平成16年度
CDMプロジェクト形成における適用可能性の ある技術等基盤整備に向けたわが国及び途上国
の対応調査報告書
平成17年1月
社団法人 日本機械工業連合会 社団法人 日 本 プ ラ ン ト 協 会
日機連16環境安全-6
序
近年、技術の発展と社会との共存に対する課題がクローズアップされ、機械工業におい ても環境問題、安全問題が注目を浴びるようになってきております。環境問題では、京都 議定書の発効が間近となり、排出権取引やCDMなどの柔軟性措置に関連した新ビジネス の動きもあり、政府や産業界は温室効果ガスの削減目標の達成に向けた取り組みを強化し ているところであります。また、安全問題も、EUにおけるCEマーキング制度の実施や、
平成12年には厚生労働省から「機械の包括的な安全基準に関する指針」が通達として出 されるなど、機械工業にとってきわめて重要な課題となっております。
海外では欧米諸国を中心に環境・安全に配慮した機械としての具体的な形が求められて きており、それに伴う基準、法整備が進められているところであります。グローバルな事 業展開を進めているわが国機械工業にとって、この動きに遅れることは死活問題であり早 急な対処が必要であります。
こうした内外の情勢に対応するため、当会では早くから取り組んできた環境問題や機械 標準化に係わる事業を発展させて、環境・社会との共存を重視する機械工業の在り方を追 求して参りました。平成16年度には、海外環境動向に関する情報の収集と分析、環境適 合設計手法の標準化、それぞれの機械の環境・安全対策の策定など具体的課題を掲げて活 動を進めてきました。
こうした背景に鑑み、当会では機械工業の環境・安全対策のテーマの一つとして社団法 人日本プラント協会に「CDMプロジェクト形成における適用可能性のある技術等基盤整 備に向けたわが国及び途上国の対応調査」を調査委託いたしました。本報告書は、この研 究成果であり、関係各位のご参考に寄与すれば幸甚であります。
平成17年1月
社団法人 日本機械工業連合会 会 長 金 井 務
はじめに
本調査は、社団法人日本機械工業連合会が日本自転車振興会から自転車等機械工業振興 事業に関する補助金を受けて実施する「平成16年度機械工業の環境・安全対策、エネル ギー効率的利用等に関する調査補助事業(環境・安全対策)」として実施したものである。
わが国は 1998 年 4 月京都議定書に署名し、基準年比(1990 年)で地球温暖化ガス(GHG)
を 6%削減する目標を持つこととなった。しかし、日本は石油ショック以降、既に高度な省 エネルギー技術の開発導入がなされてきており、国内における更なる新技術導入等で GHG の削減を実現することは非常に困難な状況である。目標達成のためには京都議定書の柔軟 措置である CDM 及び JI の活用が不可欠となる。京都議定書は、最大の CO2 排出国である米 国の不参加、大量の CO2 を排出しているが目標を持たない中国、インド等問題を抱えなが らも、2004 年 11 月にロシアがこれを批准したことにより、2005 年 2 月に正式に発効する 運びとなった。このロシアの批准を受けて、先進各国のクレジット獲得への動きが更に活 発化しているのが現在の状況である。欧州地域では、旧東欧諸国においての GHG 削減が実 現されれば欧州地域の削減目標を達成できる状況が見えつつあり、批准国の中でもわが国 は、最も CDM 及び JI の活用を迫られている国の一つである。このような状況下、今後わが 国はアジアにおけるクレジットの獲得を推進していくことが、目標達成に重要となる。
本報告書は、この現状を踏まえて、CDM プロジェクトの組成に際し参考となるべき情報 を提供するために作成したものである。作成にあたっては、専門家により構成される「CDM 関連技術等基盤整備研究会」を設置し、適用技術の追加性、ベースラインの設定、各国の CDM への対応状況等を議論すると共に、インドネシア、インド、ベトナム、フィリピンに 現地調査団を派遣し、最新の情報の収集に努めた。
本報告書が、これから CDM プロジェクトを組成される関係各位のご高覧に供され、わが 国の削減目標達成とプラント・エンジニアリング産業の発展の一助となることを祈念して やまない。
平成17年1月
社団法人 日本プラント協会 会長 増 田 信 行
2004年度 CDM関連技術等基盤整備研究会 委員名簿
(五十音順・敬称略)
委員長 大嶋 清治
国際連合工業開発機関 東京投資・技術移転促進事務所 代表
岡田 晃幸 委員
みずほ情報総研㈱ R&S ユニット 温暖化対策ビジネスプロジェクト シニアコ ンサルタント
加藤 恒一 委員
新日鉱テクノリサーチ㈱ 調査1部コンサルティング担当 担当部長
西橋 時男 委員
丸紅㈱ユーティリティ・インフラ総括部 副部長(兼)資金協力チーム長
波多野 順治 委員
三菱証券㈱ クリーン・エネルギー・ファイナンス委員会 委員長
古川 和雄 委員
石川島播磨重工業㈱営業統轄本部 海外営業戦略部渉外グループ 部長
松本 正 委員
東電設計㈱海外事業本部 技術士 機械部門(原動機)
要 約 目 次
1. 本調査の目的
2. 京都議定書の概要及び京都メカニズム
3. 我が国及びアジア諸国のCDMに対する取組みとニーズ
4. ベースライン方法論に関わる CDM 理事会の議論及びプロジェクト形成 に向けた利用可能性の検討
5. 我が国の技術を踏まえた適用技術及び追加性にかかわる議論 6. アジア諸国の現地調査
7. 提言
要 約
ここ数年、世界各国で異常気象による被害が報告されている。今後、地球温暖化の 進行によって、食糧生産、海岸の侵食、生物種の減少などにも深刻な影響がでてくる ことが予測されている。
気候変動に関する国際連合枠組条約の締約国は、第3回締約国会議(COP 3、1997年)
において京都議定書を採択し、地球温暖化対策への具体的な取組みを開始した。
我が国においては、これまで地球温暖化対策に 2 つの不確定要素があるとされてき た。一つは、京都議定書が発効するかどうか、何時発効するかであり、もう一つは日 本政府が今後、どのような対策を打つかである。
ロシアのプーチン大統領は、2004年11月4日、京都議定書批准法案に署名した。
引き続いて、ロシアが京都議定書の批准書を国連事務総長へ提出したことにより、議 定書の発効要件が満たされ、発効日時が2005年2月16日に確定した。
我が国は、国連枠組条約締約国会議、京都会議(COP 3)の議長国として、議定書発効の 鍵を握るロシアや米国に対し批准を強く働きかけてきた。このたびのロシアの決定に より、国際社会は新たな一歩を踏み出すことになり、我が国も地球温暖化対策を一層 強力に進めていく必要性を改めて認識する状況である。
1. 本調査の目的
京都議定書の発効が間近となり、京都議定書のGHG 削減目標を達成するために、
CDM/JI プロジェクトへの取組みが焦眉の課題となっている。京都議定書及びマラ ッケシュ合意に基づき、多くのCDMプロジェクトがCDM理事会で審議され、昨年 後半には 2 案件が正式登録された。また、非付属書Ⅰ国の議定書批准、国家指定機 関の設立等必要な体制整備は一部を除き順調に進展している。
このような背景を踏まえて、本調査では、具体的にCDMプロジェクトが組成される と考えられるアジア諸国へ調査団を派遣しCDMへの取組みとニーズを把握し、同時 に個別のプロジェクトを推進するために必要な固有のベースライン方法論や追加性 に関するCDM理事会の主要な議論を整理して、今後の事業参加者の参考とすること を目的とした。
・ アジア諸国におけるCDMプロジェクトへの取組み状況及びニーズ
