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博 士 ( 歯 学 ) 杉 本 浮 学 位 論 文 題 名 Relationship between salivary histatin5levels and Candida CFU counts in healthy elderly

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 杉 本    浮

     学 位 論 文 題 名

Relationship between salivary histatin5levels and     Candida CFU counts in healthy elderly

( 健 康 的 な 高 齢 者 に お け る 唾 液 中 のhistatin5の 濃 度 と カ ン ジ ダ 数 と の 関 係 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【背景】

  カン ジダ菌(Candida albiccms)は人 体に広く 存在する 真菌である。口腔内のカンジダ菌は、高 齢者 の場合 、唾液と ともに 気道に吸 引されて おこる 誤嚥性肺 炎や免疫力低下時に日和見感染とし て認 められ る口腔カ ンジダ 症のりス クファク ターで ある。ま た,義歯を使用することで義歯がり ザーバーとなり、カンジダ菌数が増加することが報告されている。

  一方 ,唾液特有のタンパク成分であるヒスタチンは,現在まで12種類報告されており,ヒスタチ ン1,3,5が総ヒスタチンの80%以上を占めている。ヒスタチンの代表的な機能として,カンジダ菌 に対 する強カな殺菌作用があり,生理濃度内で濃度依存的そしてpH依存的にも発芽阻止,殺菌作用 を示すことが報告されている。しかし,ヒスタチン5のカンジダ菌に対するこれらの作用はin vitroで 確認されているものの,疫学的に確認した研究は少なぃ。

  本研 究では ,高齢者 から採 取した唾 液中の ヒスタチ ン5の 濃度と カンジダ 菌数と の関係を検討 した。

【対象 および 方法】

  道内の 農村地 区におい て,町 が主催し た住民 健康診断 を受診した高齢者で,問診等から自立し た 生 活 が 送れ て い ると 判 断 され た 高 齢者124名( 男 性60名 , 女性64名, 平 均 年齢75.1歳 ,65

〜 91歳)を 対象とし た。

  口腔内 診査( 義歯の種 類,残 存歯数, 歯周疾 患重症度 )に引き続いて唾液を採取した。歯周疾 患の重 症度はCommunity PeriodontalIndexを指 標として 代表歯10歯について診査した。義歯の診 査 で は , 上 下 顎 そ れ ぞ れ 全 部 床 義 歯 , 局 部 床 義 歯 の 有 無 を 記 録 し た 。   唾 液 の 採取 で は ,あら かじめ唾 液採取 前90分間は ブラッ シング, 飲食を禁 止する よう事前 に 依頼し ,安静 時唾液を 各自5分問か けて冷蔵した滅菌容器に採取した。採取した時間帯は午前8:30 か ら11:00の 間 であ った 。採取し た唾液 は,直ち に貯蔵庫 に保管 し,2時間以 内に実験 室に運搬 した。 唾液中 のカンジ ダ菌数 を測定す るために ,希釈 した唾液0.1 mLを寒天 平板( 直径90 mm, CHROMagar Candida, Paris)上に塗 布し,37℃,48時間 で好気 的に培養 した。 カンジダ 菌数は,

寒天平 板上の カンジダ 菌のコ ロニー数を計測し,対数変換した値(log CFUs/ml)でとして求めた。

(2)

  唾 液 中 ヒ ス タ チ ン5量 は 競 合ELISA法 に よ り 測 定し ,唾 液中 蛋白1mg当 りの 重量 (g)で表 し た。抗体でコーティン グされたプレート(固相化抗体)に対して,50山の試料と50山の酵素標識抗 原を加えて,室温で30分間反応させた。その後,300山洗浄溶液を加える過程を5回繰り返した。100 山のo‑phenylenediamine (OPD)を加え,室温で15分間放置することで発色反応を起こし,2N硫酸を 100mを加え て反応を終了させ,吸光度(OD)は492 nmで計測した。唾 液中蛋白は蛋白定量用キット (BIO‑RAD,Hercules,CA)で測定した。

  統計 分析 にお いて は, 平均 値の差の 検定には対応のないt検定, 一元配置分散分析を用いた。

多重比較はScheffe のmultiple comparison testで行った。ヒスタチン濃度とカンジダ菌数との相関 関 係はSpearmanの順 位相 関係 数よ り求 めた 。 また ,カ ンジダ菌数 に対する要因をみるために,

