舌
が ん
患 者
の
抱 え
る
多重 的問 題
と
生 活
変容
プ
ロセ ス に
関
す
る
研 究
大釜
徳
政
神 戸 市 看 護 大 学 要 旨 本 研 究は,
手術療 法 を 受け た舌が ん患者32名を対 象と し て,
多重的問題な らびに こ れを経験する頻度 と社会 環境との関 連 性に 焦 点 を 当て た半 構 造 化 面 接 を 実 施 し,
得ら れ た資 料 を 質 的 帰 納 的に分 析し た。
そ してこ の分 析か ら,
社 会 復 帰 を果たし た患 者の 機 能 低 下,
ボディ イメー
ジの変 化 と社 会 環境 との 関 連 性 を包 含 し た多 重 的 問題に焦 点 を 当て た生 活 変 容プロ セ スを 理論 化し た。
舌が ん患者の抱える多重 的問題は,
機能 低下,
ボディイメー
ジの変化 そのものに よる問題と社 会環境にお け る対人 関係と の根 互作用 を包 含し て おり,
各環境に おける中核的問題は基 盤的環境,
周 辺的環境,
職務 的環境と いう社会環境の拡大と ともに変化 した。
基 盤 的環 境にお ける中 核 的 問 題は,
《世 帯 構 成の差 異 》か ら摂 食・
嚥 下・
味 覚 機 能 低 下に まっ わ る4っ の食 生 活 困 難モデルが 導かれた。
また患 者が こ の問 題 を認 識 する頻 度は,
社 会 環 境の拡 大 と と もに低 下 した。
そ して活 動拡 大に伴う周辺的環境,
職 務的環境にお け る中核 的問題 は,
《社会復帰背景の差異》か ら器質性構 音・
音 声機能低 下に まつ わ る3段 階か ら構成さ れ る会話段 階モ デ ル と し て示さ れ た。 ま た患者が こ の問題を認識 する頻度は,
環境の拡大と とも に高まっ
た。 さ らに それ ぞ れの 《環境移行 期》にお ける中核 的問題は,
ボ ディイメー
ジの変化にまっ わる3っ の局面モ デルが導か れ た。 ま た患 者が こ の問 題 を認 識 する頻 度 は,
各 環境 移 行 期に最 も高 まっ
た。
多重的 問題 を抱え る舌が ん患 者のQOL
は,
社 会 環 境の差 異 や経 時 的 移 行により 内容が異なり,
その関 連 要 因にも違いが あ るこ と が示唆された。
キー
ワー
ド:舌 がん,
手 術 療 法,
多 重 的 問題,
生 活 変 容 プロセ ス,
社 会 環 境の差 異1 .
は じめに 舌が ん患 者は,
手 術 療 法により摂 食・
嚥 下・
味 覚 機 能 低 下,
器質性 構音・
音声機 能低下,
ま た術 後侵襲に 伴 うボ ディイメー
ジの変 化 とこれ らに付 随 した 何 らか の要因を含む多重 的 問 題を抱え る と推 測さ れ る。 し か し手 術 療 法 をは じめとする集 学 的 治 療 を 受 けたがん患 者が余 儀なくさ れ る様々 な問題に お いて,
その多重 性 の検討を めぐっ て は, 国内外, ま た舌が んのみ な らず 同じ疾 病 分 類に統 括さ れて いる頭 頸 部が ん,
さらに は 他の疾 病分類に まで範 囲を広げてみて も十分な検討が な さ れていない。 従 来の報 告で は,
機 能 低 下 あるい は ボ ディ イメー
ジ変 化 個々の問題に のみ視 点が あて ら れ 検 討 が な されてき た経緯が ある。 こ のよう な 現 況にお い て,
治 療 後 も少な からず 問 題 を抱え な が ら社 会 生 活 を送っ て い る患 者が,
その多重性に焦 点が あて ら れ,
かっ社会 生 活に即した リハ ビリテー
シ ョ ン支 援 を求め て い ること は明らかで あ ろう (Tanya,
L.
2003 )。 舌がん患者にお ける術後生活評価に関する研究で は, 機能低下,
顔貌の変化等に付 随する多重的 問題が患者 の退 院 後にお ける生 活 全般に多大 な影 響を与え てい る とい う現 況 報 告が なされて い る (Jones,
A.
et al,
2000; Dropkin,
J.
2001;Ziegler,
L.
et aL2004 )。 また一
方で,
舌 がん患 者の
Quality
ofLife
(以 下QOL
と略 す ) を 検討し た結果
,
その 評価に影響を与え る何ら かの要因が 患 者の社 会 復 帰 後の時 間 的プロ セス およびその社 会 環 境と高い関 連 性が あ るこ と も示 唆さ れて いる (Marcy, A.
et al.
2000;Kamell, L.
et al.
2000)。
つ まり舌が ん患者の抱え る問題に お いて,
その時間的経過お よ び 社会環境を踏ま え た多重性に まっわ る要因が, 患 者のQOL
に何 らかの影 響を与えて い る と推 測で き る。 そ うで あ る とすれば,
舌が ん患者の捉え る問題におい て,
その多 重 性 と経 時 的 な社 会 環 境 拡 大のプロ セ スとの関 連 性を明ら かにす るこ とに より,
患者のQOL
に影 響 する要因につ い て もその示 唆 が得られると考 え られる。
そ こ で本 研 究で は,
手 術 療 法 を受 けた舌が ん患 者の 抱え る多重的 問題の特徴と,
社会環境を踏ま え た生活 変 容プ ロ セス を 明 らかにする。
さらに,
機能低下,
ボ デ ィイメー
ジの変 化とい う治療後に生じ る問題 を発端 と して, 家族・
近隣・
職 場とい う環 境や復帰し た職 務 内 容の差 異か ら,
患者のQOL
に影 響する要因お よび これ を踏ま えた リハ ビ リ テー
シ ョ ン実 施の方 向 性 を検24 神 戸 市 看護 大 学 紀 要 Vol
,
9,
2005 討 する。 皿.
研 究 目的 手術療法を受けた舌が ん患者の摂 食・
嚥下・
味覚機 能低下, 器質性 構音・
音声機能低下, ボディイ メー
ジ の変化と社会環境との関連性を包含し た多 重 的 問 題に 焦点を当てた生活変容プロ セ スを理論 化することで あ る。
皿.
研 究 方 法1 ,
研究デ ザ イン 本研究は,
舌が ん患 者における社 会 復 帰 後の生 活 変容プロ セス の解明を 意図して いることや患者の抱 え る多重的 問題が社会環境との相互作用に関連する と 予測できたことか ら,
質的 研 究方法の一
種であり,
Strauss
,A .
