約に定めら れた規制に抵触することになれば,将来,企業. 約 が変更されることは ,経営者報酬制度の存在. の 資金調達コストは 上昇したり,資金調達に 障. が在庫品評価方法の 選択にあ たえる影響を 調べ た実証研究でも 報告されている ,6). その ょう に報酬額の決めかたを 工夫すること を 通じて,株主は ,節税メリットがゼロになら ない限度で,節税のための在庫品評価方法を 選 択するようなインセンティヴを 経営者にあ たえ. 害が生じて有利な 投資機会を逸する 可能性もあ る・あ るいは,本業における利益水準の低下を 設備資産の売却などによって 補わなければなら ないとすれば ,主観のれんの消失などの追加的. えればよい・. LIFO. の選択を動機づけるように. ,. ようとするであ ろう.そのようなインセンティ ヴの提供が必要であ ることは,経営者を株主の 利害に沿って 行動させるためのエイジェン "ノー ". コストが生じることを 意味している. 経. 営者報酬に影響をあ たえる財務会計上の 在庫品 評価方法と,課税所得計算におけるそれとを 独 正 に選択することができれば ,株主と経営者と の利害対立は 緩和され,株主が負担するコスト も減少するはずであ る・換言すれば ,そうした 在庫品評価方法の 自由な選択を 制限している 一 数原則はエイジェンシー・コストを. 増大させ,. 株主の持分価値をそれだけ 減少させているので あ る. これまで述べてきたような 経営者報酬制度の. なコストが生じることもあ. ろう・いずれにせよ ,. 財務制限条項に 違反しかれない 利益水準の低下. は,企業価値を減少させるのであ る, したがっ て,財務制限条項が設定されている 場合,株主 は ,名目上,報告利益をできるだけ 高めるよう. な在庫品評価方法の 選択を望むであ ろう. しかしその一方で ,余分な税金コストを 削 減するためには ,課税所得を小さくする必要が あ る・在庫品の 購入価格が上昇しているときに は,課税所得の計算にあ たって LIFO を採用 すれば. よ. い・ ところが,その場合,一致原則に. よって財務会計上も LIFO. の採用が義務づけ. られるため,節税目的による LIFO の採用は , 負債契約上 ア 問題となる財務会計上の 報告利益 の水準までも 低める・株主と 経営者との利害対 立をこの場合は 問わないとすれば ,株主は,. ほか,利益情報が制度的な利害の 調整に利用さ. FIFO を採用して財務制限条項違反を. れている場面では ,その制度的な仕組みを通じ. それとも LIFO. て, どの在庫品評価方法を 選択するかが株主の. 受するか, どちらかを選択しなければならない. 利害に影響をあ たえることがあ る.報酬制度の. 株主は,契約違反のコストと 税金コストとを 駁 して, コストを最小化する 在庫品評価方法を 選択するであ ろう.. ほかに, これまでしばしば 取り上げられてきた. のは,財務制限条項である. 17).たとえば,社. 免れるか,. を採用して節税メリットを 享. 上ヒ. 債の発行に際して ,社債権者は,債務の償還リ スクが高まるのを 避けたり債券の 市場価値が下. この点について ,財務制限条項が在庫品評価 方法の選択にあ たえる影響を 調べたりくつかの. 落するのを避けるために ,配当制限を課したり. 研究のなかには ,興味深い実証結果を 示してい. 一定水準の年度利益の 維持 や ,負債上 卒やイン. るものがあ. ヒ. る・. それによると ,財務会計上で.
