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論文の内容の要旨

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Academic year: 2021

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様式8の1の1 別紙1

論文の内容の要旨

No.1

専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 八講 学

回折光学素子とは、光の回折現象によって入射光を制御する素子の総称である。レ ンズやミラーといった従来の光デバイスにとって抑制されるべき性質としてみなされ てきた回折現象を用いて、分光や波面制御を行う素子として産業分野で広く用いられ ている。近年、回折光学素子は高精細なイメージング機器に適用され、製造誤差によ って発生する微弱な散乱光を抑制する技術と共に、散乱光強度分布から素子の欠陥・

形状情報を抽出することを求められている。しかし、これまでに、散乱光から回折光 学素子の形状情報を得られることは実証されていない。これは、回折光に対し散乱光 の強度が微弱なため、高精度な計測と計算を行うことが難しいためである。

本論文は、回折光学素子の発生する回折光強度の1/10未満の強度を有する、回折角度 以外に伝搬する散乱光である背景散乱光を評価することで、回折光学素子の欠陥・表 面形状を高精度に推定することを目的とする。

背景散乱光を用いた回折光学素子の形状推定は、背景散乱光の計測値と計算値との データマッチングにより行われる。データマッチングは、想定される素子の形状に対 する計算結果の集合である計算ライブラリを蓄積する学習段階と、計算ライブラリと 計測値とを照合する実行段階からなる。学習段階では、計算ライブラリとともに、キ ャリブレーション計測で得られたシステムの空間的応答特性が蓄積される。このシス テム特性は、マッチングする散乱角度範囲である背景散乱光の特徴領域を決定する際 に、計算値とともに用いられる。実行段階では、システム特性の情報を用いて計測値 のノイズが除去される。特徴領域におけるデータマッチングにより、ノイズ除去後の 計測値と計算ライブラリとの差分に対する二乗平均平方根が閾値以下となる計算値が 選択される。選択された計算値に対応する形状が、計測サンプルの形状であると推定 される。

第一の研究では、周期欠陥を有する矩形回折格子が発する背景散乱光強度を用いて 、 欠陥の形状と大きさが推定できることを計算機シミュレーションにより示した後、キ ャリブレーション計測結果を用いてシステム応答特性を得た。背景散乱光強度の計測 値と計算値とは約108のダイナミックレンジにわたって良好な一致を得た 。また、計測 システムのサンプリングノイズと、高精度に計測可能な散乱角度範囲が、システム特 性として得られた。

(2)

様式8の1の1 別紙1

論文の内容の要旨

No.2

専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 八講 学

第二の研究では、蓄積された計算ライブラリと計測値とのデータマッチングを実行 することで回折光学素子の格子高さと格子幅を推定した。

第一の研究で得られたシステム特性の情報を用いて、計測値のサンプリングノイズ を除去した。この際に用いられるノイズ除去の計算方法を新規に開発した。この方法 は、背景散乱光強度の計測値の対数に対しフーリエ変換を繰り返し演算することで、

計測値に含まれるサンプリングノイズを高精度に除去するものである 。

システム特性と計算ライブラリを用いて、以下に示す3つの条件から背景散乱光特徴 領域を決定された。第1の条件は、物体モデル形状の変化に対して背景散乱光強度の計 算値の変化が大きい散乱角度領域であること、第2の条件は、偏光の違いによって背景 散乱光強度の計算値の変化が大きい角度領域であること、第3の条件は、データ処理後 の計測値の回折光強度ピーク付近の角度を除外した角度領域であること。得られた特 徴領域において、ノイズ除去後の計測値と計算ライブラリとのデータマッチングを実 行した。データマッチングの結果は、特徴領域外においても計測値と計算ライブラリ との良好な一致を示した。また、異なる偏光に対するデータマッチングが有効である ことを示した。さらに、計測システムの高いダイナミックレンジを活かし 、±1次の回 折光強度の情報を用いると、形状推定精度がさらに向上することを示した。得られた 推定結果は、(格子高さH [nm],格子幅L [nm])とし、(H1460, L2580)、(H1470, L2580)、

(H1450, L2620)、(H1460, L2620)、(H1470, L2620)、(H1450, L2660)の6つの形状であ った。これはサンプル表面形状の走査型電子顕微鏡による計測値 (H1470, L2660)に対 し、サンプルの異なる計測位置によって数10 nmの形状変化があることを考慮すると妥 当な値である。

本研究は、私が知る限りにおいて、回折光学素子の表面形状が背景散乱光強度を用い て高精度に推定できることを実証した初めての報告である。抑制されるべき性質とし てみなされてきた回折現象の研究が回折光学素子という新しい光学素子を発展させた ように、抑制されるべき光である背景散乱光を精密に評価する手法の構築が回折光学 素子の高品質化を実現するものと考える。本研究によって、背景散乱光から回折光学 素子の形状が推定可能であることが実験と計算の両面で示さたことで、この実現に向 けた研究の発展が促された。

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