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愛知工業大学大学院経営情報科学研究科

博士論文

ジュニア期のスポーツタレント発掘 モデルの提唱

Proposal for Sports Talent Identification Model in Junior Period

B18802 小椋 優作 2021 年 3 月

指導教員:藤井 勝紀 教授

(2)

目次

1章 序論

第1節 研究目的………..………1

第2節 研究の意義………..…………5

2章 文献研究の概要 第1節 スポーツ選手の身体情報に関する文献研究………...8

第2節 身体成熟度に関する文献研究………..10

第3節 身長のトラッキングに関する文献研究………..…....11

第4節 運動機能のトラッキングに関する文献研究………..12

第5節 スポーツタレント発掘に関する文献研究………..………13

3章 研究方法 第1節 研究の手順………..………16

第1項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る① -種目別体格レ ーダーチャートの構築-

第2項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る② -身長に対する 体重の回帰による標準化の特徴-

第3項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る③ -競輪選手にお ける体格および運動機能の解析-

第4項 スポーツ選手のHuman Resourceを探る-身体成熟度からの解析-

第5項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析① -児童期に おける身長・運動機能要素の検証-

第6項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析② -低・高身 長のトラッキングに基づく縦断的発育パターンの検証-

(3)

第7項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析③ -高運動機 能者の縦断的トラッキング推移に関する検証-

第8項 スポーツタレントの発掘システムマネジメントの構築

第2節 対象および調査・測定方法………23 第1項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る① -種目別体格レ

ーダーチャートの構築-

第2項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る② -身長に対する 体重の回帰による標準化の特徴-

第3項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る③ -競輪選手にお ける体格および運動機能の解析-

第4項 スポーツ選手のHuman Resourceを探る-身体成熟度からの解析-

第5項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析① -児童期に おける身長・運動機能要素の検証-

第6項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析② -低・高身 長のトラッキングに基づく縦断的発育パターンの検証-

第7項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析③ -高運動機 能者の縦断的トラッキング推移に関する検証-

第8項 スポーツタレントの発掘システムマネジメントの構築

第3節 解析手法………..…29 第1項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る① -種目別体格レ

ーダーチャートの構築-

第2項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る② -身長に対する 体重の回帰による標準化の特徴-

(4)

第3項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る③ -競輪選手にお ける体格および運動機能の解析-

第4項 スポーツ選手のHuman Resourceを探る-身体成熟度からの解析-

第5項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析① -児童期に おける身長・運動機能要素の検証-

第6項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析② -低・高身 長のトラッキングに基づく縦断的発育パターンの検証-

第7項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析③ -高運動機 能者の縦断的トラッキング推移に関する検証-

第8項 スポーツタレントの発掘システムマネジメントの構築

第4節 研究の限界………..…36

第1項 対象による限界 第2項 方法による限界 第4章 検討課題Ⅰ エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る① -種目別体格レーダーチャートの構築- 第1節 本章の目的………..………38

第2節 方 法………..………40

第1項 対 象 第2項 体格項目 第3項 解析手順 第3節 結 果………..………42

第4節 考 察………..………43

第5節 まとめ………..………46

第6節 図 表………..………47

(5)

5章 検討課題 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る②

-身長に対する体重の回帰による標準化の特徴-

第1節 本章の目的………..…………55

第2節 方 法………..………56

第1項 対 象 第2項 体格項目 第3項 解析手順 第3節 結 果………..57

第4節 考 察………..………58

第5節 まとめ………..………59

第6節 図 表………..…60

6章 検討課題Ⅲ エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る③ -競輪選手における体格および運動機能の解析- 第1節 本章の目的………..………71

第2節 方 法………..……74

第1項 対 象 第2項 体格項目および運動機能項目 第3項 解析手順 第3節 結 果………..…………77

第1項 体格における競輪選手と一般者との比較 第2項 階級による体格および体力の比較 第4節 考 察………..……79

第5節 まとめ………..82

第6節 図 表………..…83

(6)

7章 検討課題 スポーツ選手のHuman Resourceを探る-身体成熟度からの解析-

第1節 本章の目的……….91 第2節 方 法……….93

第1項 対 象 第2項 体格項目 第3項 解析手順

第3節 結 果……….96 第1項 スポーツ選手と一般者の身長と体重の比較

第2項 スポーツ選手と一般者の身長と体重のMPV年齢の比較 第3項 身体的成熟度の評価チャートの構築

第4項 スポーツ選手における身長と体重のMPV年齢の差異(ズレ)

第4節 考 察……….99 第5節 まとめ………102 第6節 図 表………103 第8章 検討課題 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析①

-児童期における身長・運動機能要素の検証-

第1節 本章の目的………...108 第2節 方 法………...109

第1項 対 象

第2項 体格および運動機能項目の測定期間

第3項 体格および運動機能における縦断的加齢評価チャートの構築 第4項 解析手順

第3節 結 果………112 第4節 考 察………113

(7)

第5節 まとめ………115 第6節 図 表………116 第9章 検討課題 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析②

-低・高身長のトラッキングに基づく縦断的発育パターンの検証-

第1節 本章の目的………124 第2節 方 法………127

第1項 対 象

第2項 身長における縦断的加齢評価チャートの構築 第3項 解析手順

第3節 結 果………129 第1項 低身長者と高身長者の基礎統計値

第2項 低身長者におけるトラッキングの特徴 第3項 高身長者におけるトラッキングの特徴

第4節 考 察………131 第5節 まとめ………133 第6節 図 表………134 第10章 検討課題Ⅶ ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析③

-高運動機能者の縦断的トラッキング推移に関する検証-

第1節 本章の目的………142 第2節 方 法………143

第1項 対 象

第2項 運動機能における縦断的加齢評価チャートの構築 第3項 解析手順

第3節 結 果………145

(8)

第4節 考 察………146 第5節 まとめ………147 第6節 図 表………148 第11章 検討課題Ⅷ スポーツタレントの発掘システムマネジメントの構築

第1節 本章の目的………..………..152 第2節 ジュニア期のスポーツタレント発掘における身体的要素の要件定義...…….…154

第1項 高身長者 第2項 高運動機能者

第3節 方 法………..……….156 第1項 対 象

第2項 体格項目および運動機能項目 第3項 解析手順

第4節 結 果………..………..158 第1項 高運動機能者の抽出

第2項 「高運動機能者」兼「高身長者」の抽出

第5節 考 察………..……….159 第6節 まとめ………..……….161 第7節 図 表………..………..162 第12章 総 括

第1節 要 約………168 第2節 本研究の結論………171 第3節 今後の課題………173

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引用・参考文献 論文投稿・Proceeding 業績一覧

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第 1 章

序 論

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1 第1節 研究目的

企業や組織は,ヒト,モノ,カネ,情報といった経営資源を活用していき,これらを上手 にマネジメントしていくことで,存続・発展をしている.そして,それぞれの経営目標を効 率よく達成するために,そのマネジメントについての仕組みやルールをシステム化してい る.一般的なマネジメントシステムとしては,PDCAサイクルがあり,組織として取り組む べき課題を設定し(Plan: P),それを実行に移し(Do: D),課題解決につながったか検証し

(Check: C),必要に応じて改善をする(Act: A).これらのマネジメントシステムは,対象 によって変化する構図がある.つまり,製品やサービスといった品質を継続的に向上させれ ば,「品質マネジメントシステム」として規格化されるのである.また,環境リスクの低減 や環境への貢献を目指せば,「環境マネジメントシステム」として規格化される.