Corbin
,
J
(1990
)の提 示 す るSy
皿bolic
Interactionisrnを 基 盤 と し た Grounded Theory Approachを採 用し た。 Z
.
研 究 対 象 者の選 定 本研究の対象 者は,
以下の4 条件をすべ て満たす もの と し た。 1)初めて舌が んの 診断・告知を受け,
手術 療 法 (舌 可 動 部 半 側 切 除 術 あるいは舌 可 動 部 亜 全 摘 術・
頸部郭清・
皮 弁再建 術)を受け た者2
)65
歳 以 下で,
就 業 復 帰 (正 規 職 員 ) あるいは専 業主婦と して復帰 して い る者3
) 手 術 後6
ヶ 月を 経 過 し5 年以 内の期 間で社 会生 活 (家 庭 生 活を含む)を送る者 4 )がんの 再発・
転移の 兆候の ない 者3 .
デー
タ収集 デー
タ収 集は,
予 備 調 査 を も とに作 成 したイ ン タ ビュー
ガ イ ドを用い た半 構造化面接を行っ た。 面接 の内容は, 家庭・
近隣・
職場とい う社会環境な ら びに そ こ で の対 人関係におい て,
摂 食・
嚥下・
味覚 機能低下, 器質性構音・
音声機能低下, ボ ディイ メー
ジの変 化にともなう各々 の問 題に対 する認 識 こ れ らの 問題にお け る多重的部分に まっ わ る体験を 認 識 する頻 度と社 会 環 境との関 連 性,
多 重 的 問題と 活動 面・
社会面における相互作用お よ び その時間経 過に関 する内容を中心と し た。 また対 象 者の同 意 を得た上で,
診 療・
看 護 記 録よ り年 齢,
性 別,
病 期 分 類・
進行 分 類,
既往歴,
手術 および化学・
放 射 線 療 法 とい っ た治 療 経 過,
摂 食・
嚥 下機能 器質性構音・
音声機 能,
職業,
家族構成 に関する デー
タを収集した。4 .
分析方法 分 析の開始にあ たり,
そ の焦 点を 「多 重 的 問 題と 社 会環境との相互作用 」,
対象 者の 「多重的 問題 を 認 識 する頻 度 と経 時 的 な 社 会 環 境 変 化 との関 連 性 」 に定め た。 まず 多 重 的 問 題 と社 会 環 境 との相 互 作用 に おいて は,
ある対 象 者数人から得た逐 語 録から多 重 的 問 題 に関連 する具体例を取り上 げ, 次に他の対象者から 得たデー
タと比較・
分類し な が らそ の内容を抽象化 し下位カ テ ゴ リー
とし た。 さ ら に下位カ テ ゴ リー
問 の論 理 的 関 係 を検 討 しな が らコー
ディングを 実 施 し てい く と,
機能低下,
ボ ディイメー
ジの変化と そ れ を取 り巻 く社 会 環 境との相 互 作 用 を踏 まえ た多 重 的 問題が カ テゴ リー
と し て導か れ た。 これ らの カテ ゴ リー
は対 象 者の家 族 構 成,
社 会 復 帰 背 景,
対 象 者の 置か れ る環境お よびそこ で の対 人 関係と い う社会環 境の違い に関 連 する上 位カテゴ リー
によっ て い くっ かのカテ ゴリー
に分類 ・統合さ れ ること が予 測さ れ た。
そしてこれ を も とにさ らに面 接 調 査 を 繰 り返 し 行い,
抽 象 化さ れ た カテ ゴ リー
を さ らに形成・
修正 した。
多重的 問 題を認識する頻度と経時的な社会環境変 化との関連性にっ いて は,Corbin,
J,
Strauss
,
A,
の 提 示 する病みの軌 跡 理 論 (Woog ,
P,
lgg2)を基 盤と し な が ら分析を行っ た。 こ の理論は,
非 統計学的情 報 を用い なが ら,
病 気の もた らす 問題 を 多 様に変 化 す る軌 跡と して図表に表すこ と がで き る概念枠組み である。
本研 究におい て もこ の理 論 を 用い て,
多 重 的 問題が社会 環境と ともに多様に変化する様相を軌 跡モ デル と して表し た (図 1 )。 多重的問題につ い て,
ま ず 逐 語 録か ら抽 出し た対 象者の抱える問題に 対する認識頻度を表す部 分と具 体例数に着 目し な が ら継続比 較を行い, さ らに対 象 者の問 題に対 する認 識頻度と時間的経緯,
社 会環境との関係を 通 して形 成 さ れる プロ セ スをモデル として導 き出 し,
これを 図 1の ように表し た。舌 がん患 者の抱 え る 多 重 的問 題 と生 活 変 容プロセ ス に関 する研 究 25
5.
信頼性・
妥 当性の確保 本研究で は,
研 究 結 果を提 示 して それが対 象 者の 体験 と合 致 する かを問う とい う方法で, 信頼性と妥 当性の両 方を確 認 する こと と した。
こう した方法で信頼性・
妥当性を確認 する た めに,
郵送 法によ る質 問紙 調 査 を実 施 した。 質 問 紙の各 質 問は,
研究結果と して得ら れ た主 要なモ デル やカテ ゴ リー
を日常 的な 用語で表 現した もの につ いて,
そ れ が対 象者の体験に合 致する か を5 段階 (1 :そう 思う,2
:どちら か といえばそ う思う, 3 :どちら と も言え ない,
4 :ど ち ら か といえ ばそ う思わ ない,
5 :そう思 わない)で評価しても らっ た。 こ の質 問 紙 調 査 は,
インタビュー,
診 療・
看 護 記 録か らの 情報収集で協 力を得られ た文寸象者 32名を対 象として実 施 し,30
名 か ら有 効 回 答 を得 た (回 収 率 93,
8%)。 ま た肯定的評 価 (「そ う思 う」+ 「ど ち ら か といえ ばそ う思 う」)の割 合は,
質 問 項 目に よっ て異な る が71.
6〜
100°/ ,に達し,
80%以 上の項目は40 間 中36
問であっ た。
こ の結 果,
本 研 究の結 果にっ い てあ る一
定の信 頼 性・
妥 当 性が確 認さ れ た と考え ら れる。6 .
