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西表島研究2011

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西表島研究2011,東海大学沖縄地域研究センター所報,71-76, (2012)

Study Rev. Iriomote Is. 2011, ORRC, Tokai Univ., 71-76, (2012)

西表島網取湾における pH センサの実証試験

紀本英志1)・江頭 毅1)・木下勝元1)・石田 洋2)・福原達雄2) 河野裕美3)・水谷 晃3),崎原 健3) 1)紀本電子工業株式会社,2)株式会社環境総合テクノス, 3)東海大学沖縄地域研究センター 1.はじめに 海水に二酸化炭素(CO2)が溶けると炭酸(H2 CO3)となり,さらに,解離して炭酸水素イオ ン(HCO3-),炭酸イオン(CO32-)になる(水 和した CO2と H2CO3は区別がつかないので以下 CO2*とする).標準的な海水 1kg あたりには, CO2*は 0.01mmol,HCO3-は 1.77 mmol,CO32-は 0.26 mmol 存在する.化石燃料の消費や森林 破壊により大気中に放出された CO2のおよそ 1/3 は海水に溶け込むが,溶け込んだ CO2は CO32-を減少させ,HCO3-を増加させるとともに, pH を若干低下させる.産業革命以前の大気中 CO2濃度は 280ppm で,当時の海水の pH は約 8.2 であったが,その後の化石燃料の大量消 費 に 伴 い , 現 在 の 大 気 中 の CO2濃 度 は 約 390ppm,海水の pH は 8.1±0.1 となっている. 今後も大気中の CO2濃度が上昇するにつれて, pH はごくわずかずつ低下し続けると予想さ れる.一方,標準的な海水 1kg あたりにカル シウムイオン(Ca2+)は 10.28 mmol 存在し, 海洋には炭酸カルシウム(CaCO3)を殻や骨格 とする様々な種類の生物が生息している.現 在の海水では,CaCO3は溶解して Ca2+と CO 3 2-になるよりも,固体のままである方が安定で あり,過飽和状態にある.生物はこの状況を 利用し,CaCO3の殻や骨格を形成している. そのため,海水の pH がわずかに低下すると, CO32-が減少することにより CaCO3の飽和度が 低下し,プランクトンや甲殻類をはじめとし て様々な生物に影響を及ぼすことが懸念さ れている(Orr et al. 2005). 海水は約 3.5%の高濃度の塩分を含んでお り,pH が 8 ならば水素イオン濃度は 1.0x10-8 mol/L 程度と低いため,海水の pH 測定は希薄 溶液の pH を測定するのとは違った難しさが ある.海水の pH を直接測定する方法にはガ ラス電極を用いて測定する方法と,色素を添 加して吸光度を測定する方法がある.外洋の pH は変化量が少ないため,これを正確にとら え る に は 1/1000pH ユ ニ ッ ト の 再 現 性 で 1/100pH ユニット以上の正確性が求められる. ガラス電極法で測定する場合,海水の主要な イオン成分を加えた緩衝溶液(DelValls et al. 1998)を調製しなくてはならないが,こ れを実際に,かつ正確に調製するには非常に 高い技術力が必要である.一方,色素を使用 して測定する場合は,色素から不純物を除去 するために精製する必要があり(Liu et al. 2011),これにも大変な労力と技術力が必要 となる. pH 電極を組み込んだ水中センサを用いた 観測は 1960 年代から行われ,電極の安定性, 校正方法等に様々な問題を抱えている.