このように,ヒトが有している知識や技能,経験値等の情報資源をマネジメントしていく

Human resourceの観点から,タレントマネジメントが近年普及されている.「タレントマネ

ジメント」には,「戦略的な人材育成」と「人材の適正配置」があり,どちらも多くの組織 で最も重要な目的・用途として活用がされている(HR 総研,2019).「戦略的な人材育成」

とは,現在組織に在籍している者をどのように育成するかという「人材育成論」にあたり,

言い換えれば,「その組織に必要な能力を身につけるための教育」にあたる.そして「人材 の適正配置」とは,組織にある分野や部署において,今後活躍するであろう人物を見つけ出 したり,異なる部署に配置したりするという「人材発掘論」や「人材適正配置論」にあたる.

現在の日本の人口は,確実に減少局面にあり,働き手もそれに伴って減少している.その反 面,グローバル化は急速に進んでおり,今まで以上に,ヒトが有しているスキルや知識の配 備,人材の獲得等が,経営戦略として不可避な視点となる.実は将来リーダーと目される人 材を発掘するために,「顕在化された業績の貢献度」と「専門性の幅の広さ」の観点から判 断するという報告がある(石山ら,2017).また,メディア界のタレントに関して,そのタ

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レントの好感度は,外見的魅力や,内面的魅力,演技力,年齢の関連報告がある(浅川ら,

2009).つまり,その組織の経営戦略に適した人材を発掘,選抜するための具体的な要件設

定を行い,ヒトが有しているタレント(才能・技量)性の判断が重要な視点となる.そして,

企業によってこの要件設定や選考方法に違いはあるが,これらを踏まえた「採用(発掘)管 理システム」が規格化されている(中央職業能力開発協会,2007).

一方で,我が国におけるスポーツ界においても,「スポーツタレント発掘・育成事業(Talent Identification and Development;TID)」というスポーツ選手の「人材発掘および育成」の事業 が全国および各自治体で取り組まれている.近年,オリンピックの商業化がエスカレートし て,マスメディアに莫大な資金が投入されている.クーベルタン男爵の提唱した『スポーツ を通して心身を向上させ,さらには文化・国籍など様々な差異を超え,友情,連帯感,フェ アプレーの精神をもって理解し合うことで,平和でよりよい世界の実現に貢献する(公益財 団法人日本オリンピック,2020)』理念とは真逆なオリンピックと化している.2020年日本 で開催されるはずのオリンピックは,新型コロナウィルス感染の影響で2021年に延期され た.しかし,その開催準備のためにどれだけの莫大な費用が投入されたか,日本国民にとっ ては最悪な事態と言わざるを得ない.正にオリンピックは国際的関連ビジネスの 1 つなの である.

もちろんオリンピックのみでなく,他のプロスポーツや国際大会も同様である.2019 年 に開催されたラグビーワールドカップに伴う日本国内への経済波及効果は,6,464億円とラ グビーワールドカップでは過去最高であったと報告がされている(公益財団法人ラグビー ワールドカップ2019組織委員会,2020).これは,外国人観光客の影響も大きいが,「チー ムが強くなり,試合に勝てば,観客が増え,それによって広告価値が上がり,スポンサー収 入が増える」と報告があるように(堺,2009),日本チームの活躍も非常に大きな要因であ ろう.この論理は,国際大会だけに留まらず,日本国内のプロスポーツに関しても同様であ る(宮本ら,2007).また,チーム全体の勝率だけではなく,個人のスポーツ選手に関して,

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特定の選手が使用していた(着ていた)モノが市場で売れるようになるなど,スポーツビジ ネスにおいて,スポーツ選手という「ヒト」の経営資源は非常に重要度が高い.そのため,

スポーツにおけるマーケティングは,プロや国際大会に出場する選手のみでなく,小学・中 学・高校生世代や,中高年世代にも影響を及ぼしている.このような背景から,TID (Talent

Identification and Development)事業の実施は,持続可能な強固なアスリートを育成し,日本の

スポーツ界の繁栄,活性化や,ビジネス,経済を支える一事業となっている.

しかし,我が国の TID 事業で課題となるのが,発掘基準の曖昧さである.選手の高いパ フォーマンスは,若い選手のもつ専門的な能力を,厳密かつ科学的に選択し,長期トレーニ ングプランに則って獲得されるため(Tudor,2006),発掘は早ければ早いほど効率が高い.

しかし,我が国は旧態依然とした方法で,指導者やスカウトマンの暗黙知的な知見から発掘 が行われてたり,科学的根拠がないまま選抜したりする傾向がある.したがって,高いスポ ーツパフォーマンス水準を持続するようなタレント発掘はまだ確立されていない状況なの である.長年日本のスポーツは,学校体育やクラブ活動が競技スポーツの基盤となっていた ため,中学・高校の指導者やクラブコーチは,入部してきた者をいかによい成績を収めるよ うにするか,与えられた素材をいかに効率よく育てていくか考えなければならなかった.つ まり,日本のスポーツは企業ビジネスの分野以上に,どのようなトレーニングをすると,よ り競技力が向上するかという「育成論」の部分に重きがおかれていた.そのため,タレント 発掘の発想がなかったのである.しかし,スポーツ界も,人口減少と急速なグローバル化の 影響で,国際的な大会やプロスポーツで活躍できる人材を継続的・効率的に育成していくた めには,まずは各競技で活躍するであろうタレント性に基づいて,早期に発掘できるシステ ムを構築することが急務であろう.

そこで先ず,現在日本のトップとして活躍しているエリートスポーツ選手の特徴や特性 を把握することが重要である.スポーツタレント情報としては,体格や運動能力,心理的側 面,性格特性など様々考えられるが,特に遺伝性が高いとされている身体的要素は重要な視

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点である.そして,早期のタレント発掘のためには体格の予想が不可欠となる.しかし,現 状では体格を推定できる科学的な知見はない.そこで,発育期の身体的な特徴を把握するた めに,体格,特に身長の発育期プロセスを解析することで,成人までのトラッキング状態を 把握しようと考えた.この知見によって高身長,低身長者を予測することが可能となる.ス ポーツ選手に最重要な運動機能の発達プロセスも同様の手法で解析することで,高運動機 能者を予想することも可能となる.

