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血管新生阻害剤

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 近 藤 正 男

学 位 論 文 題 名

血管新生阻害剤TNP ―470 (AGM ― 1470 )のcolon ―26 に      対 す る 増 殖 抑 制 効 果 お よ び 肝 転 移 抑 制 効 果

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    t.目 的

  血 管 新 生 阻 害 剤TNP−470(AGM―1470, 以 下TNP) は , 強 カ な 血 管 内 皮 細 胞 の増 殖抑 制効 果に より 血管 新生を阻害するとされ、この抑制効果は細胞周期への影 響によ る こ と が 明 ら か に さ れ た 。 ー 方 、TNPは そ れ 自 体腫 瘍細 胞に も増 殖抑 制効 果 を持 ち、inv itroで各種癌細胞の増殖を抑制し、in vivoでも各種固形腫瘍の増殖抑制や転移抑制効 果を持 つ こ と が 報 告 さ れ て いる 。し かし 、大 腸癌 細胞 に関 するTNPの 抑制 効果 や、 臨床 上問 題と な る 肝 転 移 巣 に 対 す る基 礎的 研究 の報 告は きわ めて 少な い。colon−26に対 するTNPのinv itroでの増殖抑制効果、細胞周期への影響、in vivoでの肝転移抑制効果について検討 した。

    |I.方法

1.実 験材料腫瘍細胞はマウス可移植性大腸癌株co|on−26を 、実験動物は雌性BALB/c(体重 19g−21g)を使用した。

2. 実 験 群invit ro試 験のTNP濃 度は 、control(Ong/ml),1ng/m| ,10ng/rril,100ng/

mI,1皿g/rril,10皿g/mlの6種類の濃度で増殖抑制試験(各濃度n 4)を施行した.走査電子顕 微鏡 による形態観察、細胞周期の 解析、cyclinDlm―RNAの発現は100ng/m|以上の濃度を用い た。in vivo試験は、TNP濃度はcontrol(5fl;arabic gumの み)、Img/kg,5mg/kg,10mg/kg 100mg/kgの5群での肝転移増殖抑制試験(各n=5)と、TNPに5―Fluorouraci|(以下、5―Fu) を併用した肝転移抑制試験を施 行した。

3. colon−26細胞 増殖 抑制 試験day0にフラスコ内にcolon―26を5x l04個に静置させ、24時 間後 にTNPを各 濃度 とな るよ う調 整 した 。day3,5にTNP溶 液の 交換 を行 い、dayl,3.5,7 にトリバンブルーを用い細胞数 を測定した。

4.走 査電 子顕 微鏡 によ る形 態観 察60mmdish上に8.5mmのSEM plateを置き、.colon―26をsx 10 個dish内に 静置 させ た。2時 間 後TNPを 追加 し、48時 間後l%gJ utaraldehydeを用い1時 間 固 定 し た 。ethanolを用 い脱 水し 、acetic isopenty|反 応後 臨界 点乾 燥し た。Au+Pdに てcoatingし 、ion spatterで 処 理 後S−4500を 用 い 、5000倍 率 で 細 胞 表 面 を 観察 した 。 5.細 胞周 期の 解析 フラ スコ 内にcolon−26を1X.10°個 静置 さ せ、2時 間後TNPを 調整し、

各濃 度5検 体を 作製 した ぃ48時間 後 、0.2%trypsinを 用い 、sing|ecellの細胞を採取した。

8019ethanol 24時間固定後、O.l% pepsin丶0.02% RNaseを加え、0.005% propidium iodideで 染色 ,EPICS  El iteに より 腫瘍 核DNA量を 測定 し, 細胞 周期 解 析programを 用い てG1期 、S 期、G2M期の細胞比率を算出した。

6.)− ザン ブ口 ット によ るcyclin Dlm―RNAの解 析  フラ スコ内のcolonー26、5x 106個を各 TNP濃 度で48時 間処 理し 、RNA zoI.Bキットにてtotal RNAを抽出した。total  RNA  1011Eを 1Xア ガ □ー スゲ ルで60分 電気 泳動 し、 ナイ ロン メン ブレ ンで ト ラン スフ ァ― し、UV照射に てRNAを固 定、 乾燥 させ た。3時間 のプ レハ イブ リダ イゼ ーシ ョ ン後 、cyclinD1プ 口―ブを

