【同志社大学労働法研究会】 労使慣行の廃止に伴 う給与制度変更の適法性 日本システム開発研究所 事件(平成十八年一〇月六日東京地裁判決平成十八 年(ワ)一九一八号、賃金請求一部認容、一部却下、
一部棄却〔控訴〕労働判例九三四号六九頁)
著者 山本 陽大, 土田 道夫
雑誌名 同志社法學
巻 60
号 1
ページ 295‑321
発行年 2008‑05‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011388
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性二九五同志社法学 六〇巻一号
◆同志社大学労働法研究会◆ 労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性
日 本 シ ス テ ム 開 発 研 究 所 事 件 平 成 一 八 年 一 〇 月 六 日 東 京 地 裁 判 決 平 成 一 八 年( ワ )一 九 一 八 号 、 賃 金 請 求 一 部 認 容 、 一 部 却 下 、 一 部 棄 却︹ 控 訴 ︺労 働 判 例 九 三 四 号 六 九 頁
山 本 陽 大 土 田 道 夫
(二九五)
【事実の概要】
⑴ 被告Y社は、昭和四五年に設立された公益法人であり、﹁学界、官界及び財界のすぐれた頭脳を広く動員することによりシステムズ・アナリシス、ピーピービーエス等の科学的手法を開発・応用し、我が国経済・社会が要求する国 家的課題に対し有効な方策を提供し、もって行財政の効率化に資することを目的﹂とした財団法人である。⑵ 原告A(以下﹁原告A﹂という)は、昭和五九年八月に、原告B(以下﹁原告B﹂という)は、昭和六三年四月に、
原告C(以下﹁原告C﹂という)は、昭和五九年一月に、原告D(以下﹁原告D﹂という)は、平成一〇年四月に、
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性二九六同志社法学 六〇巻一号
原告E(以下﹁原告E﹂という)は、昭和六一年四月に、それぞれ研究員として、被告Y社と期限の定めのない労働
契約を締結し、現在に至っている。⑶ 被告Y社の就業規則によれば、第四章の給与で、第四三条に、﹁職員の給与及び退職金については、別にこれを定
める﹂とあり、給与規則が昭和四八年七月二日より実施するとあり、その後改訂を重ねて、平成一一年七月五日の実施分まで同給与規則は改定されている。そして、同給与規則によれば、被告Y社の給与体系は、本給と諸手当に大き
く分けられ、本給は月額とし、昇給は原則として毎年一回行うとある。被告Y社における原告らの賃金の種類は、本給と諸手当に分類され、諸手当は、イ役職手当、(ロ)資格手当、ハ研究・技術・事務手当、ニ住宅手当、ホ通勤手当、
(へ)期末手当、ト時間外勤務手当、チ夜食手当に分類されている(なお、ハ研究・技術・事務手当に当たる﹁研究手当﹂については、評価ランクによって、支給額が変わる)。
⑷ ところで、被告Y社は、上記のような給与規則の存在にもかかわらず、昭和五八年ころから、職員の給与については、主として四〇歳以上(基準としては三五歳から希望すれば可能なようであるが)の者について、年俸制による給
与条件に関する交渉を毎年行って労使の合意のもとに給与改定を行ってきた。原告らでいうと、原告A、同B、同C及び同Eは年俸者であり(以下﹁年俸者原告ら﹂という)、原告Dは非年俸者となる。
⑸ 非年俸者の賃金の決定過程は次のとおりである。被告Y社は、毎年六月、その年度の春闘相場などを参考にし、給与改定基準及び賞与支給基準を決め、これを労働者に通知してきた。この通知は、﹁平成○年度給与改定基準﹂と題
する文書にされ、労働者に配布される。そして、これらの基準及び個人業績評価に基づき、非年俸者の当該年度の基本給及び手当額が決定し、それとともに夏期・冬期賞与額も決定されてきた。
⑹ 個人業績評価とは、個人の定性評価と所属研究室単位での定量評価により前年度の個人業績を評価するものであ
(二九六)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性二九七同志社法学 六〇巻一号 り、研究手当(基本給に対する一定割合の額)及び賞与支給額の積算根拠となる評価ランクを決定するものである。個人業績評価の方法は、具体的には次のとおりである。まず、︹一︺定性評価については、﹃業績評価法﹄という冊子
に従い、労働者本人が自己評価をし、それを上司(室長)に申告する。それを踏まえて労働者本人と上司とが面接し、上司が労働者を評価する。そして、この上司の評価を部長、常務理事に提出し、これを踏まえて、直属の上司と役員
二名が査定会議を行って、労働者の評価を決定する。︹二︺定量評価については、所属研究室(もしくは個人)の前年度目標達成率から評価が決定される。(なお、被告Y社においては、例年、四月から五月にかけて、研究室長が、
研究室ごとの収支をとりまとめ、﹁定量評価﹂を算出し、﹁付加価値計算資料﹂として被告Y社に提出することになっていた)︹三︺それぞれ決定された定量評価と定性評価のマトリクスから個人の業績評価を決定する。
なお、﹃業績評価法﹄は、被告Y社に雇用される時、これに基づいて評価をされるとの前提で、労働者全員に配布されるものであり、かつ、実際に上記のとおりこれに基づいた評価を労働者は受けてきた。
⑺ 年俸者の賃金の決定過程は次のとおりである。︹一︺例年五月中旬頃までに、個人業績評価を行う
︹二︺︹一︺の個人業績評価と非年俸者についての給与改定基準表を参考にして、被告Y社役員が、交渉開始の目安
となる提示額を計算する︹三︺毎年六月、役員二名(専務理事と常務理事)と労働者一名との個別交渉が約三〇分から一時間ほどの時間を
かけて行われる︹四︺交渉では、︹二︺を開始額として、前年度の成績や職務遂行状況、当該年度の成績見込みと期待する職務等を
前提として、役員と労働者が協議し、最終的な合意額と支払方法を決定する。﹁本給﹂はベース改定、定期昇
(二九七)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性二九八同志社法学 六〇巻一号
給改定を行い、﹁諸手当﹂のうち、﹁研究・技術・事務手当﹂については、前年度の業績に応じ勤務成績を考慮
して個人業績評価を定め、研究室ごとに算出された﹁定量評価﹂により七から一までのランクをつけ、さらに、職員個人ごとに算出された﹁定性評価﹂によりプラスマイナス一の変動を施す方法によって算出していた。
⑻ 被告Y社における従来の賃金決定方法では、﹁付加価値計算資料﹂及び﹁業績評定表﹂の提出が研究室長らからなければ個人業績評価ができなかったところ、平成一五年度、平成一六年度においては、原告Aを含む研究室長らが、﹁付