・ ベースライン設定方法にかかわるこれまでの主要議論
・ 追加性にかかわるこれまでの主要議論
・ CDMプロジェクト適用可能技術の検討
2. 京都議定書の概要及び京都メカニズム (1) 京都議定書
地球温暖化対策の国際的基盤である気侯変動枠組条約と京都議定書はセットに なっている。気侯変動枠組条約は、「危険な気侯変動を起こさない水準において 大気中のGHG濃度を安定化させることを究極の目的」にしている。さらに、「共 通だが差異ある責任」という表現を使って、気侯変動枠組条約を締結した先進国 (付属書 I 国)が、「率先して気侯変動及びその悪影響に対処」することを原則に している。京都議定書は、気侯変動枠組条約の目的や原則を踏まえ、先進国(付属 書I国)に対して、GHG排出量の削減義務を課している。京都議定書の概要は以 下の通りである。
京都議定書の概要
対象GHG CO2、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF6など合計6ガス 削減目標 基準年比で先進国全体として少なくとも5%削減
日本:6%削減、EU:8%削減、ロシア:0%(米国:7%) 基準年 1990年、HFC、PFC、SF6は1995年も選択できる
目標年 第1約束期間:2008~2012年、5年間平均で目標達成すればよい 京 都 メ カ ニ
ズムの導入
削減対策の費用対効果を高めるために、他国での削減分を自国に移 転できる制度。排出権取引、クリーン開発メカニズム(CDM)、共同 実施(JI)。国内対策の補完的手段と位置付けられる。
吸収源 1990 年以降の植林・再植林による削減分は、森林減少による増加 分と合算のうえ、削減分として算入できる
発効の条件 55力国以上の議定書批准及び批准した付属書I国のGHG総排出量 が55%以上。批准から90日後に発効する
(2) 京都メカニズム
京都議定書には、京都メカニズムと呼ばれる以下の3種類の柔軟処置が規定さ れている。
・ 目標達成のために先進国同士の排出権取引制度(市場経済移行国を含む)
・ 先進国と途上国が共同でプロジェクトを実施し、GHG削減分を先進国の 目標達成に利用する制度:CDM(クリーン開発メカニズム)
・ 先進国同士が共同でプロジェクトを実施し、GHG削減分を投資国の目標 達成に利用する制度:JI(市場経済移行国を含む)
3. 我が国及びアジア諸国のCDMに対する取組みとニーズ
我が国にとって、京都議定書で約束した基準年比(CO2は1990年)でGHG排出 量を6%削減するという目標は、かなり高いハードルといえる。
京都議定書の発効によって生じる義務は、日本政府が負っているものであるが、間 接的に企業に大きな影響を与えることになる。京都議定書の発効により、米国、オ ーストラリアを除く先進国(付属書Ⅰ国)は削減目標の義務をはたす必要に迫られ る。現状における世界及び日本のGHG排出量は以下の通りである。
(1) 世界全体のGHG排出量
世界のGHG排出量は増加を続けているが、2000年の米国、オーストラリアを 含めた世界の総排出量は約230億トン(CO2換算)である。
世界のGHG排出量の比較
(2) 我が国のGHG排出量
環境省が発表した2003年度の日本のGHG排出量速報値によると、CO2換算 の総排出量は13 億3,600 万トンであり、京都議定書で規定された基準年(CO2 は1990年)の総排出量と比較すると8%の増加であった。
一方、GHG総排出量のうち約9割を占めるエネルギー起源の二酸化炭素(CO2)
は、部門別にみると以下の状況にある。
エネルギー起源CO2排出量(2003年度速報値、単位:百万トン)
1990年度
(基準年)
2002年度
(基準年比)
2003年度速報
(基準年比)
産業部門
(工場等)
476 468
(-1.7%)
476
(-0.02%)
運輸部門
(自動車・船舶等)
217 261
(+20.4%)
259
(+19.5%)
業務その他部門
(オフィスビル等)
144 197
(+36.7%)
197
(+36.9%)
家庭部門
(家庭)
129 166
(+28.8%)
166
(+28.9%)
発電所等
(エネルギー転換部門)
82 81.9
(-0.3%)
85.1
(+3.6%)
合計 1,048 1,174
(+12.0%)
1,183
(+12.9%)
出所:環境省ホームページより 尚 上記表では、発電所等のエネルギー転換部門の CO2 排出量は各部門に配分 されている。
(3) 我が国の産業部門及びエネルギー転換部門(発電所等)のGHG排出状況 各部門別のGHG排出状況を2002年度の数値で考察すると以下の通りである。
①事業用発電部門(エネルギー転換部門)
電気事業者の発電に伴う排出量は3億4,410万トンであった。対前年度比では、
約8.9%のGHG排出量増加となった。これは、原子力発電所運転停止による電 力不足を補うために火力発電による電力量が増加した。
②鉄鋼分野
社団法人日本鉄鋼連盟の自主行動計画では、「2010年度のエネルギー消費量を 1990年度に対し10%削減目標」を設定しており、フォローアップは毎年1回 の頻度で実施されている。
2002年度のフォローアップ結果による鉄鋼分野のCO2排出量は1億9,160万 トンである。この数値は1990年基準の約7%削減の状況である。
③セメント分野
セメント産業はエネルギー多消費型産業であり、CO2 排出量は日本国内の約 5%を占めている。その中で、「2010年度におけるセメント製造用エネルギー原 単位(セメント製造用+自家発電用+購入電力:一次エネルギーベース)を1990 年度比3%程度低減」を目標として、その後フォローアップを続けている。
2002年度のフォローアップ結果によると、目標としている「セメント製造用エ ネルギー原単位」は各種方策の実施により、2010年度到達目標値にほぼ近づい ている。
(4) 政府の関連委員会の動向
産業構造審議会環境部会地球環境小委員会の中間とりまとめ「今後の地球温暖 化対策について」では、「我が国の地球規模での国際貢献と京都議定書の約束達 成のための確実性向上の観点から、京都メカニズムの積極的・計画的な活用が不 可欠である。」と CDM/JI プロジェクトの実施を京都議定書の目標達成の方策 として推奨している。
中央環境審議会の「地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しに関する中間とりま とめ」では、「京都メカニズムのうち、具体的な排出削減努力に裏付けされ、ホ スト国の持続可能な発展にも資する CDM/JI を中心として活用すべきである」
と提案されている。
産業構造審議会環境部会地球環境小委員会及び中央環境審議会双方とも、第一約 束期間(2004年~2012年)におけるGHG排出量は、現状のままでは1990年 度を基準とした京都議定書の目標数値を遵守することは困難と予測している。
(5) アジア諸国の取組みとニーズ
世界各国・機関は京都議定書の締結と前後して、地球温暖化対策技術を途上国、
特にアジア地域への移転に関するニーズ調査を実施している。この結果に基づき、
ホスト国としてCDMプロジェクトの分野を明確にしている。
本調査報告書では、インドネシア、インド、ベトナム、フィリピン、中国、マレ ーシア及びタイの7カ国の取組みとニーズをまとめた。
① アジア諸国のうちインドネシアを除く各国は、国家指定機関(DNA)の設立 を完了している。既に京都議定書を批准し、各国ともマラケシュ合意に基づく CDM事業活動への参加要件を満たしている。
