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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 川 村    猛

     学位論文題名

セ1J ン/スレオニン残基特異的プロテインホスファターゼ PP2B の生理的意義の解析ならびにホスファターゼ阻害剤      ト ウ トマ イ シ ン の溝造/ 機能相関 に関す る研究

学位論文内容の要旨

  夕ンバク質のりン酸化/脱リン酸化は、そのタンバク分子の重要な機能調節機構であり、

これにより生体機能は可逆的に調節され る。夕ンバク質のりン酸化と脱リン酸化は、それ ぞれブ口テインキナーゼとプ口テインホ スファターゼにより触媒される。プ口テインホス ファターゼはその基質特異性によルセリ ン/スレオニン残基特異的ホスファターゼ、チ口 シン残基特異的ホスファターゼ、スレオ ニン/チ口シン残基特異的ホスファターゼに分類 される。このうちセリン/スレオニン残 基特異的プロテインホスファターゼ(以下セリン

/ス レオ ニン ホス ファ タ ーゼPPと する )は 、内 在性 のインヒピターI‑lおよびI‑2により 阻 害 さ れ るPP1と 阻 害 さ れ な いPP2に 分 け ら れ 、PP2は さ ら に ポ リ カ チ オ ン 要 求 性 の PP2A、 カ ル シ ウ ム /カ ルモ ジュ リン 要求 性 のPP2Bお よび マグ ネシ ウム 要求 性のPP2Cに 分類される。

  本 論文 にお いて 、1章 では 生体 内で のPP2Bの 役割 を 明ら かに する 目的 で、 脳および免 疫担 当臓 器に おけ るPP2B活性 、免 疫担 当細 胞の 活性 化における本酵素活性の動態、肝癌 細胞 にお けるPP2Bの癌 性 変異 を解 析し た。2章 では 、 セリ ン/ スレ オニ ンホ スファター ゼ阻害剤トウトマイシンの最小機能単位 を明らかにする目的で、トウトマイシンの構造/

機能相関を調ぺた。本論文の要点は以下 にまとめられる。

1章 :PP2Bは 、 脳 で の 発 現 が 高 く 、 ま た 免 疫 系 に お い て はT細 胞 の 活 性 化 や 細胞 死に 関与するこ とが知られている。しかし、細胞の応答や病態における 本酵素の解析は、ほと ん どな され てい ない 。 本章 では 、生 体内 でのPP2Bの意義を解析するため、正常および自 己 免 疫 疾 患 モ デ ル マ ウスlprマウ スに お けるPP2Bの挙 動、T細 胞の 細 胞内 情報 伝達 系で のPP2Bの動 き、 老化 促 進マ ウス にお けるPP1,PP2A,PP2B活 性、 およ び移 植性腹水肝癌 細胞株と正 常肝細胞におけるPP2B活性を解析した。

1).マ ウ スPP2Bで は 、 脳 のmRNA. 夕 ン バ ク 発 現 量が 脾臓 のそ れに 比 して 著し く高 いに もかかオ) らず、活性は逆に脾臓より低かった。またlprマウスにおいて正常マウスに比ぺ 脾臓での活 性が2倍程度上昇していた。

2).T細 胞の 活性 化過 程 では 、PP2B総 活性 に変 化は 見ら れな かっ た。 した がっ て、T細胞 活 性 化 に お け るPP2Bの活 性化 は、PP2Bの量 的変 化に よる もの では な く、 カル シウ ムに よるPP2Bの 活性化などの質的上昇によるものと考えられる。

3).老化 促進 マウ スで 脳の ホス ファ ター ゼ活 性を 測定した。PP1,PP2Aは小脳・前脳で同 程度の活性 が認められ、加齢による活性変化は見られなかった。し かしPP2Bは、前脳で、

小 脳の 約2倍 の活 性を 示し 、さ らに 老化 促進P‑10系 マウ スの 前脳 で、 加齢 に伴うPP2B活 性の減少傾 向が観察された。

    ―192―

(2)

4).移 槽陸 腹水 肝癌 細胞 でPP1の転 写が 亢進 する ときPP2B活 性は 逆に 減少 してい るもの が 多か った 。

  以上 の実 験結 果に より 、PP2Bが種々の病態や生理的条件下に、各々異なった分 子機構 に より 、量 的・ 質的 に調 節さ れて いる こと がわ かっ た 。

