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岩﨑, 可奈子

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

絵画における自然光利用の有用性に関する研究 : 自 然光を採光した作品展示の実践的考察

岩﨑, 可奈子

http://hdl.handle.net/2324/4110517

出版情報:九州大学, 2020, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

氏 名 :

岩﨑可奈子

論 文 名 :

絵画における自然光利用の有用性に関する研究 -自然光を採光した作品展示の実践的考察-

区 分 : 甲

論 文 内 容 の 要 旨

本研究は、自然光を絵画作品の一部として取り入れる有用性を、実践的な手法を用いて明らかに することを目的とした。また、表象としての光の特質について実験や外部評価を踏まえて考察し、

作品に取り入れる手がかりを探った。現在の絵画作品の多くは、人工光照明の設置された展示空間 で鑑賞される。これは作品の保護、天候や時間経過による影響を受けない鑑賞空間を目的としてい る。自然光は変化しやすい光であるが、この特徴を生かすことで、人工光にはなし得ない表現が可 能であるとした。そこから作品表現への自然光の利用を着想した。

第一章では、作品制作における生命感という表現の模索の中で見出した表象としての光について 取り上げた。作品の制作過程において、鑑賞者に体験を提供する展示形式の効果と表現としての光 の効果の二つに着目し、予備実験として、物質を透過させた光を確認し、光を透過させる展示を行 った。予備実験では、有機物と無機物の試料に対する人工光と自然光の透過の見えを確認した。自 然光では、光の当たり方が均一であり、色彩のむらや変化があること、時間の経過による光量の変 化により色彩の濃淡が変化するということも分かった。人工光での見え方では、中心に近いほど光 が強く、光の強弱が強くみられることを確認した。以上から、光の表現の描写にはゆらぎという要 素が重要ではないかという仮定をした。

人工光を透過する作品の展示では、光を透過させた作品とさせない作品を比較した主観評価を行 い、人工光を透過する展示では、透過させない展示形式と印象の変化が見られなかった。人工光を 透過した作品では、画面全体への均一な光の照射、光のぼやけといった効果は薄いことなどが確認 できた。試料の自然光透過させた測定実験や意識調査では、温かさや明るさ、動きといった要素が より生命感を想起させ、自然光透過によりそれらの効果をもたらすことができると推測した。

第二章では、光の特徴について取り上げた。ここでは、光のもたらす印象と効果について、照明 などの鑑賞の場における見るための光と、芸術における表現としての光という二つの側面を文献調 査などから考察した。ものの見え方に関する光の影響では、自然光にはすべての色の波長が含ま れ、人工光には欠けている波長があり、この違いが見え方に影響を及ぼし、鑑賞時だけでなく、作 品制作時にも影響があると分かった。展示照明では人工光が使われることが多いが、自然光の効果 から鑑賞の場の照明として使用される場合もあることが分かった。

表現としての光に関しては、印象派の画家であるクロード・モネの作品を中心に考察を行った。

モネをはじめとする印象派の画家たちは、自身が体験した主観の光の体験に忠実であり、光の描写 を色彩分割法や補色の関係、筆触といった描法などを用いて追求した。特にモネの描く光には体感 的な特質の追求が見られた。考察から、自然光は芸術の中に取り扱われるとき、時間の経過の表象 として現れると考え、このような光の特質を生かすことで、「印象の体験」という要素を取り入れ ることができると仮定した。

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第三章では、自然光を取り入れる作品と展示方法の模索と有用性の検討を行った。自然光の持つ 特徴が作品の印象にどのような影響をもたらすのかを検証した。この実験では時間ごとの分光分 析、印象評価、主成分分析を行った。

自然光を透過させた作品とさせていない作品の印象評価では、透過させた作品が透過させない作 品よりも「個性的な」「女性的」「明るい」「暖かい」「美しい」「面白い」「好き」「良い」の 評価のほうに得点が位置していたため、自然光を透過させるという手法は、より強くこれらの印象 が強めると推測できる。また「好意的」「ゆらぎ」の成分も高く、「近寄りがたさ」が低いことか ら、透過させる展示は、親しみやすく、画面上に光の変化による動きをもたらすことを確認した。

このことから、自然光を透過させる手法は、時間の経過による変化などの特徴を保持しながら、

肯定的な印象を鑑賞者に与えることが期待できる。

本研究では自然光には次のような表現の効果があると結論付けた。まず自然光にはぬくもりや均 一の光による明るさ、ゆらぎなどを作品に与えるという特徴から生命感を感じさせ、「特定の時 間」の体感をもたらす効果がある。そして自然光を透過させる手法は、照射する手法に比べて肯定 的な印象を抱かせやすい傾向があることである。筆者はいのちをテーマとした作品制作を契機とし て自然光を作品表現に用いる研究を行ってきた。本研究で確認できた自然光の特徴は、いのちを意 識させる手法として適していると考える。

実際の展示において、他光源の影響による配慮が必要であることや印象評価と光に含まれる波長 の関係などを今後の研究を進めるうえでの課題としたい。

最後に第一章から第三章までで得られた知見などを述べ、本研究の結論とした。

参照

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