加価値計算表﹂の提出を拒んだ。そのため、被告Y社は、﹁定量評価﹂及び﹁定性評価﹂がいずれも確定できず、個人業績評価ができなかったことから、平成一五年度と平成一六年度の賃金については、平成一四年度の給与のまま凍
結されて支給された。⑼ 被告Y社の経営事情が悪化し、債務超過の状態にあることが平成一七年度の七月に判明したことから、被告Y社は、
人件費が被告Y社の経営を圧迫しているとの認識に立ち、組織体制を従来の研究室制を廃止して、研究ユニットと企画開発センターに改編した上で、給与体系も、個人業績評価の仕方を改め、従前は研究室長らが作成していた﹁付加
価値計算資料﹂及び﹁業績評定表﹂を理事自ら作成することとして﹁定量評価﹂をし、﹁定性評価﹂を廃止した。⑽ 被告Y社は、平成一七年九月からの新体制への移行を期し、同年七月以降、人件費以外の経費節減にも努め、同年
七月四日には全体会議を開いて平成一七年度の収支見込みや削減項目の大要を示し、理事長から決算状況が赤字で支出を圧縮する必要のあること、非年俸者の夏期賞与は一か月程度とし、年俸者もそれに対応する措置を取ること、就
業規則の見直しをすること、続いてG常務理事から組織再編についていましばらくかかること、夏期賞与の支給についての詳細などの説明があり、職員からの質問には理事長とGが答えており、役員の責任問題や新室長問題が議論さ
れ、賞与について従業員会(組合)と団交中であることや役員の賞与カットが一〇パーセントなのに従業員に一か月
(二九八)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性二九九同志社法学 六〇巻一号 分カットが妥当なのかなどの疑問が提起されている。⑾ 被告Y社は、平成一七年三月三一日付で、研究部幹部並びに研究員に宛てて平成一七年度の年俸交渉に向けて、業
務成績等の提出を同年四月八日までに提出するよう業務命令を発した。しかし、研究室長らからの上記書類の提出が得られなかったので、被告Y社は、受託実績収支をもとに個人業績評価を被告Y社の理事が自ら行い、年俸者らとの
交渉に当たった。被告Y社は、年俸交渉で合意に達しなかった年俸者原告らの給与を、今後の交渉による確定・清算を予定しつつも、被告Y社において暫定的に積算した上で支給している。
⑿ その結果、年棒者原告らについては、多い者で年間約四五〇万円、少ない者で年間約一〇〇万円の賃金減額が行われた。なお、年棒者原告らは全員、被告Y社の賃金減額に同意していない。また、非年俸者である原告Dについては、
平成一七年一二月にこの理事の業績評価により、評価ランクが七から四に変更され、それに伴い研究手当が月額七万五七五〇円から、三万七八七五円に減額されると共に、平成一七年四月から一一月までの研究手当の過払い分をこの
業績評価を前提に算定された冬季賞与額からまとめて控除された。なお、原告Dは、被告Y社の賃金減額に同意していない。
【年棒者及び非年棒者の給与制度】
(年棒者)個人及び上司らによる定性評価 + 研究室長による定量評価 ← 個人業績評価 + 給与改訂基準
(二九九)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三〇〇同志社法学 六〇巻一号
←
Y社役員による目安提示額の決定 ← 労働者との個別交渉 ←
賃金額決定
(非年棒者)
個人及び上司らによる定性評価 + 研究室長による定量評価 ← 個人業績評価 + 給与改訂基準 ←
賃金額決定
【争点】
⑴ 年俸者原告らの賃金減額の有効性⑵ 非年俸者である原告Dに対する賃金減額の有効性(三〇〇)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三〇一同志社法学 六〇巻一号
【判旨】
2.争点⑴年棒者について がいめ決り取てっよに意合行きに期時定一年毎を渉交てた給俸定規はに則規与給は制年こ該当、⋮⋮れらめ認がと与る ﹁すはていおに告被、にる討労検らか過経実事の上以、⑵よてに俸年らか前以当相、い間おに方め決り取の与給に使
ないものの、労使慣行になっていたものと認められる。
ところが、そのような慣行のもと、研究室長らが年俸(あるいは非年俸者の個人業績評価)の取り決めのための基礎
資料等の提出を拒むようになったことや受託実績収支に基づく被告の収入が大幅に減少したことから、被告は組織編成替え並びに給与体系及び給与支給決定方法の変更に着手している。その際に、従来も就業規則の一部である給与規則の
改定をせずに行っていた給与体系及び給与支給決定方法の変更を平成一七年七月以降にとりかかり、全体会議、臨時研究部会議といった場を通じて説明し、職員の同意を得ようとしたが、急な提案であったことから原告らのように一部の
者らからは了解を得られない状況にあることが窺える。
⑶本来、被告において給与支給をするための資料を提出すべきなのにこれを出さない研究室長らは業務命令違反であ
り、そうであるにもかかわらず資料が得られない場合に、被告としては、被告の経営事情に照らした合理性のある給与
金額を算定できる余地は十分にあるものと思われる。
ところで、経営者が、経営事情から組織改編や給与制度を変更することは経営権の行使として当然にありうることで
ある。ただし、そのような変更が労働者の労働条件にとって不利益となる場合には、就業規則があればこれによるべきであり、そうでなければ少なくとも当該不利益を受ける労働者の同意がなければ変更はできないことになる(労働組合
があれば、労働協約を締結すべきであるし、少なくとも労働者の代表者との合意が必要となる)。特に既に労働契約の
(三〇一)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三〇二同志社法学 六〇巻一号
内容となっていて、労働条件の中核をなす給与の減額については、制度として変更する場合にはその必要性及び合理性
が強く求められているものと考えられる。
⑷そのような場合に、被告が今回のように給与規則なり就業規則を変更することなく組織編成を改め、給与支給方法
や取り決め方を改めることがこれに同意していない労働者に対する関係で認められるかが問題となる。
⋮⋮被告は、このような就業規則の変更によらなくとも、さらには労働者との個別の合意がなくとも、必要性、合理
性があり、説明義務を尽くしていれば組織編成替え、給与体系及び給与支給決定方法の変更並びにこれに基づく給与減額は可能であると主張するが、従業員らの同意なり組合あるいは労働者の過半数を代表する者との協定なり合意がない
にもかかわらず、被告が規定の整備・改定といった本来やれるべきことをせずに一足飛びに従来の慣行を一方的に改めることは難しいものといわなければならない。とりわけ、労働契約の中で最も重要な労働条件である賃金(給与)を減
額する場合は、従業員の同意を得ることなく一方的に不利益に変更することはできないというべきであるから、被告のこの点の主張は採用できない。
