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公的自覚状態は視点取得反応を高めるか -評価懸念を調整変数として-

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(1)Title. 公的自覚状態は視点取得反応を高めるか −評価懸念を調整変数として −. Author(s). 戸田, 弘二; 伊藤, 景; 喜井, 調; 岡部, 雪乃; 吉田, 美由紀. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 61(1): 41-49. Issue Date. 2010-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2277. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第61巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.61,No.1. 平成22年8月 August,2010. 公的自覚状態は視点取得反応を高めるか1 一評価懸念を調整変数として−. 戸田 弘二・伊藤 景・吉井 調・岡部 雪乃・吉田美由紀 北海道教育大学札幌枚社会心理学研究室. DoesPublicSelf−aWareneSSImprovetheFormationofPerspective? −TheRoleofEvaluationApprehensionasaModeratorVariable− TODAKoji,ITOHAkari,KIIShirabu,OKABEYukinoandYOSHIDAMiyuki DepartmentofSocialPsychology,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 本研究の目的は,公的自己意識と自己中心性についての押見・坂井(2002)の仮説を,公的自覚状態と評 価懸念に関する実験操作を改善して再検討することである。すなわち評価懸念が弱い状況では,公的自覚状 態低群の方が高群よりも非自己中心的な他者の視点を取り入れた反応(視点取得反応)を現し(仮説1), 評価懸念が強い状況では,公的自覚状態高群の方が低群よりも視点取得反応を現す(仮説2)と予想した。 被験者は大学生と大学院生の男女45名であり,視点取得反応はHass(1984)の“額にEを描く手続き’’に準 じた実験課題によって測定した。その結果,評価懸念が弱い状況では公的自覚状態低群は高群に比べて視点 取得反応得点が高いという有意な傾向が認められ,これは仮説1を支持する傾向にあった。一方,評価懸念 が強い状況では,公的自覚状態高群の方が低群よりも視点取得反応を現すという仮説2は支持されなかった が,平均値は仮説2を支持する方向に推移していた。. Keywords:公的自覚状態,評価懸念,視点取得反応,額にEを描く手続き. 1本論文は平成21年度心理学応用実験ⅡEにおいて第1著者の指導の下に行った研究成果を,第1著者が分析・執筆し直し たものである。. 41.

(3) 戸田 弘二・伊藤 景・喜井. 調・岡部 雪乃・ 吉田美由紀. 実験は“額にEを描く手続’’と呼ばれ,被験者に 問題と目的. 突然カメラを向けられると,それまで自然にし. 「器用さと利き手の傾向を調べるため」と教示し. てすぐに,額のところに指でアルファベット大文. ていた行動がぎこちなくなってしまったり,表情. 字のEを描くように求めるものであった。Hass. や動作を気取ってしまった経験は誰にでもあるの. は被験者が自己中心的な視点をとれば,被験者側. ではないだろうか。自覚状態理論(Duval&. から見て正しくEとみえる描き方(観察者側から. Wicklund,1972)によると,これは自己への注. 見てEが反転してみえる描き方)をし,被験者が. 意が強まった状態(自覚状態)において生じる現. 視点取得していれば,観察者側から見て正しくE. 象だといえる。さらにBass(1980)の自己意識. とみえる描き方をするであろうと考えたのであ. 理論によると,自覚状態は公的自覚状態と私的自. る。結果は,公的自己意識高群の方が低群より観. 覚状態に分けられる。公的自覚状態は,自分の容. 察者側から見て正しくEとみえる描き方をした者. 姿や振る舞い方などの,他人が観察できるような. が多く,公的自己意識の高い人は自己中心性を示. 公的自己に注意が向いた状態であり,私的自覚状. すとしたFenigsteinらの研究と対立する結果で. 