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日本家政学会誌 Vol. 61 No ~ 24 大学生の食生活に対する意識と行動の関係について (2010) 大学生の食生活に対する意識と行動の関係について 濵口郁枝 1, 安達智子 2, 大喜多祥子 3, 福本タミ子 3, 前田昭子 4, 内田勇人 1, 北元憲利 1 5, 奥田豊子

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(1)

1.緒 言

 近年,偏った食事内容や生活習慣病の若年化など,食に 起因する健康問題が増加し,食生活の乱れが深刻化してい る.高度経済成長期以降,社会環境が大きく変化し,経済 の発展,産業の進展,なかでも食品産業の発展は目覚しく,

流通は飛躍的な進歩を遂げた.これらの動向を背景に,我 が国では,外食・中食産業が大きく進展し,何時でもどこ でもおいしいものが手に入る飽食の時代になってきてい る1).岩村2)は,1960 年以降生まれの主婦を対象とした 家庭の食卓調査を実施した結果,菓子を朝食にする家族や,

夕食は各々が好きなものを買ってくる家族など,家庭にお ける食卓の激変ぶりを明らかにしている.このように,食 に対する意識や価値観が変わった現代では,家庭が食文化

の伝承を担うことが難しくなってきている.

 食育基本法3)が施行される前後から,子どもや保護者 を対象とした食教育に関する研究が多くみられるように なった.例えば,浜口・福本4)では,食生活に関心を持ち,

意識をしながら過ごしている母親の子どもは,そうした意 識に基づいた食教育を反映した摂食行動をとっていること が見出された.さらに,高畑ら5)は,母親の過去の食経 験が好ましいほど,現在の母親の生活充実感が高く,その ことは,子どもへの積極的な養育態度や食との関わり方を 介し,母子間のコミュニケーション頻度を高めることを明 らかにしている.これらの報告を踏まえると,食教育は保 護者に対して必要であると考える.そこで本研究では,次 代を担う大学生に対する食教育のあり方と家族からの働き

大学生の食生活に対する意識と行動の関係について

Relationship between the Consciousness and Behavior in Dietary Life of University Students

濵口郁枝

1

,安達智子

2

,大喜多祥子

3

,福本タミ子

3

,前田昭子

4

, 内田勇人

1

,北元憲利

1

,奥田豊子

5

Ikue Hamaguchi1, Tomoko Adachi2, Sachiko Ohkita3, Tamiko Fukumoto3, Akiko Maeda4, Hayato Uchida1, Noritoshi Kitamoto1 and Toyoko Okuda5

1兵庫県立大学大学院環境人間学研究科,2大阪教育大学人間行動学講座,3大阪大谷大学短期大学部,

4相愛大学人間発達学部,5帝塚山学院大学人間科学部)

1Graduate School of Human Science and Environment, University of Hyogo, Hyogo 670-0092, Japan

2Department of Behavioral Science for Human, Osaka Kyoiku University, Osaka 582-8582, Japan

3Osaka Ohtani College, Osaka 584-8540, Japan

4Faculty of Human Development, Soai University, Osaka 559-0033, Japan

5Faculty of Human Sciences, Tezukayama Gakuin University, Osaka 590-0113, Japan

A disorder of dietary condition in recent years is concerned with the dietary habit of engorgement.

We thus believe that dietary education is necessary for university students. This study examines the consciousness and behavior in the dietary condition, sense of taste, and daily life of university students.

The influence of a student’s family on this dietary behavior and consciousness is also assessed. An analysis was conducted of the results of a questionnaire survey taken from 229 university students.

Structural equation modeling was applied to study the consciousness which influences the dietary behavior, living activities and influence of the family. This analysis shows the influence of the family on the consciousness of dietary condition, sense of taste, and daily activities related to a healthy life style.

The results suggest the importance of university students having experience of cooking, promoting consciousness of their dietary behavior, and that the family recognizes its influence.

Keywords: consciousness of dietary life 食生活意識,dietary behavior 食行動,dietary education 食教育.

原稿受付 平成 20 年 9 月 17 日;原稿受理 平成 21 年 10 月 3 日

(2)

かけの影響を検討することとした.

 大学生を対象とした加藤6)の研究では,大学生の食品 摂取の実態と食生活に対する意識との関連を調査し,食知 識や食生活の大切さについての理解はできているが,実践 はできていないことを明らかにしている.したがって,食 生活を改善すべきだと意識していても,実行が伴っていな いのではないかと考えられる.そこで,このような意識と 実態の関連が明らかにされていることに着目し,さらに異 なる観点から意識と行動の関係性を検討することとした.

加藤6)の調査では,食品摂取状況(16 食品について 4 段 階で摂取頻度を質問)と食生活に関する意識についての質 問内容から構成されているが,本研究では,食生活に関す る同じ質問内容に対して意識と行動の程度を別々に回答さ せるという手法を採用し,意識と行動の程度の比較,およ び意識と行動の関係性について検討した.また,今後味覚 検査との関連を検討するために,食生活と深く関わりがあ る味覚についての質問を加えた.さらに,大学生が心身と もに健全な生活を送ることを最終目標とするために,生活 についての質問を加えた.

 また,大学生は,思春期を経て自我同一性を確立させ,

精神的社会的に親からの自立を目指す時期にいる.このよ うな大学生に対して,保護者は成長発達に応じて子どもを 導きながら放任の程度を考慮して関わることが重要と考え られている7).そこで,保護者を含めた家族からの食生活 についての働きかけが,大学生の意識や行動におよぼす影 響について検討するために,家族の働きかけについての質 問を加えて調査を実施した.

 これらの調査結果から,大学生の食生活・味覚・生活に ついての意識と行動の関係性,および家族からの働きかけ の影響を明らかにし,大学生に対する食教育を実施する上 での方向性を提示することを目的とした.

2.方 法

(1)実施時期および調査方法 

 各実施校で協力いただいた教員に配布・回収を依頼し,

2007 年 4 月中旬から下旬にかけて質問紙調査を実施した.

調査の実施に関する要項,質問を受けた際の回答例などに ついてマニュアルを作成し,実施校による差異がないよう に配慮した.調査用紙のフェースシートには,プライバシー の守秘義務の履行と成績評価に関連しない旨を明記すると ともに口頭での説明を行い,了承を得た後に実施した.

(2)対象者

 大阪府内の 3 大学にて調査を実施し, 307 名より回答を 得た.そのうち,主要な属性の質問,および,意識と行動 の質問に欠損値のある者と既婚者を含む 78 名を除いたと ころ,有効回答は,男性 90 名,女性 139 名,合計 229

名(74.6%)であった.

(3)測定尺度

 使用尺度は,対象者の属性の他に,食生活についての意 識・行動,味覚についての意識・行動,生活についての意 識・行動の 6 つである.