しか しながら,無人での連続モニタリングを目的 とする場合,電気消費量が少なく,試薬が不 要であり,小型で水中での動作がさせやすい という点でガラス電極法のメリットは大き いと考えられる. 今回,学校法人東海大学と株式会社環境総 合テクノスが実施する共同研究「海洋環境観 測センサの実海域長期動作試験」の一環とし て,新たに製作した pH ガラス電極センサ(紀 本電子工業社製 SP-11,岡村ほか 2012)の現 場海域における実証試験を行った.本共同研 究は,環境観測センサ等の実海域における長 期係留試験等を実施し,海洋環境観測技術の 高度化に資することを目的としており,セン サの安定性確認や生物付着対策等の検討を 行っている.使用した pH センサは海水用に 開発されたものであり,耐圧構造を備え,温 度ドリフトが少ないという特徴を持つ(図 1). 2.方法 2-1)pH 測定について 海水の pH を定義するスケールとして,ト ータルスケールがあり(Hansson 1973),次 の式<1>で示される.本 pH センサはトータル スケールを用いた. [H+]=[H+] F(1+ST/Ks) ≈ [H+]F(1+[HSO4-]) (mol/kg-soln) ・・・<1> ここで, [H+] F:フリーの水素イオン濃度 ST:全硫酸イオン([HSO4-] + [SO42-]) Ks:[HSO4-]の解離定数 とする. 一方,国際的な規格でも用いられている操 作的な pH の定義は式<2>で示され(Dickson et al. 2007),標準溶液と試料溶液を続けて, 次の電池における起電力を測定する. pH(X)=pH(S)+(ES-EX)/(RT ln10/F) ・・・<2> ここで, pH(X):試料溶液の pH pH(S):標準溶液の pH ES:標準溶液の起電力(V) EX:試料溶液の起電力(V) R:気体定数 T:試料溶液と標準溶液の温度(K) F:ファラデー定数 とする. 本 pH センサでは起電力が 0V となる pH を pH(Ein=0)とし,理想的なネルンスト応答からの 傾きのずれを fdとした時,これを 2 つの標準 液で求める(岡村ほか 2012)ことで試料溶液 の pH を決定する(式<3>).なお,この pH 電 極は pH(Ein=0)の pH を基準点としてネルンスト 応答すると仮定した. pH(X)=pH(Ein=0)+(-EX )/(fdRT’ln10/F ) ・・・<3> ここで, T’:試料溶液の温度(K) とする. 本 pH センサの測定対象は海水であり,温 度影響を小さくするために pH7~8 付近を測 定できるようにデザインされた pH 電極を製 作した.また,高圧下(50MPa)で電極のガ ラスが割れないように内部液を圧力補償し た.校正には海水ベースの緩衝液である TRIS, AMP を使用した. 2-2)実証試験について 実証試験は東海大学沖縄地域研究センタ ーの網取施設(沖縄県竹富町)沖合で行った. 西表島網取湾口の北緯 24°19'54.5",東経 123°41'30.0"(水深約 12m)に設置されてい る係留系(前田ほか 2010,福原ほか 2011, 2012)の水深 3m 付近にセンサを取り付け, 30 分に 1 回の頻度で pH を観測した.係留期 間は 2011 年 11 月 30 日から 2012 年 2 月 29 日の 3 ヵ月であり,この間,内臓バッテリー 図 1 開発した海水用 pH センサ(紀本電 子工業社製 SP-11). 飽和 KCl 溶液 試験 溶液 ガラス 電極 [H+] 参照 電極

