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コロイダルシリカ配列構造を有する新規な生体物質反応基板の開発

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Academic year: 2021

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福岡県工業技術センター  研究報告 No. 19 (2009) 

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コロイダルシリカ配列構造を有する新規な生体物質反応基板の開発 

―免疫反応阻害抑制方法の検討― 

浦川 稔寛*1  吉永 耕二*2   

Adsorption Behavior of Protein to PMMA Plate which Coated SiO

2

Particles

- Control of the immunological reaction inhibition. -  Toshihiro Urakawa and Kohji Yoshinaga

 

新たなタンパク質吸着抑制剤の開発を目的として,コロイダルシリカを二次元界面上へ被覆した基板の非特異的 吸着抑制機能評価を ELISA 法で行った。被覆基板は固相化抗体が埋没し,免疫反応が立体的な阻害を受け免疫反応 率が低下するため,固相化抗体の分子径を変えることで反応阻害を抑制する検討を行った。固相化抗体に IgM を用 いた検討では免疫反応率は改善しなかった。互いに反応する抗体同士を反応させた複合抗体は粒径が増大した。こ の複合抗体を固相化抗体に用いた反応基板を調製し免疫反応率を求めたところ反応率が改善した。したがって,複 合抗体を用いる反応系ではコロイダルシリカをブロッキング剤として用いることが可能であり,免疫反応を阻害す ることなく,未反応抗体の基板上への非特異的吸着を抑制できることが分かった。 

 

1  はじめに 

一般的にタンパク質は疎水的な界面に吸着する事が 知られており,材料表面の親水性を高めることで吸着 が 抑 制 さ れ る1) 〜 10)。 例 え ば , 酵 素 結 合 免 疫 測 定 法

(ELISA)では予めアルブミンやスキムミルクなど反 応に関与しないタンパク質を免疫反応用基板に吸着さ せ,界面に親水性を与えることで未反応の抗体が非特 異的に吸着することを防いでいる11)〜 14)。しかしなが ら,生体由来材料を吸着抑制剤として用いる場合,抗 体との交差反応を常に考慮する必要があるため操作が 煩雑となる。一方,親水性高分子は分子構造を任意に 変化させて目的の機能を付与でき,交差反応も起こら ないため界面の親水性を与える有力な手段となりうる。

さらに親水性高分子の界面被覆によるタンパク質吸着 抑制機能は,親水被膜による表面ぬれ性向上とは異な る分子鎖の立体構造による作用も指摘されており,表 面改質材料としての利用が期待されている15)〜18)。 

筆者らは比表面積を大幅に拡大でき,立体的に嵩高 い親水性微粒子のコロイダルシリカに着目し,異なる 粒径のそれを被覆した界面の調整方法を検討した。さ らに,被覆基板界面が示すタンパク質の吸着挙動の変 化を調べた。その結果,コロイダルシリカを被覆した 界面は,粒径が小さいほど被覆密度が高まることが分 かった。また,被覆密度の増大に伴って界面に吸着す

るタンパク質吸着量が減少することが分かり,コロイ ダルシリカは既存の吸着抑制剤(ブロッキング剤)と 比較して高い吸着抑制機能を有することが分かった。

一方,ELISA法による非特異的吸着抑制機能の評価を 行ったところ,固相化抗体がコロイダルシリカ被覆層 に埋没するため,一次抗体との免疫反応が立体作用に よって阻害を受けることが分かり,コロイダルシリカ のブロッキング剤として利用に向けた障害となること が分かった。そこで,免疫反応の立体的阻害を低減す る方法の検討を行った。本稿ではその検討結果につい て報告する。 

 

2  実験方法 

2-1  実験に使用する試薬 

コロイダルシリカは触媒化成工業(株)製の粒径が 異なる2種(粒径12.5nm:SI-15,33.0nm:SI-30)の 材料を用いた。エタノール,りん酸水素二ナトリウム,

りん酸二水素ナトリウム,塩化ナトリウム,ポリオキ シ エ チ レ ン ( 20 ) ソ ル ビ タ ン モ ノ ラ ウ レ ー ト (Tween20) , 過 酸 化 水 素 水 , o- フ ェ ニ レ ン ジ ア ミ ン

(OPD),硫酸はいずれも和光純薬工業(株)製を用い た。ウシ血清アルブミン(BSA)はシグマアルドリッ チ 製 を 用 い た 。 ウ サ ギ IgG(IgG), 抗 ウ サ ギ IgG(Anti  IgG),ウサギIgM(IgM),ヒト血清アルブミン(Alb.),

