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びわ湖産アユ(Plecoglossus altivelis) 油の脂肪酸成分およびステリンについて(創刊10周年記念号)

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Academic year: 2021

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びわ湖産アユ(Plecoglossusαltivelis)油の

脂肪酸成分およびステリンについて

堀 太

郎・板

坂 修 Fatty Acids and Sterols in Sweetfish(Plecoglossus altivelis)Oil Taro Hori, Osamu ltasaka   For the estimation of fatty acid components and sterols in sweetfish oil, a acetone−soluble fraction obtained from it was investigated. The fatty acids were esterified, distilled, and identified by the usual procedures, and in addition to the ordinary fatty acids known as the constitution of fish oils the occurrence of Iinoleic and Iinolenic acids was expected fro]皿the analytical data of their derivatives. Confirmation of the two acids was established by conversjon to tetrahydroxystearic acid or hexabrornid individually. Besides, the percentage composition of the fatty acids estimated from the distillation curve was as fo一 玉lows;∼C125%, C1410%, C1630%, Cls 30%, C2010%, C22∼5%, residue工0%.   The analytical deter皿ination of the sterols indicated that an unsaponifiable matter of the sweetfish is almost cholesterol. 緒 言  びわ湖産アユ1)lecoglossus altivelisは湖内 においては体長が平均7∼9cm以上には伸びず, いわゆる小アユと称し,他の河川に放流されて 15∼25cm程度に成長する一年生淡水魚の一種    ユラ である。この魚の脂質に関する報告は辻本氏の        ラ概観程度のものにとどまっているようである。  本研究に使用しttアユは昭和33年4月下旬び わ湖北部で他県へ移殖放流のために捕獲iしたも ののうちから選んだものである。脂質の性状は 20QCにおいて著量の固体をまじえた榿赤色液状, 4210.9523,nko 1.4810,酸価15.6,ケン化価         ぐオの 201.3,ヨウ素価137. 9である。またこれから得 られるアセント可溶性脂質は4220.9305,嬬 1.4789,酸価14。4,ケン化価188.6,ヨウ素価  く  ラ 150.9の品数を有する榿赤色液体である。これ をケン化して得た脂肪酸のメチルエステルを Whitmore・Lux型精留塔を用いて蒸留し,蒸 留曲線から炭素数に基づく脂肪酸含量を求める と,∼Cユ415%,C1630%, Cユ830%, C2010%, C22∼5%である。飽和脂肪酸は23%でパルミ チン酸が最も多く,ミリスチン酸,ステアリン 酸ラウリン酸の順に少くなっている。不飽和 脂肪酸中低度酸としてはゾーマリン酸,オレイ ン酸の他に,ジエン酸にリノール酸 トリエン 酸にリノレン酸が認められ,また高度不飽和酸 としてはアイコサテトラエン酸,ドコサペンタ エン酸の存在していることを知る。不ケン化物 は赤榿色の固体で,ステリンジギトニド法から ステリン含量を求めると67. 6%で,そのステリ ンの主成分はコレステリンであり,他に△5・L 1)水産庁淡水区水産研究所湖沼部編,びわ湖地域水産関係調査報告書 昭和32年2月. 2)辻本:東工試 2ワ,No.15,55(昭7). (註1)ヨウ素価はすべてWijs法によった。 (註2)辻本氏のアユ油のヨウ素価は132.7である。

(2)

30

遠大紀要

第  1G 号 1960 共役スチン(プPtビタミンD)2.6%を含んで いる。 実験および考察  D試料の調製 小アユ(平均体長8.・Ocm,平 均体重8,0gの鮮魚)16.5kgをむしてから,さ きにセタシジミの脂質を調製した際に用いた方 ヨラ 法で処理して総脂質913gを得た。これより 石油エーテルおよび無水アセトン可溶性脂質 700gを分取した。収量は鮮魚体全体の4.2%で ある。なお窒素0.16%,リン0.16%をそれぞれ 含有しているので,このアセトン可溶性脂質は 約5%の複合脂質をまじえている。  2)脂肪酸の性状 脂肪酸の性状はつぎのと おりである;耀1.4620,中和価196.7,ヨウ 素価167,4,25。Cにおいて固体。この脂肪酸を 鉛歩一アルコール法(15。C)を用いて固体酸お よび液体酸に分離した。それぞれの酸の引数を 示すとつぎの通りである。  固体酸(26%)中和価223.7,ヨウ素価10.9,   皿P32。C  液体酸(差74%)中和価192,3,ヨウ素価222。6,   n$B 1。4730  3)脂肪酸メチルの蒸留 脂肪酸をメチルア ルコールでエステル化し,生成したメチルエス テル500gを,内径13mm,銅製針金で作っアこ輪 を充填させた部分の長さ600mmの蒸留塔を用 いて3回蒸留を繰り返した。蒸留は窒素ガス気       く の 流申で行い最後に得た結果を第1表に示す。  4)脂肪酸の検索 工)飽和脂肪酸およびモ ノエン酸:第1表の留分1,2,4,6のそれぞれ のエステルから得られる脂肪酸を鉛一一アルコ ール法で処理して固体酸を濃縮し,これを80% アルコールから再結晶物として,あるいはそれ らの誘導体として混融試験を行い,飽和酸を確 認した。モノエン酸は液体酸からリチウム二一 アセトン法で固体部を分取し,これを60%アル