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西表島研究2011,東海大学沖縄地域研究センター所報,71-76, (2012)

Study Rev. Iriomote Is. 2011, ORRC, Tokai Univ., 71-76, (2012)

西表島網取湾における pH センサの実証試験

紀本英志1)・江頭 毅1)・木下勝元1)・石田 洋2)・福原達雄2) 河野裕美3)・水谷 晃3),崎原 健3) 1)紀本電子工業株式会社,2)株式会社環境総合テクノス, 3)東海大学沖縄地域研究センター 1.はじめに 海水に二酸化炭素(CO2)が溶けると炭酸(H2 CO3)となり,さらに,解離して炭酸水素イオ ン(HCO3-),炭酸イオン(CO32-)になる(水 和した CO2と H2CO3は区別がつかないので以下 CO2*とする).標準的な海水 1kg あたりには, CO2*は 0.01mmol,HCO3-は 1.77 mmol,CO32-は 0.26 mmol 存在する.化石燃料の消費や森林 破壊により大気中に放出された CO2のおよそ 1/3 は海水に溶け込むが,溶け込んだ CO2は CO32-を減少させ,HCO3-を増加させるとともに, pH を若干低下させる.産業革命以前の大気中 CO2濃度は 280ppm で,当時の海水の pH は約 8.2 であったが,その後の化石燃料の大量消 費 に 伴 い , 現 在 の 大 気 中 の CO2濃 度 は 約 390ppm,海水の pH は 8.1±0.1 となっている. 今後も大気中の CO2濃度が上昇するにつれて, pH はごくわずかずつ低下し続けると予想さ れる.一方,標準的な海水 1kg あたりにカル シウムイオン(Ca2+)は 10.28 mmol 存在し, 海洋には炭酸カルシウム(CaCO3)を殻や骨格 とする様々な種類の生物が生息している.現 在の海水では,CaCO3は溶解して Ca2+と CO 3 2-になるよりも,固体のままである方が安定で あり,過飽和状態にある.生物はこの状況を 利用し,CaCO3の殻や骨格を形成している. そのため,海水の pH がわずかに低下すると, CO32-が減少することにより CaCO3の飽和度が 低下し,プランクトンや甲殻類をはじめとし て様々な生物に影響を及ぼすことが懸念さ れている(Orr et al. 2005). 海水は約 3.5%の高濃度の塩分を含んでお り,pH が 8 ならば水素イオン濃度は 1.0x10-8 mol/L 程度と低いため,海水の pH 測定は希薄 溶液の pH を測定するのとは違った難しさが ある.海水の pH を直接測定する方法にはガ ラス電極を用いて測定する方法と,色素を添 加して吸光度を測定する方法がある.外洋の pH は変化量が少ないため,これを正確にとら え る に は 1/1000pH ユ ニ ッ ト の 再 現 性 で 1/100pH ユニット以上の正確性が求められる. ガラス電極法で測定する場合,海水の主要な イオン成分を加えた緩衝溶液(DelValls et al. 1998)を調製しなくてはならないが,こ れを実際に,かつ正確に調製するには非常に 高い技術力が必要である.一方,色素を使用 して測定する場合は,色素から不純物を除去 するために精製する必要があり(Liu et al. 2011),これにも大変な労力と技術力が必要 となる. pH 電極を組み込んだ水中センサを用いた 観測は 1960 年代から行われ,電極の安定性, 校正方法等に様々な問題を抱えている.しか しながら,無人での連続モニタリングを目的 とする場合,電気消費量が少なく,試薬が不 要であり,小型で水中での動作がさせやすい という点でガラス電極法のメリットは大き いと考えられる. 今回,学校法人東海大学と株式会社環境総 合テクノスが実施する共同研究「海洋環境観 測センサの実海域長期動作試験」の一環とし て,新たに製作した pH ガラス電極センサ(紀 本電子工業社製 SP-11,岡村ほか 2012)の現 場海域における実証試験を行った.本共同研 究は,環境観測センサ等の実海域における長 期係留試験等を実施し,海洋環境観測技術の 高度化に資することを目的としており,セン サの安定性確認や生物付着対策等の検討を 行っている.使用した pH センサは海水用に 開発されたものであり,耐圧構造を備え,温 度ドリフトが少ないという特徴を持つ(図 1). 2.方法 2-1)pH 測定について 海水の pH を定義するスケールとして,ト ータルスケールがあり(Hansson 1973),次 の式<1>で示される.本 pH センサはトータル スケールを用いた. [H+]=[H+] F(1+ST/Ks) ≈ [H+]F(1+[HSO4-]) (mol/kg-soln) ・・・<1> ここで, [H+] F:フリーの水素イオン濃度 ST:全硫酸イオン([HSO4-] + [SO42-]) Ks:[HSO4-]の解離定数 とする. 一方,国際的な規格でも用いられている操 作的な pH の定義は式<2>で示され(Dickson et al. 2007),標準溶液と試料溶液を続けて, 次の電池における起電力を測定する. pH(X)=pH(S)+(ES-EX)/(RT ln10/F) ・・・<2> ここで, pH(X):試料溶液の pH pH(S):標準溶液の pH ES:標準溶液の起電力(V) EX:試料溶液の起電力(V) R:気体定数 T:試料溶液と標準溶液の温度(K) F:ファラデー定数 とする. 本 pH センサでは起電力が 0V となる pH を pH(Ein=0)とし,理想的なネルンスト応答からの 傾きのずれを fdとした時,これを 2 つの標準 液で求める(岡村ほか 2012)ことで試料溶液 の pH を決定する(式<3>).なお,この pH 電 極は pH(Ein=0)の pH を基準点としてネルンスト 応答すると仮定した. pH(X)=pH(Ein=0)+(-EX )/(fdRT’ln10/F ) ・・・<3> ここで, T’:試料溶液の温度(K) とする. 本 pH センサの測定対象は海水であり,温 度影響を小さくするために pH7~8 付近を測 定できるようにデザインされた pH 電極を製 作した.また,高圧下(50MPa)で電極のガ ラスが割れないように内部液を圧力補償し た.校正には海水ベースの緩衝液である TRIS, AMP を使用した. 2-2)実証試験について 実証試験は東海大学沖縄地域研究センタ ーの網取施設(沖縄県竹富町)沖合で行った. 西表島網取湾口の北緯 24°19'54.5",東経 123°41'30.0"(水深約 12m)に設置されてい る係留系(前田ほか 2010,福原ほか 2011, 2012)の水深 3m 付近にセンサを取り付け, 30 分に 1 回の頻度で pH を観測した.係留期 間は 2011 年 11 月 30 日から 2012 年 2 月 29 日の 3 ヵ月であり,この間,内臓バッテリー 図 1 開発した海水用 pH センサ(紀本電 子工業社製 SP-11). 飽和 KCl 溶液 試験 溶液 ガラス 電極 [H+] 参照 電極

