• 検索結果がありません。

A Survey on Teachers’ Experience and Understanding of Cultural and Gender Diversity in School

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "A Survey on Teachers’ Experience and Understanding of Cultural and Gender Diversity in School"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

       

*茨城大学教育学部家政教育教室(〒310-8512 水戸市文京2-1-1; Department of Home Economics, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).

**茨城大学教育学部英語教育教室(〒310-8512 水戸市文京2-1-1 Department of English, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).

学校における多様性の現状と教員の認識

~国籍と性の多様性に関する調査を手掛かりに~

佐藤裕紀子*・齋藤英敏**

(2019 年 8 月 30 日受理)

A Survey on Teachers’ Experience and Understanding of Cultural and Gender Diversity in School

Yukiko SATO* and Hidetoshi SAITO**

(Accepted August 30, 2019)

関心の所在と目的

近年,組織や集団の多様性を推進する動きが加速している。この動きは,ダイバーシティ・マネ ジメント,ダイバーシティ&インクルージョンなどと表現され,企業等の人事や雇用管理の場面 において,競争力を高めるための経営戦略として用いられることが多い(中村,2017)。わが国に おいて多様性が推進される背景には,少子化の進展に伴う労働人口の減少や,日本人の労働意識や 価値観の変化,市場や消費者のニーズの多様化などがある。人口減少とともに小規模化が進む組織 が,多様化する内外の多様なニーズに適切に対応していくために,多様な人材の有効活用に本格的 に取り組む必要が生じているのである。

教育の分野では,早くにはインクルーシブ教育として特別支援教育の領域を中心に多様性を尊重 し障がいの有無や発達の程度に関わらず皆が共に学ぶことを目指す取り組みが進められてきた。だ が,近年ではそれ以外でも,教育現場における外国籍やLGBT等の児童生徒などにみられる多様性 の広がりを背景にさまざまな取り組みが進められている。

外国籍児童生徒に関わる取り組みとしては,国際理解教育がグローバル・シティズンシップ(地 球市民)教育,平和学などとともに歴史的にはわが国でも細く長く育まれてきており,各教科(特 に社会科や外国語活動を含む外国語科)や総合的学習等でそれぞれ行われてきた経緯がある。だ が,決して系統的に指導されてきたわけでなく,指導すること自体が強く求められてきたとは言い 難い。また,国際理解教育はいずれも外国籍の生徒をどう自分のクラスに受け入れて一緒に学んで いくかという視点の教育ではない。例えば「国際理解教育ハンドブック(日本国際理解教育学会,

(2)

2015)」の授業実践などを見ても異文化理解などの文化比較と一部,国際問題(人権,平和)など に属するものである。もちろん,これらに理解を深めることは外国籍の生徒とうまくやっていく助 けになることは間違いない。しかしながら,今ここにいる生徒にどう対応していったらいいかの指 針にはならない。政府レベルでは,平成206月に「初等中等教育における外国人児童生徒教育 の充実のための検討会」により「外国人児童生徒教育の充実方策について」が示され,同報告書に 基づき文科省が初等中等教育における外国人児童生徒の教育の充実について取り組むべき施策の方 向性を示した。平成314月には改正「入管法」(出入国管理及び難民認定法)が施行され,学校 においても今後,外国人児童生徒の受け入れが一層拡大していくことが予想される中で,学校現場 ができることは何か,より具体的に示すこと必要となってきている。外国籍の児童生徒への対応に 関する調査は多くはないが,古川(2017)は伊勢崎市の全小・中学校教員を対象とした大規模調 査を実施し,現場が抱えている困難では小・中学校の教科・学級担任とも学習指導,生活指導,保 護者対応が突出しており,中でも保護者対応の難しさが一番多いこと,一方,嬉しさという面では 学習指導に関するものが一番高いこと等を報告している。

性の多様性に関しては,わが国の学校教育においてはながらく「問題行動」(文部省,1979)と して扱われてきた経緯がある1。しかし,1991年から始まり97年に結審した「動くゲイとレズビ アンの会」を原告とする「府中青年の家」裁判2や,90年代後半以降の性的マイノリティである 教員らによる「セクシュアルマイノリティ教育」(セクシュアルマイノリティ教職員ネットワーク,

