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West症候群に対するビタミンB6(リン酸ピリドキサール)大量療法の臨床的研究 : 59例における有効性と,その副作用について

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(1)

原  著

酷葎聾18鞘膜,翻心〕

West症候群に対するビタミンB6(リン酸ピリドキサール)

大量療法の臨床的研究

一59例における有効性と,その副作用について一

東京女子医科大学 小児科学教室(主任:.福山幸夫教授)

       書 由 蠕 手

(受付平成5年6月22日)  High Dose Pyridoxal Phosphate Therapy fof West Syndrome: Cl壼nical Study of 59 Patients with Special Attention to Side Effects

        Reiko YOSmDA

Department of Pediatrics(Director:Prof. Yukio FUKUYAMA)       Tokyo Women’s Medical College   This report reviews in detail effects and side effects in 59 cases of West syndrome treated with high−dose vitamin B6(pyridoxal phosphate:PAL−P). Effects in the initial month:seizures were successfully controlled in 9 cases(15.396), partially controlled in 2 cases(3.4%), and unresponsive三n 47 cases(83.1%). Efficacy was higher in cryptogenic cases(27.8%)than in symptomatic cases(9.8%), but this difference was not s呈gnificant. The seizures disappeared during the first 3 days of treatment in 4 cases and by 17th day, at the latest, in the remaining cases. Dosages over 40 mg/kg/day produced no futher improvement. Side effects were observed in 330f 59 cases(55.9%)when PAL−P exceeding 20 mg/kg/day was adm呈nistered. Diarrhea occurred in 9 patients(15.3%), vomiting in 28(47.5%),1iver dysfunction in 16(27.1%). Liver dysfunction was mild to moderate, with maximal S−GOT or S−GPT levels below 600 KU, and量mproved when dosage was de¢reased. Taking these results童n consideration, the author recommends a daily dose between 20 and 30 mg/kg/day for long term PAL・P treatment。 Differences between atyp孟cal cases of vitamin B6 dependency in the European and Anlerican literature and our cases of vitamin B6 responsive seizures are also discussed..          緒  言  ビタミンB6(以下VB6)が有効で,その臨床像,. VB6の作用機序がほぼ明らかにされているけいれ

んには,VB6欠乏症とVB6依存性けいれんがあ

る.さらに,これらのいずれにも属さない難治性 てんかんでありながら,生理的必要量の100∼300 倍のVB6投与が著効する症例が見出され, VB6反 応性けいれんと呼ばれている.難治性てんかんに 対するVB6大量療法の試みは,大田原らによって 始められ1),大塚ら2)3)はWest症候群118例中15例 (12.7%)に有効例を,8例(6.8%)に部分有効

例をみたと報告している.この数字はACTH療

法の有効率には及ばないが,他の抗けいれん剤と 比べると特記すべぎものであり,ACTH療法の副 作用,長期予後を考えると,まず試みる価値のあ るものと思われる.我々の施設でも,West症候群 多数例に第一選択剤として投与し,1970年から 1980年までの入院症例,64例中3例(4.7%)に発 作消失を見た(投与量は10∼30mg/kg/day)4)∼6).  今回,1981年以降の入院症例において,40mg/ 一1156一

(2)

69 kg/day以上まで投与量を増量して観察,臨床的 有効性と,肝機能障害,消化器障害をはじめとす る副作用について詳細に検討し,若干の知見を得 た.また,最近海外で報告されているVB6依存性 けいれんの非典型例とVB6反応性けいれんとの 異同についても検討したので報告する.        対象および方法  1.対象  対象は1981年から1990年の間に当科に入院し, West症候群と診断された小児で, VB620mg/kg/ day以上を,最低7日間投与したもののうち,有効 例では有効投与量,無効例においては十分量(40 mg/kg/day以上)を3日間以上使用した59例(男 37例,女22例)である.このうち忌寸性18例,症 候性41例であった.潜因性とは基礎疾患がなく, 神経学的,神経放射線学的異常を認めない,発症 前の発達が正常のものとし,他を症候性とした.  2.方法  未治療例では一定;期間VB6を単独投与し,他剤 の併用を避けた.またVB6投与開始前,すでに他 の抗けいれん剤投与が行われていた例では,VB6 付加投与中効果判定まで,他剤の種類および投与 量の変更を一切行わなかった.投与方法は,原則 的に20∼30mg/kg/day 3日間,40∼50mg/kg/

day 4日間以上使用し,無効例にはACTH療法

を開始した.しかし症例によっては10mg/kg/day より開始したもの,60∼70mg/kg/dayまで増量 したもの,あるいは他院にて60mg/kg/dayより 始められていたものなどあり,投与期間について も多少の幅があった.  VB6製剤は原則的に活性型VB6,リソ酸ピリド キサールのカルシウム塩(PAL・P,商品名:アデ ロキサール散⑪)を使用したが,経口摂取が困難な 場合,あるいはより即時的有効性を検討する目的 には,リソ酸ピリドキサール注射液(ピドキサー ル⑧)の筋肉内あるいは静脈内投与を行った.経口 摂取困難のため非経口投与を行ったものは2例, 即時効果判定の目的に使用したものは4例であっ た.  有効性は,診療緑により投与前投与中,投与 後の発作回数を検討し,VB6投与により発作が消 失し,その後VB6のみで10日間以上発作の再発が 無かった者を著効,発作が50%以上減少し,一時 的に消失(1∼3日間)したが,その後の増量に もかかわらず,完全消失には至らなかったものを やや有効,発作頻度の減少が50%以下のものを無 効とした.脳波検査は,VB6投与スケージュールに そって,VB6投与前,20∼30mg/kg/day投与3日 目,40∼50mg/kg/day増量後4日目に施行,有効 例はその後も2∼3日毎に施行し,脳波に対する VB6の効果を観察した.  また副作用,特に消化器症状,肝機能障害など についても後方視的に検討を加えた.  なお,平均値の差の検定には対応のないT検定 を,百分率の差の検定にはκ2検定を使用した.          結  果  1.有効性  1)短期効果  著効は9例(15.3%)で,発作消失後10日間以

