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博士(医学)小柳 泉 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)小柳   泉 学位論文題名

Silicone rubber microangiography of   acute spinal cord injury in the rat

( シ リ コ ン ラ バ ― を 用 い た 微 小 血 管 造 影 に よ る ラ ッ 卜 急 性 脊 髄 損 傷 の 検 討 )

学位論文内容の要旨

〔序論〕外傷によって生じる脊髄 虚血は、急性脊髄損傷の病態生理において重要な役 割を果たしている。脊髄損傷部に 生じる出血ならび虚血は、主にコ口イダルカーボン 注入による微小血管造影法によっ て研究されてきたが、その正確な畿序はわかってい ない。本研究では、シリコンラバ 一注入法による微小血管造影をラット急性脊髄損傷 モデ ルに 対 して 行い 、ラット脊髄の血管構造の外傷による 変化を検討した。即ち、

シリコンラバ―を大動脈から注入 し、動脈系‐毛細血管・静脈系に充満させた後、脊 髄組織を透明化することによって 血管構造を三次元的に解析した。シリコンラバーを 用 い た 微 小 血 管 造 影 の ラ ッ ト 脊 髄 へ の 応 用 は 、 本 研 究 が 初 め て で あ る 。

〔方法〕Wistar系ラット28匹( 体重240−363g)を使用した。Chloralose‑u rethane麻 酔(腹腔内投与)により、大腿 動・静脈の確保、気管切開を行い、パンクロニウム静 注下に酸素・笑気混合ガスで人 工呼吸を行なった。体血圧をモニターし、動脈血ガス

・直腸温は生理的範囲内に保っ た。19匹のラットでは、C7. Tlを椎弓切除し、53g圧 の動脈瘤クリップを用いて、硬 膜外よりC8―Tlレペルの脊髄に急性圧迫を1分間加え た 。 損 傷 後 、15分 (7匹 ) 、1時 間(5匹 ) 、4時 間(3匹 ) 、24時 間 (4匹 ) に シ リコンラバ―注入を行なった。24時間群のラットでは、ハローセン吸入麻酔下に脊髄 損傷を作成して覚醒させ、翌日 、同様にシリコンラバ一注入を行なった。正常コント ロー ル とし て、9匹 のラ ット に脊 髄 損傷 を作 成せ ずにシリコンラバ―を注入した。

〔シリコンラバ一微小血管造影法〕開胸し、18ゲ―シ針 を左心室より上行大動脈に挿 入し、9―20 mlのシリコンラバーを用手的に注入した。 注入圧は体血圧用カテーテル よルモニ夕一し、100‐130mmHgに保った。注入後は、一 晩ラットを冷蔵庫内に保ち、

注入したシリコンが固形化した後にC1−T4までの脊髄を 椎体とともに摘出し、10%緩 衝ホルマリンに浸した。約2週間の固定の後、脊髄を慎重に脊椎より摘出した。この 際、動脈・静脈の鑑別が可能となるよう、椎骨動脈を温 存した。摘出脊髄は、アルコ

―ル脱水の後、メチルサリチレート液に浸して脊髄実質 を透明化し、顕徽競にて血管 系を観察した。まず脊髄表面の血管および髄内への血管 枝を観察した後、横断面、矢 状 面 、 冠 状 面 で 約1mmの 厚 さ に 切 り 、 髄 内 の 血 管 系 を 詳 細 に 検 索 し た 。

〔結 果〕 垂堂 壷髄 血管 玉:C1―T4レ ペル では 、数 本の 脊 髄根 動脈 が前 脊髄動脈に 流 入 し て い る 。 そ の 頻 度 は 、 両 側 のC4―6と 左 のT2―3で 多 い 。 頚 髄 で は、2− 5本(平均3.4)の脊髄根動脈が存在していた。時に、脊髄根動脈の技は前脊髄動脈と 合流することなしに直接脊髄腹側より髄内ヘ流入しでいた。前脊髄動脈は、脊髄の腹 側のほば中央を静脈と其に走り、多くの中心動脈を前脊髄溝に分枝していた。前脊髄

(2)