倫理的配慮 本 研 究は,
愛 知 県がん セ ン ター
倫 理 委 員 会の承 認 を得て実施し た。 対 象者に は,
研究参加と中断の 自 由,
匿 名性, 個人情報の守秘性, 研究終 了後のデー
タ源の消 去,
参 加を拒 否して も不 利益 を被ら ない こ と等 を説 明 し同意 書にて確 認 した。IV
.結
果1
司居家族構成は, 対象者と その配偶者のみの夫婦 家 族が5家 族,
対 象 者と配 偶 者・
子どもとの夫婦 家 族が11家族, 対象者と その配偶者,
および既 婚 子 と そ の配 偶 者,
お よ び彼らの子ど も との拡 大 家 族が 9 家族,
そ して単身世帯が 7 世帯で あっ た。 手 術 後 経 過 期 聞は,
6
ヶ月〜 1
年 未 満が6
名,
1
年〜
2 年未満が12名,
2 年〜
5 年未満が14名で あっ た。
1回あ たりの面接 時間は,
65.
5分 (47〜
123分), 面 接回数は述べ49
回であっ た。2 ,
分析結果32
名のイン タビュー
お よ び診 療・
看 護 記 録か ら得 た情報を質的帰納的に分 析した結 果,
対 象 者は摂 食・
嚥 下・
味 覚 機 能 低 下,
器 質 性 構 音・
音声機能低 下,
ボディ イメー
ジの変化その もの によ る問題と, これ らと家 族・
近 隣・
職 場 間な どの社会環境における相 互作用を包含し た内容を多重的問題 とし て捉え てい た (表1
)。
ま た対 象 者 がこ の多 重 的 問 題 を 認 識 す る頻 度は,
経 時 的プロ セ ス に伴う社会 環境の 変化と 高い関 連 性 を 示 して いた (図1
)。 そこ で以下で は,
対象者の置か れ る社会環境の相 互 作 用 を踏まえ た多 重 的 問題の特 徴と,
対 象 者が辿 る生活変容プロ セ ス,
すな わち対象者が問題 を 認識 する頻度 と経時的 な社会 環境変 化 との関 連 性にっ い て記述 す る。 な お本文 中では,
抽象度レベ ル を高い 順に 《 》 (上 位カテ ゴ リー
),
【 】 (カ テゴ リー
),
『 』 (下 位カテ ゴ リー
),
デー
タ例 示 部 分を {}で 示し た。
1.
対象者及び面接の概 要 研 究 対 象 者は32
名であ り,
そ の概 要は男 性エ9
名,
女性 13名,
平均年齢 53.
6歳 (23〜
64歳)であっ た。 退 院 時の嚥 下 障 害ス コ ア (藤 本 他,1997
)は,
平 均25,
5点 (19〜
36点 ),
会 話 機 能 評 価 基 準 (頭 頸 部 腫 瘍学会,
1991)にいたっ ては平均7,
1点 (5〜 9 点) であ り,
両 者とも中 等 度の機 能 低 下 を 示 して いた。 社会 復帰状況は,
専業主婦と しての 復帰が10名,
就業 復 帰が22名であっ た。
就 業 復 帰 した対 象 者の就業 内容は
,
日本 標準職業分類 (総務 庁統計局,
1998) に よっ て分類, 表記した。 そ の内訳は, 農業職復帰 が 3 名,
専 門技術職 復帰 6 名,
事 務・
管理職復帰 6 名,
営 業・
サー
ビ ス職 復 帰7
名であっ た。
1
)基 盤 的 環境 (親密的対象)における 中核 的問題 摂 食・
嚥 下・
味 覚 機 能 低 下に まっ わ る問 題は,
家族・
親しい友人とい っ た接触頻 度が高く親密な 他 者,
す なわ ち親 密 的対 象 を 中心 と して関 係が展 開さ れ る 基 盤的 環 境にお け る相互作 用と高い関 連 性 を 確 認 した (図 1一
基 盤 的 環 境 )。
また基 盤 的 環 境にお ける対 象 者の抱え る問 題を分析し た結果,
《世帯 構成の差異》か らこ の環境にお け る中核 的 問 題は,
摂 食・
嚥下・
味覚機能 低下に伴う食生活 にまっわ る問題であっ た。 そ して そ の差異か ら食 生活に伴う4つ の困難を表 すモ デルに分 類 するこ と がで きた (表 1 )。26 神戸市看 護大学 紀 要 Vol
.
9,
2005 表1.
各環 境にみ る多重 的問題9Fmffn
・
) 上位力テゴリー
上位力テゴリー
の 下位項 目 カテ ゴ リー
下位力テ ゴ リー
調 理 復 帰 専業 主婦復 帰型 食生活 バ ラン ス困難 摂 食・
嚥 下 機 能 中 心の食生活から生じる 困難 家族中心の食生活から生じる困難 味 覚 変 調 による 味 付 け 困 難 世 帯構
成
の 差 異幽
■
非 調 理 者 復 帰 夫 婦 関係 型 舅・
姑 関係 型 食 生 活 甘 えにまつわ る 困 難h圏 國
「旧
閥
h■
旧
”
配 偶 者 に対 す る甘 え 確 認 か ら生 じる困難 配 偶者の 知識・
経 験 不 足から生 じる 困難 甘え使い分 け か ら生 じる困 難 食 生活 負 担 回 避 にまつわ る困難 役割緊 張の回避か ら生じる 困難 負 担 回 避 か ら生 じる摂 食・
嚥下機 能 にともなう困 難國
圓
.
単 身 世 帯 型..
.
.
胴
【
閥閥
..
食生活踏襲困難卩 ”
■ 卩「
【
【
闇 卩
自 己嗜 好・
習 慣 的 メニュー
踏 襲 困 難 既製食 品購入の踏襲困難 摂 取 時 間踏 襲 困 難 周 辺環
(愚 的 対
)
・
職的
環
(社 内・
社 外 対) 専業 主 婦 農業職
、
専門技 術職、
事務・
管理職 営 業・
サー
ビス職 意 志疎通 到 達 段 階 誤聴を予 測する上で の限 界 電 話 対 応 上の限 界社
会 復帰
背 景 の 差 異閥
【
國
就 業復 帰型 農 業 職、
専 門 技 術 職、
事 務・
管 理 職 営業・
サー
ビス職國
会話効 率・
正確 性 促 進 段 階鹽
國
國
会話時 間の効 率 化に対 す る限 界 舌 可 動 の効 率 化 に 対 す る限 界 専 門 用 語・
話 題 対 応 上の限 界「
就 業 復 帰型 営 業・
サー
ビス職 会 話 流 暢 性 折 り合い段 階 回復緩 慢 さに ともなう流 暢性に対 す る 限 界 複 雑 な 会 話 用 件へ の対 応 上の限 界 渉外・
顧客の誤聴回避の限 界3
つ の環昆にお け る移 行 期 基盤 的 環境〜
周 辺 的 環境(疎遠的 対 象 )否 定 的 評 価 を回 避 す る局 面 閉鎖的 評価の回 避 対 人 緊 張 的 評 価の回避 見 下し評価の回 避 環境
移
行期
國
周辺 的環 境〜
職 務 的 環 境(社 内 対象 )会話 能 力 評 価 を優 先する局 面.
