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学位論文題名Phylogeny and evolution of gall−forming aphids ofthe tribe Eriosomatini (Aphididae: Eriosomatinae) associated with Ul7nus and Zelkova (Ulmace.ae)

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 佐 野 正 和

    

学位論文題名

Phylogeny and evolution of gall

−forming aphids of

the tribe Eriosomatini (Aphididae: Eriosomatinae)   associated with Ul7nus and Zelkova (Ulmace.ae)

(ニレ属およぴケヤキ属(ニレ科)に虫こぶを形成するEriosomatini 族

    

ア ブラ ムシの系統と進化(アブラムシ科:夕マワタムシ亜科))

学位論文内容の要旨

  植食性昆虫は、寄主植物とともに多様化と進化を遂げてきた一群である。植食性昆虫と寄主植物との進 化的な関係を理解するためには、植食生昆虫の系統樹を構築し、得られた系統樹に基づいて寄主植物や生 活環などの進化系列を推定することが重要である。さらに、生物地理学的情報、寄主植物の系統仮説や化 石記 録など と組み合 わせる ことで、 植食生 昆虫の包 括的な進 化史を明らかにすることができる。

  タマワタムシ族Eriosomatiniのアブラムシは、ニレ属およぴケヤキ属(ニレ科)の植物の葉にさまざまな 形の虫こぶ(ゴール)を形成することで知られている。本族のアブラムシは、寄主転換を行い、系統的に かけ離れた2種類の植物の間を季節ごとに移住する。2種類の植物は、それぞれ一次寄主(ニレ属・ケヤ キ属)および二次寄主(主に草本植物)と呼ばれる。有性生殖は一次寄主植物上に秋に出現する有性世代 で行われ、その他の世代はすべて単為生殖で増殖する。しかしながら、一部の種は寄主転換をせずに、二 次寄主上で単為生殖のみで増殖する性質を獲得した。このような単為生殖種は、寄主転換性の祖先から一 次寄主の局所的絶減により生じたと考えられている。単為生殖種の中には、イネ科作物の害虫として記録 されている種を数多く含んでおり、こうした害虫アブラムシの進化的起源を推定するためには、系統樹に 基づく最節約復元法に基づぃて祖先種の一次寄主を推定し、植物の化石記録と照合することが必要である。

タマワタムシ族とニレ科植物との関係は、白亜紀後期から新生代第三紀初期(約6500万年前)にまで遡る。

第三紀から第四紀にかけて、ニレ科を含む広葉樹の各群は放散と絶滅、分布域の拡大と縮小を伴う劇的な 変遷を遂げてきた。こうした変遷はタマワタムシ族の進化に大きな影響を与えたことが予測される。

  本研究の第一の目的は、タマワタムシ族の系統関係を解析することにある。第二に、得られた系統樹に 基づき、寄主植物とゴール形状の進化系列を決定する。さらに、これらの結果に基づき、本族における進 化史を包括的に考察することを目指す。

1.第2章では、Byrsocryptoides属について分類学的に検討した。本属はコーカサス地方にのみ分布し、ケ ヤキ属に葉を巻いたゴールを形成する。本属はタマワタムシ族における祖先的な状態を数多く保持してお り、タマワタムシ族の進化を理解するためには重要な一群である。しかし、その知見はきわめて乏しかっ た。大英自然史博物館(イギリス)に所蔵されているグルジア共和国産の標本に基づき、本属の各種につ     ‑ 1028

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いて形態、分 布および生活環を明らかにした。

2.第3章 では 、タ マワタムシ族の系統 関係を解析した。族内より29種を選定し、外群として同 亜科内の別 族よ り6種、 近縁 の別亜科より1種を含 めた。52形態形質を用いて、 最節約法に基づき系統樹を 構築した。

各形 質を 等価 に重 み 付け をし た解 析 と、 保持指数に基づぃた逐次 重み付け法による解析の2通 りの解析を 行っ た。 等価 に重 み付けをした解析で は、多数の最節約樹が得られ 、族内の系統関係は不確定 であった。

しかし、逐次重み付けをし た解析では、3つの最節約樹 が得られたが、それらの違いはKaltenbachiella属内 の種間関係だけであり、そ れ以外では安定した系統関係 が推定できた。3つの最節約 樹のいずれにおいても タ マ ワ タ ム シ 族 の 単 系 統 性 は 支 持 さ れ 、 ほ と ん ど の 属 お よ び 高 次 グ ル ー プ も 単 系 統 群 と な っ た 。   得 られ た系 統樹 に基づき、一次寄主 とゴール形態について最節約 的復元を行った。その結果 、ケヤキ寄 生が 祖先 的で あり 、 ニレ 寄生 はケ ヤ キ寄 生より2度独立に生じたこ とが示唆された。また葉巻 型ゴールが 祖 先 的 と 推 定 さ れ 、 閉 鎖 型 ゴ ー ル は 葉 巻 型 ゴ ー ル よ り 一 度 だ け 進 化 し た こ と も 示 唆 さ れ た 。

