• 検索結果がありません。

Vol.37 , No.2(1989)059乾 仁志「仏説大乗観想曼拏羅浄諸悪趣経について」

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Vol.37 , No.2(1989)059乾 仁志「仏説大乗観想曼拏羅浄諸悪趣経について」"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

印度學 佛教學研究第37巻 第2號 平成元年3月 仏 説 大 乗 観 想 曼 肇 羅 浄 諸 悪 趣 経 に つ い て 乾 仁 志 1. Durgatiparisdhana-tantra(DP)は、 『真 実 摂 経 』(TS)の 釈 タ ン ト ラ と し て 知 ら れ, イ ソ ド ・チ ベ ッ ト密 教 で は 大 い に 流 行 し た 鍮 伽 タ ン ト ラ の 一 つ で あ る。 と こ ろ で, DPは 中 国 や 日 本 で は ほ と ん ど 流 行 せ ず, 僅 か に 宋 代 に 漢 訳 され た 文 献 が 伝 わ る の み で あ る。 こ の 漢 訳 文 献 は 具 さ に は 『仏 説 大 乗 観 想 曼 睾 羅 浄 諸 悪 趣 経 』(大 正19巻939番)と 言 い, 従 来, チ ベ ヅ ト蔵 経 に 伝 わ る 二 本 の 類 本--す な わ ち, Bu-ston(B)の 言 う1)『 清 浄 タ ン ト ラ 』(sbyrgyud, DP-A:東 北No. 483, 大 谷No. 116)とr九 仏 頂 タ ソ トラ 』(gtsug dguhi rgyud, DP-B:東 北No. 485, 大 谷NO. 117> の 中, 後 者DP-Bの 抄 訳 と し て 紹 介 さ れ て き た2)。 し か し, 今 回 筆 者 が 調 査 した 結 果, こ の 漢 訳 文 献 は チ ベ ッ ト 蔵 経 に 存 在 す るAnand-agarbha(A)造 の 曼 茶 羅 礒 軌 に 相 当 す る 文 献 で あ る こ と が 判 明 し た。 こ の 礒 軌 は 先 述 した 様 に 中 国 や 日本 で は ほ と ん ど 顧 み ら れ る こ と が な か っ た が, イ ソ ド ・チ ベ ッ ト密 教 に 伝 わ るDP関 係 の 文 献 群 の 中 で は 最 も重 要 な も の の 一 つ で, DPの 流 伝 発 展 の 上 で 重 要 な 位 置 を 占 め て い る と 考 え ら れ る。 そ こ で, 以 下 に は 先 づ こ の 礒 軌 の チ ベ ッ ト蔵 経 に お け る 所 在 を 明 ら か に し, そ の 上 で 更 に こ の 礒 軌 と密 接 な 関 係 を も つDP-Bの 成 立 事 情 に つ い て 私 見 を 述 べ た い と 思 う。 II. こ の 漢 訳 礒 軌 は 宋 代 の 法 賢 に よ っ て 訳 出 さ れ た も の で, 『大 中 祥 符 法 宝 録 略 出 』 に よ れ ぽ 至 道2年(A. D. 996)の 訳 出 と さ れ て い る。 訳 者 の 法 賢 は 端 撲2年 (A. D. 989)か ら威 平2年(A. D. 999)の 間 に76部114巻 の 経 典 を 訳 出 し た 翻 訳 官 で, 威 平3年(A. D. 1000)8月4日 に 示 寂 し た と云 わ れ る3)。 こ の 礒 軌 は, 先 述 し た よ う に, これ ま でDP-Bの 抄 訳 か と 推 定 さ れ て き た が, チ ベ ヅ ト蔵 経 に は こ の 儀 軌 に 相 当 す る も の が あ り, Bは これ を 『九 仏 頂 軌 』(gtsug dgui cho ga, DPV)と 呼 ん で い る4)。 す な わ ち, Sarvadurgatiparisodhanama-alavidhi-nama(東 北No. 2635, 大 谷No. 3460)が そ れ で あ る。 訳 者 はBuddhsrisanti