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32Pにて標識し、24時間ハイブリ ダイゼーションを施行した。フィルタ―を洗浄、リンス 後、

‑ 80℃で2時間オートラジオグラ フィーを行い現像した。

7. 肝 転 移 増 殖 抑 制 試 験day0に エ ― テ ル 麻 酔 下 に30Gリン バ管 造影 針を 用い て腸 間膜 静脈 を穿 刺し、colonー26を1x l04個注入し肝転移を作成した。dayl、5、9、13に右腹壁に各濃度のT NPを 皮 下 注 射 し 、 day17に 犠 牲 死 さ せ 、 肝 表 面 の 転 移 結 節 個 数 を 測 定 し た 。 8.TNP、5‑Fu併 用 試 験day0に 肝 転 移 を 作 成 し 、TNP5mg/kgをdayl、5、9、13に 右 腹 壁 に 皮下 投 与し た。5‑Fuは0.5mg/kg/dayをday0より24時間腹 腔内持続投与とした。治療群はc ont rol群丶(無治療)、5−Fu単独投与(5―Fu群)、TNP単独投与(TNP群)、5−FuとTNPの併 用 群 (TNP十5―Fu群 ) と し 、day 15に 犠 牲 死 さ せ 、 肝 転 移 結 節 個 数 を 測 定 し た 。 9. 統 計 学 的 検 討 得 られ た数 値は 、平 均値 土標 準偏 差 で表 し、 統計 学的 処理 には 、一 元配 置分 散分析とFisher PLSDを用い、p<0.05を有意差とした。

    III‐結果

1.増殖抑制試・験day7における各群間の細胞数(xi04)、1 00ng(57.0土26.6)、111E(23.0 土10.5)、10皿g/rri|(13.0土3.8)の3群はcontrol(383.0土43.7)、1ng(346.0土50.9)、10ng/

ml( 457.0士36.7) の 3群 に 比 し 有 意 の 細 胞 増 殖 抑 制 を 認 め た ( p<0.05) 。 2. 走 査 電 子 顕 微 鏡 所 見controlで は 著 明 なmicrovilli、microtubuleを 認 め た が 、TNP 1 00r19/rrll、1ヰg/ml群ではmicrovi IIi、microtubuleが著明に減少し、1011 g/mlで処理したco lon‑26は 、 細 胞 表 面 は 滑 で 、microvi|li、microtubuleの 増 生 を 認 め な か っ た 。 3. 細 胞 周 期 各 濃 度 にお けるG1、S、G2M期の 比率 (X)は そ れぞ れcontro|群61.6土1.5、 37.5土1.3、0.9士0.4、100ng群69.4土1.3、27.5土1.1、3.1土0.3、1Hg群71.2土1.4、26.4士 1.4、2.3土0.8、10ug/ml群73.9土1.6、22.9土1.6、3.1土0.9であり100ng/ml以上の3群は有 意にcontro| 群よ りGl期の 細胞 数の 比 率は 増加 し、S期 の比率は減少してぃ た(p<0.05)。

4.cyclinDlm―RNAの解 析cyclin Dlm−RNAは4.3kbに 発現 し、100ng、10ug/fllIではcont ro|に比し発現量は抑制されていた。

5. 肝 転 移 増 殖 抑 制 試験 肝転 移 結節 個数 は、control群5.7土1.5、Img/kg群3.0土1.7、5mg /kg群1.3士1.5、10mg/kg群1.0土1.0、100mg/kg群1.0土1.0と 、controlに比 しTNP5mg/kg以 上の群では有意に肝転移結節個数は減少していた(p<0.05)。

6.TNP,5―Fu併 用 試 験 各 群 に お け る 肝 転 移 結 節 個 数 は ,control群14.8土6.9,TNP 群6.3土s.s、5−Fu群7.0土3.2、TNP十5−Fu群5.0土3.8と、controlより他の3群の肝転移結 節個数は有意に減少していた(p<0.05)が、単独投与群と併用群間には有意差を認めなかった。