 1)対象者の属性

 性別,年齢,家族構成,日常の食事作りを主に担当する 者,居住形態,身長・体重,食生活に関する内容を質問した.

なお,寮・一人暮らしの場合の家族構成と食事作りの担当 者は,帰省した際のことを回答するよう指示した.食生活 に関する質問は,朝食・昼食・夕食における,1 週間の内食・

中食・外食の日数,家庭における料理の味付けの濃度,料 理や味の好み,家族から食生活について気を配るように教 えられているか,味の感覚がわからなくなることがあるか

(風邪などの病気以外で),食育基本法が施行されたことを 知っているか,について質問した.

 2)食生活についての意識・行動

 食事の規則性や共食,外食や中食,食事のバランス,伝 統的な作法や食環境,食事作り等を内容とする 33 項目の 質問から構成されている.回答方法は浜口ら8)を改良し,

「食生活についての意識」は,現在の時点で,毎日の食生 活についてどの程度意識しているかを,「1.全く意識し ていない」「2.あまり意識していない(30%ぐらい)」「3.

少し意識している(60%ぐらい)」「4.とても意識してい る(90%ぐらい)」の 4 件法で回答を求めた.「食行動」は,

「食生活についての意識」と同じ 33 項目の質問内容に対 して,実際どの程度実行しているかを,「1.ほとんど実 行していない」「2.30%ぐらいしか実行していない」「3.

60%ぐらい実行している」「4.90%ぐらい実行している」

の 4 件法で回答を求めた.

 3)味覚についての意識・行動

 料理の味付けやおいしさ等を内容とする 11 項目の質問 から構成されている.回答方法は浜口ら8)を改良し,「食 生活についての意識」「食行動」と同様に意識と行動につ いて回答を求めた.

 4)生活についての意識・行動

 包括的な生活全体を内容とする 9 項目の質問から構成 されている.回答方法は浜口ら8)を改良し,「食生活につ いての意識」「食行動」と同様に意識と行動について回答 を求めた. 

 

3.統計処理

 得られた回答の基礎統計には SPSS 12.0J を,確認的因 子分析9)と構造方程式モデリング9)による因果モデルの 分析には Amos 5.0 を使用した.統計的検定の有意水準は,

いずれの分析においても 5% 水準を採用した.

(3)

(1)項目得点

 各意識・行動の質問項目の回答 1 ~ 4 を素点として得 点化した. 

(2)下位尺度得点

 各意識の尺度を用いて探索的因子分析,および,確認的 因子分析を行い,その結果得られた下位尺度の項目得点を 合計し,項目数で除した値を用いた.本研究では,行動の 背後に意識があり,その背後に潜在因子の存在を想定して いることから,行動の尺度については,意識の因子構造を 採用し,同様の計算手法によって下位尺度得点を算出した.

(3)下位尺度得点の比較

 意識と行動の差異について検討するために,それぞれ の下位尺度得点を対応のあるt 検定を用いて比較した.ま た,属性別下位尺度得点は,性別(男性/女性),居住形 態(自宅/寮・一人),学年(1年生/2年生以上),なら びに,食育基本法が施行されたのを知っているか(知らな い/知っている)によって調査対象者を群分けし,それぞ れの下位尺度得点についてt検定を用いて比較した.

(4)相関分析

 意識と行動の下位尺度間の関係をみるために,それぞれ の意識と行動の下位尺度得点について,Pearson の相関係 数を算出した.また,属性と下位尺度間の関係をみるため に,各属性の得点と,意識の下位尺度得点および行動の下 位尺度得点について,Pearson の相関係数を算出した.

(5)構造方程式モデリング

 食行動に影響をおよぼす意識,さらに心身ともに健全な 生活を送ることの規定要因を検討するために,構造方程式 モデリングによる因果モデルの分析を行った.前述(4)

において有意な相関係数の得られた関係性や理論的整合性 を考慮し,以下の変数を用いてモデルを構築した.

 生活については[生活についての行動][生活について の意識]の尺度得点を観測変数として用いた.食生活につ いては,食行動を潜在変数として,その因子から影響を受 ける項目として[外食・中食に対する抑制行動][食事バ ランスに対する行動]の下位尺度得点を観測変数として用 いた.また,食生活についての意識を潜在変数として,そ の因子から影響を受ける項目として[外食・中食に対する 抑制の意識][食事バランスに対する意識]の下位尺度得 点を観測変数として用いた.味覚についての意識について は,[薄味重視の意識]の下位尺度得点を観測変数として 用いた.さらに,家族からの働きかけは,「家族から食生 活について気を配るように教えられている」の項目得点を 観測変数として用いた.

 

4.結 果

(1)対象者の属性

 対象者の属性を表 1 に示した.食生活に関する質問へ の回答に着目すると,日常の食事作りを主に担当する者は,

母親のみが 82.5% と最も多く,本人が母親や祖母に加わっ て一緒に作る者は 1.8%と少なかった.「家族から食生活 について気を配るように教えられている」の質問に対して は,少し,または,とてもよく当てはまると回答した働き かけ高群は 66.0%で,あまり,または,全く当てはまら ないと回答した働きかけ低群は,34.0%であった.「食育 基本法が施行されたのを知っているか」の質問に対して,

知らないと答えた者は 75.5%で,知っていると答えた者 24.5%を大きく上回る結果であった.

(2)尺度の因子構造  1)食生活についての意識

 食生活についての意識を測定する 33 項目について,平 均値と標準偏差から分布の偏りを確認し,天井効果のみら れた 5 項目を除外した.さらに,項目間の相関係数を算 出し,冗長性があると判断された 1 項目(r=0.72),およ び複数の項目との間にr=0.50 以上の相関係数を示す 2 項 目は,多義的に解釈される可能性があると判断されたため 除外し,結果として残された 25 項目を因子分析に用いた.

 4 因子構造(外食や中食について抑制する意識,食事を バランス良く食べることに対する意識,作法や食環境に 対する意識,食事作りに対する意識)を仮定し,重み付 けのない最小 2 乗法による探索的因子分析を行い,さら に因子負荷量が 0.40 以上の項目を用いて確認的因子分析 を行った.4 つの因子からそれぞれ該当する項目が影響を 受け,全ての因子間に共分散を仮定したモデルで分析し たところ,χ2(146)=266.8,p=0.000,適合度指標は,

GFI=0.877,AGFI=0.844,RMSEA=0.060,AIC=354.8 で あった.そこで,項目の精選と因子的妥当性の検討を行 い 4 項目を削除したところ,χ2(84)=106.4,p=0.050,

適合度指標は,GFI=0.938,AGFI=0.911,RMSEA=0.034,

AIC=178.4 と,最初のモデルよりもデータに適合した値が 得られた.

