大学生の家庭教育に関する意識
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第57巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.57,No.1. 平成18年8月 August,2006. 大学生の家庭教育に関する意識. 市井 茜・佐々木貴子*・住田 和子*. 北海道教育大学函館枚家政教育教室 *北海道教育大学札幌枚. AStudentAttitudeConcerningFamilyLifeEducation ICHIIAkane,SASAKITakako*andSUMIDAKazuko* DepartmentofHomeEconomics,HakodateCampus,HokkaidoUniversityofEducation. *sapporocampus. 概 要 家庭教育に関する一連の研究の一つとして,サーストンの等現間隔法を用い,北海道教育大学函館校の学 生を対象に家庭教育に対する意識調査を行った.本調査で用いた測定尺度は2005年に筆者らが開発したもの である(市井,佐々木,住田:「家庭教育に関する態度測定尺度の再構成」,北海道教育大学紀要(教育科 学編),56(1),221−231,2005).調査の結果,学生の家庭教育に対する好意度は尺度値4.3であり,本尺度 の中間値6.2よりも上位に位置し,およそ4間隔に相当する幅であった.男女間の平均値の差も認められな かったことから,家庭教育に対する学生の態度はかなり好意的傾向にあり,家庭教育は男女を問わず共通の 好意的課題であることが明らかとなった.しかし,各意見の選択率を検討した結果,家庭教育に対する質的 認識は性別で違いが認められ,男性の家庭教育における基本条件(愛情関係)の欠如のみならず消極的姿勢 がうかがえた.. Keywords:Familylifeeducation家庭教育,attitudemeasurement態度測定, Thurstonescaleサーストン尺度,Students 大学生. 組んでいくべきか」ということについて具体的な 1.はじめに. 1998年6月,中央教育審議会は,「近年,子ど. 提言を行っている1).その中では「特に,過保護 や過干渉,育児不安の広がりやしつけへの自信の. もたちの心をめぐる問題が広範にわたっているこ. 喪失など,今日の家庭における教育の問題は座視. とを踏まえて,社会全体,家庭,地域社会,学校. できない状況である」としている.家庭教育はす. それぞれについてそのあり方を見直し,子どもた. べての教育のH発点であり,人間としての基礎的. ちのよりよい成長を目指してどのような点に取り. な資質や能力を育成する上で重要な役割を果たす. 223.
(3) 市井 菌・佐々木貴子・住田 和子. ものである.また社会環境の変化・発展に伴って. 育の支援について規定することが必要である」と,. 家族・家庭環境がたとえどのように変化したとし. 改正の視点が述べられ,教育基本法改正案中に「家. ても,いずれの時代いずれの社会においても,家. 庭教育」の項目が新たに取り入れられている4).. 庭教育の重要性は不変であろう.. 本研究は,家庭教育に関する一連の研究の一つ. 以上の流れからも,今後の様々な教育問題に対 応していくためには,家庭・地域社会・学校・関. であり,現代社会における家庭教育のあるべき姿. 係機関等の連携・協力の必要性が求められてい. を探るものである.家庭教育とはいったい何かと. る.そこで,近い将来,教師になることを目指し. いうことを通して,そこに存在する問題を整理し,. ている学生が家庭教育に対してどのような態度傾. 現代社会における家庭教育にいかに働きかけるか. 向を持っているかを把握することは意味あること. を考えたい.. と考えた.学生の家庭教育に対する態度や意見を. 