3.第4章では、単為 生殖種の起源と分布につい て、C,olopha属を対象として検討した。C,olopha属は6種か ら構 成 され 、北 米お よび 中 央ヨ ーロ ッパ 産の3種 は寄 主 転換 性で 有性 生殖を行う一方、東アジ ァ産の2種 と南 ヨ ーロ ッパ 産の1種は二次寄主上で 単為生殖のみで繁殖する。 推定された系統樹によると、Colopha属 の祖 先 群は ニレ 属Blepharocarpus節を 一次寄主としていたことが示 唆された。このニレの節の 現存種は中 央ヨ ー ロッ パと 北米 に隔離分布してい るが、東アジアには分布しな い。化石記録によると、東 アジアでは Blepharocarpus節の ニレは新第三紀まで分布し たが、その後に絶減したと考 えられている。東アジア産の単 為生 殖 種のColopha属はBlepharocarpus節の ニレの絶減によって、 東アジアでは二次寄主上の 世代のみが 単為生殖によって残 存したと示唆された。

4.第5章 では 、 これまで の解析の結果を踏まえて、 タマワタムシ族の進化につい て総合的に議論した。ケ ヤキ にゴ ール を 形成する 種群は系統樹の基部で分岐 し側系統群を形成することか ら、ケヤキ寄生性は祖先 的で ある こと が 示唆され た。したがって、タマワタ ムシ族は初期の進化過程にお いてケヤキを寄主とし、

多様 化し たと 推 定された 。分子系統解析に基づく報 告によると、本族は白亜紀後 期から第三紀初期に分岐 した と推 定さ れ ている。 化石記録によると、その当 時、ケヤキ属はユーラシアか ら北米にかけて北半球に 広く 連続 的に 分 布してお り、ケヤキを寄主とするタ マワタムシ族の祖先種群も広 域的・連続的に分布して いた と推 定さ れ る。その 後、ケヤキ属は多くの地域 で絶減し、ごく限られた地域 (レフュージア)でのみ 残存 した 。ケ ヤ キを寄主 とするタマワタムシ族の構 成種も多くが絶減したと考え られ、その結果、ケヤキ に寄 生す る本 族 の現生種 は種多様性が低く、分布も 隔離的で、系統樹の基部で側 系統的になると説明でき る。

  タマワタムシ族は30種以 上を含む2つの属Er iosoma,およびTetraneuraとわずかた種を含む多数の属から 構成 され てい る 。Er iosomaとTetraneuraはいずれも 系統樹の先端に位置し、ニ レ属Ulmus節を寄主として いる 。こ の節 の ニレは20種以上を含む大きなグルー プで、第三紀後期から第四紀 にかけての寒冷・乾燥気 候の到来とともに急速iこ 多様化し、北半球寒冷地域に 分布を拡大した。したがっ て、比較的最近多様性を 高め たタ マワ タ ムシの属 は、急速に多様化した寄主 植物グループへの寄生の結果 であると考えられる。一 方、 種数 の少 な いタマワ タムシの属は系統樹の基部 で分岐し、また温暖な地域に 分布するニレグループを

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寄主としていた。これらのニレグループは種多様性が低く、起源の古いグループの残存要素であると考え られる。

  以上、本学位論文ではタマワタムシ族の系統解析と祖先復元を行い、寄主植物の系統情報と化石記録を 参照することで、タマワタムシ族の包括的な進化史を考察した。第三紀を通じての寄主植物の多様化と絶 減、分布域の拡大と縮小が、寄生者であるタマワタムシ族の各属における現在の種多様性に大きな影響を 与えてきたと結論できる。

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学位論 文審査の要旨

主査   助教 授   秋元 信一 副査   教授

  

諏 訪正 明 副査   教授

  

斎 藤   裕

副査   助教 授   大原昌宏(北海道大学総合博物館)

    

学位論文題名

Phylogeny and evolution of gall‑forming aphids of the tribe Eriosomatini (Aphididae: Eriosomatinae)   associated with Ubnus and Zelkova (Ulmaceae)

(ニレ属およびケヤキ属(ニレ科)に虫こぶを形成するEriosomatini 族

    

ア ブラ ムシの系統と進化(アブラムシ科:夕マワタムシ亜科))