 第Ⅰ因子は,“ コンビニを利用する回数を減らす ”“ ファ ストフードを食べない ” など,外食や中食について抑制す る内容を示していることから,[外食・中食に対する抑制 の意識]と命名した.第Ⅱ因子は,“ 主菜は毎食きちんと とる ”“ 副菜は毎食きちんととる ” など,1 日の食事をバラ ンス良く食べる内容を示していることから,[食事バラン スに対する意識]と命名した.第Ⅲ因子は,“ 食事の際に はしっかり噛んで食べる ”“ 配膳に気を配る ” など,食事の 作法,配膳や食卓の環境づくりに関する内容を示している ことから,[作法・食環境に対する意識]と命名した.第

(4)

大学 1 週間の内食・中食・外食の日数   A 私立短大(1 学科) 57 (24.9)  朝食:内食 平均 4.7 ± 2.79 日 / 週  B 私立大学(1 学部) 53 (23.1)     中食 平均 1.8 ± 2.56 日 / 週  C 公立大学(5 学部) 119 (52.0)     外食 平均 0.2 ± 0.82 日 / 週

性別  昼食:内食 平均 3.2 ± 2.30 日 / 週

 男性 90 (39.3)     中食 平均 2.0 ± 1.94 日 / 週

 女性 139 (60.7)     外食 平均 1.8 ± 2.08 日 / 週

学年 平均年齢 18.6 ± 0.94 歳  夕食:内食 平均 4.9 ± 2.00 日 / 週  1 年生 180 (78.6)     中食 平均 0.9 ± 1.34 日 / 週

 2 年生 44 (19.2)     外食 平均 1.2 ± 1.45 日 / 週

 3 年生 5 ( 2.2) 家庭の料理の味付けは甘い方

家族数 平均 4.4 ± 1.11 人  全く当てはまらない 44 (19.2)

 3 人家族以下 41 (17.9)  あまり当てはまらない 130 (56.8)

 4 人家族 99 (43.2)  少し当てはまる 50 (21.8)

 5 人家族以上 89 (38.9)  とてもよく当てはまる 5 (2.2)

居住形態 家庭の料理の味付けは塩からい方

 自宅 184 (80.3)  全く当てはまらない 44 (19.2)

 寮 2 ( 0.9)  あまり当てはまらない 131 (57.2)

 一人暮らし 43 (18.8)  少し当てはまる 48 (21.0)

家族形態  とてもよく当てはまる 6 (2.6)

 核家族 158 (69.0) 家庭の料理の味付けは濃い方

 拡大家族 71 (31.0)  全く当てはまらない 39 (17.0)

BMI 平均 21.1 ± 2.92  あまり当てはまらない 100 (43.7)

 BMI =体重 [kg]/(身長 [m])2  少し当てはまる 81 (35.4)

 やせ(BMI<18.5) 29 (12.7)  とてもよく当てはまる 9 (3.9)

 標準(18.5 ≦ BMI < 25) 181 (79.0) 和食をよく食べる

 肥満(BMI ≧ 25) 19 ( 8.3)  全く当てはまらない 5 (2.2)

日常の食事作りを主に担当する者  あまり当てはまらない 46 (20.1)

 本人が加わる 4 ( 1.8)  少し当てはまる 116 (50.6)

 母親のみ 189 (82.5)  とてもよく当てはまる 62 (27.1)

 祖母,父親,または複数 28 (12.2) 酢の物をよく食べる

 無回答 8 ( 3.5)  全く当てはまらない 34 (14.9)

家族から食生活について  あまり当てはまらない 104 (45.4)

気を配るように教えられている  少し当てはまる 66 (28.8)

 全く当てはまらない 22 ( 9.6)  とてもよく当てはまる 25 (10.9)

 あまり当てはまらない 56 (24.4) 苦い味が好き

 少し当てはまる 78 (34.1) (コーヒー,ゴーヤ,苦いお茶など)

 とてもよく当てはまる 73 (31.9)  全く当てはまらない 88 (38.4)

味の感覚がわからなくなることがある  あまり当てはまらない 69 (30.2)

(風邪などの病気以外で)  少し当てはまる 42 (18.3)

 全く当てはまらない 136 (59.4)  とてもよく当てはまる 30 (13.1)

 あまり当てはまらない 74 (32.3) スパイシーな味が好き

 少し当てはまる 16 ( 7.0) (辛いカレー,唐辛子の入った料理など)

 とてもよく当てはまる 3 ( 1.3)  全く当てはまらない 49 (21.4)

食育基本法が施行されたのを知っているか  あまり当てはまらない 68 (29.7)

 知らない 173 (75.5)  少し当てはまる 53 (23.1)

 知っている 56 (24.5)  とてもよく当てはまる 59 (25.8)

表1.質問紙調査 解析対象者の属性 (n=229) n(%)

(5)

Ⅳ因子は,“ 食事作りに興味を持つ ”“ 家庭で食事作りを手 伝う.または担当する ” という食事作りや手伝いに関する 内容を示していることから,[食事作りに対する意識]と 命名した.

 次に,各下位尺度の信頼性を検討するために,確認的因 子分析で得られた下位尺度について,Cronbach のα値を 算出したところ,[外食・中食に対する抑制の意識]の因 子(4 項目)はα =0.850,[食事バランスに対する意識]

の因子(4 項目)はα =0.816,[作法・食環境に対する意 識]の因子(5 項目)はα =0.739,[食事作りに対する意識]

の因子(2 項目)はα =0.735 が得られ,尺度の内的整合 性が確認された.

 図 1 に確認的因子分析結果のパス図を示した.

 2)味覚についての意識

 味覚についての意識を測定する 11 項目について,2 因 子構造(味わいを重視する意識,薄味を重視する意識)を 仮定し,重み付けのない最小 2 乗法による探索的因子分

析を行い,さらに因子負荷量が 0.40 以上の項目(全項目)

を用いて確認的因子分析を行った.2 つの因子からそれぞ れ該当する項目が影響を受け,因子間に共分散を仮定し たモデルで分析したところ,χ2(43)=130.3,p=0.000,

適合度指標は,GFI=0.914,AGFI=0.868,RMSEA=0.094,

AIC=176.3 であった.そこで,項目の精選と因子的妥当性 の検討を行い 4 項目を削除したところ,χ2(13)=17.1,

p=0.193, 適 合 度 指 標 は,GFI=0.979,AGFI=0.955,

RMSEA=0.037,AIC=47.1 と,最初のモデルよりもデータ に適合した値が得られた.

 第Ⅰ因子は,“ 家族や友人と味付けの会話をする ”“ 色々 な食べ物の味に興味を示す ” など,味付けについての関心 や,おいしく味わう内容を示していることから,[味わい 重視の意識]と命名した.第Ⅱ因子は,“ 料理は,好みの 味付けより,健康に良い味付け(薄味)にする ”“ 濃い味 のものを食べないようにする ” など,健康に良い薄味に整 える内容を示していることから,[薄味重視の意識]と命

χ2(84)=106.4,p=0.050

GFI=0.938,AGFI=0.911,RMSEA=0.034 パス係数・相関係数は,全て有意 p<0.001

(n=229)

図1.食生活についての意識 確認的因子分析結果

(6)

名した.