家庭教育に関する社会的態度測定尺度として, 1981年に住田和子2)が構成したものがあり,この. Thurstonの態度測定法により,量的・質的に検 討したものをまとめて報告する.. 尺度が家庭教育に関する実態調査に広く利用され ている.しかし,家庭教育は,たとえ家庭の中で 行われる教育であるとしても,社会の変化・発展. に応じるものでなければならない.そこで,前報3). 2.調査の概要 今回用いた意見の測定尺度値(Mdn)は表1. では,社会環境の変化に連動する家庭教育の重要. に示したものであり,前報3)で報告済みのもので. 性に注目し,現代社会の家庭教育に対する実態把. ある.この測定尺度は,Thurstonの等現間隔法. 握の一つとして,サーストン(Thurston)の等. を用いて構成されており,家庭教育に関して最も. 現間隔法を用いて,家庭教育に関する態度測定尺. 好意的な意見(尺度値の小さいもの)から,最も. 度の再構成を行った.. 非好意的な意見(尺度値の大きいもの)に至るま. 本報では,およそ四半世紀前に住田が構成した. 尺度2)を再構成し,前報3)で報告した最終的尺度 を用いて実際に調査を行った,. 近年,現在の教育が社会環境の変化や子どもを. での各意見が,ほぼ均等な間隔(0.5)をおいて, 心理的に一直線上に配列されたものである. (1)調査用紙. 表2に示す.. 取り巻く環境の変化に十分に対応できていない状. (2)調査対象. 況であるとして,さまざまな教育改革が推進され. 調査対象数および属性(性別)は表3に示す.. ており,2003年3月には,中央教育審議会から「新. 有効回答率100%.. しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本. (3)調査期間. 計画の在り方について」が答申され,日本の教育. 2005年10月下旬∼2006年2月上旬.. について根本からの見直しが行われている.. (4)態度得点の算出. この答申では,家庭教育については現行教育基. 被験者の態度得点は,自分の意見とよく合致す. 本法で,社会教育条文中に,「家庭教育及び勤労. るものとして○印を付けた意見の尺度値を平均す. の場所その他社会において行われる教育は,国及. ることによって求めた.. び地方公共団体によって奨励されなければならな. 本調査用紙の尺度値の中央値は6.2であること. い」と規定されるにとどまっている現状を受けて,. から,態度得点6.2の人(または集団)の家庭教. 「家庭は,子どもの教育に第一義的に責任がある. 育に対する態度は好意的でも非好意的でもないこ. という家庭教育の重要性を踏まえ,その役割を明. とになる.また態度得点が小さい値であるほど,. 確にするとともに,学校・家庭・地域社会の連. 家庭教育に対して好意的態度を有し,大きい値で. 携・協力の推進,国や地方公共団体による家庭教. あるほど非好意的態度を有していることを示す.. 224.
(4) 大学生の家庭教育に関する意識 (5)態度の内容. 育に対する態度や関心は性別を問わず共通の好意. 各意見の採択率(自分の意見とよく合致すると. 的課題であるといえる.. 判断し,その意見に同意した人の集団全体に対す. (2)態度の内容(質的検討). る割合)を算出することにより,集団の家庭教育. 態度値の内容を質的に検討するため20個の意見. の捉え方,考え方の違い,特徴について態度の内. がそれぞれどのように選択されているかを示した. 容を質的に分析した.. ものが図1であり,図2はそれを性別で表したも のである.. 図1より,学生達の家庭教育に対する把握,考. 3.測定結果および考察. え方の違い,及びその特徴について次のことが明 らかになった.. (1)態度得点の算出(量的検討). ① 全体的にみると,尺度値列位と各意見の選. 態度測定平均値は表3に示すとおりである. 全体的な平均値は4.3で,“家庭教育’’に対する. 択率には相違がみられた.. 態度傾向は好意的である.