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03丹羽真理 大学生の塩分摂取意識と生活習慣・食行動等との関連Hijiyama University Institutional Repository

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(1)

Bul. Hijiyama Univ. Jun. Col., No.53, 2018

Ⅰ.緒言

近年,糖尿病,高血圧症,脂質異常症等の生活習慣病が増加しており,生活習慣病発症の若年化が懸 念されている。これらの疾患は,食事,運動,休養,飲酒,喫煙などの生活習慣と密接な関係があり, 健康日本 21 において生活習慣病の発症予防及び健康寿命の延伸のための目標が設定されている。特に, 栄養・食生活の項目については多くの生活習慣病の一次予防のほか,生活の質および社会機能の維持・ 向上の観点から重要である1)

生活習慣病の中でも高血圧は頻度の高い疾患で,平成 25 年国民健康・栄養調査によると高血圧症有病 率は 50.6%で,年齢が上がるにつれて増加傾向にある2)。また,高血圧治療ガイドライン 2014 では,高 血圧症有病者は約 4300 万人と試算されており,血圧が高くなるほど全心血管病,脳卒中,心筋梗塞,慢 性腎臓病などの罹患リスクおよび死亡リスクが高くなるとされている。食塩過剰摂取と血圧上昇との関 連は多くの研究で認められており,集団の食塩摂取量が 6g/ 日低下すれば 30 年の加齢による収縮期血圧の 上昇が 10 〜 11mmHg 抑制されると推定され,高血圧発症前から減塩に取り組むことが重要である3)4)

日本人の食塩摂取量の平均値は年々減少傾向にあるものの,男性 11.1g/ 日,女性 9.4g/ 日2)とまだ 多く,日本人の食事摂取基準(2015 年版)の食塩摂取量目標である男性 8g/ 日,女性 7g/ 日5)に近づ ける必要がある。日本人の食塩摂取量は多くを加工食品から摂取していることから,個人の減塩意識を 高めると同時に,社会全体で市販食品や外食の栄養成分表示と栄養成分の改善に取組むことにより,食 塩摂取量の低下が期待できる1)3)

また,若い世代では朝食の欠食が多い,食事バランスがとれていない,自分で調理し食事づくりをす る機会が少なく外食が多いなどの課題が多く挙げられており,早い段階から健全な生活習慣を身につけ, 実践することが重要である1)6)

そこで本研究では,健康日本 21 の目標の 1 つである食塩摂取に着目して,大学生を対象にアンケー ト調査を実施し,塩分に対する意識と生活習慣・食行動・塩分摂取状況等との関連を検討するとともに, 今後の大学生の食生活改善を図り,健康的な生活の実現に役立てることを目的とした。

Ⅱ.研究方法

1.調査時期,調査方法および調査対象者

2015 年 7 月,広島市内の A 大学の学生を対象に,調査時に調査目的を説明して調査協力の同意が得 られた 221 名に無記名自記式アンケートを実施した(有効回答率 99.5%)。

* 1 総合生活デザイン学科

大学生の塩分摂取意識と生活習慣・食行動等との関連

(2)

2.調査内容

調査内容は,属性 4 項目(学年,居住形態等),生活習慣 4 項目(起床時刻等),健康状態 3 項目(健 康状態,ストレス等),食習慣 9 項目(朝食,昼食,夕食,間食の摂取状況等),食行動 7 項目(食事選 択基準,栄養成分表示の活用状況等),塩分知識・塩分摂取状況 6 項目(食塩摂取目標量に関する知識, 汁物の摂取状況等)の計 33 項目とした。

3.集計および解析方法

全項目を単純集計した後,塩分を控えようと心がけている群と心がけていない群に分け,SPSS 22.0 for Windows でクロス集計を行った。身長,体重については平均値および標準偏差を求めて t 検定を行 い,その他の項目はχ2検定を行った。統計的有意確率は 5%未満を採択した。

