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Stroke coordination of breaststroke in young swimmers Eriko G

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若年競泳選手における

平泳ぎのストロークコーディネーション

五家絵里子 * ・渡邊將司 *

(2020 年 8 月 31 日受理)

Stroke coordination of breaststroke in young swimmers

Eriko G

OKA

* and Masashi W

ATANABE

* (Accepted August 31, 2020)

       

*茨城大学教育学部(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1;College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).

はじめに

平泳ぎは, 1 回の腕のかきと 1 回の脚の蹴りのサイクルで泳ぐ泳法であり,競泳中はいかなる場 合でも,両腕の動作は,同時に,左右対称に行わなければならず,交互に動かしてはならないもの である。また,スタートと折り返し後の最初の一かきから,体は伏臥位でなければならない。いか なる時でも仰臥位になってはならないが,折り返し動作中は,壁に手がついた後,伏臥位でなく てもよい。ただし,足が壁から離れたときには,伏臥位状態でなければならない(日本水泳連盟,

2014 )。

Chollet et al ( . 2004 )によると,平泳ぎの腕の動きのフェーズは, 5 つに分けることができる(図 1 )。 1 つ目のフェーズは, Arm glide である。このフェーズは,腕を前に伸ばしストリームライン の姿勢をとってから,腕を動かし始めるまでの間の局面のことである。 2 つ目のフェーズは, Arm

propulsion である。腕を後ろに動かし始めてから,腕を後ろに動かし終わるまでの間を指し,この

フェーズは推進力を生み出す動きの 1 つ目の部分である。 3 つ目のフェーズは, Elbow push である。

Arm propulsion の終わりから腕を前に出す動き(リカバリー)が始まるまでの間の,肘が内側に動

かされる動きのことである。このフェーズは,推進力を生み出す動きの 2 つ目の部分である。 4 つ 目のフェーズは, First part of the recovery ( 1st Arm recovery )である。このフェーズは,推進力を

持たない Recovery の前半部分であり, 3 つ目のフェーズの Elbow push の終わりから前腕と上腕の角

度(肘の角度)が 90 °に達するまでの間を指す。 5 つ目のフェーズは, Second part of the recovery

( 2nd Arm recovery )である。このフェーズは, 1st Arm recovery の終わりから腕が伸びきりスト

リームラインの形に戻るまでの間を指す。このフェーズは, Recovery の後半部分であり, 1st Arm

recovery と 2nd Arm recovery の 2 つのフェーズを合わせたものをリカバリーフェーズと呼ぶ。以上

(2)

の 5 つのフェーズから平泳ぎの 1 ストロークの腕の動きは構成されている。

平泳ぎにおける脚の動きも 5 つのフェーズに分けることができる。 1 つ目のフェーズは, Leg

propulsion である。かかとを臀部にひきつけた状態から,脚を後ろに蹴り出し始めるところから,

脚が完全に伸びきるまでの間を指す。このフェーズが脚の動きの主な推進局面である。 2 つ目の フェーズは, Leg insweep である。このフェーズは,脚が伸びきった状態から脚を内側に動かし,

両脚がつくまでの間を指す。 3 つ目のフェーズは, Leg glide である。両脚がまっすぐに伸びている 状態で,脚を臀部の方にひきつける動き(リカバリー)が始まるまでの間を指す。 4 つ目のフェー ズは, First part of recovery ( 1st Leg recovery )である。このフェーズは,脚を臀部の方にひきつ け始めてから,大腿と下腿の角度(膝の角度)が 90 °になるまでの間を指す。このフェーズは,リ カバリーフェーズの前半部分にあたる。 5 つ目のフェーズは, Second part of recovery ( 2nd Leg recovery )である。このフェーズは, 1st Leg recovery の終わりから,かかとを臀部の方へひきつけ 終わり,再び Leg propulsion が始まるまでの間を指す。このフェーズが, Recovery の後半部分であり,

1st Leg recovery と 2nd Leg recovery を合わせてリカバリーフェーズという。以上の 5 つのフェーズ から,平泳ぎの 1 ストローク中の脚の動きは構成されている。

平泳ぎのストロークコーディネーションは,腕の動きと脚の動きのタイムギャップによって評価 する。平泳ぎにおける腕の動きと脚の動きのタイムギャップは T1a , T1b , T2 , T3 , T4 の 5 つがある。

T1a は,脚が蹴り終わって( Leg propulsion の終わり)と Arm glide の終わりまでの間を指す。 T1a が 0 のとき,腕と脚の推進局面の間には連続性があり, T1a が 0 より大きいときは,腕と脚の推進 局面には重なりができて強い推進力をもたらし, T1a が 0 より小さいときは,腕と脚の推進局面に 切れ目が生じていることを示す。 T1a が 0 より大きくなることは,上肢と下肢がストリームライン をとることなく泳ぐため,高いパフォーマンスレベルの選手のみ可能である。 T1b は,両脚が後ろ に蹴り終わり,内側に向かって動き始め,完全に両脚が伸びてから, Arm glide が終わり推進局面 に入るときまでの間を指す。 T1b が 0 のとき, T1a が 0 のときと同じように,腕と脚の推進局面に 連続性があることを示す。 T1b が 0 より大きいとき, T1a が 0 より大きい状況あるいは T1b が 0 よ り小さい状況のどちらかと同じ状況にあることを示す。また, T1b が 0 より小さいとき, Arm glide と Leg glide が同時に起こっていることを示す。 T2 は Arm recovery の始まりと Leg recovery の始まり の間を指す。 T3 は Arm recovery の終わりと Leg recovery の終わりの間を指す。