年齢,性別,histatin5濃度,義歯使用の有無を独 立変数,カンジダ菌数を従属変数とした重回帰 分析を行った。

【結果および考察l

l) 無歯 顎者は27名であり,平均残存歯数は13.0士9.5本であった。32名は上下 顎ともに義歯を使 用し てなく(義歯未使 用者群),51名は上下顎の少なくともどちらかに局部床 義歯を使用してお り(局部床義歯使用者群),41名は上下顎の少 なくともどちらかに全部床義歯を使用していた(全 部床 義歯 使用 者群 )。CPIコ ード の分布では,現在歯数が少ないが故に「成立 しない」と判定さ れた者が最も多く35名(28.2%),次いでコード2(23.4%),コード3(19.40/o)の順であった。

2) 104人の唾液試料(84%)が,カンジダコロニー形成陽性であった。スコットランドの調査(137名の 高齢者中88%)やブラジルでの調査(77名の高齢者中84.4%)と比較しても 大きな差はぬく,本調 査集団が特殊な集団を対象であるとはいえない 。カンジダ菌数の平均値を年齢別,性別,義歯の使 用者別に検討したところ,70 ‑79歳(1.79士1111,pく0.01),80〜 91歳(1.88士1.08,pく0.05)の高齢 者は ,65〜69歳の高齢 者(0.99土0.92)と比較して,有意に高い唾液中カンジダ 菌数を示した。男 女問に差は認められなかった。局部床義歯使用者群の唾液中(1.96士0.97,pく0.001),全部床義歯使 用者群の唾液中(1.95土1.08,pく0.001)には,義歯未使用者群(0.78士0.92)よりも有意に高いカン ジダ菌数を示した。

3)ヒスタチン濃度 とカンジダ菌数との相関関係をみたところ,80〜89歳の 高齢者群(pく0.05), およぴ全部床義歯使用者群(pく0.01)の唾液中では有意な負の相関が認め られた。しかし,その 他 の 年 齢 層 や , 男 性 の み , あ る い は 女 性 の み の 群 で は 有 意 な 相 関 は 認 め ら れ な か っ た 。 4) 重回 帰分析の結果,唾液中カンジダ菌数は,ヒ スタチン5の濃度と有意な負 の関連を,また義 歯の使用と有意な正の関連を示した。

  しかし,今回は,口腔衛生状態や義歯の清掃に関する情報,薬剤の使用状況が調査されていなぃ。

また,カンジダ性口内炎と診断できる高齢者がみられなく,実際のカンジダ性口内炎とヒスタチン5 濃度 との関連が調査で きなかった。これらの点については,今後の改善点であ ると考えられる。

【結 諭】

  ヒ スタ チ ン5濃度 が低 く, 義歯の床面積が大きくなると,唾液中のカンジ ダ菌数が増加した。

また ,高 齢 者に 対し てヒ スタチン5は、口腔内におけるカンジダ菌の感染を コントロールする因 子の1っで ある 可能 性が 示唆 され た。

    ―656―

(3)

学 位 論 文 審 査 の要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査

教授 教,授 教授 講師

森 田    学 井上農夫男 柴田健一郎 兼 平    学

    学 位 論 文 題 名

  Relationship between salivary histatin5levels and     Candida CFU counts in healthy elderly

( 健 康 的 な 高 齢 者 に お け る 唾 液 中 のhistatin5の 濃 度 と カ ン ジ ダ 数 と の 関 係 )

m景1

  口 腔 内 の カ ン ジ ダ 菌 は 唾 液 と と も に 誤 嚥 さ れ 肺 炎 の 病 原 体 と な る 他 、 高 齢 者 の 口 腔 カ ン ジ ダ 症 の り ス ク フ ァ ク タ ー で も あ る 。 ま た 、 義 歯 を 使 用 す る こ と で 義 歯 が り ザ ー バ ー と な ル カ ン ジ ダ 数 が 増 加 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 。

  唾 液 タ ン パ ク で あ る ヒ ス タ チ ン は 、 カ ン ジ ダ 菌 に 対 す る 強 カ な 殺 菌 作 用 を 示 す こ と が 報 告 さ れ て い る が 、 カ ン ジ ダ 菌 に 対 す る こ れ ら の 作 用 を 疫 学 的 に 確 認 し た 研 究 は 少 な い 。   本 研 究 で は 、 高 齢 者 か ら 採 取 し た 唾 液 中 の ヒ ス タ チ ン5の 濃 度 と カ ン ジ ダ 菌 数 と の 関 係 を 検 討 し た 。

