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『松本歯学』発刊によせて

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Academic year: 2021

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『松本歯学』発刊によせて

矢ケ崎康

 いよいよ皆さんの研墳の成果が公表されるわが学会誌が生れました。まことに同慶に たえません.このことはいうまでもなく一人々々の先生方のご努力の賜であり,そして また具体的には研究者と編集に参加された方々の労苦の結実であることに間違いありま せん.  開学問もないこのような早い時期にだされた本誌は,本学の輝かしい歴史の上で必ず 大いなる評価を受けることになりましょう.先ずは襟を正して深い敬意を捧げます.  私はさきに発刊された本学の『研究誌』上や,学会発会式の折などにいろいろと挨拶 を述べてあります.その通りなので今回はあまり申し述べたくありませんが,一言だけ 申し述べておきましょう.  「大学学会誌」と一般の「学会誌」とはその趣が大分異るものだと私は思っておりま す。一般の学会誌というのは様々の考え方を持った研究者が,大体共通の分野において 集って作った雑誌であります.しかし大学学会誌ということになりますと学会長の指導 の下に,その大学に特有な理念と云いますか理想というものが一貫して反映されていな ければなりませんし,従って単に自分の専門分野だけに留まらず,その大学に必要な教 育分野まで含んだ研究論文や考察が必要になってくるものと思うのであります.このこ とは教育を必要としない研究所の学者と大学の学者との基本的違いであります.これが 教育と研究の両側面を持った大学の学者たちの立場であり,このことは似ていながら学 会誌の性質を異にさせる大きな理由なのであり・ます.この基本的考え方が欠如していた とするならぽ,特別に大学学会誌というものを設ける必要も薄くなってくるのでありま す.と云って一般的な論文がいけないと云う訳では決してありません.どしどし書いて もらわなければなりませんが,教育を度外視した大学学会誌というものはその価値観か らみて無意味だと云っているのであります.このことは易しいようでなかなか困難なこ とであります.その点をよくよく考えて次第に高めて行くように心がけていただきたい のであります.  大学とは何であるか.学問の研究はなぜ行われるのか.教育は何の必要のために生れ, 現代的価値としてどのように存在しなければならないか.などなどその源泉に立ち戻っ てすぐれた思考を働かせていただきたいのです.このことこそが大学学会を発展させ, 病める日本の大学と混乱した教育を治癒させる道のりであると考えます.いろいろ書く と際限がなくなりますのでこの辺で留めておきます.大学学会と本誌の一層の発展を祈 念し,協力を約してお祝いの挨拶といたします.   一事物をあるがまSに観察し認識し,      これをこよなく愛することが真の勇気である一  ロマン・ローラン ●

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