そこで本研究は,ジュニア期におけるスポーツタレント発掘プログラムにおいて,エリー トスポーツ選手の身体的要素を把握し,ジュニア期における身体要素のトラッキング状況 について検討することで,将来スポーツ界で活躍する可能性の高いタレントを有した者を 発掘するための科学的検証を実施することである.そして,これまでの科学的な知見を活用 したスポーツタレント発掘システムの構築を目指し,タレント発掘現場と研究機関のそれ ぞれが連携をしながらタレント発掘をするための各システムと,それらを踏まえた「スポー ツタレント発掘モデル」を構築するものである.

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5 第2節 研究の意義

スポーツ分野におけるタレントとは「限られた時間の中で国際競争に耐えうる水準のパ フォーマンスを獲得し,それを定めた期日と時間内に最大限に発揮し,相手との競争におい て有意性を保持し続け,最終的に優位に立っている能力」と定義されている(和久,2016). 日本におけるタレント発掘の経緯について,衣笠(2018)によれば,発掘事業当初は各地方 競技団体のみが実施をしていたが,次第に地方と中央競技団体が連携をして,効果的に選手 を支援するシステムが構築されてきたと報告している.したがって,発掘事業当初より現在 のほうが,将来有望な選手を見誤らない体制ができていると思われる.

しかしながら,「発掘」について考えると,未だ不透明な部分もあり,発掘を効率的に実 施していくためのシステムが構築されているとは言い難い.現在,日本のタレント発掘は,

体力測定値や指導者の直観的評価などの情報から,個人の適性に応じたスポーツを模索す る「種目適性型」,特定のスポーツにおいて適性を見出し選抜する「種目選抜型」,アスリー ト自身の特性を活かすことができる種目に転向する「種目最適(転向)型」の3タイプで展 開されている.この中で特に種目適性型や種目選抜型は,すでに自身の特性(身体的・精神 的)について理解している大人を対象としているのではなく,発育・発達期のジュニアを対 象としていることが多い.そのため,身長差や運動能力差といった測定時のみの優劣差だけ の発掘では,成熟度の違いなのか,遺伝的な身体能力の差違なのか判断できず,本来発掘さ れるべき者が発掘されない誤情報を生じる可能性がある.つまり,日本でのタレント発掘に おいて,ジュニア期に発掘する評価システムが明確に確立されていないのが現状である.

実は,海外のタレント発掘では,成熟度を判定するのに DXA 法(dual energy X-ray absorptiometry)やMRIを用いた測定方法もあるが(Dvorak, J.,2009; Dvorak, J., 2007).しか し,日本では被爆という重大な問題を含むために実施は不可能である.また,オーストラリ アのタレント発掘では,対象者の属性を総合的に考慮するために,身体的,生理学的,心理

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的,技能といった様々な領域で測定をしているとある(The Australian Institute of Sport, 2020). 過去には,旧東ドイツは,国をあげてタレント発掘が取り組まれていたため,一般的な体力 測定実施や専門的なスポーツ種目に対する評価だけでなく,医学的検査も行っていた(高岡 ら,1994).このような海外のスポーツタレント発掘事情を鑑みれば,日本の取り組みは限 定的であり遅れているのが実情である.

本研究の意義は,このような閉塞的な日本のスポーツタレント発掘のシステムに風穴を 開けるべく,日本の現状に即した成熟度と遺伝的な身体能力の差違を明確にする手法を確 立しようとした点が1つ目の意義である.そして,この確立した手法を活用してスポーツタ レント発掘をシステム化し,研究機関とスポーツ発掘現場が連携し,それぞれの活動を円滑 にマネジメントできるモデルを提唱することが2 つ目の意義である.この 2 つの意義の提 唱の結果として,我が国のスポーツ発展に良い影響を及ぼすことができ,多くのジュニア世 代の子どもたちや障害者が自分の可能性に挑戦する機会を増やす一助となってくれればと 願うものである.

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第 2 章

文献研究の概要

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8 第1節 スポーツ選手の身体情報に関する文献研究

競技スポーツは一般的に,求められる運動様式やトレーニング内容が競技種目によって 大きく異なるため(勝亦ら,2018),競技者の形態や身体組成が,各競技間によって違いが あるという報告がいくつか存在する(Fleck, S. J.(1983),池田(2011)).また田中ら(1977) は,運動鍛錬を行う場合,筋の発達がみられると同時に体脂肪含有量は減少することが多い と述べているように,トレーニングによって,身体的特徴が異なることを指摘している.さ らに川初(1974)は,自転車競技において,力-速度関係曲線および力-パワー関係曲線は 脚筋力トレーニングによって大きな値を示す曲線になると述べており,トレーニングによ って身体的特徴のみでなく,その機能についても変化する可能性があることを示唆してい る.このような中で,いくつかの競技についてのスポーツ鍛錬者における体格や運動機能の 検討がなされている.

高校生を対象とした研究では,三浦(2018)は,身長および体重,体脂肪率,除脂肪体重 のすべての項目において,全国選手が地域選手より大きい値であったと報告している.また,

全国レベルの選手は,男女ともにほとんどの種目が身長,体重,胸囲において,同年齢層の 全国平均を大幅に上回っているという報告もある(小林,1968).

それでは,大学生ではどうであろうか.角谷ら(2013)は,大学アメリカンフットボール 選手のポジションの違いによる身体組成を調べたところ,ラインマンは体重が重いことを 報告しており,身体接触による衝撃に負けない大きな身体と体重が必要になると指摘して いる.また,長嶺ら(1966)は,大学生スポーツマンと大学生非スポーツマンの体構成を比 較すると,筋肉発達度は一般学生よりも運動部学生のほうが大きいと述べている.

また,プロといった社会人について検討している研究もある.車いすバスケットボール選 手はスポーツ活動を行っていない脊椎損傷者と比較すると,上肢の活動が行われているた め,上腕の発達があったと報告がある(増田ら,2003).山中(2018)は陸上競技長距離選

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手が高いレベルの記録を出すためには,最大酸素摂取量,ランニングエコノミー,乳酸代謝 能,そしてスプリント力を高めることが重要であると報告している.勝村ら(1986)は,全 日本男子ホッケー選手の体格・体力は他競技と比較して,敏捷性および心肺機能は優れてい るが,体格的に小柄であると報告している.さらに設楽ら(2016)は,日本人の一流競技選 手における形態を競技種目毎で比較した結果,体の太さを表す主成分得点について,男女と もに柔道選手が高く,陸上長距離選手で低い値であり,体の長さを表す主成分得点について は,男女ともバレーボール選手で高く,体操競技選手で低い値を示したと報告をしている.

