精 嚢 腺 憩 室 に つ い て
-と
く に そ の 分 類 に つ い て
-神 戸 医 科 人 学 皮 膚 科 泌 尿 器 科 学 教 室 (主 任:.上 月 実 教授)大学院学生 森
脇
宏
大学院 学生 結
縁
繁
夫
A CASE
OF DIVERTICULUM
OF SEMINAL
VESICLE
WITH
SPECIAL
REFERENCE
TO ITS
CLASSIFICATION
Hiroshi
Moriwaki
and
Sigeo
Yuen
Department
of Dermatology & Urology Kobe medical college
(Director:
Prof. M. Jyogetsu)
The authers
of the present report have recently diagnosed a interesting
case of diverticulum
of
seminal vesicle, and it was confirmed by a surgical operation.
Our case was a 37-years
old man with chief complaints
of hematospermia
and having two
children.
His vesiculogram revealed the finding of the bilateral saccural
dilatation of seminal
vesicle and
ampulla of vas deference, and moreover, his pyelogram suggested
that he was of polycystic kidney .
Such a case of the bilateral diverticulum
of seminal vesicle accompanied by polycystic kidney is
quite rare, the like of which has reported only in Nakazima & Yanase's
case (1958) in past literature.
Classification of diverticulum
of the seminal
vesicle was discussed
from the clinical point of
view, and we proposed a private plan as follows:
Type l: cystic dilatation of seminal vesicle accompaning defect of a kidney or ureter of same side .
Type 2: cystic dilatation of seminal vesicle without another urogenital
anomalities.
Type 3: dilatation of ampulla or ductus ejaculatorius.
Type 4: cystic structure
from another origin (Wolff's duct or Muller's duct)
Type 5: bilateral dilatation of seminal vesicle and ampulla accompaning
polycystic kidney.
Type 6: mixed form.