コールから再結晶し,そのHazura氏酸化物

を調べて,存在を明らかにした。確認された酸 を第2表に一括示す。 第2表 飽和酸およびモノエン酸

留分酸i誘導体

−一2 4 6 ラ ウ リ ン 陣点・・ ミリスチン パルミチン ゾーマリン ステアリン オレイン* ア ニ  リ  ド ア  ニ  リ  ド 74N75 82−」83       161.5−62 9,10一ジオキシパルミチ       122”v123ン酸 9,10一ジオキシステアリ ン酸* 68−69 130N131 第1表1 メチルエステルの蒸留(500g) *第3表参照 留分

123456789R

留出温度 oc/2mm

 Hg

 N138

139N147 148”一’158 159’一166 167−v177 178A−183 184N203 204tv211 2王2∼216 217r一 収量 % 1.2 4. 9 4. 6 24. 4 11.7 20. 3 10.0 4.1 2.3 16. 5 屈折率 婿 1. 4300 1. 4303 1. 4326 1.4366 1.4495 1. 4531 1. 4722 1. 4812 1.4842 ケン 化価 241.8 232. 8 220.0 207.6 Z94. 9 192.2 179. 6 177. 1 168. 0 159.5 ヨウ 素価 2Z 9 19. 7 39.8 56. 1 143.6 169.8 246.6 262.4 221.9 173.8 炭素数 %* 戸00

 1

2  4

CC

C,6 30 C,, 30 C,, 10 C,2 5

 10

*大約の%を示す。 3)堀,杉本:二化 76,987 (1955). 堀,板坂:生化 28,685 (1956). (註3)留分1∼9およびRのヨウ素価の実測値から計算した値は137.3であり,もとの脂肪酸は167.4である。  両老の差異が大き’いのは蒸留時の損失が主に高度不飽和酸においておこったためであろう。  1)リノール酸:留分6の液体酸はnお01.4662, 中和価203.1,ヨウ素価192.5で白金黒触媒によ る水素加成物はmp 68。∼69QCで,ステアリ ン酸との混融温度は不変であることからCエ8酸 であると認めt。従って液体酸を直ちにHazu− ra三法でオキシ酸となし,これをエーテル抽 出で易溶出部〔A〕,難溶出部〔B〕および残 部〔C〕の三区分に分けた。各区分の性状を第 3表に示す。  第3表の性状から考えて⊂A〕はオレイン酸か らジオキシステアリン酸であることが認められ るQまた〔C〕はりノーール酸からのテトラオキ システアリン酸であることが予想できるので, その構造を検討するために,このオキシ酸50 mgを用いて1%過マンガン酸カリウム水溶液

(3)

びわ湖産アユ(Plecoglossus altivelis)油の脂肪酸成分およびステリンについて(堀・板坂) 31 第3表オキシ酸の性状 区 分

A

エーテル抽出時間 収  量  %* 融  点   。C 中  和  価 分子量(ラスト法) 元素分析値 素素 炭水 測 実

計算1炭素

  1水素

巨燗時

1 34 130−v131  174.6  310. 4 68.59 11.56 68.32** II. 44**

B

 40時間  55 166一一168 65.25 10.69 C  残部  11 169’一172  158.1  352.1 62.11 10. 62 62. 05*** 10. 39*** *1。010gのオキシ酸を用いた。 **’ blsH3sO4(ジオキシステアリン酸)としての計算  値を示す。 ***C18H3606(テトラオキシステアリン酸) として   の計算値を示す。  第4表 ヒドロオキザム酸誘導体のRア値 の存在することが認められた。第4表にこれら 各酸のRノ値を,第1図にそのマップを示す。 これらの低級酸はサチビン酸の酸化分解による ものであり,もとの脂肪酸中にリノール酸の存 在することを知る。なお〔B〕は〔A〕および 〔C〕の成分の混合物であろう。 第1図 ヒドvオキザム酸誘導体のペーパークロ    マトグラム ノO R工 O.8 O.6

諭轡

シ = ウ酸 マ ロ ン酸i

撮ll海流レi寸言欝

gl:g (,gl:gi lo.ei(o.o,, 11 O.18 (O.20) i O.54 (O.56)

難_.磐墜聖1睦

コ ル ク 酸      jO.62 (O.62) アゼライン酸O.76(0.78) バレリアン酸 カプロン酸 O.89 (O.90) O.92 (O.93) ︶ 6 1 0 ︵ 4 1 0 O. 06(O. 06) 1