降1ヵ月以内に他剤を加えたもの2例,ACTH療

法に変更したもの1例を含んでいたが,全例1カ 月以内には発作の再発は見られなかった.やや有 効例は2例(3.4%)で,両例とも発作の増加傾向 が見られたため,早期にACTH療法を開始した. その他の48例(81.4%)は発作回数,脳波とも投 与前と比べ改善がなく,無効例とした.  2)症例  以下,著効例のうち典型的な2例(症例5,7) と新生児けいれんの既往のある1例(症例3),経 過中に突然死した1例(症例8),やや有効例1例 (症例10)を提示する.また全有効例の概略および 臨床経過を,表1,図1に,脳波の変化を表2回 目とめた.  (1)症例3(図1C)  血縁関係にない健康な両親から出生した第1 子,男児.出生前異常なし.37週前期破水,骨盤 位にて出生.二二巻絡あるも仮死はなかった.三 下時体重2,664g.二二3日,下肢のけいれんが出 現し,パルプロ酸ナトリウム(VPA)投与が開始 された.その後けいれんは見られず,定頸3ヵ月 までは発達順調であった.坐位獲得は8ヵ月と軽 度の遅れあり.生後9ヵ月,頭部前屈,四肢伸展 一1157一

(3)

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(4)

71

Oate      1981 Oct, 12 16 19 27 Nov.13 Nov,28 B2 May

age    5 Mo, Admission @  寺 PB 1Y 了he田P9 20 oκ CZP VitB6(mg/kg/day) ?ci謎....1:ζ..藤=;…導縣.㌔…... Cli伽。田$りmptoms Died@ 十   − Telzure$

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March寸O aroin Cτ 唐浮bр浮窒≠h ??高≠狽盾高 Duration a仕er B6 ride eπect$ kiりer「unc電ion @        GOT @        GPT @        LDH treatment(days) 22 @14 Q94 1 5   10 R5 @14 R76 15 20 25 3       図1A 症例1の臨床経過 Hyps.:hypsarrythmiaヒプスアリズミア, sp:棘波, psp:多中波, PB フェノバルビタール,CZP クロナゼパム         1982 O0電e June  J噂15     26 28     Aug. R0311 5 10 15 20   25 Sept. @1 87Nov,     ’89()c虚.  Rge hherOPU 8Mo.  9Mo. @         Admission @      寺 6YIMo.     7YOMo. @       off VPA・ 20 50 CZP @   30 CBZ @ off Vit.B6(mg!kg/day) bli鵬ical 5gr叩電om5

(190r㎎廻ay) {450mgκ拍の {270mg剣ayl {100㎎ゆaの

Seizurε$ @      100 CPS凶 (Total at胎cks 80 ∼day)   60 40 20 (Series/day) y【6 0    3−5    23 @      periodic hyps. @       十 520 @HVS 浮島

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(5)

May     March        1982 ・83     ,83      84 89 O0te       June        Oct, 15  18 20    25     30 Nov.1 5  8       Feb.6  ApriL 9ge         3D     gMo,  1Yo, 1Y6Mo, Admbsion      6Y10MQ. @      300rn da gamma g撃等u臆n CZP灘融 200mgハ(g Dl> @         20 @         ■ τherFOPg       VPA uit.86(mglkglday) b.1 薩 n i c  o l  $ u m p t o m  s reizure$me。,a田l seizu,e ム oTotalζttacks/dayl iSeries!day) @Eε6 600mgκ2ayk300mg/day}   100 @ 80 @ 6 @ 40 @ 20 @  0         2−3 gyウs. Hyps, @  軸 3−4    10 @       sp sp   sp,psp      sp・psp       focal sp @ Hyps・HVS sp冒w sp藺w(r”○)  sp・w      psp,s−w @  寺 寺       寺己寺  二二ウ    . ki”er σunction @       .GOT @       GPT @       LDH Duration after B6treatment. (days》 1    4  6    10      15      20      25 @      17   乖8        26      18 @      13  10       13      17 @     211 184      230       167 図1C 症例3の臨床経過     r−0:右後頭部 20        1985Sept, 186 Jan         Febr,      April    Mayoate      25     30  1    5      10      1.5.    20       89 10 11 12 1314  Rge        2Mo,   6Mo, @      Admls$ion

Eh…四     寺      CBZ

      50㎎ノday      100 mg/da Q0  40      60         40 〔150m⊆ソdayj    〔480 m⊆ソday,      {320 mg幽y2      ACTH Relapse Vlt.B6くmg!kg!day) テ1剛col$gmptom5 @       180.5eizure5 @       14.0 @       丁100〈Total atLacks   80 dE6 5−10.2 @  .mod, @    寺 2632330 @       sp(’)   focal sp、sp−w     噺ocal sharpwhy㍗’HIS(1一㌃P>  (卜㌧P}        5一伯 @        . gV sharp−w. @寺  Duration after B6treatment Tide所fed$ オゅer「undion @      GOT @      GPT @      LDH Vom}tlng{〆day) mausea& @ appetite ioss @      21 @      11 @         275 1day 5  8  10    15    20    25    30   3months @        ∩蝕蝕∩         3  21 1書 2 @   34   41   69 @    18  16.   47 @   309   456     355 29 P2 Q64       図1D 症例4の臨床経過 1−T,P 左側頭,頭頂部, r−F, P:右前頭, 頭頂部. 一1160一

(6)

73 Oo量e 1987ApriI @   11  15 20   25 May R01 5    10   15   20 「87July    I88    July    「89 @  16       25 脚90July Oct・ @   4    24  Rge sher叩9 uit.B6(mglk9/day)   Admlsslon @    十PAL−P330mg iv     ▼ 5MQ, 20  40 30

6Mo, 8Mo,     1YgMo. 3Y8Mo.4YOMo,

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80 Complex partial seizures 齢 60 40 20 (Series/day) d【6 0  13344 @    Hyps、 @      寺 320210 @  diffuse

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111 3.5months   2y lm       ム    nausea&vomiti㎎ 28 14 325 45  季7 447 4y6m 35 19 342 31 19 267  42  26 .330 42 24 358  54 55  20 32  32  32   10 17 308.399 200 300 図1F 症例6の臨床経過    mT:中側頭部. 一1161一