胴■
嗣
■
國
國
構 音 機 能 に よる職 務 評 価 低 下 の優 先 性 社 内対 象の’
1青緒的 支 援 社内対 象 の 評 価 的 支 援陋
h
職 務 的 環 境(社 内 対 象〜
社 外 対 象) 印象 評 価 をコントロー
ルす る局 面P
職 務上 の業績・
目標達成の た め のコン トロー
ル 渉 外・
顧 客 の 先 入 観 回 避 の た め のコントロー
ル 有 用 性アピー
ルとして のコン トロー
ル (1) 【食生 活バ ラン ス困難】 対 象 者 が 家 族 世 帯に所 属 する場 合の 1つ のあ り方は,
自己の機能低下に伴う食生活 管 理と と もに家 族 食 生 活の両 者 を担う調 理 者と し ての役 割を持ち な がら家 庭復帰し,
これを調 理 者 復 帰 と しての専 業主婦復帰型と呼ぶ こ と とする。 こ の場 合, 食卓や外食におい て機能低下 中心の自 分の た めの食生活と家族の健 康や嗜好を中心と した食 生活との兼ね合いを調整 する上でい くっ かの問題 が生 じ,
これ を 【食生活バ ラ ン ス困.
難 】 と名 付けた。 例え ば ある対 象者は,
{舌が な い か ら う ま ぐ噛 み 砕いた り食 事 を 喉の方に送 り込 めないで しょ,
だ か らどう し ても盲分に偏っ た柔ら カ)
い食 事にな りま す ねo そう ナる とメニ ュー
もβ屏ら れ る し,
そ ∠、な6の ば か りだ と家 族も練に な る で しょ。
主 嬬 な ん だ’
か ら家 族の好 み や 健∠妻 も気にな る し,
で も ま た そ れ に偏っ て し まっ て も膚分の食 事が ね…
} とい っ た 『摂 食・
嚥下機 能 中心 の食 生 活 か ら生 じる 困 難 』,
『家
族 中心の食生 活 か ら生じる 困 難』, こ の ほ か食事を作る際に, 自己の味覚 中 心から計量中心の味付けとい う様相にみるr
味 覚変調に伴う味付け困難』な どを経 験してい た。 (2) 【食 生 活 甘えにまっ わ る困難 】 対象者が家族世帯に所属しなが ら,
家 庭 内役 割におい て調 理 者の役 割 を 持たずに生 活を送る 場合を非調理者 復帰とする。 ま た夫婦関係の夫 の よ うに家 計の柱として 「外 」で働 き,
食生 活舌が ん患者の抱え る多 重 的 問 題と生 活 変容プロセ ス に閔 する研 究 27 は配偶者に依存 する と い う関係を夫婦関係型と した
。
こ の食 生 活におい ては, 配偶者が対 象者 のた めの調理 を担当す る一
方で,
対 象 者 本 人は,
配 偶 者 と食 生 活にまっ わ る様々な 意 見や要 望 を 頻繁に やり取りし,
そ れ ら を受け 入れて もらう とい う甘えの気 持 ち を 抱 く。
{夫婦だ しね,
癒 気 の蒔な ん τ甘え が出ちゃ うよ。}こ の 「甘え」は,
対象者が自己 を機能 低下に よ る不 自由さを持っ 病 者と して認 識 することで,
家 庭の調 理 者 役 割 を 持っ 配偶者に対して抱 く,
寛大さを求め る感 情と捉えるこ と がで きた。 こ のよう’
に,
甘 え を 配偶 者に受け入れて も らい,
ま たこ の甘えの気 持ち を中心に して対 象 者が食 生 活 を 再 構 築 する 際に抱え る問題 を 【食生活 甘え に まつ わ る困 難 】と名 付 けた。 例え ば対象 者は, {妻 もこ ん な 癒 気した入の食事っ ぐる の初めて で しょ,
だか ら受 け入 れ 態 勢っ て い うか,
わだ か ま りや気 兼ね も ある よσ そ れ を受け/
K
才Zてr
も ら う ところ か ら は じ め ない と}とい う 『配 偶 者に対 す る甘 え 確 認 か ら生 じ る困 難 』,
ま た {妻に一
年365日,
ドロ ドロ し たも ん作 れったっ てr
,
そりゃ無 理 だよ。
索 入 だ し頭 魍 ま ぜ る ん だ ろ う ね。 ノ司じメニ
ュー
毎日作っ て も らっ τ ら…
ワ 変 な もん 作っ
τ咽ぜτ茆炎に なっ
てもねo} とい う配 偶 者が実 際の調理 上の不 自 由さに圧 倒 さ れる 『配 偶者の知 識・
経験不足か ら生 じる困 難』を経験し た 』 さらに {好 き な もんとか 食べ や ずいもん とか食べる蒔 間 とか.