2章 : セ リ ン / スレ オニ ン残 基特 異的 プ口 テイ ンホ スフ ァ ター ゼ阻 害剤 オカ ダ酸 は、T 細胞にアポトーシスを 誘導する。本章ではまず、オカダ酸と類似した構造と分 子量をもつ ト ウト マイ シン を用 いてT細胞へ与える影響を 調べた。その結果、トウトマイシンもまた 白 血 病T細 胞 株 に 対 し ア ポ 卜 ー シ ス を 誘 導 す る こ と が 明 ら か に さ れ た 。   トウ トマ イシ ンはPP1とPP2Aを同 程度 の濃 度で 阻害 する が、 オカ ダ酸 はトウトマイシ ン と類 似し た構 造と 分子 量を もち なが らPP2AをPP1に 比し てよ り強 く阻 害する。このこ とは部分構造の差異が 活性阻害の特異性を決定していることを強く示唆する。したがって、

ト ウト マイ シン の部 分構 造を 用い るこ とに よ りPP1,PP2A活性 阻害 をも たらす最小機能 単 位の 決定 、さ らにPP1,PP2Aそれぞれの特異 的阻害構造を用いることによルアポトーシ ス誘導との関係を解析 することができる。そこでトウトマイシンおよびその部 分合成物や 誘導体を用いて、ホス ファターゼ活性阻害とアポトーシス誘導につしゝて構造/機能相関を 調ぺた。トウトマイシ ンは無水マレイン酸部分をもつ左セグヌン卜と、スピ口 ケタール構 造 を含 む炭 素数26の 右セ グヌ ント から なる が 、ホスファターゼ活性阻害には既に報告が ある無水マレイン酸部 分やC22の水酸基の重要性の 他に、C22‑C96炭素骨格が必 要であると 結諭された。また活性 阻害を示す化合物は、左セグヌントを含む活性阻害を示 した最小構 造 の化 合物 以外 は、PP2AよりPP1を 強く 阻害 した こと から 右セ グヌ ント が阻害の特異性 を決定していると考え られる。一方、アポトーシス誘導にはトウトマイシンの 右セグメン トのスビ口ケタール構 造を含むCi‑C18の骨格が最小単位と考えられ、ホスファ ターゼ阻害 に 重要 な部 分で ある 無水 マレ イン 酸部 分を 改 変した化合物や左セグメントをもたない化 合物でもアポトーシス 誘導能を示した。さらにアポトーシス誘導の最小骨格と 考えられる C1‑C18部分の化合物は 、ホスファターゼ活性を阻害しなかった。これらのこと より、ホス フ ァタ ーゼ 阻害 作用 を示 す構 造と アポ トー シ ス誘導を引き起こす構造には平行関係は見 られず、トウトマイシ ンによるアポトーシス誘導とホスファターゼ阻害は異な る機序によ るものと結論された。 また、アポトーシス誘導能を示す最小骨格のCi‑C18にあ るスピ口ケ タール構造は、他のア ポトーシス誘導能を示すホスファターゼ阻害剤であるオ カダ酸やチ ルシフェリル‑23‑アセ テートにも共有されており、これらの化合物においても アポトーシ ス 誘 導 と ホ ス フ ァ タ ー ゼ 阻 害 は 異 な る 機 序 に よ る も の で あ る と 考 え ら れ る 。   本論 文で は、 セリ ン/ スレ オニ ン残 基特 異的 プ口テインホスファターゼPP2Bの生理機 能 の解 析な らび にPP1,PP2A阻害剤トウトマイシンの構造/機能相関の解析を 行った。今 後 、さ らに 脳と 免疫 系のPP2Bの差 異を 解析 する ためPP2Bの精製などを行う必 要がある。

また、トウトマイシンに おいては、トウトマイシンのスピ口ケタール構造をもつ 部位を用 いたアポトーシスのシグ ナル伝達分子の探索、他のスピ口ケタール構造をもっホ スファタ ーゼ阻害剤でのアポトー シス誘導とホスファターゼ阻害の関係を解析することに より、そ の作用機構がさらに解明 されることが期待される。

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学位論文審査の要旨 主査   教授   菊池九二三 副 査    教 授    谷 口 和 彌 副 査    教 授    矢 澤 道 生

     学位論文題名

セリン/スレオニン残基特異的プロテインホスファターゼ PP2B の生理的意義の解析ならびにホスファターゼ阻害剤      ト ウ ト マイ シ ン の構造/ 機能相 関に関す る研究

  夕ンバク質のりン酸化/脱リン酸化ば、生体における重要な機能調節機構である。夕 ンハク質の脱リン酸化は、ブ口テインホスファターゼにより触媒される。本論文におい て、1章では生体内でのホスファ夕一ゼPP2Bの役割を明らかにする目的で、脳および 免疫担当臓器におけるPP2B活性、免疫担当細胞の活性化における本酵素活性の動態、

肝癌細胞におけるPP2Bの癌性変異を解析した。2章では、ホスファターゼ阻害剤トウ トマイシンの最小機能単位を明らかにする目的で、トウトマイシンの構造/機能相関を 調べた。本論文の要旨は以下にまとめられる‥