 次に,各下位尺度の信頼性を検討するために,確認的 因子分析で得られた下位尺度について,Cronbach のα値 を算出したところ,[味わい重視の意識]の因子(4 項目)

はα =0.772,[薄味重視の意識]の因子(3 項目)はα

=0.811 が得られ,内的整合性が確認された.

 図 2 に確認的因子分析結果のパス図を示した.

 3)生活についての意識

 生活についての意識を測定する 9 項目について,包括 的な生活全体の内容を示していることから 1 因子構造を 仮定し,重み付けのない最小 2 乗法による探索的因子分 析を行い,さらに因子負荷量が 0.40 以上の項目(全項目)

を用いて確認的因子分析を行った.1 つの因子から項目 が影響を受けることを仮定したモデルで分析したところ,

χ2(27)=45.1,p=0.016, 適 合 度 指 標 は,GFI=0.958,

AGFI=0.930,RMSEA=0.054,AIC=81.1 で あ っ た. そ こ で,項目の精選と因子的妥当性の検討を行い 1 項目を削 除したところ,χ2(20)=23.2,p=0.278,適合度指標は,

GFI=0.976,AGFI=0.957,RMSEA=0.027,AIC=55.2 と,

最初のモデルよりもデータに適合した値が得られた.

 次に,尺度の信頼性を検討するために,確認的因子分 析で得られた尺度について,Cronbach のα値を算出し たところ,[生活についての意識]の因子(8 項目)はα

=0.840 が得られ,内的整合性が確認された.

 図 3 に確認的因子分析結果のパス図を示した.

 4)各行動の尺度

 各行動の尺度は,前項 1)から 3)の分析により意識に ついて得られた因子構造を採用した.すなわち,食行動は,

食生活についての意識で得られた 4 因子構造を適用し,[外 食・中食に対する抑制行動][食事バランスに対する行動]

[作法・食環境に対する行動][食事作りに対する行動]と 命名した.味覚についての行動は,味覚についての意識で 得られた 2 因子構造を適用し,[味わい重視の行動][薄 味重視の行動]と命名した.生活についての行動は,生活 についての意識で得られた 1 因子構造を適用し,[生活に ついての行動]と命名した.

(3)意識と行動の下位尺度得点の比較,相関

 意識と行動の差異について調べるために,それぞれの下 位尺度得点を用いて対応のあるt 検定による比較を行った 結果を表 2 に示した.食生活に着目すると,外食・中食 に対する抑制(t(228)=5.54,p<0.001)と,食事バラ ンス(t(228)=4.79,p<0.001)については,意識より 行動の得点が高く,食事作りについては,意識より行動の 得点が低かった(t(228)=11.97,p<0.001).味覚では,

味わい重視については,意識より行動の得点が低かった(t

(228)=2.19,p<0.05).生活については,意識より行動 の得点が低かった(t(228)=11.06,p<0.001).

 さらに,意識と行動間の関係性について明らかにする ために,意識と行動の下位尺度間の相関係数を算出し表 3 に示した.これより明らかな通り,意識の下位尺度と,行 動の下位尺度との間には,全て有意な正の相関が認められ

図 2.味覚についての意識 確認的因子分析結果 図 3.生活についての意識 確認的因子分析結果 χ2(13)=17.1, p=0.193

GFI=0.979,AGFI=0.955,RMSEA=0.037 パス係数・相関係数は,全て有意 p<0.001

(n=229)

χ2(20)=23.2,p=0.278

GFI=0.976,AGFI=0.957,RMSEA=0.027 パス係数は全て有意 p<0.001

(n=229)

(7)

た.食事作りに対する意識と食事バランスに対する行動は,

低い関係性がみられた(r=0.149,p<0.05)が,作法・食 環境に対する意識と,味わい重視の行動には,比較的高い 関係性がみられた(r=0.505,p<0.001).

(4)属性別,意識と行動の下位尺度得点の比較

 調査対象者を群分けし,意識と行動の下位尺度得点につ いてt 検定による比較を行った.表 4 に示す通り,各属性 の 2 群間で,得点に差のある下位尺度がみられた.食育 基本法の認識については,全ての意識の下位尺度,いくつ かの行動の下位尺度で得点に有意差がみられた.いずれも

“ 知っている ” と答えた群の得点が有意に高かった.

(5)属性と,意識と行動の下位尺度間の相関

 調査対象者の属性と,意識と行動の下位尺度間の相関係 数を表 5 に示した.朝食,昼食,夕食における内食の日数と,

外食・中食に対する抑制の意識や行動など,多くの下位 尺度との間に低い~中程度の有意な正の相関(r=0.136 ~ r=0.391)が認められた.反対に,朝食,昼食,夕食にお ける中食や外食の日数と,食事バランスに対する意識や 行動など,多くの下位尺度との間に低い有意な負の相関

(r=-0.130 ~ r=-0.298)が認められた.

 家族からの働きかけの程度は,全ての意識の下位尺度,

および全ての行動の下位尺度との間に低い~中程度の有意 な正の相関(r=0.159 ~ r=0.349)が認められた.

 料理の味付けや好みでは,家庭における料理の味付けが

塩からい,濃い程度は,薄味重視の意識や行動など,いく つかの下位尺度との間に低い~比較的高い有意な負の相関

(r=-0.135 ~ r=-0.400)が認められた.和食,酢の物の 好みの程度は,外食・中食に対する抑制の意識,食事バラ ンスに対する意識や行動など,多くの下位尺度との間に低 い~中程度の有意な正の相関(r=0.133 ~ r=0.305)が認 められた.

(6)健全な食行動・生活行動に影響をおよぼす要因  家族からの働きかけは,食生活・味覚・生活についての 意識に影響をおよぼす.また,食生活についての意識は,

健全な食行動,さらには,心身ともに健全な生活の実行に 影響をおよぼすとの仮説をたて,そのプロセスについて因 果モデルを作成し,構造方程式モデリングによる分析を 行った(図 4).

