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平成 27 年度 サービス産業事業者の企業間取引情報分析調査 報告書 平成 28 年 2 月 株式会社帝国データバンク

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平成27年度

サービス産業事業者の企業間取引情報分析調査

報告書

平成 28 年 2 月

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目次

第1章 サービス産業の分析に関する背景 ... 3 第1節 地域経済分析推進の背景 ... 3 第2節 地域経済におけるサービス産業 ... 4 第3節 サービス産業における先行研究 ... 4 第2章 帝国データバンクによる分析 ... 6 第1節 分析対象業種 ... 6 第1項 医薬品卸売業について ... 6 第2項 道路貨物運送業について ... 6 第3項 宿泊業について ... 7 第2節 分析に使用するデータの概要 ... 8 第3節 指標の定義 ... 9 第4節 分析の手法 ... 9 第1項 マクロ分析 ... 9 第2項 取引構造分析 ... 10 第5節 分析対象となる企業の数、市場規模、従業者数の集計 ... 12 第1項 医薬品卸売業 ... 12 第2項 道路貨物運送業 ... 13 第3項 宿泊業 ... 15 第3章 マクロ分析の結果 ... 17 第1節 医薬品卸売業 ... 17 第2節 道路貨物運送業 ... 22 第3節 宿泊業 ... 28 第4節 労働生産性の売上高、主業比率、人口密度の 3 変数による説明 ... 34 第5節 マクロ分析のまとめ ... 35 第4章 取引構造分析の結果 ... 36 第1節 医薬品卸売業 ... 36 第1項 医薬品卸売業の取引構造 ... 36 第2項 医薬品卸売業における労働生産性の高い企業の取引構造分析 ... 38 第3項 医薬品卸売業における財務戦略 ... 43 第4項 医薬品卸売業の制約条件と政策課題 ... 47 第2節 道路貨物運送業 ... 48 第1項 道路貨物運送業における取引構造分析 ... 48 第2項 道路貨物運送業における労働生産性の高い企業の取引構造分析 ... 49 第3項 道路貨物運送業における財務戦略 ... 55

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2 第4項 道路貨物運送業の制約条件と政策課題 ... 57 第3節 宿泊業 ... 58 第1項 宿泊業における取引構造分析 ... 58 第2項 宿泊業における労働生産性の高い企業の取引構造分析 ... 58 第3項 宿泊業における財務戦略 ... 61 第4項 宿泊業の制約条件と政策課題 ... 63 第5章 総括 ... 64 付録 クラスター分析による企業間の類似度比較 ... 65 第1節 クラスター分析の目的 ... 65 第2節 クラスター分析の手順 ... 65 第3節 クラスター分析の結果 ... 65

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第1章 サービス産業の分析に関する背景

第1節 地域経済分析推進の背景 現在、日本の総人口は、2014 年 10 月 1 日現在、1 億 2,708 万人であり 2011 年から単調 減少の段階に入っている。人口に占める 65 歳以上の高齢者の割合は、1970 年に 7%を超え て今現在は、26%に達している。一方で、15 歳~64 歳の生産年齢人口は、1995 年をピーク に現在にいたるまで単調減少の傾向にある。2012 年 1 月の国立社会保障・人口問題研究所 が発表した「日本の将来推計人口」によれば、2048 年には、1 億人を下回ると推計されてい る。言い換えれば、人口が減少することによるデメリットは経済を維持・成長させるための 源泉が失われることである。労働投入量が減少することにより、全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)にマイナス影響が出た場合、経済成長に大きなマイナスの影響が出 ることが想定される。 2015 年高齢社会白書によれば、日本全体の高齢化要因を考えた場合、以下の 2 点、①死 亡率低下による 65 歳以上人口の増加、②少子化の進行による若年人口の減少があげられる。 ②少子化の進行による若年人口の減少は、出生率の低下と言い換えられる。日本の出生率は、 2005 年の 1.26 から 2015 年には、1.42 まで回復しているものの、人口を維持するために必 要な出生率(人口置換水準)は、2.07 前後にはいまだ到達していない。人口減少を市区町 村レベルでとらえた場合、市区町村の高齢化を促進させる要因は人口の自然増減と社会増 減が要因として挙げられる。 このような現状を踏まえ、まち・ひと・しごと創生総合戦略概要において、①しごとの創 生、②ひとの創生、③まちの創生の 3 つの観点から地域経済の縮小と人口減少の負のスパイ ラルの解消を目指すものとして 5 か年の政策目標が掲げられている。当該総合戦略におい ては、結果重視の政策原則に基づき施策展開を実施しており、結果を出すための方法として、 データに基づく目標・KPI の設定が求められている。KPI の設定は、各市町村が地域の産業 の強み・弱みの特性を精緻に把握することが必要である。この現状を踏まえて、内閣官房及 び経済産業省は、自治体における PDCA サイクルの確立、KPI 設定の支援を目的とした地域 経済分析システムを提供し、2015 年より地方版総合戦略の策定が各自治体で進められてい る。 本調査では、企業間の取引構造の分析を実施し、統計データの解析からは掌握が困難であ る業種特性の把握を目的とする。

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4 第2節 地域経済におけるサービス産業 本節では、はじめにサービス産業の用語の定義を行った後に、我が国におけるサービス産 業の立ち位置を経済産業省のサービス産業の付加価値化に関する研究会資料に基づき GDP と従業者数の観点から示す。サービス産業の定義は、森川正之氏の「サービス産業の生産性 分析」に習い、「サービス産業」は卸売業・小売業、運輸業、通信業、金融・保険業等を含 む広義のサービス産業(第三次産業)とする。また、「サービス業」は狭義のサービス業で、 産業分類上の学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービ ス業、娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉、複合サービス事業、サービス業(他に分類 されないもの)とする。 前述の通り定義されたサービス産業は、GDP ベースで約 7 割(350 兆円)を占める産業で あり、その経済規模は拡大傾向にある。従業者数の観点では、1997 年をピークに微減傾向 にある。しかし、サービス産業の従業者数が全産業の従業者数に占める割合をみると 1997 年 62.9%から 2012 年 71.4%まで増加しており、サービス産業に携わる従業者の割合が社会 全体で増えていると言える。 このようにサービス産業の重要性は年々増しており、人口減少社会における経済成長へ の施策を検討する場合には、サービス産業の労働生産性の把握が不可欠と言える。 第3節 サービス産業における先行研究 本調査においては、主に森川正之氏の「サービス産業の生産性分析」において示唆される サービス産業の労働生産性の特徴に基づいて分析を進めることとする。以下では、先行研究 として言及する場合には、森川正之氏の「サービス産業の生産性分析」を指すものとする。 本調査においては、先行研究におけるサービス産業の「規模の経済性」、「範囲の経済性」、 「密度の経済性」に注目して分析を進め、先行研究におけるこれら 3 つの経済性の分析結果 を紹介する。森川氏の先行研究において分析対象となっている業種は、「特定サービス産業 実態調査」(経済産業省)の対象業種のうち対個人サービス 10 業種である。