この測定値は尺度の中. ② 最も多数から同意された意見は,「家庭教. 間値(6.2)よりも小さく,その尺度値のおよそ. 育は親自身のあり方,生活態度が影響する」. 4間隔に相当する幅である.したがって,家庭教. 89.3%でほぼ9割となっている.次いで「家. 育に対する学生の態度はかなり好意的といえる.. 庭教育は心の教育である」(85.2%),「家庭. なお,男女間の平均値の差は0.04にすぎず,こ. 教育は道徳教育が必要である」(84.9%)の. の測定からは好意皮の差は認められない.家庭教. 順である.. 表1 選択・配列された20個の代表的意見 尺度値列位. 見. Mdn. 間隔. 家庭教育の根本は愛情である. 1.8. 2. 家庭教育は心の教育である. 2.3. 0.5. 3. 家庭教育は家庭生活そのものの中で行われる教育である(生活即教育). 2.8. 0.5. 4. 家庭教育は親自身のあり方,生活態度が影響する. 3.3. 0.5. 5. 家庭教育は子どもに判断力をつけることである. 3.7. 0.4. 6. 家庭教育は道徳教育が必要である. 4.1. 0.4. 7. 家庭教育は夫であり,父である男性の貢献も必要である. 4.5. 0.4. 8. 家庭教育は両親の躾方法の一致が大切である. 5.0. 0.5. 9. 家庭教育は母親の力が大である(三ツ子の魂百まで). 5.4. 0.4. 家庭教育は親の経済状態に関係がない. 5.8. 0.4. 家庭教育は他人にまかせられない. 6.2. 0.4. 12. 家庭教育は地域的に差異がある. 6.8. 0.6. 13. 家庭教育は行政が関与することは難しいものである. 7.3. 0.5. 14. 家庭教育は母の教育義務である. 7.7. 0.4. 15. 家庭教育は子どもの世話をすることである. 8.3. 0.6. 16. 家庭教育は親の学歴・社会的地位に関係がある. 8.8. 0.5. 17. 家庭教育の最高責任者は母である. 9.3. 0.5. 18. 家庭教師をつけることも家庭教育である. 9.8. 0.5. 19. 家庭教育は子どもを塾に通わせることである. 10.5. 0.7. 20. 家庭教育は必要なモノを買い与えることである. 11.0. 0.5. 10. (市井 西,佐々木貴子,住田和子,「北海道教育大学紀要」第56巻 第1号より). 225.
(5) 市井 菌・佐々木貴子・住田 和子 表2 調査用紙 日頃,あなたが家庭教育に対していだかれている考えや意見についてお答え下さい。下にイからネまでの20 個の家庭教育に対する色々な考えや意見があります。これをよく読んで,あなたのお考えやご意見によく合っ ていると思われるものに○印をつけて卜さい。いくつ選んで卜さってもよいのです。 イ.家庭教育は心の教育である. ロ.家庭教育は子どもを塾に通わせることである ハ.家庭教師をつけることも家庭教育である ニ.家庭教育は必要なモノを買い与えることである ホ.家庭教育は道徳教育が必要である へ.家庭教育は親の学歴・社会的地位に関係がある ト.家庭教育は家庭生活そのものの中で行われる教育である(生活即教育) チ.家庭教育の根本は愛情である り.家庭教育は母の教育義務である. ヌ.家庭教育は他人にまかせられない ル.家庭教育の最高責任者は母である ヲ.家庭教育は親自身のあり方,生活態度が影響する り.家庭教育は母親の力が大である(三ツ子の魂百まで) カ.家庭教育は行政が関与することが難しいものである ヨ.家庭教育は地域的に差異がある. 夕.家庭教育は夫であり,父である男性の貢献も必要である レ.家庭教育は両親の朕方法の一致が大切である ソ.家庭教育は子どもの世話をすることである ツ.家庭教育は子どもに判断力をつけることである ネ.家庭教育は親の経済状態に関係がない. 表3 調査対象および態度測定平均値 性別. 人 数(%). 男 性 136(46.7). 平 均 値 4.33. 291(100・0). 女 性 155(53.3). 226. 4・3. 4.29.