Ⅰ. は じめ に 所謂 精嚢 腺 憩 室 乃 至嚢 腫 は極 め て稀 な 疾 患 で,1872年 Smithの 報 告例 に始 ま り,現 在 迄 欧米 で は10数 例 が 報 告 され る に過 ぎ ない.本 邦 で は1939年 中尾,伊 藤 の 報 告 をもつて 嚆 矢 とす る が,近 年 診 断 技 術 の 進 歩 と くに精 嚢 腺造影 法 の.普及 に伴つて,楠(1947),中 尾(1951),宗, 野 波(1952),石 神(1952),中 島,柳 瀬(1957),下 江(19 59),金 沢(1959),石 神(1960)等 相 次 い で,多 くの 報 告 例 に接 して い る.中 で も金 沢 は 内 外 文 献 を渉 猟 して22例 を総 括記 載 し,石 神 は更 に8例 を加 え て特 に本 症 の命 名 法 につい て独 自の 見 解 を述 べ てい る が,今 尚本 症 の 全貌 は明 らかで あ る とは 言 え ない. この折 に 当つて,極 め て 興 味 深 い 臨 床 像 を 示 す本 症 の 1例 を経 験 した の で,そ の 概 要 を述 べ る と共 に 自験 例 を も とに して 本 症 の 分類 に つ き2,3の 私 見 をつ け加 え た い. Ⅱ. 症 例 37才,男 子公 務 員 初 診:昭 和36年5月27口. 主 訴:血 精 液 症 家 族 歴:嚢 胞 腎 の濃 厚 な遺 伝 関 係 を証 明 す る.即 ち第 1表 に 示 す 如 く母 方 祖 父 は この た め 死 亡 し,母 親 並 び に 母 方 の 叔 父2名 に嚢 胞 腎 の 存 在 が 認 め ら れ る.患 者 は8 人 兄 妹 の 長 男 で あ る が,弟 妹 に は 未 だ 腎 疾 患 の 明 らか な も の は な い.既 に10才 及 び3才 の2児 を も うけ て い る. 既 往 症:特 記 す ろ も の な し. 現 病 歴:約13年 前kり 軽 度 の性 慾 減 退 が あ る の に 気 付 い て い た 所,本 年5月 初 旬,突 然 に 血精 液 症 を 発 生 し
た.そ の 後は 毎 射精毎 に 多少 の 血液 混 入を 自覚,最 近 で は 会陰 部 及び 精索に 沿 つ た 下腹 部 に時 に鈍 痛 があり,特 に 射 精 後 には之 ら の 部位 に極 め て不 快 た疲 労 感 を覚 え, この症 状 は 腹臥 位 及び 横 位 で増 強 し,仰 臥 位 では消 失す る という.排 尿 並び に排 便 に は 何 等 支障 たく,発 熱 もな い. 現 症:体 格 長 身 や ゝ痩 型,胸 部打 聴 診上 異 常 なく,腹 部 は 平坦 で 柔軟,圧 痛 なく,腫 瘤 を 触 れず,肝.脾,腎 いづ れも 触 知 せず,膀 胱部 にも 異常 を 認め た い. 外陰 部 正常 で 直 腸 内指 診 で 前立 腺 は 拇指 頭 大,圧痛 な く,正 中 溝 明瞭,表 面 平滑 で膨 隆 せ ず,精 嚢 腺 を触 知 し. ない. 検 査成 績:(精 液 所 見) 量2ml,外 観 血性 乳 濁 で精 子数200万/竓,精 子運 動性(-),赤 血 球(+++),白 血 球(+),鏡 検 で は菌を証明 せ す,培 養 で は 黄 色 葡 萄 状 球 菌を証 明 す る が 結 核 菌 陰 性 である.(尿 所 見)外 観 清 澄,藁 黄 色,蛋 白 ズ ル フ ォ 試 験 陰 性,ウ ロ ビ リ ノー ゲ ン 正 常,糖 陰 性,沈 渣 中 に 赤,白 血 球 を 認 め ず,上 度,円 柱,細 菌 等 い づ れも 証明 し な い.(血 液 所 見)赤 血 球 数 459万,白 血 球 数5100,血 小 板 数10万,血 色 素15.8g/dl, ヘ マト ク リ ッ ト値39%,白 血 球 分 類 で は 桿 状 核12%,分 葉 核42%,リ ンパ 球42%,単 球4%,好 酸 球 及び 好 塩 基球 は 認 め な い.血 沈1時 間 値10,2時 間 植17mm.梅 毒 血 清 反応 陰 性,血清 蛋 白6.7g%,血 液 残 余 窒 素44mg/dl,血 清Na 13.5mEq/l.Ca 10.4mg/dl,K 4.0mEq/l.Cl 103.5 mEq/l,出 血 時 間2分.血液 凝固 時 間7分(毛 細 管 法). 空 腹 時 血 糖 量90mg/dl.(肝 機 能)モイ レ ン グ ラ ハ ト指 数 8,グ ロ ス 反 応(-),ロ バ ル ト反 応R2(2),ヘハ トサ ル ファ レ イン 試 験2.5%(45分 後).