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251351015202129213

1989JuneJuly'8suulyAug,Sept.Oct.Nov,Dec,'90Jan,March'91Jan,JulyOct

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20-30 17-2D 240-260 pa IG figU7olkJiR#xa Oete 1989 June Juiy 30 12 14 20 25 Aug 1 5 10 15 20 25 Sept. 30 1 5 8 pt, 20 Oct. 8

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Therepy Vit.B6tmglkglqay) Clinicel symptoms Seizures (Tota1 attacks /day )

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(8)

-Oo鷺e 1982July     25 Aug.  1 20 25   Sept. 30 1 5 10 15  9ge U勧er叩讐 5Mo,6Mo. VitB6(mg!kglday} Cllni¢ol sgmp量om$ Seizure$ {T。t。1。性ack、198 /day)    60        40       20       0 {Series/day} 旺6 VPA    Admission    7Mo. 、。。。、、+,、。。。、。y 20   50 {180mg衣」ayl〔400mg幽y} 210 .ile㍉Pアw&ポV㍉ off    ACTH 0.025mg/kgκ」ay IM X 14days 3−5        2213 Hlps’m.号hyls’ Side ef「ec璽$ Li”erσunc璽ion         GOT         GPT         LDH Duration. after B6 treatment(days)       Vomiting(ノday}       23       11        275 HVS  壷 sp{一),ρsp{一1     寺 1     6 ム  ム 1  1  28   11 329 」 21 10 12 23  9 259 26 17 284 Oo電o 1987D㏄.     18 2021 図11症例9の臨床経過 25  1988Jan, 30  1 5 10 15 日ge 4,5Mo,     AdmlSSIon        十 5Mo. ACTH Iherap撃 20  40    10 O.0125rr㎎ゾkg/d匿匿y IM  14 days Vit.B6(mg!kg/day} oo blinicol$gmp電om$ @Seiz魑re$ DQ富93 〔110rngκ亀y}(200 mgκay}{50 mg/day) DQ富74 {Total atヒacks 100§8 ノday} 40 20 (Series!day) dE6 0 102 gyps. ウ 21 1 0 0 0 1 1331212 @ Hyps・peh.odic hyps,

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(9)

Oote 1987D㏄,  18  2021   25 1988Jan, 30 1    5 10 15 “ge 4,5Mo,   Adm}ssbn    壷 5Mo, ACTH 了肋er叩9 20        0、0125mg!kg/day S0 lM 14days 10 VitB6(mg!kg/dayl 00      DQ=93 bIinicol$gmptom$ @Seizure$ {110 ㎎幻ayl{200 mgメday)(50 mg〆day) DQ言74       100{Total atぬcks 含1 ノday} 40 20        0 iSer}es/day)        102 dE6 @       Hyps. @      寺 21雀

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ものが,1日に2∼3シリーズ見られるように

なった.某病院小児科に入院し点頭てんかん

(West症候群)と診断され,γ一グロブリン200mg/

kg静脈内投与を2回施行,脳波上はhypsarr−

hythmiaの軽度改善が見られたが,発作は不変で あった.1歳頃より,PALP 20mg/kg/dayを投 与されたが,臨床症状,脳波所見とも改善は見ら れなかった.1歳6ヵ月当科入院,津守・稲毛式

発達検査で発達指数は45であった.脳波は

hypsarrhythmiaを示し,頭部CT所見では軽度

の脳萎縮が認めちれた.クロナゼパム(CZP),

VPAを服用中で,前記にて入院3日前より

PAL−P 10mg/kg/dayを投与されていたが,入院 当日より30mg/kg/dayに増量した.増量後2日 目で発作消失し,活動性も増し,3週間の入院中 に坐位も獲得した.脳波は30mg/kg/day投与3 日目には,hypsarrhythmiaは消失し,基礎波は 2∼5Hz,50∼80μVの不規則なθ波であった.覚 醒時脳波では右後頭部優位の棘徐波が散発,睡眠 時では瘤波,紡錘波も見られ,びまん性棘徐波, 右後頭部優位の棘徐波,多棘徐波が見られた.そ の後は脳波の改善は見られなかったが,発作の再 発はなく,投与量は変更せず経過を観察した.6 歳10ヵ月時の脳波は俵然として,基礎波の律動異 常,頻回の不規則びまん性棘,多棘徐波,左ある いは右側頭部の散発性棘,多棘徐波など高度の異 常が認められていたが,5年5ヵ月の観察期間中 発作はなく,PAL・Pによる副作用も認めなかっ た.  (2)症例5(図1E)  血縁関係にない健康な両親の第1子,女児.出 生前異常なしご39週6日正常分娩にて出生,生下 時体重3,520g.定頸2ヵ月,寝返り4.5ヵ月と順調 に発達していたが,生後5ヵ月,頭部前屈,眼球 上転し,上肢を瞬間的に挙上する発作が,20∼30

秒ごとに4∼5回,1日に3∼4シリーズ出現し

た.第5病日,当科入院時の脳波(図2A)は,典 一1164一

(10)

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図2A 症例5の脳波. PALP投与前,覚醒時    「 F・ド^・」∼w ・ガ・・ ・ゴ・・」 FべA2

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       図2B 症例5の脳波, PAL・P投与5日目,覚醒時.        一1165一

(11)

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図2C 症例5の脳波. PALP投与9日目,覚醒時.’