    IV.考察

  TNPが ヒ ト 臍 帯 静 脈 血 管 内 皮 細 胞 のcyclin Dlの発 現を 抑制 し、 細胞 周期 をGl期で 停 止 させ 細胞 分裂 を抑 制す ると する 報告があり、in vitroでの腫瘍細胞の増殖抑 制の可能性と示 唆している。今回の実験でもco|onー26は100ng/ml以上の濃度で有意に細胞増殖は抑制され、

Gl期 の細 胞の 比率 は増 加、S期の 比率 は減 少し 、cyclin Dlm―RNAの発 現量 は抑 制さ れてい た。

  TNPは5mg/kg以上 の濃 度で は有 意に 肝転 移の 増殖 を抑 制し 、5−Fuと 同等 の抗 腫瘍 効果を 示し 、原 発巣 切除 後の 微小 肝転 移巣に対する補助療法として期待できると考 えられた。しか しTNPと5―Fuの 併 用 効果 はみ られ ず、TNPに よるco|on―26の 増殖 抑制 がinvivoでも 発 現 し、5−FuのDNA合成阻害作用が減弱したことが 推察された。

    V. 結 語

1. TNPはin vitroでは100ng/ml以上 の濃 度でco|on−26の増殖を有意に抑 制した。この増 殖 抑 制 作 用 の 機 序 の1っ と し て 、TNPがGl期 に お け るcyclinD1の 発 現 を 抑 制 し 、 細 胞 周 期をGl期 からS期へ 移行 する のを 阻害 する こと が考 えら れた 。

2. TNPはin vivoに お い て も5mg/kg以 上 の 濃 度 で 有 意 に 肝 転 移 増 殖 を 抑 制 しが 、こ の 効

(3)

果は5―Fuの併用では増強しなかった。TNPの大腸癌原発巣切除後の微小肝転移に対する補 助療法としての有効性が示唆されたぃ

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(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

血 管 新 生 阻 害 剤 TNP − 470 ( AGM − 1470) の colon ― 26 に      . 対 す る 増 殖 抑 制 効 果 お よ び 肝 転 移 抑 制 効 果

  血 管 新 生 阻 害 剤TNP−470(AGM一1470, 以 下TNP) は , そ の 強 カ な 血 管 内 皮 細 胞の 増殖 抑制 効果 によ り血 管新 生を阻害するとされ、この抑制効果は細胞周期への影 響 に よ る こ と が 明 ら か に さ れ て いる 。一 方、TNPはそ れ自 体 腫瘍 細胞 にも 増殖 抑制 効果 を持 ち 、in vitroで各 種癌 細胞 の増 殖を 抑制し、invivoでも各種固形腫瘍の増殖抑制や転移抑 制 効 果 を 持 つ こ と が 報 告 さ れ て いる 。し かし 、大 腸癌 細胞 に関 するTNPの 抑制 効果 や、 臨床 上 間 題と なる肝転移巣に対する基礎的報告はきわめて少なく、 今回申請者はcolon−26を用 い てTNPのin vitroでの 増殖 抑制 効 果、 細胞 周期 への 影響 、in vivoでの 肝転 移抑 制効 果に つ い て 検討 した 。

  in vitroで の 実 験 結 果 と し て、TNPは100ng/ml以 上の 濃 度で 有意 にcolon‑26の 増殖 を抑 制 し 、TNPに よ り 走 査 電 子 顕 徹鏡 所見 とし ては 著明 なmicrovilli、microtubulesの減 少が 観 察 さ れ た 。 細 胞 周 期 の 解 析 は 、TNPに よ りGl期 の 細 胞 数の 比率 は増 加し 、S期 の比 率は 減 少 し、cyclin Dlm−RNAの発 現 量は 抑制 され てい た。TNPのin vitroでのcolon‑26の増 殖 抑 制 抑 制 効 果 の 機 序 の1っ と して 、G1期に おけ るcycliri Dl m‑RNAの発 現を 抑制 し、Gl期 か らS期 への 移行 を阻 害し てい る 可能 性が ある こと を示 した 。in vivoの実験結果として、T NPは5mg/kg以 上の 濃度 では 有意 に肝 転移 の増 殖を 抑制 し、5‑Fuと 同等 の抗 腫癌 効果 を認 め た がTNPと5‑Fuの 併 用 で は 、TNP、5‑Fu単 独 に 比 し 抗 腫 瘍 効果 の増 強は みら れな かっ た。