とRin chen bzah po(A. D. 958-1055)で, 10世 紀 後 半 か ら11世 紀 前 半 に か け て の 訳 と 見 ら れ る。 そ れ 故, チ ベ ッ ト語 訳 と漢 訳 は ほ ぼ 同 時 代 の 訳 出 に な る。 こ のDPVの 内 容 は お よ そ 別 表 の よ う に な っ て い る。 各 文 段 の 項 目 は 漢 訳 に は 明 示 さ れ て い な い。 これ ら は チ ベ ヅ ト語 訳 に 基 づ い た 名 称 で あ る。 な お,チ ベ ヅ

(2)

(192) 仏説大乗観想曼肇羅浄諸悪 趣経について(乾) ト語 訳 は便 宜 上 北 京 版 を用 いた。 さ て, チ ベ ッ ト語 訳 は真 言 文 を除 い てほ ぼ 全 体 が7シ ラ ブル の偶 順形 式 で 記述 され て お り, そ の依 用 したSkt原 典 が 本 来 韻 文 で あ った こ とを 窺 わ せ る。 それ に対 し, 漢 訳 は一 部 を 除 い て散 文 形 式 で 記 述 され て お り, チ ベ ッ ト語 訳 に 比 べ て, 意 訳 的 な表 現 が 目立 つ。 全 体 の 内容 は別 表 に示 した よ うに6章 か らな る。 第1章 の 前 行修 法 が 本軌 の 中 心 で, 全 体 の 約 半 分 に あ た る 頁 数 が こ の 記 述 に 割 か れ て い る。AはSarva-vajrodaya(VU; 東北No. 2516, 大谷No. 3339)の 中 で も この 前 行 修 法(shn du

(3)

仏説 大乗観 想曼摯羅浄 諸悪趣経 について(乾) (193) bshen pa, Prvaseva)と い う用語 を用 い て い るが, Bに よれ ば, それ は 阿 閣 梨 の 事 業 に属 し, 「曼茶 羅 を 描 く前 に 本尊 に親 近 す る 」 こ とで あ る と言 う5)。 内 容 は 本 尊 であ る九 仏 頂 尊 を 中心 と した 曼 茶 羅 の成 就 法 で あ る。 そ の 中 心 は, い わ ゆ る adiyga, mapalarajagri, karmarajagriの 三 種 三 摩 地(samadhitraya)に よ っ て構 成 され てい る。DPVに は 更 に 続 い て そ の後 半 分 に, 浄 地 作 法 ・曼茶 羅 を描 く作 法 ・瓶 を 準 備 し て安 置 す る作 法 ・曼 茶 羅 の護 摩 作 法 ・南 方 門 で 行 な う作 法 が 説 か れ てい る。 お よそ の傾 向 と して は, 同 著 者 のVUと も共 通 す る。 と こ ろで, 別 表 を 見 て 分 る よ うに, 漢 訳 に は一 部 内 容 が 前後 す る所(*)が あ る が, これ は恐 ら く法 賢 の 原 本 が 一 葉 分 前 後 して お り, そ れ に気 付 か ず 法 賢 が そ の ま ま訳 して し ま った こ とに 原 因 す る と考 え られ る。 そ の 他, 漢 訳 に は 欠文 あ る い は省 略 が認 め られ, また チ ベ ヅ ト訳 に ない 文(増 広文)も あ る。 これ ら若 干 の 相 違 点 が あ るが, 砥 ぼ 全 体 の 構 成 や 内容 もチ ベ ッ ト訳 に 符 合 し, この 法 賢 訳 はAのDPVに 相 当 す る もの と結 論 づ け られ る。 腿. 先 述 の 如 く, DPに は チ ベ ッ ト語 訳 と して二 本 の類 本 が 伝 わ って い る。 こ の 中, DP-Aは 古 く 『デ ンカル マ 目録 』 に も 記 載 され て お り, そ の成 立 は8世 紀 末 まで に は あ った と考 え られ, DP-Bは 訳 者 の生 存 年 代 か ら考 え て12世 紀 末 まで に 成 立 して い た もの と見 られ る6)。それ 故, 基 本 的 に はDP-Aが 先 に 成 立 し, DP-Bが 後 に成 立 した と考 え て大 過 ない。DPのSkt. 写 本 は 現 在 数 多 く 発 見 され て い るが, そ の 何 れ もDP-Bに 属 し, DP-AのSkt. 写 本 は未 だ 発 見 され て い な い。 これ は一 つ に は ネ パ ー ル で は専 らDP-Bが もて は や され て い た こ とに 由 る と考 え られ る。 ネ パ ー ル で は更 に九 仏 頂 の 喩 伽次 第7)も 作 成 され てお り, そ の 隆盛 ぶ りが 窺 い知 られ る。 な お, Skt. 写 本 と して は チ ベ ッ ト語 訳 以 前 に 遡 る もの は まだ 発 見 され て お らず, 何れ も比較 的新 しい ものが 多 い。 この 両 本 に は, 内 容上 符合 す る と ころが 可 な りあ るが, 全 く同 じで は な く相 違 点 も見 られ る。 この 両 本 の 比 較 対 照 は既 にSkor-upski氏 に よ って行 なわ れ てい る の でS), 詳 し くは 氏 の 研 究 に譲 り, 今 は両 本 の特 色 を簡 単 に指 摘 して お きた い。 先 づDP-Aは チ ベ ッ ト語 訳 に従 え ば全 体 は三 章 に分 け られ る。 注 釈 で はそ れ ぞれ 因縁 段 を 含 む 根 本 タ ソ トラ ・続 タ ソ トラ ・続 々タ ン トラに 区分 され てい る。 第 一 章 の 因縁 段 に続 く根 本 タ ソ トラに は, 根 本 曼茶 羅 と して普 明(sarvavit)の 曼 茶 羅 が説 かれ, 第 二 章 の続 タ ソ トラに は, 釈 迦 牟尼 よ り無 量寿 に 至 る まで9種 の 曼茶 羅 が説 かれ, 第 三 章 の続 々 タ ソ トラに は, 転 輪 王 と念 怒 火 日の2種 の 曼茶 羅 が 説 か れ て い る。一 方, DP-BもDP-Aの 内 容 区 分 に 従 え ば 三 章 に 分 け る こ と

