箱庭 と描画の空間配置 についての一考察
The Spatial Differences between Sand Play Therapy and Drawing-Tests
城
倉
登 代 子
Toyoko」
OUKURA
(平
成20年 10月 6日
受理)The unconsciousness is understood by using Sand Play Therapy and Drawing-test.
There is the point of similarity between Sand PIay Therapy and Drawing-test. In this research, as far as measuring the size of vacant spaces, there aren't any clear differ- ences between both methods. The reason why is Sand Play Therapy takes the way
of using testee's sense of touch, on the other hand Drawing-test takes the way of using his sense of sight.
は じめに
箱庭療法 は砂箱 を用 いて、 その中 に ミニチ ュアを置 いて表現 をす ることで治療す る臨床心理 学 の方法であ る。臨床心理学 の治療法の中で、表現 を用 いるものは描画療法 あるいは描画 テス トと して も存在す る。で は箱庭 のよ うに玩具 を実際 に置 いて三次元の表現が可能 な もの と、描 画 のよ うに二次元 の絵 と して表現す るものに違 いはあるのだろうか。
箱庭 で もよ く置かれ る木や人 の描画 を求 め る技法 は、風景構成法である。 そ こで箱庭 と風景 構成法の違 いか ら、両者 について研究 した もの と して井原 (1993)が ある。風景構成法 の教示 で箱庭制作 を して、表現 内容 や イメー ジ分析 か ら両者 の違 いを検討す るものである。―そ こにお いては二次元である箱庭 の、事実 とイメー ジ表現 の世界 の近 さが箱庭の治療的側面 であ ると述 べ られている。
さて箱庭 に も、図 1の よ うなバ ウムテス トで も使われ る空間象徴の考え方が対応す るとされ
て いる (木 村、
1985)。ただ この ヨーロ ッパ の考 え方 を 日本でそのままあて はめ るの は危険 だ
ともされてお り (河 合、
1969)、意見 の一致が見 られて いない。 また岡田 (1984)は 、箱庭 の 左右差 につ いての研究 を行 な って いる。つ ま り、作者 の内界 とされ る左側 と外界であ る右側 に ついての違 いであ る。正 と逆位置での箱庭作品の写真 を対象者 に比較 して もらう実験 の結論 と
して、概 ね左右 の区別がつかない とされている。
けれ ども初回の箱庭作品 には、 「 クライエ ン トの人格が相 当広 く統合的に示 され る」 (荒 木、
2002)。
そ こで箱庭 に も広 い意味での芸術療法 の一つ と して、投影法の描画 テス トと同 じく被
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験者 のパ ーソナ リテ ィ傾 向を見つ けるのに役立 つ部分 もあるので はないか と筆者 は考 え る。
箱庭 の作品を考 え る際 には、置かれたアイテムにつ いて見 ることが多 い。 しか しなが らイ ン クの染 みに投影 された ものを分析す る心理 テス トであるロール シャッハ テス トで は、何 も描 か れていない空 白部分 をどう意味づ けるか も重要 であ る。 それ と同様 に箱庭 においては何 も置か れていない領域 や絵で何 も描かれていない部分 に こそ、被験者 のパ ーソナ リテ ィーにおいて ま だ開発 されていない領域 とい った意味が存在す るか もしれない。
本研究で は空 白の領域 を比較す ることで、空間配置 とい う観点か ら箱庭 と描画 の違 いにつ い て考えてい きたい。空間象徴 の中で も、個人 の空 自の領域 は箱庭 と描画で共通 してい るとい う 仮説 について見 てい くこととす る。