(腎 機 能)水 試 験 正 常,(其の 他)血 糖 二重負 荷 試 験 正常.心 電 図正 常.膀 胱 鏡 検 査は 挿 人 不 能の ため 行え ず,ネ ラ トンも 亦 挿 人 不 能 で 細 い チ ー マ ン 氏 カ テ ー テ ル のみ 挿 人 可 能 であ る. レ線 学 的所見:(精 嚢 腺 造 影)Belfiel法 に て 精 管を 露 出 し,76%ウ ロ グ ラ フィンを 精 嚢 万向 に 向け1ml及 び3ml注入 し て 撮 影 した,1ml注入 で は ては両側 精 竹膨 大 部 は箱形 の 拡 張 像 を 示 し,更 に 左 測 精 嚢 腺 は 胡 桃 大嚢 胞 状 の 円 形陰 影 を呈 するが,右側 は 映 像せず,左 側の 映 像 は 尚 注 意 深く 観 察す れ ば3ヶの 談 い 余 地 像 を 認 ぬ る 事 が 出 来 る.造 影 剤3ml注 入 で は 漸上右 側 に 漠 然 た る 同 様 の 嚢 胞 像 を 認 め る(第1図).12日 後の 膀 胱 部 単 純 撮 影 で は 尚明 瞭 に 造 影 剤 が 残 仔 し て 両 側 精 嚢 腺 像 が 描出さ れ る.更 に手 淫 によ つ て 射 精 を 行 わ しめ た 後 再 度 撮 影 した が 陰 影 は 不変 であ る. (第1図) 第1表 嚢 胞 腎 の 遺 伝 的 関 係 (第2図)後 部尿 道 の 前 屈 並び に 精 嚢 腺 像-矢 印
(第3図)静 脈性 腎 盂撮 影 (第4図)摘出 標 本 (尿 道 膀 胱 造 影)後 部尿 道 の 延 長 は 蓍明 では な い が, 膀胱 底 部 が や や鋭 角 を なす の が認 め られ,斜 位 像 で は精 阜 上 部が 殆んど 直 角 に近 い 迄 前 屈 して狭 隘 化 し,之 を 後 方よ り圧 迫す るか 如 き精嚢 腺 像 が 示 され る(第2図). (静 脈 性 腎 孟撮 影)両 腎 共造 影 剤 の 排 泄 は比 較 的 良好 であ るが,左 腎 は 特 に上腎 杯 が 延 長 拡大し 嚢 胞 腎の 初 期 像 を疑 わ しめ る(第3図) 診断:嚢 胞 腎 を 伴 う両 側 精 嚢 腺 憩 室. 手術 所 見:昭 和36年6月19日Silva de Assisの 術 式 に な らつ て恥 骨上精嚢 腺 剔 除 術を つ た.即 ち腰 椎麻 酔 下に患 者 を高 盤 高 位,砕 石 位 とな し下腹 部 正 中 切開 に よ つ て膀 胱 前 腔 を 開 き,膀胱 剛周囲組 織 を剥 離 して 後 ,内 鼠 蹊輸 部 で 両 側 精 管 を 求めた.次 で 之 を腹 膜よ り剥 離 し, (第5図)精 嚢 腺壁 更 に 所 謂Extraperitonealisationを 行 つ て 膀 胱直腸 窩 を 開 き,精 管 に接 して剥 離 を すゝめて 情 管 膨大 並ぴ に 精 嚢腺に達 した.この 際右 側 精 嚢 腺は 灰 白 色 柔軟 で拇 指 頭大,波 動性 を有 し,穿 刺す る に約4mlの黄 白 色 溷 濁 せる内 容 を 得 た.左 側精 嚢 腺 は拇 指 頭大 で 軟骨 様 硬 度 を 有 して い た. 周 辺 の 剥 離 後は 精 嚢 腺 及び 精 管 膨 大 部 を 一塊と して 根 部 で結 紮 切断 し摘 出 した.こ の後 膀 胱 直 腸 窩 並び に膀 胱 前 窩 にそ れ ぞれ排 液 管 を 置 いて順 層 縫 合 した. 摘 出 標 本:第4図 に 示 す 如く,精 嚢 腺右 側 は3×3× 2.7cm,左 側 は3×2,4×2.2cm,精 管 膨 大 部 は 径1cm の 拡 張 を 示 し,割 面 で は 両 側 精 嚢 腺 は いづ れ も 一房 性 の 嚢 状 物 と な り,左 側 で は3個 の 大豆 大,茶 褐 色 の 軟 骨 様 硬 度 を有す る膠 様 の 球 状物 を 有 してい た(矢 印 に 示 す). 右側 精嚢腺内 容 は鏡検する に,1ml中 約400万 の運 動 性 な き精子と多数 の 赤 血球 を認 め た が 細 菌 は証 明 出 来 な か つ た. 