1)塩分意識の区分

塩分を控えようと心がけているかの回答肢 4 項目(心がけている,ときどき心がけている,あまり心 がけていない,心がけていない)の中から 1 項目回答してもらい,「心がけている」「ときどき心がけて いる」と回答した者を「塩分を控えようと心がけている群(A 群)」とし,「あまり心がけていない」「心 がけていない」と回答した者を「塩分を控えようと心がけていない群(B 群)」の 2 群に分類した。 2)体型の区分

対象者が記入した身長と体重から BMI 体重(kg)/ 身長(m)2を算出し,日本肥満学会の肥満度の判定基 準7)に基づき,18.5 未満を「やせ」,18.5 以上 25.0 未満を「普通」,25.0 以上を「肥満」の 3 区分に分類した。

Ⅲ.結果

1.塩分意識と対象者の属性・体型との関連

表 1 に塩分意識と対象者の属性・体型との関連について示した。

対象者の塩分意識は,塩分を控えようと心がけている群(以下,A 群という)が 66.5%,塩分を控え ようと心がけていない群(以下,B 群という)が 33.5%であった。

性別は女性 90%,居住形態は家族と同居 82.7%と多く,有意差は認められなかったものの B 群に家 族と同居が高率であった。平均身長は 154.2±33.0cm,平均体重は 50.9±7.6kg,平均 BMI は 20.2±2.3 であった。BMI はやせ 19.4%,普通 77.7%,肥満 2.9%で,有意差は認められなかったもののやせは A 群に多かった。

2.塩分意識と生活習慣との関連

表 2 に塩分意識と生活習慣との関連について示した。

(3)

3.塩分意識と健康状態との関連

表 3 に塩分意識と健康状態との関連について示した。

健康状態は,全体でとても健康 20.4%,まあまあ健康 60.2%と回答している者が高率であったが,ス

表 1 塩分意識と対象者の属性・体型との関連

(%)

項目 カテゴリー n=221全体 100

塩分意識

p値※

A群 n=147

66.5

B群 n=74

33.5

学年 1年生 47.1 49.0 43.2 0.174

2年生 51.1 50.3 52.7

3年生 1.8 0.7 4.1

性別 男性 10.0 9.5 10.8 0.763

女性 90.0 90.5 89.2

居住形態 家族と同居 82.7 79.6 89.0 0.157

1人暮らし 15.9 18.4 11.0

その他 1.4 2.0 0.0

身長(cm) 平均値±標準偏差 154.2±33.0 152.8±35.8 155.6±30.1 0.550 体重(kg) 平均値±標準偏差 50.9±7.6 50.1±6.7 51.7±8.5 0.196

BMI やせ 19.4 22.3 13.4 0.320

普通 77.7 74.8 83.6

肥満 2.9 2.9 3.0

平均値±標準偏差 20.2±2.3 20.1±2.3 20.3±2.2 ※身長・体重はt検定,その他はχ2検定

表 2 塩分意識と生活習慣との関連

(%)

項目 カテゴリー n=221全体 100

塩分意識

χ2検定 p値 A群

n=147 66.5

B群 n=74

33.5

起床時刻 午前7時まで 70.1 71.4 67.6 0.688 午前8時まで 23.1 22.4 24.3

午前9時まで 3.6 2.7 5.4

午前10時まで 2.3 2.0 2.7

午前11時以降 0.9 1.4 0.0

就寝時刻 午後11時まで 7.2 7.5 6.8 0.020

午前0時まで 19.5 14.3 29.7 午前1時まで 48.9 55.1 36.5 午前1時以降 24.4 23.1 27.0

睡眠時間 5時間未満 13.6 15.0 10.8 0.133

5〜6時間未満 48.4 51.7 41.9 6〜7時間未満 25.8 24.5 28.4 7〜8時間未満 11.8 8.8 17.6

8時間以上 0.5 0.0 1.4

休養が充分 充分とれている 8.2 4.8 15.1 0.062 とれているか まあまあとれている 40.9 42.2 38.4

(4)

トレスや疲れを感じるかの回答も 89.6%と高率であった。また,健康診断の際に血圧項目で指摘を受け たことがある者は,A 群 14.3%,B 群 20.3%であり,有意差は認められなかったものの B 群に指摘を 受けたことがある者の割合が高率であった。