本論文は、図17、表3、引用文献142編からなる総頁109頁の英文論文である。参考論文4編が添え られている。

  タマワタムシ族のアプラムシは、ニレ属およびケヤキ属(ニレ科)の植物の葉に虫こぶ(ゴー ル)を形成する点で特徴づけられる。本族のアプラムシは寄主転換を行い、2種類の植物(1次 寄主:ニレ属、ケヤキ属、2次寄主:主に草本植物)の聞を季節ごとに移住する。タマワタムシ 族とニレ科植物との関係は、白亜紀後期から新生代第三紀初期(約6500万年前)にまで遡る。

第三紀から第四紀にかけて、ニレ科を含む広葉樹の各群は放散と絶減、分布の拡大と縮小を伴う 劇的な変遷を遂げてきた。こうした変遷は、タマワタムシ族の種多様性、分布域、生活環などの 進化に大きな影響を与えたと予想できる。

  こうした状況のもと、本論文ではタマワタムシ族の系統関係を解析し、得られた系統樹に基づ いて寄主植物とゴール形状の進化系列を推定した。さらに、本族における進化史を包括的に考察 した。

  第一に、従来知見がきわめて乏しかったコーカサス地方に分布する8yrsocりptoides属について 分類学的に検討した。本属はタマワタムシ族における祖先的な状態を保持しており、本研究を遂 行するにあたっては重要な一群である。イギリスの大英自然史博物館に所蔵されている標本に基 づ き 、 本 属 の 各 種 に つ い て 形 態 、 分 布 お よ ぴ 生 活 環 を 明 ら か に し た 。   次いで、最節約法に基づいてタマワタムシ族の系統関係を解析した。族内より29種、外群を 7種の計36種を選定し、解析には52形態形質を用いた。各形質を等価に重み付けをした解析で は多数の最節約樹が得られ、族内の系統関係は不確定であった。しかし、得られた最節約樹に基

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づいて、ホモプラシー度に応じた形質の逐次重み付けを行ったところ、3つの最節約樹が得られ、

一箇所を除くと安定した系統関係が推定できた。3つの最節約樹のいずれにおいてもタマワタム シ族の単系統性が支持され、ほとんどの属およぴ高次グループも高い確度で単系統群と推定され た。

  さらに、得られた系統樹に基づぃて最節約復元を行うと、ケヤキ寄生が祖先的と推定され、ニ レ寄生はケヤキ寄生より二度独立に生じたことが示唆された。また葉巻型ゴールが祖先的で、閉 鎖型ゴールと中間型ゴールは葉巻型ゴールよりそれぞれ一度ずつ進化したことも最節約的に復元 された。

  Colop触属を対象として、2次寄主上でのみ増殖する種の起源と分布について検討した。推定 された系統仮説によると、本属の祖先群はニレ属B卿紕珊憾卿岱節を1次寄主としていたと示唆 された。この節のニレは北米と中央ヨーロッパには現存しているが、東アジアでは新第三紀以降 に絶減したと考えられている。その結果、北米および中央ヨーロッパ産のQぬp細属の種では寄 主転換をするのに対し、東アジア産の種は単為生殖によって2次寄主上に残存したと示唆された。

  最終章では得られた知見を総合し、タマワタムシ族の全体的な進化パターンについて議論して いる。系統推定と形質の最節約復元により、タマワタムシ族は初期の進化過程においてケヤキ属 を寄主として多様化したと推定された。タマワタムシ族は白亜紀後期から第三紀初期に起源し、

その当時北半球に広く連続的に分布していたケヤキ属とともに広域的に分布していたと考えられ る。その後、ケヤキは多くの地域で絶減し、ユーラシアの一部の地域でのみ残存した。ケヤキを 寄主とするタマワタムシ族の構成種は、現在、種多様度が低く、側系統的な関係を示す。このこ とから、ケヤキ寄生種の多くが絶減し、その結果、現生種は隔離的に分布し、低い種多様度を示 すと考えられた。ニレ属の分子系統解析や化石記録を参照すると、タマワタムシ族の30種以上 を含む2属は、第三紀後期から第四紀にかけて急速に放散したニレのー群とともに多様化したと 考えられた。一方、種多様度の低い多数の属は、起源が古い残存要素であるニレのグループとと もにごく少数の構成種が残存してきたと推定された。

  以上のように、本学位論文は、系統解析と祖先復元に基づき、さらに寄主植物の系統情報や 化石記録と組み合わせて、タマワタムシ族の進化史を包括的に考察したものである。第三紀を通 じての寄主植物の変遷が寄生者であるタマワタムシ族の進化に大きな影響を与えてきたことを明 らかにした。こうした包括的な研究iま数少なく、学術的価値が高い。本研究の成果は、植食性昆 虫と寄主植物との間の共進化を理解するためにも、またアプラムシ防除の基礎資料としても貴重 な知見となりうる。よって、審査員一同は、佐野正和が博士(農学)の学位を受けるのに十分な 資格を有するものと認めた。

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参照

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