(4)

(194) 仏説大乗観 想曼肇羅浄諸悪趣経 について(乾) が で き る。DP-Bで は, 第一 章 に はDP-Aの 普 明 に 代 って, 根 本 曼茶 羅 と して 九 仏 頂 の曼 茶 羅 が 説 か れ て い る。 第 二章 に はDP-Aと 等 し く9種 の 曼茶 羅 が 説 か れ, 第三 章 に は 転 輪 王 の 曼茶 羅 の み が説 かれ る だ け で, 念 怒 火 日の 曼茶 羅 は存 在 しな い。それ 故, 曼茶 羅 と して はDP-Aに は12種 類 の 曼茶 羅 が 説 か れ, DP-B に は11種 類 の 曼茶 羅 が説 か れ て い る 訳 で あ る。 ま た, 第 二 章 の釈 迦 牟尼 曼茶 羅 の 後 にVimalamapiprabhaこ 関 わ る話 な どがDP-Bに 見 え な い他 は, そ の 内容 の相 違 点 は ほ ぼ 第 一 章 と第 三 章 に 限 定 され る。 と ころ で, Bは このDP-Bの 内容 に 関 して 大変 興 味 深 い指 摘 を し て い る。 す なわ ち, Bに よれ ば, DP-Aと ほぼ 同文 の第 二 章 は別 に し て, DP-Bの 第一 章 に相 当す る箇 所 に は, DP-Aの 他 に も, Aに よ って著 わ され た二 つ の礒 軌, つ ま りVUと 先 述 のDPVと 内容 を 等 し くした と こ ろ が あ り, ま た 第三 章 に も DP-A及 びDP-Aの 第一 章 か ら引 かれ た部 分 の 他 に, VUと 内 容 を等 し く し た と ころが あ る。 そ して, この事 実 か ら, Bは こ のDP-Bの イ ソ ド成 立 説 に疑 問 を投 げ か け てい る9)。事 実, DP-Bと 他 の文 献 との 対 応 関 係 に つ い て は 既 に 個 々に指 摘 され て い る10)。 と もあれ, こ のBの 指 摘 の 裏 に は, このDP-Bが DP-Aを ベ ース に しつ つ, Aの 以上 の二 礒 軌 に基 づ い て新 た に 作 成 され た とい う見 解 を読 み取 る こ とが で きる。 このBの 説 が 妥 当か ど うか は 更 に詳 細 に註 釈 や 儀 軌 類 を 総 合 的 に 考 察 しな け れ ば な らな いが, 筆 者 は現 時 点 で は 以下 の よ うな理 由か らそ れ は 妥 当 と考 え て い る。 まず 第 一 点 は三 種 三 摩 地 の問 題 で あ る。DP-Aに は三 種 三 摩 地 の項 目名 は な い。 そ れ に対 し, DP-Bに は 三 種三 摩 地 の各 項 目名 が見 られ, タ ソ トラ と して は 異 色 な 体 彩 に な って い る。 それ 故, BはDP-Bの タ ソ トラ と して の 性 格 を 疑 問 視 して い る訳 で あ る11)。三 種三 摩 地 の 名 称 そ の も の はTSの 釈 タ ソ トラで あ る Vajrasekharatantra(Vs: 東 北No. 480, 大 谷No. 113)に 初 見 す る12)。そ して, こ の 三 種 三 摩 地 とい う概 念 を タ ソ トラ解 釈 上 最 も重 要 視 し常 用 した のがAで あ る。 AはTSを 解 釈 す る 上 でvS等 に依 存 し, 三 種 三 摩 地 とい う概 念 に注 目 して, TSを 始 めSriparamadya, Mayalala, Guhyasamajaと い った重 要 な タ ソ トラを 分 析 す る場 合 に も この概 念 を 用 い, A造 と して伝 わ るDP-Aの 註 釈 に も用 い ら れ て い る。 もち ろん, 註 釈 類 のみ な らず, 儀 軌 類 に お い て も, 阿 閣 梨 の 事 業 と し て説 か れ る 本尊 喩 佛の構 成 に も用 い てい る。 しか し, 註 釈 した と ころ の 各 々の タ ン トラに は 本来 三 種 三 摩 地 の各 項 目名 は見 え ない。 三 種 三 摩 地 とい うのは, あ く までAが 各 タ ン トラを 解 釈 す る上 で, また 各礒 軌 の 成 就 法 を 構成 す る 上 で採 用