加賀谷(1997)は,社会人ラグビー選手のレギュラーと非レギュラーの脚筋力を比較検討し たところ,有意差は認められず,競技力の高い選手は筋力が大きい傾向にあるものの,筋力 が大きければ競技力が高いとは言えないと報告している.設楽ら(2018)は,体操競技選手 は,競技中に身体の回転動作を行うため,各部位の質量中心が身体重心に近いほど回転速度 が上がり,競技得点の獲得に有利に働くため,身長やその他の部位の長さが短いと報告され ている.

以上のように,高校生から大人までの体格や運動機能については,様々な検討がなされて いることがわかる.しかし,多くの研究では,一般者と比較をしたり,各競技間で比較をし たりするのみにとどまっており,各競技における標準化がされていない.そのため,どの競 技が,どの程度体格が大きい(小さい)のか,運動機能が優れている(劣っている)のかな どは,詳細には明らかになっていない.また,同じ競技間による体格や運動機能についても 検討はなされてはいない.

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10 第2節 身体成熟度に関する文献研究

思春期急増期はヒトであれば必ず生起する現象であるため,ヒトの身体発育について考 える際,身体成熟度について検討することが必要となってくる.Tanner(1962)は,男児の 恥毛発現年齢と身長の思春期ピーク年齢との間に非常に高い相関を示し,女子においても 初経年齢と成熟度との密接な関係を指摘した.Lindgren(1978)は一般男女の縦断的データ に基づき,早熟,普通,晩熟の3つの成熟度別グループに分類し,身長のMPV年齢と体重 のMPV年齢の差(ズレ)が,早熟から晩熟にかけて小さくなることを報告している.また,

藤井ら(1995)は,ウェーブレット補間法によって近似された発育速度曲線を mid-growth

spurtおよび after-growth spurtの出現状況から分析を試みたところ,早熟タイプから晩熟タ

イプの方向にかけて,mid-growth spurtの出現は増加傾向を示し,逆に,after-growth spurtの 出現は減少傾向にあることが示されたと報告している.さらに,Fujii(2006)が提唱した身 長の思春期ピーク年齢(最大発育速度年齢)が生物学的パラメーターとして身体的成熟度の 指標とされている。

一方で,スポーツ現場において,この身体成熟度に関する研究は非常に重要となってくる.

一般的に,同じ学年であっても4 月生まれと翌年の 3 月生まれでは,運動能力や身体機能 に大きな差が認められ,それが各種スポーツパフォーマンスに影響を及ぼすことが推察さ れている.石塚(1993)は,競技スポーツを志向しているグループの身長の年間発育量から,

水泳,および陸上は男女とも早熟傾向にあり,体操は晩熟傾向であったと報告している.ま た,Malina(1983)は成熟の遅い女子はしばしば競技成績が良いと述べている.

以上より,ヒトの身体成熟度について,現状,藤井が用いているウェーブレット補間を用 いる方法が,方法論的にも簡便で,なおかつ,理論的にも検証がなされている.しかし,こ れらを用いて,スポーツ選手と非スポーツ選手については検討がなされていない.

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11 第3節 身長のトラッキングに関する文献研究

身長は一般的に,遺伝性が高いとされている(水野,1956;Sanchez-Andres A et al. ,1994) が,現代の科学においても,幼少期に将来的な採取身長を親の身長から予測できる確実な知 見は認められていない.このような観点から,今まで身長のトラッキングについての検討が なされてきた.藤井と松浦(1994)は,身長発育パターンに関して,17歳時の高,中,低身 長群別の成長曲線の特徴を分析した結果,高身長の者は,成熟の遅速による身長の違いは,

11歳から14才までのいわゆるPHV年齢グループ別毎のそれぞれのピーク時において生じ,

中,低身長の者は,それが 6 歳以前からすでに生じていることが認められたと報告してい る.また,Fujii(2017b)は,身長の高低の評価は学童期から青年期まで持ち越すため,学 齢期で高い身長の者はそのまま高い身長であることと報告している.高橋ら(1994)は,小 学1年時(6歳)から高専5年時(19歳)までの14年間の身長データがそろった男子学生 163名の身長変動を調査したところ,小学1年時に低身長と判定された者が,中学3年時で も低身長と判定されたのは57.6%であったと報告している.一方で,小学1年時に高身長と 判定された者が、中学3年時でも高身長と判定されたのは51.5%であったと報告している.

また,村松ら(1988)も,身長計測値をPercentile Methodによって大群,中群,小群と分け,

加齢による変化を調査したところ,小学1 年時,中学 3年時ともに小群と判定された割合 は,男子では77.7%で,女子では75.5%であり,高い割合で,低身長の者は低身長と判定が されていた.一方で,大群と判定された割合は,男子では70.3%で,女子では66.1%であり,

半数以上が同じ群であったと報告している.

以上のことを踏まえると,身長のトラッキングについて検討する際,個々の身長発育を検 証することはもちろんのこと,標準から逸脱した者を検証する必要も考えられる.しかし,

その検証方法は様々で確立がなされていないため,明確な基準値を踏まえた上で判定をし,

身長トラッキングについて検討する必要がある.

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12 第4節 運動機能のトラッキングに関する文献研究

スポーツタレントについて考える際,運動機能がジュニア期からどのように発達してい くか検証することは非常に重要な要素である.

Branta et al.(1984)の,5歳から10歳までの運動能力におけるトラッキング調査では,男

児の腕の柔軟性,立ち幅跳び,垂直跳びおよびダッシュスピードにおいて,5歳と10歳の 間に中程度の相関関係が認められ,女児では5歳から10歳までのシャトルランにおいて中 程度の相関関係が認められたと報告している.Keogh(1969)は,6歳から9歳までの立ち 幅跳びのトラッキング調査の結果,相関係数は男児で0.60,女児で0.70であったと報告を している.Glassow et al.(1960)の報告においても,6歳から12歳までの女児の立ち幅跳び およびダッシュスピードのトラッキング調査の結果,相関係数は立ち幅跳びで0.74,ダッシ ュスピードで0.70であったとしており,Szopa(1991)は,7歳から14歳までの握力のトラ ッキング調査の結果,男児で0.44,女児で0.35であったとそれぞれ報告している.

我が国における運動機能のトラッキング調査は,数は少ないものの,春日ら(2016)が年 長時と小学6年時における体力のトラッキングに関して報告をしている.その調査の結果,

男児は全ての関連能力・機能間で有意なトラッキングが認められ,中でも運動能力要素の走 力(r = 0.840),跳躍力(r = 0.592),および投力(r = 0.673),そして体力総合(r = 0.717)に おいては,顕著にトラッキング度合いが高かったと報告をしており,女児は,柔軟性,走力,

投力,敏捷性および体力総合の項目で有意なトラッキングが認められ,中でも走力(r = 0.562)

とらい力総合(r = 0.534)に関しては,トラッキング度合いが高かったとしている.

以上のように,運動機能に関するトラッキングに関する研究は,様々な年齢間ではあるが,

国内外で実施されている.しかし,これらの研究は,ある年齢時点とある年齢時点の相関で しか検討がなされておらず,時系列的な検討がなされていないのが現状である.