ずべ て に甘え で た ら も う,
妻も まいる よ}の よ うに満 足で きる メニ ュー
を調理者に期 待する ことの限界も認識し,
そ の 甘えに折 り合いをつ けようとする上で の 『甘 え 使い分 け か ら生 じる困難』 を克服する努力を重 ねていた。
識}が残っ て おり,
実 際に摂 食・
嚥下機能 低下 に見合う調理 を実 践したことのない嫁に負担を か け ること が,
家族 内にお け る自己の立場を ど のように変 化させ,
また義理の親 子 関 係にどの ような影 響を及ぼ し家 庭 内の問 題に発 展 する か とい うことを予 測 する。
こ の よ う な意 味におい て,
その調 理 上の負 担 をかけないように努める 『役 割緊張の回 避 から生じ る困難』 を経験した。 また嫁は,
対 象 者の機能低 下により従 来の義 理 の親に配慮し た世代別 調理 が作れ な く な る。 こ れに対 して対 象 者は,
{普 趨の食 事で もtrっ か ぐ 作っ τ ぐれ た ん だ し,
出さ れ た も の ぼ食べ よ う と し ま ず よ。
} とい う姿 勢 を とるこ と を一
っ の負 担 回避と捉えて い た。 し か し一
方で対 象者は,
{やっ ぱり普通の食 募ぱ喉に送り込め ない し口の中に 残っ τ し まっ てね 〔[#as
) 肺炎も妬いし。}とい う 食塊の舌送り込み困難と皮弁再建部の食物 残留 感,
誤 嚥の誘 発食材や調理に対す る問題である 『負 担 回 避 か ら生 じる 摂 食 ・嚥 下 機 能にと も な う困 難 』 も抱えて いた。 (4) 【食生活踏襲困難】 世帯構成が単 身世帯型の場合, 対象者が独 身・
離 婚・
配 偶 者との死 別とい っ た状 況にあり,
自 己の食生活の 再構 築にあた り病気以前の食生活 習 慣 を 引 き継こう とする上で,
機 能 低 下との不 具合か ら生じ る問 題を抱えて いた。 そ し てこの 問 題 を 【食 生 活踏襲 困 難 】と名f
寸けた。
対 象 者 は誤嚥を誘発さ せ る摂取 内容の回避や摂取時間 が か かる とい うこ と から, 『自己嗜好・
習慣 的 メニ ュー
踏襲困難』,
『既製食品購入の踏襲困難』,
『摂取時間踏 襲困難 』など を経 験していた。 (3) 【食 生 活 負 担 回 避に まつ わ る困難】 対 象 者が家 族 世 帯に所 属 しな がら社 会 復 帰 後,
息子家 族と同居し な が ら調理 は嫁に任せてい る とい う関 係 を非 調 理 者 復 帰の舅・
姑 関 係 型 とし た。 その食生活に お いて,
対 象 者は嫁の負 担へ の危惧を抱き, この危惧感か ら嫁に対する食生 活 上の負 担を かけないように自 己の食 生 活 を試 み る。 そ して この 場合に対象者が抱え る問題 を 【食 生 活 負 担 回 避にまっ わる困 難 】 と名 付 け た。
例え ば対 象 者に は嫁に対して {元は赤の勉 入 意 こう し た 4っ の摂食・
嚥下・味覚機能 低下に ま っ わる食 生 活 上の困 難は,
対 象 者の認 識 頻 度と社 会環境 変化における特徴と して図 1のA 点で示し た。 こ の困難は,
先 述し た世 帯 構 成の差 異 と関 連 し な が ら基 盤 的 環境で最 も高 ま り,
その後の経 時 的な社会環境の移行とともに そ の頻度も低下した。 これは基 盤 的 環 境に おい て, 対象者が生 命の根 元 に関わ る食生活に まっ わ る困難お よ び治療後の再 発・
身 体 的 負 担 と食 生 活 との関 係に対 す る関 心 が 集 中す る た めで あっ た。28 神戸市看護 大学 紀要 Vol
,
g,
2005 2)周辺 的環 境 (疎 遠 的対 象 ) と職 務 的環 境 (社 内・
社外対象 )に お け る中核 的 問題 器質 性 構 音・
音 声 機 能 低 下の問 題は,
近 所 付き 合い とい っ た比較 的接触頻度が低く疎遠な他者,
す な わ ち疎 遠 的 対 象 を 中心 と しての周 辺 的 環 境 さ ら に職 場の上司・
部下・
同僚といっ た社 内対 象 と渉外・
顧 客の対 応とい っ た社 外 対 象 を 中 心と し た職務 的環境との相互 作 用におい て関連性が認め ら れた。 対象者の活 動拡大に伴う周辺的環境およ び職務 的環境の移 行に よ り,
多重的 問題の中核的 部 分は器 質性構 音・
音声機能低下をは じ め とする 会 話能 力にまっわる問 題に変 化 した (図1 一
周 辺 的 ・職務 的環境 ) 。 ま たこ の問 題は,
対象 者の 就 業の有 無,
内 容 とい っ た 《社 会 復 帰 背 景の差 異 》 と関連し な が ら,
会話 能力に まっ わ る3 段階モ デ ルが抽 出された (表 1)。
(1) 【意 志疎通到達段階】 こ の段 階は,
専 業 主 婦 復 帰 型 と就 業 復 帰 型 (農,
専 門 技 術,
事 務・
管理,
営 業・
サー
ビ ス 職 ) を問わ ず,
すべて の対 象 者 が 社 会 復 帰 後の 会 話 能 力 向 上を図 ろ うとする上で体 験 する最 初 の過 程で あ る。
こ の 1段 階では,
対 象 者が近所 付き合い のように近 隣における疎遠的対象を会 話の主な対象とし, 自分が発音する言葉の1
っ ひ とっを構 成 する単 音 節 (発 語 )のな かで部 分 的に不明瞭な点に着 目した上で,
それ を補足 す る上で の意 志 疎 通に まっ わる限 界を経 験し た。
例え ば対象者は, [s]さすせ そ,
匚t]た てと,
匚r]ら る れ ろ,
匚∫] し しゃ しゅしょな どにっ い て発語の 不明瞭さを 認識して いたが,
対象者 はこれ らの音 を 聞 き手が どの ように誤 聴 するの か を予 測し き れ ない 『誤聴を予測 する上で の限 界』を経 験してい た。
また聞 き手の表 情 を確 認 で きない こと か ら,
対 象者が相手の発語に対 す る違和感的反 応 を読み とれなかっ た り会話ニ ュ ァ ン スを 理解し難い 『電 話対応 上の限 界 』な ど も対象者の会話上の限界感であっ た。 (2) 【会話効率・
正 確 性促進段階】 こ の段 階 は,
就 業 復 帰 型の対 象 者が第1
段 階 の意 志疎通到達段 階の 次に辿ること に な る。 こ の対 象 者の場 合,
会 話 相 手が疎 遠 的 対 象を中 心 と し た周辺的環境か ら社 内対象の職務的環境へ と拡 大 するこ とによ り,
意 志 疎 通の成 立 だ けで は職 務上の 責 任や信 頼 関 係に支 障を き た す 恐 れ がで て くる。
こ のため会 話の明 瞭 性,
と りわ け 効 率・
正 確性に関 心を寄せ る段階で あり,
対象 者は その促 進 を図ろ うとする上で の限 界 を認 識 して いた。 例え ば,
会話 中断,
意味 内容の修正 に よ る会話時間の延長か ら生 じる 『会 話 時 間の 効 率 化に対 する限 界 』,
補 足を繰 り返 し な が ら の会話展開が 過 度の舌 可 動に よ る疲 労や集 中 力 5 己 腔基盤 的
環
境
周 辺
的
環境
職務的環境
図1.