【 対 象 お よ び 方 法 】

  道 内 の 農 村 地 区 に お い て 、 町 が 主 催 し た 住 民 健 康 診 断 を 受 診 し た 高 齢 者 で 、 問 診 等 か ら 自 立 し た 生 活 が 送 れ て い る と 判 断 さ れ た 高 齢 者124名 ( 男 性60名 、 女 性64名 、 平 均 年 齢75.1 歳 、65〜91歳 ) を 対 象 と し た 。

  口 腔 内 診 査 に 引 き 続 い て 唾 液 を 採 取 し た 。 歯 周 疾 患 の 重 症 度 はCPIを 用 い た 。 義 歯 の 診 査 で は 、 上 下 顎 そ れ ぞ れ 全 部 床 義 歯 、 局 部 床 義 歯 の 有 無 を 記 録 し た 。   唾 液 の 採 取 で は 、 あ ら か じ め 唾 液 採 取 前90分 間 は ブ ラ ッ シ ン グ 、 飲 食 を 禁 止 す る よ う 事 前 に 依 頼 し 、 安 静 時 唾 液 を 各 自5分 間 か け て 冷 蔵 し た 滅 菌 容 器 に 採 取 し た 。 採 取 し た 時 間 帯 は 午 前8:30か ら11:00の 問 で あ っ た 。 採 取 し た 唾 液 は 、 直 ち に 貯 蔵 庫 に 保 管 し 、2時 間 以 内 に 実 験 室 に 運 搬 し た 。 唾 液 中 の カ ン ジ ダ 菌 数 を 測 定 す る た め に 、 希 釈 し た 唾 液O.lmLを 寒 天 平 板 ( 直 径90mm、CHROMagar Candida,Paris)上 に 塗 布 し 、37℃ 、48時 間 で 好 気 的 に 培 養 し た 。 カ ン ジ ダ 菌 数 は 、 寒 天 平 板 上 の カ ン ジ ダ 菌 の コ ロ ニ ー 数 を 計 測 し 、 対 数 変 換 し た 値(log CFUs/ml)と し て 求 め た 。

  唾 液 中 ヒ ス タ チ ン5量 は 競 合ELISA法 に よ り 測 定 し 、 唾 液 中 蛋 白Img当 り の 重 量 (pg)で 表 し た 。 抗 体 で コ ー テ ィ ン グ さ れ た プ レ ー ト ( 固 相 化 抗 体 ) に 対 し て 、50vlの 試 料 と50plの 酵 素 標 識 抗 原 を 加 え て 、 室 温 で30分 間 反 応 さ せ た 。 そ の 後 、300yl洗 浄 溶 液 を 加 え る 過 程 を5

(4)

回 繰 り 返 した 。lOOLr,lのo‑phenylenediamine (OPD)を 加 え 、室 温 で15分 間 放置 す る こと で 発 色 反 応 を 起 こ し 、2N硫 酸lOOLr,lを 加 え て 反 応 を 終 了 さ せ 、 吸 光 度(OD)は492nmで 計 測 し た 。唾 液中蛋白は蛋白定量用キット(BIO‑RAD,Hercules,CA)で測定した。

  統 計 分 析 に お い て は 、 平 均 値 の 差 の 検 定 はt検 定 、 一 元 配 置 分 散 分 析 を 用 い た 。 多 重 比 較 はSche艶 のmmtiplecompmsonteStで 行 っ た 。 ヒ 久 タ チ ン 濃 度 と カ ン ジ ダ 菌 数 と の 相 関 関 係 はSpeannanの 順 位 相 関 係 数 よ り 求 め た 。 ま た 、 カ ン ジ ダ 菌 数 に 対 す る 要 因 を み る た め に 、 重 回帰分析を行った。

I結果および考察】

1)32名 は 上 下 顎 と も に 義 歯 を 使 用 し て な く ( 義 歯 未 使 用 者 群) 、51名 は 上 下顎 の 少 な くと も ど ち ら か に 局 部 床 義 歯 を 使 用 し て お り( 局 部 床義 歯 使 用者 群 ) 、41名 は上 下 顎 の少 な く と もど ち ら か に 全 部 床 義 歯 を 使 用 し て い た ( 全 部 床 義 歯 使 用 者 群 ) 。CPIコ ード の 分 布で は 、 現 在歯 数 が 少 な い が 故 に 「 成 立 し な い 」 と 判 定 さ れ た 者 が 最 も 多 く35名 (28.2% )、 次 い で コー ド 2(23.4%)、コード3(19.4%)の順であった。

