博 士 ( 理 学 ) シ ャ ミ ー ル マ ハ ム ト フ
学 位 論 文 題 名
Mobius invariant classess and spaces of functions on the unit disc
(単位円板上のメービウス不変な関数族と関数空間)
学位論文内容の要旨
本 論 文 の 主 要 な テ ー マは ,単 位開 円板D上の 正規 有理 型関 数,Bloch 関 数, およ ぴDの 自己 解析 写像 に関 して の研 究で あり ,特 に, 値分布論 お よ び 合 成 作 用 素 に つ いて のい くっ かの 新し い結 果を 与え て いる .扱 う 関 数 族 は す べ てMobius変 換に 関し て不 変な 関数 族で あり , これ らの 関数族は,球面導関 数,(通常の)導関数,双曲導関数の増大度により特 徴 付 け ら れ る . 正 規(normal)関 数 お よ びBloch関 数に つい て は正 規族 の 手法 が適 用で きる .単 位開 円板 の自 己 解析 写像 につ いて は,Bloch空 間 居 か らBesov空 間 やVMOA空 間 へ の コ ン パ ク ト 合 成 写 像 を 誘 導 す るような写像の特徴付けについての結果を与える.
有 理 型 関 数 の 正 規 族 の概 念は 今世 紀の はじ めのP. Montelの論 文に 登 場し ,そ の後 の複 素関 数論 の発 展に おいて,中心的役割を果たした,
正規 族の 概念 を用 いて ,K. Noshiro (1938)は 単位 開円 板上 の有理型 関数′で,{ア(き老)}。EDが正規族となるような関数アの族を導入した.
こ のよ うな 有理 型関 数ア は, 現在 ,正 規関数と呼ぱれる.正規関数全体 の集まりをルで表すことにする.
正規 関数 の解 析関 数版 が,Bloch関数と考えられる .Bloch関数全体は Banach空間 をな すが ,正 規関 数族 ルは そ うで はな い. 実際 ,P.Lappan は 和 ア 十g及 び 積gfが 正 規 関 数 と な ら な い よ う な 正 規 関 数 の 例 ア ,9 を与えている.
Schwarz‑Pickの 補 題 の直 接の 帰結 であ るが ,正 規関 数の 双 曲型 アナ ロジーが単位開円板の自己解析関数と解釈できる.
本論 文全 体を 通し て, 正規 族お よび 解析的正規族の考えを各所で用い る .有 理型 関数 の正 規族 につ いて は球 面距離で収束を考える.この手法 はA. Ostrowskiに よ り 始め られ た. 解析 関数 の解 析的 正規 族 につ いて はユークリッドの距離で収束を考える.
第2章 で は , 単 位 開 円板 上の 有 理型 関数 の正 規族 ヂ= {f} につ いて 調 べ る . こ こ で は , 正 規族 であ るた めの 特徴 付け を1番 売鷦 「ゆ ≧1) の面積積分および線積分を用いて与える(Theorem 2.8).
第3章で は ,こ れを 正規 関数 に応 用す る. また ,有 理型 関数 が正規で あ る こ と の 特 徴 付 け をMobius変 換 を 用 い たNevanlinnaタ イ プ の 特 性 関 数ヰ (r ′)(0くp≦1)を使って与える.これは ,R. Aulaskariと P. Lappanがp>lの 場 合 に 与 え た 結 果 の 一 般 化 で ある .さ ら に, 小正 規(little normal)関数を擬P点列の言葉で特徴付ける.
第4章 で は, 解析 関数 の族 が 解析 的正 規族 とな るた めの 特徴 付け を,
| f'(z)| および|/(z) ‑ア(a)lp(QED,p冫0)の面積積分や線積分を用 い て 与 え る .こ れをBloch関 数 に適 用す る. 単位 開円 板上 の解 析関 数の 族{f} が 解 析的 正規 族と は, 任意 の部 分関 数列 {A−A(0)} があ る解 析 関 数 に 収 束 す る 部 分 列 を も つ こ と で 定義 され る. 解析 的正 規族 の概 念 は1970年 にCh.Pommerenkeに よ り 導 入 さ れ ,Bloch関 数 を 考 え る 上 で 基 礎 に な る も の で あ る . さ ら にGauther‑Gavrilovのp点 列 の 考え を ,Bloch関数 に拡 張し てpB‑点列 の定 義を 与え る. これ に より ,Bloch 関 数 で あ る ため の必 要十 分条 件はpず点 列を 持た ない 関数 であ るこ とを 示す.
第5章 で は, 単位 開円 板の 自 己解 析写 像ヤ につ いて 論じ てい る. まず
,ヤに対して,双曲近接関数m.(r ヤ,0)およ.び双曲特性関数ヱ(r,みを 定義して,値分布理論の第1主定理の双曲的一般化
m. (r ヤ ,0) ‑N(r, ヤ ,n) = 疋 (nヤ ) ,for anyQED を示す(た だし,N(r,ヤ,0)は通常の 個数関数),また,Besov関 数空間 Bpの 一 般 化 と し て , 双 曲 型Besov族Bp,1くpくooが 定 義 さ れ る が , ヤE Bpが っ ぎ の 条 件 と 同 値 で あ る こ と を 示 す(Theorem 5.8):
飽免!川,ヤ(り))ニ緋)桝(り)くco.