面扁「卜

O.71 (O.70) o.se (o.7s)  ()内のRア値は井上・野田両氏の発表による      り  のである。 15ccで加熱酸化分解し,分解生成物を常法に従 って処理した。これをヒドロオキザム酸誘導体 となし,一次元ペーパークロマトグラフィーで 検索すると,一塩基性酸として,酢酸バレリ アン酸,カプロン酸が,また二塩基性酸として, シュウ酸,マロン酸,アゼライン酸,コルク酸 4)井上,野田:農化 25,496 (1952).  (註4)   丸善書店 P67(1958).  (註5)六臭化物 mp 1850∼186℃,   P67 (1958). O.4 O.2 o.o ㊧の︸⑫

㊧@の② 展開剤,n・ブタノール・ 上;ブタノーノレ・ベンゼン     水飽和      下;酢酸エチル・水飽和 発色試薬さ10%塩化第二鉄アルコール溶液  皿)リノレン酸=留分6のリチウム塩一アセ ント法による可溶部から,瑠1。4844,中和価        く り 197.0,ヨウ素価260.9を示す脂肪酸を得た。こ の臭素加成物は熱ベンゼンに易溶,MP 1800∼          く の 185QC,臭素含量63.90%で,その脱臭素化物は 婿1.4874,ヨウ素価272.4である。また水素 加成物と純ステアリン酸との混融点は68Q∼ 69。Cを示した。       く     IV)高度不飽和脂肪酸:留分8および9から は呼塩一アルコー・一・ル法(180Cにおいて)による 固体酸はいずれも分離されなかった。従って両 留分をリチウム塩一アセトン法により可溶部と リノレン酸の特長に関する文献値;嬬1.4780,ヨゥ素価273.5 日本油化学協会編:油肪化学便覧, 同臭素含量63.26% 日本油化学協会編1油脂化学便覧,丸善書店 (註6)表1留分9を再留して21So∼220。C/4mmHgの部分を分取したものを以下示すこととし,次の特数  を与える;耀1.4990,ヶン化価163.1ヨゥ素価265.5

(4)

32

高大紀要

第  10  号 1960 不溶部に分ち,その性状を調べた。結果を第5 表に示す。 第5表 留分8および9の性状 留 分 8 9 脂  肪  酸 リチウム塩一 アセトン不溶部 リチウム塩一 アセトン可溶部

中和価

ヨウ素価

価衝%

和素量

 ウ

中ヨ収

屈折率n.3

中和価

ヨウ素価

収量%

181. 7 237. 9 176. 1 186.1 25 1. 492223 187.1 263. 2 75 168. 4 270.0 163. 5 189. 4 25 1. 495720 168. 1 344. 2 75  つぎに第5表の脂肪酸から,さらに藻塩一ア ルコール法で固体酸を分別すると,留分8から中 和価179.4,ヨウ素価101. 0の脂肪酸2%が得ら れたが,留分9には認められなかった。それ故 にC、。以上の高級脂肪酸中には飽和酸は殆ん ど存在せず,主として不飽和酸のみが含まれて いる。また鉛塩一アルコール法による液体酸で は留分8から中和価176.1,ヨウ素価225.0のも のが,留分9から中和価164.5,ヨウ素価210.3, 婿1.4857のものがそれぞれ少:量ずつ得られる から,C2・∼C22酸のジエンおよびトリエン酸が 存在する。第5表のアセトン可溶性リチウム塩を 生ずる部分からエーテル不溶性臭化物を製卜し, これを熱ベンゼンで処理して次の結果を得た。 a)留分8のエーテル不溶性臭化物2.2gから,熱  ベンゼン可溶物0.95g, mp165Q∼169。C黒変,  臭素量67,1%。  熱ベンゼン不溶物0.73g, mp 215Q∼220。C  附近黒変。臭素量67。2%。 b)留分9のエーテル不溶性臭化物1.29から,  熱ベンゼン可溶物0.15g, mp 190。∼1950C  黒変,臭素量70.6%。  熱ベンゼン不溶物0.889,mp230。C附近黒変,  臭素量77.・6%  これらの留分に含まれる高度不飽和酸は主に アイコサテトラエン(アラキドン酸?)および ドコサペンタエンの各酸と推定できる。  5)ステリン, 不ケン化物50.3gをメタノ ールで処理しmp 143。∼146。Cの結晶物38. Og を得ナこ。これを更にメタノールーアセトン(1: 1)から1回再結晶してmp147。∼148QC,〔α〕劣 一40.5Q(クロロホルム溶液)の針状結晶を得 た。    分析値 C83.82%, H 12.18% C27H46 Oとしての    計算値 C83.81%, H 11.90%        く の  またコレステリンとの混融点は1480Cで融点 降下が認められなかった。  不ケン化物から得たステリンジギトニドは △5・7一共役ステリンに基づく極大吸収を示すの       ので分子吸光係数からその含量を計算すると約 2.6%になる。  本研究を逐行ずるに当り種々協力された本多 光君(滋賀県高島郡朽木中学校教諭)並びに試 料を提供された上田長春氏(滋賀県高島郡今津 町浜分漁業組合長)に感謝します。 (註7)混融試験に用いたコレステリンは日本大学理工学部教授 5)松本,田村,伊藤:日化 ワ6,953(1955). 松本太郎氏より頂いたものである。

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