抗ヒト血清アルブミン(Anti Alb. IgG),ペルオキシ ダーゼ標識抗ヤギIgG(HRP-Anti goat IgG),ペルオ  

*1  化学繊維研究所 

*2  九州工業大学 

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福岡県工業技術センター  研究報告 No. 19 (2009) 

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キシダーゼ標識抗ヒト血清アルブミンIgG(HRP-Anti  Alb. IgG)はコスモバイオ(株)製を用いた。96穴マイ クロタイタープレートはNunc社製イムノモジュールマ キシソープを用いた。 

2-2  測定機器 

粒度分布測定はシスメックス社製粒度分布測定装置

(ゼータサイザーナノ Nano-ZS)を用いた。酵素免疫 測定法における吸光度測定はデイドベーリング社製プ レートリーダー(BEP Ⅲ analyzer)を用いて行った。

インキュベーターはセントラル科学社製(CB-4)を用 いて行った。表面状態の観察は SEM(走査型電子顕微 鏡:日本電子製 JSM-840F)を用いて行った。 

2-3  測定用基板の調製とタンパク質吸着評価方法  抗原と抗体の特異的免疫反応を利用した測定手法の ELISA 法(酵素結合免疫吸着検定法)をタンパク質吸 着評価手法として用い,未反応抗体の非特異的吸着現 象を OPD を用いた比色法によって調べた。なお,実験 は以下の手順により調製した 96 穴マイクロタイター プレート(基板)を用いて行った。 

PBS および PBS-Tween の調製:りん酸水素二ナトリ ウム,りん酸二水素ナトリウムを用いて調製した緩衝 溶液(pH7.4)に塩化ナトリウムを 0.9%となるよう加 えて,PBS を調製した。また,PBS 溶液に Tween20 を 0.05%となるよう添加し,これを PBS-Tween とした。 

抗体固相化処理:Anti IgG,または IgM の PBS 溶液

(50ng/ml)を基板上の 8 ウェルにそれぞれ 100µl 分 注し,40℃に調整したインキュベーター内で 1 時間静 置して一次抗体を基板上に固相化した。その後,PBS- Tween で 3 回洗浄して抗体固相化処理基板を調製した。

なお,抗体固相化処理をしない基板(0ng/ml)は非特 異的吸着抑制機能評価用基板として用い,以降の処理 を行った。 

ブロッキング処理:抗体を固相化した基板にコロイ ダルシリカの PBS 分散液を 300µl/ウェルの割合で分 注し,インキュベーター内で 40℃,1 時間静置し測定 基板上へコロイダルシリカを被覆処理した。反応終了 後,PBS-Tween で 3 回洗浄した。また,比較として 0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)/PBS-Tween を 300µl/ウ ェルで分注し,同様の方法で被覆処理と洗浄を行った 基板を調製した。 

標識抗体処理:ペルオキシダーゼ標識抗ヤギ IgG の PBS-Tween 溶液(1000,500,250,100,50,25,10,0ng/ml)

を各々のブロッキング剤で処理した基板の 8 ウェルに それぞれ 100µl 分注し,インキュベーター内で 25℃,

1 時間静置して標識抗体と 1 次抗体を反応させた後,

PBS-Tween で 5 回洗浄した。 

発色反応:o-フェニレンジアミン(OPD)を 0.5mg/ml 溶解したクエン酸リン酸緩衝溶液(0.03%過酸化水素含 有)(pH4.5)を調製し,標識抗体処理を行った各ウェ ルに 100µl/ウェルで分注し,抗体に標識されたペル オキシダーゼと OPD を正確に 30 分間反応させた。次 に 2N 硫酸を 50µl/ウェルで分注して反応を停止させ,

各ウェル内で発色した溶液の吸光度(492nm)をプレー トリーダーで各々測定した。 

 

3  結果と考察 

一般的にELISAでは調製の簡便性からIgGが用いられ る。分子量はおよそ140,000〜170,000であり,大きさ は数nm程度である。したがって,IgGを固相化処理し た界面に数10nmのコロイダルシリカを高密度に被覆し た場合,IgGが被覆層に埋没し,免疫反応は立体的な 阻害を受けることが分かった。そこで,免疫反応の立 体阻害を防ぐため,固相化抗体の粒径を増大させて反 応阻害を抑制する検討を行った。 

3-1  IgMを用いた検討 

IgMの分子量は約900,000であり,IgGと比べて約6倍 の分子量を有する。したがって,IgMを固相化抗体に 使用した場合,IgGより分子径の増大し,コロイダル シリカをブロッキング剤として使用した際,固相化抗 体がシリカブロッキング層へ埋没して免疫反応が阻害 を受ける現象を抑制する効果が期待できる。そこで,

IgMを固相化抗体に用いた基板の免疫反応率を評価し た(図1)。 

   