⑸このように被告によるやむを得ない状況下での給与支給決定経過であったとしても、慣行化していた給与決定方法や給与支給方法が何ら明文化されておらず、これまでの被告の制度構築の仕方に問題があったこと、平成一五年、平成
一六年と経営状況にかかわらず給与支給金額と方法について凍結状態のままで支給が続けられて来ている状況からすると、それまでの被告の対応からは平成一七年度の被告の対応が唐突で職員らに対して説得力に欠けるものであったこと
が窺われる。
それゆえ、労働者である年俸者原告らの同意がない以上、被告が一方的に給与支給額決定方法の変更、支給(精算)
の仕方を取り決めて、結果として給与を大幅に減額して支給していることには年俸者原告らに対する関係で有効性が認
(三〇二)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三〇三同志社法学 六〇巻一号 められず、年俸者原告らは期限の定めのない雇用契約を締結して継続的な労働契約を被告と交わしていること、年俸制といってもその給与体系の内訳は本給は定期に昇給することが原則とされており、給与の支給条件においても前年度の
積み重ねの上に条件決定がなされるであろう合理的期待が生じていると思われること、実際に被告は、平成一五年度及び平成一六年度における給与の支給を前年と同様に実施していることからすると、平成一七年度も給与条件についての
労働者の過半数を代表する者との合意あるいは就業規則の改定による条件が整わない場合には、前年度実績の給与をとりあえず継続して支給すべきことになるものというべきである(被告は必要性と合理性に裏付けられた制度の整備、こ
れに基づく給与制度の改定の周知徹底が急がれるものである)。﹂
3.争点⑵非年棒者について ﹁限て給与額を決定する権がをあり、本件における研し価確にかに、前記⋮⋮のよう使評用者には、従業員の勤務究
手当については、非年俸者についても﹁定量評価﹂と﹁定性評価﹂を組み合わせた年俸者と同様な個人業績評価の労使慣行が形成されていたことが認められる。しかし、従前のそのような労使慣行は労働者との契約内容に取り込まれてい
て、使用者が一方的に変更を自由にできるものとまではいえない。特に、制度・体系の労働者にとっての不利益な変更
がある場合には前記⋮⋮で判断したように就業規則なり給与規則の改定、その周知徹底及び改定の内容が必要性に裏付けられていて合理的なものでなければならない。
本件では、被告が行った給与体系の変更とりわけ定量評価の一次評価が直属の上司である研究室長あるいは組織改編後のユニット長にはなくなり、理事が評価すること、﹁定性評価﹂を廃止することについて、事前の説明が明確に行わ
れているとは認められない。また、一二月からの給与減額のほかに、平成一七年度の四月から一一月までの研究手当の
(三〇三)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三〇四同志社法学 六〇巻一号
過払い分を一二月の冬期賞与の支給額から控除して精算することについても十分周知されていたかどうかは疑問であ
る。そして、従前の労使慣行による前提となる事実⋮⋮と同様の精算が非年俸者について有効になされているとしても、このことゆえに今回の被告の措置が正当化できるものとは考えられない。
したがって、被告の原告Dに対する平成一七年一二月以降の賃金減額は無効であり、現実の支給額と従前に支給を受けていた金額との差額(平成一七年一二月分と平成一八年一月分)を被告は原告Dに支払うべきであり、その後の月例
給与についても従前の支払額が支給されるべきである。﹂
【研究】結論賛成、判旨
2
.⑵、⑸及び
3
.の一部に疑問
1.本判決・事案の特徴 本件は、被告Y社の研究室長及び研究室員である原告らが、被告Y社が一方的に組織編成及び年俸賃金の制度を改定した上で、原告らの給与を減額したことから、従前の年俸賃金との差額賃金を請求するとともに将来分においても現在減額支給を受けている賃金額との差額を請求している事案である。
これに対し、被告Y社は、被告Y社の賃金改訂の必要性及び公正性、客観性があることを理由に本件賃金制度改定及
びそれに基づく原告らの給与等の減額は有効であるとして争っている。
労使慣行が問題となる事案では、第一次的には労使慣行の成立につき争われ、これが認められれば第二次的には当該
労使慣行の破棄が問題となるのが通常であるが、労使慣行にどのような効力が認められるのか、また当該労使慣行を破棄するためにはどのような法律要件のもと認められるのかについては、学説・裁判例とも未だ一致した見解がみられな
い状況にある (
てにな破棄・変更の要件つ方き詳細な検討を行っ的一。決この点につき、本判はの使用者による労使慣行 1)
(三〇四)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三〇五同志社法学 六〇巻一号 おり、実務上重要な意義を有するものと解される。
2.労使慣行の成立
⑴ 労使慣行の意義
労働関係の現場では、労働条件、職場規律、施設管理、組合活動などについて就業規則、労働協約、労働契約などの成文の規範に基づかない取扱ないし処理の仕方(以下、﹁事実的慣行﹂)が長い間反復・継続して行われ、それが使用者 と労働者の双方に対し、行為準則として機能することがある (と成の意合の初当立約で契、りたわに岐み継雑契こるきし律を約働続労るあで係関的多複団上的労使係関のものなど、 用係関の者。使と者働労、は係個別的労働関上のもの、集 2)
は、事実上困難であるといわざるを得ない (
に慣的法ていつに﹂)行的束実事、﹁下以(行慣拘力き象分十はとこるすと対をの察考くべるえ与たてわ行ていおに間れ 。働完不の約契、労るかか性てっ従備るを、者事当、来従て補しと範規す完 3)
合理性のある試みであるといえる。そして、事実的慣行が将来的にも法的拘束力 (
と該ていおに業企当働、でん並と等労条協一とこう担を翼の件ムテスシ定決約働へ、労と昇華すばれそれは就業規則や に認められることをより﹁労使慣行﹂ 4)
なるのである (
。 5)
⑵ 労使慣行たりうる事実的慣行
もっとも、企業において行われている全ての事実的慣行が、労使慣行としての基礎を有しているということは出来ない。まず、労使慣行は両当事者間において、法的拘束力を生じさせるものである以上、事実的慣行の内容が公序良俗(民法九〇条)や強行規定(民法九一条)に違反するものである場合には、当該慣行は労使慣行たりえないし、そのような
(三〇五)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三〇六同志社法学 六〇巻一号
事実的慣行に基づいてなされた当事者の個々の行為も無効となる (
そ則、はに合場るす在存が規業就に業企該当、たま。 6)