態は,自分の身体感覚や感情,思考などの,本人. あった。. しかわからないような私的自己に注意が向いた状. 押見・坂井(2002)は,Hassとその他の研究. 態である。また,このような自覚状態になりやす. 結果から,各研究の状況に含まれていた評価懸念. い性格特性のことを自己意識特性という。. の程度の違いにより結果が対立したのではないか. 公的自己意識の高い人が示す行動特徴として,. と仮定した。評価懸念(evaluation apprehension). 自己中心性がある。自己中心性(egocentricity). とは,自分がそこにいる他人から自分の能力や人. とは自分に固執し,他者の視点に立って物事を見. 間性を評価されているのではないかと懸念を持つ. る傾向が弱いので,出来事に対する自分の関与や. ことである(押見,1992)。公的自己意識と自己. 影響を過大評価したり,自分本位の反応を行った. 中心性との間に正の関係を見出した研究群に共通. りすることである(押見・坂井,2002)。例えば,. していることは,いずれも質問紙検査や仮想状況. 押見・坂井(2002)によれば,自己標的意識(自. の思考実験調査といった手続きを用いており,そ. 分に向けられたか定かでない出来事に対して,自. こでは評価懸念はそれほど喚起されなかったと考. 分がその出来事の対象あるいは被害者であると過. えた。一方,公的自己意識と視点取得反応の間に. 剰に判断すること)と公的自己意識に正の相関を. 正の関係を見出したHassの研究では,利き手と. 見出した研究(Fenigstein,1984),パラノイア. 器用さに関する研究と告げられただけで額にEを. 傾向(出来事を過剰に自分と関連づける傾向)と. 描くよう指示されており,この意外な課題要請に. 公的自己意識に正の関係を見出した研究. 被験者は戸惑い,評価懸念が刺激されたのではな. (Fenigstein&Vanable,1992),他者の考えは. いかと考えた。評価懸念が刺激されると,他者の. 自分と同じであると自己中心的に仮定する傾向が. 顕示性(salience)が強まるので自己中心性は弱. 公的自己意識と関係していることを確認した研究. まると予想したのである。以上のことから,押見. (Fenigstein&Abrams,1993)などが報告さ れている。. 一方でHass(1984)は公的自己意識の高い人. らはHassの研究に評価懸念という調整変数を追 加し,公的自己意識高群は低群よりも,評価懸念. が弱い状況では自己中心的反応を強く現わし,評. の方が視点取得反応を強く示すことを報告してい. 価懸念が強い状況では非自己中心的反応(すなわ. る。視点取得反応とは,自己中心的な視点を離れ. ち,視点取得反応)を強く現わすという仮説をた. て他者の視点を取って物事を認識することであ. て,額にEを描く手続きを用いて検討した。. り,自己中心性とは反対の概念である。Hassの. 42. その結果,評価懸念とは無関係に,公的自己意.

(4) 公的自覚状態は視点取得反応を高めるか. 識高群は低群より自己中心的反応を強く現わす傾. 研究ではHassの実験操作も参考にして,ビデオ. 向が見られ,仮説は支持されなかった。押見らは. カメラで撮影しながら実験助手に観察させること. このような結果になった原因として,評価懸念が. で,公的自覚状態を高め,状態としての公的自己. 十分に喚起されていなかったことと,仮説自体が. 意識を操作することとした。. 安当ではなかった可能性をあげている。押見らは. 以上のように,評価懸念及び公的自覚状態の操. 額にEを描く課題(E課題)を行う前の第1課題. 作を改良することで,もう一度押見らの仮説を検. として,パソコンのディスプレイに表示された5. 討する必要があると考えた。本研究の仮説は以下. 文字の英単語のつづりを逆に入力する課題(パソ. の通りである。. コン入力課題)を行い,それによって評価懸念を. 仮説1:評価懸念が弱い状況では,公的自覚状. 操作している。具体的には,入力の際に単語と単. 態低群の方が高群よりも視点取得得点は高くなる. 語の間に実験者が指示した数字から特定の数字を. だろう。. 減じた数字を順次挿入する場合を難課題条件,常. 仮説2:評価懸念が強い状況では,公的自覚状. に2を挿入する場合を易課題条件として,難課題. 態高群の方が低群よりも視点取得得点は高くなる. の方が評価懸念を高めると考えた。しかし実際に. だろう。. は,パソコン入力課題の性質についての教示が十. また,利き手と非利き手の違いおよび書く文字. 