1章:  生体内におけるPP2Bの意義を明らかにするため、正常および自己免疫疾患 モデルマウスll)rマウスにおけるPP2Bの挙動、T細胞の細胞内情報伝達系でのPP2B の動き、老化促進マウスにおけるPP1,PP2A,PP2B活性、および移植性腹水肝癌細胞 林と正常肝細胞におけるPP2B活性を解析した。

1).マウス脳ではPP2BのmRNA.夕ンバク発現量が脾臓のそれに比して著しく高しゝに もかかオjらず、活性は逆に脾臓より低い値を示した。またlprマウスにおいて正常マウ スに比ぺ脾臓での活性が2倍程度上昇していた。

2).T細胞の活性化過程で、PP2B総活性に変化は見られなかった。したがって、T細胞 活性化におけるPP2Bの活性化は、PP2Bの量的変化によるものではなく、カルシウム に よ る PP2Bの 活 性 化 な ど の 質 的 上 昇 に よ る も の と 考 え ら れ る 。 3).老化促進マウスで脳のホスファターゼ活性を測定した。PP1,PP2Aは小脳・前脳で 同程度の活性が認められ、PP2Aは加齢による活性変化は見られなかったが、PP1の前 脳で加齢にともない約30%の活性上昇が認められた。またPP2Bは、前脳で、小脳の約 2倍の活性を示し、老化促進マウス、コント口ールマウスともに、加齢により前脳の PP2B活性が減少する個体が多く見られた‥

4).移植性腹水肝癌細胞でPP1の転写が亢進するとき、PP2B活性は逆に減少している ものが多かったー

2章:本章ではまず、トウトマイシンが白血病T細胞株に対しアポトーシスを誘導す ることを明らかにした。次いで、トウトマイシンおよびその部分合成物や誘導体を用い て、ホスファターゼ活性阻害とアポトーシス誘導について構造/機能相関を調ぺた。ト

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ウトマイシンは無水マレイ ン酸部分をもつ炭素数7の左 セグヌントと、スピ口ケタール 構 造を 合む 炭素 数26の右 セグヌン卜からなる。ホスファターゼ活性 阻害には無水マレ イン酸部分やC,22の水酸基 の重要性が既に報告されているが、阻害活性を示さない左セ グヌントにC22‑C2r)部分を合む骨格を付加した化合物が阻害活性を示すこと、Ci‑C26フ ラグヌントが阻害活性をも つことから、活性阻害にはC22‑C26の炭素骨格が重要である と結論された‥また左セグ ヌントとC,22‑ C26の炭素骨格を含む活性阻害を示した最小構 造 の 化 合 物 はPP1とPP2Aを同 じ濃 度で 阻害 した が、 他の 活性 阻害 を示 す化 合 物は す べ てPP1をPP2Aよ り わ ず かで ある が低 濃度 で阻 害し た。 この こと から 右セ グ メン ト が阻害の特異性に影響を与 えていると考えられる。一方、アポトーシス誘導には卜ウト マ イシ ンの 右セ グヌ ント のスビ口ケタール構造を含むCi‑C18の骨格 が最小単位と考え られ、ホスファターゼ阻害 に重要な部分である無水マレイン酸部分を改変した化合物や 左セグヌントをもたない化 合物でもアポトーシス誘導能を示した。さらにアポトーシス 誘 導の 最小 骨格 と考 えら れるCl‑C18部分の化合物は、ホスファター ゼ活性を阻害しな かった‥これらのことより 、ホスファターゼ阻害作用を示す構造とアポトーシス誘導を 引き起こす構造には平行関 係は見られず、トウトマイシンによるアポトーシス誘導とホ スファターゼ阻害は異なる 機序によるものと結論された。また、アポトーシス誘導能を 示 す最 小骨 格のCi‑Ci8に あるスビ口ケタール構造は、他のアポトー シス誘導能を示す ホ スフ ァタ ーゼ 阻害 剤で あるオカダ酸やチルシフウリル‑23‑アセテ ートにも共有され ており、これらの化合物に おいてもアポ卜ーシス誘導とホスファターゼ阻害は異なる機 序によるものであると考え られるー

  これ を要 する に、 著者はセリン/スレオニンブ口テインホスフ ァターゼPP2Bの調節 機 構な らび にホ スフ ァターゼ阻害剤卜ウトマイシンの構造/機能 相関について新知見 を得たもので、ブ口テイン ホスファターゼ研究に貢献するところ大なるものがある。よ っ て、 著者 は、 北海 道人学博士(理学)の学位を授与される資格 あるものと認める。

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参照

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