れの規定内容より労働者に不利益な事実的慣行がある場合にも、当該慣行は法的拘束力を有し得ないであろう。なぜならば、就業規則については労働基準法(以下、﹁労基法﹂)九三条が最低基準効を付与し、これに達しない労働条件を定
める労働契約は、その部分について無効としているからである (
働否えゆるれさ定が、則原利有、りよに労条な労、論勿は行慣益働利不もりよ約協に六組一働合法(以下、﹁労組法﹂) おに業企。該当、に更てい場労働協約がある合には、労 7)
者に有利な慣行の法的拘束力も否定されることになろう (
。でのに合場るある、す有を能機るみ労充れるなととこるら使め認てしと行慣す補約協働労が行を 。協実事と約て働労、慣っ従的合行が競する場面では、当該慣 8)
⑶ 労使慣行の法的拘束力の根拠
a) 裁判例の変遷 では、労使慣行に法的拘束力が認められる根拠は何か。この問題に対して、最近の裁判例の圧倒的多数は、﹁事実たる慣習﹂に関する民法九二条を実定法上の根拠としている。
そして、その要件について述べたおそらく初の裁判例は、日立電子事件(東京地判昭四一・三・三一労民集一七巻二
号三六八頁)であろう。同判決は﹁当該慣行が企業社会一般において労働関係を律する規範的な事実として明確に承認され、或いは当該企業の従業員が一般に当然のこととして異議をとどめず当該企業内においてそれが事実上の制度とし
て確立している底のものであることを要する。﹂と判示した。
しかしその後、国鉄池袋電車区・蒲田電車区事件(東京地判昭六三・二・二四労判五一二号二二頁)以降、事実たる
慣習(民法九二条)を根拠とする裁判例はそのほとんどが、以下に掲げる三つの要件を判断基準とするようになった。
(三〇六)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三〇七同志社法学 六〇巻一号 すなわち同判決は、﹁労使慣行は、それが労働契約の内容となる場合には労働契約としての、就業規則ないし労働協約の解釈基準等としてそれらと一体のものとなるときは就業規則、労働協約としての効力を持つものと解され、その成立
のためには、同種行為又は事実が長期間反覆継続されていること、当事者が明示的にこれによることを排斥していないこと及び当該労働条件についてその内容を決定しうる権限を有し、あるいはその取扱いについて一定の裁量権を有する
者が、規範意識を有していたことを要するものというべきである。したがって、当該取扱いが就業規則の規定と抵触する場合において、右取扱いが労使慣行となり得るためには、右就業規則を制定改廃する権利を有する者か、あるいは実
質上これと同視し得る者が、当該慣行について規範意識を有していたことを有することになる。﹂と判示した。従って、これによれば労使慣行が事実たる慣習(民法九二条)として法的拘束力を付与されるためには、①当該労使慣行が長年
反復継続してきた事実、②それについて、労使双方が明示的に意義をとどめていないこと、③特に使用者がそれに従うという規範意識を有していること、が要求されることとなる (
。 9)
更に、労使慣行が就業規則・労働協約と矛盾抵触する場合については、商大八戸ノ里ドライビングスクール事件高裁判決(大阪高判平五・六・二五労判六七九号三二頁 (
しえ示を準基断判な細詳りよ、でうたしと提前を件要三記上、が) 10)
ている。同判決によれば﹁労使慣行が右の要件を充たし、事実たる慣習として法的効力が認められるか否かは、その慣
行が形成された経緯と見直しの経緯を踏まえ、当該労使慣行の性質・内容、合理性、労働協約や就業規則との関係⋮⋮、当該労使慣行の反復継続性の程度⋮⋮、定着の度合い、労使双方の労働協約や就業規則との関係についての意識、
その間の対応等諸般の事情を総合的に考慮して決定すべきものであり、右の慣行が労使のどちらに有利であるか、不利であるかを問わないものと解する。それゆえ、就業規則・労働協約と矛盾抵触し、これによって定められた事項を改廃
するのと同じ結果をもたらす労使慣行が事実たる慣習として成立するためには、その慣行が相当長期間、相当回数にわ
(三〇七)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三〇八同志社法学 六〇巻一号
たり広く反復継続し、かつ、右慣行についての使用者の規範意識が明確であることが要求される﹂こととなる。
b) 学説の状況 以上に対し、学説においては諸説あるが、代表的なものとしては、労使慣行を既存の法源になぞらえて、それと同等の効力を認めようとする立場と、裁判例と同様に事実たる慣習(民法九二条)に依拠する立場が挙げられる。
前者としては、﹁労働条件慣行は多くの場合、不文の労働協約ないし、不文の就業規則としての性格をもつ (
も就﹁就業規則規範的慣行で、業行規則を補充する法的性質をは慣や件説や、使用者の方針配慮から形成された労働条 ﹂るすと 11)
つ (
﹂とする説がある。 12)
他方、後者については、事実たる慣習(民法九二条)を根拠とする点、及び要件として①当該労使慣行が長年反復継
続してきた事実、②それについて、労使双方が明示的に異議をとどめていないこと、③特に使用者がそれに従うという規範意識を有していること、を挙げるものが多数説である。
特に山口教授は、事実たる慣習(民法九二条)たりうるためには、社会における法的確信までは必要ないものの、特定の地域、職業社会などにおける普遍性が要求される (
かのか、はに合場いなぎ過に行慣内業企一が行慣使労、し対にの 13)
る普遍性を補充するため、③の規範意識の存在を要求すべきことを強調する (
。 14)
また、民法九二条にいう事実たる慣習というためには、①・③の要件で足り、②の当事者双方が明示的に異議をとど めていないことは、規範意識の存在を認定するための重要な要素とすれば足りるとする見解もある (
。 15)
これらに対し、水町准教授は契約当事者の意思を補充するにすぎない﹁事実たる慣習﹂の判断において規範意識(規
範性)の有無(③)を問う必要があるかは疑問であり、一企業内の取扱いにすぎないものに﹁事実たる慣習﹂の成立を
(三〇八)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三〇九同志社法学 六〇巻一号 認めることには解釈上無理がある。労使慣行については、①一定の事項について当事者がこれによるという意思をもって行動し(行為による意思の実現)、②この点について両者の意思が合致している(意思表示の合致)といえる場合に、
﹁黙示の合意﹂が成立しているとして法的効力を承認するという構成をとるべきであるとする (
。 16)
⑷ 本判決の検討(判旨
2
.⑴、⑵及び
3
.の一部について)
以上をもとに本判決をみると、本判決は事実経過から直接的に労使慣行の成立を認定してしまっており、労使慣行が