(11) 在庫品の評価と 在庫管理 (大日方. LIFO. を採用している 企業は , 他の企業に比べ. (239)@25. 隆). 題 なのであ. る・. この問題をつきつめれば ,租税. て相対的に業績がよかったり ,財務体質が健全 であ ると報告されている 19). 財務会計上で LIFO を採用しないかぎり 税務上は LIFU を採 用できないから ,その実証結果は,業績が不振. 政策としての 一致原則が,制度創設の建前と実 質とで異なった 意味をもっていることに 行き着 { 代替的な方法 ほんらい,租税政策上,複数の. で 財務状況が悪化している 企業は税務会計上で. のなかから,課税所得の計算に用いる 方法の選. LIFO を採用しない 傾向にあ ることを指摘して いるのであ る,負債契約に違反したときのコス トが非常に大きく ,財務制限条項を遵守するこ. 択を企業に任せるのは ,企業自身の 自由意思を 尊重するということに 趣旨があ るといわれる. とくに, わが国では,確定決算主義の趣旨とし. とが企業にとって 緊急の課題であ れば, たとえ. て ,株主総会で確定されることを 通じてその自. 税金を多く支払っても ,年度利益を 当面増加さ せる評価方法を 選択することは 十分に考えられ る・一致原則があ るために,配当財源や財務比. 由意思がはじめて 確認できると 解説される. 申 告納税制度によって ,徴税コストのあ る部分が 当の企業に転嫁される 代償として,会計方法の 選択権 があ たえられているともいわれている. 率に余裕がないかぎり ,. 節税を目的とした. LIFO の採用は制限されてしまうのであ る. こうした一致原則による LIFO 採用の制限, は, じつは,非常に重要な問題を 含んでいる.. 22', いずれにせよ ,そこでいわれている自由. 財務制限条項が存在しそれに 違反した場合の コストが大きいとき ,好業績の企業は節税が可. 在庫品評価方法の 選択に制限を 課した一致原則 が ,課税の公平性について疑問を生じさせ ,株. 能であ るのにたいして 業績の悪い企業は 節税手. 主にコストを 負担させている.全き 刊青軸に多様. 段を利用できないことが 問題であ る・そこでは ,. な利害が結びついている 状況では,一致原則は ,. 実質的に,逆進的な課税がなされることになる.. 自由な, もしくは, コストを生じさせない 選択、. もし税務会計と 負債契約に利用される 財務会. を許しているわけではないのであ. は,画一的方法の強制と上 ヒ駁 したものであ る. しかしそうした 建前とは裏 腹 に,実質的には,. 討 とで異なった 在庫品評価方法を 選択すること. ができれば,企業業績の 良否にかかわらず ,等 しくすべての 企業に節税機会があ たえられるで. たとえ実効税率が 課税所得とは 無関係 に 一定に定められていても ,財務制限条項が存 在する場合には ,一致原則が不公平な課税をも たらすわけであ る 20,. あ ろう・. 一般に,課税の公平性として ,水平的公平と. る.. むしろ,一致原則の実質的な意味は ,節税機 会の制限を通じて 税収を確保することや , 申告 納税制度の最大の 課題であ る課税所得捕捉率を. 向上させること ,および財務会計のために整備, 体系化されている 取引記録を保存させて 税務調 査コストを削減することなどにあ るといってよ い. 実際に,米国で 1939 年にこの一致原則が 立. 法化された際の 記録を詳細に 調べた研究では ,. 垂直的公平とが議論される.双者は ,等しい状. 立法当事者は 税収確保を目的としていたとされ. 況 にあ るひとびとは 等しく取り扱われるべきで. る. あ るという公平原則であ. 財務会計上で 報告利益を増大させてあ. Ⅱ大呪にあ. り,後者は, 異なった. るひとびとは 異なった取り 扱いをされ. るべきであ るという公平原則であ る コ .. ここ. での公平性の 問題は,前者の水平的公平性にか. , 3). 極端な言い方をすれば ,一致原則は, る種のメ. リットを享受したければ ,税金コストを負担す ることを要求しているのであ. る.. もちろん, ここでの議論から , ただちに,一. かわる.逆進的課税そのものが 問題というより. 致原則を廃止すべきだということにはならない. も, むしろ,在庫品評価方法の選択にかんして. 税法規定の評価は ,租税政策や産業政策などの. 節税機会が不均等になることのほうが 重要な問. 政治 りな要素も含めた 自. ぅ. えで,総体的になされ.