 なお,因果モデルの分析に先立ち,家族からの働きかけ

(「家族から食生活について気を配るように教えられてい る」の項目得点)を従属変数とし,性別(男性/女性)と 居住形態(自宅/寮・一人)を独立変数とする分散分析を 行った.なお,学年については,女性の大半(90.6%)は 1 年生であり,学年差は性差の要因が交絡している可能性 があるため,性別と居住形態のみを独立変数に用いた.そ の結果,主効果(性別F(1,225)=0.056,p>0.05,居住 形態F(1,225)=3.75,p>0.05),交互作用(F(1,225)

=2.20,p>0.05)ともに有意差が認められなかったことか

意 識 行 動

mean ± SD mean ± SD t 値 食生活 外食・中食抑制 2.27 ± 0.83 2.53 ± 0.85 5.54 ***

食事バランス 2.64 ± 0.80 2.84 ± 0.71 4.79 ***

作法・食環境 2.24 ± 0.64 2.22 ± 0.60 0.88 食事作り 2.70 ± 0.94 2.21 ± 1.02 11.97 ***

味覚 味わい重視 2.58 ± 0.79 2.53 ± 0.77 2.19 * 薄味重視 2.36 ± 0.82 2.36 ± 0.84 0.15 生 活 2.91 ± 0.66 2.51 ± 0.59 11.06 ***

表 2.意識と行動 下位尺度得点の比較

表 3.意識と行動 下位尺度間相関

(n=229)

(n=229) 対応のある t 検定,***p<0.001,*p<0.05

Pearson の相関係数,***p<0.001,**p<0.01,*p<0.05

行  動

食 生 活 味 覚

外食 ・ 中食 生 活

抑制 食事

バランス 作法

食環境 食事作り 味わい

重視 薄味

重視

意  識 食生活 外食・中食抑制 0.638 *** 0.311 *** 0.371 *** 0.429 *** 0.351 *** 0.305 *** 0.362 ***

食事バランス 0.283 *** 0.653 *** 0.455 *** 0.228 *** 0.462 *** 0.364 *** 0.470 ***

作法・食環境 0.288 *** 0.323 *** 0.805 *** 0.278 *** 0.505 *** 0.376 *** 0.398 ***

食事作り 0.345 *** 0.149 * 0.205 ** 0.805 *** 0.414 *** 0.269 *** 0.197 **

味覚 味わい重視 0.293 *** 0.354 *** 0.499 *** 0.407 *** 0.900 *** 0.388 *** 0.380 ***

薄味重視 0.260 *** 0.311 *** 0.394 *** 0.329 *** 0.438 *** 0.866 *** 0.296 ***

生 活 0.212 ** 0.305 *** 0.370 *** 0.243 *** 0.337 *** 0.252 *** 0.630 ***

(8)

性  別居住形態学  年食育基本法が施行されたのを 知っているか    (n)mean±SDt値     (n)mean±SDt値     (n)mean±SDt値     (n)mean±SDt値

意 識 男性 (90)2.17 ±0.86 自宅 (184)2.22 ±0.80 1年生 (180)2.33 ±0.84 知らない (173)2.19 ±0.84 外食・中食抑制1.42 2.07 *1.87 2.68 ** 女性(139)2.33 ±0.80 寮・一人(45)2.50 ±0.93 2年生以上(49)2.08 ±0.75 知っている(56)2.53 ±0.76 食生活男性 (90)2.63 ±0.76 自宅 (184)2.66 ±0.81 1年生 (180)2.70 ±0.80 知らない (173)2.52 ±0.78 食事バランス0.16 0.90 2.07 *4.22 *** 女性(139)2.65 ±0.82 寮・一人(45)2.54 ±0.72 2年生以上(49)2.43 ±0.77 知っている(56)3.02 ±0.75 男性 (90)2.16 ±0.66 自宅 (184)2.25 ±0.64 1年生 (180)2.27 ±0.63 知らない (173)2.16 ±0.63 作法・食環境1.54 0.76 1.28 3.46 *** 女性(139)2.29 ±0.62 寮・一人(45)2.17 ±0.62 2年生以上(49)2.13 ±0.68 知っている(56)2.49 ±0.60 男性 (90)2.32 ±0.98 自宅 (184)2.64 ±0.94 1年生 (180)2.82 ±0.90 知らない (173)2.57 ±0.95 食事作り4.99 ***1.71 3.99 ***3.59 *** 女性(139)2.94 ±0.83 寮・一人(45)2.91 ±0.96 2年生以上(49)2.23 ±0.96 知っている(56)3.08 ±0.84

男性 (90)2.53 ±0.80 自宅 (184)2.59 ±0.80 1年生 (180)2.62 ±0.78 知らない (173)2.49 ±0.79 味覚味わい重視0.74 0.45 1.53 2.84 ** 女性(139)2.61 ±0.78 寮・一人(45)2.53 ±0.75 2年生以上(49)2.42 ±0.80 知っている(56)2.83 ±0.72 男性 (90)2.30 ±0.89 自宅 (184)2.36 ±0.83 1年生 (180)2.38 ±0.82 知らない (173)2.29 ±0.79 薄味重視0.95 0.33 0.49 2.53 * 女性(139)2.41 ±0.77 寮・一人(45)2.40 ±0.79 2年生以上(49)2.31 ±0.83 知っている(56)2.60 ±0.87 男性 (90)3.04 ±0.66 自宅 (184)2.89 ±0.67 1年生 (180)2.90 ±0.68 知らない (173)2.86 ±0.67 生 活2.40 *0.76 0.61 1.98 * 女性(139)2.83 ±0.66 寮・一人(45)2.98 ±0.63 2年生以上(49)2.96 ±0.63 知っている(56)3.06 ±0.62

行 動 男性 (90)2.47 ±0.85 自宅 (184)2.50 ±0.84 1年生 (180)2.60 ±0.86 知らない (173)2.48 ±0.87 外食・中食抑制0.92 1.17 2.32 *1.83 女性(139)2.58 ±0.85 寮・一人(45)2.67 ±0.91 2年生以上(49)2.29 ±0.79 知っている(56)2.71 ±0.79 食生活男性 (90)2.87 ±0.69 自宅 (184)2.91 ±0.71 1年生 (180)2.87 ±0.71 知らない (173)2.77 ±0.70 食事バランス0.52 2.81 **1.13 2.53 * 女性(139)2.82 ±0.73 寮・一人(45)2.58 ±0.68 2年生以上(49)2.74 ±0.71 知っている(56)3.05 ±0.73 男性 (90)2.22 ±0.63 自宅 (184)2.23 ±0.60 1年生 (180)2.22 ±0.59 知らない (173)2.18 ±0.60 作法・食環境0.09 0.74 0.36 1.51 女性(139)2.21 ±0.59 寮・一人(45)2.16 ±0.63 2年生以上(49)2.19 ±0.67 知っている(56)2.32 ±0.60 男性 (90)1.86 ±0.99 自宅 (184)2.11 ±0.96 1年生 (180)2.32 ±1.02 知らない (173)2.02 ±0.97 食事作り4.28 ***2.66 *3.16 **5.04 *** 女性(139)2.43 ±0.98 寮・一人(45)2.61 ±1.18 2年生以上(49)1.81 ±0.96 知っている(56)2.78 ±0.97