分ではなかったことや,E課題とパソコン入力課. の種類による影響も探索的に検討することにし. 題が別個の課題として被験者に捉えられ,パソコ. た。利き手と非利き手の影響は,Hass(1984). ン入力課題で喚起した評価懸念がE課題を行うと. では検討されているが,押見・坂井(2002)では. きに効果を持続できなかったことなどから,評価. 検討されていない。Hassの研究では,利き手と. 懸念の操作が不十分であった可能性を指摘してい. 非利き手によって額にEを描く向きに違いは見出. る。. されなかった。しかし,Hassの実験では「E」. 押見らの研究では,彼ら自身も指摘しているよ. 一文字しか描いていないため,本当に利き手と非. うに評価懸念の操作が不足していた可能性がある. 利き手に違いがないといえるかどうかに関しては. ため,仮説の妥当性についてはまだ判断すること. 必ずしも明らかになっていない。さらに,額に書. はできない。本研究では評価懸念の操作として,. く文字の種類については,押見・坂井(2002)は. 押見らのようにE課題の他に別の課題を用意する. 「E・S・Z・の・は・よ」というようにアルファ. のではなく,E課題そのものを操作の材料とする. ベットとひらがなを使っていたが,文字の種類に. ことで,E課題遂行時の評価懸念を操作した。具. よる分析は行っていない。本研究では試行数を増. 体的には,E課題を「手先の器用さと知能をはか. やすことで,文字の種類(アルファベットとカタ. る課題であり,実験結果を他人と比べる」と被験. カナ2)による結果の違いについても分析できる. 者に説明することで,評価懸念を高めようとする. ように計画した。. ものである。. また,押見らの研究では公的自己意識を質問紙 方 法. で測り,特性としての公的自己意識を扱っている が,Hassの研究では公的自覚状態を操作してお り、加えて実験3では公的自覚状態と公的自己意. 被験者. 北海道教育大学の大学生・大学院生45名(男性. 識特性の交互作用が有意になっている。つまり, 公的自覚状態と公的自己意識特性はその組み合わ. 2 ひらがなは,「ね」,「ぬ」,「あ」など反転した形状が. せによっては視点取得反応に対して必ずしも同様. イメージしにくく,誤答が増える恐れがあったので本. の効果を持つとはいえないのである。そこで,本. 研究ではカタカナを用いることとした。. 43.

(5) 戸田 弘二・伊藤 景・喜井. 調・岡部 雪乃・ 吉田美由紀. 21名,女性24名)。平均年齢は19.93歳(SD=. 研究で明らかになっています。私たちはこの研究. 1.39)。. の追試を行っています。実験が終了しましたら,. 実験計画. あなたの実験結果が,全体のデータと比べてどの. 公的自覚状態(高・低)×評価懸念(強・弱). くらいの位置にあるかお伝えしますので,頑張っ. の2要因計画で行った。2要因とも被験者間要因. てください」と教示した。評価懸念弱群には,実. である。被験者はランダム配置で配分した。公的. 験の目的として,「わたしたちは,『手先の器用さ』. 自覚状態高群・評価懸念強群は10名,公的自覚状. を測るための新しい方法を開発しています。その. 態高群・評価懸念弱群は12名,公的自覚状態低. ためにいくつかの質問と手先の器用さを測り,. 群・評価懸念強群は12名,公的自覚状態低群・評. データを集めていますので,ご協力お願いします」. 価懸念弱群は11名であっが。. と教示した。. 独立変数の操作. 手続き. 公的自覚状態の操作は,実験助手の存在,ビデ. 被験者は,実験者と共に実験室に入室し,90度. オカメラの撮影により行った。具体的には,公的. の位置に座った(Figurel参照)。被験者にはま. 自覚状態高群には真正面にビデオカメラを置い. ず、事前質問紙への回答を求めた。次に,実験者. て,被験者の許可を得て撮影し,さらに斜め向か. が実験の目的と手順について説明し,その後,額. いから計測係の実験助手の視線を感じさせるよう. に文字を描く課題を行った。額に文字を描く課題. にした。ビデオカメラの撮影に関しては、「実験. は,利き手,非利き手それぞれ2試行ずつ練習課. 終了後に被験者の反応をもう一度確認するため」. 題を行った後,本課題を利き手,非利き手それぞ. と教示した。ビデオカメラの撮影を拒んだ被験者. れ10試行ずつ行った。実験課題終了後,事後質問. はいなかった。公的自覚状態低群でも真正面にビ. 紙への回答を求め,さらに口頭でも実験に対する. デオカメラを置いたが,コンセントを抜き,レン. 内省報告を求めた。