T2 と T3 が 0 のとき,腕と脚の推進局面に力学的な継続性があることを示す。 T2 と T3 が 0 より 小さいとき,推進局面とそうでない局面が重複していることを示しているが,このコーディネーショ ンであってもエリート選手であれば速いスピードを得ることができる。 T2 と T3 が 0 より大きいと き,上肢もしくは下肢のどちらかが Glide しているとき,もう片方も Glide しているため,体がスト リームラインをとっていることが分かる。

T4 は, 2nd Arm recovery の始まりと 2nd Leg recovery の始まりの間を指す。 T4 が 0 のとき,肘 が 90 °になるのと同時に,膝も 90 °になっているということであり,これは flat breaststroke の特徴 である。 T4 が 0 ではないときは, Arm recovery と Leg recovery の間に協調運動の欠陥があることを 示している。

Chollet et al. ( 2004 )によると,泳速度が上がるほど T1a 及び T1b は減り,これらは速度を上げる

ために Glide の時間を減らしているものと思われる。しかし, T2 , T3 , T4 は速度が上がることに

(3)

よる大きな変化は見られなかった。つまり,スプリントにおいては,推進局面を増やし, Glide の 時間を減らすことが最も大切であると考えられる。また, T1a などのタイム差を計ることは,競泳 選手のスキルを知るために最適であるとされている。

このように,平泳ぎのストロークコーディネーションの特徴は,成人においてはある程度明らか になっている。しかし,身体や体力だけでなく技術の発達も著しい若年競泳選手のストロークコー ディネーションパラメーターの特徴については十分に明らかになっていない。そこで本研究は,若 年競泳選手における平泳ぎのストロークコーディネーションパタメーターの特徴を横断的・縦断的 観点から明らかにする。

方 法

1.被験者

被験者は, 2002 年から 2005 年に茨城県及び千葉県のスイミングスクールに通っていた小学 2 年 生から高校 3 年生までの,延べ 109 名である。同一被験者を除いた数は,男子 26 名,女子 29 名,

計 55 名である。被験者の属性は表 1 の通りである。なお,本研究は筑波大学体育科学系研究審査

Chollet et al(.2004)を改変

図 1 平泳ぎの腕と脚の動きのタイムギャップ

(4)

委員会の承認を得て実施された。

表 1 被験者の属性

全体(n=55) 男子(n=26) 女子(n=29)

年齢(歳) 13.34±2.25 13.14±1.82 13.52±2.60 身長(cm) 153.55±11.35 155.45±13.72 151.85±8.59 体重(kg) 44.21±10.82 44.79±11.55 43.68±10.29

50mのベストタイム(秒) 39.49±4.44 38.73±5.28 40.17±3.48

2.測定種目及び測定方法

泳ぎのコーディネーションを評価するにあたり,回流水槽において各々の専門種目で, 1 回 30 秒の試技を 1 人につき 3 回行った。各被験者は得意種目の 50m 全力泳のタイムを各クラブで事前 に計測してもらい,そのタイムを基に平均速度を算出した。各被験者の測定の 1 回目の試技は,回 流水槽の流れの速さを,試技を行った年の 50m 全力泳の平均速度の 75 %の速さ(相対的 75 %速度)

に設定し, 2 回目の試技は 80 %の速さ(相対的 80 %速度)に, 3 回目の試技は 85 %の速さ(相対 的 85 %速度)に設定した。

回流水槽における実験において,安全性を保つため,被験者が入水をしてから試技開始までの間 は,流水に流されぬようにブイを掴み,競技開始の笛が鳴ると同時に,掴まっていたブイを離し,

試技を始めるようにした。また,被験者には,安全ベルトを腰に巻き,万が一,流されても機械に 巻き込まれないようにした。

被験者の進行方向に向かって左側からビデオカメラで記録した。得られた映像については,動画 再生ソフト( QuickTime Player )を用い,それぞれのフェーズを映像のコマ数から算出した。なお

映像は 30fps で撮影した。また,分析対象とする 1 ストロークは,泳ぎの安定している試技中盤の

1 サイクルを抽出した。 

3.分析項目

1 ストロークタイム,腕の動きの局面である Arm glide , Arm propulsion , Elbow push , 1st Arm recovery , 2nd Arm recovery ,脚の動きの局面である Leg propulsion , Leg insweep , Leg glide , 1st Leg recovery , 2nd Leg recovery の 1 ストローク内の割合,および腕と脚の動きのタイムギャップ の T1a , T1b , T2 , T3 , T4 を算出した。

4.統計処理

算出されたストロークコーディネーションパラメーター間の関係をみるために,年齢,ベストタ イム,身長,性別を考慮した偏相関分析を行った。また 1 ストロークタイム,各フェーズの割合,

タイムギャップの泳速度に伴う変化を求めるために,性別,年齢,ベストタイム,身長の影響を除

いた共分散分析を行った。さらに,ストロークコーディネーションに影響を与える因子を速度別に

求めるために,性別,年齢,ベストタイム,身長を調整因子とし,各ストロークコーディネーショ

ンパラメーターと調整因子の 1 つに対し,その他の調整因子の影響を除く偏相関分析を行った。偏

(5)