2003)の実践など,90年代に各所でみられた当事者らによる活動は,世界的な潮流とも相俟って,

2000年に入ってからの政府レベルでの取り組みに結実した。2003年には「性同一性障害者の性別 の取扱いの特例に関する法律」が制定され,翌2004年に施行されると,学校現場において性別違 和を訴える児童生徒が学校側の対応を求める事例が報告され始めた(太田,2017)。こうした動向 を受け,2015年には文科省が「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等に ついて」を各都道府県・指定都市教育委員会及び私立学校等に通知し,翌2016年には前年の通知 を補足するものとして,「性同一性障害や性的指向・性自認に係る,児童生徒に対するきめ細かな 対応等の実施について」を発出した。だが,こうした対応にも関わらず,各種調査からは性的マイ ノリティの子どもたちが学校生活や社会生活においてさまざまな困難や生きづらさに直面している 実態が浮き彫りにされている(いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン,2014LGBT 法連合会,2015;日高,2016など)。最近の調査によれば,性的マイノリティは人口の約9 %を占 めるとされる(電通ダイバーシティ・ラボ,2019)。性的指向や性自認のいかんに関わらず,すべ ての児童生徒にとって学校が安心して通うことのできる場所となるよう環境整備が求められる。

多様性の受容の動きには,本来,さまざまな違いを受容するとともに,互いの個性を尊重し,生 かすことへの志向が含意されている。だが,近年の動きは,理念よりも多様化の現実の方が先行し たことから,学校教育現場は多様性を受容し生かすというよりはむしろ,急速な変化への対応に追 われている状況ではないかと推察される。したがって,多様化の実態を把握するとともに,そうし た多様化の現実を教員はどう捉えているのか,学校教育現場に広がる多様化の現状から新たな教育 的価値を創出していくためにはどうすればよいのか,早急に検討し,その内容を教員養成における 教育にも取り入れていく必要がある。

以上の課題意識に基づき,本稿では教員を対象として質問紙調査を実施し,学校教育現場におけ

(3)

る多様化の現状とそれへの対応,多様化に対する教員の意識を明らかにすることを目的とする。本 研究により,これからの学校教育現場における多様性の受容と活用のあり方を検討するための基礎 資料が得られることが期待される。

なお,本稿では障がいを持つ生徒らを主なターゲットとする発達の多様性に関しては扱わない。

既述したように,当該分野の教育は最も早くから対応が考慮されており専門教諭も存在する。本 稿での対象は専門教諭が存在せず,特に国内で緊急に対応が必要と考えられている外国籍および LGTB等の生徒に限定することとする。

方法

1.調査概要

20198月から9月にかけて,質問紙調査(郵送・留め置き法)を実施した。筆者らの本務校 がある茨城県内の県立高等学校97校,県立中等教育学校2校,県立中学校1校と,茨城県内の5 教育事務所管区からランダムに抽出された市立中学校100校,計200校の学校長宛てに依頼書を 送付し,学校長に当該校勤務の教諭1名を選任してもらい,その者を調査対象者とした。回収され た調査票は147,有効回収率は77.5%であった。対象者の基本属性は表1のとおりである。

2 .分析概要

上記の調査により収集されたデータを用い,各質問項目への回答について記述統計を行った。調 査項目は,外国籍の生徒に関しては,①学級担任や教科担当として外国人生徒を指導した経験,②

属性 内訳

性別 男性 103 70.1

女性 44 29.9

年齢 20歳代 10 6.8

30歳代 20 13.6

40歳代 40 27.2

50歳代 76 51.7

60歳代以上 1 .7

教員歴 5年未満 6 4.1

5年以上10年未満 15 10.2

10年以上20年未満 24 16.3

20年以上30年未満 57 38.8

30年以上40年未満 44 29.9

40年以上 1 .7

勤務校 中学校 68 46.3   高等学校* 79 53.7 *「高等学校」には中等教育学校2校を含む.

1 対象者の基本属性 n = 147

(4)

外国人生徒に個別に日本語の指導をした経験,③外国人生徒の指導において感じた困難,④外国人 生徒がいてよかったこと,⑤外国人生徒に対する理解促進のための国際理解教育実践,⑥外国人 生徒の受け入れに必要なこと,⑦外国人生徒が増えることに対する教員の意識である。LGBT等の 生徒に関しては,①LGBTかもしれないという話を聞いた経験,②LGBT等の生徒と関わったとき の勤務校と立場,③LGBT等の生徒に関する情報入手の経路,⑦LGBT等の生徒からの訴えの内容,

⑧訴えを聞いたときの対応,⑨LGBT等の生徒との関わりにおいて感じた困難,⑩多様な性のあり 方に関わる授業や講演会活動,⑪性の多様化が進むことに対する教員の意識,⑫性の多様化に関 わって教育において必要と感じることである。外国籍の生徒に関する質問項目の一部は古川(2017 をベースに改変したものである。