法的拘束力を有する根拠、その要件及び本件において法的拘束力の認められる労使慣行の範囲については何等説示しておらず、説得力の欠ける判断であるとの感は否めない。
ではまず、本件事実関係を前提に、本件労使慣行に法的拘束力を認めるためにはどのような構成がありうるのであろうか。労使慣行の法的根拠につき、既存の法源になぞらえて、それと同等の効力を認めようとする立場 (
に対しては、﹁あ 17)
る一定の事実が権利の発生、消滅、障害、阻止事由として働いている当事者の権利関係を規制するためには、そのため法律上の根拠規定(実体法上の)が必要であり、しかもその一定の事実が予定された規定の法律要件に該当しなければ
ならない (
労根れるのは、明文上の拠め規定(労組法一六条、ら認やがあるとか、﹁労働協約就﹂業規則に規範的効力で 18)
基法九三条)が存在するからであり、労使にはその合意に規範的効力が付与されるための手続として、書面化や記名押印が義務付けられている(労組法一四条、労基法八九条)のであるから、こうした労使慣行自体に規範的効力を認める
立場は妥当性を欠く (
あ味るた実事はていおに意習のそ、がいならなばね慣(と理が性能可はてしと論法民がうほの説)条二九法せ介を定媒 妥る批るかかも者評。ていれさ示提が判批の判当はら規の上法体実のか何﹂、てっ従。るえ考とと 19)
る (
。 20)
(三〇九)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三一〇同志社法学 六〇巻一号
しかしながら、上記・水町准教授の批判は、より説得的である。この点について、そもそも規範的意識の要件(③)
に対するかかる批判は、民法九二条の﹁法律行為の当事者がこれによる意思を有しているものと認められるとき﹂に関する民法学における通説的理解の影響を受けたものと考えられる。すなわち、民法学においては﹁慣習﹂の場所的範囲
を一定の地域や職業単位のように広く捉えた上で、そのような慣習は契約当事者の意思を補充するに過ぎないのであるから、規範性の有無を問題とする必要は無く、さらには当事者は慣習の存在を知っている必要すらないと説く (
。 21)
従って、議論は一企業内における慣習にまで、民法九二条の適用範囲を拡張できるかという困難な問題に帰着するが (
り力立しているとして法的効をが承認するという構成が採成﹂、意法九二条によらずとも本件においては﹁黙示の合民 、 22)
うるように思われる。
そして、本判決が認定する労使慣行の成立の基礎となった事実経過は以下の三点である。すなわち、①本件において
は二〇年以上年棒制が採用されており、年棒につき原告らはそれぞれ一〇~二〇年間にわたり毎年合意を交わしてきたこと、②平成一五年・一六年についても被告Y社は年棒制に向けて個人業績評価のための資料を要求しており、これを
拒まれたため、この二ヵ年については平成一四年度の給与水準を維持する形で暫定的に支給していること、③原告らも被告Y社による変更後の給与体系に基づく年棒金額交渉には同意していないこと、である。
そうすると、本判決が認定すべきところの本件労使慣行とは﹁個人及び上司らによる定性評価と研究室長による定量評価による個人業績評価と給与改訂基準を加味して、目安額を決定し、労使が交渉を行い最終的な合意額・支払い方法
を決定すること、及び仮に交渉が妥結に至らなかった場合には、前年度の給与水準を維持して支給すること﹂をもって、その具体的内容であったというべきである。以上の内容における﹁本件労使慣行﹂は、水町准教授の指摘する上記・二
要件を満たし、年棒者・非年棒者双方につき、労働契約の内容となっていたものと考えられる。特に、この点について
(三一〇)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三一一同志社法学 六〇巻一号 は、後述の労使慣行の破棄の部分を検討するにあたっての前提問題であり、慎重な認定が求められるところであったため、本判決の労使慣行の成立に対する判断は不十分であるとの批判は免れないであろう。
3.労使慣行の破棄
⑴ 問題の所在
労使慣行の破棄とは、労使慣行を終了させてその法的効果を停止させる行為である。従って、破棄が問題となるため には事実的慣行の存在が認められるのみならず、それが将来についても法的拘束力を有することが前提となる (。 23)
労使慣行の破棄の態様としては、一般的には次の三つが挙げられる。すなわち、①労使の合意による方法、②当該労 使慣行と別異の事実の形成による方法、③一方的告知による方法がある (
らのと題問が棄破行る慣使労に際実、なのあ、か者用使に特のはらか者事当方一りでや稀ケース自然消滅するケースは 労、らが解なしかが使約合意によって。するし 24)
の告知による破棄が出来るか、出来るとすればその要件は何か、という点に絞られる (
。 25)
⑵ 裁判例・学説の状況
前述のように、当該労使慣行を破棄するためにはどのような法的効果が認められるのかについては、裁判例においては未だ一致した見解がみられない。例えば、全日本検数協会事件(大阪地判昭五三・八・九労判三〇二号一三頁)では、就業時間中の組合活動を理由とする欠勤については五〇分の一の賃金カットにとどめるという取扱いが、労使慣行として﹁被告と従業員の間の労働契
約の内容をなしていると認められる以上、これを変更するには特別の事情のない限り従業員全員の承諾がなければなら
(三一一)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三一二同志社法学 六〇巻一号
ないことは当然であるといわねばならない。﹂と判示しているのに対し、ソニー・ソニーマグネプロダクツ事件(東京
地判昭五八・二・二四労判四〇五号四一頁)においては、三か月間または一年間精勤した従業員に対し各々三日または七日(年間合計一九日)の襃賞休暇もしくは襃賞金を付与する旨の就業規則の定めの下で、右期間精勤した従業員が当
該年度内に襃賞を受けることなくこの権利を歴年保留蓄積できる取扱いをしてきたところ、これを新たに年間一九日を超えた場合は、その超えた日数につき襃賞金として精算する旨就業規則を変更した事案について、﹁従業員の有する右
地位は、被告ら会社において、就業規則等に褒賞の保有日数を制限する旨の明文の規定を設けず、また実際に、褒賞の保有日数を制限したこともなく、使用者が一定の取扱いを事実上継続してきたことから⋮⋮労働慣行上生じたものであ
り、したがって被告ら会社の従業員が本件規則変更前に享受していた利益も右のような性質の労働慣行上の地位から生じたものにすぎないのであり、将来合理的理由がある場合に就業規則により右取扱いを変更されないことまでの保障を
受けていたものと解することはできない。﹂とする。
更に、石川島播磨東二工場事件(東京地判昭五二・八・一〇労民集二八巻四号三六六頁)判決は、傍論ではあるが﹁い