TNPは大 腸癌 原発 巣切 除後 の微 小 肝転 移に 対す る補 助療 法と して有効であることを示した 。   審 査 に 当 た っ て 、 浅 香 教 授 からTNPによ る腫 瘍内 血管 数 の変 化と 過去 の文 献的 報告 例、

FGF等 血 管 新 生 因 子 とTNPと の 関 連 、colon‑26のp53異 常 、TNPがcell CYcleに 影 書 を 及 ぼ す機 序とcyclifi Dl以 外の 因子 の可 能性 、TNPと5‑Fuと に相乗効果がみられない理由 の 質 疑 が あ っ た 。 こ れ に 対 し 申 請者 は、 文献 的に はTNPに よ る腫 癌内 血管 の減 少の 報告 はあ る が 、 今 回 は 、HE染 色 、 第8因 子 染 色 で はTNPに よ るcolon‑26肝 転 移 巣 内 の 腫 癌 血 管 の 減 少 は み ら れ な か っ た こ と 、bFGF産 生 性 の 腫 瘍 で は よ りTNPの 抗 腫 癌 効 果 が 観 察 さ れた と の 報告 があ るこ と、 マウ スwild type p53によるノーザンブ ロットの解析ではパンドが2つ 観 察 さ れ 、colon‑26のpolyclonalな 性 質 に よ る2種 類 の 異常 の可 能性 があ るこ と、TNPが CYclin Dlに 影 響 を 及 ぼ す 援 序やcyclin Dl以外 の因 子の 存在 は現 在不 明で ある こと 、TNP と5‑Fuの 併 用 効 果 が み ら れ な い理 由と して 、TNPに よるcolon−26の増 殖抑 制効 果がinviv 0で も 発 現 し5‑FuのDNA合 成 阻 害 作 用 が 減 弱 し た と 推 察 さ れ る こ と が 述 ぺ ら れ た 。   玉 木 教 授 よ り 、TNPの 血 管 新生 阻害 によ る血 流の 低下 を 画像 的に 評価 する 方法 と過 去の 文 献 的報 告例 、今 回のin vivoで の肝 転移 増殖 抑制 効果 の主 因、TNPの 肝重 量の 変化 と肝 毒

234―

博 ‐

純 正

野 香

内 浅

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

性等の副作用、TNPと5―Fuのin vitroでの増殖抑制効果の比較について質疑があった。こ れに対しTNPは腫瘍内の微小血管の新生を阻害していると考えられ、画像的に評価するの は困難であり、文献的報告もないこと、肝転移増殖抑制効果の因子として血管新生阻害作用 と直接の抗謹癌効果の2っが考えられるがどちらが主因であるかは判断できないこと、今回 の実験ではTNPにより肝重量は腫瘍が小さいため差がなかったこと、正常肝の病理組織学 的変化はみられなか.ったこと、副作用は高濃度では体重減少が報告されているが今回は変化 がなかったこと、in vitroのTNPの作用は増殖抑制であり殺細胞効果ではなく細胞数は減 少しないのに対し5‑Fuでは細胞数が滅少することを回答した。

  内野教授より臨床上肝転移はhypovascularである肝転移モデルにTNPを用いた理由につ いて質疑があり、肝転移は画像上はhypovascularであるが画像上捕らえられない微小な腫癌 血管が存在していると考えられるためTNPの微小血管新生阻害作用を期待して使用したこ とを回答した。

  TNPによるin vitroでのcolon‑26に対する増殖抑制効果とその1因にcycliri Dlを介した 細胞周期への影響の関与を示唆したこと、TNPが大腸癌切除後の微小肝転移巣に対する補 助療法としての有用性を示唆した点で意義がある。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であることか ら 、申請者 が博士( 医学)の 学位を受 けるのに充 分な資格 を有する ものと判定した。

‑ 235→

参照

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