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5 図 1-3-1 業種別の事業所数、売上高、就業者数 先行研究においては、業種ごとにコブ・ダグラス型の生産関数を推計する手法を採用して いる。生産関数の推計は、数量ベースでのアウトプットを被説明変数(対数表示:ln 𝑌)と する以下の式である。 ln 𝑌 = 𝛽0+ 𝛽1 ln𝐾 + 𝛽2 ln𝐿 + 𝛽3 本業比率 + 𝛽4 事業所ダミー + 𝛽5 市区町村人口密度 + 𝛽6 市区町村内事業所数 + ε これらの業種において、①規模の経済性、②範囲の経済性(多角化のメリット)、③密度 の経済性が存在することが示唆されている。①規模の経済性においては、事業所規模と複数 事業所の経済性が存在することが示唆されている。複数事業所の経済性とは、すなわち企業 規模の経済性であり、複数事業所の労働生産性は単独事業所の労働生産性より 10%~40% 程度高いことが示されている。②範囲の経済性とは、本業比率が低下するほど労働生産性が 向上するという意味である。③密度の経済性においては、人口密度が 2 倍になると労働生産 性が 7%~15%向上することが示されている。 産業 年 (1)従業員数 (2)年間売上高 (億) (3)就業者数 (人) 映画館 2004 2,464 2,286 16,292 ゴルフ場 2004 2,026 9,758 132,570 テニス場 2004 1,531 552 14,516 ボウリング場 2004 948 1,303 16,348 フィットネスクラブ 2005 1,881 3,858 67,874 ゴルフ練習場 2004 2,707 1,675 27,670 カルチャーセンター 2005 698 573 55,271 劇場 2004 698 1,973 12,262 結婚式場業 2005 2,826 8,911 98,668 エステティック業 2002 5,877 2,343 23,944 (出典)「特定サービス産業実態調査」(経済産業省)。 表3-1 業種別の事業所数、売上高、就業者数

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第2章 帝国データバンクによる分析

第1節 分析対象業種 本分析においては、株式会社帝国データバンクの産業分類の①医薬品卸売業、②道路貨物 運送業、③宿泊業の三業種を分析対象業種として選定する。対象企業数を鑑み、医薬品卸売 業は小分類ベースで分析対象企業を抽出し、運送業、宿泊業は、中分類ベースで分析対象企 業を抽出することとする。 第1項 医薬品卸売業について 医薬品卸売業の選定理由と業界動向について以下に記す。 健康増進、病気予防、生活支援等の観点から、政府においてもセルフメディケーション の様々な取組を進めており、セルフメディケーションの推進にむけて対個人向けの窓口と して想定される施設は、診療所や病院等の医療施設のほかに、ドラッグストア等の小売店 が考えられる。ドラッグストアに関しては、「セルフメディケーション推進に向けたドラ ッグストア企業の実態調査」(経済産業省 2015年1月)の中で製配販の連携による返品率 の改善が論点の一つとして挙げられている。当該調査において注目すべきは、86%の企業 が返品率の改善を意識している点である。この点を鑑みれば、セルフメディケーションの 窓口となりえるドラッグストアの労働生産性に医薬品卸売業も影響を持つと考えられ、労 働生産性の高いセルフメディケーションの推進には、労働生産性の高い医薬品卸売業の取 引構造を成功事例として政策課題の立案を行うべきと考えられる。 医薬品は、病院・診療所などの医療機関および調剤薬局向けに販売され医師の処方に基づ いて使用される医療用医薬品(医薬品生産額の約9割)と、ドラッグストアやコンビニエン スストアなどで消費者が自由に購入できる大衆薬(同約1割)とに大別される。これらを取 り扱う医薬品卸売業者は、医療用医薬品を主として取り扱う業者と「大衆薬」を主として取 り扱う大衆薬卸売業者に大きく分類され、それぞれ医薬品の流通過程において①仕入・保 管・配達・品質管理のほか、②販売促進や、③情報収集および提供、などの機能を担ってい る。市場規模の違いから医療用医薬品卸売業者の方が多く、大衆薬卸売業者については業界 再編により医療用医薬品卸売業の傘下となっている企業も多い。時系列では、医薬品卸売業 者の数は減少の一途をたどる一方で、大手業者の市場占有は増加傾向にある。「薬事ハンド ブック 2010 年」によれば、市場規模は前年伸び率が低下しているとはいえ、2008 年までは 3%台の成長率を維持しており、7.4 兆円規模の市場となっている。今後も高齢化社会の進展 にともなう患者数の増加や抗がん剤に代表される高単価な医薬品の投入が予測されるため 今後の成長率が低下しにくい市場と考えられる。 第2項 道路貨物運送業について 次に道路貨物運送業の選定理由と業界動向について以下に記す。物流関係事業者におい ては、販売、仕入れ等で発生するデータを活用する動きが大規模事業者を中心に進められ

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7 てきている。また、インターネット等を通じた商取引であるEC取引の発展など、物流業の 中でも特に道路貨物運送業を取り巻く環境は大きく変化している。「自動車運送事業等に おける労働力確保対策について」(国土交通省 2014年7月)では、道路貨物運送業の労働 力の中心は中高年層の男性であり、将来において深刻な労働力不足が発生することを指摘 し、現状の道路貨物運送業の活性化に向けた取組みの方向性として「労働生産性を向上さ せる輸送効率化の取組」が掲げられるなど、道路貨物運送業における労働生産性の向上は 重要な課題とされている。 また、政府が2015年4月15日の産業競争力会議において決定した「サービス産業チャレ ンジプログラム」においても道路貨物運送業の労働生産性向上を課題と位置付け、長時間 労働の削減とともに、ITを用いた事業者間の連携による業務の効率化の必要性が示されて いる。「日本のトラック輸送産業現状と課題」(全日本トラック協会)によればトラック、 鉄道、外航海運、航空、倉庫など物流事業全体の市場規模は21兆円であり、うち自動車に よる物流の市場規模は、2010年時点で12兆円であり全体の約6割を占める規模となってい る。産業の形態は、労働集約産業であり経費に占める人件費の割合が38%となっている。 その一方で、賃金水準自体は燃料油脂等のコスト増や運賃の低迷の影響を受けて全産業よ り低い状態となっている。 「貨物自動車運送事業者数の推移」(国土交通省)によれば、事業者数は1990年の貨物 自動車運送事業法施行以降、道路貨物運送業への新規参入者が急増し1990年の40,000者か ら2012年には約1.5倍増の60,000者にまで増加している。これにより運賃面において価格 競争が進んでおり、内閣府の公表では1990年12月の物流二法施行以降の運賃低下による利 用者メリットを3兆2,000億円になると分析している。 このように道路貨物運送業は付加価値の創出が容易でない産業でありながら競争の激し い業界であり、業界全体の労働生産性向上には、産業全体の利益構造とともに労働生産性 の高い企業の取引構造に基づく利益構造を把握することが必要な業種である。 第3項 宿泊業について 宿泊業の選定理由と業界動向について以下に記す。 「レジャー白書」(日本生産性本部)によると、2014年のホテルの市場規模は1兆2,010 億円、旅館が1兆4,200億円となっている。ホテルは、2014年まで2年連続で売上を年率 10%以上増加させている。旅館はピーク時の1991年時点の市場規模と比べて半減している ものの、1996年以来、18年ぶりの売上増加になった。「宿泊旅行統計調査」(観光庁)に よると2014年の延宿泊者数は4億7,350万人泊であり、前年比1.6%の増加である。邦人の宿 泊者数は、微減しているが、外国人延べ宿泊者数は、4,482万人泊であり前年比33.8%増と なっている。 旅館における労働生産性を時系列でみると、規模に関わらず全体に労働生産性は悪化傾 向にあることが観察される(「国際観光旅館営業状況等統計調査」(社団法人国際観光旅