相関分析の結果と比較するために,各ストロークコーディネーションパラメーターと各調整因子の 単相関分析も併せて行った。相関係数の強さは, 0 ≦ r ≦ |0.2| を相関関係なし, |0.2| < r ≦ |0.4| を弱い 相関関係, |0.4| < r ≦ |0.7| を中程度の相関関係, |0.7| < r ≦ |1| を強い相関関係と定義して評価した(小 野寺・菱村, 2005 )。

1 年後, 2 年後, 3 年後の相対的 85 %速度におけるストロークコーディネーションパラメーター の変化を求めるために,年齢,ベストタイム,身長,性別の影響を除いて共分散分析を行った。そ の際,効果量も算出した。効果量とは, 「効果の大きさ」のことを示し,実験的操作の効果や変数間(本 研究では各ストロークコーディネーションパラメーター)の関係の強さを表す指標である(水本・

竹内, 2008 )。効果量の指標と評価の目安は, 0.2 未満であれば効果「無」, 0.2 以上であれば効果「小」,

0.5 以上であれば効果「中」, 0.8 以上であれば効果「大」とした。

データの集計には Microsoft Excel2013 ,相関分析,偏相関分析及び共分散分析には JMP8.0 を用 いた。本研究における統計的有意水準は 5% とした。

結 果

1.ストロークコーディネーションパラメーターの基本統計値

表 2 は, 1 ストロークタイム, 1 ストローク内の Arm propulsion , Elbow push , 1stArm recovery , 2nd Arm recovery , Arm glide , Leg propulsion , Leg insweep , Leg glide , 1st Leg recovery , 2nd Leg recovery の割合,腕と脚のタイムギャップである T1a , T1b , T2 , T3 , T4 の平均値及び標準偏 差を速度別に示した。

2.速度別にみたストロークコーディネーションパラメーター間の関係

年齢,ベストタイム,身長,性別の影響を除いた各項目間の偏相関行列を表 3 ~ 5 に示した。相 対的 75% 速度においては, 1 ストロークタイムと Elbow push , 1st Arm recovery , Arm glide , Leg propulsion , Leg insweep , Leg glide , 2nd Leg recovery の間に有意な相関関係が認められた。相対 的 75% 速度における相関係数の最も大きい有意な相関関係は, Leg propulsion と Leg glide の間で r =

- 0.68 であった(表 3 )。相対的 80% 速度においては,相対的 75% 速度にみられた 1 ストロークタ

イムと 1st Arm recovery , 2nd Leg recovery の有意な相関関係は認められなかった。しかし,相対的

75% 速度でも認められた Leg glide と 1st Leg recovery , Leg glide と 2nd Leg recovery の間には,相対

的 80% 速度においても相関係数の高い有意な相関関係が認められた(表 4 )。相対的 85% 速度にお

いては,相対的 75% 速度,相対的 80% 速度でみられた Leg glide と 1st Leg recovery の間の有意な相

関関係は認められなかった(表 5 )。

(6)

表 2 ストロークコーディネーションパラメーターの基本統計値

75%速度 80%速度 85%速度

1 ストロークタイム(秒) 1.27±0.23 1.24±0.16 1.12±0.16

Arm propulsion(%) 22.62±5.06 23.97±4.24 23.99±3.71

Elbow push(%) 18.72±4.25 18.80±3.88 20.86±4.16

1st Arm recovery(%) 12.51±4.25 12.35±3.16 12.84±3.14

2nd Arm recovery(%) 18.45±5.31 19.34±4.16 18.72±4.62

Arm glide(%) 27.69±9.33 25.54±7.74 23.58±7.03

Leg propulsion(%) 18.06±3.27 17.96±3.42 20.11±6.88

Leg insweep(%) 13.81±4.08 15.43±4.37 15.08±3.73

Leg glide(%) 33.03±11.88 33.62±10.76 31.04±9.69

1st Leg recovery(%) 11.04±10.16 10.13±9.44 10.77±9.75

2nd Leg recovery(%) 17.63±4.66 17.03±3.84 16.95±4.08

T1a(%) -18.55±9.79 -15.45±8.67 -13.32±0.00

T1b(%) -4.47±11.39 -0.16±10.72 1.92±8.97

T2(%) -12.19±8.32 -9.42±7.13 -11.53±6.75

T3(%) -7.41±9.01 -8.44±7.18 -8.94±6.07

T4(%) 11.02±6.04 10.89±5.00 9.77±3.58

表 3 相対的 75%速度におけるストロークコーディネーションパラメーター間の偏相関行列

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)

(1)1 ストロークタイム

(2)Arm propulsion -0.09

(3)Elbow push -0.51** -0.04

(4)1st Arm recovery -0.56** -0.15 0.40**

(5)2nd Arm recovery -0.16 -0.32* 0.15 0.15

(6)Arm glide 0.60** -0.27 -0.67** -0.62** -0.52**

(7)Leg propulsion -0.53** 0.20 0.35* 0.21 -0.02 -0.34*

(8)Leg insweep -0.48** 0.00 0.39* 0.28* 0.24 -0.42** 0.27*

(9)Leg glide 0.61** -0.06 -0.38* -0.48** -0.19 0.52** -0.68** -0.51**

(10)1st Leg recovery -0.24 0.10 0.07 0.29* -0.31* -0.03 0.21 -0.07 -0.35*

(11)2nd Leg recovery -0.29* -0.01 0.24 0.31* 0.19 -0.34* 0.44** -0.06 -0.61** 0.13

*p<0.05,**p<0.01

(7)

表 4 相対的 80%速度におけるストロークコーディネーションパラメーター間の偏相関行列

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)