2)104人 の 唾液 試 料 (84% ) が、 カ ン ジダ コ ロ ニー 形 成 陽性 で あ った 。カ ンジダ菌 数の平均 値を 年 齢別、性 別、義 歯の使用 者別に 検討した ところ 、70〜79歳(1.79士1111,pくO.01)、80〜91歳

(1.88土1.08,pく0.05)の高齢者は、65〜69歳の高齢者(0.9虹0.92)と比較して、有意に高い唾液中 カ ン ジ ダ 菌 数 を 示 し た 。 男 女 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 局 部 床 義 歯 使 用 者 群 の 唾 液 中

(1.96士0.97,pくo.001)、全部床義歯使用者群の唾液中(1.95土1.08,pく0.001)には、義歯未使用者 群(O.78土O.89)よりも有意に高いカンジダ菌数を示した。

3) ヒ スタ チ ン 濃度 と カ ンジ ダ 菌 数 との 相 関関 係をみた ところ 、80〜89歳の 高齢者 群Qくo.05)、

お よ ぴ 全部 床 義 歯使 用 者 群QくO.01) の 唾液 中 で は有 意 な 負の 相 関 が認め られた 。しかし 、その 他 の 年 齢 層 や 、 男 性 の み 、 あ る い は 女 性 の み の 群 で は 有 意 な 相 関 は 認 め ら れ な か っ た 。 4) 重 回 帰 分 析 の 結 果 、 唾 液 中 カ ン ジ ダ 菌 数 は 、 ヒ ス タ チ ン5濃 度 と 有 意 な 負 の 関 連 を 、 また 義歯の使用と有意な正の関連を示した。

(結諭1

  ヒ ス タ チ ン5濃 度 が 低 く 、 義 歯 の 床 面 積 が 大 き く な る と 、 唾液 中 カ ンジ ダ 菌 数が 増 加 し た。

ま た 、 高 齢 者 に 対 し て ヒ ス タ チ ン5は カ ン ジ ダ 菌 の 感 染 を コ ン ト ロ ー ル で き る 可 能 性 が 示 唆 された。

  本 論 文 申 請 者 に 対 し て 、 主 査 韜 よ び 副 査 か ら ま ず 本 論 文 の 概 要 に っ い て の 説 明 が 求 め られ た 。 続 い て 行 わ れ た 口 頭 試 問 に お い て 、 カ ン ジ ダ 菌 数 は 、 加 齢 と と も に 変 化 す る も の で あ る の か 、 ま た は 、 義 歯 を 入 れ る こ と で 変 化 す る も の で あ る の か 、CPIの 具 体 的 な 測 定 方 法 、 ヒ ス タ チ ン の 抗 菌 作 用 機 序 、 そ し て 、 今 回 の 疫 学 調 査 の 結 果 か ら 今 後 の 研 究 方 針 を ど の よ う に考えているか等、詳細にわたって行われた。

  申 請 者 は こ れ ら の 設 問 に 対 し そ れ ぞ れ 適 切 な 回 答 を 行 っ た 。 従 っ て 申 請 者 は 研 究 の 立 案と 実 行 、 結 果 の 収 集 と そ の 評 価 に っ い て 、 十 分 な 能 カ が あ る こ と が 理 解 さ れ 、 本 研 究 に 直 接 関 係 す る 事 項 の み な ら ず 、 予 防 歯 科 学 お よ び 疫 学 全 般 に わ た り 広 い 学 識 を 有 し て い る と 認 め ら れ た 。 ま た 本 研 究 は 、 唾 液 中 の ヒ ス タ チ ン5濃 度 と カ ン ジ ダ 菌 数 と の 関 係 を 疫 学 的 に 調 査 し た も の で あ り 、 ′ 今 後 の ヒ ス タ チ ン5の 臨 床 応 用 の 可 能 に す る 重要 な も ので あ り 、予 防 歯 科 学 の 領 域 に お い て 大 い に 貢 献 し た と 評 価 さ れ た 。 従 っ て 、 本 論 文 申 請 者 は 博 士 ( 歯 学 ) に ふ さ わしいものと認められた。

参照

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