多重的問 題 を認識す る頻 度と経 時的な社会環境変 化と の関連性舌 が ん 患 者の抱え る多 重 的 問題 と生 活 変容プロセ スに関 する研 究 29 の 低下を生むこ と に よ る 『舌 可 動の効率化に対 す る限 界』
,
さらに対 象 者が職 場に おいて特 有 な言葉・
話題へ の正確な対応をする上で の 『専 門 用語・
話 題 対 応 上の限 界 』 が特徴 的であっ た。 そ して対象者は,
時間・
舌可動の効率性お よ び 会 話 正 確 性の向 上 を 図るため に,
発 語の不 明 瞭 部 分を含 む語 を 回避し な が ら誤 聴 を 防 ぐ一
方,
そ れ に代わ る代 替 語に よ る会 話を 展開さ せて い た。 (3) 【会話流暢性折り合い段階】 こ の会 話 流 暢 性 折 り合い段 階は,
就 業 復 帰 型 の な かで も営業・
サー
ビ ス職に就く対象者が会 話 効 率・
正 確 性の促 進 を 図る一
方で, 会話に よ ど み が な く流 暢性に関心 を寄せ,
これ を促進 さ せ てい く段 階である。 そして こ の段 階で対 象 者 は,
会 話 全 体が手 術 前と同じ ようにな め らかで,
聞 き手 側に違 和 感 を与え ない こ と に対 する固 執 と実 際の回復の緩慢さ との狭 間で生 じ る 『回 復 緩 慢 さにと も な う流暢性に対 する限界』 を強く 認 識して いた。 ま た,
会 話 対 象の中 心が接 触 頻 度の低い社外対象であることか ら,
話題の共 通 性に乏 しい ことによ る 『複 雑 な 会 話 用 件への対 応 上の 限 界 』,
職 務 内 容が交渉を中心 とするこ と か ら,
自己の会話能 力やその特 徴を聞 き手側 が十分に把 握し ていない こ とを強く認 識する 『渉 外・
顧 客の誤 聴 回 避の限界』な ども確 認さ れた。 そして これ らの 限界感によ り,
対象者は 会 話 流 暢 性の可 能な限 りの獲 得 とその限 界との 折り合い,
さ らには職 務環境との再調 整とい っ た社 会 的 折 り合いをつ けよう と努 力 を 重 ね た。
こう した器質性構音・
音 声機能 低下に まっわ る 会話能力の 3つ の段階にみ る問 題は,
就業復帰背 景と関連し な が ら周辺 的環境,
職 務 的環境へ の移 行と ともに対 象 者の認 識 頻 度 も高 まっ た (図 1)。 特に営業・
サー
ビス職の 対象者が移行する社外対 象 を 中 心 と した 職 務 的 環 境において最 もその頻 度 が高 まっ た (図 1−
B 点)。 3 )環境移 行期に おけ る中核 的問 題 ボディイ メー
ジの変化に まっ わ る問題は , 活動 拡 大の心構え をする準備 期間か ら実 際に活動を拡 げ た直後の短い期 間 までの 《環境移行 期》におけ る対 人 関 係との 相互作用と関連性が高かっ
た (図 1)。
ま たこ の 中 核 的 問 題 を 環 境 移 行 期で捉え る と,
基盤的環境か ら周 辺 的 環境へ の移行期に お け る 【否定 的評価 を回 避 する局面】, 周 辺 的 環 境 か ら社内対象を中心とする職務 的環境へ の移行期に お け る 【会 話 能 力 評 価 を優先 する局 面 】,
職 務 的 環 境の中で も社 内 対 象 か ら社 外 対 象へ と対 人 関 係 が移行す る際の 【印象評価をコ ン トロー
ルする局 面 】という3
っ の局 面モデル に分 類で きた (表 1)。 (1
) 疎 遠 的対 象の 【否 定 的評 価を回避する局面】 こ の局面は,
すべ て の対 象者が疾病そ のもの や対象者の内 情に対する理解が 浅い疎 遠 的 対象 か らの可視的変化に対す る否 定 的 評 価を嫌い,
これ を避 け よ う とする局 面である。
この否定 的 評 価に対 する対 象 者の 懸 念は,
基 盤 的環境におい て活 動 拡 大の心 構えを する準 備 期 間か ら実 際に周辺 的環 境に活動を拡げた直後 の短い期 間までの移行期にもっ と も強 まっ た。 これ は対 象 者が,
疎 遠 的対 象か らの未 知の否 定 的評価へ の対応に必要な態度や行動を新 たに習 得 す る上で,
こ の 《環 境 移 行 期 》 を 乗 り越える 必要性を強く認 識し,
ま たこの認識が対 象 者の 新た な懸念と なっ て いた た めである。 例え ば対 象者は, {近所の入 とか,
(私を丿異 常とか 無能とかっ
τ,
齦わ れる恐 舫 感はある よ ね,
社 会か ら無 視さ れ る み たい な,
見て見ぬ振りっ T い うか} とい う 『閉 鎖 的 評 価の回 避 』,
{周 りは普 段でも 〔私に)声を掛 け たりす る の カtおっ ぐうに な る し逆に緊張ナる ん じゃ ないか な} とい う 『対 人 緊 張 的 評 価の回 避 』,
さ らに {陰で噂と か髏ロさ れτい る ん じゃ…
}とい う 『見下 し評価の回避 』の 3つ の タイプの否定 的 評 価を予 測し,
疎 遠 的対象との接触頻度や活 動の限定に よ り こ れ ら を回避し よ う としていた。 (2)社内対象の 【会話 能力評価を優先する局 面】 就 業 復 帰 型の対 象 者は職 場での比 較 的 接 触 頻 度の高い社内対象を 中心とする職務的 環境に お いて,
可 視 的 変 化に囚わ れて いる余 裕 もな く, また可視的変化 自体は職務 上 直 接 支障が少ない。 し た がっ て こ の局面は, 対象者の関心が会話能 力にまっ わる職務評 価を大き な問題と捉え る様 相である。 また対 象者は基 盤的・
周辺 的 環 境に30 神 戸 市 看 護 大学紀要 Vol
.