型的なhypsarrhythmiaを示しており,潜因性

West症候群と診断し, PAL−P大量療法を開始し た.まず,PAL・P 40mg/kg(330mg)を脳波モニ ターしながら50分かけて静脈内授与したが,その 前後で脳波の変化は見られず,終了2時間後に1 シリーズ23回の発作を認めた.また静注終了直後 より嘔吐が3回出現,不機嫌となった.引き続き PAL−P 20mg/kg/dayを経口投与し,40mg/kg/ dayに増量後3日目(投与開始後7日目)以降,発 作は消失した.しかし40mg/kg/dayへ増量後,食 欲不振,毎日2∼3回の嘔吐が見られ,肝機能も 増量後8日目(投与開始後12日目)にはGOT 186 KU, GPT 186KUと悪化したため,30mg/kg/day に減量した.この量でも1週間に1回程度の嘔吐 があり,肝機能はGOT 40∼60KU, GPT 30∼40 KU, LDH 300∼400mU/mlで推移した.脳波所 見では,投与後5日目にはびまん性不規則棘門門 複合の頻度が減り,hypsarrhythmiaが消失(図2 B),9日目には棘期先が残るのみとなった(図2 C).また3ヵ月目には覚醒時の突発波が消失,基 礎波の軽度の律動異常が見られるのみとなり,5 ヵ月後には覚醒時,睡眠時とも正常脳波となった (図2D).この間,投与4ヵ月後に肝機能が, GOT 109KU, GPT 50KU, LDH 406mU/mlと悪化し たため,PALPを100mg/dayに減量した.投与後 1年頃より嘔気,嘔吐のため怠薬あり,1年3カ 月後の脳波所見は高振幅不眠,不規則鼠戸波複合 が見られたが,200mg/day投与再開にて半年後の 脳波所見は再び正常化した.2歳6ヵ月から再び 1年2ヵ月間怠薬し,3歳8ヵ月時,意識消失を

伴う右半身けいれんがありカルバマゼピン

(CBZ)200mg/day, PAL−P 200mg/day投与開 始,これ以後はけいれんは見られず,3ヵ月後に は正常脳波となった.  (3)症例7(図IG)  血縁関係にない両親の第2子,男児.出生前異 常なく,40週,2,907g,正常分娩にて出生.発症 までの発達は正常であった.生後6ヵ月25日,眼 一1166一

(12)

79

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1日1回に減少,5日目(投与開始後9日目)に

は発作消失した.治療前の睡眠時脳波はhypsarr・ hythmia(図3A),20mg/kg/day 2日目のものは 不変であったが,40mg/kg/day 3日目(投与開始 後7日目)にはhypsarrhythmiaは消失し,びまん 性多棘波が散見されるのみとなった(図3B).40 mg/kg/day 6日目(投与開始後10日目)には左後 頭部に小棘波が見られるのみとなり,同13日目(投 与開始後17日目)には正常脳波となった(図3C). 副作用としては,投与開始4日目より1日5∼12 回の外々便から水様便となり,血便も混じ,8日

間持続した.また嘔吐はPALP投与10日目より

1日に1∼2回の割で出現するようになり,同時 期より血清GOT, GPTが軽度の上昇を示すよう になった.PAL−Pを200mg/dayに減量してから は,肝機能は正常化し,嘔吐も見られなくなった. 発作の再発,脳波の異常も見られず,2歳2ヵ月 時,津守・稲毛式発達検査での発達指数は138で あった.1991年10月18日2歳10ヵ月以来来院せず, VB6投与も中止したままであるが,1992年12月現 在発作の再発はないとのことである.  (4)症例8(図1H)  」血1緑関係のない両親の第3子,男児.出生前異 常なく,37週6日,4,144gにて出生.生後10日目 に膜様肛門狭窄と診断され拡張術が施行された. 同時に頭血腫,血友病B,先天性心疾患(心房中 隔欠損,肺動脈狭窄),右停留睾丸と診断された. 生後6ヵ月時の発達は,3∼4ヵ月相当で,某病 院小児科で脳波異常を指摘された.生後8ヵ月10 日,頭部前屈発作出現,その後両上肢を挙上する 発作がシリーズを形成して出現し,第16丁目当科 一1167一

(13)

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図3C 症例6の脳波. PAL・P投与16日目,睡眠時. 入院となった.小頭症,扁平頭蓋,耳介低位付着, 両眼開離鼻根部扁平,短頸,翼状頸などの身体 特徴を認めたが,染色体検査,代謝異常スクリー ニング,頭部CT, MRIなどに異常はなかった. 入院時,覚醒時の発作間欠;期脳波はθ波優位の基 礎波の律動異常,睡眠時脳波では,棘波を混じた 不規則高振幅二二が連続的に見’られた.PALP 30 mg/kg/day(280mg/day)より投与開始,’50mg/ kg/day(460mg/day)まで増量した6日目(投与 開始より17日目)以降,発作は消失した.脳波は, 投与開始後14日目に睡眠時脳波の棘波成分が消失 し,高振幅徐波群のみとなり(発作消失3日前), 投与20日目(発作消失後4日目)には睡眠時も律

動異常を認めるのみとなった.副作用として

PAL−P投与開始後より時々嘔吐が見られるよう になり,投与開始後24日目よりVPAを併用した ところ,嘔吐頻回になり,肝機能障害も出現した. VPA中止後も嘔吐は持続,肝機能も軽度の改善 が見られたのみで投与開始後37日目(50mg/kg/ day 26日目)には再び嘔吐頻回で経口摂取不能, 2日間点滴静注投与を施行した(210盃g/day),40 mg/kg/dayに減量して経口投与再開,その後も 1日に1回程度の嘔吐が時々見られ,肝機能異常 も消長を繰り返していた.PAL−P開始58日後,自 宅にて突然死し,監察医務院での解剖の結果では 肝臓,中枢神経系等に異常を認めなかった.  (5)症例10(図1J)  血縁関係にない健康な両親の第1子,女児.42 週3日,2,760gにて出生.出生前,分娩時,新生 児期に異常はなかった.定頸3ヵ月であったが, その頃より時々嘔吐が見られ,体重増加不良で あった.生後4.5ヵ月に頭部前屈,四肢伸展位で挙 上する点頭発作がシリーズを形成して出現,発作 時に嘔吐を伴った.第4病日当科入院.頭部CTを

はじめ諸検査には異常はなかったが,脳波上

hypsarrhythmiaを認め,点頭てんかんと診断, PAL−Pを開始した.一旦発作が消失したが,40 mg/kg/day 3日目より再び出現,脳波の改善も

得られないためACTH療法を開始し, PALPを

10mg/kg/dayに減量した. ACTH・Z O.・025mg/ 一1169一

(15)

kgの連日筋注7日目より発作は消失したが,脳波 上,棘徐波複合が残存したため,後日VPAを追 加,焦点性の巴波や棘徐波が出現したためCBZ も追加されている.  3)有効例の検討(表1)  (1)原因疾患』

