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猫「イラズ」及「カルモチン」中毒死の一剖検例

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Academic year: 2021

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片岡一1猫コイラズ﹂及﹁カルモチン﹂中毒死の一剖検例 第三雀  二三〇 60

猫﹁イラズ﹂及﹁カルモチン﹂中毒死の一剖検例

東京女子薯學專門學校内科敏室︵主任今村教授︶

         片 岡 ウ

メ 子

 最近﹁猫イラズ﹂及び﹁カルモチン﹂を服用し死亡して解剖しセ一例を御報告する。其前に一寸病歴を述べ る。  串心者。山本某。男。 二十⊥ハ出威。 職業。雇人。  既往歴。幼少の頃から健康で麻疹を経過し柁外に特別の疾患を知ら繊。種痘は三同受けて居る。﹁,ア川コホ ー川﹂は人との附合には飲む事はあるが自分から好んで飲む事はない。煙草は嗜まない。未だ結婚はして居 ない。  家族歴。父方の租母は老衰で死亡して居り組思及び父は健在、母は生別れにて不明である。同胞は五人。 一番上は肺結核で死亡して居る。二番目は患者自身で他三入は健在である。  現年歴。昭和八年五月二十二日午後一時牛市﹁力川下チン﹂三〇錠︵一筋の﹁力川モチン﹂含有量は0・一瓦︶ を服用し五分程後に一〇琵﹁チューブ﹂入の﹁猫イラズ﹂を少し残しπまま﹁パン﹂に包み服用しπ。燐の致死量 は0。〇五一0・=血で﹁猫イラズ﹂の燐含有量は五%で即身致死量の十倍の燐を少し残しπまま服用しπ事 になる。この日は患者は朝から頭療がすると言って就床して居πので午後三時頃家人が行って見π時に頭痛

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61 及び腹痛を訴へて居πが別に藥を服用しなかつπ。侮午後八時頃再び家人が行って見π時に患者自身自分は ﹁猫イラズ﹂を飲んで苦しいから醤者を呼んでくれと言ひその時家人は儲物と思はれる黄色の液膿が枕に相當 する所の敷布に附着して居るのに氣がついお。同日午後八時心学零点を訪れその時敷布及び下着は黄色の下 痢便、尿で汚染されて居た。  現症状。謄格中等度。顔面蒼自苦悶歌を呈して意識は精掴濁して居る。指肢端には﹁チアノーゼしが認めら れるが皮膚の散在性盗血、眼瞼皮膚の黄褐色は認められない。瞳孔は正静黙、爾側同大、封光反鷹稽鈍。脈 搏は頻藪、微弱然し不整、結滞はない。頸部淋巴腺に異常はない。  胸部 打診及び聴診にて特別の獲化はない。  腹部 梢隅没し胃部及び肝臓部に塵痛がある。肝臓は織れない様に思つ忙。脾臓は膨れない。  腱反射 消失して居る。下肢に浮腫は認められない。  便㊤尿 失禁で翌朝四時過ぎに死亡し柁爲に槍存する邊がなかっ陀事は残念に思ふ。  治療。○・一%の過浦俺酸加溶容液の胃厳器を行つ元が液の中には別に食物残渣及び血液は見られなかつ π。次に洗腸を行ひ排泄されだ液には便はなかつπ。リンゲル氏液五〇〇を注射してその他心臓藥の注射を 績けて行ひ経過を見る事にして午後九時過ぎに病室へ移しだ。  其の後の経過。病室に移ってからは眠り儲けて居て午後十時牛缶までは別に斎った事もなかつπがその後 脹.薄が時々結滞する様になつ柁が注射の爲か緊張はあまう悪い方ではなかっπ。午前零時頃までは時々手足 をパタパタ動かして居たが心臓藥の注射を行っても目を畳ます事はなかつ元。其以後は手足を動かす事もな く眠り績けて居π。翌九日午前二時牛頃より呼吸が不整となり酸素吸入をかけて居たが午前四時十五分頃よ    片岡”猫コイラズ﹂及﹁カルモチン﹂中霊舜死の一割拾川面      牌禦三巻  二三一