(1)1 ストロークタイム

(2)Arm propulsion -0.23

(3)Elbow push -0.37* 0.06

(4)1st Arm recovery -0.24 -0.25 0.26

(5)2nd Arm recovery 0.04 -0.40** 0.17 0.32*

(6)Arm glide 0.39* -0.28* -0.72** -0.54** -0.52**

(7)Leg propulsion -0.48** 0.02 0.22 0.35* 0.14 -0.33*

(8)Leg insweep -0.32* 0.07 0.07 0.24 -0.27* -0.02 0.26

(9)Leg glide 0.40** -0.05 -0.23 -0.41** -0.05 0.33* -0.60** -0.61**

(10)1st Leg recovery -0.18 0.22 0.20 0.09 -0.33* -0.08 0.11 0.40** -0.54**

(11)2nd Leg recovery -0.19 -0.12 0.19 0.35* 0.37* -0.36* 0.38* -0.06 -0.61** 0.07

*p<0.05,**p<0.01

表 5 相対的 85%速度におけるストロークコーディネーションパラメーター間の偏相関行列

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)

(1)1 ストロークタイム

(2)Arm propulsion 0.01

(3)Elbow push -0.42** -0.27*

(4)1st Arm recovery -0.38* -0.36* 0.39*

(5)2nd Arm recovery -0.25 -0.29* 0.05 0.11

(6)Arm glide 0.57** -0.03 -0.65** -0.53** -0.59**

(7)Leg propulsion -0.32* 0.09 0.17 0.05 0.11 -0.24

(8)Leg insweep -0.16 -0.04 -0.11 0.17 0.12 -0.06 -0.19

(9)Leg glide 0.57** -0.01 -0.33* -0.40** -0.14 0.46** -0.55** -0.38*

(10)1st Leg recovery -0.19 0.09 0.24 0.31* -0.32* -0.10 -0.12 0.20 -0.26

(11)2nd Leg recovery -0.23 0.00 0.14 0.30* 0.14 -0.34* -0.09 0.11 -0.42** -0.13

*p<0.05,**p<0.01

3.ストロークコーディネーションパラメーターの泳速度に伴う変化

1 ストロークタイム, 1 ストローク内の各フェーズの割合,腕と脚のタイムギャップの各パラメー ターが泳速度に伴ってどう変化をしていくかを求めた。その際,ストロークコーディネーションパ ラメーターに影響を与えていると考えられる因子のうち,年齢,ベストタイム,身長,性別の因子 の影響を調整して共分散分析を行った(表 6 )。 1 ストロークタイムは,ベストタイム及び身長によっ て影響を受けていたが,それらを調整しても相対的 75 %速度と相対的 80 %速度に対して,相対的 85 %速度における 1 ストロークタイムは有意に短くなることが認められた。 Arm propulsion は,泳 速度に伴う変化は認められなかった。 Elbow push は,速度によって割合が異なることが認められた。

1st Arm recovery と 2nd Arm recovery は,泳速度が変わっても割合に有意な差は認められなかった。

(8)

Arm glide は,速度によって割合が異なることが認められた。 Leg propulsion と Leg insweep の割合は,

泳速度によって有意に変化することが認められた。 Leg glide の割合の変化には,ベストタイムが影 響していたが,泳速度に伴う有意な変化は認められなかった。 1st Leg recovery と 2nd Leg recovery は有意な差は認められなかった。腕と脚のタイムギャップにおいては, T1a , T1b , T2 が泳速度によっ て有意に変化した。 T3 は,有意な変化は示さなかった。 T4 は,ベストタイムの影響を受けていた が,泳速度に伴う有意な変化は示さなかった。

表 6 共分散分析を用いた泳速度の変化に伴うストロークパラメーターの変化

相対的泳速度間の 多重比較

調 整 要 因

年齢 身長 性別 ベストタイム

1 ストロークタイム 75,80>85 * **

Arm propulsion n.s.

Elbow push n.s.

1st Arm recovery n.s.

2nd Arm recovery n.s.

Arm glide 75>85

Leg propulsion 75,80<85

Leg insweep 75<80

Leg glide n.s. *

1st Leg recovery n.s.

2nd Leg recovery n.s.

T1a 75<80,85

T1b n.s.

T2 75<80 *

T3 n.s.

T4 n.s. *

不等号は有意差があることを表す。*p<0.05,**p<0.01

4.ストロークコーディネーションパラメーターに影響する因子

因子は,年齢,ベストタイム,身長,性別とし,各ストロークコーディネーションパラメーター と調整因子の 1 つに対し,その他の調整因子の影響を除く偏相関分析を行った。また,偏相関分析 の結果との比較のために,各ストロークコーディネーションパラメーターと各調整因子との単相関 分析を行った(表 7 )。相対的 75% 速度においては,単相関分析で, Leg glide と年齢,ベストタイ ム,身長の間, 1st Leg recovery とベストタイムの間, 2nd Leg recovery と年齢,ベストタイムの間,

T2 と年齢,ベストタイム,身長の間, T4 と年齢,ベストタイム,身長の間にそれぞれ有意な相

関関係が認められた。一方で,偏相関分析では 1 ストロークタイムとベストタイムの間に r=0.30 ,

2nd Leg recovery とベストタイムの間に r=0.28 の有意な相関関係が認められた。相対的 80% 速度

においては,単相関分析で,相対的 75% 速度において認められなかった腕のフェーズの割合と調

整因子の有意な相関関係が, 1st Arm recovery とベストタイムの間, 1st Arm recovery と性別の間,

(9)