 著効例は,潜因性West症候群5例,症候性

West症候群4例で,症候性の内訳は,結節性硬化 症1例,出生前要因によるもの(多発奇形あり, ただし中枢神経系の異常は認められず)1例,周 生期要因によるもの2例(新生児けいれんの既往 と痙性両麻痺合併1例,右中大脳動脈閉塞による と思われる孔脳症,左半身麻痺1例)であった. やや有効例は2例とも症候性で,1例は原因不明 の中等度精神運動発達遅滞,他の1例は子宮内発 育不全があった.無効例は症候性35例,潜因性13 例であった.  (2)発症年齢  有効例は2∼8ヵ月,平均5.93±1.89ヵ月(平 均±標準偏差),無効例は0∼18ヵ月,平均5.43± 3.27ヵ月で有意差は見られなかった.  (3)VB6開始までの期間  有効例は0∼10ヵ月,平均1.96±3.07ヵ月,無 効例は0∼11ヵ月,平均2.27±3.06ヵ月で,有意 差は見られなかった.  (4)効果発現時の投与量および投与期間  経口摂取困難のため非経口投与(静注,筋注) を行ったものは2例,即時効果判定の目的に使用 したものは4例であり,1回の投与で効果を見た ものはなかった.  経口投与で発作が消失した時点の投与量は,① 20mg/kg/day 4例,②30mg/kg/day 1例,③40 mg/kg/day 3例,・④50mg/kg/day 1例であっ た.発作消失に要した期間は1日から17日で,9

例中1例を除きVB6開始後10日以内に発作が消

失した.50mg/kg/dayの大量投与でVB6投与開 始より17日目に,最終的な発作消失を達成した例 でも,40mg/kg/day 3日目(VB6投与開始後9日 目)には発作の一時消失(3日間)が得られてい た.  4)脳波に対する効果(表2)

 治療前の脳波所見は,著効例9例中8例は

hypsarrhythmiaを示していたが,1例は臨床発 作が典型的なWest症候群であったにもかかわら ず,発症当時は脳波に異常所見無く,経過を追っ ているうちに,睡眠時に棘波混入した不規則高振 幅巴波群発が頻回に出現するようになっていっ た.全例明らかな左右差は認められなかった.や や有効例ではhypsarrhythimia 1例,軽度の左右 差が認められるhypsarrhythmia 1例であった. 有効例9例のうち,hypsarrhythmiaの見られた もの8例は全例10日以内にhypsarrhythmiaが消 失,またhypsarrhythmiaが見られなかった1例 も,14日目には下野成分が消失し,高振幅徐波の みとなった.hypsarrhythmiaの消失は臨床発作 の消失2日前から発作消失後7日目の間に分布し ていた.VB6のみで,最終的にてんかん波の消失を 見たものは4例であり,全て半年以内に消失した.  5)追跡結果(長期予後)

 有効例のうち,発作消失後11日目にACTH療

法に切り替えた1例(症例9)を除く8例につい て,死亡例においては死亡までの期間,それ以外 の例では,3年5ヵ月∼10年4ヵ月の経過を追跡 し,長期予後を検討した.  症例6,7の2例は,再発なく,脳波正常所見, 精神運動発達も正常であった(それぞれの観察期 間4年8ヵ月,3年5ヵ月).症例3は最:終診察時 なお高度の脳波異常が見られるが,観察期間5年 5ヵ月中,臨床発作は見られていない.なお本児 は痙性両麻痺,中等度の精神発達遅滞が見られて いる,死亡した2例(症例1,8)は,死亡まで の期間(それぞれ2ヵ月,5ヵ月),臨床発作の再 発はなく,脳波も基礎波の律動異常は見られてい たが,突発波は消失したままであった.観察期間 中に再発したものは3例(症例2,4,5)であっ た.この中で症例4はVB6で一旦発作が消失した 3ヵ月後に再発し,ACTH療法に切り替えた.症

例2は,発症7年後にCZPの中止とVB6の減量

により部分発作が再発,症例5は,発作消失後3 年,VB6貼薬1年2ヵ月後に部分発作が出現した.  2.副作用  VB6投与中に見られた主な副作用は下痢,嘔吐, 一1ユ70一

(16)

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(17)

表3 ビタミンB6(VB6)大:量療法の短期(投与開始1ヵ月以内)の副作用 1日投与量 症例数 副作用出現例 下痢 嘔吐 肝機能障害

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20mg/kg未満 12 0 0 0 0 B 20mg/kg以上40mg/kg未満 57 16(28.1%) 6(10.5%) 12(21.1%) 0 C 40mg/kg以上60mg/kg未満 55 27(49.1%) 8(14.5%) 26(47.3%) 14(25.5%) D 60mg/kg以上 9 6(66,7%) 3(33.3%) 5(55。6%) 3(33,3%) VB,投与全症例 59 33(55.9%) 9(15.3%) 28(47.5%) 16(27.1%) VB6大量経口投与開始後1ヵ月以内にみられた副作用を,投与量群(A∼D)別,および全症例について示し た.投与量20mg/kg/day未満では副作用を認めない. 肝機能障害でありそれぞれ下記に詳述した.その 他嘔吐を伴う症例の一部門食欲不振が見られ,不 機嫌の記載が1例に見られた.発疹,筋力低下, 無気力,黄疸などの記載は見られなかった.また VB6大量投与の前後で神経伝導速度を測定したも のはなく,潜在性ニューロパチーの有無について は確認できなかった.  下痢,嘔吐,肝機能障害それぞれ単独で見られ たものは,下痢1例,嘔吐11例,肝機能障害4例 であった.下痢と嘔吐の見られたもの5例,嘔吐 と肝障害が見られたもの9例,下痢と肝機能障害 の組み合わせば見られなかったが,下痢,嘔吐, 肝機能障害が見られたものは3例であった.1日 投与量で,A:20mg/kg未満, B:20mg/kg以上 40mg/kg未満, C:40mg/kg以上60kg/mg未溝, D:60mg/kg以.ヒ,の4段階に分けたそれぞれの 出現率は表3のごとくであった.  1)下痢(図4)  下痢は9例,15.3%に見られた.2例は軽症の 下痢で,四々便から泥状便(1例は投与:量に関係