(5)

仏説大乗観想曼肇羅浄諸悪趣経について(乾) (195) し た主 要 な概 念 で あ った と考 え られ る。 そ れ 故, DP-Bの 中に, この 三 種 三 摩 地 の 項 目名 が 用 い られ てい る こと 自体 奇 異 な印 象 を 受 け ざ るを 得 な い。 こあDP-B が, も し もAに 先 立 って既 に存 在 して い た とす る な らば, AがDPVを 著 わ す 以 前 に, VUやTSな どの註 釈 にお い て, DP-Bに 触 れ て い る はず で あ る。 と こ ろが, DP-Bの 第 一 章 に 説 か れ る三 種 三 摩 地 や 第三 章 に説 かれ る弟 子 入壇 等 の 文 に 関 し て全 く解 れ ない の は, Aの 時 代 に はDP-Bは ま だ存 在 して い なか った と考 え る よ り他 ない。 こ の こ とはDP関 係 の註 釈 が 何 れ もDP-Aに 関す る もの で13), DP-Bに 関す る も のが 存 在 し ない こ と に対 応 す る。 第 二 点 は九 仏 頂(NavOSa)曼 茶 羅 の問 題 で あ る。 般 に九 仏 頂 曼茶羅 と言 う場 合 に は, DP-Bの 根 本 曼茶 羅 と して の九 仏 頂 尊 の 曼茶 羅 を指 す。 す なわ ち, 中 穀に 釈 迦 牟 尼 如 来(Sakyamuni, SakyasiIpha), 東 輻 に 金 剛 仏 頂 如 来(Vajrosia), 南 輻 に 宝仏 頂 如 来(Ratnoia), 西 輻 に蓮 花 仏 頂 如 来(Padmoa), 北 輻 に一 切 仏 頂 如 来(ViSvosisa), 東 南 輻 に光 仏 頂 如 来(Tejossa), 西 南 輻 に橦 仏 頂 如 来(Dhva-joSa), 西北 輻 に利 仏 頂 如 来(Tiksoisa), 東 北 輻 に 傘仏 頂 如 来(ChatroSisa) を 安 立 す る の が そ れ で あ る。 と ころ がDPに は も う一 つ 九 仏 頂 曼 茶 羅 が 存 在 す