② アジア諸国では、先進国の支援を受けて、CDMに関するCapacity Building に努めると同時に、持続可能な開発のために技術移転されるべき分野を具体的 に特定し、CDMプロジェクトの方向付けとしている。また、各種の調査をベ ースに CDM プロジェクトの分野の明確化や承認基準の設定など必要な体制 をほぼ整備している。
③ アジア諸国における可能性分野はほぼ共通している。エネルギーの効率利用、
再生可能エネルギーの利用、燃料転換、ゴミ埋立地あるいは炭鉱メタンの回 収・発電及び植林等である。
④ CDMプロジェクトの条件的には、基本的にマラケッシュ合意の付属書に準じ たものであり、持続可能な発展に貢献すること、追加性の証明できること、新 しい技術であること、ODAの流用でないこと等である。
(6) 日本政府承認プロジェクト及びUNFCCC CDM理事会登録プロジェクトはそ れぞれ15件及び2件である。日本政府が承認した案件は合計15件で、クレジッ ド獲得予測総量は年間約816万t-CO2である。
日本政府承認CDM/JIプロジェクト一覧
No 申請者 ホスト国 プロジェクト名 ERs (t/y)
1 NEDO カザフスタン 熱電併給所省エネルギー 62,000
2 豊田通商㈱ ブラジル 木炭を利用した鉄鋼生産 1,130,000 3 電源開発㈱ タイ ゴム木廃材による発電所 60,000 4 イネオスケミカル㈱ 韓国 HFC類の熱分解事業 1,400,000
5 関西電力㈱ ブータン 小規模水力発電計画 500
6 日本ベトナム石油㈱ ベトナム 随伴ガス回収・有効利用 680,000 7 住友商事㈱ インド HFC類の熱分解事業 3,380,000
8 中部電力㈱ タイ ATB籾殻発電事業 84,000
9 電源開発㈱ チリ 食品工場の燃料転換事業 19,438 10 東京電力㈱ チリ 豚舎の発酵メタンの燃焼 79,000
11 東京電力㈱ チリ 同上 84,000
12 東京電力㈱ チリ 同上 249,000
13 昭和シェル石油㈱ ブラジル 埋立処分場メタン分解 870,000
14 NEDO ベトナム ビール工場省エネモデル 10,000
15 鹿島建設㈱ マレーシア LFG発電(クルボン) 60,000
UNFCCC CDM理事会による正式登録プロジェクト
登録日 プロジェクト名 ホスト国 実施国 Meth-No ERs (t/y) 18 Nov
2004
Nova Gerar Landfill Gas to Energy project
ブラジル オランダ AM0003 670,133
11 Jan 2005
RIO BLANCO Small Hydroelectric project
ホンジュ ラス
フィンランド AMS0004 17,800
4. ベースライン方法論に関わる CDM 理事会の議論及びプロジェクト形成に向けた 利用可能性の検討
(1) ベースラインの設定に関する要求事項
マラケッシュ合意では、ベースラインの設定に関して、Para45~48 において以 下のように規定している。
① CDM理事会によって承認された方法論に従っていること
② 手法、前提、方法、変数、データの出所、重要な因子、追加性の選択について 不確実性を考慮に入れつつ、透明で、保守的なものであること
③ 個別のプロジェクト毎に設定すること
④ ホスト国の政策、状況を考慮すること
⑤ ベースラインの設定に当たっての手法としては以下の中から最も適切なもの を選択すること
・ 適用可能であれば、現在の実際の排出量あるいは過去の排出量
・ 投資に対する障壁を考慮の上経済合理的な技術を採用した場合の排出量
・ 過去5年間に、同様の社会、経済、環境、技術条件下で実施された、性能が 同じ分野において上位20%に入っている類似プロジェクトからの平均排出量 この様に種々な条件によりベースラインシナリオが設定され、このシナリオに 基づいてベースライン排出量が設定される。
特に、ベースラインシナリオの論理性が、方法論承認申請時及びプロジェクト の有効化審査時に重視されることを強調する。
(2) 申請された方法論の動向
2004 年 9月に開催された第 15 回 CDM 理事会までの新方法論の審議は、59 件であった(取り下げられたものを除外し、別の方法論として再提案された数件 の重複を含む)。その内、16件がApproved Methodologyとして承認され、23件 が不承認となっている。(2004年12月には、19件の新方法論が承認され、さら に、2件の統合方法論が承認された)
起案プロジェクトの件数は、水力、風力、地熱及び天然ガスによる発電プロジェ クトが最も多く全件数の49%を占めている。バイオマス、汚水・汚物処理(バイオ ガス)による発電が28%であり、両者を併せると80%弱を発電プロジェクトが占め ることになる。
CDM理事会のセクトラルスコープとしては、“1”、“13”の比重が大きく、エネルギ ー多消費型産業を対象としたプロジェクトの起案は少ない。また、ホスト国の分 布ではアジアと南米が多く、国別ではインド、ブラジル、タイの比重が大きい。
(3) ベースライン方法論にかかわる議論の状況
ベースラインの設定及びプロジェクト排出量の計算方法、それに含まれる変数 の決め方などは承認された方法論 (Approved Methodology)を使用する必要があ り、新たな方法論による場合は、プロジェクトの有効化審査に先立ち、新ベース ライン方法論(New Baseline Methodology)、新モニタリング方法論(New Monitoring Methodology)として暫定的な(有効化審査前の)事業設計文書
(PDD)とともに、CDM理事会の審査を受けその承認を受けなければならない。
UNFCCC CDM理事会において「承認されなかった方法論」及び「承認された方 法論」に関し、それぞれに対する理事会での指摘事項を中心にまとめた。これら が今後のベースライン設定時の参考となることを期待する。
① 「承認されなかった方法論」で、共通した指摘事項は以下の通りである。
・ ベースラインシナリオの記載内容を裏付ける情報が不足し、「主観的」
あるいは「暗黙の了解」等の範疇を出ていない
・ 「プロジェクトの追加性の論証」が所定の理事会の推奨する論証方法 の要求事項を満たさず、透明性が不足している
・ ベースラインシナリオや排出量算定における、「仮説」の妥当性の論証 が不足している
・ 当該プロジェクト以外の使用に耐えられる、完全性・透明性・普遍性に 欠ける
② 「承認された方法論」の特徴は、上記の承認されなかった方法論で指摘され た事項の裏返しであるが、なかでも「ベースラインシナリオに対する論理性 の高さ」及び論証を伴った「プロジェクト実施に対する障壁分析」に完全性・
透明性・普遍性を有することである。
③ 電力、鉄鋼、セメント及び再生可能エネルギー分野に関し申請された方法論 のうちで、参考とするうえで有用な方法論のポイントを整理し取りまとめた。
④ ベースラインシナリオは、ホスト国の社会的・経済的な背景を十分理解し、
将来の予測を論理的に行うことにより完成する。したがって、現地に密着し た情報の収集は不可欠である。
5. 我が国の技術を踏まえた適用技術及び追加性にかかわる議論
(1) CDM プロジェクト形成において、適用可能性のある対象技術としては省エネ ルギー技術と再生可能エネルギー技術について議論し、特に電力、鉄鋼、セメ ント、化学工業等へ省エネルギー技術の移転可能性を論じた。
一方、アジア各国への技術移転の可能性については、1998年にアジア開発銀行 が 中 心 と な っ て 実 施 し た ALGAS(Asian Least-cost Greenhouse Gas Abatement Strategy)プロジェクトから方向性を明確にした。