9,
2005 おける就業復 帰のた めの準備期間と復 帰 直 後の 《環 境 移 行 期 》に おいて も,
職場で社内対象か らの ボ ディイメー
ジの変 化にまっ わ る評 価にっ い て の懸 念 を抱く機会は少な かっ た。 その一
方 で構音 機能低下にっ い て は,
職務 評 価に対 する 強い懸 念 を抱い て い た。 つ まり対 象 者は,
{傷 があっ て も仕事はできる ん だげど,
話ぜない のは致 命的でしょ} とい う 『構音 機能によ る職 務評価 低 下の優 先 性 』を認 識 する一
方で,
{会 社の連 中 は,
やっ
ぱり溶髪しτ ぐれる よ,
1
司情と か哀れみと かなん て感 じん しta
}とい う 『社 内対 象の情 緒 的 支援』,
{仕事をしっ か り や れ ば;しっ か り評働しτ6
らえ るのが 職 場 } とい う 『社 内 対 象の評 価 的 支援』と いう社会的支え を実 感して い た。 (3)社外対象の 【印象評価をコ ン トロー
ル する局 面 】 営 業・サー
ビ ス職と して復 帰 し た対象 者は,
会 社 外の顧 客な ど社外 対 象へ の対 応 を 主な職務 内容と して いた。 こ うし た対 象者の場合,
こ の 会社 外におけ るボデ ィイ メー
ジの変 化に まっ わ る評価に対して最も関心 を集 中さ せて いたの は,
顧 客や渉外対応 を する直前の準 備期 間と実 際の 対 応を始め た直 後の 《環 境 移 行 期 》で あっ た。 そして社 外 対 象か ら受け る評 価に対 して, 対象 者は自 己の可 視 的変 化が相 手に与える印 象 をコ ン トロー
ル しな が ら円滑な対人関係を構 築し よ うと試みて いた。
この コ ン トロー
ル は,
社外 対象か ら否定 的評 価 を受 けるとい う対 象 者の予 測に起 因 していた。 ま た そ れ は,
こ の否定的 評 価が職 務上の業 績や 目標 到 達 度に直接 的に影響し,
これ が経済 的困 難に よ る生活 設 計の危機をも招 くことへ の懸 念 や職 務的地位の低下や や り がい とい っ た満足 感 の消失に対 す る懸 念 も抱い て いた。
こ のため対 象者は,
『職 務上の業績・
目標 達成の た め のコ ン トロー
ル』, 『渉外・
顧客の先入観回避のため の コ ン ト囗一
ル』,
さ らに自己の 『有用性ア ピー
ルと して のコ ン トロー
ル』 を展 開さ て い た。 こ う した ボ ディイメー
ジの変 化にまっ わ る3つ の局 面にみ る問 題 は,
環 境 移 行 期におい て対 象 者 の認識頻 度が高まっ た (図 1−
C 、, C,)。 し か し 周 辺 的 環 境か ら社 内対象を中心とする職務 的環境 に お け る移行期で は,
他の移行期に比べ 点C
,,
C
、 程の高ま りは確 認さ れ な かっ た (図 1−
C、)。 こ れは先 述 した通 り,
対 象者が 職 務評価におい て ボ デ ィイメー
ジの変化その ものが直接支 障が ないと 認識すること によ り, その関心が会話能 力に集 中 し た た めであっ た。V
.
考 察1
多 重 的 問 題 とQOL
関 連 要 因 多重 的問題におい て,
環境の拡大と と もに変 化す る その中 核 的 問 題は,
機 能 低 下,
ボディイ メー
ジの 変化に まっ わ る問題と,
そ れ を取 り巻く家族 構成・
社会 復帰背景・
環境 移 行 期とい う社 会 環境との相 互 作用の両方に関連して いること が結果に示さ れ た。 こ こか ら,
家 族構成・
社 会 復 帰 背 景・
環 境 移 行 期の差 異に よっ て
,
舌が ん患 者が捉え るQOL
の内容が異な り, さ ら にそ の
QOL
に関 連 する要因 (以 下QO
L関連要因と略す)に も違いが あ ること が考え ら れ る。 幾つ かの先行研究において は, 手術療法 を 受 けた舌が ん患 者の
QOL
は摂 食・
嚥下機 能,
言語機能 の低下,
ボ ディイ メー
ジの変化にまっ わる問題 とい う身 体 機 能に関 連し た要 因だけでなく,
家 族・
社 会 面と大 き く関わ っ て い るこ と が指 摘さ れ て い る (Linda,
L ,
et al.
1996
;Cremonese
,
G ,
ct a1.
2000 ;Derks, W
.
et al,
2004 ;Funk, G.
et al.
2004 )。 しか しこれ らは,
そうした機 能低 下や ボ ディイメー
ジの変 化が社 会的相互作用 を通し て ど の ような メ カニ ズム で社 会
・
家 族 面にお けるQOL
に影 響 を 与 え てい る か とい う疑 問に答え う る もの では ない。 し た がっ て こ こ で は,
舌 がん患者の多 重的問題 を 発 端 として
,
社 会 環 境を踏まえ たQOL
関 連 要 因 を検 討し て いく。 そ して本稿で は,
舌が ん患者の中核的 問 題 の主 要な一
っ として挙 げ られ,
さらに生 命の根元に関わ る食 生 活の問題に絞り, そ の
QOL
関連 要 因に っい て検討する。 基盤 的環境におい て,
摂食・
嚥下・
味覚機能低 下 に まつ わ る問題は , 世 帯構成の差異か ら4
っ の困難 に分 類さ れ, こ こか ら食 生 活に対 する何らかの支 援が 患者の
QOL
と高く関連 して いると思 わ れる。 こ れ は,
患 者が家 族 世 帯の調 理 者 復 帰 型の場 合,
自 己 の機 能低下 中心の調理 と家族の健康や嗜好を中心と舌が ん患者の抱え る多重 的問題と生活変容プロセスに関する研究
31
し た調 理 との兼 ね合いを調 整 する上での問題 が 生 じ て い た。 し た が っ て こ こ でのQOL
関 連要因は,
自 己の機 能 回 復 中 心の調 理と家 族の た めの調 理とのバ ラン ス を保 持するこ と と推測さ れ る。 Rogers, S.