男性 (90)2.48 ±0.76 自宅 (184)2.55 ±0.79 1年生 (180)2.57 ±0.77 知らない (173)2.46 ±0.78 味覚味わい重視0.79 0.95 1.63 2.29 * 女性(139)2.56 ±0.77 寮・一人(45)2.43 ±0.65 2年生以上(49)2.37 ±0.74 知っている(56)2.73 ±0.71 男性 (90)2.31 ±0.87 自宅 (184)2.36 ±0.85 1年生 (180)2.38 ±0.84 知らない (173)2.32 ±0.83 薄味重視0.70 0.03 0.69 1.32 女性(139)2.39 ±0.83 寮・一人(45)2.36 ±0.82 2年生以上(49)2.29 ±0.84 知っている(56)2.49 ±0.86 男性 (90)2.66 ±0.56 自宅 (184)2.49 ±0.60 1年生 (180)2.50 ±0.61 知らない (173)2.49 ±0.62 生 活3.06 **1.32 0.38 1.36 女性(139)2.42 ±0.59 寮・一人(45)2.62 ±0.55 2年生以上(49)2.54 ±0.52 知っている(56)2.60 ±0.49

表4.属性別下位尺度得点の比較 (n=229) t検定,***p<0.001,**p<0.01,*p<0.05

(9)

意 識 食 生 活 味 覚 外食 ・ 中食 生 活

抑制 食事

バランス 作法

食環境 食事作り 味わい

重視 薄味

重視

年齢 0.038 0.017 -0.034 -0.077 -0.022 0.128 0.168 *

家族数 0.056 0.076 0.002 0.030 0.010 0.024 -0.054

朝食内食日数 0.206 ** 0.208 ** 0.102 0.004 0.108 0.091 0.066 朝食中食日数 -0.153 * -0.160 * -0.014 0.060 -0.033 -0.062 0.046 朝食外食日数 -0.113 -0.039 -0.089 -0.037 -0.111 -0.072 -0.137 * 昼食内食日数 0.253 *** 0.184 ** 0.210 ** 0.149 * 0.055 0.138 * 0.050 昼食中食日数 -0.123 -0.150 * -0.092 0.002 -0.012 -0.070 -0.070 昼食外食日数 -0.165 * -0.058 -0.143 * -0.171 ** -0.053 -0.078 0.026 夕食内食日数 0.309 *** 0.343 *** 0.163 * 0.152 * 0.173 ** 0.121 0.201 **

夕食中食日数 -0.181 ** -0.267 *** -0.123 -0.075 -0.144 * -0.072 -0.143 * 夕食外食日数 -0.268 *** -0.223 *** -0.123 -0.152 * -0.115 -0.105 -0.146 * 家族からの働きかけ1) 0.256 *** 0.307 *** 0.204 ** 0.251 *** 0.349 *** 0.243 *** 0.298 ***

味の感覚2) 0.025 -0.010 0.024 0.026 0.041 -0.048 -0.074 BMI 3) -0.116 -0.166 * -0.069 0.039 -0.018 -0.056 -0.186 **

家庭の料理の味付けは甘い方4) 0.026 0.023 0.099 0.055 0.104 0.065 0.091 家庭の料理の味付けは塩からい方5) 0.029 -0.097 -0.137 * 0.006 -0.031 -0.135 * -0.089 家庭の料理の味付けは濃い方6) -0.083 -0.168 * -0.094 -0.058 0.005 -0.338 *** -0.140 * 和食をよく食べる7) 0.133 * 0.268 *** 0.157 * 0.120 0.299 *** 0.235 *** 0.243 ***

酢の物をよく食べる8) 0.163 * 0.278 *** 0.189 ** 0.139 * 0.305 *** 0.224 *** 0.198 **

苦い味が好き9) -0.002 0.144 * 0.075 0.186 ** 0.191 ** 0.145 * 0.083 スパイシーな味が好き10) -0.059 0.012 -0.012 -0.027 0.073 -0.059 0.071

行 動 食 生 活 味 覚

外食 ・ 中食 生 活

抑制 食事

バランス 作法

食環境 食事作り 味わい

重視 薄味

重視

年齢 0.014 0.046 -0.028 -0.072 -0.004 0.145 * 0.158 * 家族数 0.039 0.021 -0.001 0.039 -0.003 0.019 -0.045 朝食内食日数 0.240 *** 0.310 *** 0.136 * 0.040 0.102 0.105 0.121 朝食中食日数 -0.219 *** -0.221 *** -0.044 0.023 -0.072 -0.100 -0.049 朝食外食日数 -0.077 -0.106 -0.111 -0.091 -0.095 -0.054 -0.023 昼食内食日数 0.346 *** 0.259 *** 0.174 ** 0.181 ** 0.033 0.115 0.116 昼食中食日数 -0.202 ** -0.243 *** -0.077 -0.047 -0.013 -0.097 -0.134 * 昼食外食日数 -0.188 ** -0.061 -0.095 -0.151 * -0.027 -0.041 0.005 夕食内食日数 0.389 *** 0.391 *** 0.196 ** 0.187 ** 0.155 * 0.050 0.265 ***

夕食中食日数 -0.275 *** -0.298 *** -0.157 * -0.140 * -0.133 * -0.025 -0.264 ***

夕食外食日数 -0.295 *** -0.255 *** -0.130 * -0.141 * -0.098 -0.048 -0.126 家族からの働きかけ1) 0.159 * 0.335 *** 0.234 *** 0.220 *** 0.311 *** 0.212 ** 0.256 ***

味の感覚2) -0.018 0.042 0.019 -0.018 0.024 -0.076 -0.167 * BMI 3) 0.002 -0.101 -0.102 0.029 0.061 -0.001 -0.120 家庭の料理の味付けは甘い方4) -0.073 -0.039 0.037 0.074 0.060 0.044 0.039 家庭の料理の味付けは塩からい方5) -0.118 -0.099 -0.152 * 0.037 -0.031 -0.184 ** -0.187 **

家庭の料理の味付けは濃い方6) -0.077 -0.123 -0.111 -0.074 0.002 -0.400 *** -0.162 * 和食をよく食べる7) 0.097 0.170 * 0.094 0.079 0.276 *** 0.154 * 0.153 * 酢の物をよく食べる8) 0.067 0.277 *** 0.122 0.054 0.218 *** 0.178 ** 0.182 **

苦い味が好き9) 0.119 0.120 0.060 0.130 0.192 ** 0.146 * 0.102 スパイシーな味が好き10) -0.068 -0.005 -0.001 -0.019 0.083 0.020 0.080

表 5.属性と下位尺度間の相関 (n=229)

Pearson の相関係数,***p<0.001, **p<0.01, *p<0.05

1)家族からの働きかけ…「家族から食生活について気を配るように教えられている」

2)味の感覚…「味の感覚がわからなくなることがある(風邪などの病気以外で)」

3)BMI… BMI =体重 [kg]/(身長 [m])2   1)2)4)5)6)7)8)9)10)の回答について

 1.全く当てはまらない 2.あまり当てはまらない 3.少し当てはまる 4.とてもよく当てはまる

(10)

ら,本研究ではデータを全て併せて分析を行い,大学生の 全般的な傾向について検討することとした.