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13 第5節 スポーツタレント発掘に関する文献研究

スポーツタレント発掘は,諸外国でも実施がなされており,そのシステムや課題点なども 報告がなされている.高岡ら(1994)は,今は亡きドイツ民主共和国のタレント発掘は,社 会主義国家であり,国家的な事業として実施ができていたため,徹底したプログラムがあっ たと報告をしている.その方法として,一般的な第一選考として学校の体育授業で測られた データがスポーツ連盟本部に集積され,第二選考では一般体力と特定スポーツの力量が測 られ,第三選考段階で専門的なスポーツ種目についての能力が測られるというものであっ た.さらにそれ以外にも,医学的検査や試行的トレーニングがあったとしている.また,こ のドイツ民主共和国とならんで,社会主義国家として「スポーツ大国」を確立した,旧ソヴ ィエト連邦においても報告をしている.1937 年には,自らの「体力」の状況が把握できる ように,国民全体が「G. T. O」という体力測定制度に参加する政策が決定され,年齢別に構 成された走,跳,投,射撃,スキー,体操といった種目のテストを受けることになったとし ている.そして,これらのテストにおいて,各年齢段階で秀でた記録を残した者は,次のス テップのコースに入っていくというものである.しかし,これらの方法について,単一のフ ァクターだけでは,子どもらのもつ能力を見抜くことは困難なことや,その能力がスポーツ 能力とどのような関連性があるかなどについても様々な件会があることから,より一層の 研究の伸展と年齢縦断的研究の成果が期待されると報告をしている.

世界では,上記のように昔から,各国々の方法として実施がなされてきた.それでは,我 が国ではどうであろうか.日本のスポーツタレント発掘は現在,大規模や小規模の違いはあ るが,全国各地で実施がされている.しかし,その方法や課題点など,それに応じていくつ か存在している.

ある県では,サッカーに関して,県内の7つのスクールに所属する選手の中から,現場の コーチが選抜して推薦する方法で,タレント発掘を行ったが,選抜した基準が各所属コーチ

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14

で違いが生じたとしている(竹内ら,2009).石塚(1989)は,タレント発掘の現状と課題 点として,個々の選手の能力すべてを評価することは不可能であるが,トレーニングによっ て変化する部分と,遺伝的要因の大きい形態学的な部分を分けて考える必要あるとしてい る.また,現在のタレント発掘方法は,テスト結果によって将来高い競技力を残せるであろ う選手を徐々に絞っていくものであると報告をしている.さらに我が国のタレント発掘に 関する取組変遷として,まず導入期として,ブロック選考型,オーディション型,トライア ウト型,競技会選考型といったように,各競技団体独自で実施する発掘が実施されてきた.

次に成長期として,地方公共団体による地域タレント発掘・育成事業の立ち上げが行われ,

成熟期として,政策に基づいた国レベルでのタレント発掘・育成が実施されてきたとしてい る(衣笠ら,2018).

以上のように,スポーツタレント発掘は,国内外で実施がされてきており,特に社会主義 国家であった国々などは,国家レベルで非常に厳密に取り組まれてきた.日本も最近になっ てタレント発掘を国として実施がされてきており,地域と国がどのように連携していくか 整備がされてきた.しかし,特に発育・発達期であるジュニア期を対象とした発掘方法は,

成熟度や各タレントにおけるトラッキング評価の観点から,未だシステムの構築が確立さ れていないのが現状である.

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15

第 3 章

研究方法

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16 第1節 研究の手順

本研究は,次のような手順に従って進める.まずは,スポーツ選手の身体的タレント要素 を把握するために,日本国内のプロやトップリーグで活躍している選手,もしくは国際大会 などに出場している選手を対象に,体格および運動機能の特徴を明らかにする.続いて,小 学 1 年生から高校 3年生までの身長発育が縦断的に測定された者を対象に,スポーツ選手 における発育パターンの特徴を検証し,生理学的成熟度を考慮したHuman Resourceを明ら かにする.次に,発育発達期における身体のトラッキング状況を把握することで,ジュニア 期におけるタレントの評価指標を検討する.そして最後に,タレント発掘現場とタレント分 析機関との連携を基盤としたスポーツタレントの発掘モデルを提唱する.

1項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る①

-種目別体格レーダーチャートの構築-

日本人エリートスポーツ選手として,国内のプロやトップリーグに所属,もしくは日本 代表として世界大会に出場している男女選手を対象とし,一般者として,一般大学生を 対象とする.これらの対象の身長,体重,生年月日情報を収集する.得られた身長,体 重,生年月日などから,BMI,体表面積,基礎代謝量を算出する.

対象群の身長,体重,BMI,体表面積,基礎代謝量データから,平均値と標準偏差を用 いて5段階の評価基準を構築する.そして,5段階の評価基準を基に,各競技種目にお ける“体格”のレーダーチャートを作成する.

作成された“体格”のレーダーチャートに,各競技種目における各項目の統計値を適用 し,一般者との身体評価バランスの違いを検討する.そして,各競技における身体バラ ンスの評価基準の構築を模索する.

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2項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る②

-身長に対する体重の回帰による標準化の特徴-

3項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る③

-競輪選手における体格および運動機能の解析-

日本人エリートスポーツ選手として,国内のプロやトップリーグに所属,もしくは日本 代表として世界大会に出場している男女選手を対象とし,対象の身長,体重情報を収集 する.

身長に対する体重の最小二乗近似多項式を適用し,次数の妥当性を検討する.妥当性に ついては,赤池情報基準(AIC)を用いて,最適な次数はAIC値が最も小さい値を採用 する.

身長に対する体重の回帰傾向を標準化することで,エリートスポーツ選手の競技特性に 適した体型,体格パターンの傾向を検討する.

競輪オフィシャルサイトに掲載されている現役競輪選手の身長,体重,生年月日,胸囲,

太股,背筋力,および肺活量データを収集する.そして比較として,一般大学生の身長,

体重,生年月日も収集する.さらに,得られた身長,体重,生年月日などから,BMI,

体表面積,基礎代謝量を算出する.

競輪選手と対照群の体格を比較するために,男女ともに体格項目(身長,体重,生年月 日,胸囲,太股)において,対応のない母平均の差の検定を行う.さらに,一般者を基 準とした5段階の評価基準を構築し,5段階の評価基準をもとにした競輪選手における

“体格”のレーダーチャートを作成する.

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4項 スポーツ選手のHuman Resourceを探る

-身体成熟度からの解析-

対応のない母平均の差の検定結果と評価チャートから,競輪選手の身体バランスおよび 特徴を明らかにする.

体格および体力による競技成績を把握するため,階級別(SS級,S1級,S2級,A1級,

A2級,A3級)で,一元配置分散分析および,下位検定としてTukey検定を実施する.