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8 館連盟))。業界全体の成長の一方で、労働生産性が低下している原因は売上総利益の減 少にある可能性が示唆される。売上総利益の減少要因には、売上原価等の自社でコントロ ール不可能な経費増加と、人件費等の自社でコントロール可能な経費の増加が考えられ る。前者は企業間の取引構造に規定される要素であり、宿泊業の労働生産性の向上に向け て取引構造から課題の抽出を行うことが適切と考えられる。 第2節 分析に使用するデータの概要 本分析においては帝国データバンクの保有する企業間取引データ(信用調査報告書が非 公開のものを除く)、企業財務データ COSMOS1、信用調査報告書、取引高推定値、2010 年の 国勢調査を使用する。企業情報については、2015 年、2014 年に調査が行われた企業の情報 を使用する。企業間取引データは、企業間の受注発注関係を示したデータであり、労働生産 性の高い企業がもつ取引構造上の特徴を定量的に把握することが可能となる。企業財務デ ータ COSMOS1 は、労働生産性を算出するために使用する。信用調査報告書は、正社員、パー ト・アルバイトを含めた全従業員数と主業比率を取得するために利用する。取引高推定値は、 商流における企業間の取引額のパイプの太さを推定するための参考として使用する。国勢 調査は、企業が立地する市区町村の人口密度を把握するために使用するが、企業の調査年と のずれがあるため、人口密度の代表値として使用するものとする。 なお、本分析では、弊社で財務データを保有する企業を分析対象とするものとする。その ため、登録企業の全数より分析対象企業の数が少なる。 表 2-2-1 帝国データバンクが保有するデータ総数一覧 データベース ファイル名 収録件数・期数 企業単独財務ファイル 76万社・530万期 企業連結財務ファイル 5,200社・51,000期 企業財務比率ファイル 76万社・470万期 製造原価明細ファイル 33万社・140万期 損益分岐点用企業財務比率ファイル 33万社・140万期 企業概要ファイル 146万社 英文企業概要ファイル 146万社 事業所ファイル 57万事業所 学校ファイル 6,400校 官公庁団体ファイル 10,000件 病院ファイル 10,000件 倒産ファイル 57万社 57,400社 (親=6,400社、子=51,000 社) CCR 信用調査報告書ファイル 170万社 TDB企業コード 460万社 (設定総数) (内、法人数360万社) COSMOS1 COSMOS2 75万社(500万取引) 企業間取引データ TRD C-tree 連結企業データベース

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9 第3節 指標の定義 本節では、本調査における指標の定義について説明する。 「付加価値額」の定義は、「付加価値額=営業利益+給与総額+賃貸料+減価償却費+租 税公課」とする。 「労働生産性」は「付加価値額÷労働投入量」で定義する。労働投入量は、労働時間では なく従業者数を用いる。業種間の比較を行う場合には、先行研究と同様にマンアワーで測定 することが適切であるが、本調査は同業種内における企業間の労働生産性比較を行うため、 従業者数を使用する。 「規模の経済性」の定義は、「企業規模の経済性」とし、本分析における企業規模とは売 上高とする。すなわち、売上高規模が大きくなるほど、労働生産性が向上することを「企業 規模の経済性」が効くと定義する。先行研究においては、複数の事業所を持っていることを 「企業規模の経済性」と定義していることを前提とし、複数事業所の規模の大きさは企業全 体の売上高の規模に反映されるという仮定のもとに「規模の経済性」の分析を行う。 「範囲の経済」の定義は、「主業比率」とする。部門別の売上高構成比は、「部門別売上高 構成比=部門別売上高÷企業の総売上高」で定義し、この比率が最も大きいものを主業比率 として採用する。範囲の経済性が存在する場合、主業比率が低下するほど労働生産性が向上 するものとして定義する。 「密度の経済性」は、先行研究と同様に企業が立地する市区町村の人口密度を採用する。 「非正規雇用割合」の定義は、全従業者数に占めるパート・アルバイト等の非正規雇用者 の割合とする。 「BS/PL 比率」の定義は、総資本に対する売上高の割合とする。 第4節 分析の手法 本節では、分析において用いるマクロ分析と取引構造分析の手法について述べる。 第1項 マクロ分析 マクロ分析は、業種全体の労働生産性と売上高、主業比率、人口密度、非正規雇用割合の 関係を求めることを目的に実施する。 第一に、労働生産性を被説明変数とし、説明変数を売上高、主業比率、人口密度、非正規 雇用比率、BS/PL 比率とした単回帰分析を行う。労働生産性と変数間の関係から「規模の経 済」、「範囲の経済」、「密度の経済」を検証すると同時に、非正規雇用割合が労働生産性に与 える影響を検証する。非正規雇用の割合については、先行研究においても触れられており、 非正規雇用割合と労働生産性に影響を与える可能性が示唆されている。 第二に、被説明変数を労働生産性とし、説明変数を売上高、主業比率、人口密度とする重 回帰分析を行う。重回帰分析は、被説明変数と説明変数の間にのみ相関が存在し、変数間の 相互作用は想定しないモデルとする。

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10 第2項 取引構造分析 我が国の商取引の基本となっているものが信用取引である。信用取引とは、信用を供与す る(与信)ことによって、取引において必要なコストを信用で代替する手段である。取引に おけるリスクの一つとして取引の不履行があげられる。取引不履行によるリスクを回避す るために、事業者間取引においては契約の締結や、出資などの行為が行われている。 一般に企業間取引における取引コストは、①取引先を探すコスト、②情報交換するコスト、 ③監視するコスト、④契約コストなどがある。この中で特にコストを要するものが③監視コ ストと④契約コストであるが、このコストを最小化するものが「信用」による取引形態とい える。資金面や組織面で脆弱な中小企業が多くの企業と取引をすることが可能なのも、日本 の商取引習慣が信用を基盤とした取引構造を持つからと言える。サプライヤーの多さは、こ の点を背景としている。 メーカーが素材調達、製造、物流、販売などのすべてのプロセスを内部化する(垂直統合) 場合、大きな投資が必要となるが、それぞれを市場取引によって外部から調達する場合、低 コストでビジネスを行うことができる。市場取引によって調達しようとする場合、取引コス トが課題となるが、日本のように信用取引によって低コストによる外部調達が可能である 場合、市場取引は促進されやすい。そのため、企業は自社のビジネスモデルを組み立てる場 合、ビジネスプロセスのどこを内部化し、どこを外部化するかを選択する。その選択の結果 が取引構造に現れる。

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11 企業活動において、外部調達(連携含む)する場合は a.市場取引→b.業務提携、内部化 する場合は b.業務提携(合弁や資本提携)→c.垂直統合へ向かう。 取引構造分析では、マクロ分析でえられた業種ごとの労働生産性向上に向けた課題の仮 説検証を目的に、企業間取引データを分析することにより労働生産性の高い企業のビジネ スモデルの分析を実施する。 図 2-4-1取引特殊な投資額と取引依存度の関係 取引構造分析においては、企業の財務構成の考察も行う。業界平均の貸借対照表と損益計 算書の構成と労働生産性の高い企業の貸借対照表、損益計算書の構成を比較することで、キ ャッシュフローの分析を行い資金調達→設備投資→コスト投入→売上稼得→利益獲得の流 れを把握し取引構造上の特徴が財務構成に与える影響を把握する。

取引特殊な投資度

スポット取引

長期取引

・サプライヤー ・下請け

業務提携

・配送契約 ・供給契約(OEM) ・ライセンス契約(FC)