(12) 26@ (240). 横浜経営研究. 第 4 号 (1991). 第 Ⅲ巻. なければならないからであ る. しかしそうし. っては望ましいことになる.. たト一 タか な評価は , 個々の問題の 検討結果を. 経営者の在庫管理行動が議論から除かれていた・ ケース 2 のように評価方法を 選択しても,在庫 量の操作によって 株主の利害が 害されるのであ. 積み重ねて得られるものであ 面でのコストとべネフィットを. り, さまざまな側 考えなければな. らない.財務会計における在庫品評価方法の. 選. 択という限定された 局面ではあ っても,具体 り な利害状況, とりわけ複数主体の 利害が絡み合 自. そこでは,. しかし. れば,それは株主にとって. 望ましい選択肢では な い .すでに第4 節で見た よう に, ケース 1 で. は経営者が在庫量を 操作する危険があ り,それ. っている状況では 一致原則が意覚に 重要な問題. を防止するためのエ. を生じさせているのであ る,前述のようなメリ. 主の持分価値を 減少させたのであ った. したが. ット を一致原則がもつことを 認めるとしても ,. って, ケース. それが株主の 負担するコストと 比較してもなお 尊重されるものであ るのか,あるいは,そうし た租税政策目的の 達成手段として 一致原則は最 適 であ るのか,税法規定の評価はそうした 点ま. かが検討されなければならないのであ. 税所得の計算には 同じ在庫品評価方法を 用いて. でも含めてなされなければならない.. いるため,在庫量の増減にかかわらず ,税別後. 2. イ. ジェンシー・コストが 株. がそうした状況を 改善するか否 る.. まず,第 3 節で取り上げた 会計諸数値につい て確かめてみよう. ケース. 1. もケース. 2. も,課. キャッシュ・フローは 等しい. それは,在庫の 2. の操 生め 株主 と庫. 税. Ⅵ. 積み増しによって 減少し取り崩しによって 増 加するのであ る.他方,税別前利益と 税引 後利. この節では,財務会計および税務会計で採用 する在庫品評価方法があ. らかじめ定められてい. 益 にかんしては ,ケース1 とケース. 2. とではお. おきく異なる. それを示したのが 第. 5. 図であ. 第. 3. 節でみたように , ケース. 1. る. では, 税弓 l役利. る場合,その評価方法によって 経営者の在庫管 益は在庫の積み 増しによって 減少し取り崩し 理活動がどのような 影響をうけるか ,その結果, によって増加する. これにたいして , ケース 2 株主の持分価値はどのように 変化するかを 検討 では,積み増しは税引 後 利益を増加させ ,取り する.一致原則は,税務会計上で LIFO を採 崩しはそれを 減少させる,財務会計上は FIFO 用したときに 財務会計においても LIFO. の採. 用を義務づけるものであ る. この規定の影響を 確かめるためには , を 採用した状況. (以下,ケース 1. という. それに違反して 税務会計上は LIFO 財務会計では FIFO. LIFO. そのとおり両方とも. を採用した状況. ). と,. を採用し (以下,. を使っているため ,税別前利益は在庫増減の影. 響をうけない ,積み増しによる税額の減少と 取 崩しによる税額の 増加だけが,税別後利益に 反映されることになる. り. このように在庫の 増減に応じて 税引 後 利益が 変化するならば , ケース. 2. では,経営者はどの. ケース 2 という ) との二つ る上ヒ致 してみれば ょ. ように在庫管理を 行 う のであ ろうか.経営者の. い ・なお,ケース 2 にかんして,本稿では税 効. 短期的な行動を 考えるにあ. 果会計の適用は 考えないことにする.. 税別後利益に. 前節での考察から ,一致原則は在庫品評価方 法の選択にかんして 追加的なエ イ ジェンシー・. 者にあ たえられると. コストを生じさせること ,および,節税機会を 企業間で不公平にする 可能性があ ることが判明. した・そのかぎりでは ,上記のケース 2 のよう に在庫品評価方法を 使い分けることが 株主にと. たって,ここでも,. 単純上 ヒ倒 した現金ボーナスが. 想定しよう.. 経営. 受 敗報酬額を. 増やしたいときには ,経営者は,在庫の 積み増 しを行うであ. ろう.株主がそれに何も対処しな. ければ,積み増しによって 投下資金の機会費用. が増大し しかも株主の 利害に反する 経営者の 在庫管理にたいして 余分なボーナスを 支払うこ.