4.塩分意識と食習慣との関連

表 4 に塩分意識と食習慣との関連について示した。

食事時間は毎日決まっている,大体決まっているをあわせて 66.0%であった。朝食をほぼ毎日食べる 72.4%,昼食をほぼ毎日食べる 94.1%,夕食をほぼ毎日食べる 90.0%と毎食食べている者の割合が高く, 間食はほぼ毎日食べる 23.5%,週 4 〜 5 日食べる 21.7%,週 2 〜 3 日食べる 33.9%,ほとんど食べない 20.8%でいずれも両群間に差はみられなかった。また,外食利用頻度,コンビニ・お持ち帰り弁当の摂 取頻度,インスタント食品・冷凍食品の摂取頻度についても差はみられなかった。

主食・主菜・副菜を 3 つ揃えて食べることが 1 日に 2 回以上あるのは週に何日あるかでは,A 群は ほぼ毎日食べる 29.3%,週 4 〜 5 日食べる 25.9%,週 2 〜 3 日食べる 33.3%,ほとんど食べない 11.6%, B 群は各々 31.1%,12.2%,33.8%,23.0%と,B 群は A 群に比べて主食・主菜・副菜を 3 つ揃えて食 べていない者の割合が高率で有意差が認められた(p< 0.05)。

5.塩分意識と食行動との関連

表 5 に塩分意識と食行動との関連について示した。

現在の自分の食事状況は良いかでは,少し問題があると思う,問題があると思うをあわせると A 群 50.3%,B 群は 60.9%で,両群とも問題であると思っている者の割合が 5 割を超えていた。自分の健康 づくりのために栄養や食事について気をつけているかでは,気をつけている,ときどき気をつけている をあわせて A 群 87.0%,B 群は 69.4%と両群とも気をつけいる傾向ではあるが,A 群は B 群より栄養 や食事に気をつけている者の割合が高率で有意差が認められた(p< 0.01)。料理をする頻度は A 群ほ ぼ毎日作る 19.0%,週 4 〜 5 日作る 8.8%,週 2 〜 3 日作る 25.9%,ほとんど作らない 46.3%,B 群は各々 12.2%,0.0%,29.7%,58.1%で,A 群は食事を作る者が B 群より高率で有意差が認められた(p < 0.05)。

食事をするときどのような基準で選ぶかでは,A 群は価格 56.5%,栄養バランス 50.3%,その時の気 分 45.6%の順に,B 群は価格 50.0%,好物 48.6%,その時の気分 41.9%の順に高率で,両群とも価格を

表 3 塩分意識と健康状態との関連

(%)

項目 カテゴリー n=221全体 100

塩分意識

χ2検定 p値 A群

n=147 66.5

B群 n=74

33.5

現在の健康状況はどうか とても健康 20.4 20.4 20.3 0.954 まあまあ健康 60.2 59.2 62.2

あまり健康でない 17.6 18.4 16.2 健康でない 1.8 2.0 1.4

ストレスや疲れを感じるか 感じる 89.6 89.8 89.2 0.889 感じない 10.4 10.2 10.8

健康診断の際に、血圧項目で 受けたことがある 16.3 14.3 20.3 0.256 指摘を受けたことがあるか 受けたことがない 83.7 85.7 79.7

(5)

最も重視していた。両群間に有意差が認められたのは栄養バランス(p < 0.05)と塩分(p< 0.05)の 2 項目であった。どのような栄養成分を意識して食品や料理を選択するかでは,A 群はエネルギー 66.0%, 脂質 43.5%,塩分 32.7%の順に,B 群はエネルギー 50.0%,特になし 29.7%,脂質 24.3%の順に高率で, 両群ともエネルギーを意識して選択していた。両群を比較するとエネルギー(p< 0.05),たんぱく質(p < 0.05),脂質(p < 0.01),塩分(p < 0.001),特になし(p < 0.01)の 5 項目で有意差が認められ, A 群は B 群より高率に栄養成分を意識して選択していた。栄養成分表示は役に立つかでは,A 群とて も役に立つ 44.2%,どちらかといえば役に立つ 49.0%,役に立たない 0.7%,わからない 6.1%,B 群は各々 20.3%,47.3%,1.4%,31.1%で,A 群は B 群に比べて栄養成分表示を役立てている者の割合が高率で