そして,最後にデブリーフィ. ズを下向きにして,撮影していないことが分かる. ングを行った。デブリー. ようにしておいた。自覚状態低群にはビデオカメ. 旨説明を記述した用紙を渡し,読んだ上で意見や. ラについての教示はしなかった。また,実験助手. 感想などを自由に記述するよう求めた。実験に関. はおかずに実験者単独で行った。. する疑義,不信についてのコメントを記入したり. 評価懸念の操作は,教示によって行った。具体 的には,評価懸念強群には実験の目的として,「こ. フィングでは,実験の趣. 述べた被験者はいなかった。 額に文字を描く課題. の実験では,『手先の器用さと知能の高さ』につ. 被験者はまず両手をテーブルの上に置き,実験. いて研究することを目的としています。認知症の. 者からカタカナとアルファベット大文字の中から. 予防としてこまめに指先を使うことが有効だと言. 1文字指示されたら,テーブルの上にあるボード. われていますが,これに関連して,手先が器用な. を額に当てて,ボードにはさまれている紙に指示. 人ほど知能が相対的に高いということが,最近の. された文字を鉛筆でなるべく早く描く課題を行っ. た。描き終えたら,描いた面が被験者から見えな 3 公的自己意識に関する7項目の平均値を算出し,こ れを従属変数にして公的白覚状態(高・低)×評価懸 念(強・弱)の2要因分散分析を行った。その結果,. らった。実験者は,被験者に文字が見えないよう. 公的自覚状態の主効果(ダ(1.41)=0.60,〃.∫.),評価懸念. に紙を取り換えていった。. の主効果(ダ(1.41)=0.53,〃.ぶ.),交互作用(ダ(1.41)= 0.47,〃.ぶ.),いずれにおいても有意差は認められず,各. 群における公的自己意識特性に顕著な違いは認められ. 44. いように ,紙側を下にしてテーブルに置いても. 練習課題を利き手で2試行(エとH)と非利き 手で2試行(Aとニ)行った後,本課題を利き手. ないことが確認された。なお,私的自己意識特性,対. で10試行(S,E,ユ,サ,K,夕,ス,Z,ネ,. 人不安特性においても同様の結果であった。. G),非利き手で10試行(マ,F,ケ,セ,C,R,.

(6) ノ公的自覚状態は視点取得反応を高めるか. モ,Q,L,ヨ)行った。 その際,実験者が文字を指示してから,被験者. 公的自覚状態と評価懸念に関する8項目につい て,Promax回転による主成分分析を行った。. が文字を書き終わってテーブルに両手を置くまで. 各主成分がそれぞれ公的自覚状態と評価懸念を表. の時間をストップウオッチで計測し,記録した。. すのにふさわしくなるように項目の取捨選択を行 、,最終的にTablelに示す結果を得た。. 質問紙. 事前質問紙には,Fenigstein,Scheier&Buss (1975)のオリジナル版を翻訳した池田・押見 (1999)の日本語版自己意識尺度を用いた。公的自. Tablel.公的自覚状態と評価懸念チェックリスト の主成分分析結果. 項目からなり,回答形式は“全くあてはまらない’’ (1点)から“非常にあてはまる’’(5点)まで の5件法である。. 事後質問紙は,実験中の公的自覚状態と評価懸. Ⅰ. 項目内容. 己意識7項目,私的自己意識10項目,対人不安6. Ⅱ. 3.恥ずかしかった. .894 .041. 1.文字を書く際に、不安を感じた. .781.144. 6.カメラが気になった. .518 −.354. 2.良い評価を得ようと意識した. .015 .888. 5.結果がどう評価されるのか気になった .013 .761 Ⅰ−Ⅱの成分相関. 念を問うもので,計8項目作成した(「良い評価を. .114. 得ようと意識した」,「カメラが気になった」など)。 回答形式は,“全く感じなかっだ’(1点)から“非. 第1主成分は「恥ずかしかった」,「文字を書く. 常に感じだ’(5点)までの5件法である。さらに,. 際に,不安を感じた」,「カメラが気になった」に. 実験に関して気になったことや気をつけたことを. 高い負荷量を示していたので「公的自覚状態」の. 自由記述で回答してもらった。. 主成分と解釈した。第2主成分は「良い評価を得. 実験日時・場所. ようと意識した」,「結果がどう評価されるのか気. 2009年12月上旬∼下旬にかけて,北海道教育大 学札幌校の心理学第4演習室で行った。. になった」に高い負荷量を示していたので「評価 懸念」の主成分と解釈した。さらに回帰法による 因子得点を算出し,それぞれ公的自覚状態得点, 評価懸念得点とした。 次に,実験操作の有効性を検討するために,公. 