「外国人生徒が増えることに対する教員の意識」,「性の多様化が進むことに対する教員の意識」,

「性の多様化について教育において必要と感じること」については4件法で尋ね,各質問項目に対 し肯定する度合いが低い順に1点から4 点の得点を与えて得点化した。また,「外国人生徒が増え ることに対する教員の意識」,「性の多様化が進むことに対する教員の意識」については,質問項目 のうち「多様化の進行に対する負担感」,「多様化の進行に伴う環境整備の必要感」,「多様化の進行 を教育的に活用しようとする意識」のそれぞれに関する5 つの質問項目に対する得点を合計して平 均値を算出し,それぞれを「多様性負担感」得点,「環境整備必要感」得点,「多様性活用意識」得 点とした。各尺度得点を構成する5 つの質問項目について表2に示した。

尚,「性の多様化について教育において必要と感じること」の調査項目については後述する。

構成概念 質問項目

多様性負担感得点 配慮すべきことが増え対応が大変になる

配慮すべきことが増え児童生徒との関わりが大変になる 配慮すべきことが増え学習指導が大変になる

児童生徒間のトラブルが増え対応が大変になる 保護者からのクレームや要望が増え対応が大変になる 環境整備必要感得点* 外部機関との連携が必要になる

教員が多様な性(文化)への理解を深める機会が必要になる 教員が多様な性(外国人の児童生徒)への対応を学ぶ機会が必要にな

児童生徒が性(文化)の多様性について理解を深める機会が必要にな

児童生徒が性(それぞれの文化)の多様性を尊重する態度を身に付け る機会が必要になる

多様性活用意識得点 多様性への配慮が進み学校がどの児童生徒にとっても生活しやすい場 所になる

多様性を受容する雰囲気が醸成され学校がどの教員にとっても働きや すい場所になる

多様性への理解が進み児童生徒の人権意識が高まる

多様性への理解が進みいじめ等の児童生徒間のトラブルが減る   多様な背景をもつ人との共生を児童生徒が実感を伴って学ぶことがで

きるようになる

*「外国人生徒が増えることに対する教員の意識」の項目では( )の語句を使用した。

2 各尺度得点を構成する項目

(5)

結果

1.外国籍の生徒の指導経験と国籍の多様化をめぐる教員意識

回答した147名の中高教員のうち6割(59.9%)が,外国籍の生徒の指導経験があるとしている

(表 3)。指導経験の有無と学校種との関連は見られなかった(x2(1) = .59, p > .05, r = -.06)。よっ て以下は,中高の区別をせずに指導経験のある教員(88名)の結果を示す。日本語の個別指導を 経験している教員は少なく,13.8%であった。指導のうち最も困難であったのは,学習指導(59.1%),

保護者対応(55.7%),生活指導(50.0%)であり,多くの教員が肯定している(複数回答)。この 回答をさらに詳しく見たのが表4であり,言語的問題による意思疎通や,学習内容理解,テストで の配慮などが多く問題としてあげられていた。また,保護者対応も,同様に言語的問題により意思 の疎通ができないというのがほとんどの回答であった。生活指導面では文化・習慣的な違いによる 不和が文章から読み取れた。

項目 内訳 % n

指導経験 ある 88 59.9 147

ない 59 40.1  

日本語の個別の指導 ある 13 14.8 88

  ない 75 85.2

困難を感じた面* 学習指導面       52 59.1

保護者対応 49 55.7

生活指導面 44 50.0

進路指導面 23 26.1

友人関係 15 17.0

困難を感じたことはなかった 15 17.0

  その他 4 4.5

よかったと思った* 友人関係 41 46.6

学習指導         22 25.0

生活面 17 19.3

保護者対応 3 3.4

その他 13 14.8

*複数回答

3 外国籍生徒の指導経験

(6)

逆に外国籍の生徒がいてよかった面は,友人関係が最も高く(46.6%),続いて学習指導(25.0%),

生活面(19.3%)であった。この回答をさらに詳しく見たのが表5であり,最も多くあった回答は

クラスメートの異文化理解,多様性理解が促進される点であった。また,クラスを明るくする,中 心である,英語授業(他教科も)での模範になるなどがあげられた。また,クラスメートも外国籍 の生徒に対して,思いやり・優しさなどを見せるなどの良い影響が見られることがあげられた。

一方,国際理解教育の授業を行った経験があるのは26人(全回答者のうち17.7%)と多くなく,

そのうち道徳で行った場合が最も多く(11人),次がホームルームと総合的学習(それぞれ9人)