なく1日に2∼3回,もう1例は40mg/kg/day

に増量後回数が増加し,1日に3∼8回)が見ら れた.3例は中等症の下痢で1日に平均5回以下 の水様便,他の4例は平均5回以上の水様便が見 られ,そのうち2例は体重減少を伴う重症の下痢 であった.下痢出現時の投与量は,20mg/kg/day 5例,40mg/kg/day 2例,50m/kg/day 1例,60 mg/kg/day 1例であり,半数が投与開始量で出 現しており,20mg/kg 1日目が3例,2日目が1 例,4日目が1例と早期に見られている.下痢が 見られた症例も有効性の確認まで最低7日間,ま た40mg/kg/day 3日間以上VB6投与を続行し た.大半の例(9例中7例)では,一旦下痢が始 まると,VB6投与中止まで持続した.しかし,投与 中止後2週間,便性の回復が思わしく、なかった1 例を除き,投与中止により速やかに軽快した.50 mg/kg/dayから30mg/kg/dayに減量後消失し た例が1例,逆に,20mg/kg/dayで出現,40mg/ kg/day 6日目まで持続し,血便も見られたが減 量せず自然治癒したものが1名であった.下痢単 独のものは1例,他は嘔吐を伴っていたが,その 嘔吐は軽度(6例)から中等度(2例)であった. 1日投与量毎の発現率(表3)は,A:0%, B: 10.5%,C:14.5%, D:37.5%であった.  2)嘔吐(図4>  嘔吐は28例47.5%に見られた.出現率は,A: 0%,B:21.1%, C:47.3%, D:55.6%であっ た.出現.時の投与量は,20mg/kg/day 11例,40 mg/kg/kg 11例,50mg/kg/day 4例,60mg/kg/ day 2例であった.  重症度を次のような3段階,軽症:1日平均1 回未満;中等症:1日平均1回以上2回未満,重 症:1日平均2回以上,に分類した.軽症は17例, .中等症は7例,重症は4例であり,比較的軽度の ものが多かった.減量せずに消失したものは6例 で,すべて軽症であった.減量により消失したも の4例で3例は軽症,1例は中等症であった.中 止により消失したものは9例(軽症4例,中等症 3例,重症3例),中止後もしばらく続いたものは 4例であった.嘔吐は投与直後から30分以内に多 く見られたが,頻回のものは,授乳中,食事中に 多く見られ,ほとんどのものに食欲不振が伴って 一1172一

(18)

85 Number of case IneffectIve  cases case @50 蔓弼 属協嶺睾巨蝋F 膿げ・・レ繭 5ご’{,噸.藍㌧「 焼覇凋:翻凱 40 認認晦離』繍舗澱憂 ツ戸」 ・・∼》 ∼ρ ヒ∴療 繋 ㌶譲四 五鶉 諺羅81醐捌駕編淋醸口礫騰§畿臨駕口 30 難器駕認藤“蹴無 ・口・ F脅毒騨鎌謹韓:城離肇鵬 勲胴『,」よ「 錫.憲三’』 ♂礫・・鎚’ ive es 20 一。36揚瘍■ヨ浮 謡幽≧。 蝋職: 皿b   占E覇佃呼照「 腎 ■ 彫 銘 .奇 10 よ・’ド「嵩「’ 轟∴ 蕊隔詫 謡、一 識’,難 韻 き贈 姥 蹴}舗錆 湘窯 臨勲も 職口』三…げ』鵬罫 1 effective  case5 1曹 10 ∵ 寢・げ 燃撰鷲瀬㈱’乱轍鵜…舶   蕊鱗1雛&職羅 i藝難蝉胤 し隷騨う 篭賓鰹!総錬b・曇 =じ 刀w唱 〃品鰍贈駅瀬謝隅繍■螂融蝋潔島繍制窃灘銘 駕ζ脚篶麟職轄韓障 、■ォ贈㌔ ビル 」内 準認!龍搬艶 ■ r,阜 鞠嚇 毛翻冊 賊斬濾 鷲 頑驚 黙諺鞭雛難… 醤 40 20 白 ;partia麗y effective cases

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       Days after startihg of PAL−P treatment         図4 VB6大量療法副作用としての下痢と嘔吐 霧:下痢の観察された期間 圏:嘔吐の観察された期間 ■:下痢と嘔吐が観察された期間 IV:静注, IM:筋注. 棒グラフ中の数字15∼70は,PAL・Pの経口投与量(mg/kg/day),上段に無効48例を 下から投与期間の長い順に,下段に有効11例(やや有効例を含む)を上から投与期間 の長い順に配置した. いた.  一時的に筋注,静注を行った例が5例あったが, 筋肉内投与の1例と経静脈的投与10mg/kgのも のでは嘔吐は見られず,20mg/kg 1例,10mg/kg 2例では,静脈内投与中に数回の嘔吐が見られた. 肝機能の悪化時と嘔吐の出現時期が一致したもの は3例あった.  3.肝機能障害(図5)  嘔吐,下痢と異なり,採一血をして初めて副作用 として捉えられるため,肝機能障害出現日は明確 ではない.ここでは肝機能障害が明らかになった 採血を施行した日とした.肝機能障害としては, GOT, GPTのいずれかが50KU以上で,投与前よ り明らかに高値であるものとし,50KU以上100 一1173一

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87

KU未満を軽症,100KU以上300KU未満を中等

症,300KU以上を重症とした.全経過中肝機能障 害が見られたものは16例(27.1%)で,軽症7例, 中等症7例,重症2例であった.ここで重症とし たものも600KU以上のものはなく,通常の意味で は軽∼中等度の肝機能障害であり,減量あるいは 中止により速やかに改善した.肝機能異常の出現 は40mg/kg未満では見られず, C群(40mg/kg以 上60mg/kg未満)で13例, D群(60mg/kg以上) で3例見られた.それぞれの投与量での出現率は A,B群0%, C群25,5%, D群33.3%であった. 有効例,やや有効例のうち肝機能異常発現例は11 例中7例で,20,30mg/kg/dayで長期投与を続け たもの2例,40mg/kg/day以上の投与であって も短期間(投与開始より2週間以内)の投与であっ た2例を除く全例に見られた.また40mg/kg/day で維持した4例のうち1例は2.5ヵ月後の再発ま で肝機能障害は見られなかったが,3例は,軽度 から中等度の肝機能障害が見られ,死亡した1例 を除き2例は20∼30mg/kg/dayに減量後正常化 した.(減量は40mg/kg/day投与4ヵ月後,1.5カ 月後であった.)301ng/kg/dayで維持したもの3