(13) 在庫品の評価と 在庫管理. (大日方. 隆). (241 27 ナ. とになり,株主は二重に損失を 被ることになる. 存在しているため ,会計情報にはモニタ 一機能. かちん, 税務会計における LlFU. の役割期待がおおきいのであ. の採用は,. る.. 在庫品購入価格の 上昇局面では 節税メリットを もたらす・ ところが, その LIFO の採用が, 在庫操作に よ る税引 後 利益の操作を 可能にし. 場合, ほんらい,株主にとって必要な情報は ,. かえって企業価値を 減少させかれないのであ. れを生みだした 経営者の努力水準ないし 行動と. る. ?Al. 株主と経営者とのあ いだに利害の 対立があ る 結果としての 業績指標そのものではなくて. ,. そ. 環境状態とにかんする 情報であ る. ケース 1 とはいえ, たんにケース. 2. でも利益操作の 危. と. ケース・ 2 のうちいずれが 株主にとって 望ましい. 険性があ るというだけでは , その在庫品評価 方. のかという問題を ,. 法の使い分けに 問題があ るとはいえない ,. が経営者の在庫管理行動を 適切に伝達できるの. 当然,. どちらの会計情報システム. 主が最終的に 負担するコストこそが 問題なので. かという問題に 置き換えてみよう. 公表される 財務諸表から 在庫の管理状況を 知ることができ れば,株主が負担しなければならないモニタリ. あ. ング・. 株主は,在庫操作の 危険が減少する. よう. に成果. 分配ルールを 工夫するであ ろう. そこでは,株. る・. そ. う. すると, いずれのケースが 株主にと. コストは減少する. いずれのケースの 会. って望ましいかを 判断するためには ,在庫 や を抑制するように 経営者をコントロールしても なお株主が負、 担しなければならないコストを 検 討してみなければならない.株主は ,経営者の. 計,情報がそのモニタリンバ・コストを 減少させ. 行動をモニターするためのモニタリンバ・コス. おける在庫品評価額の 増減から在庫数量の 増減. ヰ栗ィ. ト, 適切な在庫管理をするように. 経営者にあ た. える追加 りなインセンティヴのコスト , 白. さらに,. そのインセンティヴでは 抑制できずに 在庫操作 が行われた場合の 残余損失を負担しなければな. るのか, これが問題になるわけであ 第 4 節で指摘したよ. る・. に, 財務会計上で. う. LIFO) が採用されているならば ,貸借対照表に をあ る程度は知ることができる.米国では,. らに. LIFO. さ. を採用しているときに 期首の在庫. う. このように議論を 限定するのは ,以下のふ. 水準を取り崩した 場合,それが損益にあ たえる 影響額を開示することが 義務づけられている ". 他方, FIFO が採用されている 場合には, 貸借対照表における 在庫品評価額の 増減から在 庫数量の増減を 知ることはできない. もちろん, 税金支払額を 年度上 ヒ駁 してみても, その増減 か. たつの理由による. ひとつは, インセンティヴ. ら 在庫量が増減したか. のコストと残余損失とは , もっぱら,株主と経 営者それぞれの 効用関数と, 企業会計の覚側で. であ る.現在のところ,. 在庫品の数量増減そのものについての. 決められる報酬契約の 内容とのふたつに 依存し. 務づけられてはいない. そうした開示制度の 現. ており, それらの厳密な 検討は本稿の 範囲を超. 状を前提とするかぎり ,. えているからであ る. もうひとつは ,財務会計 であ れ,税務会計であ れ,利益情報の事後情報. 庫の管理状況を 把握するコストがよけ い にかか. としての役割の 原点は,年度利益が経営者ない し企業の業績指標とされることにあ るからであ. かりに,経営者の在庫管理行動をモニターす る手段として ,株主が公表財務諸表以外の資料. る.. や情報をもちいないならば. らない. それらのコストのなかで ,本稿では,株主が. 経営者の行動をモニターするコストに. 着目しよ. 本稿では,大規模公開会社にとっての 問題. 否かを判断するのは 困難 わが国でも米国でも ,. 開示は義. ケース 2 のほうが,在. るといってよ い ,. ,. ケース 2 では,株. として,一致原則, もしくはわが 国でいう確定 決算主義を検討していることを 再確認、 しておき. 主が最終的に 負担するコストはケース. たい.株主と経営者とのあ いだには情報格差が. なければ,在庫操作にぺ ナルティーを 課すこと. 1 よりも. 大きい. なぜなら,在庫の管理状況を把握でき.