であった(表6)。しかしこの数値は,回答者の担当教科が関係していることが考えられるので,

注意が必要である。当該生徒を教育資源として利用していたのは,このうちわずか4人であった。

困難を感じた面 件数

本人の言語的問題(意思疎通,テストでの配慮,学習での専門語の理解) 46 文化・習慣の違い(ピアス,時間感覚,提出物,欠席,行動,宗教,学校のルール 理解,学校の優先順位)

25

保護者との連絡・意思疎通(言語理解・文化理解も含む) 24 進路決定の困難さ(言語的問題による理解不足,帰国の考慮,キャリアに対する感 覚の相違)

7

日本語ができるので問題ない(困難はない) 3

欠席・成績不振 1

基礎学力 1

立場に不安 1

放課後の学習支援 1

孤立 1

カリキュラム編成 1

4 教師が外国籍の生徒の指導で困難を感じた面 (複数回答) n = 88

よかった面 受益者 件数

多様性理解・異文化理解(興味を高める・生活の中での理解) 他の生徒 28 助けたり,思いやりのある行動(平等に扱う・特別支援の子に対

しても寛容になる) 他の生徒 18

授業などで積極的に行動(他への良い影響・ALT役として模範・

本人の自己肯定感を高める・美術での活躍・数学を教える・モデル)

本人・他の生徒 9

クラスを明るくする,クラスの中心 他の生徒 6

コミュニケーションへの意欲が高まる 他の生徒 4

英語の好きな生徒が積極的に関わったり,役にたったりする 他の生徒 4

教師自身の成長(英語・指導方法) 教師 3

本人が保護者の通訳をしてくれた 教師・保護者 1

成長を見れた 教師 1

5 教師が外国籍の生徒がいてよかったと感じた面 (複数回答) n = 88

(7)

外国籍の生徒の受け入れに必要なことはどれも数値が高いが(表7,複数回答),日本語指導の 支援員派遣(以下,全回答者のうち72.8%)が最も高く,続いて,児童生徒の母語を話せる支援員 派遣(69.4%),そして教員研修(49%)と学校外での受け入れ体制(46.9%)であった。この欄の 数値はどれも高く,教員が様々な支援を求めていることが伺える。

外国籍の生徒が増えることに対する教員の意識に関する結果は表8の通りである。平均値は「多 様性負担感」得点は2.88,「環境整備意識」得点は3.49,「多様性活用意識」得点は2.81であり,4 件法であるので,「多様性負担感」得点も「多様性活用意識」得点もそれぞれ高めである。解釈は 推測の域を出ないが,「整備整備意識」得点が極端に高いことから,負担感,活用意識はあるものの,

まず様々な面で環境を整備して欲しいというのが本音であろうか。これは上述の表7の外国籍生徒 受け入れに必要なことの数値がいずれの項目も高いことと同様であろう。

項目 内訳 % n

国際理解教育の授業経験 ある 26 17.7 147 ない 121 82.3   教科* 道徳        11 42.3 26

ホームルーム 9 34.6 総合的学習 9 34.6 英語(外国語) 5 19.2

社会 2 7.7

  その他 1 3.8

教育資源として利用したか はい 4 15.4

  いいえ 22 84.6  

*複数回答

項目 %

日本語指導の支援員派遣 107 72.8

児童生徒の母語を話せる支援員派遣 102 69.4

学級・教科担任の教員研修 72 49.0

学校外での受け入れ体制(市やNPOなどが設置した支援センター) 69 46.9

常勤担当教員の配置 53 36.1

その他 7 4.8

6 国際理解教育の授業経験について

7 外国籍生徒の受け入れに必要なこと (複数回答) n =147

(8)

2.LGBT等の生徒と関わった経験と性の多様化をめぐる教員意識

LGBTかもしれないという話を聞いた経験のある教員は41人(27.9%)であった。話を聞いた経 験の有無と学校種との関連は見られなかった(x2(1) = 3.36, p > .05, r = -.15)。また,勤務年数(20 年以上、20年未満)との関連も見られなかった(x2(1) = 1.89, p > .05, r = -.11)。

LGBTかもしれないという話を聞いた経験のある教員のうち,話を聞いたときの勤務校は高等学 27人(65.9%),中学校13人(31.7%)であった。話を聞いたときの立場としては,担任が3 割近く(29.3%)に及んでもっとも多く,次いで多い順に教科担当教員(24.4%),学年担当教員(9.8% などであった(表9)。情報入手の経路としては,「他の教員から聞いた」割合が4割を超えてもっ