的自覚状態高群と低群および評価懸念強群と弱群 の間で,それぞれ公的自覚状態得点,評価懸念得. 点についてt検定を行った。その結果,公的自覚 状態得点では公的自覚状態高群と低群の間に有意 傾向が認められた(f(42)=1.76,♪=.086)。平均 値をみると公的自覚状態高群では0.26,低群では −0.26と高群において有意に高い傾向にあった。. 一方,評価懸念得点では評価懸念強群と弱群の間 Figurel.実験室での被験者と実験者,実験助手, ビデオカメラの位置. に有意差は見られなかった(f(42)=0.93,〃.ざ.)。 しかし,平均値をみると評価懸念強群では0.15, 弱群では−0.13となっており,有意ではなかった ものの強群で高い値となっていた。. 結 果 操作チェック 操作チェックに用いる変数を作成するために,. 仮説の検討. 指示された文字を他者の視点から見て文字が正 しくみえるように描いた反応を視点取得反応とし. 45.

(7) 戸田 弘二・伊藤 景・喜井 調・岡部 雪乃・. 吉田美由紀. た。視点取得得点は試行数に対する視点取得反応. が有意に高かった(ダ(1,41)=4.09,♪<.05)。すな. 数の比率とし,両手両文字の20試行,両手ローマ. わち仮説1を支持する結果であった(Figure 2. 字の10試行,両手カタカナの10試行,利き手両文. 参照)。. 字の10試行,利き手ローマ字の5試行,利き手カ タカナの5試行,非利き手両文字の10試行,非利. .70. き手ローマ字の5試行,非利き手カタカナの5試. .65. 田評価懸念弱 ■評価懸念強. 行のそれぞれに対する比率4を計算し,計9種類. .60. の視点取得得点を算出した。いずれも値が大きい. ,55. ほど視点取得傾向が強く自己中心的反応傾向が弱 ,50. いことを意味する。. .45. この9種類の視点取得得点を従属変数に,公的 自覚状態(高・低)と評価懸念(強・弱)を独立変数. .40. とした2要因の分散分析を行った(Table 2)。. .35. その結果,交互作用に有意傾向を示したのは,. 」. .30. 低. 両手両文字(ダ(1,41)=3.34,♪=.075),両手ロー. 高 公的自覚状態. マ字(ダ(1,41)=3.88,♪=.056),利き手両文字. Figure2 両手両文字における視点取得得点. (ダ(1,41)=3.362,♪=.069),利き手ローマ字. (F(1,41)=3.42,♪=.072),非利き手ローマ字 次いで両手ローマ字について単純主効果の検定. (F(1,41)=2.83,♪=.100)の5つの従属変数で. を行ったところ,評価懸念が弱い群では公的自覚. あった。. 状態が低い群は高い群よりも視点取得得点が有意. まず,両手両文字について単純主効果の検定を 行ったところ,評価懸念が弱い群においては公的. に高く(ダ(1.41)=4.66,♪<.05),また公的自覚. 自覚状態が低い群は,高い群よりも視点取得得点. 状態が低い群においては評価懸念が弱い群は,強. Table 2.視点取得得点の平均値と分散分析結果 公 的 自 覚 状 態 高 群. 低 群. 評価懸念 公的自覚 評価懸念 強群 弱群 強群 弱群 F値 評価懸念. F値. F値(有意確率). 両手両文字. .568 .448 .510 .647. 1.00. 0.01. 両手ローマ字. .524 .442 .451 .681. 1.09. 0.86. 3.34†(p=.075) 3.88†(p=.056). 両手カタカナ. .610 .451 .569. .610. 0.50. 0.50. 1.46(p=.235). 利き手両文字. .618. .658. 0.37. 0.02. 利き手ローマ字. .550. .450. .471. .673. 0.77. 0.39. 3.62†(p=.069) 3.42†(p=.072). 利き手カタカナ. .680. .450. .550. .646. 0.08. 0.34. 1.98(p=.167). 非利き手両文字. .520. .450. .507. .635. 1.18. 0.14. 1.58(p=.216). 非利き手ローマ字. .500. .433. .433. .691. 0.98. 0.98. 2.83†(p=.100). 非利き手カタカナ. .540. .573. 1.07. 0.41. 0.26(p=.614). .451 .511. .446. †p<.10. 4 他者の視点から見ても,自己の視点から見ても正しく みえない回答は誤答として扱い,比率計算の母数には. 含めなかった。. 46. 交互作用. .583.