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(8) 大学生の家庭教育に関する意識. 点は注目すべき結果である.なお,尺度列位2位. 2.7%と低い選択率になっており,一方で「家庭. の「家庭教育は心の教育である」,尺度値列位6. 教育は夫であり,父である男性の貢献も必要であ. 位の「家庭教育は道徳教育が必要である」がとも. る」が58.4%の選択率であることは,ジェンダー. に多数から同意されていることを併わせて考える. 問題に関する社会の意識の高まりや,現代の男女. と,めまぐるしい社会環境変化に伴い人々の価値. 共同参画社会への推進が反映しているものと考え. 観・倫理観・生活スタイル等が多様化する中で,. る.ちなみに,「家庭教育は母親の力が大である(三. 未熟な親の問題が浮き彫りになる.それは青少年. ツ子の魂百まで)」の意見について,20年前に北. の道徳心や規範意識の低下が指摘されている今日. 海道における第1子が満3歳の夫婦を対象とした. の状況の反映とも考えられる.将来教員を目指し. 調査の選択率5)は55%となっている.一般既婚者. ている学生達は,近年の教育問題解決の一手段と. を対象とした調査では27年前2)には73%,42年前6). して,教育の原点としての家庭における教育の大. には83%となっており,調査対象は異なるものの. 切さを再認識し,親としての自覚,自分自身の生. 時代が進むにつれて家庭教育における母親の力を. 活や道徳的価値の見直しを考えているのであろう.. 大きいとみなす傾向は大幅に減少していることが. 1998年に発表された中央教育審議会答申では,. わかる.しかし,2002年の国民生活選好度調査7). 家庭における人間関係,家庭での豊かな会話,家. によると,子どもの保育は,保育を担うことが最. 庭での食事の取り方等,日々の家庭生活と子ども. も望ましいと思われている母親が実際に担ってい. の心の成長・健康との関連を多数指摘している1).. る割合が高く,父薫別こついては望ましいと思われ. 「家庭教育は心の教育である」,「家庭教育は家庭. 生活そのものの中で行われる教育である(生活即. ている割合に比べ,実際に保育を担う割合が低い という結果となっている.. 教育)」がともに8割以上の学生から同意されて. 育児は両性がかかわる任務という意識は高ま. いる結果は,日々の家庭の営みが子どもの教育に. り,法的整備などによりその条件作りは徐々にな. とっていかに重要であるかといえる.. されているものの,まだまだ家庭生活の現実はこ. しかし,尺度値列位1位の「家庭教育の根本は 愛情である」の選択率は82.5%であるが,「両親 の躾方法の一致が大切である」が50.9%にとどま. のような潮流においついてはいないという事実を. 見逃してはならない. 「家庭教育は他人にまかせられない」と「家庭. り,これらを併せて考えると,家庭教育における. 教育は行政が関与することが難しいものである」. 家族関係や夫婦関係の大切さに対する認識は決し. の意見はそれぞれ約36%の選択率となっている.. て高いものとはいえない.. これより6割以上の学生が家庭教育は他人にまか. 「家庭教育は親の学歴・社会的地位に関係があ る」,「家庭教師をつけることも家庭教育である」,. 「家庭教育は必要なモノを買い与えることであ. せられる,行政が関与できるものであると考えて いると解釈できる.なお「家庭教育は他人にまか せられない」の意見について,20年前の調査の選. る」,「家庭教育は子どもを塾に通わせることであ. 択率5)は5割近くである.今日では,家庭教育に. る」等,物質的・経済的にかかわりのある意見へ. おける親の責任は大きいとしながらも,少子高齢. の同意は低く,家庭教育では親の精神面や取り組. 化社会,共働き社会と呼ばれる現代社会において,. みに対する姿勢,努力の必要性に対する認識がう. 家庭教育に対する社会全体での支援の必要性がま. かがえる.. すます再認識されていると受けとれる.. 家庭教育の担当者に関する意見である「家庭教. 以上は全体的な傾向であるが,図2は性別にみ. 育は母親の力が大である(三ツ子の魂百まで)」. る各意見の選択率である.次に,性別による家庭. は33.7%,「家庭教育は母の教育義務である」が. 教育に対する考え方,捉え方の違い,特徴を報告. 12.0%,「家庭教育の最高責任者は母である」が. する.なお性別比較にあたりPersonのカイ2乗. 229.