例のうち2例でも経過中GOT, GPTの上昇が

時々見られ,1例は嘔吐を伴ったため少量減量, もう1例はそのまま経過をみたが,その後血清 GOT, GPT 40∼50KUと正常範囲に旧い着いた. また,軽症のものでは他の肝機能所見,ALP, LAP は変化せず,中等症ではGOT, GPTの動きと一 致して2例で軽度の上昇を見た.重症の1例で, ALP 45.5(2.7∼10), LAP 1051(170)と高値を 示した.γ一GTPは中等症の1例のみで軽度上昇, 他は変動が見られなかった.          考  察  1.VB6大量投与の有効性  VB6に関連するけいれんは次の2種類がよく知 られている.第一はVB6欠乏性けいれん(vitamin B6 deficient convulsion)7)であり,もうひとつは, VB6依存性けいれん(vitamin B6 dependent COnVUlSiOn)8)である.  VB6欠乏性けいれんは,1951∼1953年にかけて アメリカ合衆国で多発した乳児のけいれんから知 られるようになった.この原因は,製造過程の問 題でVB6含量が極端に少なくなったミルクであ り,それらのけいれんはVB6投与で消失した. VB6の欠乏は,それ以外にも消化管からの吸収障 害,VB6阻害剤(塩酸イソニアジド,ペニシラミソ など)で生じるが,生理的必要量が乳児で0、1∼0.5

mg/day,幼児で0.5∼1.5mg/day,成人で

1.5∼2.Omg/dayと少量であることから,通常の 食品に含まれる量で充分補われるため,特別な場 合以外では起こりにくい.  典型的なVB6依存性けいれんは,生後間もなく 発症し,通常の抗けいれん剤に反応せず,生理的 需要量をはるかに超えた多量のVB6投与(通常 50∼100mgの静脈内投与)により劇的に改善し, VB6投与中止で数日以内に再発する.常染色体性 劣性遺伝の先天性代謝異常のひとつであるとされ ている.原因としてはVB6アポ酵素のグルタミン 酸脱炭酸酵素(glutamic acid decarboxylase: GAD)の異常が考えられている.  これらのけいれんの起る機序は,前者ではVB6

欠乏によって,後者ではGADのVB6との結合部

位の変異によって,グルタミン酸からγアミノ酪 酸(GABA)の産生を触媒するGADの活性が低下 し,これに伴って中枢神経系に抑制的に働く

GABAが減少,けいれんが起ると考えられてい

る.  このいずれの範躊にも入らないもので,VB6に 反応するけいれんがあることは,Hanssonら9), Ekelundら10)が始めて報告したが,あまり学界の 注目を浴びなかった.大田原ら1)は,難治性けいれ ん(特にWest症候群, Lennox−Gastaut症候群) に対してVB6を投与し,大量を使用することに よってけいれんの消失する症例があることを観察

し,Hanssonら9)の言うVB6反応性けいれん

(vitaminB6 responsive convulsion)とした.それ 以来わが国においては,その有効性が認められ, West症候群に対するVB6大量療法として,多施 設で試みられてきたが,その投与量,投与期間と 有効性の関係,さらには副作用に関しては系統 だった研究報告は数少ない2)∼6)11).  今回の我々の結果では,短期効果としての有効 一1!75一

(21)

例は15.3%,やや有効例は3.4%であった.大塚 ら2)の報告によると有効例12.7%,我々のやや有 効例とほぼ同義の部分的有効例は6.8%(後の追加 症例での報告はそれぞれ11.9%,10.7%)であり, またその他の報告でも,両者を合わせた有効率は おおむね20%前後であり11)∼16),我々の結果とほぼ 同程度であった.有効例の発症年齢,VB6開始まで の期間,性別などは無効例と有意の差は見られな かった.症候性と四二性のものを比べてみると, 有効門中に潜門性の占める割合(55.6%)は無効 例中に一因性の占める割合(27.1%)より高かっ た.潜因性の中での有効率は27.8%,症候性例の 中での有効率は9.8%と潜因性の有効率が高かっ たが,有意の差はなかった(表4).一方で,大塚 ら2)の言うように,症候性の重大な脳損傷のある ような症例にも効果があるということは特記すべ きことである.  今回の結果から,VB6大量療法の短期効果は,早 いものでは1∼2日,遅いものでも10日間観察す れぽ,判定ができると思われた.また投与量,40 mg/kg/dayで効果の見られなかったもので, 50∼60mg/kg/dayまで増量して効果の見られた ものはなく,40mg/kg/dayまで観察すれぽ有効 性が判断できると思われた.脳波に対する影響も 著効例では,臨床効果が現れる時期に一致して改 善(hypsarrythmiaの消失)が見られ,有効無効 を判断するには2週間程度の観察で十分であると 思われた.  長期効果の報告は次の3編に見られる.大塚 ら2)は14例中,それぞれ3ヵ月後,5ヵ月後に Lennox−Gastaut症候群として再発した2例を除 く12例(85。7%)で,3年以上発作の再発が見ら れず,その中の9例ではてんかん波も消失したと 報告している.また14例中6例(42.9%)の発達 は正常であるとのことである.Benningerら16)は, 13∼8ヵ月経過を観察した5例全例で発作の再発 はなく,後に1例のみ部分発作が出現したが, CBZを付加して容易にコントロールされたと報 告している.BlennowらL7)によると, VB6にて発 作消失した3例の点頭てんかん児で,一度改善し た脳波が再び悪化したためVB6を中止し,四丁に 表4 潜因性,症候性の別と有効,無効の関係 有効串 無効 計 潜因性 5 13 18 症候性 6 35 41 計 11 48 59 やや有効例2例はいずれも症候性で,有効例の中に含めた. 変更,その後発作の再発,脳波の悪化を見ていな いとのことである.我々の有効例は9例であるが,