合弁会社

・M&A

垂直統合

・内製化

資本提携

・株の持ち合い

c.垂直統合

a.市場取引

b.中間形態

b.業務連携

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12 第5節 分析対象となる企業の数、市場規模、従業者数の集計 本節では、上述のデータを過不足なく保有する企業数を示し、企業の従業者数の観点で 企業の規模を把握する。以下では、医薬品卸売業、道路貨物運送業、宿泊業の順に分析対 象企業数と企業ごとの従業者数分布を示す。従業者数とは、正社員、非正規雇用者を足し たものとする。データの時点は、2014 年、2015 年の 2 か年のデータと分析対象とする。 第1項 医薬品卸売業 近畿地域の医薬品卸売業における分析対象企業は、24 社存在する。地域別の内訳は、表 2-2-1のとおりであり、大阪府に所在する医薬品卸売業の企業が最も多い。近畿地域にお ける医薬品卸売業の市場規模を分析対象企業の売上高合計と定義した場合、市場規模は 346 億円規模でとなる。そのうちの 75%は大阪府に所在する企業によるものである(図 2-5-2)。近畿地域の医薬品卸売業の中心は、大阪府にあり、それに次ぐ市場が奈良県にある ことが特徴と言える。 図 2-5-1近畿地域における医薬品卸売業の所在地別社数 0 2 4 6 8 10 12 和歌山県 京都府 兵庫県 奈良県 大阪府 単位:社

医薬品卸の地域別社数

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13 図 2-5-2近畿地域における医薬品卸売業市場の地域別構成割合 従業者規模でみた場合、分析対象の医薬品卸売業の企業のうち 87%は 100 人以下であり、 中小企業基本法における卸売業企業と規模が同程度か、それよりも小さい企業が多くなっ ている。 第2項 道路貨物運送業 近畿地域における道路貨物運送業者において、分析対象企業は 212 社存在する。地域別 の内訳は、図 2-5-3のとおり、大阪府に所在する企業が 120 社で最多となっており、約 6割を占める。近畿地域における道路貨物運送業の市場規模を分析対象企業の売上高合計 と定義した場合、本分析において市場規模は 1,585 億円規模であり、そのうちの 65%は大阪 府に所在する事業者によるものである。(図 2-5-4)。 75.0% 16.7% 5.6% 1.7% 1.0%

市場の地域別構成割合

大阪府 奈良県 兵庫県 京都府 和歌山県

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14 図 2-5-3 近畿地域における道路貨物運送業の所在地別社数 図 2-5-4 近畿地域における道路貨物運送業市場の地域別構成割合 0 20 40 60 80 100 120 140 福井県 和歌山県 滋賀県 奈良県 京都府 兵庫県 大阪府 単位:社

道路貨物運送業の地域別社数

65.0% 13.6% 8.4% 6.2% 4.1% 2.0% 0.6%

市場規模構成割合

大阪府 兵庫県 京都府 奈良県 和歌山県 滋賀県 福井県

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15 従業者数規模別で調査対象企業をみると、分析対象企業のうち、98%の企業は従業者数 が 300 人以下であり、事業者の大部分が中小企業の規模である。中小企業のうち 37%は従 業者数が 20 人以下の企業であり、道路貨物運送業においても中小企業規模の事業者がサ ービスを提供していることがわかる。 第3項 宿泊業 近畿地域の宿泊業者においてデータが充足されている企業は、41 社存在する。地域別の 内訳は、図 2-5-5のように大阪府に所在する企業が最も多く次いで兵庫、最も少ないの は奈良県となっている。近畿地域における宿泊業の市場規模を分析対象企業の売上高合計 と定義した場合、市場規模は 322 億円規模である。そのうちの 43.9%は兵庫県の事業者によ る売上げであり、次いで大阪府の事業者による売上げが 24.7%を占めることがわかる(図 2-5-6)。社数の観点では大阪府に集積が見られるが、事業規模の観点では兵庫県に集積 が見られることがわかる。 図 2-5-5 近畿地域における宿泊業の所在地別社数 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 奈良県 和歌山県 福井県 滋賀県 京都府 兵庫県 大阪府 単位:社

宿泊業の地域別社数

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16 図 2-5-6 近畿地域における宿泊業市場の地域別構成割合 宿泊業における企業の業種内訳は、41 社のうち旅館・ホテルに分類される企業が 37 社 で最多となっている。従業者数規模でみると、全企業において従業者数が 100 人以下の企 業が占める割合は、68.3%となっており宿泊業者の多くは中小企業であることがわかる。 43.9% 24.7% 11.3% 7.7% 6.1% 4.2% 2.2%

宿泊業市場の地域別構成割合

兵庫県 大阪府 滋賀県 福井県 和歌山県 京都府 奈良県

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第3章 マクロ分析の結果

第1節 医薬品卸売業 本節では、医薬品卸売業における労働生産性と各種指標(売上高営業利益率、主業比率、人 口密度、非正規雇用割合、BS/PL 比率)の関係を考察する。 ① 売上高と労働生産性の関係 売上高と労働生産性の関係をみると、図 3-1-1のようになり、売上高営業利益率が プラスの企業は売上高の増加にともなって、労働生産性は向上しないことがわかる。図 3-1-2は、売上高を対数軸としている。 売上高と労働生産性の関係において特徴的な点は、労働生産性が高い企業とそうでない 企業に分かれており、売上高営業利益率のマイナスとなっている企業はすべて労働生産性 が相対的に低い企業に属している点である。労働生産性の高い企業群は 24 社中 7 社であ り、両企業群の労働生産性には 2 倍以上の開きが見られる。 また労働生産性の高い企業の売上高は 10 億円規模前後に集中している点が特徴の 2 点 目として挙げられる。医薬品・医療品卸売業において、事業規模の拡大が労働生産性に及 ぼす影響は限定的であることが示唆される。 図 3-1-1 医薬品卸売業における売上高と労働生産性の関係 y = -0.0004x + 7679 R² = 0.0302 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 14,000,000 16,000,000 労働生産性 単位:千円/人 売上高 単位:千円

生産性と売上高の関係

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス) 労働生産性が高い企業群

(19)

18 図 3-1-2 医薬品卸売業における売上高と労働生産性の関係:売上高を対数プロット ② 主業率と労働生産性の関係 主業比率と労働生産性の関係をみると、図 3-1-3のようになる。売上高営業利益率 がプラスの企業群について、労働生産性と主業比率の関係をみると、図 3-1-3の図内 の単回帰分析で示されるように労働生産性が向上するにつれて、主業比率が減少している 傾向がわかる。この結果は、医薬品卸売業においては、主業である卸売業の利益構造を強 化するための事業の多角化が労働生産性向上に向けて行われている可能性を示唆してい る。卸売業以外での展開方法としては、医薬品製造側への事業展開か医薬品小売側への事 業展開が考えられる。この点は、取引構造分析において詳細を述べる。 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 1 10 100 1,000 10,000 100,000 1,000,000 10,000,000 100,000,000 労働生産性 単位:千円/人 売上高 単位:千円

生産性と売上高の関係

マイナス 利益プラス 労働生産性が高い企業群

(20)

19 図 3-1-3 医薬品卸売業における主業比率と労働生産性の関係 ③ 人口密度と労働生産性の関係 医薬品卸売業における労働生産性と人口密度の関係を図 3-1-4に示す。売上高営業 利益率がプラスの企業について単回帰分析を行うと図 3-1-4の図内のようになり、人 口密度が高い場所に立地する企業ほど労働生産性が低くなる傾向がわかる。労働生産性が 高い企業群である 7 社のうち 5 社は人口密度が他の 2 社に比べて相対的に低い場所に立地 していることがわかる。この結果は医薬品卸売業における労働生産性の向上に向けた戦略 として、人口密度が影響する対面サービス業への進出戦略と対面サービス業以外の分野へ の進出戦略の 2 つの傾向が現れることを示唆している。他分野への進出戦略については取 引構造の部分で後述する。 y = -6018.9x + 10903 R² = 0.0248 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 生産性 千円/人 主業比率

主業比率と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス) 労働生産性 単位:千円/人

(21)