(8) 公的自覚状態は視点取得反応を高めるか. い群よりも視点取得得点が有意に高かった. また利き手ローマ字,非利き手ローマ字につい. (ダ(1,41)=4.30,♪<.05)。ここでも仮説1は支持. ても単純主効果の検定を行ったところ,いずれも. された(Figure3参照)。. 評価懸念が弱い群では公的自覚状態が低い群は高. い群よりも視点取得得点が高い有意な傾向が(そ れぞれ,ダ(1,41)=3・82,♪=・058;ダ(1,41)=3・66,. .70 .65. ロ評価懸念弱. .60. ■評価懸念強. ♪=0.63),また公的自覚状態が低い群においては 評価懸念が弱い群は,強い群よりも視点取得得点 が高い有意な傾向みられた(それぞれ,ダ(1,41)=. .55. 3.14,♪=.0弛ダ(1,41)=3.66,♪=.063)(Figure .50. 5,Figure6参照)。. .45 .40 .70 .35. □評価懸念弱. .65. .30. 低. 高. 公的自覚状態. ■評価懸念強. .60 .55. Figure3 両手ローマ字における視点取得得点. .50 .45. 同様に,利き手両文字において単純主効果の検. .40. 定を行ったところ,評価懸念が弱い群では公的自 覚状態が低い群は高い群よりも視点取得得点が高 い有意な傾向が見られた(ダ(1.41)=3.23,♪=.079). .35 .30. 低. (Figure 4参照)∩. 高. 公的自覚状態 Figure5 利き手ローマ字における視点取得得点. .70. □評価懸念弱. .70. ロ評価懸念弱. .65. ■評価懸念強. .65. ■評価懸念強. .60. .60. .55. .55. .50. .50. .45. .45 .40. .40. .35. .35. .30. .30. 低. 高. 公的自覚状態 Figure4 利き手両文字における視点取得得点. 低. 高. 公的自覚状態 Figure6 非利き手ローマ字における視点取得得点. 47.

(9) 戸田 弘二・伊藤 景・喜井. 以上の結果はいずれも仮説1を支持する方向で. 調・岡部 雪乃・ 吉田美由紀. 字の種類による影響を探索的に検討した。その結. のものである。また,いずれの場合も仮説2は支. 果,交互作用に有意傾向が認められた5つの従属. 持されなかったが,平均値は仮説2を支持する方. 変数のうち,すべての変数でローマ字が使われて. 向を示していた。. おり,カタカナだけを用いた変数は一つもなかっ. なお,利き手と非利き手の違いおよび書く文字. た。このことから,ローマ字を使った従属変数で. の種類による影響については考察で検討すること. 主に仮説が支持されたことがわかる(Tablel参. とする。. 照)。また,5つの従属変数のうち,非利き手を 用いた変数が1つだけあったが,この変数はロー. マ字を使っていたため,必ずしも非利き手の効果 考 察 本研究では,評価懸念が弱い状況では,公的自. であるとはいえなかった。残りの4変数は,すべ. て利き手であった。さらに,「カタカナは描きに. 覚状態低群の方が高群よりも視点取得得点が高く. くかった」,「非利き手は描きにくかった」,「非利. なり(仮説1),評価懸念が強い状況では,公的自. き手では鉛筆をにぎるのが大変で. 覚状態高群の方が低群よりも視点取得得点が高く. 意識が集中してしまった」といった内省報告から. なる(仮説2)という2つの仮説を検証すること. も,カタカナや非利き手は額に文字を描く課題の. が目的であった。また,利き手と非利き手の遠い. 文字や方法としては適切ではなかったのかもしれ. の検討と,額に書く文字の種類による影響を探索. ない。すなわち,額に文字を描くことに注意が集. 的に検討することも目的とした。. 中してしまい,その結果として他者の視線やビデ. ,にぎることに. まず9種類の視点取得得点を従属変数とした,. オカメラ,評価懸念に意識が向かなくなってしま. 公的自覚状態(高・低)×評価懸念(強・弱)の分散. うことによって,公的自覚状態や評価懸念の操作. 