Arm glide と性別の間に認められた。偏相関分析では, 1st Arm recovery , T3 , T4 が,ベストタイ ムと性別の間でそれぞれ有意な相関関係が認められた。相関係数の最も大きな相関関係は, 1 ス トロークタイムと身長の間の r =0.36 であった。相対的 85% 速度においては,単相関分析で, 1st Arm recovery とベストタイムの間, Leg glide と年齢,ベストタイムの間, 1st Leg recovery とベスト タイムの間, 2nd Leg reccovery と年齢,ベストタイムの間, T2 とベストタイムの間に有意な相関 関係が認められた。偏相関分析では, 1 ストロークタイムとベストタイムの間に r =0.35 , 1st Arm recovery とベストタイムの間に r=0.28 , T2 とベストタイムの間に r= - 0.27 の有意な相関関係が認 められた。

表 7 各速度のストロークコーディネーションパラメーターと各因子の関係

相対的 75%速度 単  相  関 偏  相  関

年齢 ベストタイム 身長 性別 年齢 ベストタイム 身長 性別 1 ストロークタイム 0.23 -0.02 0.27 -0.20 0.21 0.30* 0.22 -0.25

Arm propulsion 0.02 -0.12 0.16 -0.19 -0.09 -0.03 0.13 -0.13

Elbow push -0.24 0.10 -0.27 0.04 -0.13 -0.15 -0.19 0.04

1st Arm recovery -0.09 0.26 -0.10 0.09 0.03 0.25 0.09 0.05 2nd Arm recovery 0.10 -0.07 0.12 0.17 -0.03 -0.01 0.11 0.19

Arm glide 0.08 -0.06 0.02 -0.05 0.10 -0.03 -0.09 -0.08

Leg propulsion -0.19 0.19 -0.17 0.19 -0.13 0.05 0.02 0.18

Leg insweep -0.17 0.28 -0.22 0.20 -0.04 0.14 -0.01 0.17

Leg glide 0.31* -0.44** 0.37** -0.21 0.06 -0.24 0.05 -0.16

1st Leg recovery -0.15 0.30* -0.24 0.16 0.02 0.18 -0.04 0.11

2nd Leg recovery -0.32* 0.40* -0.26 -0.01 -0.11 0.28* 0.07 -0.05

T1a -0.09 0.10 -0.07 -0.09 -0.01 0.08 0.00 -0.11 T1b -0.12 0.16 -0.12 -0.01 -0.02 0.10 -0.01 -0.03

T2 0.40** -0.45** 0.45** -0.24 0.16 -0.16 0.10 -0.21

T3 0.18 -0.22 0.12 -0.22 0.16 -0.13 -0.13 -0.23

T4 0.36** -0.39** 0.28* -0.18 0.22 -0.21 -0.10 -0.19

相対的 80%速度 単  相  関 偏  相  関

年齢 ベストタイム 身長 性別 年齢 ベストタイム 身長 性別 1 ストロークタイム 0.21 -0.04 0.35** -0.16 0.09 0.32* 0.36* -0.16

Arm propulsion 0.05 -0.09 0.12 0.15 -0.11 -0.06 0.13 0.20

Elbow push -0.01 -0.07 -0.18 0.01 0.10 -0.23 -0.32* -0.03

1st Arm recovery -0.13 0.37** -0.18 0.32* -0.01 0.32* 0.12 0.30*

2nd Arm recovery -0.11 0.20 0.02 0.10 -0.14 0.23 0.26 0.13

Arm glide 0.09 -0.17 0.09 -0.28* 0.09 -0.10 -0.10 -0.28*

Leg propulsion -0.25 0.31* -0.10 0.15 -0.22 0.26 0.25 0.18

Leg insweep -0.27* 0.38** -0.34* 0.12 -0.02 0.20 -0.10 0.06

Leg glide 0.24 -0.42** 0.27* -0.23 0.06 -0.30* -0.07 -0.19

1st Leg recovery -0.07 0.24 -0.14 0.16 0.04 0.19 0.02 0.12

2nd Leg recovery -0.28* 0.29* -0.27* 0.19 -0.15 0.10 -0.01 0.18

T1a -0.18 0.07 -0.11 0.07 -0.17 -0.06 0.01 0.10 T1b -0.23 0.20 -0.22 0.11 -0.14 0.02 -0.03 0.11

T2 0.05 -0.30* 0.18 -0.28* -0.11 -0.25 0.01 -0.21

T3 0.14 -0.36** 0.14 -0.29* 0.05 -0.34* -0.19 -0.27*

T4 0.11 -0.36** 0.22 -0.34* -0.05 -0.29* -0.03 -0.28*

(10)

相対的 85%速度 単  相  関 偏  相  関

年齢 ベストタイム 身長 性別 年齢 ベストタイム 身長 性別 1 ストロークタイム 0.20 0.06 0.23 -0.06 0.18 0.35* 0.26 -0.11

Arm propulsion 0.14 -0.25 0.19 -0.13 0.00 -0.16 0.02 -0.09

Elbow push 0.04 -0.16 0.02 0.03 -0.03 -0.21 -0.10 0.05

1st Arm recovery -0.25 0.36** -0.16 0.23 -0.19 0.28* 0.22 0.25 2nd Arm recovery -0.16 0.08 -0.02 0.01 -0.19 0.03 0.13 0.06