20 図 3-1-4 医薬品卸売業における人口密度と労働生産性の関係 ④ 非正規雇用割合と労働生産性の関係 医薬品卸売業における労働生産性と非正規雇用割合の関係を図 3-1-5に示す。図 3-1-5より売上高営業利益率がプラスの企業においては、非正規雇用割合が増加するほ ど労働生産性が低下することがわかる。特に労働生産性の高い企業群においては、7 社中 6 社の企業で非正規雇用割合 10%以下となっている。先行研究に示されているように需要変動 が大きい業種においては非正規雇用割合が高い企業ほど労働生産性が高まるが、医薬品と いう授業変動が比較的少なく専門性が求められる業種においては正規雇用割合を高めるこ とで労働生産性の向上を実現できるものと示唆される。 y = -0.4425x + 9465.2 R² = 0.094 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000 人口密度 単位:人/km2 単位:千円/人

人口密度と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス) 労働生産性が高い企業群 人口密度が高い企業群 人口密度が低い企業群 労働生産性 単位:千円/人

(22)

21 図 3-1-5 医薬品卸売業における非正規雇用割合と労働生産性の関係 ⑤ BS/PL 比率と労働生産性の関係 労働生産性と BS/PL 比率の関係をみると、図 3-1-6のようになる。注目するべき点 は、労働生産性が高い企業群のうち 5 社は BS/PL 比率が 1 倍前後である一方、労働生産性 が相対的に低い企業群は、BS/PL 比率が 2 倍前後に集中している点である。労働生産性が 相対的に低い企業 17 社のうち 11 社が BS/PL 比率 1.5 倍から 2.5 倍の間に位置している。 BS/PL 比率の大きさは、総資産と比べた時の通年の売上高の大きさを示しており、事業に おける資本ストックの活用度を反映している指標である。資本ストックの大きさの 1.5 倍 以上の事業規模となると、労働生産性が相対的に低い企業が多くなる。医薬品卸売業にお いては、資本ストックと同じ規模の事業形態を行う企業に労働生産性を高めるための特徴 があることが示唆される。 y = -15270x + 9524.2 R² = 0.2697 0.0 5,000.0 10,000.0 15,000.0 20,000.0 25,000.0 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 単位:千円/人 非正規雇用比率と生産性 マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス) 労働生産性が高い企業 非正規雇用割合 労働生産性 単位:千円/人

(23)

22 図 3-1-6 医薬品卸売業の BS/PL 比率と労働生産性の関係 第2節 道路貨物運送業 本節では、道路貨物運送業における労働生産性と各種指標(売上高営業利益率、主業比率、 人口密度、非正規雇用割合、BS/PL 比率)の関係を考察する。 ① 売上高と労働生産性の関係 図 3-2-1のように売上高営業利益率がプラスの企業は、売上高が増加すると労働生 産性が低下することがわかる。このような結果になる理由は、道路貨物運送業の薄利な利益 構造に加えて、事業規模拡大により外部調達コスト等が拡大する取引構造になっている点 があげられる。この点は、BS/PL 比率と取引構造で説明する。 図 3-2-2は、売上高を対数軸とした場合の労働生産性と売上高の関係である。売上高 と労働生産性の関係において特徴的な点は、売上高営業利益率がマイナスのグループとプ ラスのグループは売上高の範囲において同じポジションに位置している点である。どちら のグループも売上高は 1 億円から 10 億円の範囲である。利益がプラスのグループの労働生 産性の中央値は、1,963 千円/人であるが、利益がマイナスのグループの中央値は、1,089 千 円/人であり、利益がプラスのグループの方が相対的に労働生産性の高い企業が多いことが y = -2340.6x + 10981 R² = 0.0361 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 単位:千円/人 BS/PL比率

BS/PL比率と生産性の関係

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス) 労働生産性が低い企業群 労働生産性が高い企業群 労働生産性 単位:千円/人

(24)

23 わかる。 図 3-2-1 道路貨物運送業の売上高と労働生産性の関係 y = -9.2224x + 846558 R² = 0.0034 (2,000,000) 0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 14,000,000 (20,000) 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 労働生産性 単位:千円/人 売上高 単位:千円

生産性と売上高の関係

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス) 労働生産性 単位:千円/人

(25)

24 図 3-2-2 道路貨物運送業の売上高と労働生産性の関係:売上高を対数プロット ② 主業比率と労働生産性の関係 主業比率と労働生産性の関係をみると、図 3-2-3のようになる。売上高営業利益率が プラスの企業群について、労働生産性と主業比率の関係をみると、図 3-2-3の単回帰分 析で示されるように、主業比率が減少した場合でも顕著に労働生産性は増加しないことが わかる。売上高営業利益率がプラスのグループの主業比率の平均値は 76%である一方、売上 高営業利益率がマイナスのグループは、主業比率が 83.5%となっており、売上高営業利益率 がプラスのグループよりも主業比率が高くなっている。この結果より、道路貨物運送業にお いては主業比率が低い形で事業展開を行っている企業の方において営業利益がプラスにな る傾向にあるが、主業比率を引き下げること自体に労働生産性向上をもたらす可能性は高 くないということが示唆される。 0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 14,000,000 1 10 100 1,000 10,000 100,000 売上高 単位:千円 生産性 単位:千円/人

生産性と売上高の関係

マイナス 利益プラス 売上高 単位:千円 労働生産性 単位:千円/人

(26)

25 図 3-2-3 道路貨物運送業における主業比率と労働生産性の関係 ③ 人口密度と労働生産性の関係 道路貨物運送業における労働生産性と人口密度の関係を図 3-2-4に示す。売上高営 業利益率がプラスの企業について単回帰分析を行うと図 3-2-4のようになり、人口密 度の増加にともなって労働生産性が増加することがわかる。売上高営業利益率がプラスの グループは人口密度平均 5,177 人/km2の場所に立地している。一方で、マイナスのグルー プは人口密度平均 4,273 人/km2の場所に立地している。言い換えれば、営業利益がプラス の企業ほど人口密度が高い市町村に立地しており、人口密度の増加によって労働生産性も 向上するということが示唆される。 y = -1081.8x + 4274.9 R² = 0.0015 (10,000) 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 生産性 千円/人 主業比率

主業比率と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス) 労働生産性 単位:千円/人

(27)

26 図 3-2-4 道路貨物運送業における人口密度と労働生産性の関係 ④ 非正規雇用割合と労働生産性の関係 道路貨物運送業における労働生産性と非正規雇用割合の関係を図 3-2-5に示す。図 3-2-5より売上高営業利益率がプラスの企業においては、非正規雇用割合が増加するほ ど労働生産性が低下することがわかる。また売上高営業利益率がプラスの企業では非正規 雇用割合が 9.9%である一方、マイナスのグループでは 13.4%となっている。非正規雇用割合 が低くなると労働生産性が向上するという点の背景としては、ドライバー以外の役割もこ なせる従業者が多くなるような業態を取っている企業が多いことが考えられる。言い換え れば、従業者一人当たりの付加価値向上を実現するために、荷主からの配送受託だけでなく 受託にいたるまでの業務連携を通じて付加価値を向上させている企業が存在していること を示唆する結果となっている。 y = 0.063x + 3126.4 R² = 0.0019 (10,000) 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 人口密度 単位:人/km2 単位:千円/人

人口密度と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス) 労働生産性 単位:千円/人

(28)