表 4 塩分意識と食習慣との関連

(%)

項目 カテゴリー n=221全体 100

塩分意識

χ2検定 p値 A群

n=147 66.5

B群 n=74

33.5

食事時間は決まっているか 毎日決まっている 12.2 14.3 8.1 0.452 大体決まっている 53.8 54.4 52.7

あまり決まっていない 24.9 22.4 29.7 決まっていない 9.0 8.8 9.5

朝食摂取状況 ほぼ毎日食べる 72.4 71.4 74.3 0.967 週4〜5日食べる 13.6 14.3 12.2

週2〜3日食べる 8.1 8.2 8.1 ほどんど食べない 5.9 6.1 5.4

昼食摂取状況 ほぼ毎日食べる 94.1 95.2 91.9 0.470 週4〜5日食べる 4.1 3.4 5.4

週2〜3日食べる 0.5 0.7 0.0 ほどんど食べない 1.4 0.7 2.7

夕食摂取状況 ほぼ毎日食べる 90.0 93.2 83.8 0.164 週4〜5日食べる 7.7 5.4 12.2

週2〜3日食べる 1.4 0.7 2.7 ほどんど食べない 0.9 0.7 1.4

間食摂取状況 ほぼ毎日食べる 23.5 20.4 29.7 0.203 週4〜5日食べる 21.7 24.5 16.2

週2〜3日食べる 33.9 36.1 29.7 ほどんど食べない 20.8 19.0 24.3

外食利用頻度 毎日利用する 1.4 1.4 1.4 0.951

週4〜5日利用する 8.2 8.9 6.8 週2〜3日利用する 52.3 51.4 54.1 利用しない 38.2 38.4 37.8

コンビニ・お持ち帰り弁当は ほぼ毎日食べる 1.4 2.0 0.0 0.682 どのくらいの頻度で食べて 週4〜5日食べる 5.5 5.4 5.6

いるか 週2〜3日食べる 34.7 34.7 34.7

ほとんど食べない 58.4 57.8 59.7

インスタント食品・冷凍食品 ほぼ毎日食べる 5.5 3.4 9.6 0.199 はどのくらいの頻度で食べ 週4〜5日食べる 12.3 12.9 11.0

ているか 週2〜3日食べる 42.7 45.6 37.0 ほどんど食べない 39.5 38.1 42.5

主食・主菜・副菜を3つ揃え ほぼ毎日食べる 29.9 29.3 31.1 0.036 て食べることが1日に2回以 週4〜5日食べる 21.3 25.9 12.2

(6)

有意差が認められた(p < 0.001)。商品購入時や外食時に栄養成分表示を見るかでは,A 群はいつも見 ている 19.2%,ときどき見ている 52.1%,あまり見ていない 15.8%,見ていない 13.0%,B 群は各々 9.5%,32.4%,27.0%,31.1%で,A 群は B 群より栄養成分表示を見ている者の割合が高率で,有意差 が認められた(p < 0.001)。

6.塩分意識と塩分知識・塩分摂取状況との関連

表 6 に塩分意識と塩分知識・塩分摂取状況との関連について示した。

1 日の食塩摂取目標量として「望ましい目安量」についての回答は,全体で 6g,7g,8g と回答した

表 5 塩分意識と食行動との関連

(%)

項目 カテゴリー n=221全体 100

塩分意識

χ2検定 p値 A群

n=147 66.5

B群 n=74

33.5

現在の自分の食事状況は良いか 大変良いと思う 7.7 6.8 9.5 0.289 良いと思う 38.5 42.9 29.7

少し問題あると思う 46.2 43.5 51.4 問題あると思う 7.7 6.8 9.5

自分の健康づくりのために、 気を付けている 21.9 22.4 20.8 0.004 栄養や食事について気をつけて ときどき気を付けている 59.4 64.6 48.6