大
気 空
虚 無 あこがれ 光 :宇 宙の流入 欲 求 引きこもり
神 越 神 識 精 超 敬 意
火 至高の所 目
標 終 末 死
受動性の領域 (観察者としての生活)
生への能動1隻
の領域
物 質 下意識,無意識 集合的無意識
図 1.Bolander,K。 (1999)よ り Grinwaldの 空間の図式 (pp.83)
Ⅱ .方 法
1.実 験
実験 は1997年 に男女大学生及 び大学院生 8名 を対象 に、相談室 において個別 に実施 した。
A4の ケ ン ト紙 に「実 のな る木 を一本描 いて下 さい。」 とい う教示 で、鉛筆 と消 しゴムを用 いて 行 な った。次 に箱庭 は 57× 72× 7cmの 砂箱 の箱庭療法用具 を用 いて、「 この砂 と玩具 を使 って 何か作 ってみて下 さい。」 と教示 した。
どち らにおいて も、筆者が実験者 と して受容的 に立 ち会 った。制作時間 は自由であ る。
2.分 析
箱庭 で はアイテムが置かれた り砂が掘 られた りしていない、作品 において未使用 の領域 を写 真 に 5mm四 方 の正方形 が入 るか ど うかで面積 を求 めた。 バ ウム画 において も同様 に、
lcm四方 の正方形で白紙 の部分 の面積 を求 めた。作品を上下左右で図 1の 空間図式 に従 って 4つ に 分割 し、空 白が最 も多 い領域 と少 ない領域が箱庭 とバ ウム画で同 じであるか どうかを個人 ごと
に比較 した。
親 去 向 母 過 内
親 来 向 父 未 外
質 穴 下 魔 世 物 洞 降 悪 現 端
生 源 発 出 起 水
Ⅲ .結 果
表 1に あるようにバ ウム画 と箱庭で最 も使用 されなった領域、最 も使用 された領域が共 に一 致 したものが 2例 、片方のみが 3例 、両方 とも不一致が 3例 であった。直接確率計算法 による と、p=.486(両 側検定 )で 有意でなか った。両者の空間がより残 っている領域が左右 どち らか で一致するかの比較 において も、有意差 はなか った。
表 1.バ ウム画 と箱庭 の空 自の領域 最小領域
一 致 不一致 合 計
最大 領域
一 致
13
不一致 3 5
合 計
44 8
最 も使用 されなった領域 と、最 も使用 された領域がバ ウム画 と箱庭で共 に一致 していたケー スを図
2、3と して呈示 した。 このケースのバ ウム画 はややサイズが小 さめであ り、位置は左 上方の受動性の領域に偏 っている。静かであるが、まとまった描画である。一方箱庭では「 ヨー ロッパの片田舎」を作 ったとした。右下方には空間が残 っており、アイテムも左上方に多 く用 い られている。下側の無意識や本能 といった領域 は、触れ られることな く残 っている作品であ る。
さ らに、 バ ウム画全体 の空間領域 が少 ない群 と多 い群 それぞれ
4ケースに分 けて箱庭全体 の 空間 の比較 を行 な った。結果 は有意 で はないが
(t(6)=1.20,p>。10)、それぞれバ ウム画 の 白い空 間が少 ない群 は箱庭 の空 間 の大 きさが23.75(SD=24.78)、 多 い群 は39.00(SD=5。 48) であ った。
ヽ ヽ ヽ︑︱ノ4 r ′
図 2.領 域一致事例 のバ ウム画
図 3.箱 庭作品
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Ⅳ .考 察
両者 に全 く関係が見 られなか った ことにつ いて、以下 の ことが考 え られ る。
第一 に、二次元 の描画 と二次元 の表現 である箱庭 をただ同 じ空間図式 に当て はめ ることには 無理があろ う。バ ウム画 は本 を描 く為 に用紙 の中心部分 は埋 まって、必然端 は空 く。一方で箱 庭 は、砂箱 の端 も含 めて様 々な領域 が用 い られ る。中心 に玩具が置かれ るのは、 マ ンダラ表現 など特殊 な例である。 その両者 の違 いをふ まえ ることな く、空間領域 を並行 して考 え ることは 問題で あ った。皆藤 (1994)に おいて も、領域 についての「共通理解 は得 られていない」 とさ れている。
