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論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

論文内容の要旨

近年,非アスリートを対象にした研究ではあるが,Trapnell and Campbell1999)が提唱した反すう特 性・省察特性が注目されるようになってきた.反すう特性は,自己への脅威,喪失,不正によって自己に 注意を向けやすい特性と定義されており,省察特性は,自己に対する好奇心や興味によって自己へ注意 を向けやすい特性と定義されている.本研究では,大学生アスリートを対象に,反すう特性・省察特性が メンタルヘルスに与える影響とそのメカニズムについて,自己評価の指標である状態自尊感情に着目し て量的・質的研究法を用いて検討することを目的とした.この目的を検討するために,本研究では3つの 研究を行った.

研究1では,反すう特性・省察特性はストレス反応,および主観的幸福感に異なる影響を与えるという モデルについて,構造方程式モデリングを用いて検討した.反すう特性はストレス反応に正の影響を,主 観的幸福感に負の影響を与え,一方の省察特性はストレス反応に負の影響を,主観的幸福感に正の影響 を与えていたことが明らかにされた.これらのことから,本研究で設定した仮説モデルは支持された.

(本 籍) 山 越 章 平(千葉県)

類 博 士(スポーツ科学)

号 甲 第 29 号

日 平成

30

2018

)年

3

17

学位授与の要件 大阪体育大学大学院学位規程第4条第1項該当

研 究 科 名 スポーツ科学研究科(博士後期課程)スポーツ科学専攻

論 文 題 目 大学生アスリートにおける反すう特性・省察特性がメンタルヘ ルスに与える影響とそのメカニズム

-状態自尊感情に着目して-

審 査 委 員 主 査 教 授 土 屋 裕 副 査 教 授 前 島 悦 教 授 荒 木 雅

(2)

研究2では,反すう特性・省察特性がストレス反応,および主観的幸福感に与える影響は,状態自尊感 情が媒介するというモデルについて,構造方程式モデリングを用いて検討した.反すう特性は状態自尊 感情に負の影響を与え,状態自尊感情はストレス反応に負の影響を,主観的幸福感に正の影響を与えて いたことが示された.また反すう特性は直接的にストレス反応に正の影響を,主観的幸福感に負の影響 を与えていた.一方の省察特性は,状態自尊感情に正の影響を与えていたことから,間接的にストレス反 応に負の影響を,主観的幸福感に正の影響を与えていた.また省察特性は,ストレス反応に負の影響を,

主観的幸福感に正の影響を与えていた.これらのことから,本研究で設定したモデルは支持された.

研究3では,「反すう特性が高い大学生アスリートの状態自尊感情は,どのようにして低下するのか」

「省察特性が高い大学生アスリートの状態自尊感情は,どのようにして向上するのか」という 2 つのリ サーチクエスチョンに対して,質的研究法を用いて検討した.1つ目のリサーチクエスチョンに対しては,

「反すう特性が高い大学生アスリートは,[Ca1他者と比べて自身が劣っていることに注目する]ことか ら,[Ca2他者との競争・敵対関係]を構築してしまい,その結果[Ca3居場所の喪失]を感じることで,

最終的に状態自尊感情が低下する」という仮説が生成された.2つ目のリサーチクエスチョンに対しては,

「省察特性が高い大学生アスリートは,[Ca1他者との関わりから自己を捉え直す]ことから,[Ca2他者 との協力・友好関係]を構築することができ,その結果[Ca3居場所の発見・追求]に至り,最終的に状 態自尊感情が向上する」という仮説が生成された.以上から,反すう特性・省察特性によって,自己(他 者と比べて自身が劣っていることに注目する/他者との関わりから自己を捉え直す)・他者(他者との競 争・敵対関係/他者との協力・友好関係)・集団(居場所の喪失/居場所の発見・追求)に対する捉え方が違 うことから,状態自尊感情のレベルも異なることが示唆された.