Arm glide 0.12 0.02 -0.02 -0.06 0.22 0.07 -0.13 -0.13

Leg propulsion -0.12 0.08 -0.07 -0.03 -0.08 0.03 0.02 -0.02

Leg insweep -0.13 0.16 -0.13 0.11 -0.06 0.08 0.02 0.10

Leg glide 0.28* -0.36** 0.23 -0.17 0.15 -0.23 -0.11 -0.17

1st Leg recovery -0.16 0.27* -0.22 0.17 0.00 0.15 -0.03 0.12

2nd Leg recovery -0.31* 0.29* -0.18 0.14 -0.26 0.16 0.17 0.18

T1a -0.03 -0.13 0.02 0.08 -0.14 -0.21 -0.01 0.13 T1b -0.09 -0.05 -0.04 0.10 -0.16 -0.15 '0.00 0.14

T2 0.15 -0.32* 0.16 -0.12 0.00 -0.27* -0.07 -0.08

T3 0.16 -0.20 0.07 -0.08 0.13 -0.16 -0.14 -0.10

T4 0.06 -0.23 0.09 -0.12 -0.04 -0.22 -0.07 -0.08

*p<0.05,**p<0.01

5.相対的速度におけるストロークコーディネーションパラメーターの縦断的変化

50m 全力泳の平均速度の 85% の速度(相対的 85% 速度)におけるストロークコーディネーショ ンパラメーターの変化について,年ごとに年齢,ベストタイム,身長,性別の影響を考慮して共分 散分析を行った。また,変化の大きさを求めるために,効果量も求めた。

初回の試技と 1 年後の試技に参加した被験者は 30 名,初回の試技と 2 年後の試技に参加した被 験者は 18 名,初回の試技と 3 年後の試技に参加した被験者は 5 名であった。各年の被験者の属性 は表 8 に示した。初回と 1 年後のストロークコーディネーションパラメーターと比較すると,有意 差が認められたのは, 1st Arm recovery , 2nd Arm recovery , T3 であり,効果量は 1st Arm recovery が 3.17 , 2nd Arm recovery が 5.50 , T3 が 3.54 であった(表 9 )。初回と 2 年後のストロークコーディ ネーションを比較すると,有意差が認められたのは, 1st Arm recovery と 1st Leg recovery で,効果 量は 1st Arm recovery が 5.91 , 1st Leg recovery は 4.05 であった(表 10 )。初回と 3 年後のストロー クコーディネーションパラメーターの変化を比較したところ,有意差が認められた項目はなかった

(表 11 )。

表 8 初回と 1 年後,2 年後,3 年後の被験者の属性

1 年間の追跡(n=30) 2 年間の追跡(n=18) 3 年間の追跡(n=5)

初回 1 年後 初回 2 年後 初回 3 年後

年齢(歳) 12.78±1.76 13.70±1.75 12.11±1.77 14.29±1.71 12.14±0.97 15.56±0.98

身長(cm) 152.3±9.52 157.3±8.67 151.6±11.6 161.6±8.72 150.2±8.38 165.1±3.61

体重(kg) 41.31±8.85 45.93±8.69 40.22±9.20 49.71±9.18 40.28±7.37 56.08±5.67

50mのベストタイム(秒) 40.00±0.26 38.46±0.26 40.17±0.51 37.51±0.51 39.44±1.21 35.38±1.21

(11)

表 9 1 年後の相対的速度におけるストロークコーディネーションパラメーターの変化

初 回 1 年後 p値 効果量

1 ストロークタイム 1.14±0.77 1.13±0.78 0.74 0.01

Arm propulsion 23.82±0.82 24.74±0.82 0.33 1.12

Elbow push 21.29±0.79 20.73±0.79 0.58 0.71

1st Arm recovery 13.58±0.54 11.87±0.54 0.02* 3.17

2nd Arm recovery 17.99±0.84 22.61±0.85 <0.01** 5.50

Arm glide 23.29±1.18 20.05±1.19 0.06 2.75

Leg propulsion 19.17±0.59 19.98±0.66 0.24 1.37

Leg insweep 15.78±0.65 14.58±0.65 0.25 1.85

Leg glide 30.35±1.70 32.72±1.71 0.25 1.40

1st Leg recovery 17.69±0.79 15.44±0.79 0.06 2.85

2nd Leg recovery 16.97±0.78 17.31±0.78 0.68 0.44

T1a -11.99±1.61 -13.18±1.63 0.49 0.74

T1b 3.60±1.80 1.47±1.81 0.29 1.18

T2 -11.47±1.23 -11.14±1.23 0.84 0.27

T3 -8.71±1.14 -12.74±1.14 0.02* 3.54

T4 9.27±0.73 9.88±.0.74 0.52 0.84

*p<0.05,**p<0.01

表 10 2 年後の相対的速度におけるストロークコーディネーションパラメーターの変化

初 回 2 年後 p値 効果量

1 ストロークタイム 1.10±1.25 1.14±1.25 0.46 0.03

Arm propulsion 23.75±1.24 25.58±1.24 0.32 1.48

Elbow push 22.40±1.12 20.17±1.12 0.15 1.99

1st Arm recovery 14.29±0.65 10.45±0.65 <0.01** 5.91

2nd Arm recovery 18.74±1.41 22.09±1.41 0.13 2.38

Arm glide 20.78±2.07 21.76±2.07 0.74 0.47

Leg propulsion 19.69±0.96 17.90±0.96 0.16 1.87

Leg insweep 15.72±0.82 15.87±0.82 0.90 0.18

Leg glide 28.40±2.86 35.12±2.86 0.07 2.35

1st Leg recovery 18.47±1.19 13.65±1.19  0.02* 4.05

2nd Leg recovery 17.56±1.40 17.61±1.40 0.98 0.04

T1a -10.00±2.73 -16.14±2.73 0.10 2.25

T1b 5.72±3.07 -0.33±3.07 0.15 1.97

T2 -12.24±1.97 -10.57±1.97 0.57 0.85 T3 -8.83±1.56 -12.29±1.56 0.12 2.22

T4 9.99±1.04 9.72±1.04 0.86 0.26

*p<0.05,**p<0.01

(12)