また作品の上方への身体運動 や感覚 は、両者 に共通 しているので はないか と筆者 は考 えてい た。つ ま り上方 の精神世界へ開かれてい ないと、 そのよ うな動 きは じ難 いとい うことである。
しか しなが ら箱庭で は玩具 を置 くとい う行為 には触覚が、 そ して作品か ら受 ける印象 は視覚 を 通 してであ る。描画 において は描 くのは行為 であるが、作 品を見 るとい う点 で視覚 を用 いるだ けである。用 いる感覚 の決定的な違 いが両者 にはあ り、同 じ身体感覚 とい うことにはな らなか っ たよ うであ る。箱庭 は上方 には手 が届 き難 いが、砂箱 の周 りを歩 いて 自分 の立つ位置を変 えて しま うと空間象徴 の意味 も変 わ って来 て しま う。 さ らに描画 において は、画用紙 のどの位置で も自分 の視界 の中や伸 ば さな くとも手 の届 く範 囲 に簡単 に収 まるもので もあ った。
本研究 において砂 に明 らか な造形 が残 っている川 などは、空間 とは しなか った。 しか しなが ら玩具 を置 き換えた故 に付 いた跡 なのか、判断 に迷 う部分 もあ った。川寄 (2007)に あるよ う に、「完成 した箱庭作品が提示 され ることが多 いが、実際 は完成 に至 るまでの制作者 の違巡や、
箱庭 に置かれた ものの移動 な どの動 きを把握 してお くことが重要 (pp.420)」 とされ る。何 を 以 って、被験者 のパ ーソナ リテ ィーの中で開発 されていない空 白領域 と理解す るのか も方法論 的な問題 があ ったか もしれない。
さて筆者 は箱庭 において砂 を用 いることが被験者 に精神 的安定 を もた らす ことを、実験前後 でのバ ウム画 の変化 か ら確認 して い る (山 口、 2005)。 それを考慮す るとテス トであ る描画 と 違 って、箱庭 は診断的な側面 で はな くて シ リーズ と しての治療的な側面 を考 えてい くことが よ
り重要 なので あろう。
また今回 は箱庭制作 の前 に、母子画 も描 いて もらった。 そ こでの「幼 い ときのあなた とおか あさんの関係 をイメー ジして 自由に絵 に描 いて くだ さい」 とい う教示か ら、箱庭 に取 り組 む際 に も回顧 的な要素が強か った と考 え られ る。 その影響が作品構成 に与 えた もの も、大 きか った のであろ う。
V,お わ りに
人間の身体 の特徴 として、 自分か ら遠 く離れた方 は手 の届かない、つまり精神 の領域 である。
この考 え方 は、対象が平面 であ って も立体 であ って も同 じだろ うと筆者 は考 えていた。 しか し 身体 とイメー ジは、 そ う単純 な図式で はない と本研究 において分か った。 さ らに身体性 につ い て、考 えていきたい。
またケースの数 も少 ないので、細 かな統計的な違 いを見出す ことに困難 もあ った。個人 内の
差 はな くとも、個人間の違 いには少 な くとも意味があ りそ うである。今後 は細かい領域 で はな
く、全体 の印象 につ いて もケースを重 ねて見てい きたい と考えている。
本研究 は、稲盛財団 の助成 によるものであ る。
<文 献 >
荒木 ひさ子 2002 初回箱庭 とその後 の展開 (岡 田康伸・ 編 )箱 庭療法 の現代的意義
至文 堂 pp.200
井原彩 1993 風景構成法 と箱庭 における空間の表現 の特徴 につ いて
箱庭療法学研究 6巻
2号 38‑49
皆藤章 1994 風景構成法
その基礎 と実践
誠信書房
pp.29Karen Bolander(高
橋依子・ 訳
) 1999樹木画 によるパ ー ソナ リテ ィの理解
ナカニ シヤ
出版
pp.83河合隼雄 1969 箱庭療法入門
誠信書房
河合隼雄、 中村雄二郎 1993 トポスの知
箱庭療法 の世界 TBSブ リタニカ
川寄克哲 2007 箱庭療法 の「力動性」 につ いて一風景構成法、夢 と比較 しつつ (岡 田康伸・
皆藤章・ 田中康裕
編
)箱庭療法 の事例 と展開
創元社
pp.420木村晴子 1985 箱庭療法―基礎的研究 と実践
創元社
Koch,C.(林