わゆる労働慣行の性質、法的根拠、効力については講学上種々議論のあるところであり、右のように使用者の労働条件に関わる猶予的取扱いが慣行化したことによる従業員の利益が、はたして権利とまでいえるものかどうかについては問
題のあるところであるが、当裁判所は、このような従業員の利益も使用者が恣にこれを奪うことはできず、就業規則の作成又は変更によってもこれを変更し、一方的に不利益な労働条件を課することは、原則として許されないが、労働契
約関係が継続的な契約関係であること及び労働条件の集合的、画一的処理の要請から、当該変更が合理性⋮⋮を有する限り、個々の労働者がこれに同意しないことを理由としてその適用を拒否することはできないものと解するのが相当と
考える(最判昭和四三年一二月二五日民集二二巻一三号三四五九頁参照)。﹂として就業規則の変更による労使慣行の破
(三一二)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三一三同志社法学 六〇巻一号 棄を認めている。
なお、以上の判断枠組みのいずれにもよらない裁判例も少なからず存在する。例えば、岡山電気軌道事件(岡山地判
平六・一〇・一二労判六六六号三六頁)は、基本給以外の賃金についてストカットしないという﹁確立した労使慣行を破棄するには、⋮⋮その理由及び必要性を示して、説得交渉の手続を踏むべきである。﹂と判示している。
他方、学説においては、そもそも労使慣行の破棄に何等理由を要求しない立場もある。例えば、山口教授は慣行の性質上期間の定めというものは考えられないから、期間の定めのない合意の一般原則からみて、合理的理由を要しないと
する (
。 26)
これに対し、水町准教授は就業規則変更法理の理論的根拠・性格に着目し、信義則上、就業規則の合理的な変更によ って労使慣行を含む労働契約内容を変更する権利が使用者に付与されていると解釈することによって、問題の調整的解決を図るべきであるとする (
行使の法律要件に①労間破協議の履行、②慣棄行思慣れに類似するとわ。れる立場としてこ 27)
破棄の合理的理由の主張立証、③相当な猶予期間の設置を要求する見解もある (
。 28)
⑷ 本判決の検討
a) 判旨2要判(ていつに件の.棄破行慣使労⑶旨
3.の一部含む) 使用者による一方的な労使慣行の破棄につき、本判決は給与制度の﹁変更が労働者の労働条件にとって不利益となる
場合には、就業規則があればこれによるべきであり、そうでなければ少なくとも当該不利益を受ける労働者の同意がなければ変更はできないことになる(労働組合があれば、労働協約を締結すべきであるし、少なくとも労働者の代表者と
の合意が必要となる)。特に既に労働契約の内容となっていて、労働条件の中核をなす給与の減額については、制度と
(三一三)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三一四同志社法学 六〇巻一号
して変更する場合にはその必要性及び合理性が強く求められているものと考えられる。﹂とする。
かかる判示部分によれば、本判決は労使慣行を破棄する手段として①労使の合意、②就業規則の変更、③労働協約の締結を挙げているものと考えられる。このうち、①労使の合意及び③労働協約の締結によって労使慣行を破棄できるの
は、私的自治及び協約自治の観点からすれば当然のことであろう。とすれば、結局のところ、問題は本件労使慣行を就業規則の変更により破棄できるかという問題に帰着する。
この点につき、就業規則を変更することにより、労働者の労働条件を不利益に変更できるかという問題一般については、秋北バス事件(最大判昭四三・一二・二五民集二二巻一三号三四五九頁)を皮切りに﹁新たな就業規則の作成又は
変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、
当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない﹂とする判例法理 (
が確立されている。 29)
思うに、労使慣行が労働契約の内容となる場合、その取り込まれ方には二パターンある。まず、労使慣行と就業規則の関係として、ある労使慣行が既存の就業規則の内容が抽象的あるいは不明確であるがゆえに、かかる就業規則の明確 化・具体化を図るという関係にあるというパターンが考えられる (
法れのもの内囲範るさあ容許てしと釈解でれ補事民(習慣るた実がば拠根的法のそ、充定則旨規規定の趣との関連で規 にていお該合場るか該当当労使慣行が、。する就業か 30)
九二条)であるにせよ、あるいは黙示の合意であるにせよ、法的拘束力が認められるものと解するべきである (
。 31)
このような場合には当該労使慣行はそれが補充する就業規則規定の存在を前提としているのであるから、一方的作成
権者である使用者により、就業規則規定が変更されたならば、当該労使慣行はその存在の基礎を欠き法的拘束力を失う
(三一四)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三一五同志社法学 六〇巻一号 こととならざるを得ない。その後の処理は上記・就業規則の不利益変更法理に委ねられることとなろう。従って、労使慣行が就業規則を補充する関係にある場合には就業規則の変更による破棄は可能である。
他方、ある労使慣行が就業規則に定める基準を上回る規範として存在しているパターンも考えられる (
のっる慣習(民法九二条)であて実も、労働契約という法律行為た事黙合行の法的根拠が、の示意論とこでの勿ばれあ 。慣使労るかか 32)
内容を補充する機能を有するのであるから、就業規則におけるそれを上回る、契約上の権利義務を労使合意の結果として設定することとなる。
判例をみる限り、労使慣行が労働契約の内容となる場合、当該慣行は集団的労働条件についてのものであることが一般的であるといえよう (
容条が要求される労働件処につき、その変更内理的不合記・就業規則の利。益変更法理は、集上 33)
が合理的なものである限り、新たな就業規則の作成・変更によって、労働者に対し従前より不利益な労働条件を、一方的に課することも可能とするものなのであるから、結局のところ、かかる場合についても、同法理の射程内にあるとい
うべきであり、当該労使慣行を就業規則により破棄することは可能であると思われる。従って、本件労使慣行の内容は賃金制度という集団的労働条件なのであるから、労使慣行の破棄による労働条件の不利益変更に際し、﹁就業規則があ
ればこれによるべきであ﹂るとした本判決の判断は正当として是認できる。
b) 判旨 2対いつに断判るすに.張主の社Y告被⑷て 以上の点に関連して、本件において被告Y社は、このような就業規則の変更によらなくとも、さらには労働者との個別の合意がなくとも、必要性、合理性があり、説明義務を尽くしていれば組織編成替え、給与体系及び給与支給決定方