(9) 市井 菌・佐々木貴子・住田 和子. 検定で男女間の有意差を求めた.. (生活即教育)」,「家庭教育は親自身のあり方, 生活態度が影響する」,「家庭教育は夫であり,. ① 20個の意見のうち. 父である男性の貢献も必要である」,「家庭教. ,「家庭教育の根本は愛. 情である」は(p<0.01),「家庭教育は家庭. 育は母親の力が大である(三ツ子の魂百ま. 生活そのものの中で行われる教育である(生. で)」,「家庭教育は子どもの世話をすること. 活即教育)」,「家庭教育は親自身のあり方,. である」,「家庭教育は必要なモノを買い与え. 生活態度が影響する」,「家庭教育は道徳教育. ることである」の7つの意見は,男性に比べ. が必要である」,「家庭教育は夫であり,父で. て女性の方が多く選択している.. ある男性の貢献も必要である」,「家庭教育は. 男女間の選択率の差が最も大きかった意見は. 母親の力が大である(三ツ子の魂百まで)」, 「家庭教育は行政が関与することは難しいも. 「家庭教育の根本は愛情である」となっており,. のである」,「家庭教育は子どもの世話をする. 女性の方が10%以上も多くこの意見を選択してい. ことである」,「家庭教育の最高責任者は母で. る.愛情は触れ合いによって育まれていくもので. ある」,「家庭教育は子どもを塾に通わせるこ. ある.しかし,現在はまだ我が子を持ち育てる立. とである」,「家庭教育は必要なモノを買い与. 場にない学生であれ,子どもの豊かな人格形成の. えることである」は(p<0.05),合計11個. 基本条件である愛情への認識は男女間に差があ. の意見について男女間の選択率に有意差が認. り,特に男性の意識が低いということは,学生達. められた.. を将来薫別こなる予備軍として捉えた場合,両親の. ② 有意差が認められた11個の意見のうち,男. 育児態度や親子関係に少なからず影響を与えると. 女間で最も選択率の差が大きかった意見は. 考えられる.. 「家庭教育の根本は愛情である」(男性75.7%,. 「家庭教育は行政が関与することが難しいもの. 女性88.4%)であり,次いで「家庭教育は行. である」は女性に比べて男性の方が10%程度多く. 政が関与することは難しいものである」(男. 選択している.父親不在や母親への育児負担の増. 性41.2%,女性31.6%),「家庭教育は夫であ. 加が社会問題となり,行政による家庭教育支援が. り,父である男性の貢献も必要である」(男. 活発化している中,実際に育児を担う割合の少な. 性55.1%,女性61.3%),「家庭教育は母親の. い男性が,実際に育児を担い社会の支援を必要と. 力が大である(三ツ子の魂百まで)」(男性. している女性に比べて,家庭教育への行政関与を. 30.9%,女性36.1%),「家庭教育は子どもの. 否定的に捉えている点で矛盾を生じる結果となっ. 世話をすることである」(男性19.1%,女性. た.ちなみに,女性の選択率がおよそ3割あった. 23.9%)となっている.. ことは,調査対象が教員を目指している学生であ. ③ 有意差が認められた11個の意見のうち. ,「家. 庭教育は道徳教育が必要である」,「家庭教育. 望んでおり,共働きをするにあたって行政の関与. は行政が関与することは難しいものである」,. を必要としている学生が多いのではないかと考え. 「家庭教育の最高責任者は母である」,「家庭. る.. 教育は子どもを塾に通わせることである」の. 「家庭教育は夫であり,父である男性の貢献も. 4つの意見は,女性に比べて男性の方が多く. 必要である」,「家庭教育は母親の力が大である(三. 選択している.. ツ子の魂百まで)」はともに女性の方が5%程度. ④ 有意差が認められた11個の意見のうち. 230. ることから,女性達は将来子育てと仕事の両立を. ,「家. 以上多く選択しており,「家庭教育の最高責任者. 庭教育の根本は愛情である」,「家庭教育は家. は母である」は2%弱にすぎないが男性の方が多. 庭生活そのものの中で行われる教育である. く選択している.これらのことを併せて考察する.