組 織 学的 所 見:(第5図)精 嚢 腺 嚢 胞 壁 は全 般 に 非 薄 化 し,そ の 内 面 は 一層 の立方上 度によ つ て被覆 され,か ゝる上皮 細 胞 は 部 分的 に剥 離 乃 至増 殖 す る 所 もみ ら れ る が 全般 に粘 膜 組織そのも に は 著 変 を認 め な い.粘 膜 下 に は 数 ヵ所 軽 度 の 小 円 形細胞 浸 潤 を認 め る 他 は 炎 症性 変 化 は顕蓍 では な い.精 管膨 大部で は上 皮細 胞 は か な り増 殖 を示 し,そ の 下に 所 々に軽 度 の出 血 巣 を 認め た.豆 状
の膠 状 物 を薄 片 と して 組 織 検 索 す る と無 構 造 硝 子様 を呈 し,エ オヂ ン及 びPASに 濃 染 す る. 術 後経 過:術 後2日 目排 液 管 を 抜 去 し,7日 目抜 糸, 術 創 は一 次的 治 癒 を 示 して10日 目 に 退 院 した. Ⅲ. 考 え とま とめ 本 症 は前 述 の 如 く,内 外報 告例 は1960年 迄 に22例(金 沢),そ の 後石 神 によ る8例 を加 え れ ば30例 に の ぼ る模 様 で あ る. 之 等 の 臨 床症 状 を通 覧す る と,古 い 報 告 例 で は い づ れ も嚢 胞 乃 至憩 室 自体 の圧 迫 によ る 諸 症 状 が 注 目 され 即 ち 尿 意頻 数(Fisk,Huggins等),排 尿 困 難(Damskir中 島,柳 瀬),排 尿 痛,更 に尿 閉(中 尾,伊 藤)等 の膀 胱 症 状 の 他,下 腹 部 痛(Rolfe),直 腸 内 膨 隆 感(Bocming-haus)等 が 殆 ん どの症 例 に挙 げ られ て い る.因 み に本 症 の 発 見者Smithの 例 は 下 腹 部 腫 瘤 を 主 訴 と し,5000ml の 内 容 を有 して い た.而 し乍 ら診断 技 術 の 進 歩 に 伴 つ て 次第 に 血精 液 症 を主 訴 とす る もの が 大 半 を 占め る様 に な り,本 邦 でも 楠 の報 告 以 来10例 が あ り,更 に 不 妊 を先 づ 訴 え ろ もの は石 神 の8例 中5例 に 認 め られ る.自 験 例 で も血 精 液 症 を主 訴 と して い るが,こ の 他 会 陰 部 及 び 下 腹 部 の鈍 痛 を 訴 え,之 が 特 に 腹 臥 位 及 び横 位 で 増 強 し, 仰 臥 位 で 消 失 す る事 は憩 室 の 隣接 臓 器 へ の 直接 圧 迫 に よ る症 候 と解 釈 され る.こ の 点 は尿 道 膀 胱 造 影 の 所 見か ら も明 白 で,斜 位 像 で精 阜 上 部 が 殆 ん ど直角 に 近 い 迄 前 屈, 狭 隘 化 を 示 し,又 精嚢 腺造 影 に よつ て7日 後 も造 影 剤 が 残 存 し,後 部 尿 道 を圧 迫 す ろ所 見 を え た こ とは 興 味深 い. こ う した尿 道 膀 胱 レ線 像 は 中島,柳 瀬 の第1例 に も認 め ら れ,彼 らは精 阜 像 不 明 瞭 で 殊 に精 阜 上 部 の 前 方傾 斜 が 蓍明 で 後部 尿 道 は全 体 と して精 阜 を 中心 に 「逆 く字 形 」 を呈 し,之 は尿 道 前 立 腺 部 及 び 膀 胱 三角 部 が後 方 より圧 迫 さ れ て い る た めで あ る と記 載 して い ろ が,自 験 例 と令 く一 致 す ろ. さ て精 嚢 腺 嚢 腫 乃 至憩 室 とは 精嚢 腺 を中 心 とせ る膀 胱 後 腔 の関 連 臓 器 に 発 生 した嚢 胞状 構 造 物 を 総 括 す る もの で あつて,そ の 病 像 に は 多彩 な も の が あ る.従 つ て 本 症 の 分 類 も確 然 とな しえ な い が 中尾 は之 等 の 中,解 剖学 的 関 係 の 比 較 的 判然 とせ ろ8例 に つい て 次 の如 く3群 に わ か つ て い ろ.