いるか あまり気を付けていない 14.6 11.6 20.8 気をつけていない 4.1 1.4 9.7

どのくらいの頻度で食事を作るか ほぼ毎日作る 16.7 19.0 12.2 0.022 週4〜5日作る 5.9 8.8 0.0

週2〜3日作る 27.1 25.9 29.7 ほとんど作らない 50.2 46.3 58.1

食事をするときどのような基準 栄養バランス 44.3 50.3 32.4 0.011

で選ぶか 好物 44.3 42.2 48.6 0.361

(複数回答) 価格 54.3 56.5 50.0 0.363

満腹感 29.0 29.3 28.4 0.893 高カロリー 7.2 6.8 8.1 0.724 低カロリー 26.2 29.9 18.9 0.079

塩分 6.3 8.8 1.4 0.031

その時の気分 44.3 45.6 41.9 0.603 特になし 1.8 0.7 4.1 0.076 どのような栄養成分を意識して エネルギー 60.6 66.0 50.0 0.022 食品や料理を選択するか たんぱく質 9.0 12.2 2.7 0.020

(複数回答) 脂質 37.1 43.5 24.3 0.005

炭水化物 18.1 17.7 18.9 0.822 ビタミン 17.6 21.1 10.8 0.059 塩分 24.9 32.7 9.5 0.000 特になし 19.5 14.3 29.7 0.006 栄養成分表示は役に立つか とても役に立つ 36.2 44.2 20.3 0.000

どちらかといえば役に立つ 48.4 49.0 47.3 役に立たない 0.9 0.7 1.4 わからない 14.5 6.1 31.1

商品購入時や外食時に栄養成分 いつも見ている 15.9 19.2 9.5 0.000 表示を見るか ときどき見ている 45.5 52.1 32.4

(7)

者を合わせた割合は 82.3%と高率で,両群間に差はなかった。味噌汁 1 杯 150cc に入っている食塩量に ついても,A 群 0.6g25.3%,1.4g45.2%,2.2g24.0%,4.2g5.5%,B 群は各々 36.5%,36.5%,23.0%,4.1 %で,両群間に差は認められなかった。

味を確認せず調味料をかけて食べることがあるかでは,A 群ある 5.4%,ときどきある 25.2%,ない 69.4%,B 群は各々 17.6%,29.7%,52.7%で,B 群は A 群より味を確認せずに調味料をかけて食べる 者の割合が高率で有意差が認められた(p < 0.01)。また,汁物の摂取頻度,麺類を食べる頻度,麺類 を食べるときに汁を飲むかの回答については,いずれも両群間に差はなく,関連は認められなかった。

Ⅳ.考察

若い時からの食習慣が将来の生活習慣病発症の要因となる1)6)ことから,大学生に対して食育を行 っていくことは重要である。また,食塩の過剰摂取は高血圧および脳卒中や心臓病,腎臓病,さらには 胃がんのリスクを増加させる可能性がある3)-6)ことから,1 日の食塩摂取目標量は男性 8g,女性 7g と されているが5),食塩摂取量の平均値は男性 11.1g,女性 9.4g と多い2)。そこで,本研究では健康日本 21 の目標の 1 つである食塩摂取に着目して大学生を対象にアンケート調査を実施し,塩分に対する意

表 6 塩分意識と塩分知識・塩分摂取状況との関連

(%)