(14) 28 (242). 横浜経営研究. 第Ⅲ巻. 第 4 号 (1991). は 不可能であ り,成果分配ルールの工夫によっ. の 規定は株主の 持分価値の減少を 未然に防出で. て経営者の在庫操作を 抑制するのは 実行困難だ からであ る.経営者の在庫操作という 局面だけ. い ると評価することもできるが ,一致原則が 株. 主の利害にあ たえる影響は ,前節で検討したよ. を考えると,財務会計と税務会計とで 在庫品評. うなマイナスの 面もあ れせて判断されなければ. 価方法を使い 分けるケース. ならない.税法の立法段階の設定趣旨が 検討さ. 2. は,株主にとって. 必ずしも好ましい 選択ではないと い え よう .. そ. うした評価方法の 選択を認めない 一致原則は, 上述したように ,株主が経営者の在庫管理行動 を モニターするコストの 削減に役立って. レ. ) ると. 評価することができる 26).. このことは,. じつに興味深い 論点を示唆して. いる. もともと,税収の確保ないし課税所得脱 漏の防止を希求する 課税当局と,節税を望む株 主とでは利害が 対立している. 前節での議論の 焦点は,その対立関係に向けられていた. とこ. れなければならないのはもちろんのこと ,会計 実践において ,実際に特定のルールがどのよう な機能をはたしているかを 記述 りにあ きらかに することも重要な 作業であ る. そうした検討の 考察対象は,当然,法が 想定していない 場面に もお ょ ぶことになる.税法規定のそうした多角 的な分析にとって ,本稿の考察は第一歩となる 白. わけであ る.. W. ろが, ここでの分析では ,経営者行動のモニタ. リングという 局面で,株主と課税当局との 利害 は一致するのであ る.一致原則が広く社会的に 受容され,株主にも合意されていると 見るので あ れば,その合意点 はこのモニタ 一機能に認め られよ. う. . だからこそ,前節で述べた よう に,. 一致原則の実質的な 意味は課税所得脱漏の 防止 や税務調査コストの 節減にあ ると捉え直さなけ ればならないのであ る・. おわりに. 本稿では, まず,在庫品評価方法の違いは税 金までを含めたキャッシュ・フロ. 一の配分のあ. りかたの違いにあ ると捉えて, FIFO における 「最適在庫 量 」と LIFO におけるそれとは 異な っていることをあ きらかにした.評価方法によ る キャッシュ・フロ 一の配分のあ りかたの相違 は ,株主と経営者とのあい だに利害の対立があ. もちろん,そうしたモニタ一機能は一致原則. る場合には,経営者の 在庫管理活動をコント. の法 りな目的ではなく ,法律上はあ くまでも,. ロールする方法にも 影響をあ たえる. とくに. この原則は租税立法政策の 産物でしかない.. LIFO. 自. と. を採用しているときには ,. そのコント. くに, わが国では,課税所得計算の商法決算 へ. ロールが重要な 問題となり,経営者の在庫操作. の 依存関係の一環として 一致原則が定められて. によって株主の 持分価値が減少する 可能性があ. いる.法律学では, この一致原則は 商法の決算. ることを指摘した・ これらの分析は ,いずれも, 一致原則で定められた 評価方法の選択を 前提と. 報告と税務申告とで 計算の二度手間を 省くため に設けられていると 解説されることもあ るⅢ. しかし二重の 計算コストを 負担するか否かは , 前節でも触れたように ,. それから得られるべネ. フィットもふまえた 企業の判断に 任せられるべ きあ る・法律上,事前に企業の意思を 画一的に 想定することはおかしなことであ. り,必ずしも ,. 立法段階から 経済的なコストが 十分に考慮され ていたとは思われない. ともあ れ,モニタ一機能の面からみると ,. こ. したものであ った.. つぎに,一致原則そのものを考察対象として 取り上げ, この規定が具体的な 利害状況のなか でどのような 役割をはたしているのか ,. とくに. 株主の利害にあ たえる影響に 着目して検討した. 財務会計と税務会計とで 異なった評価方法を 選 択することができなくなっているために ,在庫 品評価方法の 選択をめぐって 株主と経営者との あ い だに新たな対立をひき 起こすとともに , 節.