平均* 最小値* 最大値* α 標準偏差 外国籍 多様性負担感得点 2.88 1 4 .86 .77

環境整備必要感得点 3.50 1 4 .81 .58

  多様性活用意識得点 2.81 1 4 .82 .72

多様性負担感得点 2.59 1 4 .83 .61

環境整備必要感得点 3.46 1 4 .91 .55

  多様性活用意識得点 2.79 1 4 .85 .56

**とてもそう思う=4,どちらかといえばそう思う=3,あまりそう思わない=2,そう思わない=1

8 外国籍・性の多様性に関する尺度得点の記述統計量 n =147

属性 内訳

勤務校 高等学校 27 65.9

中学校 13 31.7

その他 1 .7

立場 担任 12 29.3

教科担当教員 10 24.4

学年担任 4 9.8

教育相談員 3 7.3

教員 3 7.3

養護教諭 2 4.9

管理職等 2 4.9

その他 1 2.4

無回答 4 9.8

情報入手経路 他の教諭から 17 41.5 日常会話で本人から 6 14.6 個人面談で本人から 6 14.6 養護教諭を通して 3 7.3 学校カウンセラーを通して 1 2.4

  その他 3 7.3

9 LGBT等の児童生徒との関わりの経緯 n = 41

(9)

とも多く(41.5%),そのほかには「日常会話で本人から聞いた」と「個人面談で本人から聞いた」

がともに14.6%で,いずれにしても本人から教員が直接話を聞くケースが比較的多いことが示され

る一方,「本人の保護者から」も12.2%に及んでいることが確認された(表9)。

次にLGBT等に関する訴えの主な内容については,「自分の性に違和感があることを聞いてもら いたい」が半数近く(48.8%)に及んでもっとも多く,次いで「制服が性別により区別されている のがいやだ」39.0%),「授業や学校内の活動が性別により分かれているのがいやだ」26.8%)が多 かった(複数回答,表10)。こうした訴えに対する対応としては,約半数の教員が「同僚に相談した」

51.2%)と回答したが,「ただ本人からの話を聞いた」(43.9%)と回答した教員も半数近くに及ん

でいた。誰かに相談した教員の相手としては,同僚のほか,「校長」(24.4%),「保護者」(24.4%),

「スクールカウンセラー」19.5%)などが挙げられたほか,ごく少数ながら「医療機関」4.9%),「教 育委員会」2.4%)なども見られた(複数回答,表10)。

指導面で困難を感じた場面としては,約半数が「感じたことはない」51.2%)と回答したが,困 難を感じた教員のなかでは「友人関係」22.0%),「生活指導面」22.0%)などを挙げた者が多かっ た(複数回答,表10)。

性の多様化に関わる授業や学校で講演会を行った経験がある教員は52人(35.4%)であった。

そのねらいとしてもっとも多かったのは「多様な性に対する理解を深める」63.2%)であり,次い で多い順に「いじめの予防や根絶」(29.3%),「人権に対する理解を深める」(8.8%),「自分自身の 性について理解を深める」0.7%)であった。

性の多様化が進むことに対する教員の意識について表8に示した。「多様性負担感」得点,「環境 整備必要感」得点,「多様性活用意識」得点のいずれも半数以上が肯定しており,なかでも特に「環 境整備必要感」得点が高い(3.46点)ことが目立った。

訴えの内容 訴えを聞いてからの対応 件 直面した困難 聞いてもらいたい 20 48.8 同僚に相談した 21 51.2 感じたことはない 21 51.2 性で分けられた制服が嫌だ 16 39.0 話を聞いた 18 43.9 友人関係 9 22.0 性で分けられた活動が嫌だ 11 26.8 アドバイスをした 10 24.4 生活指導面 9 22.0 将来に不安がある 6 14.6 校長に相談した 10 24.4 保護者対応面 3 7.3 周囲に知らせたい 4 9.8 保護者に相談した 10 24.4 学習指導面 2 4.9 戸籍上の性別を変えたい 3 7.3 スクールカウンセラーに相談した 8 19.5 進路指導面 1 2.4 好意をよせる相手に受け入

れてもらえない 2 4.9 医療機関に相談した 2 4.9 その他 4 9.8 性別適合手術をしたい 2 4.9 教育委員会に相談した 1 2.4

違和感を自分が受け入れら

れない 2 4.9 その他 12 29.3

自分を理解してほしい 1 2.4 周囲に知られたくない 1 2.4 家族に嫌がられる 1 2.4

その他 6 14.6

10 LGBT等の児童生徒の話の内容と対応 n = 41(複数回答)

(10)

教育において必要と感じることについては,すべての項目で半数以上が必要と感じており,性の 多様化に関する教育的ニーズは高いことが確認された(表11)。生徒に教える内容としてはLGBT のなかでも特にトランスジェンダーについてのニーズが高かった(3.27点)。また,教員が学ぶ内 容としては教員研修において「性の多様性について」,「性の多様性に対応するための方策」につい て学ぶこと(ともに3.22点)のニーズが高かったほか,「性の多様性について教える優れた教育実 践」に対するニーズも高かった(3.10点)。