表 11 3 年後の相対的速度におけるストロークコーディネーションパラメーターの変化

初 回 3 年後 p値 効果量

1 ストロークタイム 1.07±1.11 1.06±1.72 0.10 0.01

Arm propulsion 26.32±4.19 23.34±4.60 0.77 0.71

Elbow push 14.60±1.09 30.09±1.31 0.08 14.21

1st Arm recovery 13.31±0.98 9.19±0.99 0.10 4.21

2nd Arm recovery 18.67±1.08 24.10±1.10 0.10 5.03

Arm glide 26.87±3.34 13.16±3.67 0.28 4.11

Leg propulsion 19.12±0.91 17.03±0.92 0.22 20.00

Leg insweep 18.64±0.89 12.96±0.94 0.23 6.38

Leg glide 20.46±4.09 42.02±4.82 0.23 5.27

1st Leg recovery 20.46±2.46 17.17±2.88 0.63 1.41

2nd Leg recovery 21.32±0.91 10.68±1.00 0.09 11.69

T1a -11.95±6.68 -10.25±7.33 0.91 0.26

T1b 5.55±6.38 3.65±6.97 0.90 0.30

T2 -11.09±14.04 -11.36±15.27 0.99 0.02 T3 -6.88±7.33 -11.75±8.17 0.77 0.67

T4 13.00±7.17 11.21±8.01 0.91 0.25

考 察

1.1 ストロークタイム,各フェーズの割合,タイムギャップの関係

相対的 75% , 80% , 85% 速度において,年齢,ベストタイム,身長,性別の影響を除いてストロー クコーディネーションパラメーター間の偏相関分析を行った。各速度で共通して認められた点は,

Arm glide と 1st Arm recovery , Arm glide と 2nd Arm recovery の項目間で,各速度共に r > |0.40| の中 程度の負の相関関係を示していた。これらのことから,腕の Recovery 局面の割合が小さいと, Arm

glide の割合が高い関係であると言える。

2.ストロークコーディネーションパラメーターの泳速度に伴う変化

平泳ぎの腕のフェーズで泳速度に伴う変化が認められたのは, Arm propulsion , Elbow push , Arm glide であった。 Arm propulsion と Elbow push は推進局面であるため,速度が速くなるほど割合 は高くなった。 Arm glide は推進局面ではないため,速度が速くなるほど割合を低くし,泳速度にあっ た推進力を得るためにストロークコーディネーションを変化させていることが分かった。

平泳ぎの脚のフェーズで泳速度に伴う変化が認められたのは, Leg propulsion , Leg insweep であっ た。どちらも推進局面であるため,泳速度が速くなればなるほど割合は高くなっていた。

平泳ぎの腕と脚の動きのタイムギャップは, T1a , T1b が泳速度が速くなるほど大きくなるとい

うことが分かった。これは, Chollet et al . ( 2004 )が述べていたように,腕と脚の動きのタイムギャッ

プの値を大きくすることによって腕と脚の推進局面の連続性の欠陥を小さくし推進力を得ていたた

(13)

めである。

3.ストロークコーディネーションパラメーターに影響する因子

単相関分析では,多くの有意な相関関係が認められたが,偏相関分析で,各速度共通の有意な相 関関係が認められたのは, 1 ストロークタイムとベストタイムの間の相関関係のみであった。泳速 度に伴って,泳速度が上がるほど 1 ストロークタイムは短くなっていくことが泳速度に伴うスト ロークコーディネーションパラメーターの変化で示されたが,泳速度が変わってもベストタイムの 速い選手ほど 1 ストロークタイムは短かった。つまり,最も 1 ストロークタイムが短いのはベス トタイムの速い選手が最高速度で泳ぐときであった。

4.相対的速度におけるストロークコーディネーションパラメーターの縦断的変化

初回と 1 年後の絶対的 85% 速度では, Leg insweep のみが有意に減少し,相対的 85% 速度で は, 1st Arm recovery と 2nd Arm recovery が有意に変化した。 1st Arm recovery は,初回に比べ 1 年 後は有意に割合が減少し,効果量は 3.17 であったためその減少は大きかったといえる。 2nd Arm

recovery は,初回に比べ 1 年後は有意に割合が増加し,効果量は 5.50 と割合の増加はとても大きかっ

たことが分かる。しかし,相対的 85% 速度において有意差が認められたのはこの 2 項目のみであ り,初回と 1 年後を比較してみても大きなストロークコーディネーションの変化は認められず,腕

の Recovery の中でのみ割合の変化があったものと推察される。

初回と 2 年後の絶対的 85% 速度を比較してみると,腕と脚の推進局面のフェーズは有意に減少 し,推進局面でないフェーズは有意に増加した。腕と脚の動きのタイムギャップは,高い推進力を 生みだすストロークコーディネーションではない方に変化した。これはクロール,背泳ぎと同様に,