(2) 再生可能エネルギーの利用に関する技術についても、我が国にで多くの実績を 有する技術を網羅的にまめることができた。
(3) 我が国のエネルギー多消費型産業で多くの実績を持つ省エネルギー技術は、数 度にわたるオイルショックを克服し、製品の原単位を世界トップレベルに引き 下げることに貢献したものである。これらの技術は、非付属書Ⅰ国においては 斬新なものであり、技術面での追加性は高いといえる。
(4) 追加性に関する京都議定書及びマラケッシュ合意の規定及びその後のCDM理 事会の議論を整理し、追加性のポイントをまとめた。
追加性の立証と審査に関して、第 16 回CDM 理事会で承認された「追加性の 実証と評価に係る手法」(CDM-Executive Board EB16 Report Annex 1 Tool for the demonstration and assessment of additionality)を解説した。
CDM理事会はこの手法の使用を必須とは規定していないが、事業者にPDDに 添付することを奨励している。Meth Panel の業務の円滑化にも役立つもので
あり、この手法の使用が期待されている。
(5) 新方法論のCDM理事会による審査コメントのうち、「追加性」についてとりま とめた。共通するコメントの要約は以下の通りである。
・ 障壁分析が限定された範囲に留まり、主観的である
・ 財務分析の代替案が限定的である
・ 慣行障壁で、追加性を証明するには市場の5%以下とすべきである
・ 承認されものでは、IRRの精度を上げて論証としている
6. アジア諸国の現地調査
現地調査(4カ国)により、それぞれの国におけるCDMプロジェクトへの取組 み状況を確認にできた。
(1) 国家指定機関(DNA)の設置状況及びCDMプロジェクトの流れの確認 DNAはインドネシアを除き設立済みである。
(2) CDMプロジェクトの可能性分野及び案件情報
(3) CDMの制度設計状況、NGOの活動及び持続可能な発展の基準
7. 提言
今後、開発途上国(非付属書Ⅰ国)のGHG排出量が増大する中で、国際社会全 体のGHG排出量削減へ向けた取り組みにつながり、さらに我が国の国際公約を達 成する方策として、CDM への取り組みの重要性が高まっている。このような背景 の中で、CDMプロジェクト形成及び促進のために、以下を提言した。
(1) 追加性論証の簡素化
(2) CDMプロジェクト促進のための民間事業者のリスク低減 (3) CDMプロジェクト形成の事前準備のためのFSの実施 (4) ベースラインシナリオ充実のための情報集約
(5) 日本の保有する省エネルギー技術のCDMプロジェクトへの積極的活用 (6) 省エネルギー、新エネルギー及び再生可能エネルギー利用技術等、CDM プロ
ジェクトとして採用される可能性の高い技術の競争力向上 (7) CDMプロジェクトの審査員の資格制定の促進
以上
本 文 目 次
1.我が国及び開発途上国でのCDMに対するニーズの把握... 1
1.1 全般... 1
1.2 我が国の CDM に対するニーズ... 4
1.3 開発途上国での CDM に対するニーズ... 22
1.3.1 インドネシアにおけるニーズ... 22
1.3.2 インドにおけるニーズ... 28
1.3.3 ベトナムにおけるニーズ... 36
1.3.4 フィリピンにおけるニーズ... 42
1.3.5 中国におけるCDMに対する取組み状況とニーズ... 49
1.3.6 マレーシアにおけるCDMに対する取組み状況とニーズ... 62
1.3.7 タイにおけるCDMに対する取組み状況とニーズ... 75
2.ベースライン方法論にかかわる議論の状況調査及びCDMプロジェクト形成に向けた利用 の可能性の検討... 83
2.1 全般... 83
2.2 ベースライン方法論にかかわる議論の状況... 86
2.2.1 申請された方法論の分析及び整理... 87
2.2.2 承認された方法論を中心とした提案プロジェクトの分析及び整理... 107
2.3 CDMプロジェクト形成に向けた方法論の利用の可能性検討... 119
2.3.1 電力、鉄鋼関連の方法論及び議論... 121
2.3.2 セメント及びその他工業分野の方法論及び議論... 125
3.我が国の技術を踏まえたホスト国における適用技術の追加性及び適用技術検討... 127
3.1 我が国のエネルギー関連技術... 127
3.1.1 省エネルギー技術... 127
3.1.2 新エネルギー技術... 127
3.2 産業部門の省エネルギー技術... 128
3.2.1 電力部門... 128
3.2.2 鉄鋼部門... 137
3.2.3 セメント部門... 147
3.3 新エネルギー技術に対する取組み... 153
3.3.1 新エネルギーの概要... 153
3.3.2 新エネルギーのメリット... 153
3.3.3 新エネルギー産業ビジョン... 154
3.3.4 新エネルギーの特徴と導入拡大における課題... 157
3.3.5 新エネルギーの特徴と課題... 158
3.4 温暖化対策の途上国への技術移転... 164
3.4.1 CDMプロジェクトの計画策定と技術移転の可能性調査... 164
3.4.2 NSS及びALGASによるインドネシアへの技術移転の可能性... 170
3.4.3 CTIP及びALGASによるインドへの技術移転の可能性... 179
3.4.4 ALGASによるベトナムへの技術移転の可能性... 186
3.4.5 NSSおよびALGASによるフィリピンへの技術移転の可能性... 188
3.4.6 ALGASによる中国への技術移転の可能性... 193
3.4.7 ALGASによるマレーシアへの技術移転の可能性... 201
3.4.8 NSS及びALGASによるタイへの技術移転の可能性... 203
3.4.9 ALGASによるバングラデシュへの技術移転の可能性... 209
3.5 適用技術の追加性... 212
3.5.1 京都議定書及びマラケッシュ合意の追加性に関する規定... 212
3.5.2 マラケッシュ合意後の追加性に関する主な議論... 213
3.5.3 第16回CDM理事会で採択された「追加性の議論と評価に係る手法」... 214
3.5.4 我が国のCDMプロジェクト形成調査の動向及び適用技術... 222
4.インドネシア等アジア諸国における現地調査... 232
4.1 全般... 232
4.2 インドネシアにおける現地調査... 236
4.3 インドにおける現地調査... 239
4.4 ベトナムにおける現地調査... 242
4.5 フィリピンにおける現地調査... 245
5.提言... 249 参考文献一覧
添付資料-1 2004年度CDM関連技術等基盤整備研究会開催実績
添付資料-2 アジア諸国のGHGインベントリー
添付資料-3 アジア諸国の現地調査の面談録
参考資料
1. 技術移転候補一覧
2. ASEANにおけるCO2削減
3. APEC地域におけるCDMに関するケーススタディー
1. 我が国及び開発途上国でのCDMに対するニーズの把握
1.1 全般