以上から,反すう特性・省察特性が大学生アスリートのメンタルヘルスに異なる影響を与えており,そ こには自己・他者・集団に対する捉え方,状態自尊感情が媒介していることが示唆される.本研究の結果 から,大学生アスリートにおけるメンタルヘルス低下の予防および効果的な介入方法として以下の点が 提言できる.1つ目として,反すう特性が高いアスリート,または省察特性が低いアスリートはメンタル ヘルスに関する問題を抱えやすいことから,大学生アスリートの反すう特性・省察特性を測定すること で,メンタルヘルスに関する問題の早期発見につながるだろう.2つ目として,Trapnell and Campbell(1999)

が提唱した反すう特性と省察特性は比較的安定したものであるため,変容させることは困難であること から,反すう特性が高い,または省察特性が低い大学生アスリートに対して,状態自尊感情の変容に焦点 化した介入を行うことにより,効果的にメンタルヘルスを向上させる可能性があるだろう.3つ目として,

反すう特性が高いアスリート,または省察特性が低いアスリートの状態自尊感情を高めるには,自己・他 者・集団に対する捉え方を変容させることが効果的であり,その結果メンタルヘルスの低下につながる ことが示唆された.

(3)

審査結果の要旨

(論文審査)

本研究の目的は、大学生アスリートにおける反すう特性・省察特性といった性格要因がメンタルヘルス に与える影響と、そのメカニズムについて検討することであった。研究1では、大学生アスリート182 に対し質問紙調査を行った結果、反すう特性はストレス反応に正の影響を、主観的幸福感に負の影響を 与え、一方の省察特性はストレス反応に負の影響を、主観的幸福感に正の影響を与えていたことが明ら かにされた。

研究 2では、介在変数として状態自尊感情に着目し、大学生アスリート 280名に対し質問紙調査を行 った。共分散構造分析の結果、反すう特性は状態自尊感情に負の影響を与え、状態自尊感情はストレス反 応に負の影響を、主観的幸福感に正の影響を与えていたことが示された。また反すう特性は直接的にス トレス反応に正の影響を、主観的幸福感に負の影響を与えていた。一方の省察特性は、状態自尊感情に正 の影響を与えていたことから、間接的にストレス反応に負の影響を、主観的幸福感に正の影響を与えて いた。また省察特性は、ストレス反応に負の影響を、主観的幸福感に正の影響を与えていた。

研究 3では、このメカニズムを解明するために6 名の大学生アスリートに対して半構造化インタビュ ー調査を行った。その結果、それぞれの性格特性が自己に対する捉え方(他者と比べて自身が劣っている ことに注目する/他者との関わりから自己を捉え直す)、他者に対する捉え方(他者との競争・敵対関係/他 者との協力・友好関係)、集団に対する捉え方(居場所の喪失/居場所の発見・追求)に影響を与え、それ により状態自尊感情の向上・低下がもたらされるという概念図を作成することができた。

以上から、反すう特性・省察特性が大学生アスリートのメンタルヘルスに異なる影響を与えており、そ れは状態自尊感情が媒介していることを実証した。また、そこには自己・他者・集団に対する捉え方が関 与している可能性を見出すことができた。

論文審査の結果、対象を大学生アスリートにした理由、性格の定義、状態自尊感情に着目した理由、質 的研究の位置づけ(質問方法や仮説生成)について質問があり、的確に答えた。本研究において反すう特 性・省察特性といった大学生アスリートの性格特性が、ストレス反応のようなネガティブな変数のみな らず、主観的幸福感のようなポジティブな変数にも影響を与えていること、さらに状態自尊感情がそれ を媒介することから、そこに教育的な介入効果の可能性を見いだせた点が評価された。以上から提出さ れた論文は、博士論文の水準を満たしていると判定された。

(最終試験)

提出された論文および関連する事項についての口頭試問を行った結果、当該の研究およびその関連領 域の専門的知識および研究能力を十分に有し、博士の学位を授与する基準を満たしていると判断された ので合格と判定した。

参照

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