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62    片岡獲猫﹃,イラズL及﹁.カルモチン﹂・甲毒死.の一剖検例       第三巷 二一ニニ φ脈搏の緊張が急に悪く次り畳醒する事なく午前四時三十分服用後十五時間にして鬼籍に入る。  同九日午後一時より佐藤教授御執刀のもとに解剖された。         解 剖 的 所 見  身長一六〇糎。榮鹿町良。耳輪及び指端には著明な﹁チアノーゼ﹂が認められる。黄疸は不明。  骨格筋及び皮下脂肪組織はよく登育して居る。大胸筋に輕度の掴濁がある。  胸腺は既に脂肪憂性し胸膣内には異常の液膿はない。  大綱膜には脂肪少なく上方に翻韓して居る。  胃は膨大し腸管は中等度に萎縮し肝臓は右季肋弓より二横指下に見る事が出來る。  腸管膜は﹁チアノーゼ﹂を呈し腸草平淋巴腺は多欺大豆大に腫大して居る。  横隔膜高位は爾側共に第六肋骨に一致して居る。  心臓。心嚢液約一五立方糎。心嚢内面には盗血斑散在して居る。心臓は手拳大で重量は二六五琵。表面は 滑澤後面には盗血斑が散在して居る。心筋は強一洞濁して居るが虎斑は不明。辮膜装置には墾化はない。  肺臓。右肺。容積ば増加し重く下葉は特に膨大して居る。肋膜は滑澤であるが暗赤色を呈して肋膜下濫血 が幽い。割面ば登場に出血性で特に下葉に於て強い。氣管枝粘膜も一般に暗赤色をおびて居る。  蒼空。右肺に同じ。氣難場で下葉の後面には製粉沈着及び出血が見られる。割面を見ると下葉には多歎の 小出血がある。塞氣の含量は良好。  肝臓。腫大して硬度は鵜弛緩して居る9被膜は濫費で緊張し被膜下出血が散在して居る。大きさ二七×一 六×七難。重量一三四五琵。割面では實質は膨隆して居るが小葉像は爾見る事が出至る。杢艦に欝血及び脂

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63 肪凝性が見られる。  謄嚢は充満して居る.︶  脾臓。腫大し硬度は稽弛緩し大きさ一〇×七x三笠。重量八五琵.割面では髄質は血液に富んで居り淋巴 濾胞及び脾材は明瞭である。  腎臓Q左側大きさ一一×五×三・五糎。硬度は弛緩して居り割面では被膜は容易に剥離する事が出來る。表 面は滑澤でウエルハイソ野心歌静脈は怒張して居る。器質は一般に二度に潤濁して居るが皮質及び髄質の境 界は明瞭で皮質の手毬膿は赤い黙黙に見えて居る。髄質には﹁チアノーゼ﹂及び赤色線像がある。  右側大きさ一一×五×三糎。左側に同じ。  副腎。左右共に稚小さいが皮質髄質共に獲化はない。  膀胱。三角部に黙歌出血が散在して居る。  舌。舌苔を以って被はれ會厭軟骨は充血して居る。  食道。粘膜は﹁チアノーゼ﹂を呈し食道下部に訴状出血が散在して居る。  氣管枝。粘膜は晴赤色の分泌物で被はれ分枝部以下は出血性である。  胃。膨満し大鷺は約数〇糎。﹁コーヒ﹂様の内容を約二〇瓦入れ粘膜は腫脹し鍛壁は少なく胃底の後面には 小出血が見られる。幽門部には小出血斑及び慶欄が散在して居る。  十二指腸部。粘膜は腫脹し小出血斑を見る。  腸管。全膿に思様の濃厚な粘液で被はれ粘膜は出血性である。然し潰瘍は見られない。         解 剖 的 診 漸    片岡臨猫﹁イラズし及﹁カルモチンし申毒死の一剖検例       第三巻 二三三

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64    片岡11猫﹁イラズ﹂及﹁カルモチン﹂中毒死の一剖検例       第三巷 二三四  一、.燐中毒性出血性胃炎及び三池。二、出血性腸炎。三、出血性食製出。四、爾側肺臓出血及び俘腫。五、 肝臓の脂肪獲性及び欝血。六、心筋漏濁。七、脾腫。八、腎臓画質の掴濁及び欝血。九、血液の凝固性消失 粘膜漿膜系統の盗血斑及び骨儲筋の漏濁。

        組織 的所見

 心筋。心筋断裂及び潤濁。僅かの褐色穎粒が認められるが心筋は萎縮して罪な﹂い。然し脂肪縫性した筋繊 維は認められる。  肺臓。肺胞は憂く血液で充満され血心様である。炭粉沈着及び褐色顧粒を有して居る喰細胞がある。  肝臓。肝細胞は殆んど登園に亙って脂肪獲性が見られ肝細胞内の脂肪滴は一般に極小さく術クツペル氏星 芒歌細胞内にも充浦して居る。  爾肝細胞に褐色の頴粒が見られる所があり此本態を明かにする爲に﹁ぺ川リン﹂青反照を行ったが陰性であ っπ。此褐色男望は肝細胞の褐色萎縮の埋合に現はれる顯粒に類似して居るが量が極少なく且散在的である。  腎臓。皮質及び髄質の小血管及び毛細血管は擾糊し練導燈も充血して居る。細尿管内には僅かに赤血球及 び分泌物を容れて居る。  圭に警部の細尿管上皮の漏濁があう細尿管上皮圭に圭部及ヘンレ上品係に脂肪中性が見られる。  大胸筋及び舌筋に脂肪鍵性した筋繊維を交へて居る。  胃及び腸。粘膜には欝血及び炎生細胞の浸潤があう粘膜上皮及び腺細胞には脂肪攣性が見られる。  腸問膜淋巴腺内に小さな壊死竈が散在して居る。  終うに臨み御骨折蚕を頂きました佐藤敏授及び御校闘を賜りまし柁今村教授に厚く御禮申上げます。

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B、汎焚性出血寵   肺臓

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