´ー |1 ‑ ZWI4 また,双曲型VM〇A関数 族を
VM〇A*〓 { ヤ : |limZび ( ヤ (2) , ヤ ( ° ) ) | 出 | :0} に よ り 定 義 し , 双 曲 型 特 性 関 数 疋(nり を用 いた 特徴 付け およ びコ ンパ クトCarleson測度を用いた特徴付けを与える.
第6章 で は ,Bloch空 間8上 の 合 成 作 用 素Gウ ァ = ア 。 ヤ に つ い て 調 べ ,C<p: ぢ →Bが コ ン パ ク ト 作 用 素 と な る た め の 必 要 十 分 条 件 が jこ と , お よ び ,C<p: 居 →VM〇Aが コ ン パ ク ト 作 用 素 と 轟Eる 曇i奪 警 簍 ギ 分 条 件 が ャG VM〇A*で あ る で あ る こ と を 示 す . 最 後 に , 正 規 関 数 と 双 曲 型Besov関 数 と の合 成関 数が 球面Besov関数 にな る こ と を 示 す. これ らの 関数 族自 体はR. AulaskariとG. Csordasによ り導入されている.
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Mobius invariant classess and spaces of functions on the unit disc
(単位円 板上のメ ービウス 不変な関 数族と関数空間)
複素平面内の単位開円板は最も単純な複素領域でありながら,その 上の函数論は今なお研究者を引きっける非常に深い側面をもっている.
また,それらの研究は,より一般の領域の研究の指針を与える外延性を 持ちながら,それ自体リーマン面の不変被覆面としての一般性も内包し てい るため, 様々な研究 者から興 味を持たれている領域でもある.
申請 者は,単位開円板D上の正規有理型関数,Bloch関数っおよびD の自己解析写像に関して,値分布論および合成作用素について考察し,
新しい結果を与えている.本論文では本研究科在学中に得られたこれ ら結果について体系的にまとめている.
単位開円板上にはっ自己等角写像としてMるbius変換が働いている.
本論 文で扱わ れている関 数族はす べてこのMobius変換に関して不変 な関数族である.また,単位開円板上にはMobius変換不変な双曲距離,
双曲(実2次元ルベーグ)測度が自然に導入される.一方,その上の関 数族については,その値域により,有理型関数なら球面距離に基づぃた 球面導関数,正則関数なら(通常の)導関数,さらに,単位開円板に値を とる正則関数には双曲導関数を考え,これら導関数の増大度により様々 な関数族が定義される.
申請者は,単位開円板上の正規族の特徴付けをこれら距離(計量)を 用いて統一的に与え(Theorem 2.8,4.6),それらをnormal(正規)関数,
及び,Bloch関数の特徴付けに応用している(Theorem 3.2,4.10).
また,有理型関数の値分布論におけるGauthier‑Gavrilovのp点列の 類似として,Bloch関数に関するpず点列の概念を導入し,Bloch関数の 新しい特徴付けを与えている(Theorem 4.16).
さらに,Nevanlinnaの第一主定理の類似にあたる結果を,単位開円板 上の自己正則写像に関して与えている(Theorem 5.2).これは山下慎ニ 氏の研究を補完するもので,双曲的近接関数の定義を工夫することで第 一主定理を剰余項のない等式の形で示している,
っぎに,合成作用素についてもいくっかの結果を与えている.単位開 円板上の自己正則写像は,単位開円板上の関数アに合成写像ア。ヤを対
廣
孝
彦
治
樹
実 晶
貴 純
本 路
上
林 岸
中 井
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
応させることで,関数族{ア}から関数族{f。ジ}への線形作用素を定義 する.これをャから導入される合成作用素という.この合成作用素が,
決められた関数族から別の関数族への有界作用素あるはコンパクト作 用素となるための条件を自己正則写像ヤの言葉で与える研究が様々な 関数族にたいして行われている.
申請 者は.Bloch関 数族から正 則Besov関数族への合成作用素につ いて調べ、この合成作用素がコンパクトになるための必要十分条件を 自己 正則写像アが双曲的Besov関数になることにより特徴付けている (Theorem 6.1).さら に,双曲 的Besov関数族に関して2重積分を用い た特 徴付けを与えている(Theorem 5.8).これはBesov関数空間につい ての類似の特徴付けの一般化であるが,双曲的Besov関数族は和やスカ ラ ー 倍 に 関 し て 閉 じ て い な い こと か ら 自明 な 一般 化 で はな い . また ,Bloch関数族 からVM〇A関数 族への合成作用素についても調 べ, これを自己正則写像ヤが双曲的VM〇A関数になることにより特徴 付けている(Theorem 6.3,6.4).
以上の結果は,現在活発な研究が行われてる分野において注目に値す る顕著な成果を与えるものである.よって審査員一同は,申請者が博士
( 理 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分な 資 格 を有 す るも の と 認め る .