2004年12月、ブエノスアイレスにおけるCOP10の冒頭、アルゼンチンのゴンザレ ス・ガルシア厚生大臣は「アルゼンチンでも暴風雨が増え、氷河が減った。もっと地 球温暖化防止への取り組みを強めなければならない」と危機感の共有を訴えた。ここ 数年、日本をはじめ世界各国で熱波や集中豪雨などの異常気象が発生し、被害が報告 されている。近年の異常気象の増加に伴って、ヨーロッパ、シベリア、アジア、米国 で大規模な森林火災が発生しており、また、農業や牧畜業への影響も深刻化しつつあ る。今後、地球温暖化の進行によって、食糧生産、海岸の侵食、生物種の減少などに も一層深刻な影響でてくるものと予測されている。近年の異常気象の頻発は、既に地 球温暖化が影響していることを一層強く国民に懸念させるものである。最近のマスコ ミによる世論調査では、地球温暖化を身近に感じる人が 8 割にのぼり、危機感の高ま りを反映している。
日本にとって、京都議定書で約束した基準年比(CO2 は 1990 年)で地球温暖化ガ ス(GHG)6%を削減するという目標は、かなり高いハードルといえる。我が国のGHG 排出量は条約締結後増え続け、現状では1990年を基準とする排出量の7.6%増加の状 況にある。
現在の地球温暖化対策推進大綱では、1990年基準で6%の削減量のうち1.6%を京都議 定書の柔軟処置である京都メカニズムの活用で達成しようとしている
京都メカニズムのなかでも、CDM 及びJIは地球全体でGHG削減をしようと言う点 で大きな意味を持っている。
1) 本調査の目的
京都議定書の発効が間近となり、京都議定書のGHG 削減目標を達成するために、
CDM/JI プロジェクトへの取組みが焦眉の課題となっていることを踏まえて、本調 査はつぎの事項について情報を整理し提供することを目的とする。
・ アジア諸国におけるCDMプロジェクトへの取組み状況及びニーズの確認
・ 本邦企業がCDMプロジェクト組成に際して、ベースライン設定方法にかか わるこれまでの主要議論の整理
・ CDM プロジェクトの成立要件である追加性にかかわるこれまでの主要議 論の整理
・ CDMプロジェクト適用可能技術の検討
2) 京都議定書の発効
ロシアによる京都議定書の批准の見通しが立たず足踏みが続いていたが、2004 年 夏以降ロシアの姿勢が急速に明確になり、2005年2月に京都議定書は発効の運びと なる。
京都議定書は1997年の国連枠組条約締約国会議、京都会議(COP 3)で採択されたが、
会期中、各国の利害の対立から議論は紛糾を重ねた。最終的な合意成立のカギを握 ったのは京都メカニズムである。京都メカニズムには、3種類の柔軟処置が規定され ている。
・ 各国の削減目標達成のために先進国同士が排出権を取引する制度(市場経済 移行国を含む)
・ 先進国と途上国が共同でプロジェクトを実施し、GHG削減分を先進国の目 標達成に利用する制度:CDM(クリーン開発メカニズム)
・ 先進国同士が共同でプロジェクトを実施し、GHG削減分を投資国の目標達 成に利用する制度:JI(市場経済移行国を含む)
我が国はCOP3の翌年1998年4月京都議定書に署名し、国際公約の達成に向けた 第一歩を踏み出した。さらに、2001年10月末から11月にかけてマラケッシュで開 催されたCOP7を受け国内体制の整備に努め、2002年には従来の「地球温暖化対策 推進大綱」の見直しを行うとともに、その実施を担う3つの法律を制定の上、同年6 月京都議定書を批准した。
その法制は「地球温暖化対策法」及び「省エネルギー法」の 2 法律の改正と、電気 事業に一定量以上の新エネルギーの導入を義務付ける新法「電気事業者による新エ ネルギー等の利用に関する特別措置法(略称RPS法)」である。
2002年7月、「地球温暖化対策推進大綱」を受けて、JI・CDM の実施に係る事業
承認の体制及び国別登録簿管理者を経済産業省および環境省として、共同で運用管 理していくことなどが決定された。
さらに、今後は途上国のGHG排出量が増大する中で、国際社会全体の排出量削減へ 向けた取り組み、我が国の国際公約を達成するための手法として、京都メカニズム の重要性が高まっている。
京都メカニズムの果たす役割は、国際社会における社会・産業活動の基盤をなし、
新しいグローバル・スタンダードたるものである。
3) 京都メカニズムの活用
我が国のエネルギー多消費産業等の企業は京都メカニズムのひとつである CDM
(クリーン開発メカニズム)プロジェクトに取り組む必要に迫られている。CDMプ ロジェクトの組成にあたっては、プロジェクト設計書(PDD)を指定運営組織(DOE)
に提出のうえ、有効化審査(Validation)を受けると同時に、ホスト国の指定担当政 府機関(DNA)の承認を得ることが必要である。
本邦企業が CDM プロジェクトに取り組むにあたり事業実施主体として作成する PDDでは以下のような事項が焦点となる。
・ ベースラインの設定
CDMプロジェクトがなかった場合に排出されるであろうGHG排出量の 設定
・ プロジェクトの追加性
CDMプロジェクトは成立要件として資金的に、またGHG削減及び技術 的に対象国(ホスト国)において追加的であることが要件
そこで、本調査では本邦企業が CDM プロジェクトを組成するにあたり、ベースライ ンの設定方法及びプロジェクトの追加性にかかるこれまでの主要な議論を整理の上、
本邦企業にCDMプロジェクト形成に向けた情報を整理し提供するものである。
1.2 我が国のCDMに対するニーズ
我が国においては、これまで地球温暖化対策に 2 つの不確定要素があるとされてき た。一つは、京都議定書が発効するかどうか、何時発効するかであり、もう一つは日 本政府が今後、どのような対策を打つかである。
ロシアのプーチン大統領は、2004年11月4日、京都議定書批准法案に署名した。引 き続いて、ロシアが京都議定書の批准書を国連事務総長へ提出したことにより、議定 書の発効要件が満たされ、発効が具体的に決定した。発効日時は2005年2月16日の 見込である。
我が国は、国連枠組条約締約国会議、京都会議(COP 3)の議長国として、議定書発効の 鍵を握るロシアや米国に対し批准を強く働きかけてきた。このたびのロシアの決定に より、国際社会は新たな一歩を踏み出すことになり、我が国も地球温暖化対策を一層 強カに進めていく必要性を改めて認識する状況である。京都議定書について改めて確 認し、条約の中で我が国がはたすべき、義務について整理する。
1) 京都議定書
京都議定書は、1994 年に発効した気侯変動枠組条約とセットになっている。この 条約は、地球温暖化対策の国際的な基盤になるもので、京都議定書から離脱した米 国を含む189カ国(2004年9月時点)が締結している。京都議定書を理解する上で非 常に重要な条約なので、まずポイントを記述する。
気侯変動枠組条約は、「危険な気侯変動を起こさない水準において大気中のGHG 濃度を安定化させることを究極の目的」にしている。すなわち、GHG排出量を削減 し、問題の無い水準で維持することを意味している。さらに、「共通だが差異ある 責任」という表現を使って、気侯変動枠組条約を締結した先進国(付属書I国)が、「率 先して気侯変動およびその悪影響に対処」することを原則にしている。ただ、この 条約は、文字通り枠組条約であり、法的拘東力を持った削減目標や期限などは盛り 込まれていない。また、「どの濃度で温暖化ガスを安定化させるか」についても定 めていない。
京都議定書は、気侯変動枠組条約の目的や原則を踏まえ、削減目標や達成期限を定
めた法的拘束力のある国際協定なのである。
京都議定書の特徴は、先進国(付属書I国)に対して、GHG排出量の削減義務を、期限 を決めて課している。途上国(非附属書I国)の排出量は増加しつつあり、2020年に は非附属書I国のGHG排出量は世界全体の半分を占めるとの予測もあるが、京都議定 書では非附属書I国(途上国)に対して、削減目標を課していない。以下に、京都議定書 の概要を記す。
表-1.2‐1 京都議定書の概要