図1  IgMを固相化した基板の免疫反応率 

0 20 40 60 80 100

10 100 1000

免疫反応率 (%)

HRP標識抗IgM (ng/ml) SI-30

SI-15

(3)

福岡県工業技術センター  研究報告 No. 19 (2009) 

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免疫反応率は式1により算出した。 

[Abs.SI] / [Abs.BSA] ×100      (式1) 

Abs.SI  :シリカ被覆基板で測定した吸光度  Abs.BSA  :既存処方で測定した吸光度 

その結果,IgMを固相化した基板の免疫反応率は,

HRP標識抗IgMの添加量の増加に伴って減少する傾向が 確認された。したがって,この方法は反応阻害を受け ていることが認められ,IgMには立体的反応阻害の抑 制する効果は乏しいことが分かった。 

IgMに立体的反応阻害の抑制効果が無かった原因を 解明するため,粒度分布を測定してIgGのそれと比較 を行った(図2)。 

  測 定 の 結 果 , 平 均 粒 径 は ① IgG : 9.7nm , ② IgM : 8.2nmであることが確認され,両者の粒径に大きな違 いは認められなかった。したがって,IgMはIgGと比べ て分子量は増加するものの,分子径には変化がなかっ たため立体的反応阻害の抑制効果が現れなかったもの と考えられる。 

3-2  複合抗体の調整 

抗体分子径の増大させるため,互いに免疫反応する 抗体同士を結合させた複合抗体を調製する検討を行っ た。 

まず,IgGとAntiとIgGを反応させた複合抗体(IgG 複合抗体)およびAnti Alb. IgGとAlb.を反応させた 複合抗体(Albumin複合抗体)を調製し,各々の粒度 分布を測定した(図3,4)。その結果,各々の反応液に は原料と異なる粒径を示す新たなピークが観察され,

複合抗体が生成していることを確認した。したがって,

複合抗体を調製する手法を用いることで,抗体分子径 を増大できることが分かった。 

 

  3-3  複合抗体の免疫反応率評価 

調製した複合抗体を固相化抗体に用いて,ブロッキ ング剤による免疫反応の立体的反応阻害を抑制し,反 応率を正規の状態に維持できるか確認を行った(図5)。 

  0

10 20 30 40

1 10 100

Volume (%)

図4  調製したAlbumin複合抗体の粒度分布  Diameter (nm)

複合抗体 Anti Alb. IgG+Alb. →Albumin 複合抗体

0 5 10 15 20

1 10 100

Volume (%)

図3  調製したIgG複合抗体の粒度分布  Diameter (nm)

複合抗体 Anti IgG+IgG →IgG複合抗体

0 20 40 60 80 100

10 100 1000

免疫反応率 (%)

HRP-Anti goat IgG (ng/ml) SI-30

SI-15

① IgG複合抗体固相化基板

0 20 40 60 80 100 120

10 100 1000

免疫反応率 (%)

HRP-Anti Alb. IgG (ng/ml) SI-30

SI-15

② Albumin複合抗体固相化基板

図5  複合抗体を固相化した基板の免疫反応率 図2  粒度分布測定結果 

0 10 20 30

1 10 100

Volume (%)

0 10 20 30 40

1 10 100

Volume (%)

Diameter (nm)

①:IgG

②:IgM

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福岡県工業技術センター  研究報告 No. 19 (2009) 

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複合抗体を用いた評価の結果,免疫反応率が回復す ることが確かめられた。これは複合抗体の分子径が増 大したことにより,コロイダルシリカのブロッキング 層から受ける免疫反応の立体的阻害が抑制されたもの と示唆され,複合抗体の有効性を示したものと考えら れる。 

  4  まとめ 

コロイダルシリカを用いるタンパク質吸着抑制剤の 開発を目的として,それを被覆した基板に固相化抗体 が埋没して起こる免疫反応阻害の抑制方法を調べた。

反応阻害の原因は立体的な阻害によることから,固相 化抗体の分子径を増大させて免疫反応率を回復させる 検討を行った。はじめに,IgGに比べて分子量が約6倍 大きなIgMを用いて検討したところ,両者の抗体径に は変化がなく,免疫反応率も回復しなかった。次に,

互いに反応する抗体同士を反応させた複合抗体を調製 し,それを固相化抗体として用いた実験系での検討を 行った。調製した複合抗体の抗体径を測定したところ,

粒径の増大が確認された。この複合抗体を用いた反応 基板を調製し免疫反応率を求めたところ,反応率が回 復することが分かった。したがって,複合抗体を用い る反応系ではコロイダルシリカをブロッキング剤とし て用いることが可能であり,免疫反応を阻害すること なく非特異的吸着を抑制できることが分かった。 

 

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参照

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