27 図 3-2-5 道路貨物運送業における非正規雇用割合と労働生産性の関係 ⑤ BS/PL 比率と労働生産性の関係 道路貨物運送業における労働生産性と BS/PL 比率の関係をみると、図 3-2-6のよう になる。売上高営業利益率がプラスの企業において、BS/PL 比率が増加することにより労 働生産性が減少する傾向にあることがわかる。BS/PL 比率の分布をみると、1 倍を超える 企業数は 212 社のうち 186 社である。道路貨物運送業において総資産よりも売上高が大き くなる理由は、平成 13 年 3 月における物流二法の改正により最低車両数が 10 台から全国 一律 5 台に変更され運送業への新規参入の障壁が引き下げられたことに起因すると考えら れる。個人事業者でも要件を満たせば新規参入が容易であり中小企業が主体のため、売上 高に対する総資産の割合が小さくなる。ただし、BS/PL 比率の向上は企業の付加価値向上 に繋がるわけではない点に注意するべきである。荷主の物流コスト削減要求と市場への新 規参入者の増加が合わさり業界全体の収益性は高いとは言えない。そのため、売上高拡大 には運賃を上げる以外の戦略をとる必要が出てきている。有力な戦略として考えられるも のは、運送だけでなく荷主の在庫管理から運送までの物流業務全般の一括受託があげられ る。道路貨物運送業の取引構造分析においては、受発注関係において傭車等の外部発注取 y = -2474.5x + 3697.8 R² = 0.0057 0.0 5,000.0 10,000.0 15,000.0 20,000.0 25,000.0 30,000.0 35,000.0 40,000.0 45,000.0 50,000.0 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 単位:千円/人

非正規雇用割合と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス) 労働生産性 単位:千円/人 非正規雇用割合

(29)

28 引の件数をみる必要があると考えられる。外部発注の増加は、付加価値の減少であり労働 生産性の低下に繋がる可能性があるものである。BS/PL 比率の増加にともなう労働生産性 の低下は、この点が影響していると考えられる。 図 3-2-6 道路貨物運送業における BS/PL 比率と労働生産性の関係 第3節 宿泊業 ① 売上高と労働生産性の関係 宿泊業において、売上高と労働生産性の関係をプロットすると、図 3-3-1のようにな る。売上高の増加にともなって、労働生産性が改善する傾向にあることが示唆される。図 3-3-2のように売上高を対数軸と設定し、労働生産性と売上高の分布の特徴をみると、労 働生産性の中央値は 2,200(千円/人)で、売上高は 400 万円前後から 90 億円規模まで広が っていることがわかる。宿泊業における分析対象企業の売上高は、1 億円から 10 億円規模 の間で分布しており、労働生産性のバラつきが大きいことがわかる。このことから、宿泊業 における労働生産性の向上には、事業規模の拡大以外の要素も存在していることが示唆さ れる。 y = -390.76x + 4320.3 R² = 0.0102 (10,000) 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 単位:千円/人 BS/PL比率

BS/PL比率と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス) 労働生産性 単位:千円/人

(30)

29 図 3-3-1 宿泊業における売上高と労働生産性の関係 y = 0.0002x + 2532.6 R² = 0.0103 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 売上高 単位:千円 労働生産性 単位:千円/人

売上高と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス)

(31)

30 図 3-3-2 宿泊業における売上高と労働生産性の関係:売上高を対数プロット ② 主業比率と労働生産性の関係 宿泊業において、労働生産性と主業比率をプロットすると図 3-3-3のようになる。 売上高営業利益率がプラスの企業についてみると、主業比率の増加にともなって労働生産 性が微増する。すなわち、宿泊業では本業の宿泊事業に特化するほど労働生産性が高くな る可能性があり、食事等の宿泊以外のサービスは自社で内製化するよりも外部調達するこ とにより付加価値の向上を実現できることが示唆される。主業以外の割合が高くなる場 合、取引構造において、宿泊業に関連しない取引品目が多くなることが考えられる。取引 構造分析においては、分析対象企業が発注する場合の取引品目の内訳について注目する。 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 1 10 100 1,000 10,000 100,000 1,000,000 10,000,000 売上高 単位:千円 労働生産性 単位:千円/人

売上高と生産性

マイナス 利益プラス

(32)

31 図 3-3-3 宿泊業における主業比率と労働生産性の関係 ③ 人口密度と労働生産性の関係 労働生産性と人口密度の関係をみると、図 3-3-4のように売上高営業利益率がプラ スの企業については、人口密度の増加にともなって労働生産性は緩やかに増加することが わかる。売上高営業利益率に直接影響する客室の稼働率は、人口密度が高い地域の方が高 める機会が多いことを鑑みると、人口密度が相対的に高い場所に立地している企業でも労 働生産性が低い企業が存在している点が、宿泊業における労働生産性と人口密度の関係に おける特徴である。人口密度の高い地域でかつ交通機関の発達した地域では、宿泊業者の 店舗密度も高くなる。それゆえに利用者への宿泊料金や付加サービスでのプロモーション が進展し、結果的に付加価値が低下する地域も存在していると考えられる。宿泊業におい て労働生産性を高める要因は、人口密度に由来するサービス提供の機会創出以外の競合他 社店舗との立地密度が影響している可能性がある。 y = 3.01x + 2672.5 R² = 3E-08 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 労働生産性 単位:千円/人 主業比率

主業比率と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス)

(33)

32 図 3-3-4 宿泊業における人口密度と労働生産性の関係 ④ 非正規雇用割合と労働生産性の関係 非正規雇用割合と労働生産性の関係をプロットすると図 3-3-5のようになる。売上 高営業利益率がプラスの企業についてみると、非正規雇用割合の増加にともなって労働生 産性が向上していることがわかる。これは、宿泊業という年間を通じた需要変動が存在して おり、企業側で価格決定権を持ちにくいためである。宿泊業の業態として、①出張等で利用 される短期滞在型の宿泊施設、②観光等レジャーにおいて利用される宿泊施設の二つの業 態が想定される。後者の業態への需要は、季節や休日の日数により変動する。そのため、年 間を通じた売上高営業利益率維持・向上のためには、需要変動に合わせた経費管理が必要に なってくる。宿泊施設という装置産業である宿泊業では、宿泊施設自体の維持管理に関する 費用は固定経費として発生する。そのため、経費の中でも大きな割合を占める人件費を需要 変動に対して調整できるよう非正規雇用割合を増加させることが年間を通じた営業利益獲 得には必要となっている。 y = 0.0241x + 2485.8 R² = 0.0025 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 人口密度 単位:人/km2 労働生産性 単位:千円/人

人口密度と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス)

(34)

33 図 3- 3-5 宿泊業における非正規雇用割合と労働生産性の関係 ⑤ BS/PL 比率と労働生産性の関係 宿泊業における BS/PL 比率と労働生産性の関係をプロットすると図 3- 3-6のよう になる。売上高営業利益率がプラスの企業について BS/PL 比率と労働生産性の関係をみる と、BS/PL 比率が上昇するにしたがって、労働生産性が減少することがわかる。宿泊業に おいて総資産より売上高を大きくするということは、宿泊施設に関連する固定資産を自社 で保有するのではなく、外部から調達することを意味する。例えば、不動産物件であれば 賃貸とすることで自社の総資産が縮小する。不動産物件を賃貸とすることにより、自社の 店舗展開に流動性を持たせることが可能となり、短中期的に変動する顧客ニーズにも柔軟 に対応した出店が可能となる。一方で外部調達の増加は付加価値額の減少を意味するもの であり、従業者数も外部調達に合わせて調整が行われない限り労働生産性は低下する。図 3- 3-6は売上高営業利益率のプラスの企業では従業者数の調整が上手く行われていな い可能性を示唆するものである。従業者数の調整は、企業の雇用吸収力を低下させること を意味するものである。雇用者としての地域への影響を考慮に入れるために、取引構造分 y = 1949.9x + 1415.7 R² = 0.0388 0.0 2,000.0 4,000.0 6,000.0 8,000.0 10,000.0 12,000.0 14,000.0 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 労働生産性 単位:千円/人 非正規雇用割合