動脈からは、横走して脊髄腹側に流入する枝は認めたが、後脊髄動脈と連絡するいわ ゆる軟膜動脈叢はみられなかった。後脊髄動脈は、両側の側索背側部を走り、脊髄後 角ヘ入る多数の枝と、後索表面に分布して両側の後脊髄動脈を連絡する枝を分岐して いた。また、後索内には2種類の大きな静脈を認めた。その―つである後中隔静脈 は、両側の後角底部から横走して流入する枝と、後索底を縦軸方向に走行する長い枝 をもち、後索内の中央を上行して、表面の背側静脈に流入していた。もうーつの静脈 は 、 後 角 内 側 部 を 灌 流 し 、 後索 内 を斜 走 し て背 側 静 脈に 流 入し て い た。

壷髄損傷:損傷部表面の前脊髄動脈や後脊髄動脈は開存していたが、髄内には著明な 出血と虚血を認めた。出血は損傷部より後索内を2−7mm吻側および尾側へのぴてい た。この速く離れた部位に起こる出血は、後索内の後中隔静脈の走行部にほぽ一致し て存在しており、この静脈の枝の破綻により生じたと考えられた。損傷後15分および 1時間の早期では、損傷部にシリコンラバ―の血管外漏出が多数認められ、しばしば 中心動脈やその枝の破綻部より生じていた。また、損傷部の中心動脈の末梢の枝の造 影は不良であった。損傷後4時間および24時間では、損傷部の浮腫と虚血はより著明 となり、中心動脈の閉塞をしばしぱ認めた。シリコンラバーの血管外漏出は、損傷後 早期に比べると減少していた。

[考察〕本実験でのラット頸髄を栄養する根動脈の分布は、従来の報告にほば―致 し、人間の脊髄栄養動脈の分布によく類似している。しかし、ラット脊髄では、前脊 髄動脈あるいは後脊髄動脈からの少数の枝を除いて、軟膜動脈叢は存在せず、中心動 脈が、前方・側方の脊髄の灰白質のみならず白質をほば軟膜表面まで栄養しているこ とがわかった。このことは、外傷による中心動脈およびその枝の断裂・閉塞が、広汎 な虚血を灰白質・自質に起こすことを示唆している。また、このような血管の閉塞 は、時間の経過とともに進行しており、その機序についてはさらに検討が必要であろ う。尚、人間の脊髄には豊富な軟膜動脈叢が存在することが報告されているが、従来 の微小血管造影法では動脈・静脈の区別が困難であり、本方法のような三次元的解析 法により再検討することが必要と思われる。次に、本モデルの特徴的な所見として後 索内を伸展する出血があげられる。その原因としては、後索内の静脈の破綻が考えら れた。このようなタイプの出血は、他の脊髄損傷モデルや人間の損傷脊髄でも報告さ れており、外傷後に生じる出血・虚血の原因として、動脈のみならず静脈の要因が存 在することが示唆された。以上より、本方法は、脊髄損傷の病態生理、特に髄内循環 動態を理解する上で非常に有用であった。

(3)

   学 位 論 文審 査 の要 旨 主査    教 授    阿 部    弘 副査    教 授    金 田清 志

副 査   教 授   劔 物   修

学 位 論 文 題 名

Silicone rubber mlcroangiography of   acute spinal cord injury in the rat

( シ リ コ ン ラ バ ー を 用 い た 微 小 血 管 造 影 に よ る ラ ッ 卜 急 性 脊 髄 損 傷 の 検 討 )

  〔 序論〕外傷によって生じる脊髄虚血は、急性脊髄損傷の病態生理において重要な 役割 を果たしている。脊髄損傷部に生じる出血ならび虚血は、主にコロイダルカーポ ン注 入による微小血管造影法によって研究されてきたが、その正確な機序はわかって いな い。本研究では、シリコンラパ―注入法による微小血管造影をラット急性脊髄損 傷モ デルに対して行い、ラット脊髄血管の外傷による変化を三次元的に解析した。シ リコ ンラバーを用いた微小血管造影のラット脊髄への応用は、本研究が初めてである   〔方法〕Wistar系ラット28匹(体l240−363 g)を使用した。Chloralose―urethane 麻酔(腹腔内投与)により、大腿動・静脈の 確保、気管切開を行い、パンクロニウム 静注下に酸素・笑気混合ガスで人工呼吸を行 なった。体血圧をモニタ―し、動脈血ガ ス・直腸温は生理的範囲内に保 った。19匹のラットでは、C7.Tiを椎弓切除し、53g 圧の動脈瘤クリップを用いて、 硬膜外よりC8−Tlレペルの脊髄に急性圧迫を1分間加 た 。 損 傷 後 、15分 (7匹 ) 、1時 間 (5匹 ) 、4時 間 (3匹) 、24時間 (4匹 )に シ リコンラバ―注入を行なった。24時間群のラ ットでは、ハロ―セン吸入麻酔下に脊髄 損傷を作成して覚醒させ、翌日、同様にシリ コンラバ一注入を行なった。正常コント 口― ルと して 、9匹 のラ ット に脊 髄損 傷を 作成 せず にシリ コンラバ―を注入した。