対象GHG CO2、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF6等合計6ガス 削減目標 基準年比で先進国全体として少なくとも5%削減
日本:6%削減、EU:8%削減、ロシア:0%、(米国:7%)
基準年 1990年、HFC、PFC、SF6は1995年も選択できる 目標年 第1約束期間:2008~2012年
5年間の平均が目標を達成すればよい 京 都 メ カ ニ ズ
ムの導入
削減対策の費用対効果を高めるために、他国での削減分を自国に 移転できる制度。排出権取引、クリーン開発メカニズム(CDM)、
共同実施(JI)。国内対策の補完的手段と位置付けられる。
吸収源 1990年以降の植林・再植林による削減分は、森林減少による増加 分と合算のうえ、削減分として算入できる
発効の条件 55 力国以上の気侯変動枠組条約の締結国が議定書を批准するこ とに加え、先進国など付属書I国のGHG総排出量の55%以上を 占める付属書I国が批准すること。批准から90日後に発効する。
日本は6%削減の義務を負っている。この義務は、日本政府が負っているものなので、
個別の企業に削減義務はない。このため、京都議定書の発効によって、直接的に企 業に求められる新たな義務は一切ない。
しかし、企業・公共部門が GHG排出量の約 8 割を占めることから、国の目標を達 成するには、企業部門の排出量の増減が大きく影響する。
つまり、京都議定書が発効すると、各国の削減目標が法的拘束カを持つため、国内 対策を加速させる仕組みや制度、規制などの検討や導入が進む。その結果として企 業に地球温暖化対策の強化を促すことになる。
京都議定書の発効は、このように間接的に企業に大きな影響を与えることになる。
京都議定書の発効により、米国、オーストラリアを除く先進国(付属書Ⅰ国)は削 減目標の義務をはたす必要に迫られる。以下に、現状における世界及び日本のGHG
排出量について概要を述べる。
2) 世界全体のGHG排出量
世界のGHG排出量は増加を続けているが、2000年の米国、オーストラリアを含 めた世界の総排出量は約230億トン(CO2換算)である。上位15カ国のGHG排 出量の割合及び主要国の一人当たり排出量は下図の通りである。
図-1.2‐1 世界のGHG排出量の比較
図-1.2‐2 各国の一人当たりGHG排出量の比較
GHG排出量の最も多い米国は、毎年50億トン以上を排出し、全世界の約1/4を占 めている。日本は米国の1/4以下であるが世界で4番目に多くのGHG量を排出して いる。
一人当たりの排出量でも米国が最も多く、日本の2倍、中国の9倍、インドの18倍 となっている。
非付属書Ⅰ国(途上国)の排出量は現状少ないものの、既に経済発展の進行ととも に増加しつつある。
経済発展とGHG排出量の抑制の両立した社会システムが、先進国との連携のもとに 形成されることが期待されている。京都メカニズムの CDM を活用した持続可能な 開発が求められる所以である。
京都議定書の第 1約束期間(2008 年~2012 年)では、非付属書Ⅰ国(途上国)に 削減義務や抑制義務などの数値目標はない。上表から、京都議定書を批准していな い米国及びオーストラリア、また非付属書Ⅰ国である中国、インド及びその他諸国 の排出量が約60%を占めている。
このため、京都議定書未批准の米国、オーストラリアを除く、議定書を批准した先 進国が目標の5%を削減しても、2010年時点の世界全体の総排出量は、90年比約30%
増加するという見通しもある。米国エネルギー白書による予測は以下の通りである。
表-1.2‐2 GHG総排出量の予測(2010年)
1990年の排出割合 2010年の排出割合
付属書Ⅰ国 46% 34%
米国、豪州 25〃 25〃
非付属書Ⅰ国 29〃 41〃
GHG総排出量 約210億トン 約275億トン
出所:米国エネルギー白書(環境省資料)
非付属書Ⅰ国(途上国)の2010年のGHG排出量予測は、経済発展により顕著な増 加が見込まれている。
一方、議定書を批准した先進国が目標を達成した場合の削減分は、米国の京都議定 書からの離脱もあり、1990年のGHG総排出量の2%に過ぎないと予測されている。
2002年の日本、EU、米国の削減目標とGHG排出量の増減を1990年基準値と比較 して表すと以下の通りである。(環境省、欧州環境庁、米エネルギー庁データによる)
表-1.2‐3 GHG排出量の現状(2002年)
目標値(1990年基準) 2002年排出量(基準との比較)
日本 -6% +7.6%
EU -8% -2.9%
米国 -7% +11.5%
3) 我が国のGHG排出量
環境省が発表した2003年度の日本のGHG排出量速報値によると、CO2換算した 総排出量は13億3,600万トンであり、京都議定書で規定された基準年(CO2は1990 年)の総排出量と比較すると8%の増加であった。
京都議定書にGHGとして規定された6種類(CO2、メタン、N2O、HFCs、PFC s、SF6)のガス別の排出量は下表の通りである(1990年以降)。
表-1.2‐4 各種GHG排出量
一方、GHG総排出量のうち約9割を占めるエネルギー起源の二酸化炭素(CO2)は、
部門別にみると以下の通りである。
表-1.2‐5 エネルギー起源CO2排出量(2003年度速報値、単位:百万トン)
1990年度
(基準年)
2002年度
(基準年比)
2003年度速報
(基準年比)
産業部門
(工場等)
476 468
(-1.7%)
476
(-0.02%)
運輸部門
(自動車・船舶等)
217 261
(+20.4%)
259
(+19.5%)
業務その他部門
(オフィスビル等)
144 197
(+36.7%)
197
(+36.9%)
家庭部門
(家庭)
129 166
(+28.8%)
166
(+28.9%)
発電所等
(エネルギー転換部門)
82 81.9
(-0.3%)
85.1
(+3.6%)
合計 1,048 1,174
(+12.0%)
1,183
(+12.9%)
出所:環境省ホームページより
上記表では、発電所等のエネルギー転換部門のCO2排出量は各部門へ電気配分を行 った後の数値で表されている。エネルギー起源CO2排出量の約4割を占める産業部 門からの排出量は1990年度比でわずかに減少している。また、エネルギー起源CO2 排出量の1990年以降の経年変化を下図に表す。
図-1.2‐3 エネルギー起源CO2排出量の経年変化
(1) 産業部門及びエネルギー転換部門(発電所等)のGHG排出状況
産業部門及びエネルギー転換部門(発電所等)のエネルギー起源CO2排出量につ いて概説すると以下の通りである。
部門ごとの概説に使用する排出量は確定した2002年度の数値で考察する。上述し てきた2003年度の排出量と少々のずれがあるが大きな差はない。
① 事業用発電部門(エネルギー転換部門)
エネルギー転換部門からの直接排出量は3億7,920万トンである。このうち電 気事業者の発電に伴う排出量は3億4,410万トンであった。原子力発電所のト ラブルにより順次計画点検に入り、原子力発電所運転停止による電力不足を補 うために火力発電による電力量が増加した。従って、対前年度比では、約8.9%
のGHG排出量増加となった。以下に、2001年度及び2002年度の電源構成、
火力発電種別発電量の推移、さらに1990年度以降の全電源発電端CO2排出原 単位の推移を記す。
尚 各部門へ電気配分を行った後の事業用発電部門の排出量は上述の通りで ある。
表-1.2‐6 2001年度及び2002年度の電源構成
注:カッコ内は火力発電の種別電源構成を表す。
出所:電気事業便覧 平成15年版、電力需給の概要(経済産業省)