考察

1.国籍の多様化をめぐる今後の課題

外国籍の生徒に関する調査での困難さは学習面が最も高く,次は保護者対応,生活指導となり,

これは古川(2017)での保護者対応が最も高い結果とは異なることとなった。おそらく,古川(2017 では小中の教員が対象で,本研究は中高教員であるので,保護者との接触頻度が異なることが理由 として考えられるだろう。また,小学校に比べて,学習の難度が高まることも順位の逆転につながっ た可能性がある。ただ,サンプルの大きさが異なるので,いずれも解釈は推測の域は出ない。また,

生徒,保護者ともに意思疎通ができないというのは憂慮すべき問題であり,最も迅速な解決が求め られる。授業内容,生活のルール,進路の検討いずれも話し合いが生徒理解には必要であり,日本 語は全てのベースになる。ICTや学校外の人材もうまく利用して,ともかくこの点の改善が求めら

認識 平均* 最小値* 最大値* 標準偏差

体の性と心の性に違和感を抱く人がいることを

学校教育で教えること 3.27 1 4 .61

性の多様性についての学習を,教員研修で扱う

こと 3.22 1 4 .61

性の多様性に対応するための方策を教員研修で

扱うこと 3.22 2 4 .63

性の多様性について教える優れた教育実践が蓄

積されること 3.10 1 4 .70

性の多様性について教えるための適切な学習教

材が開発されること 3.01 1 4 .74

性の多様性に対応するための方策を教員養成課

程に明確に位置付けること 2.96 1 4 .78

性の多様性についての学習を,教員養成課程に

明確に位置付けること 2.93 1 4 .80

両性愛という性のあり方があることを学校教育

で教えること 2.80 1 4 .75

同性愛という性のあり方があることを学校教育

で教えること 2.78 1 4 .76

*とても必要=4,どちらかといえば必要=3,あまり必要でない=2,必要でない=1

11 性の多様化についての教育の必要性 n = 147

(11)

れる。また,テスト配慮(accommodations)も早急な解決が求められる問題である。テスト配慮とは,

身体能力や言語能力などの不足から,そのような不足のない生徒と同じテストを同じ環境で受験で きない場合,様々な支援を配慮することである。日本語の指示が読めない・理解できないため試験 ができず成績不振に陥る点も複数の指摘があり,中でもある回答者はそのように生徒を全く配慮し ない学校側の対応を憂慮していた。これに関しては,教育の公正という面から学校はもちろん,県・

市の教育委員会レベルでの緊急対応を求めたい。

一方で外国籍の生徒が授業(特に英語)やそれ以外の面でモデルになったり,明るくクラスの中 心的存在になったり,多様性理解のリソースになったりと多くの肯定的側面も報告されている。こ れは古川(2017)のケースでも同様であり,教科・学級担任が積極的に彼らをうまく教室に取り 込んで,良い影響を広げる指導技能が求められる。当然ながらそのような研修が緊急に必要であ り,多くの教員も研修を求めていることが結果(表78)からも伺える。また,性多様性と同様に,

外国籍の生徒を負担と感じながらも,活用しようという意識も高く(表8),教員は決して後ろ向 きではなく,受容していく意志が調査から見えたことは朗報であろう。しかし,調査結果からは国 際理解教育に関する授業はまだまだ行われていないことがはっきりわかった。特に当該生徒を上手 に利用して日本人生徒との相互理解を深めるきっかけとなるような授業を行うことが求められる。

例えば、中学校での報告から、当該生徒の生まれ育った環境や大切にしているものを知り、相互理 解を深めるという授業を道徳で行ったとあった。このような授業実践が、相互の心的距離を縮める 一歩になることは確実であり、広まることが望まれる。

このように,外国籍の生徒の対応において様々な問題点が教育現場でおきており,対応に苦慮す る教員の様子が浮き彫りになった。教員養成教育においてこのような現状を伝えるとともに,解決 策を受講者と一緒に模索し,現場に出る際の準備を進めておく必要性を強く感じた次第である。

2 .性の多様化をめぐる今後の課題

調査結果から,学校教育現場における性の多様化をめぐり特に注目されるのは以下の点である。

第一に,LGBT等の生徒と関わった経験のある教員割合が3割近くにのぼっている点である。し かも,そうした情報が教員に届く経路としては教員間で共有されるケースがもっとも多いものの,