即 ち第1群 は 両 側 の精 嚢 腺 が 殆 ん ど正常 の 型 を 呈 し嚢 腫 は精 嚢 腺以 外の その 附 近 か ら 出 て い る も の で,本 群 に は ミユ レル 氏 管Lり 発f#:した もの と精 管膨 大 部 又 は射 精 管 の 拡 張 した もの が含 め られ,第2群 は精 嚢 腺 自体 が嚢 腫 化 して 同 側 の 腎,尿 管 の 欠 損 せ ろ もの,第3 群 は単 に 精 嚢 腺 の み の嚢 腫 化 で他 に 奇 形 の な い もの で あ る.又 行神 は8例 の 経 験 を も とに して1)単一 化せ る射 精 管 の異 常 拡 張.2)精 嚢 腺 自 身 の 一 部 又は 全 体 の 異 常 拡 張 3)ミ ユ レル 氏 管 残 基 の 異 常 拡 張,の3群 に 分つて い る. 他 に 古 くはEnglishの 分 類 も あ るが,こ こ に ひ ろ が え つ て 自験 例 に つ き検 討 す る と,2,3の 特 異 な 点 が 挙 げ られ る.即 ち,精 嚢 腺 の み な らず 精管 膨 大 部 が 共 に嚢 腫 状 の 拡 張 を 示 し,し か も両 側 性 で あ る こ と,腎 及 び 尿 管 の 欠 損 の な い点 で,従 つ て 中尾,石 神,English等 の 分 類 の いつ れ の 項 目 に も 属せ しめ 得 な い.強 い て言 え ば 中尾 の 分類 によ る と第1群 と第3群 の 両 者 に また が る も の と し得 る. か ゝる症 例 を文 献 上 に 求 め れ ば,1958年 中島,柳 瀬 が 第2例 と して報 じた20才 の 両 側 発 生 の 症 例 が あ げ られ, 特 に 興 味 あ る こ と は,こ の 例 が嚢 胞 腎 を 伴 うと記 載 され てい ろ点 で 全 く 自験 例 と同 様 で あ る. 前 述 の 如 く自験 例 も嚢 胞 腎 の 濃 厚 な 遺 伝 関 係 の 上 に, 腎 盂像 か ら も充 分 之 を思 わ せ る所 見 が あつ た.か ゝる嚢 胞 腎 合併 症 例 は この2例 を除 い て は 文 献 上 見 当 ら な い が,こ の 様 な 症 状 群 の そ ろ う こ とは 本 症 の 成 因 を 考 え る 時,偶 併 発 例 と は い い きれ な い. 本 症 の 従 来 の例 が 殆ん ど1側 性 で あ る事 は既 にStew-art & Nicollの 指 摘 す る所 で,両 側 性 の 発 生 は極 め て 珍 ら し く,中 島,柳 瀬 の 第2例 及 び 自験 例 の 他 に は石 神 の 1例 が あ る に過 ぎな い. そ こで 蓍者 は 前 記 中尾 の 分類 を基 礎 と し,自 験 例及 び 2,3.攵 献 的 考 察 よ り之 に補 足 を 加 え て 次 の 如 き新 しい 分 類 を 唱 えて み た い.即 ち第1型:精 嚢 腺 自体 の 嚢 腫 状 拡 張 で 同 側 の 腎 及 び 尿 管 の 欠 損 を 伴 う もの,第2型:精 嚢 腺 自体 の 嚢 腫 状 拡 張 で 他 に,殆 ん ど奇 形 の な い も の, 第3型:精 管 膨 大 部 又 は 射 精 管 の 拡 張 せ る 毛の,第4型 :第1∼3型 以 外 の 部 位 よ り発 生 せ る も の 即 ち ミユ レル 氏 管,ウ オ ル フ氏 管 等,第5型:精 嚢 腺 及 び 精 管 膨 大 部 が 同 時 に拡 張 し両 側性 で あ つ て嚢 胞 腎 を 伴 うも の,第6 型:前 記 各 型 の混 合型 の6型 で あ る.従 来 の 報 告 例 を こ の分 類 に よ り整理 す る と表 示 す る如 くと な る. 本 症 の 成 因 と して はEnglishは ウ オ ル フ 氏 管 の遺 残, ミユ レル 氏 管 よ りの 発生,射 精 管 の 閉 塞,反 復 す る 慢 性 精 嚢 腺 炎 の4者 を挙 げ,又Stewart & Nicollは 若 年 者 で は先 天 性 に,高 年 者 で は既 往 の お そ ら く は 射 精 管 の閉 塞 に 上つ て生 じる と して い る.蓍 者 の 分類 によ る第 5型 は嚢 胞 腎 を 伴 う点,両 側 性 で あ る 点,炎 症 性 病 変 の 少い 点,比 較 的 若 年 者 に 発 生 せ る点 等 か ら して 先 天 的 要 因 が強 く,た だ 自験 例 で は既 に2児 が あ り,初 診時 に は