図-1.2‐4 火力発電種別発電量の推移 出所:電力需給の概要(経済産業省)
図-1.2‐5 全電源発電端CO2排出原単位の推移 出所:電気事業便覧 平成15年版
② 鉄鋼分野
社団法人日本鉄鋼連盟は、1996年12月「鉄鋼業の環境保全に関する自主行動 計画」を策定した。自主行動計画では、「2010年度のエネルギー消費量を1990 年度に対し10%削減目標」を設定しており、フォローアップは毎年1回の頻度 で実施されている。
そのため、鉄鋼連盟ではフォローアップ委員会を設置し、状況の把握及び必要 な対応を取っている。各会員の自らの取組み状況を総合的にとりまとめ、情報 公開している。
2002年度のフォローアップ結果による鉄鋼分野のCO2排出量はエネルギー起 源と非エネルギー起源合計して、1 億 9,160 万トンである。この数値は 1990 年を基準として約7%削減された状況である。
図-1.2‐6 鉄鋼業のエネルギー起源CO2排出量の推移 出所:鉄鋼連盟ホームページ
図-1.2‐7 鉄鋼業の非エネルギー起源CO2排出量の推移 出所:鉄鋼連盟ホームページ
自主行動計画では、「廃プラスチック等の有効活用」、「製品・副産物による社 会での省エネ貢献」、「国際技術協力による省エネルギー貢献」等の目標設定が されている。
③ セメント分野
セメントは石灰石を主原料としていることから、その分解による原料起源の CO2を多く排出している。また、セメント産業はエネルギー多消費型産業であ り、CO2排出量は日本国内の約5%を占めている。
セメント産業は日本経団連の環境自主行動計画に参画し、1996年 12月、「セ メント産業の環境保全に関する自主的行動計画」を策定した。
その中で、「2010年度におけるセメント製造用エネルギー原単位(セメント製 造用+自家発電用+購入電力:一次エネルギーベース)を1990年度比3%程度 低減」を目標として、その後フォローアップを続けている。
2002 年度のフォローアップ結果によると、目標としている「セメント製造用 エネルギー原単位」は各種方策の実施により、2010 年度到達目標値にほぼ近 づいている。
また、セメント産業のエネルギー起源と原料起源の CO2 排出量推移を以下に 図示する。
図-1.2‐8 セメント製造用エネルギー原単位(MJ/t-セメント)
出所:セメント協会 ホームページ
図-1.2‐9 セメント産業のエネルギー起源CO2排出量推移
図-1.2‐10 原料起源のCO2排出量 出所:セメント協会 ホームページ
4)政府の関連委員会の動向
(1) 産業構造審議会環境部会地球環境小委員会
2004年8月、産業構造審議会環境部会地球環境小委員会の中間とりまとめ「今後 の地球温暖化対策について」に於いて、京都メカニズムの活用について報告されて いる。
基本的考え方として、「京都メカニズムは、京都議定書により国際的に合意された 手段である。このメカニズムは、先進国の優れたエネルギー・環境技術及び資金に
より、持続的成長を志向する途上国等において温室効果ガスの排出抑制・削減を効 果的に促進することに寄与するものであることから、世界最高水準の技術を誇る我 が国としても、地球規模での国際貢献の観点から積極的に活用すべきである。」と している。
また、「国内温室効果ガスの排出量は経済成長等により見通しの数値から乖離する ことは十分にあり得ることであり、我が国の地球規模での国際貢献と京都議定書の 約束達成のための確実性向上の観点から、京都メカニズムの積極的・計画的な活用 が不可欠である。」とCDM・JIプロジェクトの実施を京都議定書の目標達成に推 奨している。
京都議定書の約束を達成する観点からは、第一約束期間(2008年~2012年)までに 残された時間は短い。CDM・JIプロジェクトの実施からクレジットの取得までに 3~5年を要することを踏まえれば、我が国は、第 2ステップ(2005 年~2007 年) から、まずは、具体的なプロジェクトの掘り起こしに重点的に取り組むことにより、
京都メカニズムの活用へ向けた取組みを計画的に進めることが重要であり、着実に 取り組んでいく必要がある。
また、京都メカニズムは国内対策の補足的なものとの位置づけにあり、エネルギー 消費効率の改善やCO2排出原単位の改善等、国内温室効果ガスの排出抑制・削減 ポテンシャルの顕在化に最大限努力していくとしても、京都議定書の目標達成には 経済成長等による不確実性が残る。これらの不確実性に対しては、CDMプロジェ クトを含む京都メカニズムの活用により対応すべきである。
さらに、環境部会地球環境小委員会は、政府が京都メカニズムを活用するに際して は、京都メカニズムを活用する意義及び目的を明確にするため、活用手法や対象プ ロジェクト・地域等について活用方針を策定するとともに、それに基づいた取組み を進めることが重要であり、必要な予算面での対応のあり方について、早急に政府 部内で検討を行うべきであるとまとめている。
同時に、民間事業者がクレジットを自主的に償却した場合の制度基盤などを整備す るとともに、その活用の状況を見ながら市場メカニズムの活用を含め、取引の円滑 化等の方策を必要に応じ検討することが重要である。一方、政府は、国連の国際ノ レール策定や効率的な運用等に関して、引き続きイニシアチブを発揮し、京都メカ
ニズム活用の一層の促進へ向けた国際枠組みの整備に取り組むことが重要である と報告されている。
これまで日本政府が承認したCDMプロジェクトは全部で15件を数えるが、この うち幾つかはUNFCCC CDM理事会へ登録申請されているが2005年1月時点で は、正式登録されたものはない。今後、正式登録が増えることが期待される。日本 政府承認の CDM/JI プロジェクトリストは以下の通りである。また、UNFCCC CDM理事会に正式登録されたプロジェクトは2件であり、表-1.2‐8に表示する。
表-1.2‐7 日本政府承認CDM/JIプロジェクト一覧
No 申請者 ホスト国 プロジェクト名 ERs (t/y)
1 NEDO カザフスタン 熱電併給所省エネルギー 62,000
2 豊田通商㈱ ブラジル 木炭を利用した鉄鋼生産 1,130,000 3 電源開発㈱ タイ ゴム木廃材による発電所 60,000 4 イネオスケミカル㈱ 韓国 HFC類の熱分解事業 1,400,000 5 関西電力㈱ ブータン 小規模水力発電計画 500 6 日本ベトナム石油㈱ ベトナム 随伴ガス回収・有効利用 680,000 7 住友商事㈱ インド HFC類の熱分解事業 3,380,000 8 中部電力㈱ タイ ATB籾殻発電事業 84,000 9 電源開発㈱ チリ 食品工場の燃料転換事業 19,438 10 東京電力㈱ チリ 豚舎の発酵メタンの燃焼 79,000
11 東京電力㈱ チリ 同上 84,000
12 東京電力㈱ チリ 同上 249,000
13 昭和シェル石油㈱ ブラジル 埋立処分場メタン分解 870,000
14 NEDO ベトナム ビール工場省エネモデル 10,000
15 鹿島建設㈱ マレーシア LFG発電(クルボン) 60,000
表-1.2‐8 CDM理事会による正式登録プロジェクト
登録日 プロジェクト名 ホスト国 実施国 Meth-No ERs (t/y) 18 Nov
2004
Nova Gerar Landfill Gas to Energy project
ブラジル オランダ AM0003 670,133
11 Jan 2005
RIO BLANCO Small Hydroelectric project
ホンジュ ラス
フィンランド AMS0004 17,800
(2) 中央環境審議会