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を交換する等の保守は一度も行わなかった. なお,試験前に TRIS,AMP を使用して校正し た. 実証試験を行ったサンゴ礁海域は pH が時 間的,空間的に大きく変動する.サンゴ礁海 域には石灰化生物が多く見られることから, 海洋酸性化の影響が懸念されており(諏訪ほ か 2010,鈴木ほか 2012),これまでラボ内に おける様々な実験や,フィールドでの炭酸系 物質の実験および観測(Kayanne et al. 1995) が行われている.また,1 年間の連続モニタ リング計測が行われたこともある(Kayanne et al. 2005). 3.結果及び考察 設置および回収時の写真を図 2 に示す.回 収したセンサは本体や電極部に藻類やサン ゴが付着しているのが確認された(図 3).ま た,試験中の pH の観測記録を図 4 に示す. センサに生物が付着した影響により,pH の値 がドリフトした可能性もあるが,サンゴ礁海 域における pH の大きな日周変動を長期にわ たり観測することができた. ここで,二酸化炭素の海水への吸収,放出 と炭酸平衡,光合成・呼吸・石灰化について 考える.溶存二酸化炭素分圧(pCO2),全アル カリ度(AT),溶存無機炭素(CT)との関係は以 下の化学式<4>~<8>で表される. ・大気と海水 CO2の平衡 CO2 (gas) ↓↑ CO2 (aq)+H2O ⇔ H2CO3 ⇔ H++HCO 3- ⇔ 2H+ + CO 32- …<4> ・石灰化(pCO2増加,pH 減少,AT減少,CT 減少,) Ca2+ + 2HCO 3- → CaCO3+H20+CO2 …<5>

実証試験開始時

実証試験終了時

図 2 実証試験開始時および終了時の pH センサ外観. 赤枠内が開発した pH センサ. 図 3 実証実験終了時の電極の様子. ・炭酸カルシウムの溶解(pCO2減少,pH 増 加,AT増加,CT増加)