分析の結果,両手両文字,両手ローマ字,利き手. の効果が弱められたのではないだろうか。. 両文字,利き手ローマ字,非利き手ローマ字の5. 本研究の問題点は,独立変数の効果に疑問が. つの指標において交互作用が有意傾向を示した。. 残ったことである。すなわち,公的自覚状態は,. 単純主効果の検定の結果,両手両文字,両手ロー. ビデオカメラと実験助手の存在により操作した. マ字で有意差が,利き手両文字,利き手ローマ字,. が,必ずしも被験者の公的自覚状態を十分に高め. 非利き手ローマ字において有意傾向が見られ,評. たとはいえなかった。撮影している映像を教示の. 価懸念が弱い状況では公的自覚状態低群の方が高. 段階で,一度別のモニターで被験者に見せたり,. 群よりも視点取得得点が高くなるという仮説1を. 撮影した映像を多くの他者に公開するといったよ. 支持する方向での結果となった。. うな教示を行うことによって,さらに公的自覚状. 一方,評価懸念が強い状況では,いずれの場合 も公的自覚状態高群は低群よりも視点取得得点が. 態を高める必要があるだろう。 また,評価懸念に関しても,知能と手先の器用. 高くなるという仮説2は支持されなかった。仮説. さを測るという教示によって高めようとしたが,. 2が支持されなかった原因として,被験者の評価. 必ずしもうまく高めることができなかった。「知. 懸念を十分に高められなかったことが考えられ. 能や器用さより,心理的なものをはかっているの. る。というのも,有意ではないが5つの指標の平. ではないかと思った」,「実験の途中から,手先の. 均値を見る限りではいずれの場合も,評価懸念が. 器用さが関係あるのか気になった」という内省報. 強い状況では公的自覚状態高群は低群よりも視点. 告からも,より信憑性の高い教示内容にする必要. 取得得点が高く,仮説2を支持する方向を示して. がある。他にも,例えばEを描く課題そのものに. いるからである。. 難易度の違う課題を含めるといった方法で評価懸. 次に,利き手と非利き手の違い及び額に書く文. 48. 念を高めるのも効果的かもしれない。.

(10) 公的自覚状態は視点取得反応を高めるか. 以上のような問題点はあるものの,本研究では 押見・坂井(2002)の実験を改良し,仮説を再検 討することで,押見らでは明らかにできなかった 公的自覚状態と他者視点取得反応との従来の研究 の矛盾した結果を統一的に説明することができ た。この点において,自己意識研究に一定の貢献 を成すものといえよう。. 引用文献. Buss,A.H.(1980)SeLf−COnSCiousnessandsocialanxie&. San Francisco:Freemann.. Duval,S.&Wicklund,R.A.(1972)Atheo7Tdob SeLfauJareneSS.NewYork:AcademicPress. 池田善英・押見輝男(1999).自己意尺度オリジナル版の 評価立教大学心理学科研究年報,41,51−61. Hass,R.G.(1984).Perspectivetakingandself−aWareneSS: DrawinganEonyourforehead.Journalq/Personal一 砂α〃d50Cオα7月びCゐoJ昭〕′,46,788−798. 押見輝男(1992).自分を見つめる自分一自己フォーカス の社会心理学−サイエンス社 押見輝男・坂井剛(2002).公的自己意識の自己中心性に ついて一額にEを描く一立教大学心理学研究,44, 13−19.. (戸田 弘二 札幌校教授) (伊藤 景 札幌校学部生) (喜井 調 札幌校学部生) (岡部 雪乃 札幌校学部生) (吉田美由紀 札幌校学部生). 49.

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参照

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