(15) 在庫品の評価と 在庫管理. (大日方. (243) 29. 隆). 報酬制度そのものに 議論の本質があ るわけでは ない.むろん,分析結果は分析でもち いた 仮定. 税 機会を企業間で 不平等にすることも 指摘した. その一方で,一致原則は財務会計と税務会計と で在庫品評価方法を 使い分けた場合に 生じるエ イジェンシー・コストを 削減することに 役立っ. り,本稿とは異なった想定の もとでは,ここであきらかされたのとは 異なる. に依存するのであ. 結論が得られるかもしれない・ しかしそうした 限界があ っても,具体的な. ているのであ った.. 以上のように ,本稿の分析は,できるだけ具 体的な利害関係のなかで 在庫品評価方法の 意味. 利害状況のなかで 利益情報の意味を 問い直すこ. を捉え直そうとするものであ った・その検討に あ たって,利益情報の使われかたは 所与とせざ. とは重要な作業であ る,そうした分析は,財務 会計における 利益計算ルールのみならず ,税法. るをえなかった.財務制限条項のようにその契. 上の課税所得の 計算ルールを 検討する際にも 役. 約内容が定型化されていたり 公開されているも. に立つはずであ. のはともかく ,それぞれの企業が内部で 自由に. 義が存続するかぎり ,財務会計に結びつけられ た利害が課税所得の 計算にもフィードバックし. 決めることができる 経営者報酬制度については. ,. 分析上,仮定が必要となる・その 仮定は,あ までも,株主と経営者とのあ いだに利害対立が あ る場合の経営者の 行動を記述するなかで ,経 営者の主体的なインセンティヴを 明示 りに扱う ために利用されたにすぎない・ 本稿で想定した く. 自. る.一致原則ないし確定決算主. ていくと考えられるからであ. る・現行実務で 採. 用 されている在庫品評価方法の 実態的な意味も そうした多様な 利害にあ たえる影響を 分析する. ことによって ,はじめてあ きらかになるはずで あ る..