初回の試技から 2 年が経ち,パフォーマンスレベルの向上に伴って, 1 ストローク中の推進局面の フェーズを増加させなくてもその泳速度で泳ぐことができるようになったためである。一方で相 対的 85 %速度においては, 1st Arm recovery と 1st Leg recovery の割合が有意に減少した。 1st Arm

recovery の割合が減少した分,腕のフェーズはどこが増加したのかを調べてみると,有意ではなかっ

たが 2nd Arm recovery が効果量 2.38 で, 1st Arm recovery の増加との関係性が考えられる。また,

1st Leg recovery の割合が減少した分,脚のフェーズの割合は有意ではなかったが, Leg glide が効 果量 2.35 で効果「大」を示していた。 1st Leg recovery と Leg glide が関係を持っていたならば,初 回の試技に比べ 2 年後は同じ泳速度でも Glide の姿勢を多くとる平泳ぎのストロークコーディネー ションで対応できるようになったと考えられる。

初回と 3 年後を比較すると,有意な変化が認められたのは,絶対的 85% 速度における 2nd Leg

recovery のみであった。被験者が少なかったため有意ではなかった項目間もあると考えられるので,

効果「大」を示す項目には何らかの変化があった可能性もある。

研究の限界

本研究では,小学 2 年生から高校 3 年生までの被験者を対象としたが,被験者の競技レベルは

全国入賞レベルから BC 級レベルと幅広かった。したがって得られた結果は,すべての若年競泳選

(14)

手に適応するとは限らず,特にパフォーマンスレベルの高い選手には当てはまらない可能性がある。

また縦断的分析では被験者数が少なく,得られた結果が正しいかどうか検討の余地がある。

まとめ

本研究は,若年競泳選手の平泳ぎのストロークコーディネーションの特徴を明らかにすること を目的とした。被験者は小学 2 年生から高校 3 年生までの男子 26 名,女子 29 名であった。回流 水槽において, 50m 全力泳の平均速度の 75% 速度(相対的 75% 速度), 80% 速度(相対的 80% 速 度), 85% 速度(相対的 85% 速度)で試技を行った。 1 回の試技時間は約 30 秒で,動きが安定した 中盤の 1 サイクルを抽出し,ストロークコーディネーションパラメーターとして, 1 ストロークタ イム,腕のコーディネーションパラメーター( Arm propulsion, Elbow push, 1st Arm recovery, 2nd Arm recovery and Arm glide )の割合,脚のコーディネーションパラメーター( Leg propulsion, Leg insweep, Leg glide, 1st leg recovery and 2nd Leg recovery )の割合,および腕と脚の動きのタイム ギャップを算出した。得られた結果は以下の通りである。

1 .泳速度を問わず,腕の Recovery の割合が小さいと, Arm glide の割合が高い関係であった。

2 .腕と脚の推進局面の割合は,泳速度が速くなるほど高くなった。

3 .ストロークコーディネーションパラメーターに影響する因子はベストタイムのみであった。

4 .縦断的にみたところ,相対的 85% 速度において推進局面ではなくリカバリーやグライド局面 の割合が増加する傾向であった。

引用文献

Chollet, D., Seifert, L., Leblanc, H., Boulesteix, L. and Carter, M. 2004. Evaluation of arm-leg coordination in flat breaststroke. J Sports Med., 25, 486-495.

水本 篤・竹内 理.2008.「研究論文における効果量の報告のために ―基礎的概念と注意点―」『英語教育 研究』31,56-66.

日本水泳連盟.2014.「競泳競技規則競技役員(競泳)の手引き」.

https://www.swim.or.jp/about/download/rule/r_swim201404.pdf(参照日 2018 年 11 月 7 日).

小野寺孝義・菱村 豊.2005.『文科系学生のための新統計学』 (ナカニシヤ出版).

表 2 ストロークコーディネーションパラメーターの基本統計値 75%速度 80%速度 85%速度 1 ストロークタイム(秒) 1.27±0.23 1.24±0.16 1.12±0.16 Arm propulsion(%) 22.62±5.06 23.97±4.24 23.99±3.71 Elbow push(%) 18.72±4.25 18.80±3.88 20.86±4.16 1st Arm recovery(%) 12.51±4.25 12.35±3.16 12.84±3.14 2nd Arm reco
表 4 相対的 80%速度におけるストロークコーディネーションパラメーター間の偏相関行列 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (1)1 ストロークタイム (2)Arm propulsion -0.23 (3)Elbow push  -0.37*    0.06 (4)1st Arm recovery -0.24 -0.25   0.26 (5)2nd Arm recovery 0.04 -0.40**   0.17   0.32* (6)Arm gli
表 9 1 年後の相対的速度におけるストロークコーディネーションパラメーターの変化 初 回 1 年後 p値 効果量 1 ストロークタイム     1.14±0.77     1.13±0.78 0.74 0.01 Arm propulsion    23.82±0.82    24.74±0.82 0.33 1.12 Elbow push    21.29±0.79    20.73±0.79 0.58 0.71 1st Arm recovery    13.58±0.54    11.87±0.54  0
表 11 3 年後の相対的速度におけるストロークコーディネーションパラメーターの変化  初 回 3 年後 p値 効果量 1 ストロークタイム 1.07±1.11 1.06±1.72 0.10 0.01 Arm propulsion 26.32±4.19 23.34±4.60 0.77 0.71 Elbow push 14.60±1.09 30.09±1.31 0.08 14.21 1st Arm recovery 13.31±0.98 9.19±0.99 0.10 4.21 2nd Arm recovery

参照

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