CaCO3+H20+CO2 → Ca2+ + 2HCO3- …<6>

・光合成(pCO2減少,pH 増加,AT変化なし, CT減少) CO2 + H20 → [CH20] + O2 …<7> ・呼吸(pCO2増加,pH 減少,AT変化なし, CT増加) [CH20] + O2 → CO2 + H20 …<8> 今回,実証試験を行ったようなサンゴ礁海 域では pCO2の大きな変動がみられることか ら,CO2の交換が活発に行われていることが 推測される.サンゴ礁における炭酸系物質の モニタリングは茅根らによって行われてい る(Kayanne et al. 1995, 2002).pCO2に関 しては石垣島の白保において,1998 年から 1999 年にかけて 1 年間の連続観測が実施され ており(Kayanne et al. 2005),その中でCT (Kimoto et al. 2002)とAT (Kimoto et al. 2001)の集中観測が実施された.この時,pCO2 の値は日中では 150~200μatm,夜間は 600 ~750μatm と大きく変動した.また,日中は CTが減少したことで光合成が活発に起こり, これに伴って石灰化も進行して ATが減少し た.一方,夜間は呼吸の為CTが増加していた. 図 4 2011 年 11 月 30 日~2012 年 2 月 29 日における pH の長期観測記録(pH はトータルスケール).

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を交換する等の保守は一度も行わなかった. なお,試験前に TRIS,AMP を使用して校正し た. 実証試験を行ったサンゴ礁海域は pH が時 間的,空間的に大きく変動する.サンゴ礁海 域には石灰化生物が多く見られることから, 海洋酸性化の影響が懸念されており(諏訪ほ か 2010,鈴木ほか 2012),これまでラボ内に おける様々な実験や,フィールドでの炭酸系 物質の実験および観測(Kayanne et al. 1995) が行われている.また,1 年間の連続モニタ リング計測が行われたこともある(Kayanne et al. 2005). 3.結果及び考察 設置および回収時の写真を図 2 に示す.回 収したセンサは本体や電極部に藻類やサン ゴが付着しているのが確認された(図 3).ま た,試験中の pH の観測記録を図 4 に示す. センサに生物が付着した影響により,pH の値 がドリフトした可能性もあるが,サンゴ礁海 域における pH の大きな日周変動を長期にわ たり観測することができた. ここで,二酸化炭素の海水への吸収,放出 と炭酸平衡,光合成・呼吸・石灰化について 考える.溶存二酸化炭素分圧(pCO2),全アル カリ度(AT),溶存無機炭素(CT)との関係は以 下の化学式<4>~<8>で表される. ・大気と海水 CO2の平衡 CO2 (gas) ↓↑ CO2 (aq)+H2O ⇔ H2CO3 ⇔ H++HCO 3- ⇔ 2H+ + CO 32- …<4> ・石灰化(pCO2増加,pH 減少,AT減少,CT 減少,) Ca2+ + 2HCO 3- → CaCO3+H20+CO2 …<5>

実証試験開始時

実証試験終了時

図 2 実証試験開始時および終了時の pH センサ外観. 赤枠内が開発した pH センサ. 図 3 実証実験終了時の電極の様子. ・炭酸カルシウムの溶解(pCO2減少,pH 増 加,AT増加,CT増加)

CaCO3+H20+CO2 → Ca2+ + 2HCO3- …<6>

・光合成(pCO2減少,pH 増加,AT変化なし, CT減少) CO2 + H20 → [CH20] + O2 …<7> ・呼吸(pCO2増加,pH 減少,AT変化なし, CT増加) [CH20] + O2 → CO2 + H20 …<8> 今回,実証試験を行ったようなサンゴ礁海 域では pCO2の大きな変動がみられることか ら,CO2の交換が活発に行われていることが 推測される.サンゴ礁における炭酸系物質の モニタリングは茅根らによって行われてい る(Kayanne et al. 1995, 2002).pCO2に関 しては石垣島の白保において,1998 年から 1999 年にかけて 1 年間の連続観測が実施され ており(Kayanne et al. 2005),その中でCT (Kimoto et al. 2002)とAT (Kimoto et al. 2001)の集中観測が実施された.この時,pCO2 の値は日中では 150~200μatm,夜間は 600 ~750μatm と大きく変動した.また,日中は CTが減少したことで光合成が活発に起こり, これに伴って石灰化も進行して ATが減少し た.一方,夜間は呼吸の為CTが増加していた. 図 4 2011 年 11 月 30 日~2012 年 2 月 29 日における pH の長期観測記録(pH はトータルスケール).