日常会話や個人面談などを通し,生徒が直接接する機会の多い担任や教科担当教員に本人自ら訴え ているケースも多い。すでに述べたように,性的マイノリティは人口の1割弱を占めるとされるが,

従来,その存在は見えにくいとされてきた。しかし,性的マイノリティに対する社会的寛容性が高 まる中で,今回の調査からは学校においても子どもたちが自ら声を上げ始めている様子が示された。 

担任や教科担当教員は教員であれば誰もが経験する立場である。これをふまえれば,多様な性につ いての理解やLGBT等の生徒からの何らかの訴えに対しどのように対応していけばよいのかについ ては,教員養成課程における教育や教員研修等のプログラムの中に適切に組み込んでいくことが今 後の課題といえよう。今回の調査において,LGBT等の生徒と関わった経験と教員歴とは関連性が 見られなかった。これは学校において性的マイノリティが可視化され始めて長くはないことに起因 していると思われる。性の多様性については,教員養成段階のプログラムにおいて扱うことの必要 性は言を俟たず,現職教員についても,すべての教員がそれぞれのキャリアステージにおける研修 等で学ぶことができるよう,研修内容を検討していく必要がある。

(12)

第二に,当事者である生徒からの訴えは自分の性に対する違和感がもっとも多いが,制服や授業 など学校の活動自体に問題となる要素があることを訴えるケースも多数に上っていることである。

性の多様性が広く認知されてきたとはいえ,我々が生きる社会は依然として誰もが男女のいずれか に分類されることを前提とするヘテロノーマティビティ(異性愛規範)に基づいている。学校も 例外ではない。LGBTの子どもたちは,そうした規範に基づく衣服,活動,役割等がいかに自分の 意にそぐわないものであったとしても,学校生活では受け入れざるを得ない。今回の調査からは,

LGBTの子どもたちが何か特別な出来事ではなく,日常の学校生活に存在するそうした「当たり前」

にこそ困難を感じている様子が浮き彫りにされた。

多様な性に対する理解やLGBT等の児童生徒に対する適切な対応について,すべてのキャリアス テージの教員が学んでいく必要があることはすでに指摘した。だが,そうした知識等とともに,研 修等ではさらに教員自身が無意識にヘテロノーマティビティを内面化していることに気づくような 働きかけが求められる。なぜなら,本調査の結果が示唆するように,そうした「当たり前」を疑う 視点こそが,当事者である子どもたちに対する教員の共感的理解を生み,彼らが直面する生きづら さを低減させることにつながるからである。

第三に,多様な性のあり方に関する授業や講演会等を開催した経験のある教員が3割強だった点 である。この割合をどう評価するかは難しいが,子どもたちが実際に多様な性のあり方について知 識を得るのは,より一般的にはメディアを通じてであることを考えると,彼らにとって多様な性は 常にからかいや差別のまなざしとともにあるといえる。性的志向や性自認がどのようなものであれ,

それは尊重されるべきであることを真摯に学ぶ機会が子どもたちには必要である。現在,教員によっ ては保健体育科や家庭科の授業等で多様な性について扱っているが,まだ少数である。今後,学校 として取り組んでいく必要があろう。

第四に,性の多様化をめぐる教員の意識として,多様性を活用しようとする意識や多様性を受容 するために環境を整備しようとする意識は低くない点である。性の多様化が進めば,それへの要望 やトラブル等に対応せざるを得ず,負担が増すことは当然,予想される。だが,そうしたことをふ まえた上で,多様性を受容するために生徒・教員の学ぶ機会の確保や外部機関との連携など,環境 を整備することへの必要感を意識している教員は少なくなかった。また,多様性が進めば生徒の人 権意識が強化され,学校がどの生徒にとっても生活しやすい場所になるなど,教育的効果がもたら されることを肯定する教員も過半数を超えた。本稿の冒頭では,学校教育現場は多様性を受容し生 かすよりはむしろ,急速な変化の対応に追われているのではないかと述べたが,意識の上では多 様性の受容と活用を肯定する教員は少なくないことが明らかとなった。現在,学校現場における LGBT等の当事者の位置づけは依然として「配慮を必要とする者」である。こうした発想を超えて,

多様な性が適切に受容されるための具体的な方策が本格的に検討される時期がきている。

 

まとめと課題

本調査では,学校教育現場における国籍や性の多様性の広がりに対し,それらを受容し活用する 意思のある教員は少なくないこと,また,そのための環境整備の必要性を感じている教員はさらに 多いことが確認された。こうした国籍や性の多様性については,企業等の労働現場などにおいて,

(13)