第2表 精 嚢 腺 嚢 腫 及 び憩 室 の分 類(森 脇,結 縁) もはや活 動性 精 子 を認 め ずOligospermiaと な つ て い る 点は後天性 の 因 子 が 加 味 され て本 症 の 炎 症 を進 め た も の と解釈 した い. 従来精 嚢腺 嚢 腫 の 内 容 物 と し ては 黄 褐 色 又 は 血 性 漿 液 性の もの が 多 く(Smith,Fisk,Damski,Boeminghaus, Zimer,中 尾),膿 性 漿 液 性(Guiteras),水 様 透 明 の も の(Francke)も あ り白 血 球,赤 血 球,コ レ ス テ リン結 晶,ビ ア リン様 物 質,組 織 破 壊 様 物 質 を含 む もの もあ る と記載 され る が 自験 例 の如 き大 な る 固 形物 を蔵 した 報 告 はない.か ゝる膠 状 物 質 の本 態 に つ い て は,臨 床 的 に 精 嚢腺造影 後12日 に 至 る も造 影 剤 の多 量 停 滞 を 認 め,射 精 に よつて も陰 影 の 減 少 しな か っ た点 か ら,長 期 間貯 積 さ れた精液 の 変 性 物 質 と予 想 され る.更 に か ゝる 物 質 が
PAS強 陽 性 を呈 した こ とか ら,Anderson & MacLagan によつ て示 され て い る様 に,精 液 中 多 量 に含 有 され るム コ蛋白乃 至 は ム コ多糖 類 の 凝 析,堆 積 した も の と考 え た い. 本症の命 名 法 につい て 従 来 の精 嚢 腺 嚢 腫 な る呼 称 の他 に,楠 は精 嚢 腺 憩 室 と呼 ぶ べ きも の の 多 い 事 を報 じ,下 江は管腔臓 器 と交 通 を 有 す る液 体 の 瀦 溜 した 空 洞 は憩 室 であ り,周 囲 組 織 と交 通 の な い液 体 の 瀦 溜 は 嚢 腫 で あ る とし,更 に精 嚢 腺 憩 室 は精 路 と交 通 を有 し,精 子 を内 容 に含 み,血 精 液 症 を主 症 状 とす る と述 べ てい る.こ の点 で は 自験例 は 精 嚢 腺 憩 室 と称 して差 支 え な い もの と考 え る が,之 らの 関 係 は最 近 石 神 の著 に 詳 し く,こ う した名 称 の 混 同 を避 け て精 嚢 腺 並 び に精 管 末 端 部 の異 常 拡 張 症 と名 付 け てい る.自 験 例 もそ の 臨 床 像 か ら石 神 の 命 名 に 賛 同 す る点 が 多 い. Ⅳ. む す び 血 精 液 症 を主 訴 と し,会 陰 部鈍 痛 を伴 う37才 男 子 に 精 嚢 腺 造 影 に よつ て本 症 の 診 断 を 下 し,恥 骨 上 式 に 精 嚢 腺 及 び 精 管膨 大 部 を摘 出 した.特 に 興 味 を惹 い た点 は1) 精 嚢 腺 及 び 精 管 膨 大 部 が共 に拡 張 す る事,2)両 側 性 で あ る 事,3)嚢 胞 腎 を合 併 す る事,4)左 精 嚢 腺 憩 室 中 に精 液 ム コ蛋 白 の 集 塊 と思 わ れ る膠 状 固 形 物 を 認 め た 事,で あ り之 に 附 加 して 自験 例 並 び に2,3の 文 献 的 考 察 か ら本 症 の 分類 法 に っ き私 案 を提 唱 した. 本 論 文 の 要 旨は 第13回 日本 泌 尿 器 科 学 会 関西 地 方 会 で 発 表 した(そ の席 上 京 大 酒徳 氏 よ り本 例 と同様 の 嚢 胞 腎 合 併 例 の 追 加 が あ つ た こ とを 附 記 す る). 稿 を 終 え るに 当 り御 指 導,御 校 閲 を 賜 つ た恩 師上 月教 授,佐 野 助 教 授 に 深 謝 す る. 主 要 文 献