項目 カテゴリー n=221全体 100

塩分意識

χ2検定 p値 A群

n=147 66.5

B群 n=74

33.5

あなたの食塩1日あたりの摂取量 4g 14.5 17.1 9.5 0.446 として「望ましい目安量」に1番 6g 41.4 38.4 47.3

近いものはどれか 7g 29.1 30.8 25.7

8g 11.8 10.3 14.9

10g 2.7 2.7 2.7

13g 0.5 0.7 0.0

味噌汁1杯150ccに入っている食 0.6g 29.1 25.3 36.5 0.362 塩の量として、1番近いものはど 1.4g 42.3 45.2 36.5

れか 2.2g 23.6 24.0 23.0

4.2g 5.0 5.5 4.1

味を確認せず調味料をかけて食 ある 9.5 5.4 17.6 0.006 べることがあるか ときどきある 26.7 25.2 29.7

ない 63.8 69.4 52.7

味噌汁やスープは週何日、何杯 1日2杯以上飲む 4.1 4.8 2.7 0.072 飲むか 1日1杯飲む(週5〜6杯) 21.7 20.4 24.3

週4〜5杯飲む 16.7 20.4 9.5 週2〜3杯飲む 42.1 42.9 40.5 飲まない 15.4 11.6 23.0

麺類は週何回食べるか ほぼ毎日食べる 3.6 3.4 4.1 0.886 週4〜5回食べる 5.4 6.1 4.1

週2〜3回食べる 73.8 74.1 73.0 食べない 17.2 16.3 18.9

麺類を食べるとき汁はどうするか ほぼ飲む 9.5 7.5 13.5 0.353 半分飲む 13.6 12.9 14.9

少し飲む 47.5 51.0 40.5

残す 29.4 28.6 31.1

(8)

識と生活習慣・食行動等との関連を検討した。

調査の結果,塩分を控えようと心がけている A 群は 66.5%,塩分を控えようと心がけていない B 群 は 33.5%で,山田ら8)が女子学生を対象に行った調査の「塩分を控えようといつも心がけている 22.5%, ときどき心がけている 34.2%,あまり心がけていない 38.0%,全く心がけていない 3.2%,どちらとも いえない 2.1%」より,本研究は塩分を控えようと心がけている者が高率であった。塩分意識と体型で は両群に差はなかった。高血圧に関連する肥満の者は 2.9%と低率であるが,やせの者は A 群 22.3%, B 群 13.4%と,A 群は健康日本 211)の目標である「20 歳代女性のやせの者の割合 20%」よりやや高く, 今後も検討する必要がある。

生活習慣については,起床時刻は両群とも午前 7 時までが 7 割であるが,就寝時刻は午前 0 時以降の 者が A 群において有意に高率で遅く就寝していた。健康づくりのための睡眠指針 20149)では,6 時間 以上 8 時間未満の睡眠が妥当であるとしているが,本研究では両群ともに 6 時間未満の者が 5 割以上で あり,休養についてもとれていない者が 5 割程度あったことから,心身の疲労回復に必要な睡眠,休養 を充分にとる生活習慣を身につけることが必要である。

塩分意識と健康状態との関連については,両群とも現在の健康状態は良いと回答しているものの,ス トレスや疲れを感じている者が多かった。また,血圧項目で指摘を受けたことがある者の割合は A 群 14.3%,B 群 20.3%と,平成 25 年国民健康・栄養調査結果の「20 〜 29 歳の正常高値血圧とⅠ・Ⅱ・Ⅲ 度高血圧の割合を合わせて 12.9%」2)より高率で,早急に食塩摂取量の減少など高血圧予防・悪化防止 を目的とした生活習慣の修正を検討する必要がある。

塩分意識と朝食・昼食・夕食の摂取状況,間食摂取状況,外食利用頻度との関連は認められなかった。 朝食摂取状況は大学生の食に関する実態・意識調査報告書10)の「朝食をほとんど毎日食べる者は 61.1%」 より高率に摂取されていた。外食利用頻度はほぼ毎日 1.4%,週 4 〜 5 回 8.2%,週 2 〜 3 回 52.3%であり, 上村ら11)の「ほぼ毎日 7.3%,週 4 〜 5 回 6.5%,週 2 〜 3 回 45.7%」と比較して,高頻度の利用者が 多くはないもののある程度利用していた。コンビニ・お持ち帰り弁当,インスタント食品・冷凍食品の 使用頻度も同様の傾向があり,本研究では家族と同居している学生が多いが,外食および中食の利用は あると考えられる。また,主食・主菜・副菜を 3 つ揃えて食べることが 1 日に 2 回以上あるのは週に何 回あるかでは,ほぼ毎日食べる 29.9%,週 4 〜 5 日食べる 21.3%,週 2 〜 3 日食べる 33.5%,ほとんど 食べない 15.4%で,B 群に食べない者が有意に高率であった。健康日本 21 では,「主食・主菜・副菜を 組み合わせた食事が 1 日に 2 回以上の日がほぼ毎日の者の割合を平成 34 年度までに 80%にすることを 目標」としており1),両群ともに「なにを」「どれだけ」食べたらよいかがイラストで分かりやすく示 されている食事バランスガイド12)を外食や中食の利用時にも活用できるよう指導し,バランスよく食 べる習慣をつける必要がある。