有意水準は5%未満.さらに,全競輪選手を基準とした5段階の評価基準を構築し,5段 階の評価基準をもとにした階級別の“体格”および”体力”のレーダーチャートを作成す る.

一元配置分散分析の結果と評価チャートから,競輪選手の階級別による身体バランスお よび特徴を明らかにする.

スポーツ選手群として,高等学校の全国大会に出場した3年生男女を対象とし,比較と して,運動に特別な戦績を有さない3年生男女を対象とする.そして,この対象者の小 学1年生から高校3年生までの身長と体重データを収集する.

得られたデータ対してウェーブレット補間法(Wavelet Interpolation Method:WIM)

を適用し,発育現量値曲線を導き出す.そして,発育現量値を微分して導かれた発育速 度曲線から最大発育速度(Maximum Peak Velocity:MPV)を特定し,そのときの年齢を MPV年齢とする.

スポーツ選手群の体格について整理をするために,スポーツ選手群と一般者の身長およ び体重のMPVとMPV年齢について対応のないt検定を用いて比較を行う.

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5項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析①

-児童期における身長・運動機能要素の検証-

スポーツ選手の生理学的成熟度を検討するために,MPV年齢とMPVを各群で集約し,

比較を行う.さらに,一般対照群における身長のMPV 年齢の平均値と標準偏差から,

5 段階の評価基準を構築し,評価チャートに基づき,スポーツ選手群個々人の MPV 年 齢の頻度分布を導く.

スポーツ選手における身長と体重の MPV 年齢の差について検討するために,体重の MPV年齢から身長のMPV年齢を引き,身長と体重のMPV年齢の差を算出し,比較す る。

身長および体重の MPV と MPV 年齢との比較,MPV 年齢の頻度分布,身長と体重の MPV年齢の差の検証から,生理学的成熟度を考慮したHuman Resourceを明らかにする.

小学生男女子を対象に,小学1年生から小学6年生まで体格(身長,体重)および運動 機能(50m走,立ち幅跳び,ソフトボール投げ)を縦断的に測定する.

文部科学省から公表されている体力・運動能力調査結果報告書のデータから,各年次 における体格および運動機能項目の平均値と標準偏差を算出する.そして,標準偏差 値の±0.5SD値,±1.5SD値を算出する.

得られた全国平均値および各標準偏差値に対してウェーブレット補間法(Wavelet

Interpolation Method:WIM)を適用し,各測定項目の経年的スパン評価チャートを構築

する.

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6項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析②

-低・高身長のトラッキングに基づく縦断的発育パターンの検証-

構築された経年的スパン評価チャートに対して,測定によって縦断的に得られた個々 のデータを適用する.

同じ評価帯をそのまま推移,移行して発育する場合は「トラッキング有」,異なった評 価帯に移行して発育していれば「トラッキング無」と判定をして,身体的要素(体 格・運動機能)のトラッキング現象を明らかにする.

ジュニア男女子を対象に,小学1年生から中学3年生まで身長を縦断的に測定する.

対象となった者の中から,中学 3 年時における身長の平均値と標準偏差を算出し,

M+2.0SD以上の者を高身長者,M-2.0SD以下の者を低身長者と判定し分析対象とした.

身長の縦断的加齢発育評価チャートを構築するために,本研究で得られているデータを 基に,各学年における身長のM,M±0.5SD,M±1.5SD値に対して,ウェーブレット補間 モデルを適用し,発育現量値曲線を描く.

構築された評価チャートに対して,個々の縦断的データを適用し,そのデータがどのよ うに評価帯を変動するか分析する.

高身長者・低身長者の縦断的データが,どのように評価帯を変動するか分類し,低・高 身長のトラッキング現象を明らかにする.

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7項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析③

-高運動機能者の縦断的トラッキング推移に関する検証-

8項 スポーツタレントの発掘システムマネジメントの構築

ジュニア男女子を対象に,年少時から小学6年生(小学1,2年生を除く)まで運動機 能[握力,長座体前屈,50m走(幼児期は25m走タイムを2倍にした値を用いた),立 ち幅跳び,ソフトボール投げ]を縦断的に測定する.

対象となった者の中から,年少時における各運動機能の平均値と標準偏差を算出し,

M+0.5SD以上の者を高運動機能者と判定し分析対象とした.

各運動機能の縦断的加齢発達評価チャートを構築するために,本研究で得られているデ ータを基に,各学年における各運動機能のM,M±0.5SD,M±1.5SD値に対して,ウェー ブレット補間モデルを適用し,発達現量値曲線を描く.

構築された評価チャートに対して,測定によって縦断的に得られた個々の縦断的データ を適用する.

同じ評価帯をそのまま推移,移行して発達する場合は「トラッキング有」,異なった評価 帯に移行して発達していれば「トラッキング無」と判定をして,高運動機能者のトラッ キング現象を明らかにする.

タレント発掘事業に参加した小学2年生~小学5年生の男女子を対象として,身長,

反復横跳び,25m走,4方向ステップのデータ情報を収集する.

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各運動機能の縦断的加齢発達評価チャートを構築するために,本研究で得られている データを基に,各学年における運動機能のM,M±0.5SD,M±1.5SD値に対して,ウェ ーブレット補間モデルを適用し,発育現量値曲線を描く.

作成した各運動機能項目のスパン評価チャートに各対象者のデータを適用し,M+0.5SD 以上と判定された者を高運動機能者群として抽出する.

文部科学省から公表されている学校統計保健調査の小学 2 年生~小学 5 年生の身長の 平均値と標準偏差を使用し,平均値±0.5SD,平均値±1.5SDを算出し,5 段階評価基 準を作成する.

5段階評価基準に基づき,高運動機能者の中からM+0.5SD以上と判定された者を高 身長者として抽出する.

ジュニアの中の「高運動機能者」兼「高身長者」の発掘を検討することで,ジュニア期 スポーツ選手における発掘システムのマネジメントモデルを試案する.

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23 第2節 対象および調査・測定方法

1項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る①

-種目別体格レーダーチャートの構築-

対象は,エリートスポーツ選手群として,日本のトップリーグに所属もしくは,日本代表 として世界大会に出場している男子選手815名(バレーボール141名,サッカー:345名,

競泳:61名,テニス:37名,ハンドボール:178名,陸上・短距離:28名,陸上・長距離:

25名)および女子選手740名(バレーボール141名,サッカー:249名,競泳:81名,テ ニス:35名,ハンドボール:160名,陸上・短距離:26名,陸上・長距離:48名)の計1555 名とした.また,対照群として,一般男子大学生16339名と一般女子大学生5900名とした.

男女エリートスポーツ選手の体格項目として,本研究ではまず,長育を代表する「身長」

と量育を代表する「体重」を選択し,各競技種目のサイトに掲載されている情報を収集した.