et al,
(2002) は,
女 性 患 者のQOL
に関 して,
摂 食・
嚥 下機能低下と社会 的役割と の項目間で関連性が高 い ことを 明 らかにしているが,
こ の理 由 を本研 究の 専業主婦 復 帰型にの結 果か ら も見て取れ る。 つ まり 専 業 主婦 と して復 帰 した女 性 患 者は,
自己 と家 族 と の調 理バ ラ ンスを保 持 する た めに,
それ らの項 目間 で関 連 性が高い と考え ら れ る。
ま た非調理者の夫婦関係型で は,
配 偶者に対する 甘 えの気持ち を中心 とし て, 夫婦間で その甘え に折 り合いをっ けな が ら食 生 活を再 構 築 する際に抱える 困 難 が 確 認された。 土居ら (1997)に よれ ば,
「甘 え」は,
家 族,
とりわ け夫 婦 間 とい っ た密 接な人 間 関係 上の み に発 生 する感情であ り,
ア ン ビバ レ ン ス を生じ るもの で あ る。
言い換えれ ば 夫 婦 間におい て その甘え に まつわ るア ン ビバ レ ン スはっ き もの で あ り,
それらをいかに夫 婦 闇で受 け入 れて いくか が家 族機 能に影響する。 し た が っ て,
夫婦関係型と して 復 帰 した 場 合のQOL
関 連 要 因は,
こ の甘 え をいか に夫婦間で折り合い を付け,
患 者の 機 能 低 下に見 合 うメ ニ ュー
調 整が なさ れ るこ と にあると思 わ れる。
非調理者の舅。
姑関係型で は,
患者が嫁の調 理負 担に よ り対人関係が悪化する とい う懸 念 を抱くこと か ら,
嫁の調理負担を回避し な が ら食生活を構 築す るうえで生 じる困難であっ た。 した がっ てこ こでのQOL
関連要 因は,
嫁の調理負 担に対 する自 己の危 惧 が 拡 大 しないように,
負担 回 避へ の努力に よ り嫁 との関 係を保ち な がらその協 力 を 得ることであ ると 考え られ る。 そ して単 身 世 帯 型の場 合,
病 気 以 前 からの習慣 化 した食生活を踏襲する上で の困難であっ た。 し た がっ て患者が摂食・
嚥下機能動 作にまつ わ る困難を抱え な が らも,
病気以 前に送っ て きた食 生 活デザイ ンを 社 会復帰後も取り入れ る こ と がで き れ ば,
そ のQO
L
評 価は大 き く低 下 しない と考 え られる。.
2,
問 題の認 識 頻 度・
社 会 環 境 変 化 とリハ ビリテー
ショ ンへ の示 唆 舌がん患 者に対 する リハ ビリテー
シ ョ ンは,
前 節の考 察で示唆さ れ た
QOL
関連要 因 を 取 り入 れた看 護支援プロ グラム を開 発 した上で , これに沿っ て実 施す る必 要が あ る と考え ら れ る。 し か しこ こ で留 意 すべ き点 は,
その実 施の タイ ミングである。 本 研 究 の結果か ら推測する と, リハ ビリテー
シ ョ ンが効果 的に活 用されるの は,
対 象 者の多 重 的 問 題に対 する 認識が高まっ た時 期と考え ら れ る。 この推 測は,
Prochaska,
J.
et al.
(1984
)が示す, 生 活の変 容 過 程のポ イ ン トで ニー
ズ も異なり,
これに合わ せ た支 援の必 要 性 を 明 らかにした理論横 断モ デル か ら も裏 付 け られ る。 っま り舌が ん患 者に対 す る リハ ビリテー
シ ョ ンに おい て も, そ れ を実施す る対象や タ イ ミン グ がず れて しま うと,
効 果 的な支 援の提 供がで き な かっ たり, 逆に患者に とっ て負担に な る こ とも懸念 されるわ けで ある。 本研 究の結果よ り,
患者にお け る食生活の問題に 対 する認 識は,
基 盤 的環境で最 も高 ま り,
活 動 拡 大 と と もに低下し た。 し た がっ
て,
摂食 ・嚥 下 ・味覚 機 能 低 下にまつ わ る リハ ビ リ テー
シ ョ ン は,
こ の基 盤的環境お よ び患者の世帯 構成に着 目し な が ら その 実施の タイ ミングに留 意 する必要がある だ ろう。 ま た会話能 力の問題に対する認識は,
周辺的環境,
職 務 的環境とい う社 会 環境の拡 大 と と もに高 まっ た。 こ こか ら構 音 機 能 低 下に対 する リハ ビ リテー
シ ョ ン につ いて は,
患 者の活 動 範 囲やこれに影 響 する就 業 内 容に焦点をあて,
環境の移 行と ともにこれ を強化 することも効果的な実施にっ なが る と考え られる, さ らにボデ ィイメー
ジの変 化にまっわる問題に対す る認識は,3
つ の環 境移行 期で それぞれ高まっ た。 し た がっ て,
こ の問 題に対 する支 援で は,
そ の移行 期を あ らか じめ予測した上で,
患者の そこ で の対人 関 係にお ける接 触 頻 度や親 密 さに焦 点 を あて る必 要 性が あ る だ ろ う。 文 献Cremonese
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126,
2hiA,regOre1-6eee9matwLtsntfig7'vVXIicad-6eFZ
33A
study ofthe
multipleproblems
faced
by
patients
withtonglle
cancer and
their
process
oflifestyle
changes
Norimasa
OGAMA
Kobe city Collegeof Nursing
Abstract
In this study, with thefocuson themultiple problernsfacedby patientswith tongue cancer who undergo surgical treatment,
includingthe relationship between functionalimpairment,changes inbody image,and the social environment, we developeda theereticalmoclel forthe processof lifestylechanges,
Ihesubjects were 32patientswith tonguecancer who hadachieved a returm tosociety, We cbnducted semistructured interviews
with the subjects, focusingon the multiple problemsthey faced,and the relationship betweenthe frequencywith which they
experienced theseproblemsand theirsocial cnvironment, Datafromtheseinterviewswas subjected to qualitativeinductiveanalysis.
The multiple problcrnsfaeedbypatientswith tongueeancer ineludedfunctionalimpairment,problems duetochanges inbody image
themselves,and interactionswith interpersonalreiationships inthc social envirenment, The eore problems ineach environment changed as theenyironrnent expanded, fromthebasicenvironment totbe surrounding environment, and thenthe working environrnent. Feur eating diencultieswere elicited as core problemsinthe basicenvironment, related to
'`differcnces
inhouseholdsetup",impairment of eating, swallowing or taste.Thefrequencyof these problemsdecreasedas thesecial enyironment expanded.
The cere problemsassociated with an increasedrange e'factivity, inthesurrounding environment and theworking environment, are
shown as a speech step model cemprising 3 steps,
"differences
inthe background to return to society", and organic dysarthriaor dysphasia.The frequeneyof theseproblemsincreasedas theenvironment expanded,Thrceaspects of changes inbedyimagewere elicited as thecore problernsat thevarieus '`times of changing environment". The
incidenceof theseproblems inereasedat thevarious timesof change,
These results suggest that,inpatientswith tonguc cancer facingmultiple preblems,qualityof life