(9)

て選択している者の割合が高率で,A 群が有意に高率であった。A 群では栄養成分表示は役に立つ, 購入時や外食時に栄養成分表示を見る者の割合も有意に高率で,A 群は塩分だけでなく食に対する意 識が高く,栄養成分表示を食生活管理に活用していると推察される。しかし,A 群はやせが多い傾向 があり,食生活が適切であるか,栄養素摂取量との関連を調査して検討する必要がある。B 群について は栄養成分表示を活用できず見ていない者が高率であることから,栄養成分表示の利用方法等について の指導が必要である。また,「食品中の栄養成分の改善と栄養成分表示を合わせて実施することで,国 民の食品の選択行動の幅が広がり,企業や飲食店の自主的な栄養成分改善にも繋がる」ことから1),大 学内の学生食堂や売店で栄養成分や食事バランスガイドなどの表示するよう働きかけることで,栄養バ ランスが良く塩分を控えた定食や弁当のメニュー検討に繋がり,健康的な食事を実行しやすい環境が整 備されると考える。

塩分摂取目標量は,日本人の食事摂取基準(2015 年版)で男性 8g,女性 7g5),高血圧治療ガイドラ イン 2014 で高血圧患者 6g3)と設定されており,1 日の目安量が 8g,7g,6g と回答した者を合わせる と 82.3%と高率であった。また,味噌汁 1 杯に入っている食塩相当量については,一般的な家庭で作ら れている味噌汁の食塩相当量である 1.4g と回答した者は 42.3%,市販のインスタント味噌汁の食塩相 当量である 2.2g と回答した者は 23.6%であった。いずれも両群間に差はなく,塩分に関してある程度 の知識があると推察される。塩分摂取状況については,味を確認せずに調味料をかけて食べると回答し た者の割合は A 群 5.4%,B 群 17.6%で B 群は有意に高率で,田中14)らの報告の「食卓で醤油・ソース・ 塩など味をみずによくかける者の割合は 5.8%」と比較して A 群でほぼ同率であった。また,汁物・麺 類の摂取頻度や麺類の汁の摂取については,田中14)らの「麺類の汁を全部飲む 4.6%,半分飲む 30.5%」 より両群ともに低率であったが,両群ともに塩分摂取量は少ないとは言えず,食事摂取量調査を実施し て具体的に把握する必要がある。

以上の結果より,健康診断の血圧項目で指摘を受けたことがある者の割合が両群ともに高い傾向にあ り,高血圧予防・悪化防止のために食塩摂取量の減少等の生活習慣の修正を早急に検討する必要がある。 現在の食事状況が問題だと感じている者は高率で,食生活改善の必要性はある程度理解されていた。さ らに,塩分意識が高い群は食に対する意識が高く,食行動にも現れていた。これらのことから,大学と 連携して安価で減塩と栄養バランスに配慮した健康的な食事を提供するとともに,そのメニューの栄養 成分や食事バランスガイドを表示し,実践できる食環境を整備する必要がある。具体的に塩分含有量ク イズやポスター掲示,簡単レシピの配布などで外食・中食をうまく活用しながら健康的な食生活を実践 する健康教育を検討する。また,塩分を控えようと心がけていない B 群には減塩の必要性から意識を高め, 栄養成分表示・食事バランスガイドなどの利用方法の指導し,食の関心を高める必要がある。今後もよ り詳細な食塩摂取量や実践度について調査し,食生活改善のための支援を継続することが重要である。

Ⅴ.謝辞

(10)