非正規雇用割合と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス)

(35)

34 析においては企業の従業者数規模も考慮に入れた上で、上述の外部調達化の有無について 検証を行うものとする。 図 3- 3-6 宿泊業における BS/PL 比率と労働生産性の関係 第4節 労働生産性の売上高、主業比率、人口密度の 3 変数による説明 本節では、被説明変数を労働生産性とし、説明変数を売上高、主業比率、人口密度とした 重回帰分析を行った結果を示す。売上高、主業比率、人口密度の変化が労働生産性の変化に どのような変化を及ぼすのかを把握することを目的としている。以下では、重回帰分析にお けるモデル式、労働生産性 = 𝑎0+ 𝑎1× (売上高) + 𝑎2× (主業比率) + 𝑎3× (人口密度)にお ける各係数𝑎𝑖 (𝑖 = 0,1,2,3)について説明する。 医薬品卸売業において、重回帰分析を行うと、𝑎0= 9.18 × 103、𝑎1= 1.5 × 10−4、𝑎2= −2.82 × 101、𝑎 3= −2.24 × 10−1となり、売上高は労働生産性にプラスに働くが主業比率と 人口密度の増加は、労働生産性にマイナスの影響がある可能性が示唆される。 道路貨物運送業において、重回帰分析を行うと𝑎0= 4.5 × 103、𝑎1= −2.89 × 10−4、𝑎2= y = -1078.2x + 3557.6 R² = 0.0621 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 0 2 4 6 8 10 12 14 16 労働生産性 単位:千円/人 BS/PL比率

BS/PL比率と生産性

マイナス 利益プラス 線形 (利益プラス)

(36)

35 −2.02 × 101、𝑎 3= 4.09 × 10−2となり、売上高、主業比率の増加は生産性にマイナスの影響 があるが、人口密度の増加は労働生産性にプラスの影響がある可能性が示唆される。 宿泊業において、重回帰分析を行うと、𝑎0= 1.5 × 103、𝑎11.04 × 10−4、𝑎2= 1.84 × 101、 𝑎3= 1.02 × 10−2となり、売上高、主業比率、人口密度の増加は労働生産性にプラスの影響 がある可能性が示唆される。 第5節 マクロ分析のまとめ 本章で実施した分析から示唆される点について以下に記す。 医薬品卸売業においては、売上高、主業比率、人口密度、非正規雇用割合、BS/PL 比率の 増加は、労働生産性向上に負の影響をもつ可能性が示唆された。これらの結果より医薬品卸 売業の労働生産性が高い企業が取っている事業戦略は、製造もしくは販売側との事業連携 であることが仮説として明確になった。 道路貨物運送業においては、売上高、主業比率、非正規雇用割合、BS/PL 比率の増加は、 労働生産性向上に負の影響を持つことが示唆された。人口密度の増加は、労働生産性向上に 正の影響をもつことが示唆された。これらの結果より道路貨物運送業における付加価値向 上は、荷主や協力会社との連携によるものであるという仮説が明確になった。 宿泊業においては、売上高、主業比率、人口密度、非正規雇用割合の増加は労働生産性向 上に正の影響を持つことが示唆された。BS/PL 比率の増加は、労働生産性向上に負の影響を 持つことが示唆された。これらの結果より宿泊業における付加価値向上に繋がる営業利益 拡大には、需要変動に合わせて経費を管理するための外部調達化が実施されているという 仮説が明確になった。

(37)

36

第4章 取引構造分析の結果

本章では、各業種について労働生産性の高い企業の取引構造の分析を行った結果を示す。 第1節 医薬品卸売業 第1項 医薬品卸売業の取引構造 医薬品卸売業の取引構造における立ち位置は、医薬品製造業を主業とする企業を川上に もち、川下側には医薬品を取り扱う医療機関、調剤薬局、ドラッグストアが存在している。 特に医薬品の市場は、成長市場であるものの市場における企業数も多く企業合併による再 編が進んでいる市場でもある。買い手との関係において、医薬品卸売業の力は強いとは言え ず、地域の買い手に密着した経営基盤を確立することが必要である。 図 4-1-1医薬品卸売業の取引構造 (各業種名と全国の企業数を併記する) 医薬品卸売業における業界再編の動きは、同業種の中のみにとどまらず、川上側もしくは 川下側への垂直統合も動きも存在している点も示す。図 4-1-2に示されるような川上 型の統合では、医薬品卸売業者がメーカー機能を持つ動きがある。地域への営業基盤を活か して生産から販売までの効率化を図り労働生産性向上を目指すことが目的である。取引品 目にも特徴があり、漢方薬の原材料等にあげられる市場においてドミナントでない品目に よる差別化がみられる。

川上

川中

川下

大学病院

病院

診療所

メイン企業

周辺企業

ドラッグストア

調剤薬局

医薬品卸売業(1次)

医療用医薬

品製造業

医薬品卸売

業(2次)

一般用医薬

品製造業

配置薬

【機能】仕入/保管/配送/

管理/情報収集/販促

2,398 件 36,568 件 691 件 医薬品小売業 6,768 件

(38)

37 図 4-1-2医薬品卸売業の取引構造特性(川上型) 一方、図 4-1-3にある川下型の垂直統合も存在している。川下側の統合では、医薬 分業を背景に医薬品卸売業者が調剤薬局を取り込む統合の形が存在している。川下側の統 合においては、地域における営業基盤を活かし、院内業務を請け負うことで経営効率の向 上から労働生産性向上を目指す取引構造を持つ。 図 4-1-3 医薬品卸売業の取引構造特性(川下型)

①垂直統合

川上

川中

メイン企業

周辺企業

医薬品卸売業(1次)

医療用医薬

品製造業

医薬品卸売

業(2次)

一般用医薬

品製造業

原材料

②営業基盤

③ニッチ調達

【機能】仕入/保管

【機能】製造

医薬品卸売業

川中

川下

メイン企業

周辺企業

①垂直統合

②営業基盤

大学病院

病院

診療所

ドラッグストア

調剤薬局

【機能】配送/管理/情報

収集/販促

(39)

38 第2項 医薬品卸売業における労働生産性の高い企業の取引構造分析 医薬品卸売業における労働生産性の高い企業を抽出し、労働生産性の高い企業の取引構 造について考察する。医薬品卸売業における売上高規模、従業者数の順位は表 4-1-4の 通りである。売上高と従業者数の上位 10 位については黄色の背景で示している。 表 4-1-4 医薬品卸売業の売上高規模・従業者数順位 特に売上高が大きい上位の企業に対して、労働生産性の順位付けを行うと、表 4-1-5 のようになる。 表 4-1-5 医薬品卸売業の労働生産性順位(売上高順) 企業名 売上高順位 従業者数順位 R社 1 1 P社 2 2 O社 3 3 T社 4 4 Q社 5 6 G社 6 16 H社 7 21 D社 8 10 E社 9 8 K社 10 5 U社 11 12 V社 12 7 F社 13 14 A社 14 15 S社 15 17 L社 16 12 J社 17 10 M社 18 17 I社 19 17 N社 20 9 X社 21 21 B社 22 21 W社 23 24 C社 24 20 企業名 売上高順位 従業者数順位 労働生産性順位 R社 1 1 9 P社 2 2 7 O社 3 3 10 T社 4 4 8 Q社 5 6 3 G社 6 16 2 H社 7 21 1 D社 8 10 5 E社 9 8 4 K社 10 5 6

(40)