る。 そ れ はDP-A, 並 び にDP-Bの そ れ ぞ れ 第 二 章 冒 頭 に説 かれ る釈 迦 牟尼 曼 茶 羅 で あ る。 この 曼茶 羅 も釈 迦 自在 主 牟 尼(Skyadhipendramui)を 中 穀に, 東輻 に金 剛 手 大 力(Vajrapmahabala), 南 輻 に勝 仏 頂(Jayosisa), 西 輻 に 転 輪 王 (Cakravartin), 北 輻 に 尊 勝(Vijaya), 東 南輻 に 光 聚(Tejorasi), 西 南 輻 に 能 破 (Vidhvapsaka), 西 北 輻 に 能 砕(Vikiraa), 東 北 輻 に 白傘 蓋(Sitatapatra)を 安 立 し, 註 釈 で は こ の九 尊 を 総 称 して 九 仏 頂 と言 う。あ るい は 中 尊 を 除 い て 八 仏頂, あ るい は 金 剛 主 大 力 を 除 い て 七 仏 頂 と も言 わ れ て い る14)。そ れ 故, DP-Aで は第 一 に普 明 曼茶 羅 を説 き, 第 二 に九 仏 頂 曼茶 羅 を説 い て い る こ と に な り, 同 様 に DP-Bで は, 第 一 に九 仏 頂 曼 茶 羅 を 説 き, 第 二 に も九 仏 頂 曼茶 羅 を 説 い て い る こ と に な る。 この二 種 の九 仏 頂 曼 茶 羅 の 尊容 と尊 名 か ら両 者 の間 に は親 縁 関 係 の あ る こ とが 既 に 氏 家 覚 勝 先 生 や 田 中公 明氏 に よ っ て指 摘 され て い る。 異 な る のは, 東 南 西 北 の 四方 尊 がDP-Bの 根 本 曼茶 羅 で は金 剛 界 の五 部 立 て に従 っ て編 成 され て い る こ とで あ る。 この こ とか ら, 両 氏 が 指 摘 され た よ うに, む し ろ仏 頂 尊 の素 朴 な形 態(胎 藤系 の五 仏 頂 尊)を 有 して い る釈 迦 牟 尼 曼 茶 羅 を 基 に して, 尊 名 の 上 か らも は っ き りと金 剛界 五 部 立 て に新 し く再 編 成 され た のが 根 本 の九 仏 頂 曼 茶 羅 で あ る と結 論 付 け られ る。 この両 曼 茶 羅 の親 縁 関係 につ い て は九 仏 頂 曼 茶 羅 の 成 立後 に お い て 自明 の こ と と考 え られ て い た よ うで, この こ とは イ ソ ドの有 名 な

(6)