法の変更並びにこれに基づく給与減額は可能であると主張する。かかる主張は①変更の必要性、②変更内容の相当性、
(三一五)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三一六同志社法学 六〇巻一号
③不利益性の程度、④代償措置・経過措置等を﹁総合判断﹂したうえで当該条項が合理的なものであるかぎり、個々の
労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないとする、上記・就業規則の不利益変更法理 (
更しにまで拡張せめるた主張と考え権変れよを、使用者にる件一方的な労働条ら 34)(
。 35)
しかしながら、同法理の射程は、前述のように、就業規則による集団的労働条件の変更について例外的に法的拘束力を認めるものなのであって、就業規則によらない集団的労働条件の変更はその射程外にあるというべきである。そうす
ると、もはや被告Y社において契約内容であるところの本件労使慣行を一方的に変更しうる権能は存在しないがゆえに、かかる場合にはなお私的自治の原則が貫徹され、本件労使慣行はあくまで労働者との個別の合意なくしては変更す
ることはできないはずである。従って、かかる被告主張を採用しなかった本判決の判断は正当として是認することができる。
c) 判旨 2の判(ていつに性効有額.減金賃るけおに件本⑸旨
3.の一部含む) もっとも、評者としては本件における賃金減額の有効性についての判示部分には疑問がある。以上をもとに本件事実関係をみるに、本件労使慣行中の﹁個人業績評価制度﹂の変更、すなわち﹁定性評価﹂の廃止と﹁定量評価﹂の主体が
研究室長から理事へ変更される点については、被告Y社が①労使の合意、②就業規則の変更、③労働協約の締結のいずれの手段も採っていないことが伺えるため、当該部分の破棄が法律上何等の意味を持たないことは言うまでも無い。従
って、被告Y社としては年棒者・非年棒者両方について、変更前の個人業績評価制度のもと賃金決定しなければならないところ、確定まで一定の期間を要するため、暫定的にいくら支給すべきかが問題となる。この点につき、前年度実績
の給与を暫定的に継続して支給すべきとする本判決の判断は、結論においては正当というべきである。 (三一六)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三一七同志社法学 六〇巻一号 そして、前述した通り本件労使慣行の下では、交渉が妥結に至らなかった場合には、前年度の給与水準を維持して支給することも含めて、その内容となっていたと解するべきであるから、かかる前提に立つ以上、当該結論が論理的に導
かれるのは当然のことである。
しかしながら、本判決が判旨
2な拠はそれとは異りる、①原告らは期論い.該⑸において、当結用論を導くために限
の定めのない労働契約を締結していること、②原告らにおいて、前年度の積み重ねの上に賃金決定がなされるであろうことについての合理的期待が生じ、実際に被告Y社は平成一五・一六年度については前年と同様の賃金決定を行ってい
ることを挙げるのみであって、妥当ではない。なぜなら、①無期労働契約の締結と定期昇給には本来何等の牽連もなく、使用者の制度設計に委ねられるべきものであるし、また、②合理的期待の侵害と構成する以上、その法律効果はあくま
で損害賠償請求に止まり、本件労使慣行の契約内容への転化は生じないのであるから、転化を前提とした前年度実績の給与との差額請求は認められないはずだからである。
そうすると、本判決が挙げる論拠によっては当該結論を帰結し得ないのであり、論理プロセスが極めて不透明であると言わざるを得ない。結局のところ、この問題は本判決が労使慣行成立の検討において、本件労使慣行の内容について
の認定判断を誤った点に由来するものであると思われる。
2. 4かを討検の分部提前るかはで決判本、にうよたべ述欠
いた点において、不十分であるとの批判を免れないのである。
4.おわりに 以上のように、本判決は労使慣行の成立を認めたうえで、その破棄の要件につき従来の判決に類を見ない詳細な検討
を行ってはいるものの、少なからず不十分な点があることは否定しがたい。特に、上記の通り本件において法的効力を
(三一七)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三一八同志社法学 六〇巻一号
認められる労使慣行の範囲については、結論に対し影響を及ぼしかねない部分であるため、裁判所による認定判断が必
要不可欠であると考える。従って、この点については控訴審での慎重な判断が求められる。以 上
(
( 1寺有座二一世紀の労働法(三)﹄(斐﹃閣、二〇〇〇年)一八七頁。講編井と基博﹁労働条件の決定・変更労) 使慣行の法理﹂日本労働法学会
( 2菅︺﹄(。頁七七)年七〇〇二、堂文弘版野) 第正補版七第︹法働労﹃夫和二
( 3菊〇有斐閣、二〇四版年)二四頁。︺﹄(三池行高志﹁労使慣﹂﹃) 労働法の争点︹第
( 。的実事該当は題問、てっ従る行あでとこの然当はのるれさ視慣が適か。るえいとるあで点ういとつ﹁持を力束拘的法もに﹂的来将法 4) が得を礎基の意合、度都のそ為い行たいづ基に行慣的実事るあてた限俗いなし反に等)条〇九法民(良の序公が為行の々個、ばれあでり
( 点﹃史隆井下、きつにの働こ。うろあのもの例労で基二準。頁一)年七〇〇一、四閣︹法第版︺﹄(有斐 てし立成が﹂習慣事るた実﹁ういるとい件と最よ異は決判裁高事説スバ北秋・掲後くるにそかる。則のようななでで、労働条件は就業規あ 5に行慣内業企、と行的慣使労に域地たえ超を枠の業企は別的論理区) す題者後がどんとほ、はのるなと問るていおに日、がる来出がとこ本
( 6こ二五四・六・五労判三五判号二五頁)がある。昭高の東ような事案として、北) 地方建設局事件(仙台
( 労徳島地判昭四五・三・三一民件集二一巻二号四五一頁)等。( 7洋が、てしと例判裁たれさと効無行事慣いなし達に準基の則規業就太工興・業事件(大阪地判昭五八・七) 精九労判四一五号四四頁)、光洋一
( 8有し言からして、原則とての否定すべきであろう。文条利は性原則の肯否について議) 論があるが、労組法一六
( 判阪地判平九・二・一二労一七)三。るあが頁三三号〇 る九慣習(法拠二条)を根実た一事、おな。等)頁六四号八明八と民言例せ大(件事日社会式株、てしと宣判要裁に、記三上件を用いたず 六頁三二号五四五判労支・五・元平判倉小地日岡)、一本決(判労五二・七・三平地大京東(件事)年定(学福件朝険保上海災火日事)、頁 判五浜労七九一)、号二六頁六東・支・三六昭判中原田小地横(件事京休央七五五号六八六判労八二・六・平郵裁高京東(件事)権息転(局便所 9運二そは例判裁るすと拠根)条九ほ法民(習慣るた実事、他のそのと津断府国鉄国、ばえ例。るいてし判んてっ従に件要三るかか、がど) なてと。﹂るきでがとこるす認是し示と当正ていおに論結、は断判判し審様えいはとるいてっ立に解見の同たと決判裁高にち直、ずぎ過にの 10) に七平判小一最(決判裁高最は的三般、一りおてれさ告上は件事同・・﹁用は決判、同がい多がとこるれさ引九が方の)頁〇三号九七六判労原