(10) 大学生の家庭教育に関する意識. と,男性に比べて女性の方が家庭教育に対して積. 「家庭教育は心の教育である」,「家庭教育は道. 極的で責任感も強い一方で,男性に対しても家庭. 徳教育が必要である」等の意見が上位項目として. 教育への参加・協力を求めていると受けとれる.. 同意されていることは,いじめ,不登校,校内暴. しかし,男性の家庭教育に対する姿勢は女性が求. 力,犯罪の低年齢化等の社会問題を反映している. めているものより消極的で,女性による子育てへ. ものと考える.子どもを巡る環境が大きく変化し. の期待が大きいといえよう.. ている中で,子どもの社会性や規範意識,自尊感. なお,「家庭教育は子どもの世話をすることで ある」,「家庭教育は親自身のあり方,生活態度が 影響する」,「家庭教育は家庭生活そのものの中で. 情を育むためにも,今後「心の教育」,「道徳教育」 の充実がいっそう望まれるであろう.. 男女間の選択率を通して,性別における家庭教. 行われる教育である(生活即教育)」のいずれの. 育の捉え方の違いが明らかとなった.特に顕著な. 意見も男性に比べ女性の選択率が高くなってお. ものとしては,家庭教育における愛情関係の認識. り,子どもを育てる場としての日々の家庭におけ. であり,女性に比べて男性は子どもの豊かな人間. る営みの大切さへの認識は女性の方が高いものと. 形成に愛情関係が基本的条件であるという認識が. 受けとれる.. 低いことも明らかとなった.. また,先行研究2●5●6)との比較により,家庭教 4.むすびにかえて Thurstonの態度測定法により測定した大学生. 育における母親の力を大きいとみなす傾向は減少 していることがわかった.しかし,未だ男性の家 庭教育について母となる女性に対する期待が大き. の家庭教育に対する態度測定平均値は4.3でかな. く,家庭教育に対する男性の消極的な姿勢が浮き. り好意的傾向とみなされる.男女間の平均値の差. 彫りになった.家庭教育力回復の一手段として行. は0.04にすぎず,この測定値からはその差は認め. 政が行っている男性の育児休暇等の法的整備にと. られず,家庭教育に対する態度や関心は男女を問. どまるのではなく,男性自身の意識改革が今後の. わず共通の好意的課題であるといえる.. 家庭教育の優先的課題であるといえよう.. 各意見の選択率をみると,「家庭教育は親自身. いずれにせよ,本調査により,家庭教育は将来. のあり方,生活態度が影響する」の意見が最も多. 教員を目指す大学生にとって男女を問わず共通の. 数から同意されている.学生達は,家庭の教育力. 好意的課題であることが把握できた.しかし,そ. 低下が懸念されている現代社会において,たとえ. の質的認識は男女間で相違がみられ,男性の家庭. 様々な社会的支援がなされるとしても,「父母そ. 教育における基本的条件(愛情関係)の欠如のみ. の他の保護者が子育てについて第一義責任を有す. ならず男性の家庭教育に対する消極的姿勢がうか. る」という少子化対策における基本理念を踏まえ,. がえた.さらに,非好意的項目の背景には現代社. 親がまず自らを律することの必要性を求めている. 会で起こっている様々な問題が反映しており,家. ものと考える.. 庭教育はたとえ家庭の中で行われる教育であると. 物質的に豊かで快適な社会環境の中で,人々の 価値観や生活様式は今後一層多様化し,家庭教育 のあり方も変化していくものと考える.しかし,. しても,社会環境の多大な影響を受けていること が明らかとなった.. 最後に,本調査に御協力戴きました北海道教育. 社会環境・家庭環境が如何に変化しようとも,. 大学函館校の学生のみなさまに対し,心より御礼. 我々大人は人の一生における家庭教育の重要性,. 申し上げます.. さらに家庭教育者自身が子どもの成長に与える影 響を再認識し,真に生きる姿を示していかなけれ ばならない.. 231.
(11) 市井 菌・佐々木貴子・住田 和子. 引用・参考文献 1)中央教育審議会:新しい時代を拓く心を育てるため に一次世代を育てる心を失う危機−,第17期中央教育 審議会答申,1998 2)住田和子:家庭教育に関する態度の研究(第1報). 態度測定尺度の構成,家政学雑誌,32(9),1981, pp.48−55 3)市井 菌,佐々木貴子,住田和子:家庭教育に関す る態度測定尺度の再構成,北海道教育大学紀要(教育. 科学編),56(1),2005,pp.221−231 4)中央教育審議会:新しい時代にふさわしい教育基本 法と教育振興計画の在り方について,中央教育審議会 答申,2003 5)住出和子:育児期にみる家庭教育一北海道の場合−,. 光塩大学女子短期大学紀要,第2号,1987,pp.83−91 6)住田和子:日本家政学会総会要旨集,1966 7)経済企画庁国民生活局:平成13年度国民生活選好度 調査,2003. (市井 西 北海道立函館商業高等学校 非常勤講師). (佐々木貴子 札幌校助教授) (住田 和子 札幌校教授). 232.
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