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水理模型実験による松島湾の津波特性について

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Academic year: 2022

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水理模型実験による松島湾の津波特性について

産業技術総合研究所 正会員 ○山崎宗広 産業技術総合研究所 高橋 暁

1. まえがき

2011年東北地方太平洋沖地震により大津波が各市町村に破滅的な被害 をもたらした.太平洋沿岸域の津波被害をみると,宮城県松島町は周辺の 地域と比べて軽微なものであった.これは湾内に点在する島々が一種の 防潮堤となって津波の勢いを弱めたためだと考えられる.この島による 津波減勢効果を明らかにすれば,今後の津波対策や瀬戸内海等の多島を 抱える内湾域での津波リスク評価の資料となる.

本研究では,水理模型実験で類をみない海陸域を再現した松島湾の模 型を製作し,3.11 大震災による津波の振る舞いと島嶼部の有無による津 波減勢効果を実験的に検討したので報告する.

2. 実験装置と実験内容

(1)松島湾水理模型と 3.11 大津波の再現性

実験装置である松島湾水理模型を縦10m,横5mの平面水槽 内に製作した(写真-1).松島湾水理模型は,津波浸水を評価 するために「海域-海岸線-陸域」を連続で水平方向1/4000,

鉛直方向1/200に縮小したモルタル製の三次元模型となってい

る.松島湾に点在する島は,40島を再現し着脱可能とした.な お陸域の地形は標高50mまでを再現し,時間縮尺は1/283であ る.津波の発生方法は,模型水を静止させた状態から水槽端に 設置したプランジャーの昇降によって行い,津波高の変化はサ ーボ式水位計(ケネック製SW-201型)を用いて測定した.

水理模型の完成後,先ず,3.11大津波現象を水理模型内に再 現するための実験を行った.これは東北区水産研究所が奇跡的 に津波変動を記録1)した七ヶ浜町沖を境界条件として,プラン ジャー型津波発生装置の諸条件を決定するための実験である.

プランジャーの調整の結果,図-1に示すように現地と同じ地点 において初期の引き波現象,最大引き波の高さ(-0.8m),第1 波の最大津波高(5.39m),津波周期約40分を水理模型内に再 現することができた.

(2)津波実験の内容

水理実験は,島嶼部の有無による津波浸水域と津波減勢効果の測定実験を行い,実験ケースは次の3ケー スとした.Case0は現況地形の場合,Case1は松島湾で最大の面積を持つ宮戸島を撤去した地形の場合,Case2 は松島湾の島を全部撤去した地形の場合である.なお,津波高の測定は図-2の黒丸で示す140地点において 行った.

キーワード:水理模型実験,松島湾,東北地方太平洋沖地震津波

連絡先:〒739-0046 広島県東広島市鏡山3-11-32 Tel.082-420-8263 Fax.082-420-8266

写真-1 松島湾水理模型

松島町 東松島市

塩釜市 七ヶ浜町 宮戸島

プランジャー型津波発生装置

図-1 七ヶ浜町沖における津波の比較

‐300

‐200

‐100 0 100 200 300 400 500 600 700

0 100 200 300 400

水理模型の津波変化 現地の3.11津波変化 津波高(cm)

時間(min)

図-2 津波高の測定位置

模 型 原 型 0 0

1m 4km

七ヶ浜町

東松島市 ブロック

松島町 ブロック

塩釜市 ブロック

多賀城市

宮戸島

土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月)

‑353‑

Ⅱ‑177

(2)

3. 実験結果と考察

(1)島嶼部の有無による津波浸水域の違い

津波の伝播や浸水状況を捉えたビデオ映像より浸水域を把握した.

図-3は現況地形Case0における浸水範囲(青色で塗り潰した部分)を 示したものである.津波は,矢本海岸,野蒜海岸を大きく乗り越えて松 島湾内へ進入している.図-3と日本地理学会がまとめた3.11津波浸水 範囲図2)を比べてみると,標高 5m 中心に広い範囲で浸水がみられる 矢本,野蒜の両海岸や松島町から塩釜市にかけての浸水範囲が非常に 良い対応を示した.なお多賀城市周辺の浸水範囲は水理模型の方が少 し大きいが,これは実験水槽の側壁の影響が出てい

るものと考えられる.

島嶼部の有無による津波の浸水領域を評価するた めに,松島湾内を3つのブロックに分割(図-2参照)

して浸水面積を求めた.表-1に浸水面積を示す.島 を全部撤去したCase2の浸水面積をみると,全ての

ブロックにおいて現況地形より広がっており,特に松島町ブロックでは3倍強の広がりになっている.なお 松島町では標高15m付近まで浸水しており,島が防潮堤の役割をしていることが分かる.

(2)島嶼部の有無による津波減勢効果

各地点における最大津波高は,測定期間中の最大値としたが殆 どの地点において第1波目の津波が最大値であった.Case0にお ける最大津波高の分布をみると野蒜海岸沖が最も高く 7.1m,松

島湾内は2.5~4.5mとなっている.松島湾内における最大津波高

の地点と値を調べると,Case0では塩釜市沖の4.5m,Case1では 東松島市沖の6.4m,Case2では松島町沖の10.2mであり,島が無 いと大きな津波が来襲することになる.

図-4 は島嶼部の有無による津波減勢効果を評価するために,

Case0の津波高を差し引いて示したものである.先ず,上段図を

みると宮戸島が無いことで津波は減衰することなく東松島市沖 に進入するため,津波高は最大3mほど増加している.しかし,

その影響は塩釜市沖まで届かず津波高の変化はみられない.次 に,下段図の島を全部撤去したケースをみると松島湾全体で津波 高が増加しているのが分かる.津波高の増加は,東松島市沖で2.0

~3.2m,松島町沖で3.5~5.6m,塩釜市沖で2.0~3.1mである.松 島湾に点在する島々は,ここで示した津波高の増加分の減勢効果 を有している.

4. あとがき

本研究では,松島湾水理模型実験により島の有無による津波の減勢効果を検討した.その結果,松島町で は島が無いと津波高が最大 5.6m 増加した.また浸水面積も 3倍強に広がり,島が防潮堤の役割をしている ことが分かった.

参考文献

1) 茂穂(2011):東日本大震災により宮城県七ヶ浜町を襲った津波の波高計データによる解析,海の研究,20,pp51~57.

2) 日本地理学会災害対応本部HP2011:津波被災マップ,http://danso.env.nagoya-u.ac.jp/20110311/.

図-3 Case0 の浸水範囲図

表-1 各ブロックにおける浸水面積(単位:ha)

Case0

(現況地形)

Case1

(宮戸島撤去)

Case2

(島全部撤去)

東松島市ブロック 336 420 462 松島町ブロック 216 280 704 塩釜市ブロック 526 461 728

模 型 原 型 0 0

1m 4km

七ヶ浜町

東松島市

松島町

塩釜市

多賀城市 Case1-Case0

単位:cm

模 型 原 型 0 0

1m 4km

七ヶ浜町

東松島市

松島町

塩釜市

多賀城市 Case2-Case0

単位:cm

図-4 島嶼部の有無による津波減勢効果

(上段図:Case1-Case0下段図:Case2-Case0)

土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月)

‑354‑

Ⅱ‑177

参照

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