中日のピアノ教育の比較研究 : 初歩指導教材とその指導法を中心に
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(2) 降ピアノ生産が増大してからである。. あろう。将来古典のソナチネやソナタを弾くため. 日本と中国はヒ7ノが導入された時期には類. にはバイエルのような楽曲のほうが近いのであ. 似点がある。違うところは、同本はアメリカ人に. る。フランス音楽に馴染むためにはメトード・ロ. よってピアノ教育がもたらされ、その後ドイツの. ーズも欠かせない教材である。. 音楽家を招璃したこと、そして戦後フランス音楽. このように教師は生徒の発達段階、興味、持っ. を導入している。中国はイギリスの統治を受けて. ている音楽性などに配慮しつつ、導入教材を複数. いたのでイギリス人によってピアノがもたらさ. 使用し研究する必要があると結論づけた。. れ、その後ロシアから音楽家を招聰している点で. 第3章では中国で盛況を続けているピアノ能. ある。いずれにしても両者に共通することは、戦. 力等級試験と全日本ピアノ指導者協会(PTNA)の. 後の社会においてはピアノ教育の発展はピアノ. 主催しているピアノステップの課題曲とその状. 製造の発展と切り離せないものだということが. 況を比較しながら、中日の子どもたちが日頃との. わかった。. ような曲をあたえられどのように練習している. 第2章では中日のピアノ導入教材について比. かを分析した。また日本には数多くのピアノコン. 較した。中目両国で出版された2種類のrバイエ. クールがあるため、それらの課題曲も視野に入れ. ル」、「メトード・ローズ」、「トンプソ!」、そし. ながら、両国のピアノ教育において子どもたちが. て中国で編纂され筆者も使った『幼丸鋼琴教程』. どのような課題をあたえられ、またどのようなモ. のそれぞれの課程を表にし、導入にどのような配. チベーションで学習しているかを考察した。中国. 慮がされているかを分析した。そのうえで、各教. のピアノ等級試験に参加するための準備時間が. 材にはどのような特徴や類似点があり、それらを. あまりにも長くなっている。また一部の子供は等. どのように取り入れるのが望ましいかを考察し. 級試験の課題曲に夢中になって、ほかの曲は何も. た。. できなくなっているのが子供の総合的な発展に. 各教材にはそれぞれの特徴があるが、どちらが. 影響していることがわかった。ピアノ等級試験に. よい、ということではなく、その子どもにあった. してもコンクールにしても子どもの音楽的な発. 教材の選択が必要、ということである。たとえば. 達を妨げない程度にこれらを利用することはよ. 導入方法に関しては、トンプソンのような両手交. いだろう。ここでも教師の、それぞれの子どもを. 互奏は講読みや運指の遅い子ども、また小さい子. みきわめた長期的な指導計画が必要であると考. どもでも楽しく学習を始められる。しかし指があ. える。. る程度発達し、音符に関する認識力も備わった年 長の子どもなどには、オーソドックスに片手練習. 4.今検の課題. から始め両手に進むバイエルなどは、メロディを. 本研究では以上のように中目両国のピアノ. きれいにつないで歌わせるピアノ本来の技巧を. 教育の変遷、ピアノ初歩教材、ピアノ等級試験の. 早くから身につけさせることができる。早くから. 内容について研究し両国の特徴が整理できたが、. 両手でメロディと伴奏を良いバランスで処理し、. ピアノ指導法については実際のレッスンでの指. しかも4小節フレーズの楽曲構造を捕らえさせる. 導のあり方を採りあげることができなかったた. ためには、バイエルはただ古めかしい教材、と片. め、これを今後の課題とし、理想的なピアノ教育. 付けてしまえない内容を備えている。. の在り方についてさらに研究を深めたい。. また楽曲に関しては、併用教材を教師が適宜選 択し与えていくことができれば、バイエルやメト ード・ローズの平明な楽曲は教育効果を上げるで. 一359一. 主任指導教員 木下千代.
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