 モデルの評価はχ2(8)=5.33,p=0.722,適合度指標 は GFI=0.994,AGFI=0.974,RMSEA=0.000 の値が得られ,

モデルはデータに適合していることが確認された.

 モデルに設置したパスについて解釈すると,[家族から の働きかけ]は,[食生活についての意識][味覚について の意識(薄味重視の意識)][生活についての意識]に対し て,有意なパス係数 0.19(p<0.01),0.24(p<0.001),0.30

(p<0.001)を示していた.

 [味覚についての意識(薄味重視の意識)][生活につい ての意識]は,それぞれ[食生活についての意識] に対して,

有意なパス係数 0.44(p<0.001),0.42(p<0.001)を示した.

 [食生活についての意識]は,[食行動]に対して有意 なパス係数 0.83(p<0.001)を示し,さらに,[食行動]

は,[生活についての行動]に対して有意なパス係数 0.43

(p<0.001)を示した.

 以上のことから,家族からの働きかけは,食生活・味覚・

生活についての意識を媒介し,健全な食行動,さらに心身 ともに健全な生活の実行へと結び付くことが確認された.

 次に,[食行動],[生活についての行動]に対して影響 をおよぼす意識の総合効果を算出し,表 6 に示した.[食 行動]に対しては,同じ内容が含まれる[食生活について

の意識(0.829)]の総合効果が大きいことはもちろんの こと,それ以外では,[家族からの働きかけ(0.440)]の 効果が大きく,次いで[味覚についての意識(薄味重視の 意識)(0.302)],[生活についての意識(0.230)]の順であっ た.生活についての行動に対しては,同じ内容が含まれる

[生活についての意識(0.586)]の他に,[食生活につい ての意識(0.359)],次いで[家族からの働きかけ(0.256)]

の順に総合効果が大きかった.

図 4.健全な食行動,生活行動に影響をおよぼす要因について

表 6.食行動,生活についての行動に対する標準化総合効果 構造方程式モデリング 標準化解 (n=229) 

χ2(8)=5.33,p=0.722

GFI=0.994,AGFI=0.974,RMSEA=0.000

誤差変数,攪乱変数および共分散は煩雑になるので省略 太線…有意なパス p<0.01

※家族からの働きかけ

  「家族から食生活について気を配るように教えられている」の項目得点

※味覚についての意識

   「薄味重視の意識」の下位尺度得点

食行動 生活についての行動 家族からの働きかけ1) 0.440 0.256 食生活についての意識 0.829 0.359 味覚についての意識2) 0.302 0.067 生活についての意識 0.230 0.586 1)家族からの働きかけ

  「家族から食生活について気を配るように教えられている」

   の項目得点 2)味覚についての意識

  「薄味重視の意識」の下位尺度得点

(n=229)

(11)

5.考 察

(1)大学生における調理学習の重要性

 意識と行動の差異について検討するために,それぞれの 下位尺度得点を比較した結果,食事作りについては,意識 より行動の得点が有意に低いことが示された.すなわち食 事作りをしようとする意識を持ちながらも行動がともなっ ていないと推察される.長谷部ら10)は,家庭における調 理技術水準の低下は,内食生産を減少させ,食の外部化を 促進する要因であることを確認している.したがって,大 学生に調理学習を経験する機会を与え,調理技術を向上さ せることは,内食の機会を増加させ,健全な食行動の実行 へとつながることが推察される.調理学習は,食の自立の ための基礎的能力を獲得する重要な取り組みであると考え られた.

 佐野ら11)は,子ども(小・中学生)は,手伝いをする ことで大人に認められて自信を持ち,心の居場所を見いだ すことを指摘している.この点については,発達段階を経 た大学生にも当てはめて考えることが出来る.つまり,食 事作りを手伝うことによって家族から受け容れ認められ,

そのことが自信へとつながり,若者層の家庭における居場 所作りに肯定的な作用をもたらすものと考えられる.

 また,佐藤ら12)によれば,調理学習は食生活に関する 意思決定能力の育成を向上させる効果を持つという.こう した点からも,大学生に対して,調理学習を通して家庭で も食事作りに参加するよう働きかけを行うことが,今後の 食教育におけるひとつの方向性として考えられる. 

(2)意識を高めることの重要性

 調査対象者の属性と,各意識と行動の下位尺度間の相関 分析の結果から,朝食・昼食・夕食における内食の日数が 多い者ほど,食生活・味覚・生活についての意識の程度が 高いこと,反対に,中食や外食の日数が多い者ほど,食生 活・味覚・生活についての意識の程度が低いことが示され た.立松13)は,大学生が外食やコンビニで弁当を選ぶと きに,自分の好みの料理ばかりに偏るとの傾向を指摘して いる.したがって,中食や外食で手軽に食事を済ませると,

バランスのとれた食事の内容や,手作りの料理に対する意 識が低くなり,さらには,生活全般に対する意識の程度ま で低くなることが推察される.

 また,健全な食行動に影響をおよぼす要因に関する因果 モデルの分析結果から,食生活についての意識は,健全な 食行動へと結び付くことが示された.矢野14)は大学生と 社会人を対象にして食物摂取状況に対する自己評価を調査 したところ,食生活の実態に問題があることについて認識 のない者は,食生活に対する不満がなく,食生活を改めよ うとする姿勢がみられなかったと報告している.このよう な結果からも,学生自身が自己の食生活を見直し,食生活

に対する意識や価値を高めるような指導が必要といえる.

食に対する考え方や態度に対して教育的指導を行うこと で,学生達の日常生活における食行動の改善へとつなげて いけるのではないだろうか.

 食育基本法3)では,義務教育における食教育や,保護者・

教育関係者等の役割が掲げられている.しかし,その中間 の年代であり次代を担う大学生は,食教育を受ける機会が 少ないことが懸念される.特に,大学生が食生活をより良 いものにしていこうという意識を高めるためには,栄養学 的知識を与えるだけではなく,学生自身が食に対する情報 や問題点を調査する,自分自身の食生活状況を把握するな ど,具体的に様々な角度から問題点を捉え,気付くことが 重要であり,実践体験型の指導が必要であると考える.近 年,主に小学生を対象とした実践体験型の食教育が実施さ れるようになってきているが,大学生においては,実践体 験型食教育は,食・栄養系を専門に学ぶ大学生にのみ実施 されていることになる.健全な食習慣を実践する意識を向 上させるために,大学の一般教養科目に実践体験型食教育 を実施する必要性が高いと考えられた.