  〔シリコンラバ一微小血管 造影法〕開胸し、18ゲ―シ針を左心室より上行大動脈に 挿入し、9―20 mlのシリコンラバ―を100−130mmHgの圧で注入した。ClーT4までの脊髄 椎 体と とも に摘 出し 、10%緩 衝ホ ルマ リン にて 約2週間固定した後、 脊髄を慎重に 脊椎より摘出した。この際、 動脈・静脈の鑑別が可能となるよう、椎骨動脈を温存し た。摘出脊髄は、アルコ―ル 脱水の後、メチルサリチレート液に漫して脊髄実質を透 明化した。脊髄表面の血管お よび髄内への血管枝を観察した後、横断面、矢状面、冠 状 面 で 約1mmの 厚 さ に 切 り 、 髄 内 の 血 管 系 を 顕 微 鏡 に て 詳 細 に 検 索 し た 。   〔結果〕垂堂壷髄血篁墓:C4−Tlレペルでは、数本の脊髄根動脈が前脊髄動脈に流入 している。その頻度は、両側のC4‐6と左のT2‐3で多い。頚髄では、2−5本(平均3.4) の脊髄根動脈が存在していた 。前脊髄動脈は、脊髄の腹側のほぽ中央を静脈と其に走 り、多くの中心動脈を前脊髄 溝に分校していた。前脊髄動脈からは、横走して脊髄腹 側に流入する枝は認めたが、 後脊髄動脈と連絡するいわゆる軟膜動脈叢はみられなか った。後脊髄動脈は、両側の 側索背側部を走り、脊髄後角ヘ入る多数の枝と、後索表 面に分布して両側の後脊髄動 脈を連絡する枝を分岐していた。また、後索内には2種

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類の大きな静脈を認めた。そのーつである後中 隔静脈は、両側の後角底部から横走し て流入する枝と、後索底を縦軸方向に走行する 長い枝をもち、後索内の中央を上行し て、表面の背側静脈に流入していた。

壷髄損傷:損傷部表 面の前脊髄動脈や後脊髄動脈は開存していたが、髄内には著明な 出 血と 虚血 を認 めた 。出 血は損傷部より後索内を2―7mm吻側 および尾側へのびてい た。この速く離れた 部位に起こる出血は、後索内の後中隔静脈の走行部にほぽ一致し て存在しており、こ の静脈の技の破綻により生じたと考えられた。損傷後15分および 1時闇の早期では、損傷部にシリコンラパ―の血 管外漏出が多数認められ、しばしば 中心動脈やその枝の 破綻部より生じていた。また、損傷部の中心動脈の末梢の枝の造 影は;F良であった。損傷後4時間および24時間では、損傷部の浮腰と虚血はより著明 となり、中心動脈の 閉塞を認めた。シリコンラバーの血管外漏出は、損傷後早期に比 ぺると減少していた 。

  〔考 察 〕本 実験 での ラッ ト頸髄を栄養する根動脈の分布は、従来の報告 にほぽー し、 人間の脊髄栄養動脈の分布によく類似している。しかし、ラット脊髄では、前脊 髄動 脈あるいは後脊髄動脈からの少数の枝を除いて、軟膜動脈叢は存在せず、中心動 脈が 、前方・側方の脊髄の灰白質のみならず白質をほ|ヨ譲面まで栄養していることが わか った。このことは、外傷による中心動脈およびその枝の閉塞が、広汎な虚血を灰 白質 ・白質に起こすことを示唆している。また、このような血管閉塞は、時間の経過 とと もに進行しており、その機序についてはさらに検討が必要であろう。次に、本モ デル の特徴的な所見として後索内を伸展する出血があげられる。その原因としては、

後索 内の静脈の破綻が考えられた。このようなタイプの出血は、他の脊髄損傷モデル や人 聞の損傷脊髄でも報告されており、外傷後に生じる出血‐虚血の原因として、動 脈の みならず静脈の要因が存在することが示唆された。以上より、本方法は、脊髄損 傷 の 病 態 生 理 、 特 に 髄 内 循 環 動 態 を 解 明 す る 上 で 非 常 に 有 用 で あ っ た 。

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