(16) 30 (244). 横浜経営研究. 第 4 号 (1991). 第 Ⅲ巻. 基. 1 図C. L. S. 朋党. S. 額額 佃人. 期当. /c. IF. I : NO 二 C 一 I 一 売上原価以外の 費用支出 ). 税別前ネット・キャッシュ・フロー. (ただし. C. 二 在庫品の売却収入. 税別前利益 : IIi 二 C 一 I=NC 税金支払 額 :TPi 二 , ni 二 , NC 税別後ネット・キャッシュ・フロー 税別後利益 : ILL*=(l 一 T)NC. (ただし. NQL*. , 二 実効税率. 二. (1 一. ,. )NC. 「. )NC 一. ). FIFO) 在庫品 a/c 期首評価額. 売上原価. S. 当期購入額. 0 二 I 一h. I. 期末評価額 税別前ネット・キャッシュ・フロー 税 別 前利益 : nF 二 C 一 I+h 二 NC+h. S+h NC=C. 一I. =ni+h 税金支払 額 :TPF=. Ⅰ. (NC+h). =Tpi+. rh. 税別後ネット・キャッシュ・フロー. :NCF,. 二. (1 一. 二 NCL*. 税 別後 利益 : nF*. 二 二. 1・丁. 十h. 在庫Ⅰの変動と FIFO による在庫品評価. 在庫の積み増し. Ⅱ. 在庫の取り崩し. 在庫品 a/c. 期首評価額. S. h. (l 一 r) (NC 十 h) nL* 十 (I 一 r)h. 二 NCF*. 図2. 「. 一て h. 在庫品 a/c. 売上原価. 期首評価額. 0. 当期購入額. 当期購入額. Ⅰ. I 一h. I+a. S. 売上原価 0. 二I 一h. T 一m. (aⅠ追加購入 分 ). 期末評価額. (m Ⅰ購入不足 分 ). S+h+a. 期末評価額 S+h. 一m. 上記の各ケースの 諸数値は以下のようになる・なお , 0) 内の十は積み 増しのケースを ,一は 取り崩しのケースを 指し,無印は基準状況の該当数値を 指している (第 3, 4 図も同じ ) 税別前ネット・キャッシュ・フロー :NC(+)=NC 一 a, NC(-)=NC+m 税別前利益 : nF(+). 二 nr(-) 税金支払 額 :,「,pF(i¥=,TpF(-¥. ヰ克司. 二. nF 二 TPF. l役 ネット・キャッシュ・フロー. 税目 @ 利益 : nF*(+). Ⅰ. :NCF*(+). IIF*(-)二 nF*. 二 NCF*. 一 a,NCF*(-). 二 NCF*. 十m.
(17) 在庫品の評価と 在庫管理 (大日方 図3. 隆). (245)@31. 在庫の積み増しと LIFO による在庫品評価 在庫品 a/c. S. 期首評価額. 期末評価額 S+b. 当期購入額 売上原価 O 二a 十(I 一 b). I+a. /. 二 1 十 (み一. b). (ただし b は積み増された 在庫品の評価額であ り,購入価格の 上昇を仮定しているので a ノ b であ る.). ぬ5l 所ネット・ キ 税別前利益 n,(+)=. フロー : NC (+) Nc 一 (a 一 b) =IIi 一 (a 一 b) TPL(+)= T nL( り 二 TPL 一 (a 一 b). 税金支払 額. シ. 二 NC. 一a. 「. 不党与. げ麦ネッ. ト. ・キャッシュ・フロー. NQL*(+). (l 一 T) 。 NC 一 a) 一て b NCi* 一 {(l 一 r a+ bl 二 (1 一 ) tNC 一 (a 一 b)t 二 n,* 一 (1 一 )(a 一 b) 二 =. 税 ライ菱木 l益 」. n,*(+). Ⅰ. 「. 「. 「. =NCi*(+)+b 図4. 在庫の取り崩しと FIFO による在庫品評価 在庫品 a/c. 期首評価額. 期末評価額 S 一n. S. 売上原価 当期購入額 0 I 一m. 二 I一. m. 十n. 二 Ⅰ 一(m 一n Ⅰ. (ただし n 取り崩された 在庫品の評価額であ り,購入価格の上昇を仮定しているので m ノ n であ る.) 上図からわかるように ,このケースにおける 諸数値は , 先の積み増しのケースの a を @m に, b を ト n) に換えたものに 等しくなる・ 税別前ネット・キャッシュ・フロー : NC(-)=NC+m 税別前利益 : n Ⅱ -) 二 NC+(m 一 n) =IIi+(m 一 n) 税金支払 額 TPL(-) 二 T n,(-) 二 TPi+ T (m 一 n 税別後ネット・キヤ ツーンュ ・フロー NC.*(-) 二 (1 一 )(NC+m)+ Tn 二 NCi, 十 l(1 一丁 )m+rnl 税別後利益 : n,*(-) 二 (1 一 ) {NC+(m 一 n)@ =IIl*+ (1 一 )(m 一 n) = NC,* (-) 一 n Ⅰ. り. 「. 「. 「.
図
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