引用・参考文献

1)厚生科学審議会地域保健健康推進栄養部会,次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会:健康 日本 21(第 2 次)の推進に関する参考資料(2012)

2)厚生労働省:平成 25 年国民健康・栄養調査結果の概要(2013)

3)日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会:高血圧治療ガイドライン 2014,日本高血圧学 会(2014)

4)河野雄平,安東克之,松浦秀夫,土橋卓也,藤田敏郎,上島弘嗣:食塩制限の必要性と減塩目標, 日本高血圧学会減塩ワーキンググループ報告,日本高血圧学会,1-12(2006)

5)日本人の食事摂取基準(2015 年版)策定検討報告会:日本人の食事摂取基準(2015 年版)(2014) 6)文部科学省,厚生労働省,農林水産省:食生活指針の解説要領(2016)

7)日本肥満学会肥満症診断基準検討委員会:肥満症診断基準 2011,肥満研究 17(臨時増刊),1-78(2011) 8)山田紀子,酒井千恵:女子大生の食意識と食事摂取量に関する研究,岐阜市立女子短期大学研究紀要,

64,45-50(2015)

9)厚生労働省健康局:健康づくりのための睡眠指針 2014(2014)

10)内閣府食育推進室:大学生の食に関する実態・意識調査報告書(2009)

11)上村芳枝,芹沢百合子,門田祐太朗:女子学生のアルバイト状況と食生活状況・自覚症状との関連, 比治山大学短期大学部紀要,47,57-68(2012)

12)厚生労働省,農林水産省:フードガイド(仮称)検討会報告書食事バランスガイド(2005) 13)厚生労働省:平成 26 年国民健康・栄養調査結果の概要(2014)

14)田中恵子,杉山文,森美奈子,坂本裕子,中島千惠,池田順子:栄養士養成課程学生の塩分表示の 知識・意識・行動の実態-専門教育を受けた期間との関連から考察した塩分表示と消費者教育のあり 方-,京都文教短期大学研究紀要,50,21-32(2011)

(11)

Abstract

The Relationship between Salt Intake Attitude of University Students and

Lifestyle, Dietary Behaviors

Mari TANBA

*1

and Ayaka KUSUNOKI

*2

Since dietary habits during youth are a causal factor of lifestyle-related disease, it is essential to

provide dietary education to university students. Therefore, we conducted a questionnaire survey among

university students focusing on dietary salt, which is related to hypertension, gastric cancer, and other

diseases, and analyzed the relationship between the respondents' attitudes to salt intake and their lifestyle,

eating behaviors, and actual salt intake.

According to the results, 66.5% of the respondents (Group A) try to limit their salt intake, while

33.5% (Group B) do not try to do so. There was no intergroup difference in lifestyle and health status, but a

relatively large proportion of indications of blood pressure during a health check; such individuals need

to make improvements to their lifestyles, such as reducing their salt intake, in order to prevent

hypertension from occurring or worsening. The respondents in Group B, many of whom were living with

their parents, were significantly more likely to neglect having a combination of staple food, a main dish,

and side dishes in their meals, to be scarcely concerned about nutrition and diet, and to rarely cook

meals themselves; also, they were significantly less likely to use nutritional component displays. It is

essential to teach such individuals how to use dietary balance guides and nutritional component displays

in order to raise their dietary awareness and thus help them adopt appropriate eating habits. The

respondents of Group A, many of whom were slim, tended to be highly diet-conscious and to pay

attention to energy and salt intake when selecting foods and meals. However, it is necessary to examine

their nutritional intake in order to determine whether their selections are in fact appropriate. Both sets of

respondents tended to focus on price as a key criterion for selecting meals. It would therefore be effective

if university canteens and food outlets provide inexpensive and nutritionally balanced meals while also

providing information such as nutritional component displays and dietary balance guides. Both sets of

respondents probably had at least some awareness about salt intake targets, and it is reasonable to

assume that their salt intake from flavor enhancers, soup, and other items is low; however, there is a need

to conduct a dietary intake survey to obtain detailed data.

(Received October 30, 2017)

(12)

参照

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