39 表4-1-5の企業群から、労働生産性の高い企業 E 社と Q 社を取引構造分析の対象企 業として抽出した。抽出条件は、売上高が 3 期でみたときに成長している企業とした。。 本項では特に E 社の取引構造について考察する。2015 年 1 月における E 社の取引構造を 分析する。 E 社の取引構造を分析するにあたり、E 社の主業の詳細について述べる。E 社(売上高 17 億円、従業員数 31 名)の主業は生薬原料の卸売や生薬の製造販売である。長年の業歴から 生薬の希少種などの独自ルートを持っており、仕入先には原料メーカーや貿易会社などが 出てくる。海外からの直接仕入れもあり、ニッチな調達ルートを強みとしている。卸売業で あるが、製造機能を持っており、医薬品製造業から安定した OEM 製造を受託している点が特 徴である。OEM 契約社数は 300 社程度といわれ、生薬分野におけるニッチトップな構造を有 しているといえる。事業分野がニッチな薬品(漢方薬)に絞り込まれており、生薬などの原 材料が集まることと、漢方薬の販路としても取引構造上集まる傾向がみられる。こういった 和漢の伝統的な生薬関連は、大阪や奈良に強みを持つ企業が歴史的に存在している。この点 は図 4-1-6に示す E 社の取引構造を具体的に見るとより詳細にわかる。近畿地域にお ける企業を赤、近畿地域以外の企業を青で示している。図 4-1-6の中心が E 社である。 E 社が受託している企業 37 社のうち 27 社が近畿地域の企業であり、うち 10 社が奈良県に 所在する企業である。受託取引品目の 37 件中 9 件が製品を取引している。E 社が発注する 取引品目に製品はなく、9 件中 5 件が原材料等である点をあわせて考えると、E 社は卸売業 でありながら OEM メーカーとしての側面を有することがわかる。E 社は図 4-1-2に示さ れるような川上型の事業参入戦略を行っていることがわかった。

(41)

40 図 4-1-6 E 社の取引構造の詳細

E 社 発注先

(42)

41 図 4-1-7 医薬品卸売業 E 社の取引構造 次に E 社の取引先企業が属する産業の規模について分析を行った結果を示す。企業間取 引構造分析においては、発注側、受注側の取引先の産業分類構成と市場規模、時系列で取引 先をみたときの産業の入れ替わりの把握が重要である。図 4-1-8では、取引高推定値を 用いて取引先の産業分類を順位付けし、各産業の売上高を産業小分類名の下に記した。前年 と比較し、取引推定値の順位が変化している部分について黄色の枠線で示している。これに より産業としての規模と、自社の取引上のパイプの太さを考察する。 E 社は、2015 年 1 月時点で、医薬品製造業の企業から最も多く受注をしているが、2014 年 1 月、2013 年 1 月には雑品製造業の企業と多く取引していることがわかる。一方で、E 社 の 1 次発注先の企業は 2013 年 1 月から 2015 年 1 月までの各年 3 年で変化していない。E 社 は発注先を変えないまま、得意先が繋がる市場(受注側 Tier2)の変化に合わせて新しい販 路開拓を行っていることがわかる。

医薬品卸売業

川上

川中

メイン企業

周辺企業

一般用医薬

品製造業

原材料

製造機能

生薬調達

OEM受注

配置薬

(43)

42 図 4-1-8 医薬品卸売業 E 社の取引構造 2015 年 1 月 v 発注側Tier1 1位 医薬品・医療用品卸 6,107 2位 陶磁器ガラス器等卸 9,581 3位 一般化学製品卸 3,376 4位 塗料・油脂・ろう卸 3,087 5位 燃料小売 510 発注側Tier2 1位 他の飲食料品製造 11,097 2位 一般化学製品卸 321,162 3位 医薬品・医療用品卸 1,908,381 4位 医薬品製造 234,615 5位 合成樹脂製品製造 127,205 受注側Tier1 1位 医薬品製造 24,191 2位 雑品製造 9,519 3位 他の飲食料品製造 748 4位 一般化学製品卸 60 5位 医薬品・医療用品卸 255 (単位:百万円) 受注側Tier2 1位 医薬品製造 6,214,193 2位 医薬品・医療用品卸 3,108,269 3位 その他の食料飲料卸 99,201 4位 医薬・化粧品小売 2,463,828 5位 塗料・油脂・ろう卸 1,106

E社

(44)

43 第3項 医薬品卸売業における財務戦略 本節では、分析対象である医薬品卸売業全体における平均的な貸借対照表の構成、損益計 算書の構成を示したうえで、労働生産性の高い企業群の財務構成との比較を行う。次に前節 で抽出した企業について貸借対照表と損益計算書の財務構成における比較を行い、業界平 均とのずれから財務戦略上の違いを考察する。 医薬品卸売業について、貸借対照表と損益計算書の平均構成を示す。図 4-1-9は全 企業 24 社の平均構成である。図 4-1-10は、労働生産性の高い企業上位 5 社の平均 構成である。図 4-1-9と図 4-1-10を比較すると、労働生産性の高い企業群の売 上高平均額は、近畿地域の医薬品卸売業の売上高平均額と同じ 14 億円規模である。しか し、労働生産性の高い企業の当期純利益率は 1.98%であり、医薬品卸売業の当期純利益率 の 0.91%と比べると 2 倍前後の利益率の高さとなっている。労働生産性の高い企業群にお いては、利益率の高さが影響し総資産が大きくなっており、同時に自己資本比率も近畿地 域における医薬品卸売業の自己資本比率平均と比較して 11.5%高くなっている。貸借対照 表の総資産と損益計算書の売上高の大きさを比較すると労働生産性の高い企業群の同比率 は、123%程度である一方、医薬品卸売業全体の同比率は、169%程度となっている。医薬品 卸売業平均では、少ないストックから売上高の向上を達成している。しかし、利益率の低 さを鑑みると売上高の増加に伴った経費発生が顕著に発生している可能性が示唆され、労 働生産性の高い企業は薄利多売を抑えるための戦略をとっていることが財務構成からわか る。

(45)

44 図 4-1-9 医薬品卸売業における貸借対照表、損益計算書の平均財務構成(医薬品卸 売業 24 社の平均) 図 4-1-10 医薬品卸売業における労働生産性の高い企業群の貸借対照表、損益計算書の構成(労 働生産上位 5 社の平均) 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000 1,600,000 BS(資産) BS(負債/資本) PL(売上高) PL(費用/利益)

売上高(億円)

14.4

30.0%

当期純利益率

0.91%

自己資本比率

総資本に対する売上高の割合

169.8%

0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000 1,600,000 BS(資産) BS(負債/資本) PL(売上高) PL(費用/利益)

売上高(億円)

14.3

41.5%

当期純利益率

1.98%

自己資本比率

総資本に対する売上高の割合

123.4%

単位:千円 単位:千円

(46)

45 労働生産性の高い企業である Q 社と E 社の財務構成をみると、近畿地域の医薬品卸売業 の平均と比べて売上高が大きくなっている。理由は、Q 社、E 社ともに医薬品卸売業でもあ るが製造機能も持ち合わせているためである。当期純利益の高さは、両社ともにニッチな商 品と調達ルートを確保することに起因しており、利益確保が困難でない品目に絞った取引 を行っている。 図 4-1-11 Q 社の財務構成 0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 BS(資産) BS(負債/資本) PL(売上高) PL(費用/利益)

売上高(億円)

21.4

21.9%

当期純利益率

2.12%

自己資本比率

112.1%

総資本に対する売上高の割合

単位:千円

(47)

46 図 4-1-12 E 社の財務構成 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000 BS(資産) BS(負債/資本) PL(売上高) PL(費用/利益)

売上高(億円)

12.1

66.6%

当期純利益率

4.95%

自己資本比率

113.4%

総資本に対する売上高の割合

単位:千円

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