また各個人の生年月日も収集された.そして,これらの項目からBMI,体表面積,および基 礎代謝量を算出し,これらも体格項目として扱った.体表面積においては日本人の実測値に 基づいて作られ,栄養所要量表でも採用されている藤本ら(1968)の算出式を用いた.また,

基礎代謝量においては,選手の生年月日から当時の年齢を算出し,身長,体重,および年齢

からGanpule et al.(2007)が提唱している算出式を用いた.以下にそれぞれの算出式を示す.

「BMI」 = 体重[kg]÷身長[m]2×100

「体表面積」 = 88.83×体重[kg]0.444×身長[cm]0.663

「基礎代謝量」 = (0.1238+0.0481×体重[kg]+0.0234×身長[cm]-0.0138×年齢-0.5473)

×1000÷4.186

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24

そして,対照群における一般大学生の体格項目においても,身長,体重,および年齢が測 定され,これらの項目を用いて,BMI,体表面積,および基礎代謝量を算出した.

2項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る②

-身長に対する体重の回帰による標準化の特徴-

対象は,日本のトップリーグに所属,もしくは日本代表として世界大会に出している男子 選手1577名(バスケットボール:353名,バレーボール:141名,サッカー:345名,野 球:345名,競泳:61名,テニス:37名,ハンドボール:178名,ホッケー:64名,陸上 短距離:28名,陸上長距離:25名)と女子選手1117名(バスケットボール:63名,バレ ーボール:141名,サッカー:249名,ソフトボール:45名,競泳:81名,テニス:35名,

ハンドボール:160名,ホッケー:269名,陸上短距離:26名,陸上長距離:48名)の計 2694名とした.

男女エリートスポーツ選手における形態として,長育を代表とする「身長」,量育を代表 する「体重」を選択した.

3項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る③

-競輪選手における体格および運動機能の解析-

対象は,ホームページ(競輪オフィシャルサイト,2018)に掲載されている現役競輪選手 の中で,身長,体重,生年月日,胸囲,太股,背筋力,および肺活量のすべてのデータが揃 っていた男子選手1681名(S級S班:9名,S級1班:173名,S級2班:363名,A級1 班:377名,A級2班:387名,A級3班:372名)と女子選手L級1班99名とした.対照 群の一般者として,我が国の肥満率は,20歳代後半から30歳代前半に増加するという報告

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(田浦,2009)があることから,身長の発育と肥満による体重増加のバイアスができる限り 小さくなるよう大学生を対象とした.そのため本研究で用いたデータは,2008 年度~2016 年度に大学生であった健康な男子学生15931名と女子学生5776名とした.また,現役競輪 選手および大学生ともに,下記に示す各項目において,平均+3SD 以上と平均-3SD 以下 の者は外れ値としてみなし,本研究では取り扱わなかった.

本研究で対象とした現役競輪選手の体型項目として,身長,体重,胸囲(男子選手のみ), および太股の太さを選択し,体力項目として背筋力および肺活量を選択し収集した.同様に,

一般者である某大学生の身長および体重の体型項目を収集した.そして,これらの項目から,

それぞれBMI,体表面積,および基礎代謝量を算出した.体表面積においては,藏澄ら(1994) が現在の日本人青年男女に適合し,誤差および誤差の変動が少なくなるように提案された 算出式を用いた.また,基礎代謝量においては,身長,体重,および年齢から算出される Ganpule et al.(2007)が提唱している算出式を用いた.以下にそれぞれの算出式を示す.

「BMI(kg/m2)」 = 体重 [kg]÷身長 [m]2

「男子体表面積(cm2)」= 53.189×体重[kg]0.362×身長[cm]0.833

「女子体表面積(cm2)」= 110.529×体重[kg]0.445×身長[cm]0.627

「男子基礎代謝量(kcal/日)」= ((0.1238+(0.0481×体重 [kg])+(0.0234×身長 [cm])‐ (0.0138×年齢- 0.5473))×1000÷4.186

「女子基礎代謝量(kcal/日)」= ((0.1238+(0.0481×体重 [kg])+(0.0234×身長 [cm])‐

(0.0138×年齢- 0.5473×2))×1000÷4.186

4項 スポーツ選手のHuman Resourceを探る

-身体成熟度からの解析-

(36)

26

対象は,運動選手群として高等学校の全国大会(インターハイ,国体,甲子園大会等)に 出場した某高等学校の男子3年45名(バスケットボール:8名,バレーボール:2名,野 球:8名,陸上競技:16名,ラグビー:5名,テニス:6名)と女子3年50名(バスケット ボール:15名,ハンドボール:8名,バレーボール:9名,陸上競技:12名,ソフトボール:

4名,水泳:2名)である.加えて彼らは,運動およびトレーニング実施状況が小学5年か ら高校3年まで,週に6日,1日3~4時間であることが,運動実施状況のアンケート調査 とインタビュー調査により正確に確認されている.

そして,一般対象群は運動で特別な戦績を有さない某公立高等学校の男子3年85名と女 子3年85名とした.彼らにおいても,運動およびトレーニング実施状況が小学5年から中 学3年まで,週3日以内、1日2時間以内程度で,高校ではほとんど運動は行っておらず,

地区大会レベルへの出場経験もない者であることが,運動実施状況のアンケート調査から 確認されている.

調査項目はスポーツタレントの人的資源となる「身長」と「体重」とした.本研究では身 長と体重の発育プロセスから体格の発育パターンを検討していくため,各対象者における 健康診断票の追跡調査を行い,1983年(6歳時)から1994年(17歳時)までの身長と体重 の縦断的測定値を得た.

5項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析①

-児童期における身長・運動機能要素の検証-

対象は2008年度に小学1年生、2013年度に小学6年生となるS県内の某小学生男子17名 と女子12名の合計29名とした.対象者の保護者には事前に調査および測定の内容を説明し,

これに対するインフォームドコンセントを得た.また,対象者は急性および慢性の疾患を患 っている者はいなかった.これらの対象者に対して小学1年生時点での年齢軸を構成するた

(37)

27

めに,生年月日を考慮して,測定時点での正確な年齢を算出した.

本研究で取り上げた小学生児童の測定項目は,体格項目として身長と体重,運動機能測定 項目として基礎的動きの代表である走,跳,投能力を評価する50m走,立ち幅跳び,ソフト ボール投げとした.なお,これらの運動機能測定方法は,文部科学省が全国的に行っている 新体力テストを参考に行った.また,これらの測定を小学 1年生時から小学 6年時の春(4 月)と秋(10月)の年2回(小学6年時のみ春の1回のみ),縦断的に実施された.そのた め,測定された体格と運動機能データは縦断的発達データとして得られたものである.

6項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析②

-低・高身長のトラッキングに基づく縦断的発育パターンの検証-

対象は,1994年度および1995年度に生まれた者で,小学1年時から中学3年時までの連 続した身長発育データが得られた男子4922名と女子4685名とした.