(三一八)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三一九同志社法学 六〇巻一号 い点に注意すべきである。(
( 11本、(一)﹄(総合労働研究所一講九八一年)一三〇頁。座法田日淳亮﹁労働法の法源﹂本) 労働法学会編﹃現代労働
( 集京高判四三・一・二六高刑昭二)一。るがあ頁三二号一巻 っ、こ立に解見なうよのおおな。るれらてめ認をいててるこ東(件事区車電町、田しもと例判裁るれわ思とのと﹂もいな得をるざらまどとにの 12八九一(労号二六誌会学法働行本日﹂理法の年慣使労﹁史征子金三) )いな的論試、﹁身自授教子金はてつ一に解見のこ、し但。八一―六頁
( 13我、。頁二五二)年五六九一店妻) 波岩﹄(則総法民訂新﹃栄書
( 14山九一三三号(一八働四年)六七頁。法労口行浩一郎﹁労使慣と) 破棄の法理﹂季刊
( 15香(法律旬報一三一九号一労九九三年)三七頁。働﹂山力忠志﹁労使慣行の効と) その変更是正の方法・上
16し九頁。かかる立場に対て一、例えば寺井・前掲注〇―) 有水町勇一郎﹃労働法﹄(斐八閣、二〇〇七年)一〇(
( 束黙﹁るすとるせさじ生を力拘の的法に的来将、てみと表徴の示も合お意。るれわ思とす有を義意るな慣﹂て構成は使労行論におい 。のる反あで在所じ題問がかる生しが復事て慣束思意者当を行的繰実事たれさ返り力拘合て的においては意があっも、法もに的来将がれそ るため使、労る慣行自体の成すそ形を容内の為行律法がれ的に然法る効る面場の々個、らがなしかし。す力判批とばなく無は要必じ論を当 1れあが意合は頁〇九一書)
( 17もの法九二条)説と類似判(断基準を示している。民習っ要とも、かかる立場も件) 論については事実たる慣
18) 香山・前掲注(
( 15)論文三五頁。
19) 寺井・前掲注(
( 1)書一九一頁。
( ﹂﹃判裁・念記暦還子兼てのし心中を係関の習慣の法と諸〇問。下以頁九六)年一七)﹄(題九(下有斐閣、一 詳して開いるて細についをは展て判批な力有が授教栖来はし対来、。栖義三二九法民と習慣の条二例法
―
条意解の郎﹁法の釈における慣習 法において二適用通則法業条内お企一、はていにり限るよにれいこにいう。に説通るかか、らがなし慣しかるる習が成れす立余地は無とさ が、りあで説通の通適かは習ういに条二法則用法りはていおに学法、民がるるな慣の得す解とるあで﹂法広慣﹁た習をさ範に適用囲れ的確信法 限るものに法り、律同一関すとに項事いないてれさ定規に令法効のえ力条れら又考もとこるすと拠根を二を法則通用適法るすと。﹂るす有は 20のて公﹁かほの条二九法民、はし秩と拠根の上法体実、でろことの序も、たれらめ認りよに定規の令法は又習慣いなし反に俗風の良善は)。六二・一一・〇昭判判小一最(件八例聞四るあが)頁九一時号八七一一報事 21部斐頁九〇一)年三七九一、閣有淡)﹄(三(法民釈注﹃編宣武島川(路分立)。また、このような立) につ剛裁判例として、京都新筆執久場
(三一九)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三二〇同志社法学 六〇巻一号
(
( 根この場合は民法九二条が法的に拠えに。うれらよ考がとこるな 行の慣もりよ会社域地市どな群や村町るれさ社のと会な。るあが摘指の題るく的広にかるはは囲範当妥と問合場法民はてっよに合場、はにで 22︺﹄(版七第︹力選百例判働労﹂﹃彰効の行慣使労﹁斐村浜、もとっも有) 閣業の業企大の模規人万数が数員従、、ばれよに頁一五年二〇〇二) 23) 寺井・前掲注(
( 1)書一九九頁。
24) 山口・前掲注(
( 14)論文六八―六九頁。
25) 寺井・前掲注(
( 1)書一九九頁。
26) 山口・前掲注(
14、注掲前・井寺た)ま。頁八六文論(
( 1)書二〇一頁も同旨。
27) 水町・前掲注(
( 16)書一〇八―一〇九頁。
( 28深九会誌六二号(一八法三年)一〇五頁。学働谷破信夫﹁労使慣行棄) の法律問題﹂日本労
( 一くのちみ)、頁二一号〇七行判労八・二・九平判小二銀二事労件。等)頁号七八七判六七平・最一小判一二・九( ・二七四平判小ヤ最(件事ーイ一ハ・銀三第小最(件事行四)、労頁六号〇三六判型一昭・最二小判第五八・一一二件五労判四一八号二一頁)、( 29在現、れさ持維し返り繰いて法おに例判裁高最の後のそは理は同で) 議る事ムテスシダケタ、ばえ例。い論てし移に論件要のそろしむは行
( 30前っ行が問題となた使事案である。慣労掲道・岡山電気軌事) 件は、このような
31) 金子・前掲注(
( 11)論文二一頁。
( 32下こ束力を認められないとには前述の通りである。拘的回法るものについては労基九) 三条ゆえに、そもそも法
( 解法志同﹂力効の知告約更五変たれわ行てしと的目学社九一。いたれさ照参を巻以頁下三二三三(号〇〇七年) gÄndergskündigununはて理を(知告約解更変もお員に国が我、もにめたるて整い人るい﹁つに点のこ。え考とるあ承稿拙、)を認すべきで めよの手段は意、個別合にのたる棄破行慣使労るけおに合場かしかるるか身す処対に態事かか、はてしなと自べいと解す者るきである。評 。、てっ従る者使に行慣労は示表思意の用たっしうこ、くなはとこるれなよ使て入ととこいなし有かし形意のれ味申約成れた契さ内の変更容 自慣行それ破体を棄す旨労使る該当、りよにとこるす更変を則意の更思内さ業変は件条働労たっなに容約表契働労んたっい、もてしを示規 33就ば条働労的別個、はに的論理れによに説意合の示黙、もとっも件つがあ者用使、はに合場るかか。るはい地余るす立成が行慣使労もて)
。﹂﹃第︹点争の法働労更版変益利不の則規業就三︺﹄(覚七照参頁九七一―六一有)年四〇〇二、閣斐﹁ 34たタ前び及・件事ムテスシダケ・・掲前は準基断判性理合るかか掲第も青のである。詳) については、野四れさにから明りよに件事行銀細
(三二〇)
労使慣行の廃止に伴う給与制度変更の適法性三二一同志社法学 六〇巻一号 (
。則準を理法更変益利不の規し業就、もに更変の件条用て労、るあで決判る残が問疑がいるきでがとこるみとる働 35三例険保災火動日上海京東るあで判件裁の近最、てし連関に点のこ事(頁九)は、) 種という個別号五六一東時判六二・三・九一平判地京職
注記
― 本稿のうち、裁判例・学説の引用に係る﹁注﹂の一部は土田が執筆した。
追記
― 本稿は二〇〇八年一月時点をもって脱稿したものであるが、本文中において扱っている就業規則の不利益変更法理は、二〇〇八年二月頃施行予定の労働契約法(平成一九年法一二八号)九条及び一〇条によって、立法化されたことをここに一言触れておく。
(三二一)