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本試験の記録でも pH は 7.85~8.45 の範囲の 値をとり,1 日の内で大きく変動した.これ は,日中は光合成に伴って pH が増加し,夜 間は呼吸によって pH が減少したことによる と考えられる. pH センサの利点は,比較的安価であり,取 り扱いが簡単なこと,またランニングコスト が低いことや連続して観測できることが挙 げられる.一方,欠点としては,電極のドリ フトを判別することが困難であり,pH の絶対 値を議論するのが大変難しいことが挙げら れる.図 4 の観測記録についても,2011 年 12 月 14 日付近から pH が高くなる傾向が見ら れるが,この現象が電極のドリフトによるも のか,あるいは実際の pH の変動をとらえた ものか判別しにくい.また,pH の絶対値がど のくらいの確度で整合しているのか明らか ではない.今後は今回開発した pH センサに よる観測とサンプリング分析を併用し,デー タを検証する必要がある.1 日の内で大きく pH 等の値が変化するサンゴ礁海域では,1 日 1 回海水を採水して測定したところで有益な データが得られるとは思われず,このような 海域で炭酸系の測定を行うには,pH センサを 用いて複数点のモニタリングを行うととも に,表層pCO2の連続観測や定期的なサンプリ ング分析を行い,比色法による pH の測定, 全アルカリ度,全炭酸の測定を実施すること が望ましいと考えられる. 4.結論 海水用に開発された pH センサを,サンゴ 礁海域である西表島網取湾口に設置し,実証 試験を行った.サンゴ礁域における明瞭な pH の日周変動を 3 ヵ月間にわたりとらえること ができた.pH の絶対値を議論する場合,観測 中のドリフトの有無を慎重に見極める必要 がある.今後,pH 観測と海水の採水分析を併 用することで,値の信頼性を検証することが できる. 5.引用文献

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Purification and Characterization of meta-Cresol Purple for Spectrophotometric Seawater pH Measurements. Environ. Sci. Technol, 45, 4862-4868. 6.謝辞 pH センサの開発等において,有益なご助言 を頂いた高知大学海洋コア総合研究センタ ー岡村慶氏に感謝する.調査に際し,網取施 設や船舶等の使用で多大なご協力を頂いた 東海大学沖縄地域研究センターのスタッフ の皆様に厚く御礼申し上げる.

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本試験の記録でも pH は 7.85~8.45 の範囲の 値をとり,1 日の内で大きく変動した.これ は,日中は光合成に伴って pH が増加し,夜 間は呼吸によって pH が減少したことによる と考えられる. pH センサの利点は,比較的安価であり,取 り扱いが簡単なこと,またランニングコスト が低いことや連続して観測できることが挙 げられる.一方,欠点としては,電極のドリ フトを判別することが困難であり,pH の絶対 値を議論するのが大変難しいことが挙げら れる.図 4 の観測記録についても,2011 年 12 月 14 日付近から pH が高くなる傾向が見ら れるが,この現象が電極のドリフトによるも のか,あるいは実際の pH の変動をとらえた ものか判別しにくい.また,pH の絶対値がど のくらいの確度で整合しているのか明らか ではない.今後は今回開発した pH センサに よる観測とサンプリング分析を併用し,デー タを検証する必要がある.1 日の内で大きく pH 等の値が変化するサンゴ礁海域では,1 日 1 回海水を採水して測定したところで有益な データが得られるとは思われず,このような 海域で炭酸系の測定を行うには,pH センサを 用いて複数点のモニタリングを行うととも に,表層pCO2の連続観測や定期的なサンプリ ング分析を行い,比色法による pH の測定, 全アルカリ度,全炭酸の測定を実施すること が望ましいと考えられる. 4.結論 海水用に開発された pH センサを,サンゴ 礁海域である西表島網取湾口に設置し,実証 試験を行った.サンゴ礁域における明瞭な pH の日周変動を 3 ヵ月間にわたりとらえること ができた.pH の絶対値を議論する場合,観測 中のドリフトの有無を慎重に見極める必要 がある.今後,pH 観測と海水の採水分析を併 用することで,値の信頼性を検証することが できる. 5.引用文献

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