そして本研究では,高身長の発育状況について調査をするために,この対象の中から,中 学3年時における身長の平均値(Mean: M)と標準偏差(Standard Deviation: SD)を算出し,

M+2.0SD以上の者を高身長者と判定,M-2.0SD 以下の者を低身長者と判定し,分析対象と

した.

7項 ジュニア期における身体Resourceのトラッキングシステム解析③

-高運動機能者の縦断的トラッキング推移に関する検証-

対象は,年少時から小学6年時(小学1,2年生を除く)までの連続した運動機能発達デ ータ[握力,長座体前屈,50m走(幼児期は25m走タイムを2倍にした値を用いた),立ち 幅跳び,ソフトボール投げ]が得られた男子102名と女子106名とした.

そして本研究では,高運動機能の発達状況について調査をするために,この対象の中から,

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28

年少時における各運動機能の平均値(Mean: M)と標準偏差(Standard Deviation: SD)を算 出し,M+0.5SD以上の者を高運動機能者と判定し,分析対象とした.

8項 スポーツタレントの発掘システムマネジメントの構築

対象は,2006年度~2012年度で某県のタレント発掘事業に参加した小学2年生~小学5 年生の男子2004名(2年:534名,3年:615名,4年:485名,5年:370名)と女子1453 名(2年:331名,3年:430名,4年:394名,5年:298名)であった.そして,これらの 対象者の“身長”と運動能力項目として“反復横跳び”,“25m走”,“4方向ステップ”の3 項目のデータを本研究では用いた.

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29 第3節 解析手法

1項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る①

-種目別体格レーダーチャートの構築-

対照群とエリートスポーツ選手群全般および各種目の選手群とを比較するために,各項 目において体格のレーダーチャート(以下:体格チャート)を構築し,規格化を行った.

体格チャートの構築法において,対照群の各項目における統計値を用いて5段階平均値評 価法を適用し,その評価基準に基づき,各競技種目における各項目の値がその基準値から どの程度差があるか算出した.そして,その値を体格チャートにプロットした.そして,

各項目の判定基準として,算出された評価値が+1.5SDより大きい場合は“大きい”,+0.5SD

~+1.5SDの場合は“やや大きい”,-0.5SD~+0.5SDの場合は“普通”,-0.5SD~-1.5SDの場 合は“やや小さい”,そして-1.5SDより小さい場合は“小さい”と評価することとした.

2項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る②

-身長に対する体重の回帰による標準化の特徴-

エリートスポーツ選手において,身長に対する体重の最小二乗近似多項式を適用し,次数 の妥当性を検討した.次数の妥当性については,赤池情報量基準(AIC)を用いて,最適な 次数はAIC値が最も小さい値を採用した.

3項 エリートスポーツ選手における身体的タレント要素を探る③

-競輪選手における体格および運動機能の解析-

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競輪選手と対照群の体型とを比較するために,男女ともに体型項目において,対応のない 母平均の差の検定を用いた.さらに,対照群である一般者を基準とした場合,競輪選手がど のような体型をしているか検討するために,各項目において体型のレーダーチャートを構 築し,標準化を行った.レーダーチャートの構築法において,対照群の各項目における平均 値と標準偏差(SD)を用いて 5段階平均値評価法を適用し,その評価基準に基づき,競輪 選手における各項目の値がその基準値からどの程度差があるか算出し,レーダーチャート にプロットした.そして,各項目の判定基準として,算出された評価値が+1.5SD より大き い場合は“大きい”,+0.5SD~+1.5SDの場合は“やや大きい”,-0.5SD~+0.5SDの場合は“普

通”,-0.5SD~-1.5SDの場合は“やや小さい”,そして-1.5SDより小さい場合は“小さい”と

評価することとした.

また,競輪選手がどのような体型や体力をもち合わせることで良い成績が残すことがで きるようになるか,育成の観点から検討するために,人口が多く階級が細かく分かれている 男子を対象に分析した.分析方法として,各階級の体型および体力に違いがあるか分析する ために,一元配置分散分析を用いた.さらに群間に有意な差が認められた場合は,Tukey法 により多重比較検定を行った.そして,全競輪選手を基準とした場合,各階級の選手がどの ような体型や体力要素をもち合わせているか検討するために,上記と同様にレーダーチャ ートを構築し,各階級の標準化を行った.各項目の基準となるレーダーチャートの値は,全 男子競輪選手の平均値とし,その基準値から各階級の選手がどの程度差があるか算出した.

以下にレーダーチャート作成時の算出式を示す.

4項 スポーツ選手のHuman Resourceを探る

-身体成熟度からの解析-

ウェーブレット補間法(Wavelet Interpolation Method:WIM)は,与えられた発育デー

(41)

31

タについてウェーブレット関数を用いることで,真の発育曲線を近似的に記述することが できる(藤井ら,1994;藤井と山本,1995;藤井と松浦,1996;藤井と川浪,1998;Fujii and

Matsuura,1999).そのため,本研究では,運動選手群および一般対照群の6歳から17歳ま

での身長と体重の発育現量値に対してウェーブレット補間法を適用し,発育現量値曲線を 導き出した.次に,その発育現量値を微分して導かれた発育速度曲線から最大発育速度(以 下 MPV : Maximum Peak Velocity)を特定し,その時の年齢をMPV年齢とした.思春期ピー ク年齢は成熟度の指標として生物学的パロメーターに成り得るため,その特定された MPV 年齢を運動選手群と一般対照群の成熟度として扱った.

これらをふまえた上で,まず,スポーツ選手の体格について整理をするために,運動選手 群と一般対照群の身長および体重の MPVとMPV 年齢について対応のないt検定を用いて 比較を行った.

そして,スポーツ選手の生理学的成熟度を検討するために,ウェーブレット補間法によっ て導き出された各項目のMPV年齢とMPVを各群で集約し比較を行った.しかし,身長と 体重のMPV年齢を単純に運動選手群と一般対照群で比較したとしても,平均的な傾向とし て捉えられるだけであるため,実際のデータの成熟度別の分布を解析する必要がある.その ためにはまず,身体的成熟度を判定する評価チャートを構築しなければならない.そこで,

本研究で導かれた一般対照群における身長のMPV年齢の平均値と標準偏差から,5段階平 均値評価法を採用し,身体的成熟度の評価チャートを構築した.そして,この評価チャート に基づき,運動選手群個々人のMPV年齢の頻度分布を導いた.

最後に,スポーツ選手における身長と体重のMPV年齢の差(ズレ)について検討をする ために,体重のMPV年齢から身長の MPV年齢を引き,身長と体重の MPV年齢の差を算 出し,比較した.そして,身長と体重のMPV年齢の出現順序からも検討を行った.

表 1  各競技におけるスポーツ選手の体格サイトのリスト
表 4 各 群 にお ける 分析 項目 の 平均 値お よび 標準 偏差
図 2   バレーボール選手群における体格チャートと統計値
表 3-1   男子における身体的成熟度によって分類された度数分布
+7

参照

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