企業経営上の競争優位性を確保することの必要性と結びついてさまざまな取り組みが行われてい る。また,海外での取り組みも豊富である。今回はこうした他分野や国外での取り組みについては 調査していないが,今後は他の領域における優れた実践等を参考に,学校教育現場における多様性 の受容と活用のあり方について,具体的な検討を進めていきたい。また,本調査からは,国籍や性 の多様性に対する理解を深める教育実践をめぐるニーズが高いことも明らかとなった。こうした現 場のニーズに対しても,学校現場と適切に連携しつつ応えていくことが課題である。一方で,本調 査から垣間見えるのは,多様性に対する国・県・市などの行政の対応の遅れである。これについて 教員とともに予算も含め積極的に声をあげる必要性が痛感された。

本稿の執筆は,「関心の所在と目的」,「まとめと課題」を佐藤・齋藤,「結果」の「1.外国籍の生 徒の指導経験と国籍の多様化をめぐる教員意識」および「考察」の「1.国籍の多様化をめぐる今 後の課題」を齋藤,「方法」,「結果」の「2LGBT等の生徒と関わった経験と性の多様化をめぐる 教員意識」および「考察」の「2.性の多様化をめぐる今後の課題」を佐藤が担当した。

謝 辞

本研究には,茨城県内の多くの高等学校,中等教育学校及び中学校の学校長ならびに教諭の先生 方にご協力頂きました。また,本調査は茨城大学教育学部研究倫理委員会の許可を得て実施しまし た(研究課題名:学校教育現場における多様性受容の現状と課題,許可番号:19P1500)。実施に あたりましては,茨城大学教育学部研究費特別配分の助成を受けました。記して感謝の意を表しま す。

1)文部省(当時)が1979年に発行した『生徒の問題行動に関する基礎資料―中学校・高等学校編』

においては,同性愛を「倒錯的性非行」であり,指導して改善すべき「問題行動」であると位置 づけている。

21990年に「動くゲイとレズビアンの会」が府中青年の家を利用した際,他の利用団体から差別 的行為を受け,それに抗議したところ,同施設の利用を青年の家および東京都教育委員会から拒 否されたことに対し損害賠償を求めた裁判。

引用文献

電通ダイバーシティ・ラボ.2019.「LGBT調査2018」

  http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2019002-0110-2.pdf(2019810日閲覧)

古川敦子.2017.「外国人児童生徒の教育において教員が感じる困難および意義に関する一考察」『共愛学園前橋 国際大学論集』17, 39-50.

日高庸晴.2016.「LGBT当事者の意識調査~いじめ問題と職場環境等の課題~」

(14)

  http://www.health-issue.jp/reach_online2016_report.pdf(2019810日閲覧)

いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン.2014.「LGBTの学校生活に関する実態調査(2013)結果報 告書」http://endomameta.com/schoolreport.pdf(2019810日閲覧)

LGBT法連合会.2015.「性的指向および性自認を理由とするわたしたちが社会で直面する困難のリスト(第2版)」

http://lgbtetc.jp/list_20150830.pdf(2019810日閲覧)

文部省. 1979.『生徒の問題行動に関する基礎資料―中学校・高等学校編』

中村豊. 2017.「ダイバーシティ&インクルージョンの基本概念・歴史的変遷および意義」『高千穂論叢』52(1), 53-82.

中西絵理.2017.「LGBTの現状と課題―性的指向又は性自認に関する差別とその解消への動き―」『立法と調査』

394, 3-17.

日本国際理解教育学会(編著).2015.『国際理解教育ハンドブック―グローバル・シティズンシップを育む―』

明石書店.

太田美幸. 2017.「性の多様性をめぐる教育政策研究の課題」『日本教育政策学会年報』24, 66-73.

参照

関連したドキュメント

 当該小学校では、困った時に誰かに相談することや自分の気持ちを伝えることは悪いことではな

文部科学省のいう、「日本語指導が必要な外国人児童生徒」とは、来日して間もない日本

国際的な記念日に、いろいろな国でいろいろな人がいろいろなことのために一緒にやっ

昨今の教育現場では、日本語を母語としない児童生徒や、日本国籍を持ってい

第1章 外国人児童生徒問題とは 1、外国人児童生徒の増加 2005 年現在、文部科学省によると日本語指導が必要な外国人の生徒数は 1 万

5 ≪職場における「LGBT」≫ ◆職場の人からLGBTをカミングアウトされた・カミングアウトしていると聞いた

11 HANDS next 宇都宮大学教育学部国語教育4年 「学び合う姿勢」の大切さ 加 藤 千

11 HANDS next 宇都宮大学教育学部国語教育4年 「学び合う姿勢」の大切さ 加 藤 千