2004年8月に公開された「地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しに関する中間 とりまとめ」による京都メカニズムの評価と今後の活用について概説する。
京都メカニズムについては、現在の大綱においては、国内対策に対して補足的であ るとする原則を踏まえ、その活用について検討することとされている。
国内対策の目標が超過達成されない場合に京都メカニズムの活用を予定している 量は約 2,000万t-CO2としてきたが、現状においては目標達成に対して不確実性 の高い数値であり、さらに高いレベルでの活用が必要な状況といえる。
現在までに、日本政府として事業承認したCDM/JIプロジェクト案件は合計 15 件 で、これらの事業によるクレジッド獲得予測総量は約816万t-CO2である。これ らの事業は今後CDM理事会等による審査を経ることが必要なものである。
我が国として京都議定書遵守に、京都メカニズムを用いる上の課題として
―企業に対するCDM/JI事業着手への動機付け
―企業から政府にクレジットを移転する仕組みの構築
が挙げられる。これらの課題への対応が十分になされていないことから、現行の対 策・施策のままでは、京都議定書の遵守に京都メカニズムを用いることができない 状況にあると評価されている。
社会経済活動量の変化、対策の実施による削減効果を踏まえて、2010 年における GHG排出量の見通しは、エネルギー起源CO2、非エネルギー起源CO2及びその 他対象ガスを合計して基準年総 GHG 排出量の 6.2%~6.7%上回ることが見込まれ ている。
このことは、大綱の対策・施策を現状のままで実施しただけでは、京都議定書の 6%削減約束が達成できないおそれがあることを示しており、6%削減約束の確実な 達成のために追加的な対策や施策の導入が不可欠であることを示すものである。
したがって、今後の検討に当たっては、国内対策によっても不足する削減量を定量
的に埋めるために、京都メカニズムの活用によって獲得する必要のあるクレジット 量を「地球温暖化対策大綱」に明記した上で、本格的な活用策を講じていく必要が ある。
さらに、京都メカニズムのうち、具体的な排出削減努力に裏付けされ、ホスト国の 持続可能な発展にも資する CDM/JI を中心として活用すべきであると提案されて いる。
また、政府として、京都メカニズムの活用手法や対象プロジェクト・地域等を明ら かにした京都メカニズムの活用方針を定め、これに基づいた取組を進めることが必 要である。
産業構造審議会環境部会地球環境小委員会及び中央環境審議会双方とも、第一約束 期間(2004年~2012年)におけるGHG排出量は、現状のままでは1990年度を 基準とした京都議定書の目標数値を遵守することは困難と予測している。
政府が京都メカニズムを活用するに際しては、京都メカニズムを活用する意義及び 目的を明確にするため、活用手法や対象プロジェクト・地域等について活用方針を 策定するとともに、獲得する必要のあるクレジット量を「地球温暖化対策推進大綱」
に明記し、それに基づいた取組みを進めることが重要である。
さらに、京都メカニズムのうち、具体的な排出削減努力に裏付けされ、ホスト国の 持続可能な発展にも資する CDM/JI を中心として活用すべきであると提案されて いる。
また、京都議定書の約束を達成する観点からは、第一約束期間(2008年~2012年) までに残された時間は短い。
CDM・JIプロジェクトの実施からクレジットの取得までに3~5年を要すること を踏まえれば、我が国は、「地球温暖化対策推進大綱」の第2ステップ(2005年~
2007年)から、まずは、具体的なプロジェクトの掘り起こしを重点的、計画的に取 り組むことが重要であるとまとめている。
また、必要な予算面での対応のあり方について、早急に政府部内で検討を行うべき であるとしている。
(3) 産業界の動向
日本経済団体連合会は地球温暖化対策の自主行動計画を達成する手段として、京都 メカニズムを活用することについて日本政府の合意を得ている。
電気事業連合会は、発電所の省エネ対策だけで自主目標を達成するのが難しい情勢 のなか、京都メカニズムを活用することを表明している。
取得する排出権は、政府が調達する排出権とは別に、5年間で数千万t-CO2になる とも見込まれている。
国際排出権取引の対象となる余剰排出枠を確保できそうな国は限定的であり、また 市場との関係もあり獲得できるかどうか不確実性は高い。
そこで、政府、電力業界が注目している方策が CDM/JI プロジェクトである。既 に、電力、商社、一般企業が積極的に CDM/JI プロジェクトに取り組み、成果を 挙げつつある。
現在、UNFCCC CDM理事会の正式承認の前段階として、CDM 理事会に指定さ れたDOE/AOE が、事業者実施者から申請された事業計画について CDM案件と して有効かどうかの審査を行っている。その数は約50件であり、そのうち日本企 業が関わっている案件は約2割に達している。これはオランダ政府、世界銀行と並 んで、大きな部分を占めている。
しかし、排出権の買い取り仕組みが不透明なうちは、事業リスクが大き過ぎて事業 実施者と投資に踏み切れないという企業の本音も多いのが現状である。
これまで80数件の新方法論がCDM理事会で審議されているが、有効化審査が終 了して、正式登録されたCDMプロジェクトは1件に過ぎない。
産業構造審議会の中間とりまとめでは、「CDM/JIプロジェクトの実施からクレジ ットの取得までに3~5年を要することを踏まえれば、我が国は、第2ステップ(2005 年~2007年)から、まずは、具体的なプロジェクトの掘り起こしに重点的に取り組む ことにより、京都メカニズムの活用へ向けた取組みを計画的に進めることが重要で ある。」と報告されている。
(4) 炭素基金他の動向
2004年12月1日、国際協力銀行及び日本政策投資銀行は、本邦民間企業31社と
ともに、「日本温暖化ガス削減基金(Japan GHG Reduction Fund:JGRF)」(総額 141.5百万ドル)を設立した。
それに先立つ、2004年11月25目、国際協カ銀行及び日本政策投資銀行は、上記 JGRF の大口出資者 5社とともに、「日本力一ポンファイナンス株式会社(Japan Carbon Finance, Ltd.:JCF)」(設立時資本金:8,750万円、)を設立した。
さらに、国際協力銀行は、上述の「.日本温暖化ガス削減基金(Japan GHG Reduction Fund,:JGRF)」との間で、10百万ドルを限度とする投資組合契約を締結した。
日本においては、既にエネルギー効率が高く、温暖化ガスの排出削減余地が限られ ている。このため、費用対効果に優れており、かつ途上国の持続的発展に貢献する 京都メカニズムの活用が GHG 削減のための有効な選択肢として注目を集めてい る。JGRFは京都メカニズムを活用し、京都議定書における削減目標や産業界の環 境自主行動計画の達成に貢献することが期待されている。
CDM/JIプロジェクトは、GHG削減に有効な手段であるが、「カントリーリスク や海外での事業実施のリスク」、「経験の蓄積のない新制度での不確実性への対応 リスク」等が想定される。
国際協力銀行行が、政府系金融機関として JGRF に参加し、これまでの海外プロ ジェクト向け融資・保証等の業務及び京都メカニズムに関する業務協カ協定を通じ て培われた途上国政府等との関係、並びに世界銀行炭素基金への出資を通して得た ノウハウを最大限に活用して、JGRFを支援することになっている。
JGRFは、GHG排出権の購入を主目的としているが、それに留まらず、購入を予 図-1.2‐11 スキーム図