死亡例2例,発作消失後11日目にACTH療法に

切り替えた1例を除く6例で3年以内に再発した ものは,結節性硬化症の1例(3ヵ月で再発)の みであった.発作消失後3年以降に再発した2例 は,いずれもVB6投与中止後に複雑部分発作で再 発したが,CBZ付加にて良好にコントロールされ ている.観察期間中再発の無いものは3例(50%) で,うち1例はVB6中止後1年間再発はない.死 亡例2例においても発作消失から死亡までの期間 は再発がみられなかった.また,知的予後に関し ても,4例は正常知能,他も軽度1例,中等度1 例の遅滞であり,大塚らの言うように,VB6反応例 は長期予後においてもWest症候群全体の長期予 後に比し良好な経過をとるものと思われた.  2.副作用  今までVB6大量投与による副作用については あまり注意が払われず,詳細な報告はないが,消 化器症状として悪心,嘔吐,肝機能障害が見られ るとの簡単な記載がある11)}15).今回の我々の結果 では下痢15.3%,嘔吐47.5%,肝機能障害27.1% で,33例(55.9%)で何らかの副反応が見られて おり,決して低い頻度ではなかった.これらの副 作用は投与量20mg/kg/day以下では見られな かった.  1)下痢  VB6の副作用としての下痢は,今まで報告され ていないが,我々の観察では15.3%で見られ,9 例中7例は水様便,体重減少を伴う重症下痢で、 あった.下痢は投与開始早期から,遅いものでも 7日目までに出現しており,長期投与中新たに出 現した例はなかった.初;期投与量から出現し,投 与量の漸増あるいは漸減によっても大きく変化し 一1176一

(22)

89 ないものが多いことから,個体による感受性の差 が下痢の発現に関与しているものではないかと思 われた.ほとんどの例で,投与中止まで持続して おり,VB6が著効した例で,継続投与に支障が起き ることも考えられた.  2)嘔吐  嘔吐に関しても報告は少ないが11),今回最も多 く観察された副作用である.20mg/kg/dayから 見られはじめ,40mg/kg/day以上では半数のも のに出現した.ほとんどは軽度で,一過性のもの も多く,減量や投与方法の変更(1日頻回分服) にて軽快するものが多かった.大塚ら11)は嘔気,嘔 吐は,少量分割投与の方が耐えやすく,数日のう ちになれてくるものが多いとしている.しかし本 研究では,数日に1回程度のため経過をみた者, 投与開始後長期間たってから出現してきた者にお いて,結局少量の減量が必要となった.ほとんど が服薬直後に嘔吐が見られることから消化管粘膜

への直接的刺激作用と思われるが,あるいは

PAL−P自体の副作用ではなく, PAL−P製剤とし ての刺激作用かもしれない.しかし嘔吐が,肝機 能の悪化に一致したもの,非経口投与で出現した ものもあり,肝障害の関係するもの,中枢を介す る作用もあるのではないかと思われた.  3)肝機能障害  肝機能異常は27.1%で見られ,短期投与(1カ 月以内)では40mg/kg/day以上の投与例で出現, 軽∼中等度の肝機能障害であった.これらは減量, 中止により速やかに改善し,容量依存性であると 思われた.肝機能異常はいくつかの報告11)∼15)でも 30∼40%前後とされ,やはり減量で改善するとの ことである.40mg/kg/dayの長期投与例では投

与後2ヵ月前後で4西中3例に肝機能障害が出

現,20∼30mg/kg/day(150∼250mg/day)に減量 後正常となった.30mg/kg/day投与で維持した

3例では2例が時々血清GOTあるいはGPTが

100KU前後の上昇を示し,1例は嘔吐も伴ったた め少量減量,1例はそのまま続行したがそれ以上 の悪化はなく,正常化した.  以上の3つの副作用の面から考えると,長期投 与の場合,VB6開始時の体重あたり20∼30mg/ dayの投与が安全と思われた.  これまで肝機能障害の報告はすべて日本国内で の報告である.海外では末梢神経障害の報告は数 多く見られ,それらの投与量が大量であるにもか かわらず,肝機能障害の報告は我々が検索した限 りでは見られない.Yoshidaら18)はホモシスチン

尿症の症例でPAL−P大量投与にて肝障害を示

し,塩酸ピリドキシン大量投与では,肝機能の悪 化が見られないことを報告した.日本ではVB6製

剤としてPALPが使われているのに対し,欧米

では塩酸ピリドキシンが使用されている.この製 剤の違いが,わが国で高率に肝機能障害が認めら れることに関係しているかどうか,今後研究を進 めていく必要がある.  4)その他の副作用に関して  今回の研究の有効例の中には2例の死亡例が見 られた.1例は原疾患での心不全による死である が,もう1例では原因不明の突然死であった.ま た今回の研究対象には含まれていないが,当科の 症例には,EIEE(early infantile epileptic ence・ phalopathy with suppression burst)類似の症例 で,PALP 65mg/kg/day投与時に呼吸不全で死 亡した例がある19).原因不明の突然死例とEIEE 死亡例とも軽度の肝機能障害を認めたが,直前ま で全身状態には特変がなかった.VB6依存症の症 例で,初回のVB6静脈注射直後に周囲の刺激に対 する反応がなくなり,低緊張が著明となり,なか には呼吸不全をきたしたという報告もある20)21). また高メチオニン血症の症例でVB6大量療法を 施行中,高度の肝機能障害と嗜眠傾向,呼吸不全 が出現し,人工換気を必要としたとの報告もあ る12).今回の死亡例に直接VB6大量投与が関係し ている証拠はないが,今後注意を払っていく必要 があると思われる.  動物実験でのVB6大量投与による末梢神経障 害は古くより報告されていたが22)一24),1983年に人 での臨床報告がなされ25),それまで安全とされて きた水溶性ビタミンの大量療法に警鐘が貸せられ るようになった.ほとんどが成人例で容量,期間 に依存しており,1日投与量は2∼6gにおよぶと のことであったが,その後,500mg/day以上で出 一1177一

(23)

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