(3)家族の働きかけの重要性

 調査対象者の属性と,各意識と行動の下位尺度間の相関 分析の結果から,家庭における料理の味付けが塩からい者 や濃い者ほど,食生活・味覚・生活についての意識や行動 の程度が低いこと,さらに和食や酢の物をよく食べる者ほ ど食生活・味覚・生活についての意識や行動の程度が高い ことが示された.田中ら15)は,女子大学生の塩味に対す る味覚特性と食物摂取状況について調査を行っている.そ の結果,学生の味覚や減塩意識が,家庭の味や母親の意識 などの環境要因から影響を受けている可能性や,薄味を好 む者は,簡便な食事よりも,比較的品数の多い食事を摂取 している可能性が示されている.本研究で対象者となった 大学生における家庭での食事作りの担当者は,大半が母親 であることから,家庭での味付けや食事内容に関する意識 や行動が,大学生の食生活・味覚・生活についての意識や 行動と関わりを持つことが推察される.

 また,調査対象者の属性と,各意識と行動の下位尺度間 の相関分析の結果から,家族からの働きかけの程度が高い 者ほど,食生活・味覚・生活についての意識や行動の程度 が高いことが示された.さらに,健全な食行動・生活行動 に影響をおよぼす要因に関する因果モデルの分析結果か ら,家族からの働きかけは,食生活・味覚・生活について の意識を媒介して,健全な食行動,さらに心身ともに健全 な生活の実行へとつながることが示唆され,家族の影響力 が比較的大きいことが確認できた.春木ら16)は,家族と りわけ母親の好ましい食に関する態度や行動は,単に小学 生の食行動に影響を与えるだけでなく,セルフエスティー

(12)

ムを高め,ライフスキルの獲得にも好ましい影響を与える 可能性を示しており,保護者が成長期の子どもにおよぼす 影響力は大きい.本研究における大学生を対象とした調査 においても,家族の食生活に対する適切な働きかけが,心 身ともに健全な生活を送るための意識の形成に影響してい ることが示唆された.したがって,家族は,成長期のみな らず,食の自立が推進される大学生においても,食生活に 対して継続的に,且つ,適切な働きかけを行うことが重要 であるといえる.また,このことは,将来を見据えて,次 代を担う大学生に対して家族の働きかけの重要性を認識さ せることが必要であり,食に対する意識の向上にもつなが ると考えられた.

 今後は縦断研究を実施し,大学生に対する調理学習や,

意識の向上を目的とした介入を行い,食生活についての意 識や行動の変化を検証していく予定である.また,意識や 行動に影響をおよぼす要因については,家族だけではなく,

教員や友人との関係を含めて,さらに詳細に分析を行う必 要性があると考えられた.

6.まとめ

 本研究では,大学生を対象として,食生活・味覚・生活 についての意識と行動に関する質問紙調査を実施し,今日 の大学生における食生活の現状把握と,心身ともに健全な 生活を送ることの規定要因を検討し,以下の結果を得た.

 (1)食生活では,外食・中食に対する抑制について,

食事バランスについては,意識より行動の得点の方が高く,

食事作りについては,意識より行動の得点の方が低かった.

味覚では,味わい重視については,意識より行動の得点の 方が低かった.生活については,意識より行動の得点の方 が低かった.

 (2)調査対象者の属性と,各意識と行動の下位尺度と の関係性を分析したところ,朝食・昼食・夕食の内食の日 数が多い者ほど,関連のみられた食生活・味覚・生活につ いての意識や行動の程度が高く,反対に,中食や外食の日 数が多い者ほど,関連のみられた食生活・味覚・生活につ いての意識や行動の程度が低かった.また,家族からの働 きかけの程度が高い者ほど,全ての食生活・味覚・生活に ついての意識や行動の程度が高かった.さらに,料理の味 付けや好みでは,家庭における料理の味付けが塩からい者,

濃い者ほど,関連のみられた食生活・味覚・生活について の意識や行動の程度が低く,和食や酢の物をよく食べる者 ほど,関連のみられた食生活・味覚・生活についての意識 や行動の程度が高かった.

 (3)健全な食行動・生活行動に影響をおよぼす要因に ついて検討した結果,食生活についての意識の向上は,健 全な食行動の実行につながること,また家族からの働きか

けは,大学生の食生活・味覚・生活についての意識を媒介 して,健全な食行動,さらに心身ともに健全な生活の実行 へとつながることが確認された.

 調査にご協力いただきました対象者の皆様,調査の実施 に際しご協力いただきました皆様に深くお礼を申し上げます.

引 用 文 献

1) 渋川祥子:食生活・食育と家政学,家政誌,57,133- 136(2006)

2) 岩村暢子:『変わる家族 変わる食卓』,勁草書房,東京,

68-152(2005)

3) 食育基本法:平成十七年六月十七日法律第六十三号  4) 浜口郁枝,福本タミ子:母親の食生活意識と幼児の摂食

行動との関連,大谷女子短期大学紀要,47,1-20(2003)

5) 高畑彩友美,冨田圭子,饗庭照美,大谷貴美子:母親の 食生活に対する意識や生活充実感が幼稚園に通う子ど もとのコミュニケーション頻度に与える影響,家政誌,

57,287-299(2006)

6) 加藤佐千子:大学生への食育のあり方に関する研究,関 西教育学会紀要,28,136-140(2004)

7) 千葉陽子,我部山キヨ子,菅佐和子,金岡緑:親の養育 態度に対する子どもの認知と子どもの家族間の情緒的安 定や生き方志向との関連-大学生への調査を通して-,

母性衛生,49,366-373(2008)

8) 浜口郁枝,大喜多祥子,福本タミ子:唎味能力テストの 検討(第 7 報)-唎味能力と食生活・味覚・生活につい ての意識,行動との関連-,大阪大谷大学短期大学部紀要,

50,1-21(2007)

9) 山本嘉一郎,小野寺孝義 編:『Amos による共分散構 造分析と解析事例』,ナカニシヤ出版,京都,1-96,99- 104(2006)

10) 長谷部杏子,草苅仁:調理技術と食の外部化,神戸大学 農業経済,39,37-42(2007)

11) 佐野勝徳,長谷川千寿,佐野敦子:よく遊びお手伝いも よくしている子はキレにくい,公衆衛生,65,863-866

(2001)

12) 佐藤文子,渋川祥子:調理学習による意思決定能力の育 成,家政誌,58,633-643(2007)

13) 立松洋子:食生活改善のための調理実習献立の検討(留 学生や大学生の実態を考慮した栄養教育上の調理実習献 立の検討),別府大学短期大学部紀要,26,83-100(2007)

14) 矢野由起:食物摂取状況に対する自己評価(第 2 報)

-自己評価力に関わる要因について-,家教誌,40,

31-38(1997)

15) 田中順子,田原モト子,山本由喜子:女子学生の塩味 に対する味覚特性と食物摂取状況,日本食生活学会誌,

11,353-361(2001)

16) 春木敏,川畑徹朗:小学生の朝食摂取行動の関連要因,

日本公衆衛生雑誌,52,235-245(2005)

参照

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