(196) 仏説大乗観 想曼 肇羅浄 諸悪趣経 について (乾) 学 匠 に仮 託 され た ものが ほ とん ど と伝 え られ る註 釈 類 の 中 に, 釈 迦 牟 尼 曼 茶 羅 の 九 尊 が そ れ ぞれ 九 仏 頂 曼 茶 羅 の九 尊 に 当 る こ とを は っ き りと指摘 して い る もの が あ る こ とや15), また ネ パ ー ル の九 仏 頂 の 喩 鋤次 第 の よ うに, 九 仏 頂曼 茶 羅 と して 釈 迦 牟 尼 曼 茶 羅 の 九 尊 の 名 を併 記す る もの もあ る16)ことか ら も知 られ る。 とい う こ とか ら, 更 にDP-Aか らDP-Bの 成 立 に 至 る ま で の 間 に, DP-Aの 第 二 の 釈 迦 牟尼 曼 茶 羅 を 基 に して先 づ根 本 の九 仏 頂 曼 茶 羅 が成 立 して そ の礒 軌 が著 わ され て い った と見 られ る。 チ ベ ッ ト蔵 経 に収 蔵 され て い る礒 軌 類 に は大 別 して二 種 類 あ る。 二 つ は普 明 曼茶 羅 を説 く もの で あ り, も う一 つ は根 本 の九 仏 頂 曼 茶 羅 を説 く もの で あ る17)。イ ソ ド ・チ ベ ッ ト密教 で は, 悪 趣 清 浄 曼 茶 羅 と して は普 明曼 茶 羅 に 劣 らず九 仏 頂 曼 茶 羅 が 特 に尊 崇 され て い た こ とが 知 られ る。 この九 仏 頂 曼 茶 羅 へ の 厚 い 信仰 か ら, そ の 古型 で あ る釈 迦 牟尼 曼 茶 羅 で は 満足 で きず, あ る時 代 に九 仏 頂 曼 茶 羅 を根 本 と した 本 軌 が 求 め られ た の で あ ろ う。DP-Bの チ ベ ッ ト 語 訳 がDP-AやDPVに 比 べ て 比 較 的 時 代 が下 が る こ と, DP-Bの 註 釈 が存 在 せ ず, 九 仏 頂曼 茶 羅 を 説 く儀 軌 類 が 多 く存 在 す る こ と, チ ベ ッ ト密 教 史 の 中 で, DP-Bの 註 釈 が 求 め られ た 形 跡 が 見 あ た らな い こ とな どか ら, DP-BはDP-A よ り遅 れ, しか も九 仏 頂 曼 茶 羅 の 成 立後 に 改 め て 編 纂 され た と考 え られ る。 以 上 の 点 か ら, 筆 者 はBが 指 摘 して い る如 く, DP-Bの 成 立 に はDP-Aと 共 にAの 二 著 作DPVとVUの 影 響 力 が 大 きか った と考 え る。 ま たAは 鍮 伽 タ ン トラの 実 践 に巧 み な 学 匠 と して 名 声 が 高 い こ と もそ の一 証 左 とな ろ う。

1)東 北No. 5104(Da 39a∼41a)4), 9)註1)を 参照。5)東 北No. 5105(Da 198 a) 6) See T. Skorupski, The Sarvadurgatiparisadhana Tantra, 1983, Motilal

Banarsidass, p. xxiv. 7)氏 家 昭 夫 「悪 趣 清 浄 マ ン ダ ラ と そ の 観 想 」(密 教 学 研 究7) 8)See T. Skorupski, ibid, Pp. xviii∼xxiv. 10)酒 井 真 典 「悪 趣 清 浄 軌 に つ い て 」 (密 教 文 化123)の 論 文 は 結 局 『九 仏 頂 タ ン ト ラ 』 と 『九 仏 頂 軌 』 の 対 応 関 係 を 示 し た

も の と な る。 ま た 『一 切 金 剛 出 現 』 と の 応 対 関 係 に つ い て は 森 口 光 俊 「Palm Ms: Sarvavajrodakaに つ い て 」(大 正 大 学 綜 合 仏 教 研 究 所 年 報6)を 参 照。11)註1> 並 び に 同 書(Da 88ab)を 参 照。12)D. Na 170a-171a, P. Na 192b-193b. 13), 14)東 北Nos. 2624-2628, 大 谷Ns. 3451-3455. 15)東 北No. 2627, 大 谷No. 3454 (Khu 283b-289a)16)東 大 写 本No. 446(PP. 10-11)etc. を 参 照。17)普 明 曼 茶 羅 を 説 く も の は 東 北Nos. 2630-2634, 大 谷Nos. 3457-3459。 九 仏 頂 曼 茶 羅iを 説 く も の は 東 北Nos. 2635-2639, 大 谷Nos. 3460-3462。

<キ ー ワ ー ド>『 九 仏 頂 軌 』, 『九 仏 頂 タ ン ト ラ』, Anandagarbha

参照

関連したドキュメント

191 IV.5.1 Analytical structure of the stop-loss ordered minimal distribution 191 IV.5.2 Comparisons with the Chebyshev-Markov extremal random variables 194 IV.5.3 Small

TOSHIKATSU KAKIMOTO Yonezawa Women's College The main purpose of this article is to give an overview of the social identity research: one of the principal approaches to the study

54. The items with the highest average values   were:  understanding  of  the  patient's  values,  and  decision-making  support  for  the  place  of 

[r]

[r]

部位名 経年劣化事象 健全性評価結果 現状保全

妥当性・信頼性のある実強度を設定するにあたって,①

三 配電費の部門の第一次整理原価を、基礎原価等項目